(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228859
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】携帯端末
(51)【国際特許分類】
H04M 1/02 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
H04M1/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-21525(P2014-21525)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-149610(P2015-149610A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉幸
【審査官】
高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/056999(WO,A1)
【文献】
特開2010−258821(JP,A)
【文献】
特開2008−245160(JP,A)
【文献】
特開2014−022891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/02
G06F 1/16
G06F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を有する携帯端末において、
上記表示部の背面側に配置される補強用板金がインサート成形された表示部キャビネットと、
上記表示部から背面側へ延びる信号線と、
上記補強用板金の背面側に設けられたメイン基板と、
上記表示部キャビネットに形成され、上記信号線が折り曲げられて上記メイン基板側へ延びる先端が通過する信号線用開口とを備え、
上記補強用板金の上記信号線用開口周縁は、背面側へ折り曲げられて充填用凹部が形成され、インサート成形時に該充填用凹部に充填された樹脂材料によって覆われ、上記補強用板金の正面と上記充填用凹部に充填した樹脂材料の正面とが連続している
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
上記信号線用開口の周縁は、上記樹脂材料で曲面状に覆われている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において、
充電池を備え、該充電池の側面は、側面から見たときに上記充填用凹部の側壁と一部が重なっている
ことを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの表示部を有する携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、
図7に示すように、液晶ディスプレイなどの表示部102を収容する表示部キャビネット103を補強フレーム103aで補強した携帯端末101は知られている。この補強フレーム103aにより、背面側のメイン基板107や充電池106と表示部102とを仕切って表示部102を保護するようにしている。表示部102のにじみ模様を防ぐには、補強フレーム103aの表面は平坦であるのが望ましい。そして、近年の携帯電話機などの携帯端末101の薄型化の要望により、補強フレーム103aはステンレス鋼板等の板金で成形されることが知られている。
図7に示すように、表示部102から延びる信号線であるフレキシブル基板102d,102eを折り返して信号線用開口103cを通してメイン基板107に接続する必要がある。
【0003】
板金部の強度を向上させるものとしては、例えば、特許文献1のように、外面側から内面側に凹んで電子部品に当接又は近接する凹部を形成し、この凹部に樹脂部材を充填し、外面が略平面状に構成されるシールドケースが知られていている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−258821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図7に示すように、従来の携帯端末101では、補強フレーム103aである板金で信号線用開口103cの周縁を形成しているので、フレキシブル基板102d,102eが接触して損傷するおそれがある。このため、板金のエッジにフレキシブル基板102d,102eが接触しないように、信号線用開口103cを大きくせざるを得ない。そうすると、信号線用開口103cの周縁で強度が落ち、補強フレーム103aによる表示部102の保護効果が低減する。特に信号線用開口103cの角部で応力が集中しやすい。また、板金のとがったエッジをシートで覆う等の特別な対策を設ければ、部品点数及び貼付工程が増えてしまう。また、厚さが薄い板金部分でフレキシブル基板102d,102eを急激に折り曲げなければならず、フレキシブル基板102d,102eの破損等の不具合につながるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献1のものは、単に凹部に樹脂を充填してシールドケースの強度を向上させているだけで、信号線の損傷を防ぐことはできない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、信号線用開口周縁の強度を向上させると共に、信号線用開口を通過する信号線が損傷しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、補強用板金の信号線用開口の周縁に充填用凹部を設け、この充填用凹部を樹脂材料で正面側が平らになるように覆うようにした。
