特許第6228847号(P6228847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228847眼科における改良または眼科に関する改良
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228847
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】眼科における改良または眼科に関する改良
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20171030BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A61B3/10 RZDM
   A61B3/14 L
【請求項の数】21
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-548882(P2013-548882)
(86)(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公表番号】特表2014-502552(P2014-502552A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】GB2011052458
(87)【国際公開番号】WO2012095620
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】1100555.0
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー デイビッド クレイシー
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ブライアン ミルン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー フォグ
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−006029(JP,A)
【文献】 特開平05−309072(JP,A)
【文献】 特開2006−230799(JP,A)
【文献】 特開昭61−052850(JP,A)
【文献】 特開昭62−008730(JP,A)
【文献】 特表2009−543585(JP,A)
【文献】 特表2010−508932(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/125394(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0030449(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0328606(US,A1)
【文献】 特表平09−509337(JP,A)
【文献】 特許第4287375(JP,B2)
【文献】 特開2001−290102(JP,A)
【文献】 特開2009−119153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
A61B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射装置と、
見掛けの点光源を有し、前記照射装置と組み合わさって、前記見掛けの点光源からの入射照射を与える、複数のレンズ素子を含む広角レンズ系と、
前記見掛けの点光源が配置される第1焦点と、眼球が配置される第2焦点とを有し、前記見掛けの点光源からの前記入射照射を前記眼球内に転送して網膜を照射する照射転送装置と、
前記網膜から前記照射転送装置及び前記広角レンズ系を介して戻る反射光を検出する光検出器と、
を具え
前記広角レンズ系が生成する見掛けの焦点と前記見掛けの点光源とが一致することを特徴とする網膜の像を取得する装置。
【請求項2】
照射装置と、
見掛けの点光源を有し、前記照射装置と組み合わさって、前記見掛けの点光源からの入射照射を与える、複数のレンズ素子を含む広角レンズ系と、
前記見掛けの点光源が配置される第3焦点と、第4焦点とを有し、前記見掛けの点光源からの前記入射照射を照射転送装置に転送する照射中継装置と、
第4焦点と一致する第1焦点と、眼球が配置される第2焦点とを有し、照射中継装置により転送された前記入射照射を前記眼球内に転送して網膜を照射する照射転送装置と、
前記網膜から前記照射転送装置、前記照射中継装置及び前記広角レンズ系を介して戻る反射光を検出する光検出器と、
を具え
前記広角レンズ系が生成する見掛けの焦点と前記見掛けの点光源とが一致することを特徴とする網膜の像を取得する装置。
【請求項3】
前記照射転送装置及び前記照射中継装置は、前記第1焦点と前記第2焦点とを結ぶ直線上に存在する主軸と、前記第3焦点と前記第4焦点とを結ぶ直線上に存在する主軸とが実質的に同一直線上にあるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記照射中継装置が、前記照射転送装置と実質的に同一の幾何学的形状を有することを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記見掛けの点光源が、前記照射転送装置に対面する、前記広角レンズ系の最外部のレンズ素子内に位置することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記照射装置及び前記広角レンズ系が、前記見掛けの点光源が静止するように構成されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記広角レンズ系が、30度〜180度の視野角(FOV)を有する広角レンズを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記照射転送装置が、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、及び2つの焦点を具えたレンズ系から成るグループ内の要素のうち1つを具えていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記照射装置が光源を含み、この光源は、レーザー、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、ダイオードレーザー、コリメート白熱ランプ、フラッシュまたは照明装置、あるいはDLP(登録商標)投射装置から成るグループ内の要素のうち