(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の潤滑油組成物は、(A)尿素アダクト値が4質量%以下であり且つ粘度指数が100以上である鉱油系基油(以下、場合により「本発明に係る鉱油系基油」または「(A)成分」という。)と、(B)エステル系基油(以下、場合により「(B)成分」という。)と、(C)粘度指数向上剤(以下、場合により「(C)成分」という。)とを含有する。
【0022】
本発明に係る鉱油系基油の尿素アダクト値は、粘度−温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善する観点から、上述の通り4質量%以下であることが必要であり、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。また、鉱油系基油の尿素アダクト値は、0質量%でも良い。しかし、十分な低温粘度特性と、より粘度指数の高い鉱油系基油を得ることができ、また脱ろう条件を緩和して経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。
【0023】
本発明に係る鉱油系基油の粘度指数は、粘度−温度特性の観点から、上述の通り100以上であることが必要であり、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは125以上、特に好ましくは130以上である。
【0024】
本発明に係る鉱油系基油を製造するに際し、ノルマルパラフィン、またはノルマルパラフィンを含有するワックスを含有する原料油を用いることができる。原料油は、鉱物油または合成油のいずれであってもよく、あるいはこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
本発明で用いられる原料油は、ASTM D86またはASTM D2887に規定する潤滑油範囲で沸騰するワックス含有原料であることが好ましい。原料油のワックス含有率は、原料油全量を基準として、好ましくは50質量%以上100質量%以下である。原料のワックス含有率は、核磁気共鳴分光法(ASTM D5292)、相関環分析(n−d−M)法(ASTM D3238)、溶剤法(ASTM D3235)などの分析手法によって測定することができる。
【0026】
ワックス含有原料としては、例えば、ラフィネートのような溶剤精製法に由来するオイル、部分溶剤脱ロウ油、脱瀝油、留出物、減圧ガスオイル、コーカーガスオイル、スラックワックス、フーツ油、フィッシャー−トロプシュ・ワックスなどが挙げられ、これらの中でもスラックワックスおよびフィッシャー−トロプシュ・ワックスが好ましい。
【0027】
スラックワックスは、典型的には溶剤またはプロパン脱ロウによる炭化水素原料に由来する。スラックワックスは残留油を含有し得るが、この残留油は脱油により除去することができる。フーツ油は脱油されたスラックワックスに相当するものである。
【0028】
また、フィッシャー−トロプシュ・ワックスは、いわゆるフィッシャー−トロプシュ合成法により製造される。
【0029】
さらに、ノルマルパラフィンを含有する原料油として市販品を用いてもよい。具体的には、パラフィリント(Paraflint)80(水素化フィッシャー−トロプシュ・ワックス)およびシェルMDSワックス質ラフィネート(Shell MDS Waxy Raffinate)(水素化および部分異性化中間留出物合成ワックス質ラフィネート)などが挙げられる。
【0030】
また、溶剤抽出に由来する原料油は、常圧蒸留からの高沸点石油留分を減圧蒸留装置に送り、この装置からの蒸留留分を溶剤抽出することによって得られるものである。減圧蒸留からの残渣は、脱瀝されてもよい。溶剤抽出法においては、よりパラフィニックな成分をラフィネート相に残したまま抽出相に芳香族成分を溶解する。ナフテンは、抽出相とラフィネート相とに分配される。溶剤抽出用の溶剤としては、フェノール、フルフラールおよびN−メチルピロリドンなどが好ましく使用される。溶剤/油比、抽出温度、抽出されるべき留出物と溶剤との接触方法などを制御することによって、抽出相とラフィネート相との分離の程度を制御することができる。さらに原料として、より高い水素化分解能を有する燃料油水素化分解装置を使用し、燃料油水素化分解装置から得られるボトム留分を用いてもよい。
【0031】
上記の原料油について、得られる被処理物の尿素アダクト値が4質量%以下且つ粘度指数が100以上となるように、水素化分解/水素化異性化を行う工程を経ることによって、本発明に係る鉱油系基油を得ることができる。水素化分解/水素化異性化工程は、得られる被処理物の尿素アダクト値および粘度指数が上記条件を満たせば特に制限されない。
本発明における好ましい水素化分解/水素化異性化工程は、
ノルマルパラフィンを含有する原料油について、水素化処理触媒を用いて水素化処理する第1工程と、
第1工程により得られる被処理物について、水素化脱ロウ触媒を用いて水素化脱ロウする第2工程と、
第2工程により得られる被処理物について、水素化精製触媒を用いて水素化精製する第3工程とを備える。
【0032】
なお、従来の水素化分解/水素化異性化においても、水素化脱ロウ触媒の被毒防止のための脱硫・脱窒素を目的として、水素化脱ロウ工程の前段に水素化処理工程が設けられることはある。これに対して、本発明における第1工程(水素化処理工程)は、第2工程(水素化脱ロウ工程)の前段で原料油中のノルマルパラフィンの一部(例えば10質量%程度、好ましくは1〜10質量%)を分解するために設けられたものであり、当該第1工程においても脱硫・脱窒素は可能であるが、従来の水素化処理とは目的を異にする。かかる第1工程を設けることは、第3工程後に得られる被処理物(鉱油系基油)の尿素アダクト値を確実に4質量%以下とする上で好ましい。
【0033】
上記第1工程で用いられる水素化触媒としては、6族金属、8−10族金属、およびそれらの混合物を含有する触媒などが挙げられる。好ましい金属としては、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルトおよびそれらの混合物が挙げられる。水素化触媒は、これらの金属を耐熱性金属酸化物担体上に担持した態様で用いることができ、通常、金属は担体上で酸化物または硫化物として存在する。また、金属の混合物を用いる場合は、金属の量が触媒全量を基準として30質量%以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。金属酸化物担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアなどの酸化物が挙げられ、中でもアルミナが好ましい。好ましいアルミナは、γ型またはβ型の多孔質アルミナである。金属の担持量は、触媒全量を基準として、0.5〜35質量%の範囲であることが好ましい。また、9−10族金属と6族金属との混合物を用いる場合には、9族または10族金属のいずれかが、触媒全量を基準として、0.1〜5質量%の量で存在し、6族金属は5〜30質量%の量で存在することが好ましい。金属の担持量は、原子吸収分光法、誘導結合プラズマ発光分光分析法または個々の金属について、ASTMで指定された他の方法によって測定されてもよい。
【0034】
金属酸化物担体の酸性は、添加物の添加、金属酸化物担体の性質の制御(例えば、シリカ−アルミナ担体中へ組み入れられるシリカの量の制御)などによって制御することができる。添加物の例には、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類酸化物、およびマグネシアが挙げられる。ハロゲンのような助触媒は、一般に金属酸化物担体の酸性を高めるが、イットリアまたはマグネシアのような弱塩基性添加物はかかる担体の酸性を弱くする傾向がある。
【0035】
水素化処理条件に関し、処理温度は、好ましくは150〜450℃、より好ましくは200〜400℃であり、水素分圧は、好ましくは1400〜20000kPa、より好ましくは2800〜14000kPaであり、液空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜10hr
−1、より好ましく0.1〜5hr
−1であり、水素/油比は、好ましくは50〜1780m
3/m
3、より好ましくは89〜890m
3/m
3である。なお、上記の条件は一例であり、第3工程後に得られる被処理物の尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすための第1工程における水素化処理条件は、原料、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
【0036】
第1工程において水素化処理された後の被処理物は、そのまま第2工程に供してもよいが、当該被処理物についてストリッピングまたは蒸留を行い、被処理物(液状生成物)からガス生成物を分離除去する工程を、第1工程と第2工程との間に設けることが好ましい。これにより、被処理物に含まれる窒素分および硫黄分を、第2工程における水素化脱ロウ触媒の長期使用に影響を及ぼさないでレベルにまで減らすことができる。ストリッピング等による分離除去の対象は主として硫化水素およびアンモニアのようなガス異物であり、ストリッピングはフラッシュドラム、分留器などの通常の手段によって行うことができる。
【0037】
また、第1工程における水素化処理の条件がマイルドである場合には、使用する原料によって残存する多環芳香族分が通過する可能性があるが、これらの異物は、第3工程における水素化精製により除去されてもよい。
【0038】
