(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記減圧工程は、前記繊維束層と前記被覆体との間に剥離性を有するシートが配置された状態にて実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合容器の製造方法。
前記減圧工程は、前記容器中間体の周囲温度が、前記樹脂の粘度を最も低い状態とする温度以外の温度のときに実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合容器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る製造方法及び製造システムにより製造される複合容器を示す一部断面図である。
図1に示すように、複合容器1は、水素や天然ガス等の燃料ガスを高圧で貯蔵するための容器である。この複合容器1は、例えば、全長が2〜4m、直径が400〜600mm程度に設定され、使用時には、20〜90MPa程度の圧力に耐えることが可能とされている。複合容器1は、その用途が限定されるものではなく、種々の用途で用いることができる。また、複合容器1は、据置き型として用いられてもよく、移動体に搭載されて用いられてもよい。
【0017】
この複合容器1は、円筒状のライナ2と、ライナ2の外面側(外周面側)を覆うように設けられた強化層(繊維強化プラスチック層)3と、を備えている。ライナ2の両端部2aはドーム状に形成されており、当該両端部2aの先端には、軸方向に突出するように口金4が取り付けられている。ここでの口金4における取付け高さ(突出高さ)は、強化層3の厚みと同等とされているが、それ以上であってもよく、口金4が強化層3から出っ張る高さとされてもよい。
【0018】
ライナ2の材料は特に限定されるものではないが、用途によっては、樹脂製又は金属製が選択される。樹脂製のライナ2としては、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を回転成形やブロー成形にて容器形状に賦形したものに、金属製の口金4を付けたものが挙げられる。金属製のライナ2としては、例えば、アルミニウム合金製や鋼鉄製等からなるパイプ形状や板形状をスピニング加工等にて容器形状に形成したものに、口金4の形状を形成したものが挙げられる。
【0019】
強化層3は、熱硬化性樹脂(樹脂)が含浸された繊維束10をライナ2の外面側に積層するように巻き付け、所定の処理を行った後に、当該繊維束10を積層して成る複数層の繊維束層5(
図3参照)を加熱し硬化させることによって形成される(詳しくは、後述)。熱硬化性樹脂の種類としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂又はアリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
また、繊維束10としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリエチレン繊維、スチール繊維、ザイロン繊維又はビニロン繊維等を用いることができ、ここでは、高強度で高弾性率且つ軽量な炭素繊維を用いている。また、本実施形態の繊維束10の繊維数(フィラメント)は、特に制限されるものではないが、1000〜50000フィラメント、好ましくは3000〜30000フィラメントの範囲とされ、ここでは、24000フィラメントとされている。
【0021】
次に、以上のように構成された複合容器1を製造する製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る複合容器の製造方法を示すフローチャートである。まず、繊維束10をライナ2の外面側に巻き付ける巻付け工程を行う(S1)。具体的には、繊維束10をライナ2の外面側に積層するように巻き付けることにより、ライナ2の外面側に繊維束10を複数層に積層して成る繊維束層5を形成し、これにより、容器中間体1aを形成する。
【0022】
なお、容器中間体1aとは、製造過程における複合容器1を意図しており、ここでは、繊維束10の熱硬化性樹脂が熱硬化する前の状態のものを意図している(以下、同じ)。また、巻付け工程における巻き付け方法は特に限定されないが、例えば、FW(フィラメントワインディング)法を採用することができる。