【0009】
具体的には、本発明では、表示部を有する携帯端末を前提とし、
上記携帯端末は、
上記表示部の背面側に配置される補強用板金がインサート成形された表示部キャビネットと、
上記表示部から背面側へ延びる信号線と、
上記補強用板金の背面側に設けられたメイン基板と、
上記表示部キャビネットに形成され、上記信号線が折り曲げられて上記メイン基板側へ延びる先端が通過する信号線用開口とを備えており、
上記補強用板金の上記信号線用開口周縁は、背面側へ折り曲げられて充填用凹部が形成され、インサート成形時に該充填用凹部に充填された樹脂材料によって覆われ、上記補強用板金の正面と上記充填用凹部に充填した樹脂材料の正面とが連続している。
【0010】
上記の構成によると、補強用板金の信号線用開口周縁を充填用凹部に充填した樹脂材料によって覆っているので、信号線用開口周縁の厚さを保って強度が向上する。補強用板金の正面と充填用凹部に充填した樹脂材料の正面とを連続させることにより、凹凸があることによる表示部への影響を防いでいる。信号線用開口周縁の厚さが厚くなることで、信号線の折り曲げを小さな曲げ半径で行うことがなくなるので、信号線用開口を必要以上に大きくすることがない。また、信号線は、直接に補強用板金の端面に接触しないので、痛みにくい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、補強用板金の信号線用開口周縁に、背面側へ折り曲げて充填用凹部を形成してインサート成形時に充填した樹脂材料によって覆い、補強用板金の正面と充填用凹部に充填した樹脂材料の正面とを連続させるようにしたことにより、簡単な構成で、信号線用開口周縁の強度を向上させると共に、信号線用開口を通過する信号線が損傷しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)が本発明の実施形態1に係る携帯電話機を示す正面図で、(b)が表示部側キャビネットを示す正面図である。
【
図4】正面側キャビネットにおける信号線用開口及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る
図1相当図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係る
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1〜
図3は本発明の実施形態1の携帯端末としての携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、例えばタッチパネル及び液晶ディスプレイを含む表示部2を収容する表示部側キャビネット3と、この表示部側キャビネット3の背面に結合される背面側キャビネット4と、この背面側キャビネット4を背面から覆うリアカバー5とを備えている。表示部2は、カバーガラス2a(本実施形態ではタッチパネルを含むが、別体でもよい)、液晶ユニット2cとを有し、タッチパネルからタッチパネル用フレキシブル基板2dが延び、液晶ユニット2cから液晶用フレキシブル基板2eが延びている。
【0015】
表示部側キャビネット3と背面側キャビネット4との間の収容空間には、例えば、矩形板状の充電池6と、メイン基板ユニット7とが収容されている。表示部2の裏側には、液晶のにじみ模様(プーリング)を防止するクッションシート8が貼り付けられているが、このクッションシート8は、なくてもよい。タッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eは、表示部2とメイン基板ユニット7とを電気的に接続する信号線の役割を果たす。メイン基板ユニット7は、例えばメイン基板7aと、その下側に離れて配置されたサブ基板7bとを含む。
【0016】
本実施形態では、表示部側キャビネット3における表示部2の背面側に配置される矩形板状の補強用板金3aが矩形枠状の樹脂材料3bと共にインサート成形されている。
図2(b)に示すように、補強用板金3aは、例えば矩形板状のステンレス薄板をプレスにより抜き及び折り曲げ絞り加工した構造よりなる。
【0017】
そして、
図4に示すように、表示部側キャビネット3の下側中央には、例えば正面視矩形状の信号線用開口3cが形成されている。この信号線用開口3cには、フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eが折り曲げられ、メイン基板ユニット7側へ延びる先端側が通過している。
【0018】
図1に拡大して示すように、補強用板金3aにおける信号線用開口3c周縁は、背面側へ折り曲げられて充填用凹部3dが形成されている(
図2(b)のハッチングの領域)。この充填用凹部3dは、例えば
図2(b)に示す信号線用開口3cの水平線及び左右の垂直線の3辺を外側から覆うように連続して形成されている。特に角部での応力集中を防ぐには、少なくとも充填用凹部3dは、角部及びその周辺で連続しているのが望ましい。この充填用凹部3dの正面側には、表示部側キャビネット3のインサート成形時に樹脂材料3bが充填される。この充填用凹部3dに充填した樹脂材料3bの正面と補強用板金3aの正面とは、ほぼ同じ高さに連続している。両者の境界線における高さの差は、表示部2に力が加わったときに液晶ににじみ模様ができない程度の微々たるものであるのが望ましい。
【0019】
そして、
図1に示すように、信号線用開口3cの周縁は、インサート成形時に樹脂材料3bで曲面状に覆われ、非常に丸みをもった形状となっている。そして、充電池6の側面は、側面(
図1の右側)から見たときに充填用凹部3dの側壁と一部が重なっている。言い換えれば、背面から見たときに充電池6の下側に充填用凹部3dが重ならないように配置されている。