1つを具えていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記眼球の前記網膜を前記見掛けの点光源からの光で二次元走査する二次元走査装置を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記二次元走査装置が、少なくとも2軸で回転することのできる単一の走査要素を具えるか、各々が単一の回転軸を有する2つの別個の走査要素を具えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記単一の走査要素が、微小電気機械システム(MEMS)走査素子であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記二次元走査装置が、直線走査要素を具えていることを特徴とする請求項1〜1のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記照射転送装置によって導入された歪みを修正する歪み修正装置を具えることを特徴とする請求項1から1のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
照射装置と、複数のレンズ素子を含む広角レンズ系とを組み合わせて用いて、入射照射を与える見掛けの点光源を前記広角レンズ系内に位置させるステップと、
前記見掛けの点光源を、第1焦点と第2焦点とを有する照射転送装置の第1焦点に置き、眼球を前記第2焦点に置くステップと、
前記照射転送装置を用いて、前記見掛けの点光源からの前記入射照射を、前記眼球内に転送して網膜を照射するステップと、
光検出器を用いて、前記網膜から前記照射転送装置及び前記広角レンズ系を介して戻る反射光を検出して、前記網膜の像を生成するステップと、
を含み
前記広角レンズ系が生成する見掛けの焦点と前記見掛けの点光源とが一致することを特徴とする網膜の像を取得する方法。
【請求項16】
照射装置と、複数のレンズ素子を含む広角レンズ系とを組み合わせて用いて、入射照射を与える見掛けの点光源を前記広角レンズ系内に位置させるステップと、
前記見掛けの点光源を、第3焦点と第4焦点とを有する照射中継装置の第3焦点に置くステップと、
第1焦点と第2焦点とを有する照射転送装置の第1焦点を前記第4焦点に置き、眼球を前記第2焦点に置くステップと、
照射中継装置を用いて、前記見掛けの点光源からの前記入射照射を前記照射転送装置に転送するステップと、
前記照射転送装置を用いて、前記照射中継装置により転送された前記入射照射を前記眼球内に転送して網膜を照射するステップと、
光検出器を用いて、前記網膜から前記照射転送装置、前記照射中継装置及び前記広角レンズ系を介して戻る反射光を検出して、前記網膜の像を生成するステップと、
を含み、
前記広角レンズ系が生成する見掛けの焦点と前記見掛けの点光源とが一致することを特徴とする網膜の像を取得する方法。
【請求項17】
前記照射転送装置及び前記照射中継装置は、前記第1焦点と前記第2焦点とを結ぶ直線上に存在する主軸と、前記第3焦点と前記第4焦点とを結ぶ直線上に存在する主軸とが実質的に同一直線上にあるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記照射中継装置が、前記照射転送装置と実質的に同一の幾何学的形状を有することを特徴とする請求項1または1に記載の方法。
【請求項19】
前記見掛けの点光源を、前記照射転送装置に対面する、前記広角レンズ系の最外部のレンズ素子内に位置させるステップを含むことを特徴とする請求項1〜1のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記眼球の前記網膜を前記見掛けの点光源からの光で二次元走査するステップを含むことを特徴とする請求項1〜1のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記二次元走査するステップは、直線走査要素を具える二次元走査装置により行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の眼球の網膜を照射し、撮像し、治療する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型レーザー検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)のような撮像システムは、レーザー走査素子、走査転送ミラー、レーザー源及び検出器のような多数の光学部品を具えることができる。レーザー走査装置は、第1及び第2の直交走査素子で構成され、これらは一般に、高速回転ポリゴンミラー(多面鏡)、及びモーター駆動の低速ミラーで構成される。これらの素子を用いて、人間の網膜のラスター(水平)走査パターンが生成される。ポリゴンミラーは、複数の面を有し、一般にレーザービームの垂直走査を行い、低速ミラーは一般に、レーザービームの水平走査を行う。走査転送ミラーは、これらの走査素子によって生成された二次元のレーザー走査パターンを眼球の網膜に転送する。
【0003】
こうした撮像システムは眼球の網膜の許容可能な像を提供するが、これらのシステムは、その製造が高価であり(レーザー走査素子及び走査転送ミラーが特に高価な構成要素である)、サイズが大型であり、そして多数の光学部品により光学効率が低い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、眼球の網膜を照射する装置が提供され、この装置は:
照射装置と;
レンズ系と;
照射転送装置とを具え、
照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与え、
照射転送装置は2つの焦点を有し、レンズ系の見掛けの点光源は、照射転送装置の第1焦点に設けられ、眼球は、照射転送装置の第2焦点に置かれ、照射転送装置が、見掛けの点光源からの入射照射を眼球内に転送して、網膜を照射する。
【0005】
レンズ系は、レンズ系内に位置する見掛けの焦点を含むことができる。レンズ系は複数のレンズ素子を具えることができる。見掛けの焦点は、レンズ系の最外部のレンズ内に位置付けることができる。見掛けの焦点と見掛けの点光源とは一致する。
【0006】
照射装置とレンズ系とが組み合わさって、網膜の領域を照射する。即ち、照射装置及びレンズ系は、網膜の二次元部分を照射することができる。
【0007】
眼球の瞳孔点を、照射転送装置の第2焦点に置くことができる。
【0008】
眼球の前方結節点を、照射転送装置の第2焦点に置くことができる。
【0009】