【0023】
ここで、
図3を参照して、本実施形態における上記巻付け工程の例について詳説する。
図3は予め熱硬化性樹脂が含浸された繊維束(トウプリプレグ)10を用いて巻付け工程を行う、いわゆるDry法で用いられるFW装置の模式的な概念図である。ここで、「トウプリプレグ」とは、繊維束に樹脂が含浸しているものである。
【0024】
図3に示すように、FW装置(巻付け手段)100は、上記複合容器1を製造するものであって、上記巻付け工程で用いられる。このFW装置100は、熱硬化性樹脂を予め含浸させた繊維束10を巻廻した複数のボビン101を巻付け部として備え、ここでは、繊維束10
1〜10
6をそれぞれ巻廻したボビン101
1〜101
6を備えている。さらに、FW装置100は、巻き付けられる複数の繊維束10の通過位置を調整する束通過位置調整部102と、巻き付けられる複数の繊維束10をライナ2の軸方向に沿って移動させる移動部103と、繊維束10をライナ2で巻き取るように当該ライナ2を回転する回転機構(不図示)と、を巻付け部として備えている。
【0025】
このFW装置100による巻付け工程では、ボビン101
1〜101
6から繊維束10
1〜10
6が供給され、これら繊維束10
1〜10
6は、束通過位置調整部102によって通過位置が調整されながら、移動部103及び回転機構の協働によってライナ2の外面側に巻き付けられ、これにより、ライナ2を覆うように繊維束層5が形成される。繊維束層5は、例えば100〜200層で60mmの厚さを有する。また、繊維束層5は、ライナ2に対して繊維束10を周方向に巻き付けてなるフープ層と、ライナ2に対して繊維束10を傾斜させた状態で周方向に取り囲むように巻き付けてなるヘリカル層と、を含んでいる。
【0026】
このような繊維束層5には、繊維束10間、繊維束10とライナ2の外面側との間、及び繊維束10中における繊維間といった部分に空隙が生じる場合がある。特に、ヘリカル層は、繊維束10と繊維束10とがクロスして重なる部分を有するため、ヘリカル層内には空隙が形成され易い。ここで、空隙とは、繊維も熱硬化性樹脂も存在しない繊維束層5中の隙間である。
【0027】
続いて、容器中間体1aを被覆する処理を行う(S2)。ここで、
図4を参照して、本実施形態における容器中間体1aの被覆処理について詳説する。
図4(a)は、容器中間体を被覆体で被覆した状態を示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIV(b)―IV(b)線に沿っての断面図である。
【0028】
図4(a)に示すように、容器中間体1aは、シート状の被覆体6によって、繊維束層5の外周側が全体的に被覆された状態とされる。また、ライナ2の両端部2aに取り付けられた口金4は被覆されない状態とされる。このような被覆処理によって被覆することで、被覆体6は、容器中間体1aの外周側との間に空間Sが形成されるようにして、繊維束層5を密閉した状態とすることが可能である。
【0029】
被覆体6は、変形可能で耐熱性を有する樹脂等の素材で形成されている。被覆体6には、吸引口6aが設けられ、当該吸引口6aを介して空間Sの空気を吸引することができる。なお、本実施形態の容器中間体1aは、被覆体6で被覆される前に、繊維束層5側から、剥離性を有するシート(図示せず)及び不織布(図示せず)でこの順に予め覆われる。
【0030】
この被覆処理により形成される密閉状態の確認は、空間Sの圧力を計測する圧力計7と真空ポンプ(図示せず)とを用いて行われる。即ち、真空ポンプによって吸引口6aを介して被覆体6の内部の空気を吸引し、圧力計7の値が所定値以下となることが確認できれば、密閉状態であることが確認できる。一方、圧力計7の値は所定値以下とならず、密閉状態であることが確認できない場合は、被覆体6による被覆処理をやり直す必要がある。
【0031】
続いて、容器中間体1aの周囲を減圧する減圧工程を開始する(S3)。ここで、
図5を参照して、本実施形態における減圧工程の例について詳説する。
図5は、この減圧工程に用いられるオートクレーブの模式的な概念図である。
【0032】