また、第2工程で用いられる水素化脱ロウ触媒は、結晶質または非晶質のいずれの材料を含んでもよい。結晶質材料としては、例えば、アルミノシリケート(ゼオライト)またはシリコアルミノホスフェート(SAPO)を主成分とする、10または12員環通路を有するモレキュラーシーブが挙げられる。ゼオライトの具体例としては、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、ITQ−13、MCM−68、MCM−71などが挙げられる。また、アルミノホスフェートの例としては、ECR−42が挙げられる。モレキュラーシーブの例としては、ゼオライトベータ、およびMCM−68が挙げられる。これらの中でも、ZSM−48、ZSM−22およびZSM−23から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましく、ZSM−48が特に好ましい。モレキュラーシーブは好ましくは水素形にある。水素化脱ロウ触媒の還元は、水素化脱ロウの際にその場で起こり得るが、予め還元処理が施された水素化脱ロウ触媒を水素化脱ロウに供してもよい。
【0039】
また、水素化脱ロウ触媒の非晶質材料としては、3族金属でドープされたアルミナ、フッ化物化アルミナ、シリカ−アルミナ、フッ化物化シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナなどが挙げられる。
【0040】
脱ロウ触媒の好ましい態様としては、二官能性、すなわち、少なくとも1つの6族金属、少なくとも1つの8−10族金属、またはそれらの混合物である金属水素添加成分が装着されたものが挙げられる。好ましい金属は、Pt、Pdまたはそれらの混合物などの9−10族貴金属である。これらの金属の装着量は、触媒全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%である。触媒調製および金属装着方法としては、例えば分解性金属塩を用いるイオン交換法および含浸法が挙げられる。
【0041】
なお、モレキュラーシーブを用いる場合、水素化脱ロウ条件下での耐熱性を有するバインダー材料と複合化してもよく、またはバインダーなし(自己結合)であってもよい。バインダー材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカとチタニア、マグネシア、トリア、ジルコニアなどのような他の金属酸化物との二成分の組合せ、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−マグネシアなどのような酸化物の三成分の組合せなどの無機酸化物が挙げられる。水素化脱ロウ触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒全量を基準として、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは35〜100質量%である。水素化脱ロウ触媒は、噴霧乾燥、押出などの方法によって形成される。水素化脱ロウ触媒は、硫化物化または非硫化物化した態様で使用することができ、硫化物化した態様が好ましい。
【0042】
水素化脱ロウ条件に関し、温度は好ましくは250〜400℃、より好ましくは275〜350℃であり、水素分圧は好ましくは791〜20786kPa(100〜3000psig)、より好ましくは1480〜17339kPa(200〜2500psig)であり、液空間速度は好ましくは0.1〜10hr
−1、より好ましくは0.1〜5hr
−1であり、水素/油比は好ましくは45〜1780m
3/m
3(250〜10000scf/B)、より好ましくは89〜890m
3/m
3(500〜5000scf/B)である。なお、上記の条件は一例であり、第3工程後に得られる被処理物の尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすための第2工程における水素化脱ロウ条件は、原料、触媒、装置等の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
【0043】
第2工程で水素化脱ロウされた被処理物は、第3工程における水素化精製に供される。水素化精製は、残留ヘテロ原子および色相体の除去に加えて、オレフィンおよび残留芳香族化合物を水素化により飽和することを目的とするマイルドな水素化処理の一形態である。第3工程における水素化精製は、脱ロウ工程とカスケード式で実施することができる。
【0044】
第3工程で用いられる水素化精製触媒は、6族金属、8−10族金属またはそれらの混合物を金属酸化物担体に担持させたものであることが好ましい。好ましい金属としては、貴金属、特に白金、パラジウムおよびそれらの混合物が挙げられる。金属の混合物を用いる場合、金属の量が触媒を基準にして30質量%もしくはそれ以上であるバルク金属触媒として存在してもよい。触媒の金属含有率は、非貴金属については20質量%以下、貴金属については1質量%以下が好ましい。また、金属酸化物担体としては、非晶質または結晶質酸化物のいずれであってもよい。具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアのような低酸性酸化物が挙げられ、アルミナが好ましい。芳香族化合物の飽和の観点からは、多孔質担体上に比較的強い水素添加機能を有する金属が担持された水素化精製触媒を用いることが好ましい。
【0045】
好ましい水素化精製触媒として、M41Sクラスまたは系統の触媒に属するメソ細孔性材料を挙げることができる。M41S系統の触媒は、高いシリカ含有率を有するメソ細孔性材料であり、具体的には、MCM−41、MCM−48およびMCM−50が挙げられる。かかる水素化精製触媒は15〜100Åの細孔径を有するものであり、MCM−41が特に好ましい。MCM−41は、一様なサイズの細孔の六方晶系配列を有する無機の多孔質非層化相である。MCM−41の物理構造は、ストローの開口部(細孔のセル径)が15〜100オングストロームの範囲であるストローの束のようなものである。MCM−48は、立方体対称を有し、MCM−50は、層状構造を有する。MCM−41は、メソ細孔性範囲の異なるサイズの細孔開口部で製造することができる。メソ細孔性材料は、8族、9族または10族金属の少なくとも1つである金属水素添加成分を有してもよく、金属水素添加成分としては、貴金属、特に10族貴金属が好ましく、Pt、Pdまたはそれらの混合物が最も好ましい。
【0046】
水素化精製の条件に関し、温度は好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜250℃であり、全圧は好ましくは2859〜20786kPa(約400〜3000psig)であり、液空間速度は好ましくは0.1〜5hr
−1、より好ましくは0.5〜3hr
−1であり、水素/油比は好ましくは44.5〜1780m
3/m
3(250〜10,000scf/B)である。なお、上記の条件は一例であり、第3工程後に得られる被処理物の尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすための第3工程における水素化生成条件は、原料や処理装置の相違に応じて適宜選定することが好ましい。
【0047】
また、第3工程後に得られる被処理物については、必要に応じて、蒸留等により所定の成分を分離除去してもよい。
【0048】
上記の製造方法により得られる本発明に係る鉱油系基油においては、尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たせば、その他の性状は特に制限されないが、本発明に係る鉱油系基油は以下の条件を更に満たすものであることが好ましい。
【0049】
本発明に係る鉱油系基油における飽和分の含有量は、鉱油系基油全量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。また、当該飽和分に占める環状飽和分の割合は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。飽和分の含有量および当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度−温度特性および熱・酸化安定性を達成することができ、また、当該鉱油系基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を鉱油系基油中に十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能をより高水準で発現させることができる。更に、飽和分の含有量および当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、鉱油系基油自体の摩擦特性を改善することができ、その結果、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができる。
【0050】
なお、飽和分の含有量が90質量%未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が不十分となる傾向にある。また、飽和分に占める環状飽和分の割合が0.1質量%未満であると、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に、当該添加剤の溶解性が不十分となり、鉱油系基油中に溶解保持される当該添加剤の有効量が低下するため、当該添加剤の機能を有効に得ることができなくなる傾向にある。更に、飽和分に占める環状飽和分の割合が50質量%を超えると、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0051】