照射装置及びレンズ系は、見掛けの点光源が静止するように構成することができる。これにより、最大の入射照射が瞳孔点で眼球内に転送されることが保証される。
【0010】
レンズ系は、広角レンズを含むことができる。広角レンズは、30度〜180度の視野角(FOV:field of view)を有することができる。広角レンズは、90度〜160度のFOVを有することが好ましい。広角レンズは、120度のFOVを有することが、より好ましい。レンズ系は、魚眼レンズを具えるか魚眼レンズで構成することができる。
【0011】
レンズ系は、複数のレンズ素子を具えることができる。レンズ系は、所望のFOVを達成するため、及び/または可視スペクトル全体にわたる収色性を達成するために必要な任意数及び/または任意種類のレンズを具えることができる。
【0012】
見掛けの点光源は、複数のレンズ素子のうち、いずれのレンズ素子内にも位置することができる。見掛けの点光源は、照射転送装置に対面する最外部のレンズ素子内に位置することが好ましい。
【0013】
照射転送装置は、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を具えることができる。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0014】
上記装置は、照射中継装置をさらに具えることができる。照射中継装置は、2つの焦点を具えることができる。照射中継装置の一方の焦点は、照射転送装置の一方の焦点と一致することができ、照射中継装置の他方の焦点は、照射装置及びレンズ系の見掛けの点光源と一致することができる。この構成では、照射中継装置が、照射転送装置とレンズ系との間に配置される。ここでも、照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与え、見掛けの点光源は、照射中継装置の第1焦点に位置し、照射中継装置の第2焦点は、照射転送装置の第1焦点と一致する。ここでも、眼球の網膜は照射転送装置によって照射され、照射転送装置は、その第1焦点から、その第2焦点にある眼球の瞳孔点へ照射を転送する。
【0015】
照射中継装置は、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を具えることができる。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0016】
照射中継装置は、照射転送装置と同じ幾何学的形状を有する。
【0017】
照射中継装置は主軸を有し、この主軸は、照射中継装置の2つの焦点を結ぶ直線上にある。照射転送装置も主軸を有し、この主軸は、照射転送装置の2つの焦点を結ぶ直線上にある。照射転送装置及び照射中継装置は、各装置の主軸が平行及び/または同一直線になるように配置することができる。この配置によって、照射転送装置によって導入される歪みが修正される。照射中継装置の幾何学的形状が照射転送装置の幾何学的形状と同じであるので、歪みが相殺されるか、少なくとも部分的に修正される。
【0018】
照射装置は光源を含むことができる。光源は、コリメート光(平行光)を供給することができる。
【0019】
光源は、レーザー、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)、ダイオードレーザー、コリメート白熱ランプ、フラッシュ(閃光)または照明装置、あるいはDLP(登録商標)(Digital Light Processing:デジタル光学処理)投射装置を含むことができる。
【0020】
光源は、1つ以上の異なる波長の照射を与えることができる。光源は、赤色光照射(約650nm)及び/または緑色光照射(約510nm)を与えることができる。
【0021】
光源は、450nm〜1000nmの波長の光を供給するように構成することができる。光源は、488nm〜700nmの波長の光を供給するように構成できることが好ましい。光源が、515nm〜650nmの波長の光を供給することが、より好ましい。
【0022】
光源は、500nW〜1Wの出力の光を供給するように構成することができる。
【0023】
光源は、異なる波長の1つ以上の光源を含むことができる。
【0024】
光源は、供給する光の波長が可変であるように構成することができる。
【0025】
光源は、供給する光の出力が可変であるように構成することができる。
【0026】
照射装置は、眼球の網膜をコリメート光で走査する二次元走査装置を含むことができる。この構成では、照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの二次元コリメート光走査を行う。
【0027】
二次元走査装置は、第1走査要素及び第2走査要素を具えることができる。
【0028】
第1及び第2走査要素は、振動機構を具えることができる。この振動機構は、共振スキャナとすることができる。
【0029】
第1及び第2走査要素は、振動平面鏡を具えることができる。この振動平面鏡は、ガルバノミラーとすることができる。
【0030】
第1及び第2走査要素は、回転機構を具えることができる。この回転機構は、回転ポリゴンミラーとすることができる。
【0031】
第1及び第2走査要素は、直線走査要素を具えることができる。この直線走査要素は、レーザー線スキャナを具えることができる。レーザー線は、回折光学素子、円柱レンズ、またはレーザー線を生成する他の既知の手段によって発生することができる。
【0032】
第1及び第2走査要素は、上述した振動機構、回転機構、または直線走査要素の組合せを具えることができる。
【0033】
二次元走査装置は、2つの回転軸を有する微小電気機械システム(MEMS:Micro-electromechanical System)走査素子とすることができる。しかし、二次元走査装置は、少なくとも2軸で回転することのできるあらゆる適切な装置とすることができることは明らかであり、これらの軸は直交することが好ましい。好適には、この走査装置は、高速(即ち、5kHz以上)で動作することができ、かつ、大きい走査振幅(即ち、180度まで、あるいはそれ以上)を提供すべきである。
【0034】
照射装置は、網膜からの反射光を検出する1つ以上の検出器をさらに具えることができる。網膜からの反射光を用いて、網膜の像を形成することができる。
【0035】
この光検出器は、高速の光検知器、例えばアバランシェ・フォトダイオード(電子なだれ光ダイオード、APD:Avalanche Photo Diode)、PINダイオード、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)、シリコン光電子増倍管(SPM:Silicon Photo Multiplier)、または同様の点検出器を含むことができる。