【0020】
以上説明したように、補強用板金3aの信号線用開口3c周縁を充填用凹部3dに充填した樹脂材料3bによって覆っているので、信号線用開口3c周縁の厚さを保って強度を向上させることができる。このため、表示部2の割れ等携帯電話機1の信頼性への悪影響を減らすことができる。
【0021】
また、補強用板金3aの正面と充填用凹部3dに充填した樹脂材料3bの正面とを連続させることにより、凹凸があることによる、にじみ模様などの表示部2への影響を防いでいる。
【0022】
信号線用開口3c周縁の厚さが厚くなることで、タッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eの折り曲げを小さな曲げ半径で行うことがなくなるので、信号線用開口3cを必要以上に大きくすることがなく、強度の低下を効果的に避けられる。
【0023】
また、タッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eは、直接に補強用板金3aの端面に接触しないので、痛みにくい。しかも、信号線用開口3cの周縁を樹脂材料3bで曲面状に覆ったことにより、タッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eの損傷を更に効果的に防ぐことができる。
【0024】
また、他の部品に比べて厚い充電池6と、樹脂材料3bにより厚くなった充填用凹部3dとを正面から見て重ならないように配置することにより、携帯電話機1全体の厚さを薄くすることができる。
【0025】
したがって、本実施形態に係る携帯電話機1によると、簡単な構成で、信号線用開口3c周縁の強度を向上させると共に、信号線用開口3cを通過するタッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eが損傷しないようにすることができる。
【0026】
(実施形態2)
図5は本発明の実施形態2を示し、充填用凹部3d’の形成位置が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、以下の各実施形態では、
図1〜
図4と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0027】
具体的には、本実施形態では、
図5に示すように、充填用凹部3d’が信号線用開口3c側に開放されているのではなく、信号線用開口3cの近傍で正面側に再び湾曲している。すなわち、正面から見たときに充填用凹部3d’が信号線用開口3cから少し距離を空けて連続して形成されている。補強用板金3a’の信号線用開口3c側の端部は、正面側に露出している。しかし、信号線用開口3cの端部は、樹脂材料3bで覆われていることが必要である。
【0028】
このように構成しても、上記実施形態と同様に、簡単な構成で、信号線用開口3c周縁の強度を向上させると共に、信号線用開口3cを通過するタッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eが損傷しないようにすることができる。
【0029】
(実施形態3)
図6は本発明の実施形態3を示し、補強用板金3a’’における信号線用開口3cの形状が異なる点で上記実施形態と異なる。
【0030】
すなわち、本実施形態では、信号線用開口3cは、下側も補強用板金3a’’で覆われており、補強用板金3a’’に切欠ではなく、矩形状の開口が形成されている。
【0031】
この場合、信号線用開口3cのほぼ全周(四辺)に補強用板金3a’’の端部があるが、いずれの端部も樹脂材料3bで覆われており、タッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eには接触しない。
【0032】
そして下辺以外の補強用板金3a’’の端部において充填用凹部3dが形成され、この充填用凹部3dに樹脂材料3bが充填されている。
【0033】
本実施形態においても、簡単な構成で、信号線用開口3c周縁の強度を向上させると共に、信号線用開口3cを通過するタッチパネル用フレキシブル基板2d及び液晶用フレキシブル基板2eが損傷しないようにすることができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0035】
すなわち、上記実施形態では、信号線用開口3cは、正面視で矩形状としているが、半長円形、半楕円形、半円形状など他の形状でもよい。
【0036】
上記実施形態では、携帯端末は、携帯電話機1としたが、タブレット端末、PHS(Personal Handy-phone System )、PDA(Personal DigitalAssistant)、パソコン、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等であってもよい。
【0037】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、各実施形態に記載された技術的特徴は、互いに組合せ可能であり、組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯電話機(携帯端末)
2 表示部
2a カバーガラス
2c 液晶ユニット
2d タッチパネル用フレキシブル基板(信号線)
2e 液晶用フレキシブル基板(信号線)
3 表示部側キャビネット
3a,3a’,3a’’ 補強用板金
3b 樹脂材料
3c 信号線用開口
3d,3d’ 充填用凹部
4 背面側キャビネット
5 リアカバー
6 充電池
7 メイン基板ユニット
8 クッションシート