本発明において、飽和分に占める環状飽和分の割合が0.1〜50質量%であることは、飽和分に占める非環状飽和分が99.9〜50質量%であることと等価である。ここで、非環状飽和分にはノルマルパラフィンおよびイソパラフィンの双方が包含される。本発明に係る鉱油系基油に占めるノルマルパラフィンおよびイソパラフィンの割合は、尿素アダクト値が上記条件を満たせば特に制限されないが、イソパラフィンの割合は、鉱油系基油全量基準で、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは60〜99.9質量%、更に好ましくは70〜99.9質量%、特に好ましくは80〜99.9質量%である。鉱油系基油に占めるイソパラフィンの割合が前記条件を満たすことにより、粘度−温度特性および熱・酸化安定性をより向上させることができ、また、当該鉱油系基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能を一層高水準で発現させることができる。
【0052】
なお、本発明でいう飽和分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定される値(単位:質量%)を意味する。
【0053】
また、本発明でいう飽和分に占める環状飽和分および非環状飽和分の割合とは、それぞれASTM D 2786−91に準拠して測定されるナフテン分(測定対象:1環〜6環ナフテン、単位:質量%)およびアルカン分(単位:質量%)を意味する。
【0054】
また、本発明でいう鉱油系基油中のノルマルパラフィンの割合とは、前記ASTM D 2007−93に記載された方法により分離・分取された飽和分について、以下の条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、当該飽和分に占めるノルマルパラフィンの割合を同定・定量したときの測定値を、鉱油系基油全量を基準として換算した値を意味する。なお、同定・定量の際には、標準試料として炭素数5〜50のノルマルパラフィンの混合試料が用いられ、飽和分に占めるノルマルパラフィンは、クロマトグラムの全ピーク面積値(希釈剤に由来するピークの面積値を除く)に対する各ノルマルパラフィンに相当に相当するピーク面積値の合計の割合として求められる。
(ガスクロマトグラフィー条件)
カラム:液相無極性カラム(長さ25mm、内径0.3mmφ、液相膜厚さ0.1μm)
昇温条件:50℃〜400℃(昇温速度:10℃/min)
キャリアガス:ヘリウム(線速度:40cm/min)
スプリット比:90/1
試料注入量:0.5μL(二硫化炭素で20倍に希釈した試料の注入量)
【0055】
また、鉱油系基油中のイソパラフィンの割合とは、前記飽和分に占める非環状飽和分と前記飽和分に占めるノルマルパラフィンとの差を、鉱油系基油全量を基準として換算した値を意味する。
【0056】
飽和分の分離方法、あるいは環状飽和分、非環状飽和分等の組成分析の際には、同様の結果が得られる類似の方法を使用することができる。例えば、上記の他、ASTM D 2425−93に記載の方法、ASTM D 2549−91に記載の方法、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による方法、あるいはこれらの方法を改良した方法等を挙げることができる。
【0057】
なお、本発明に係る鉱油系基油において、原料として、燃料油水素化分解装置から得られるボトム留分を用いた場合には、飽和分の含有量が90質量%以上、該飽和分に占める環状飽和分の割合が、30〜50質量%、該飽和分に占める非環状飽和分の割合が50〜70質量%、鉱油系基油中のイソパラフィンの割合が40〜70質量%、粘度指数が100〜135、好ましくは120〜130の基油が得られるが、尿素アダクト値が上記条件を満たすことで、本願発明の効果、特に−40℃におけるMRV粘度を20000mPa・s以下、特に10000mPa・s以下という優れた低温粘度特性を有する潤滑油組成物を得ることができる。また、本発明に係る鉱油系基油において、原料としてワックス含有量が高い原料(例えばノルマルパラフィン含有量が50質量%以上)であるスラックワックス、フィッシャー−トロプシュ・ワックスを用いた場合には、飽和分の含有量が90質量%以上、該飽和分に占める環状飽和分の割合が、0.1〜40質量%、該飽和分に占める非環状飽和分の割合が60〜99.9質量%、鉱油系基油中のイソパラフィンの割合が60〜99.9質量%、粘度指数が100〜170、好ましくは135〜160の基油が得られるが、尿素アダクト値が上記条件を満たすことで、本願発明の効果、特に−40℃におけるMRV粘度を12000mPa・s以下、特に7000mPa・s以下という高粘度指数と低温粘度特性に極めて優れた特性を有する潤滑油組成物を得ることができる。
【0058】
また、本発明に係る鉱油系基油における芳香族分は、鉱油系基油全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.05〜3質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%、特に好ましくは0.1〜0.5質量%である。芳香族分の含有量が上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、更に、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、本発明に係る鉱油系基油は芳香族分を含有しないものであってもよいが、芳香族分の含有量を0.05質量%以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0059】
なお、ここでいう芳香族分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定された値を意味する。芳香族分には、通常、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレンおよびこれらのアルキル化物、更にはベンゼン環が四環以上縮合した化合物、ピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ原子を有する芳香族化合物などが含まれる。
【0060】
また、本発明に係る鉱油系基油の%C
pは、好ましくは80以上、より好ましくは82〜99、更に好ましくは85〜98、特に好ましくは90〜97である。鉱油系基油の%C
pが80未満の場合、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、鉱油系基油の%C
pが99を超えると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
【0061】
また、本発明に係る鉱油系基油の%C
Nは、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、より好ましくは1〜12、更に好ましくは3〜10である。鉱油系基油の%C
Nが20を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が低下する傾向にある。また、%C
Nが1未満であると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
【0062】
また、本発明に係る鉱油系基油の%C
Aは、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.1〜0.5である。鉱油系基油の%C
Aが0.7を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が低下する傾向にある。また、本発明に係る鉱油系基油の%C
Aは0であってもよいが、%C
Aを0.1以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0063】
更に、本発明に係る鉱油系基油における%C
Pと%C
Nとの比率は、%C
P/%C
Nが7以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。%C
P/%C
Nが7未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、%C
P/%C
Nは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、25以下であることが特に好ましい。%C
P/%C
Nを200以下とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0064】
なお、本発明でいう%C
P、%C
Nおよび%C
Aとは、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率、および芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。つまり、上述した%C
P、%C
Nおよび%C
Aの好ましい範囲は上記方法により求められる値に基づくものであり、例えばナフテン分を含まない鉱油系基油であっても、上記方法により求められる%C
Nが0を超える値を示すことがある。
【0065】