【0036】
上記装置は、得た網膜の像を表示し、記憶し、及び/または組み合わせるための、1つ以上のデータ処理装置をさらに具えることができる。
【0037】
上記装置は、当該装置を用いて第1眼球の第1網膜を照射することのできる第1位置と、当該装置を用いて第2眼球の第2網膜を照射することのできる第2位置との間を回動することができる。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、患者の各眼球の網膜を照射するシステムが提供され、このシステムは、本発明の第1の態様による装置を2つ具え、各装置が一方の眼球の網膜を照射することができる。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、眼球の網膜を照射する方法が提供され、この方法は:
照射装置を用意するステップと;
レンズ系を用意するステップと;
照射装置とレンズ系とを組み合わせて用いて、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与えるステップと;
2つの焦点を有する照射転送装置を用意するステップと;
見掛けの点光源を、照射転送装置の第1焦点に設け、眼球を、照射転送装置の第2焦点に置くステップと;
照射転送装置を用いて、見掛けの点光源からの入射照射を眼球内に転送するステップとを含む。
【0040】
レンズ系は、当該レンズ系内に位置する見掛けの焦点を含むことができる。レンズ系は複数のレンズ素子を具えることができる。見掛けの焦点は、レンズ系の最外部のレンズ内に位置付けることができる。見掛けの焦点と見掛けの点光源とは一致する。
【0041】
照射装置とレンズ系とが組み合わさって、網膜の領域を照射する。即ち、照射装置及びレンズ系は、網膜の二次元部分を照射することができる。
【0042】
眼球の瞳孔点を、照射転送装置の第2焦点に置くことができる。
【0043】
眼球の前方結節点を、照射転送装置の第2焦点に置くことができる。
【0044】
照射装置及びレンズ系は、見掛けの点光源が静止するように配置することができる。これにより、最大の入射照射が瞳孔点で眼球内に転送されることが保証される。
【0045】
レンズ系は、広角レンズを含むことができる。広角レンズは、30度〜180度の視野角(FOV)を有することができる。広角レンズは、90度〜160度のFOVを有することが好ましい。広角レンズは、120度のFOVを有することが、より好ましい。レンズ系は、魚眼レンズを具えるか魚眼レンズで構成することができる。
【0046】
レンズ系は、複数のレンズ素子を具えることができる。
【0047】
見掛けの点光源は、複数のレンズ素子のうち、いずれのレンズ素子内にも位置することができる。見掛けの点光源は、照射転送装置に対面する最外部のレンズ素子内に位置することが好ましい。
【0048】
照射転送装置は、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を具えることができる。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0049】
上記方法は、2つの焦点を具えた照射中継装置を用意するステップをさらに含むことができる。照射中継装置の一方の焦点は、照射転送装置の一方の焦点と一致することができ、照射中継装置の他方の焦点は、照射装置及びレンズ系の見掛けの点光源と一致することができる。この構成では、照射中継装置が、照射転送装置とレンズ系との間に配置される。ここでも、照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与え、見掛けの点光源は、照射中継装置の第1焦点に位置し、照射中継装置の第2焦点は、照射転送装置の第1焦点と一致する。ここでも、眼球の網膜は照射転送装置によって照射され、照射転送装置は、その第1焦点から、その第2焦点にある眼球の瞳孔点へ照射を転送する。
【0050】
照射中継装置は、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を具えることができる。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0051】
照射中継装置は、照射転送装置と同じ幾何学的形状を有する。
【0052】
照射中継装置は主軸を有し、この主軸は、照射中継装置の2つの焦点を結ぶ直線上にある。照射転送装置も主軸を有し、この主軸は、照射転送装置の2つの焦点を結ぶ直線上にある。照射転送装置及び照射中継装置は、各装置の主軸が平行及び/または同一直線になるように配置することができる。この配置によって、照射転送装置によって導入される歪みが修正される。照射中継装置の幾何学的形状が照射転送装置の幾何学的形状と同じであるので、歪みが相殺されるか、少なくとも部分的に修正される。
【0053】
照射装置は光源を含むことができる。光源は、コリメート光を供給することができる。
【0054】
光源は、レーザー、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、ダイオードレーザー、コリメート白熱ランプ、フラッシュまたは照明装置、あるいはDLP(登録商標)投射装置を含むことができる。
【0055】
光源は、1つ以上の異なる波長の照射を与えることができる。光源は、赤色光照射(約650nm)及び/または緑色光照射(約510nm)を与えることができる。
【0056】
光源は、450nm〜1000nmの波長の光を供給するように構成することができる。光源は、488nm〜700nmの波長の光を供給するように構成できることが好ましい。光源は、515nm〜650nmの波長の光を供給することが、より好ましい。
【0057】
光源は、500nW〜1Wの出力の光を供給するように構成することができる。
【0058】
光源は、異なる波長の1つ以上の光源を含むことができる。
【0059】
光源は、供給する光の波長が可変であるように構成することができる。
【0060】
光源は、供給する光の出力が可変であるように構成することができる。
【0061】
照射装置は、眼球の網膜をコリメート光で走査する二次元走査装置を含むことができる。この構成では、照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの二次元コリメート光走査を行う。
【0062】
二次元走査装置は、第1走査要素及び第2走査要素を具えることができる。