図5に示すように、オートクレーブ200は、上記複合容器1を製造するものであって、本実施形態における減圧工程、及び、後述する加圧工程並びに加熱工程で用いられる。このオートクレーブ200は、耐圧性を有するオートクレーブ槽20を有している。オートクレーブ槽20内には、ヒータ(加熱手段)21、温度センサ22、及び圧力センサ23が設けられている。また、オートクレーブ槽20内には、被覆体6で被覆された容器中間体1aが収容される。
【0033】
ヒータ21は、オートクレーブ槽20の熱源である。温度センサ22は、オートクレーブ槽20内の温度を検出する。圧力センサ23は、オートクレーブ槽20内の圧力を検出する。なお、ヒータ21の個数は一つであってもよく、複数であってもよい。また、ヒータ21が複数の場合は分割されてヒータ21間に間隔が設けられていてよく、複数のヒータ21の大きさ及び形状が不均一であってもよい。
【0034】
また、オートクレーブ200は、減圧部(減圧手段)30、加圧部40、及びコントローラ50を更に備えている。減圧部30は、オートクレーブ槽20内に収容された被覆体6の吸引口6a及び配管L1を介して被覆体6の内部と連通可能に接続されている。減圧部30は、例えば、真空ポンプであり、被覆体6内を減圧する。加圧部40は、配管L2を介してオートクレーブ槽20の内部と連通可能に接続されている。加圧部40は、例えば、加圧ポンプであり、オートクレーブ槽20内で被覆体6外に圧縮空気を導入し、オートクレーブ槽20内で被覆体6外を高圧雰囲気とする。
【0035】
コントローラ50は、被覆体6内の圧力、オートクレーブ槽20内の温度(以下、槽内温度)及び圧力(以下、槽内圧力)を制御するためのものであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含むコンピュータで構成されている。このコントローラ50は、ヒータ21、温度センサ22、圧力センサ23、減圧部30、及び加圧部40にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、コントローラ50は、ヒータ21の動作を制御して槽内温度を制御する。また、コントローラ50には、温度センサ22から槽内温度が入力されると共に、圧力センサ23から槽内圧力が入力される。さらに、コントローラ50は、減圧部30の動作を制御して被覆体6の内部の減圧状態を制御すると共に、加圧部40の動作を制御して槽内圧力を制御する。
【0036】
以上のように構成されたオートクレーブ200において、減圧工程は、コントローラ50が減圧部30に制御信号を出力し、減圧部30が配管L1を介して被覆体6の内部を減圧することにより実施される。被覆体6の内部圧力は、例えば、0.1MPa以下とされる。これにより、被覆体6の内部の空気が吸引口6aから吸い込まれて被覆体6の外部に排出される。これと共に、容器中間体1aの繊維束層5中の空隙からも空気が繊維束層5の外部へと移動し、当該空気が被覆体6の外部に排出されて除かれる。
【0037】
また、減圧工程で被覆体6の内部が減圧されることに伴って、空間Sの体積が減少し、被覆体6が繊維束層5の外周側に貼り付くようになる。これにより、被覆体6で繊維束層5の外周側が押圧され、空気が除かれた空隙へ繊維束層5中の熱硬化性樹脂が流れ込む(流動工程)。このように熱硬化性樹脂を流動させる流動工程は、被覆体6を用いることにより、減圧工程に伴って実施される。
【0038】
続いて、被覆体6の外部を加圧する加圧工程を開始する(S4)。オートクレーブ200において、加圧工程は、コントローラ50が加圧部40に制御信号を出力し、加圧部40が配管L2を介してオートクレーブ槽20の内部を加圧することにより実施される。槽内圧力は、例えば、0.5MPa以上とされる。これにより、被覆体6で繊維束層5の外周側がさらに押圧され、被覆体6の内部の減圧が促進されると共に、繊維束層5中の熱硬化性樹脂の流動も促進される。
【0039】
続いて、容器中間体1aの周囲を減圧する減圧工程を終了する(S5)。オートクレーブ200において、減圧工程の終了は、コントローラ50が減圧部30に制御信号を出力し、減圧部30による減圧を終了させることにより実施される。
【0040】
続いて、容器中間体1aを加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程を開始する(S6)。オートクレーブ200において、加熱工程は、コントローラ50がヒータ21に制御信号を出力し、ヒータ21が動作することにより実施される。槽内温度は、熱硬化性樹脂の種類にあわせて、例えば、80〜150℃とされる。これにより、熱硬化性樹脂が硬化され、強化層3を備えた複合容器1が製造される。