また、本発明に係る鉱油系基油のヨウ素価は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下であり、また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点および経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.05以上である。鉱油系基油のヨウ素価を0.5以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。なお、本発明でいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
【0066】
また、本発明に係る鉱油系基油における硫黄分の含有量は、その原料の硫黄分の含有量に依存する。例えば、フィッシャー−トロプシュ反応等により得られる合成ワックス成分のように実質的に硫黄を含まない原料を用いる場合には、実質的に硫黄を含まない鉱油系基油を得ることができる。また、鉱油系基油の精製過程で得られるスラックワックスや精ろう過程で得られるマイクロワックス等の硫黄を含む原料を用いる場合には、得られる鉱油系基油中の硫黄分は通常100質量ppm以上となる。本発明に係る鉱油系基油においては、熱・酸化安定性の更なる向上および低硫黄化の点から、硫黄分の含有量が10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。
【0067】
また、コスト低減の点からは、原料としてスラックワックス等を使用することが好ましく、その場合、得られる鉱油系基油中の硫黄分は50質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましい。なお、本発明でいう硫黄分とは、JIS K 2541−1996に準拠して測定される硫黄分を意味する。
【0068】
また、本発明に係る鉱油系基油における窒素分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。窒素分の含有量が5質量ppmを超えると、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう窒素分とは、JIS K 2609−1990に準拠して測定される窒素分を意味する。
【0069】
また、本発明に係る鉱油系基油の動粘度は、その100℃における動粘度は、好ましくは1.5〜20mm
2/s、より好ましくは2.0〜11mm
2/sである。鉱油系基油の100℃における動粘度が1.5mm
2/s未満の場合、蒸発損失の点で好ましくない。また、100℃における動粘度が20mm
2/sを超える鉱油系基油を得ようとする場合、その収率が低くなり、原料として重質ワックスを用いる場合であっても分解率を高めることが困難となるため好ましくない。
【0070】
本発明においては、100℃における動粘度が下記の範囲にある鉱油系基油を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(I)100℃における動粘度が1.5mm
2/s以上3.5mm
2/s未満、より好ましくは2.0〜3.0mm
2/sの鉱油系基油
(II)100℃における動粘度が3.0mm
2/s以上4.5mm
2/s未満、より好ましくは3.5〜4.1mm
2/sの鉱油系基油
(III)100℃における動粘度が4.5〜20mm
2/s、より好ましくは4.8〜11mm
2/s、特に好ましくは5.5〜8.0mm
2/sの鉱油系基油。
【0071】
また、本発明に係る鉱油系基油の40℃における動粘度は、好ましくは6.0〜80mm
2/s、より好ましくは8.0〜50mm
2/sである。本発明においては、40℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油留分を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(IV)40℃における動粘度が6.0mm
2/s以上12mm
2/s未満、より好ましくは8.0〜12mm
2/sの鉱油系基油
(V)40℃における動粘度が12mm
2/s以上28mm
2/s未満、より好ましくは13〜19mm
2/sの鉱油系基油
(VI)40℃における動粘度が28〜50mm
2/s、より好ましくは29〜45mm
2/s、特に好ましくは30〜40mm
2/sの鉱油系基油。
【0072】
上記鉱油系基油(I)および(IV)は、尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の鉱油系基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、粘性抵抗や撹拌抵抗を著しく低減することができる。また、流動点降下剤を配合することにより、−40℃におけるBF粘度を2000mPa・s以下とすることができる。なお、−40℃におけるBF粘度とは、JPI−5S−26−99に準拠して測定された粘度を意味する。
【0073】
また、上記鉱油系基油(II)および(V)は、尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の鉱油系基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性および潤滑性に優れる。例えば、鉱油系基油(II)および(V)においては、−35℃におけるCCS粘度を3000mPa・s以下とすることができる。
【0074】
また、上記鉱油系基油(III)および(VI)は、尿素アダクト値および粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の鉱油系基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性、熱・酸化安定性および潤滑性に優れる。
【0075】
また、本発明に係る鉱油系基油の20℃における屈折率は、鉱油系基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)の20℃における屈折率は、好ましくは1.455以下、より好ましくは1.453以下、更に好ましくは1.451以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)の20℃における屈折率は、好ましくは1.460以下、より好ましくは1.457以下、更に好ましくは1.455以下である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)の20℃における屈折率は、好ましくは1.465以下、より好ましくは1.463以下、更に好ましくは1.460以下である。屈折率が前記上限値を超えると、その鉱油系基油の粘度−温度特性および熱・酸化安定性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、当該鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0076】
また、本発明に係る鉱油系基油の流動点は、鉱油系基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、更に好ましくは−17.5℃以下である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、その鉱油系基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269−1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0077】
また、本発明に係る鉱油系基油の−35℃におけるCCS粘度は、鉱油系基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは1000mPa・s以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは3000mPa・s以下、より好ましくは2400mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、更に好ましくは1800mPa・s以下、特に好ましくは1600mPa・s以下である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは15000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下である。−35℃におけるCCS粘度が前記上限値を超えると、その鉱油系基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう−35℃におけるCCS粘度とは、JIS K 2010−1993に準拠して測定された粘度を意味する。
【0078】
また、本発明に係る鉱油系基油の−40℃におけるブルークフィールド(BF)粘度は、鉱油系基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)の−40℃におけるBF粘度は、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・sであり、更に好ましくは6000mPa・s以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)の−40℃におけるBF粘度は、好ましくは1500000mPa・s以下、より好ましくは1000000mPa・s以下である。−40℃におけるBF粘度が前記上限値を超えると、その鉱油系基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。
【0079】
なお、本発明でいう−40℃におけるブルークフィールド粘度は、JPI−5S−26−99に準拠して測定された値を意味する。