【0063】
第1及び第2走査要素は、振動機構を具えることができる。この振動機構は、共振スキャナとすることができる。
【0064】
第1及び第2走査要素は、振動平面鏡を具えることができる。この振動平面鏡は、ガルバノミラーとすることができる。
【0065】
第1及び第2走査要素は、回転機構を具えることができる。この回転機構は、回転ポリゴンミラーとすることができる。
【0066】
第1及び第2走査要素は、直線走査要素を具えることができる。この直線走査要素は、レーザー線スキャナを具えることができる。レーザー線は、回折光学素子、円柱レンズ、またはレーザー線を生成する他の既知の手段によって発生することができる。
【0067】
第1及び第2走査要素は、上述した振動機構、回転機構、または直線走査要素の組合せを具えることができる。
【0068】
二次元走査装置は、2つの回転軸を有する微小電気機械システム(MEMS)走査素子とすることができる。しかし、二次元走査装置は、少なくとも2軸で回転することのできるあらゆる適切な装置とすることができることは明らかであり、これらの軸は直交することが好ましい。好適には、この走査装置は、高速(即ち、5kHz以上)で動作することができ、かつ、大きい走査振幅(即ち、180度まで、あるいはそれ以上)を提供すべきである。
【0069】
上記方法は、1つ以上の光検出器を用意するステップ、及びこれら1つ以上の光検出器を用いて、網膜からの反射光を検出して、網膜の像を形成するステップをさらに含むことができる。この構成では、上記方法が、網膜を照射するステップ、及び網膜の像を取得するステップを実行する。
【0070】
この光検出器は、高速の光検知器、例えばアバランシェ・フォトダイオード(APD)、PINダイオード、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SPM)、または同様の点検出器を含むことができる。
【0071】
上記方法は、照射装置、レンズ系、及び照射転送装置を、第1眼球の第1網膜の照射が行われる第1位置と、第2眼球の第2網膜の照射が行われる第2位置との間で回動させるステップをさらに含むことができる。
【0072】
本発明の第4の態様によれば、眼球の網膜を撮像する装置が提供され、この装置は:
照射装置と;
レンズ系と;
光検出器と;
照射転送装置とを具え、
照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与え、
照射転送装置は2つの焦点を有し、レンズ系の見掛けの点光源は、照射転送装置の第1焦点に設けられ、眼球は、照射転送装置の第2焦点に置かれ、照射転送装置が、見掛けの点光源からの入射照射を眼球内に転送して網膜を照射し、光検出器は、網膜から反射した光を検出して、網膜の像を取得する。
【0073】
本発明の第5の態様によれば、眼球の網膜を撮像する方法が提供され、この方法は:
照射装置を用意するステップと;
レンズ系を用意するステップと;
照射装置とレンズ系とを組み合わせて用いて、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与えるステップと;
光検出器を用意するステップと;
2つの焦点を有する照射転送装置を用意するステップと;
見掛けの点光源を、照射転送装置の第1焦点に設け、眼球を、照射転送装置の第2焦点に置くステップと;
照射転送装置を用いて、見掛けの点光源からの入射照射を眼球内に転送するステップと;
光検出器を用いて、網膜から反射した光を検出して、網膜の像を生成するステップとを含む。
【0074】
本発明の第6の態様によれば、眼球の網膜をコリメート光で治療する装置が提供され、この装置は:
コリメート光照射装置と;
レンズ系と;
照射転送装置とを具え、
コリメート光照射装置とレンズ系とが組み合わさって、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射コリメート光照射を与え、
照射転送装置は2つの焦点を有し、レンズ系の見掛けの点光源は、照射転送装置の第1焦点に設けられ、眼球は、照射転送装置の第2焦点に置かれ、照射転送装置が、見掛けの点光源からの入射コリメート光照射を眼球内に転送する。
【0075】
ここでは、網膜の治療を、光線力学療法、光線剥離法、光穿孔法、光活性化、あるいは、光の相互作用を用いて、網膜の状態または構造を変化させるか、網膜構造内の化学物質の状態を変化させる他の方法を含むものと解釈する。
【0076】
本発明の第7の態様によれば、眼球の網膜をコリメート光で治療する方法が提供され、この方法は:
コリメート光照射装置を用意するステップと;
レンズ系を用意するステップと;
コリメート光照射装置とレンズ系とを組み合わせて用いて、レンズ系内に位置する見掛けの点光源からの入射照射を与えるステップと;
2つの焦点を有する照射転送装置を用意するステップと;
見掛けの点光源を、照射転送装置の第1焦点に設け、眼球を、照射転送装置の第2焦点に置くステップと;
照射転送装置を用いて、見掛けの点光源からの入射コリメート光照射を眼球内に転送するステップとを含む。
【0077】
ここでは、網膜の治療を、光線力学療法、光線剥離法、光穿孔法、光活性化、あるいは、光の相互作用を用いて、網膜の状態または構造を変化させるか、網膜構造内の化学物質の状態を変化させる他の方法を含むものと解釈する。
【0078】
以下、本発明の実施形態を、次の図面を参照しながら説明し、これらの実施形態は一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明による、目の網膜を照射し、撮像し、治療する装置の概略側面図である。
図2】目の網膜を照射し、撮像し、治療する装置の代案の概略側面図である。
図3】本発明による、目の網膜を照射し、撮像し、治療する方法を詳述するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1に、眼球14の網膜12を照射する装置10を示す。装置10は、照射装置16、レンズ系18、及び照射転送装置20を含む。
【0081】
レンズ系18は、レンズ系18内に位置する見掛けの焦点23を含むように構成されている。照射装置16及びレンズ系18は、これらが組み合わさって、レンズ系18内に位置する見掛けの点光源24からの入射照射を与えるように配置されている。レンズ系18の見掛けの焦点23は、レンズ系18の見掛けの点光源24と一致する。照射装置16がレンズ系18を照射する際に、入射照射22が、系内に位置する実際の、あるいは「現実の」点から発するように見えるので、焦点23及び点光源24は「見掛けの」と称する。即ち、入射照射22を、屈折がないものとしてレンズ系18内を遡って辿れば、入射照射22は、あたかも一点から発するように見える。このことは、もちろん広角レンズでは真実ではなく、従って、「見掛けの」という語は、焦点及び点光源の両者について用いる。見掛けの点光源24は、レンズ系18に対して静止していることが重要である。これにより、入射照射22が、見掛けの点光源24から平行移動なしに発することが保証される。