【0041】
ここで、
図6を参照して、減圧工程を実施するタイミングについて説明する。
図6は、熱硬化性樹脂の温度と粘度との関係をグラフである。なお、
図6は説明のための模式的なグラフであり、X軸を温度に設定し、Y軸を粘度に設定している。ちなみに、
図6に示すような粘度曲線は、熱硬化性樹脂を所定の加熱時間、設定された温度で加熱した時の温度を示しているため、加熱時間が変わると、粘度曲線の態様も変わる。
【0042】
図6に示すように、熱硬化性樹脂は、加熱することによって軟化し、常温よりも粘度が低くなる。更に温度を高くすることで順次粘度が低くなっていく。極小値となる温度T
0よりも高い温度で加熱すると温度が高くなるに従って硬化反応が起こり、粘度が高くなる。それ以降は完全硬化へ向かって粘度が高くなっていく。このように、熱硬化性樹脂は、温度が上昇するに連れて、粘度が低くなった後に高くなる特性を有している。温度T
0は、熱硬化性樹脂の粘度を最も低い状態とする温度であり、例えば、エポキシ樹脂では120℃程度であり、フェノール樹脂では150℃程度である。
【0043】
したがって、熱硬化性樹脂は、極小値となる温度T
0近傍の温度範囲において粘度が低下し流動性が非常に高くなる。この状態で減圧工程が実施されると、繊維束層5から過剰に熱硬化性樹脂が除かれてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、上述のように、減圧工程を終了させてから加熱工程を開始させている。これにより、繊維束層5から過剰に熱硬化性樹脂が除かれてしまうのを防ぐことができる。
【0044】
なお、減圧工程を実施するタイミングはこれに限られず、減圧工程は、温度(容器中間体1aの周囲温度)が温度T
0以外の温度のときに実施されればよい。例えば、減圧工程を終了させずに加熱工程を開始し、温度T
0となる前に、減圧工程を終了させることとしてもよい。また、減圧工程は温度T
0の前後約10℃の温度範囲以外で実施されてもよい。
【0045】
続いて、加圧工程及び加熱工程を終了する(S7)。オートクレーブ200において、加圧工程の終了は、コントローラ50が加圧部40に制御信号を出力し、加圧部40による加圧を終了させることにより実施される。また、加熱工程の終了は、コントローラ50がヒータ21に制御信号を出力し、ヒータ21の動作を終了させることにより実施される。これらの工程の終了処理の後、複合容器1をオートクレーブ槽20内から取り出し、複合容器1から被覆体6を剥離することにより、複合容器1の製造を終了する。
【0046】
なお、上記被覆処理において、口金4は被覆体6によって被覆されないこととしたが、口金4まで被覆体6によって被覆されてもよい。口金4が被覆体6で被覆されない場合、ライナ2の内部についてまで減圧することなく、繊維束層5の外周側のみを効率的に減圧することができる。
【0047】
また、上記被覆処理において、容器中間体1aは、被覆体6で被覆される前に、繊維束層5側から剥離性を有するシート(図示せず)及び不織布(図示せず)がこの順で予め覆われている。これにより、繊維束層5と被覆体6との間の剥離性を高め、繊維束層5から被覆体6を容易に剥離することができる。
【0048】
また、上記加圧工程は、減圧工程によって十分に減圧された後に実施されることから、繊維束10をなじませることができ、また、余分な熱硬化性樹脂を押し出すことができる。
【0049】
ちなみに、上記流動工程は、被覆体6を用い、減圧部30による減圧に伴って実施されると共に、加圧部40による加圧に伴っても実施されるので、本実施形態の流動手段は、被覆体6、減圧部30及び加圧部40によって構成される。
【0050】
次に、以上のように製造された複合容器1の外観について説明する。
図7(a)は、本実施形態の製造方法により製造された複合容器の外観の例を示す概念図である。
図7(b)は、従来の製造方法により製造された複合容器の外観の例を示す概念図である。従来の製造方法は、上記被覆処理、上記減圧工程、及び上記加圧工程を行わず、一般的な硬化炉で加熱硬化させた以外は本実施形態の製造方法と同様である。
【0051】