【0080】
また、本発明に係る鉱油系基油の15℃における密度(ρ
15)は、鉱油系基油の粘度グレードによるが、下記式(1)で表されるρの値以下であること、すなわちρ
15≦ρであることが好ましい。
ρ=0.0025×kv100+0.816 (1)
[式中、kv100は鉱油系基油の100℃における動粘度(mm
2/s)を示す。]
【0081】
なお、ρ
15>ρとなる場合、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0082】
例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)のρ
15は、好ましくは0.825以下、より好ましくは0.820以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)のρ
15は、好ましくは0.835以下、より好ましくは0.830以下である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)のρ
15は、好ましくは0.840以下、より好ましくは0.835以下である。
【0083】
なお、本発明でいう15℃における密度とは、JIS K 2249−1995に準拠して15℃において測定された密度を意味する。
【0084】
また、本発明に係る鉱油系基油のアニリン点(AP(℃))は、鉱油系基油の粘度グレードによるが、下記式(2)で表されるAの値以上であること、すなわちAP≧Aであることが好ましい。
A=4.3×kv100+100 (2)
[式中、kv100は鉱油系基油の100℃における動粘度(mm
2/s)を示す。]
【0085】
なお、AP<Aとなる場合、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、更には揮発防止性および低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、鉱油系基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0086】
例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)のAPは、好ましくは108℃以上、より好ましくは110℃以上である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)のAPは、好ましくは113℃以上、より好ましくは119℃以上である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)のAPは、好ましくは125℃以上、より好ましくは128℃以上である。なお、本発明でいうアニリン点とは、JIS K 2256−1985に準拠して測定されたアニリン点を意味する。
【0087】
また、本発明に係る鉱油系基油のNOACK蒸発量は、特に制限されないが、例えば、上記鉱油系基油(I)および(IV)のNOACK蒸発量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。また、上記鉱油系基油(II)および(V)のNOACK蒸発量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。また、上記鉱油系基油(III)および(VI)のNOACK蒸発量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。NOACK蒸発量が前記下限値の場合、低温粘度特性の改善が困難となる傾向にある。また、NOACK蒸発量がそれぞれ前記上限値を超えると、鉱油系基油を内燃機関用潤滑油等に用いた場合に、潤滑油の蒸発損失量が多くなり、それに伴い触媒被毒が促進されるため好ましくない。なお、本発明でいうNOACK蒸発量とは、ASTM D 5800−95に準拠して測定された蒸発損失量を意味する。
【0088】
上記構成を有する本発明に係る鉱油系基油は、粘度−温度特性および低温粘度特性に優れると共に、粘性抵抗や撹拌抵抗が低く、更には熱・酸化安定性および摩擦特性が改善されたものであり、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができるものである。また、本発明に係る鉱油系基油に添加剤が配合された場合には当該添加剤の機能(流動点降下剤による低温粘度特性向上効果、酸化防止剤による熱・酸化安定性向上効果、摩擦調整剤による摩擦低減効果、摩耗防止剤による耐摩耗性向上効果など)をより高水準で発現させることができる。そのため、本発明は、主として自動変速機、手動変速機、無断変速機、終減速機などの駆動伝達装置に用いられる潤滑油(駆動伝達装置用油)であるが、このほか、内燃機関用潤滑油、緩衝器、建設機械等の油圧装置に用いられる油圧作動油、圧縮機油、タービン油、工業用ギヤ油、冷凍機油、さび止め油、熱媒体油、ガスホルダーシール油、軸受油、抄紙機用油、工作機械油、すべり案内面油、電気絶縁油、切削油、プレス油、圧延油、熱処理油などにも好適に用いることができる。
【0089】
本発明の潤滑油組成物においては、本発明に係る鉱油系基油を単独で用いてもよく、また、本発明に係る鉱油系基油を他の鉱油系基油の1種または2種以上と併用してもよい。なお、本発明に係る鉱油系基油と他の鉱油系基油とを併用する場合、それらの混合基油中に占める本発明に係る鉱油系基油の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0090】
本発明に係る鉱油系基油と併用される他の鉱油系基油としては、特に制限されないが、例えば100℃における動粘度が1〜100mm
2/sの溶剤精製鉱油、水素化分解鉱油、水素化精製鉱油、溶剤脱ろう基油などが挙げられる。
【0091】
また、本発明の潤滑油組成物は、エステル系基油を含有する。
【0092】
エステル系基油を構成するアルコールとしては一価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル系基油を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。また、エステル系基油は、不飽和酸とアルコールのエステルの重合体であってもよい。
【0093】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のヘプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分枝状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のヘキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノール、直鎖状または分枝状のノナデカノール、直鎖状または分枝状のイコサノール、直鎖状または分枝状のヘンイコサノール、直鎖状または分枝状のドコサノール、直鎖状または分枝状のトリコサノール、直鎖状または分枝状のテトラコサノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0094】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10価の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0095】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらにエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等がより好ましい。これらの中でも、より高い熱・酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびこれらの混合物等が最も好ましい。
【0096】
また、本発明において用いるエステルを構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状または分枝状のブタン酸、直鎖状または分枝状のペンタン酸、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸、直鎖状または分枝状のペンタデカン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状または分枝状のオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のノナデカン酸、直鎖状または分枝状のイコサン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコサン酸、直鎖状または分枝状のドコサン酸、直鎖状または分枝状のトリコサン酸、直鎖状または分枝状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸;アクリル酸、メタクリル酸、直鎖状または分枝状のブテン酸、直鎖状または分枝状のペンテン酸、直鎖状または分枝状のヘキセン酸、直鎖状または分枝状のヘプテン酸、直鎖状または分枝状のオクテン酸、直鎖状または分枝状のノネン酸、直鎖状または分枝状のデセン酸、直鎖状または分枝状のウンデセン酸、直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のトリデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のペンタデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のノナデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコセン酸、直鎖状または分枝状のドコセン酸、直鎖状または分枝状のトリコセン酸、直鎖状または分枝状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、潤滑性および取扱性がより高められる点から、特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物がより好ましい。