【0082】
照射装置16及びレンズ系18が発生する入射照射22は二次元であり、従って、網膜の領域を照射する(以下参照)。本明細書に図示して説明する実施形態では、入射照射22が「フラッド照射」を与え、即ち、照射装置16が網膜の領域を同時に照射する。
【0083】
照射装置16は光源26を含む。光源26はコリメート光を供給することができる。光源26は、レーザー、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、ダイオードレーザー、コリメート白熱ランプ、フラッシュまたは照明装置、あるいはDLP(登録商標)投射装置を含むことができる。
【0084】
光源26は、1つ以上の異なる波長の照射を与えることができる。この構成では、光源26は、赤色光照射(約650nm)及び/または緑色光照射(約510nm)を与えることができる。光源26は、500nW〜1Wの出力の光を供給するように構成することができる。光源26からの光の波長及び出力は、共に可変にすることができる。
【0085】
図1に示すように、レンズ系18は、入射光路28及び帰還光路30を含む。入射光路28と帰還光路30とは、ビームスプリッタ32によって分割される。本明細書に図示して説明するビームスプリッタ32は、80:20の透過/反射である。しかし、必要に応じて、他の種類のビームスプリッタを用いることができることは明らかである。
【0086】
入射光路28は、第1集束レンズ34を含み、帰還光路30は、第2及び第3集束レンズ38、40、及び集束レンズと開口の組合せ46を含む。本明細書に図示して説明する実施形態では、帰還光路30が、第2(ダイクロイック(二色性))ビームスプリッタ48も含み、ビームスプリッタ48は、網膜12から戻る反射光を分割して、第1検出器50及び第2検出器52に向ける。以下に説明するように、第1検出器50は赤色光を検出し、第2検出器52は緑色光を検出する。しかし、装置10は、2つの別個の色検出器を必ずしも含む必要はないこと、及び装置10は単一の検出器で同等に良好に機能することができることは明らかである。
【0087】
本明細書に図示して説明する実施形態では、レンズ系18が広角レンズ系であり、魚眼レンズで構成するか、魚眼レンズを含むことができる。レンズ系18は、複数のメニスカス(凹凸)レンズ素子18a〜18eを具えている。この広角レンズは、30度〜180度の視野角(FOV)を有することができる。このFOVは、約120度であることが好ましい。しかし、この広角レンズは、装置10の特定の要求に応じて、上述した範囲内のあらゆる適切な角度のFOVを有することができることは明らかである。
【0088】
照射装置16及びレンズ系18は、入射照射22が見掛けの点光源24から角度αで発するように構成することができる。角度αは約120度である(図1参照)。
【0089】
照射転送装置20は、2つの焦点20a、20bを有する。本明細書に図示して説明する実施形態では、照射転送装置20が楕円面鏡である。しかし、照射転送装置20は、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を代わりに具えることができることは明らかである。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0090】
図1に示すように、照射転送装置20及びレンズ系18は、見掛けの点光源24が照射転送装置20の第1焦点20aに設けられ、眼球14が、照射転送装置20の第2焦点20bに置かれるように配置される。より具体的には、眼球14の瞳孔点14aが、照射転送装置20の第2焦点20bに位置決めされる。
【0091】
入射照射22は、照射転送装置20を経由して被験者の眼球14に伝達される。照射装置16及びレンズ系18によって見掛けの点光源24に与えられる入射照射22は、照射転送装置20によって、被験者の眼球14の瞳孔点14aを通して結合され、こうして網膜12上に結合される。従って、装置10は、網膜12の領域の照射を行う。
【0092】
上述したように、入射照射22は、見掛けの点光源24から平行移動なしに発し、即ち、見掛けの点光源24は動作中に静止している。その結果、照射装置20の第2焦点20bを出る入射照射22も静止していることになる。従って、照射転送装置20は、入射照射22の「ポイント−ツー−ポイント(2点間)」転送を、その平行移動または欠損(クリッピング)なしに行う。照射転送装置20が、入射照射22のポイント−ツー−ポイント転送を行うので、照射転送装置20の第2焦点20bを出る入射照射22は、入射照射22が照射転送装置の第1焦点20aを出るのと同じ角度αで、即ち、約120度の角度で、第2焦点20bを出る。
【0093】
このことの結果は、例えば、入射照射22が虹彩内で「クリップ」される(欠損する)ことなしに眼球内に入る、ということになる。これにより、装置10によって照射することのできる網膜12の面積が最大になり、網膜12の超広幅の照射を実行することができる。上述したように、入射照射22は、被験者の眼球14の瞳孔点14aに約120度の角度で入射する。眼球14の瞳孔点14aにおける約120度の角度は、眼球14の中心で測った約200度の角度と同等である。従って、装置10は、120度の「外部」照射角及び200度の「内部」照射角を与えるものとして考えることができる。
【0094】
上述した照射装置16の特性は、レンズ系18及び照射転送装置20が、網膜からの反射光が装置10の同じ光路を通って伝達されて戻ることも保証する。
【0095】
眼球14の網膜12を照射する過程(プロセス)を図3に示す。図3を参照すれば、眼球14の網膜12を、次のステップによって照射することができる。(a)照射装置16を用意するステップ、(b)レンズ系18を用意するステップ、(c)照射装置16とレンズ系18とを組み合わせて用いて、レンズ系18内に位置する見掛けの点光源24からの入射照射を与えるステップ、(d)2つの焦点20a、20bを有する照射転送装置20を用意するステップ、(e)見掛けの点光源24を、照射転送装置20の第1焦点20aに設け、眼球14を、照射転送装置20の第2焦点20bに置くステップ、及び(f)照射転送装置20を用いて、見掛けの点光源24からの入射照射22を眼球14内に転送するステップ。
