(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、マスクパターンを形成した基板等に対し、プラズマエッチング装置を用いてエッチングを施すものである。以下では、
図1を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法に用いるプラズマエッチング装置について説明する。
図1は、本実施の形態のエッチング工程に用いるプラズマエッチング装置の一例として、プラズマ生成手段にマイクロ波と磁場を利用するECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチング装置の概略図である。
【0021】
この装置は、内部を真空排気できるチャンバ201を有し、チャンバ201内には、試料であるウェハ202を配置する試料台203が配置されている。チャンバ201の上面には、チャンバ201内を観測し、また、チャンバ201内にマイクロ波を透過させるために、石英などからなるマイクロ波透過窓204が設けられている。チャンバ201と試料台203との間には、複数の貫通孔が並んで開口された板であるシャワープレート205が配置されている。
【0022】
マイクロ波透過窓204の直上には導波管206が設けられ、導波管206には、ウェハ202の表面上に形成した膜の膜圧を測定する膜圧測定モニタ207と、マグネトロン208とが形成されている。延在する導波管206の一方の端部にはチャンバ201が配置され、もう一方の端部にはマグネトロン208が配置されている。また、チャンバ201の周りにはソレノイドコイル209が設けられている。試料台203には、静電吸着電源210と高周波バイアス電源211とが接続されている。チャンバ201には、開閉可能なウェハ搬入口212が設けられており、また、チャンバ201内にガスを供給するためのガス導入口213が設けられている。
【0023】
ECR型プラズマエッチング装置は、電子サイクロトロン共鳴を利用したプラズマ源(ECR型プラズマ源)を有している。ECR型プラズマ源は、少なくともマイクロ波をチャンバ201内に導入する手段と、チャンバ201の近傍に配置された、磁場を発生させるソレノイドコイル209とを有している。マグネトロン208および高周波バイアス電源211には、パルス発生装置215が電気的に接続されている。
【0024】
本実施の形態において用いるプラズマエッチング装置は、上記のチャンバ201、ウェハ202、試料台203、マイクロ波透過窓204、シャワープレート205、導波管206、膜圧測定モニタ207、マグネトロン208、ソレノイドコイル209、静電吸着電源210、高周波バイアス電源211、ウェハ搬入口212、ガス導入口213、およびパルス発生装置215を有している。
【0025】
次に、上記プラズマエッチング装置を用いたエッチング工程における各動作について説明する。
図2、
図4および
図5は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0026】
まず、
図2に示すように、半導体基板101を用意する。次に、半導体基板101上に、所定のパターン形状を有するマスク102を形成する。マスク102は後述するプラズマエッチングの際に、所定の領域の半導体基板101を保護し、半導体基板101の一部が除去されることを防ぐために設けられる膜であり、その膜厚(高さ)はHである。マスク102は、例えばフォトレジスト膜からなるパターンである。また、マスク102はフォトレジスト膜からなるパターンではなく、半導体基板101上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成した窒化シリコン膜を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法により加工したパターン、つまりハードマスクであってもよい。
【0027】
半導体基板101の主面の一部はマスク102から露出している。マスク102の膜厚Hはいずれの領域においてもほぼ一定であるが、マスク102から露出している半導体基板101の主面の幅は一定ではなく、半導体基板101の主面の領域によって異なる。半導体基板101の主面には、マスク102が疎に形成された疎パターン領域SRと、マスク102が密に形成された密パターン領域DRとがある。
図2では、図の左側に疎パターン領域SRを示し、図の右側に密パターン領域DRを示している。
【0028】
本願でいう「密に形成されるパターン」とは、隣り合うパターン同士の間の距離が小さいパターン(第1パターン)であって、マスクパターン、またはマスクを用いてエッチングにより形成されるパターン(密パターン)をいう。また、本願でいう「疎に形成されるパターン」とは、隣り合うパターン同士の間の距離が大きいパターン(第2パターン)であって、マスクパターン、またはマスクを用いてエッチングにより形成されるパターン(疎パターン)をいう。
【0029】
図2に示すように、疎パターン領域SRにおいて隣接するマスク102同士の間の距離(幅)W1は、密パターン領域DRにおいて隣接するマスク102同士の間の距離(幅)W2よりも大きい。つまり、疎パターン領域SRでは半導体基板101が比較的広い面積でマスク102から露出しており、密パターン領域DRでは半導体基板101が比較的狭い面積でマスク102から露出している。すなわち、密パターン領域DRよりも、疎パターン領域SRの方が、隣り合うマスク102同士の間において露出する半導体基板101の幅および面積は大きい。