図7(a)本実施形態の複合容器1は、強化層3の外周側に被覆体6(
図4参照)で押圧されたくぼみ等の痕跡を有し、マットな質感を有している。これに対して、
図7(b)従来技術の複合容器1’は、このような痕跡を有さず、樹脂の光沢を残した質感を有しているため、容易に識別することができる。
【0052】
以上、本実施形態によれば、容器中間体1aの繊維束層5の外周側をシート状の被覆体6で被覆して密閉した状態にて、被覆体6の内部が減圧されるので、容器中間体1aの周囲が減圧されて、繊維束層5中の空隙から空気を繊維束層5の外部へと移動させて除くことができる。また、被覆体6の内部が減圧されることに伴って、被覆体6が繊維束層5の外周側に貼り付き、被覆体6で繊維束層5の外周側が押圧されるため、空気が除かれた空隙へ繊維束層5中の熱硬化性樹脂を流れ込ませることができる。これにより、繊維束10をライナ2に巻き付け、繊維束層5を形成した際に、繊維束層5中に発生した空隙を減少させることができ、該空隙に起因して複合容器1の強度が低下するのを防ぐことが可能となる。
【0053】
また、Dry法で繊維束層5を形成した容器中間体1aを、一般的な硬化炉で加熱硬化させて複合容器1を得た場合、強化層3における空隙の体積割合を示す空隙率は、通常4〜6%程度である。これに対して、本実施形態により複合容器1を得た場合、強化層3における空隙率を1%以下にまで低減させることが可能となる。
【0054】
なお、レジンバスを用いたWet法で巻付け工程を行う場合、Dry法に比べて樹脂の流動性が高く、強化層3における空隙率は、通常でも2%以下であるが、本実施形態によれば、Dry法であってもWet法と同等以下の空隙率を達成することができる。なお、このような空隙率の測定は、強化層3の断面写真を画像解析することにより行うことができる。
【0055】
ちなみに、本実施形態において、減圧工程は容器中間体1aの周囲の減圧のみで制御され、流動工程は容器中間体1aに対する外力及び容器中間体1aの周囲温度で制御されて実施され、加熱工程は容器中間体1aの加熱のみで制御されて実施されることとなる。
【0056】
なお、流動工程では、容器中間体1aの周囲温度で制御されることにより、容器中間体1aの周囲温度が熱硬化性樹脂の流動性を保てるように温度制御される。本実施形態の流動工程では、容器中間体1aの周囲温度が常温に制御されることにより、熱硬化性樹脂の流動性が保たれている。流動性を保てるような温度は、熱硬化性樹脂の種類、巻付け工程(Dry法によるかWet法によるか)等によっても異なるが、例えば、常温より高い温度でなければ流動性を保てないような場合には、加熱を行い容器中間体1aの周囲温度が制御されることとなる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0058】
例えば、上記実施形態の巻付け工程は、トウプリプレグを用いたDry法で行ったが、レジンバスを用いたWet法で行ってもよい。Wet法では元々空隙率が低いが、本実施形態によれば、これを更に低減させることが可能となる。
【0059】
また、上記実施形態では、樹脂を流動させる流動工程において、被覆体6を用いて減圧部30による減圧及び加圧部40による加圧を行ったが、加圧部40による加圧を行わない場合もある。この場合でも、減圧部30で被覆体6の内部が減圧されることによって、被覆体6で繊維束層5の外周側を押圧させ、空気が除かれた空隙へと繊維束層5中の熱硬化性樹脂を流動させることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、被覆体6を用いたが、被覆体6を用いない場合もある。この場合、例えば、減圧工程は、オートクレーブ槽20の内部全体を減圧して実施され、加圧工程は、減圧工程の終了後に、オートクレーブ槽20の内部全体を加圧して実施されてもよい。
【0061】
また、流動工程は、上記実施形態のように被覆体6を用いて実施されてもよいし、これに代えてもしくは加えて、次のようにして実施されてもよい。例えば、容器中間体1aを回転させ、この回転の遠心力によって実施されてもよい。また、超音波振動によって実施されてもよい。また、容器中間体1aを回転させながら、外周側の面を押圧する押圧部によって実施されてもよい。また、被覆体6のかわりに包帯やベルト状のもので外周側の面を巻き付けて実施されてもよい。