【0097】
多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分枝状のブタン二酸、直鎖状または分枝状のペンタン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタン二酸、直鎖状または分枝状のオクタン二酸、直鎖状または分枝状のノナン二酸、直鎖状または分枝状のデカン二酸、直鎖状または分枝状のウンデカン二酸、直鎖状または分枝状のドデカン二酸、直鎖状または分枝状のトリデカン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプテン二酸、直鎖状または分枝状のオクテン二酸、直鎖状または分枝状のノネン二酸、直鎖状または分枝状のデセン二酸、直鎖状または分枝状のウンデセン二酸、直鎖状または分枝状のドデセン二酸、直鎖状または分枝状のトリデセン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン二酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0098】
エステル系基油を形成するアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されない。本発明で使用可能なエステルとしては、例えば下記のエステルを挙げることができ、これらのエステルは単独でもよく、また2種以上を組み合わせてもよい。
(a)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(b)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(c)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(d)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(e)一価アルコールおよび多価アルコールの混合物と、多塩基酸との混合エステル
(f)多価アルコールと、一塩基酸および多塩基酸の混合物との混合エステル
(g)一価アルコールおよび多価アルコールの混合物と、一塩基酸および多塩基酸の混合物との混合エステル
(h)一価アルコールと不飽和一塩基酸とのエステルの重合物
【0099】
これらの中でも、低温粘度特性および金属疲労防止性に優れていることから、(b)多価アルコールと一塩基酸とのエステル、(c)一価アルコールと多塩基酸とのエステル、または(h)一価アルコールと不飽和一塩基酸とのエステルの重合物であることが好ましく、さらに、(h)一価アルコールと不飽和一塩基酸とのエステルの重合物がより好ましい。
【0100】
本発明において、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合に得られるエステルは、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよいし、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。また、酸成分として多塩基酸を用いた場合に得られる有機酸エステルは、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよいし、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
【0101】
本発明に用いられるエステル系基油のヨウ素価は、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2、最も好ましくは0〜1である。エステル系基油のヨウ素価が前記の範囲内であると、得られる潤滑油の熱・酸化安定性が良好となる。なお、ここでいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。
【0102】
本発明に用いられるエステル系基油の動粘度については特に制限はないが、100℃における動粘度は、好ましくは10mm
2/s以上であり、より好ましくは20mm
2/s以上であり、更に好ましくは50mm
2/s以上であり、特に好ましくは200m
2/s以上、最も好ましくは500mm
2/s以上である。また、エステル系基油の動粘度は、好ましくは10000mm
2/s以下であり、より好ましくは5000mm
2/s以下であり、更に好ましくは2000mm
2/s以下である。エステル系基油の100℃における動粘度が10mm
2/s以下である場合には粘度指数向上効果に劣り、必要とする低温粘度特性が得られないおそれがある。また、エステル系基油の100℃における動粘度が10000mm
2/s以上である場合にも粘度指数向上効果に劣り、必要とする低温粘度特性が得られないおそれがある。
【0103】
本発明に用いられるエステル系基油の流動点および粘度指数には特に制限はないが、流動点は−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。粘度指数は100以上であることが好ましく、より好ましくは120以上であり、さらに好ましくは150以上であり、特に好ましくは200以上であり、最も好ましくは230以上である。
【0104】
本発明に用いられるエステル系基油は上記したエステル化合物1種類のみから構成されるものであっても良いし、また2種以上の混合物から構成されるものであってもよい。
【0105】
本発明の潤滑油組成物におけるエステル系基油の配合割合は、基油全量基準で好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上、最も好ましくは8質量%以上である。また、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。エステル系基油の配合割合が1質量%未満の場合には、必要とする低温粘度特性および金属疲労防止性が得られないおそれがあり、また80質量%を超える場合には必要とする粘度温度特性および低温粘度特性および金属疲労防止性が得られないおそれがある。
【0106】
本発明の潤滑油組成物においては、本発明に係る鉱油系基油およびエステル系基油に加えて、他の合成系基油の1種または2種以上をさらに含有してもよい。なお、本発明に係る鉱油系基油およびエステル系基油と他の合成系基油とを併用する場合、それらの混合基油中に占める本発明に係る鉱油系基油およびエステル系基油の割合((A)成分および(B)成分の含有割合の合計)は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0107】
他の合成系基油としては、ポリα−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
【0108】
ポリα−オレフィンの製法は特に制限されないが、例えば、三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素と、水、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール等)、カルボン酸またはエステルとの錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下、α−オレフィンを重合する方法が挙げられる。
【0109】
本発明に係る鉱油系基油およびエステル系基油を含んで構成される潤滑油基油(以下、「本発明に係る潤滑油基油」という。)の100℃における動粘度は、10mm
2/s以下であることが好ましく、好ましくは7mm
2/s以下、より好ましくは5mm
2/s以下、特に好ましくは4mm
2/s以下である。また、本発明に係る潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1.5mm
2/s以上、より好ましくは2mm
2/s以上、さらに好ましくは2.5mm
2/s以上、特に好ましくは3.0mm
2/s以上、最も好ましくは3.5mm
2/s以上である。鉱油系基油の100℃における動粘度が1.5mm
2/s未満の場合、蒸発損失が大きくなり、また、必要とする金属疲労防止性が得られない恐れがあるため好ましくない。また、100℃における動粘度が10mm
2/sを超えると粘度温度特性および低温粘度特性が悪化するため好ましくない。
【0110】
本発明に係る潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは120以上、より好ましくは130以上、さらに好ましくは140以上、特に好ましくは150mm
2/s以上、最も好ましくは160以上である。
【0111】
また、本発明の潤滑油組成物に含まれる粘度指数向上剤は特に制限されないが、具体的には、非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体およびポリアルキルスチレン等が挙げられ、ポリ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。本発明に係る粘度指数向上剤としては、非分散型あるいは分散型のいずれであっても良いが、非分散型であることがより好ましい。