【0096】
上述したように、網膜12から戻る反射光は、第1及び第2検出器50、52で検出される。網膜12から戻る反射光を用いて、被験者の網膜の像を既知の方法で生成する。
【0097】
検出器50、52は、高速の光検知器、例えばアバランシェ・フォトダイオード(APD)、PINダイオード、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SPM)、または同様の点検出器を含むことができる。
【0098】
装置10はデータ処理装置も具え、データ処理装置は、取得した網膜12の像を表示し、処理し、記憶し、及び/または組み合わせる。装置10は歪み修正装置も具え、歪み修正装置は、データ処理装置の一部とすることができ、照射転送装置20によって導入された歪みを修正する。装置10は、1つ以上の研磨された平坦化素子も含むことができ、平坦化素子は、系内の焦点の収差を修正する。
【0099】
図2に、装置10の代案実施形態を示す。図1の装置10と図2の装置100との唯一の相違は、照射中継装置200が、レンズ系18と照射転送装置20との間に配置されていることである。照射中継装置200は、照射転送装置20と同じ幾何学的形状を有する。
【0100】
照射中継装置200は、2つの焦点200a、200bを有する。本明細書に図示して説明する実施形態では、照射中継装置200が楕円面鏡である。しかし、照射中継装置200は代わりに、傾斜球面鏡、非球面鏡、楕円鏡、楕円面鏡、一対のパラボラ鏡、一対の放物面鏡、またはレンズ系を具えることができることは明らかである。照射転送装置がレンズ系を具える場合、このレンズ系は2つの焦点を与えるように構成される。
【0101】
図2に示すように、照射中継装置200、照射転送装置20、及びレンズ系18は、見掛けの点光源24が、照射中継装置200の第1焦点200aに設けられ、照射中継装置200の第2焦点200bが、照射転送装置20の第1焦点20aと一致するように構成される。前述したように、被験者の眼球14は、照射転送装置20の第2焦点20bに置かれる。
【0102】
入射照射22は、照射中継装置200及び照射転送装置20を経由して被験者の眼球14に伝達される。前述したように、照射装置16及びレンズ系18によって見掛けの点光源24に与えられる入射照射22は、照射中継装置200によって照射転送装置20に結合され、照射転送装置20は、入射照射22を、被験者の眼球14の瞳孔点14aを通して網膜12に結合する。
【0103】
照射中継装置200が、照射転送装置20と同じ幾何学的形状を有するものとすれば、その結果、照射中継装置200は、入射照射22のポイント−ツー−ポイント転送も、その透過または欠損なしに行う。従って、照射中継装置200の第2焦点200bを出る入射照射22は、この入射照射が照射中継装置200の第1焦点200aから発する角度と同じ角度αで、第2焦点200bから発する。従って、前述したように、照射転送装置20の第1焦点20a(または、照射中継装置200の第2焦点200b)から出る入射照射22は、入射照射22が照射転送装置20の第2焦点20bから出て眼球14内に入る角度と同じ角度αで発する、ということになる。従って、入射照射22はここでも、欠損することなしに眼球14に入り、こうして、装置10によって照射することのできる網膜の面積を最大にする。ここでも、前述したように、装置100は、網膜の120度の外部照射角(200度の内部照射角)を与える。
【0104】
照射中継装置200は主軸を有し、この主軸は、2つの焦点(200a、200b)を結ぶ直線上にある。照射転送装置20も主軸を有し、この主軸は、2つの焦点(20a、20b)を結ぶ直線上にある。照射転送装置20及び照射中継装置200は、各装置の主軸が同一直線になるように配置することができる。
【0105】
照射中継装置200の目的は、照射転送装置20によって導入される歪みを修正することにある。照射中継装置200の幾何学的形状は照射転送装置の幾何学的形状と同じであるので、歪みを相殺するか、少なくとも部分的に修正することができる。照射中継装置200及び照射転送装置20の配置は、照射中継装置200の主軸(即ち、当該装置の2つの焦点を結ぶ直線)が、照射転送装置20の主軸と同一直線になるようにする。この配置では、歪みが対称性によって相殺される。
【0106】
装置10は歪み修正装置も具え、歪み修正装置はデータ処理装置の一部とすることができ、照射転送装置20によって導入される歪みを修正する。
【0107】
網膜12から戻る反射光は、図1の装置10に関して上述したのと同じ方法で検出される。従って、装置100は、眼球14の網膜12を、装置10に関して上述したのと同じ方法で撮像することができる。
【0108】
装置10、100は、被験者の眼球14の網膜12を照射して撮像するために使用するものとして以上に図示して説明してきたが、装置10、100は、装置10、100を用いて第1眼球の第1網膜を照射して撮像することのできる第1位置と、装置10、100を用いて第2眼球の第2網膜を照射して撮像することのできる第2位置との間を回動することができることは明らかである。この構成では、装置10、100を用いて、被験者を移動させる必要なしに、被験者の両眼を照射して撮像することができる。その代わりに、患者の各眼球の網膜を照射して撮像するシステムを提供することができ、このシステムは2つの装置10、100を具え、各装置10、100を用いて、被験者の各眼球を照射して撮像する。
【0109】
装置10、100は、眼球14の網膜12を照射して撮像するために用いるものとして上述してきたが、装置10、100は必ずしも、網膜12の像を生成する必要がないことは明らかである。即ち、装置10、100を用いて、像を取得せずに、即ち、網膜12からの反射光を検出せずに、網膜12を単に照射することができる。従って、装置10、100を用いて、網膜12を光で照射することによって、眼球14の網膜12を治療することができる。
【0110】