【0112】
本発明に係るポリメタ(アクリレート)系粘度指数向上剤の好ましい態様としては、下記一般式(1)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−1)」という。)の1種または2種以上と、モノマー(M−1)以外のモノマーとを共重合させて得られる共重合体が挙げられる。
【0113】
【化1】
[上記一般式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数16以上の直鎖状または分枝状の炭化水素基を示す。]
【0114】
モノマー(M−1)と組み合わせるモノマーは任意であるが、例えば下記一般式(2)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−2)」という。)が好適である。モノマー(M−1)とモノマー(M−2)との共重合体は、いわゆる非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。
【0115】
【化2】
[上記一般式(2)中、R
3は水素原子またはメチル基を示し、R
4は炭素数1〜15の直鎖状または分枝状の炭化水素基を示す。]
【0116】
また、モノマー(M−1)およびモノマー(M−2)と組み合わせるその他のモノマーとしては、下記一般式(3)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−3)」という。)および下記一般式(4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M−4)」という)から選ばれる1種または2種以上が好適である。モノマー(M−1)とモノマー(M−3)および/または(M−4)との共重合体は、いわゆる分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。
【0117】
【化3】
[上記一般式(3)中、R
5は水素原子またはメチル基を示し、R
6は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、E
1は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基または複素環残基を示し、aは0または1を示す。]
【0118】
R
6で表される炭素数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、およびオクタデシレン基(これらアルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよい。)等が例示できる。
【0119】
また、E
1で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
【0120】
【化4】
[上記一般式(4)中、R
7は水素原子またはメチル基を示し、E
2は窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基または複素環残基を示す。]
【0121】
E
2で表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
【0122】
モノマー(M−3)、(M−4)の好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドンおよびこれらの混合物等が例示できる。
【0123】
モノマー(M−1)とモノマー(M−2)〜(M−4)との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、モノマー(M−1):モノマー(M−2)〜(M−4)=0.5:99.5〜70:30程度が好ましく、より好ましくは5:95〜50:50、さらに好ましくは10:90〜40:60である。
【0124】
本発明に係る粘度指数向上剤の製造法は任意であるが、上記の本発明に係るポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤は、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、モノマー(M−1)とモノマー(M−2)〜(M−4)の混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
【0125】
本発明に係る粘度指数向上剤のPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス)は、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは5以下である。PSSIが40を超える場合にはせん断安定性が悪くなるおそれがある。
【0126】
なお、ここでいう「PSSI」とは、ASTM D 6022−01(Standard Practice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に準拠し、ASTM D 6278−02(Test Metohd for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European Diesel Injector Apparatus)により測定されたデータに基づき計算された、ポリマーの永久せん断安定性指数(Permanent Shear Stability Index)を意味する。
【0127】
本発明に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量(M
W)は、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上であり、特に好ましくは18,000以上である。また、200,000以下であることが好ましく、より好ましくは100,000以下であり、さらに好ましくは80,000以下であり、特に好ましくは50,000以下、最も好ましくは30,000以下である。重量平均分子量が5,000未満の場合には粘度指数向上効果が小さく粘度温度特性や低温粘度特性に劣るだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が200,000を超える場合にはせん断安定性や基油への溶解性、貯蔵安定性、金属疲労防止性が悪くなるおそれがある。
【0128】
また、本発明に係る粘度指数向上剤の重量平均分子量と数平均分子量の比(M
W/M
n)は0.5〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5、更に好ましくは1.5〜3、特に好ましくは1.7〜2.5である。重量平均分子量と数平均分子量の比が0.5以下もしくは5.0以上となると、基油への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるだけでなく、粘度温度特性が悪化し、省燃費性が悪化するおそれがある。
【0129】
本発明に係る粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。粘度指数向上剤の含有量が0.1質量%より少なくなると、粘度指数向上効果や製品粘度の低減効果が小さくなることから、省燃費性の向上が図れなくなるおそれがある。また、50質量%よりも多くなると、製品コストが大幅に上昇すると共に、基油粘度を低下させる必要が出てくることから、厳しい潤滑条件(高温高せん断条件)における潤滑性能を低下させ、摩耗や焼き付き、疲労破壊等の不具合が発生原因となることが懸念される。
【0130】
なお、本発明の潤滑油組成物は、前記した好ましい粘度指数向上剤のほか、通常の一般的な非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体を、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体およびポリアルキルスチレン等をさらに含有してもよい。
【0131】
本発明の潤滑油組成物は、上記の(A)成分、(B)成分および(C)成分のみからなるものであってもよいが、さらにその性能を向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤(または極圧剤)、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0132】
金属系清浄剤としては、アルカリ金属スルホネートまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネートまたはアルカリ土類金属フェネート、およびアルカリ金属サリシレートまたはアルカリ土類金属サリシレート等の正塩、塩基正塩または過塩基性塩などが挙げられる。本発明では、これらからなる群より選ばれる1種または2種以上のアルカリ金属またはアルカリ土類金属系清浄剤、特にアルカリ土類金属系清浄剤を好ましく使用することができる。特にマグネシウム塩および/またはカルシウム塩が好ましく、カルシウム塩がより好ましく用いられる。
【0133】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0134】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0135】
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