本発明の装置10、100は、従来の独立したレーザー走査素子(即ち、間隔をおいて分離した2つの別個の一次元走査素子、例えば水平走査用ポリゴンミラー及び垂直走査用ガルバノスキャナ)を必要としないので、走査型レーザー検眼鏡(SLO)のような既知の網膜撮像装置よりも低いコストで製造することができる。しかし、上述したように、装置10、100はこうした走査素子を用いることができる。装置10、100は、より少数の構成部品を用いるので、既知の網膜撮像装置よりも小型に製造することができる。また、本発明の装置10、100は、より少数の光学面を含み、これにより、装置10、100の光学効率が増加する。このことの結果は、目に入力される同量の出力に対して、撮像検出器における総出力が既知の方法よりも高い。上述したように、広角レンズ系18を照射転送装置20と組み合わせて設けることによって、入射照射22を眼球14の瞳孔点14aに間接的に与えることができる。このことは、入射照射の「見掛けの」点光源がレンズ系自体の中に位置して、網膜の広視野照射を行う広角レンズ系の使用を可能にする。こうして、本発明の装置10、100は、眼球14との物理的接触を回避する。患者は、網膜照射装置との物理的接触が極めて困難であると思うことが多いので、このことは有利である。
【0111】
本発明の範囲を逸脱することなしに、以上に変更及び改良を加えることができる。例えば、照射装置16は、網膜への「フラッド照射」を与える光源26を含むものとして、即ち、照射装置16が網膜12の領域を同時に照射するものとして説明してきたが、その代わりに、あるいはこれに加えて、照射装置16は、眼球14の網膜12をコリメート光で照射する二次元走査装置を含むことができる。こうした構成では、照射装置16とレンズ系18とが組み合わさって、レンズ系18内に位置する見掛けの点光源24からの二次元コリメート光走査を行う。この二次元走査装置は、第1走査要素及び第2走査要素を具えることができる。第1及び第2走査要素は、振動機構を具えることができる。この振動機構は、共振スキャナとすることができる。第1及び第2走査要素は、振動平面鏡を具えることができる。この振動平面鏡は、ガルバノミラーとすることができる。第1及び第2走査要素は、回転機構を具えることができる。この回転機構は、回転ポリゴンミラーとすることができる。第1及び第2走査要素は、直線走査要素を具えることができる。この直線走査要素はレーザー線スキャナを具えることができる。レーザー線は、回折光学素子、円柱レンズ、またはレーザー線を生成する他の既知の手段によって発生することができる。第1及び第2走査要素は、上述した振動機構、回転機構、または直線走査要素の組合せを具えることができる。その代わりに、二次元走査装置は、2つの回転軸を有する微小電気機械システム(MEMS)走査素子とすることができる。しかし、二次元走査装置は、少なくとも2軸で回転することのできるあらゆる適切な装置とすることができることは明らかであり、これらの軸は直交することが好ましい。好適には、この走査装置は、高速(即ち、5kHz以上)で動作することができ、かつ、大きい走査振幅(即ち、180度まで、あるいはそれ以上)を提供すべきである。この構成では、装置10、100が、網膜全体にわたってコリメート光を走査することによって、眼球14の網膜12を照射する。この構成では、走査装置からのコリメート光の波長、出力レベル、及び可変性を、フラッド照射装置について説明したのと同様にすることができる。反射したコリメート光を上述した方法で検出して、網膜12の像を生成することができる。
【0112】
さらに、装置10、100は、1つの照射装置16を具えているものとして以上に図示して説明してきたが、装置10、100は1つ以上の照射装置を含むことができ、これらの照射装置は、1つ以上の光源及び/または1つ以上の二次元走査装置を含むことができることは明らかである。
【0113】
また、見掛けの焦点23及び見掛けの光源24は、レンズ系18の最外部のレンズ18a内に位置するものとして以上に図示して説明してきたが、レンズ系18の構成に応じて、見掛けの焦点23及び見掛けの点光源24が、他のレンズ素子18b〜18eのうち1つの中に位置することができることは明らかである。
【0114】
さらに、レンズ系18のFOVは、約120度であるものとして上述してきたが、レンズ系18のFOVは、30度〜180度の間のあらゆる適切な角度、例えば:40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 110, 120, 130, 140, 150, 160または170度、あるいはこれらの角度間の任意の値とすることができることは明らかである。
【0115】
また、装置100は、レンズ系18と照射転送装置20との間に照射中継装置200を有するものとして以上に図示して説明してきたが、照射中継装置200は本質的に照射転送装置20と同一であるので、装置100は、照射転送装置20と眼球14との間に配置された照射中継装置を有するものとして考えることができることは明らかである。
【0116】
さらに、装置10、100は、眼球14の網膜12を照射及び/または撮像するために用いるものとして上述してきたが、装置10、100を用いて、コリメート光で網膜を照射することによって、眼球の網膜を治療することができることは明らかである。この構成では、照射装置16がコリメート光源を含み、このコリメート光源を動作させて、可視の波長及び/または出力のレーザービームを生成することができる。さらに、このコリメート光源を動作させて、必要に応じて異なる波長を生成することができる。このことは、装置10、100が網膜疾患を治療することを可能にする。
【0117】
また、以上に図示して説明していないが、レンズ系18からの後方反射を最小にするために、光源26を偏光させて、戻り光路30が、開口46の前か後のいずれかに偏光子を含むか、その代わりに、2つの別個の偏光子を、第1及び第2検出器50、52の前に含むことができることは明らかである。この構成では、これらの偏光子が、レンズ系18から反射してランダムに偏光していない光を阻止することができる。
【0118】
さらに、以上に図示して説明していないが、レンズ系18及び/または照射転送装置20、200は可動にすることができる。即ち、レンズ系18及び/または照射転送装置20、200を互いに対して可動にして、網膜12を異なるFOV角で照射及び/または撮像する際の、レンズ系18内での見掛けの焦点23及び見掛けの点光源24の移動を補償することができる。網膜12を異なるFOV角で照射及び/または撮像する際に、例えば、網膜12の眼底領域を照射及び/または撮像し、次に網膜12の周囲を照射及び/または撮像する際に、レンズ系18内の見掛けの焦点23及び見掛けの点光源24を、FOV角に応じて少し移動させることができる。レンズ系18及び/または照射転送装置20、200を、これらが互いに対して可動であるように配置することによって、レンズ系18の見掛けの焦点23及び見掛けの点光源24が常に、照射転送装置20、200の第1焦点20a、200aに置かれることが保証される。上述したように、これにより、入射照射22が眼球に入る際に虹彩によって欠損することが防止される。
図1
図2
図3