【0136】
摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物および無灰摩擦調整剤が挙げられる。有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物あるいはモリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩など構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることができる。
【0137】
無灰摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。
【0138】
摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物または無灰摩擦調整剤のいずれか一方のみを用いてもよく、両者を併用してもよいが、無灰摩擦調整剤を用いることがより好ましい。
【0139】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0140】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、または多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0141】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
【0142】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0143】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、またはβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0144】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が0.1〜100mm
2/s未満のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0145】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれその含有量は組成物全量基準で、0.01〜10質量%である。
【0146】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、10mm
2/s以下であることが好ましく、より好ましくは8mm
2/s以下、更に好ましくは7mm
2/s以下、特に好ましくは6mm
2/s以下である。また、本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは3mm
2/s以上、より好ましくは4mm
2/s以上、さらに好ましくは5mm
2/s以上、特に好ましくは5.5mm
2/s以上である。100℃における動粘度が3mm
2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たし、金属疲労防止性が悪化するおそれがあり、10mm
2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な粘度温度特性または省燃費性能が得られないおそれがある。
【0147】
本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、50mm
2/s以下であることが好ましく、好ましくは40mm
2/s以下、より好ましくは35mm
2/s以下、特に好ましくは30mm
2/s以下、最も好ましくは25mm
2/s以下である。また、本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは10mm
2/s以上、より好ましくは12mm
2/s以上、さらに好ましくは15mm
2/s以上、特に好ましくは20mm
2/s以上である。40℃における動粘度が10mm
2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たし、金属疲労防止性が悪化するおそれがあり、50mm
2/sを超える場合には必要な低温粘度および十分な粘度温度特性または省燃費性能が得られないおそれがある。
【0148】
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、140〜300の範囲であることが好ましく、より好ましくは150以上、さらに好ましくは170以上、特に好ましくは190以上、最も好ましくは200以上である。本発明の潤滑油組成物の粘度指数が140未満の場合には、低温粘度特性が悪化するおそれがある。また、本発明の潤滑油組成物の粘度指数が300以上の場合には、低温流動性が悪化し、更に添加剤の溶解性やシール材料との適合性が不足することによる不具合が発生するおそれがある。
【0149】
本発明の潤滑油組成物の、−30℃におけるBF粘度は、1500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1400mPa・s以下、更に好ましくは1300mPa・s以下である。−30℃におけるBF粘度が1500mPa・sを超える場合には、低温粘度特性が不十分なため、必要とする省燃費性や低温始動性を達成できないおそれがある。
【0150】
本発明の潤滑油組成物の、−40℃におけるBF粘度は、4500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは4200mPa・s以下、更に好ましくは4000mPa・s以下、特に好ましくは3800mPa・s以下、最も好ましくは3500mPa・s以下である。−40℃におけるBF粘度が4500mPa・sを超える場合には、低温粘度特性が不十分なため、必要とする省燃費性や低温始動性を達成できないおそれがある。
【0151】
なお、本発明でいう−30℃および−40℃におけるブルークフィールド粘度は、JPI−5S−26−99に準拠して測定された値を意味する。
【0152】
上記の構成を有する本発明の潤滑油組成物は、優れた粘度温度特性および低温性能を有するとともに、金属疲労寿命に優れたものであり、特に自動変速機および/または無段変速機に好適に用いられるが、このほか内燃機関用潤滑油等に用いた場合にも、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0153】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0154】
[実施例1〜2、比較例1〜6]
表1に示す性状を有する基油1〜基油4およびエステル系基油(基油5)ならびに添加剤を用いて、表2に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
(基油)
基油1:水素化分解/水素化異性化基油
基油2:水素化分解/水素化異性化基油
基油3:パラフィン系水素化分解基油
基油4:パラフィン系水素化分解基油
基油5:エステル系基油(アクリル酸エステルの重合物、100℃動粘度:700mm
2/s、粘度指数:253)
(添加剤)
PMA−1:非分散型ポリメタクリレート(重量平均分子量:2万、PSSI:0)
PMA−2:非分散型ポリメタクリレート(重量平均分子量:2万、PSSI:0)
PKG−1:性能添加剤パッケージ
【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
【0157】
表1の基油のうち、基油1および基油2は下記の原料および製造方法により調製した。
[原料ワックス]
溶剤精製基油を精製する工程において減圧蒸留で分離した留分を、フルフラールで溶剤抽出した後で水素化処理し、次いで、メチルエチルケトン−トルエン混合溶剤で溶剤脱ろうした。溶剤脱ろうの際に除去され、スラックワックスとして得られたワックス分(以下、「WAX1」という)の性状を表3に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
[鉱油系基油の製造]
WAX1を原料油とし、水素化処理触媒を用いて水素化処理を行った。このとき、原料油中のノルマルパラフィンの分解率が10質量%以下となるように、反応温度および液空間速度を調整した。
【0160】
次に、上記の水素化処理により得られた被処理物について、貴金属含有量0.1〜5重量%に調整されたゼオライト系水素化脱ロウ触媒を用い、315℃〜325℃の温度範囲で水素化脱ロウを行った。
【0161】
更に、上記の水素化脱ロウにより得られた被処理物(ラフィネート)について、水素化生成触媒を用いて水素化精製を行った。その後蒸留により軽質分および重質分を分離して、表1に示す組成および性状を有する鉱油系基油を得た。また、表1中、「尿素アダクト物中のノルマルパラフィン由来成分の割合」は、尿素アダクト値の測定の際に得られた尿素アダクト物についてガスクロマトグラフィー分析を実施することによって得られたものである(以下、同様である)。
【0162】
[疲労寿命試験]
実施例1〜2、比較例1〜6の各潤滑油組成物を用い、高温転がり試験機(1410rpm、120℃、3.7GPa)で疲労寿命試験を行い、L50(50%破損確率)を求めた。得られた結果を表2に示した。
【0163】
表2より、尿素アダクト値が4質量%以下で、粘度指数100以上の鉱油系基油とエステル系基油を用いた実施例1〜2の潤滑油組成物の疲労寿命および低温粘度特性は、比較例1〜6に比べて優れていることが分かる。