【0030】
次に、
図1に示すように、半導体基板101(
図2参照)であるウェハ202を、ウェハ搬入口212からチャンバ(処理室)201内に搬入した後、ウェハ202は静電吸着電源210によって試料台203に静電吸着される。次に、プロセスガス(処理ガス)を、ガス導入口213からシャワープレート205を介してチャンバ201に導入する。このとき、チャンバ201内の気圧は、真空ポンプ(図示省略)により減圧排気され、所定の圧力(例えば、0.1Pa〜50Pa)に調整する。
【0031】
次に、マグネトロン208から周波数2.45GHzのマイクロ波を発振し、導波管206、マイクロ波透過窓204、およびシャワープレート205を介して、チャンバ201内に供給する。これにより、当該マイクロ波とソレノイドコイル209によって発生された磁場との相互作用によって処理ガスが励起され、ウェハ202上部の空間にプラズマ214が形成される。
図1では、プラズマ214が発生する領域を破線により示している。ここで、試料台203に、高周波バイアス電源211によって高周波バイアス電力を印加することで、プラズマ214中のイオンがウェハ202の上面に垂直に加速され入射する。プラズマ214からのラジカルとイオンの作用によってウェハ202は異方的にエッチングされる。
【0032】
マグネトロン208と高周波バイアス電源211には、パルス発生装置215が接続されており、パルス発生装置215が発生させる連続パルス波によって、パルス変調を行うことが可能である。ここで、プラズマの変調周波数をプラズマパルス周波数、逆数をプラズマパルス周期とする。一方、高周波バイアス電源211のパルス変調の周波数をバイアスパルス周波数とし、その逆数をバイアスパルス周期とする。また、パルス発生装置215は、バイアスパルス周波数と1周期におけるオンの期間とオフの期間の比を任意に設定できる機能を有する。なお、1周期に対するオン期間の割合をデューティー比と呼ぶ。
【0033】
次に、本発明におけるエッチング処理方法について、
図3に示す表を用いて説明する。
図3に示す表には、本実施の形態のエッチングの処理条件を示している。
図3に示すように、条件1ではプロセスガスにNF
3(三フッ化窒素)を用いず、代わりにSF
6(六フッ化硫黄)を用いている。逆に、条件2ではプロセスガスにSF
6を用いず、代わりにNF
3を用いている。本実施の形態において、半導体基板に溝を開口するエッチング工程では、最初のステップ1のエッチング工程において、上記条件1でエッチングを行い、その後行うステップ2のエッチング工程において、上記条件2でエッチングを行う。
【0034】
図3に示すように、条件1によりエッチングを行うステップ1では、N
2(窒素)ガスとCHF
3(トリフルオロメタン)ガスとSF
6(六フッ化硫黄)ガスとの混合ガスを用いる。条件2によりエッチングを行うステップ2では、N
2(窒素)ガスとCHF
3(トリフルオロメタン)ガスとNF
3(三フッ化窒素)ガスとの混合ガスを用いる。
【0035】
図6には、各条件におけるエッチング深さと疎密エッチング速度比との関係をグラフに示している。
図6は、横軸をエッチング深さとし、縦軸をエッチング速度比の値とするグラフであり、
図6には、
図3の条件1の場合のグラフ1Aと、
図3の条件2の場合のグラフ2Aとを示している。つまり、グラフ1AはプロセスガスにSF
6を用いた場合のグラフであり、グラフ2AはプロセスガスにNF
3を用いた場合のグラフである。疎密エッチング速度比とは、エッチング速度とアスペクト比に対するエッチング速度依存性を指す。
【0036】
図6に示すように、エッチングが進行するにつれて疎密エッチング速度比の値が下がるのは、アスペクト比の高いパターンがより高アスペクト比となり、エッチャントであるFラジカルが入射し難くなることで、疎部の反応が進行し疎密エッチング速度比の値が低下するためである。つまり、エッチング開始直後において、エッチング速度はアスペクト比の影響をあまり受けない。
【0037】
また、
図6のグラフ1Aとグラフ2Aとを比較した際、つまり、NF
3のガスを用いた場合とSF
6のガスを用いた場合とを比較した際、SF
6を用いた方が疎密エッチング速度比の値は小さくなる。これは、SF
6を用いた場合は、NF
3を用いた場合より窒素原子のプラズマ密度が低いことにより、窒素原子と炭素原子で構成されるシアン化化合物(デポジター)の生成量が減少するためである。その結果、異なるアスペクト比を有するパターンを同時にエッチングする際に、窒素原子のプラズマ密度が低いSF
6を用いた場合は、低アスペクト比のパターンでのシアン化化合物の堆積が減少してエッチングが進行するため、NF
3を用いた場合と比較して疎密エッチング速度比の値が小さくなる。
【0038】
また、
図3の表のエッチングレートの値に注目すると、SF
6を使用した条件1の方が条件2よりも速い。これはシアン化化合物(デポジター)の生成量がNF
3に比べ減少する点とエッチングを進行させるFラジカルがNF
3より多いためである。
【0039】
そこで、本実施の形態のプラズマエッチング工程では、異なるアスペクト比を有するパターンを同時にエッチングする際、アスペクト比の影響をあまり受けないエッチング開始直後の段階において、エッチングレートの高いSF
6を用い、その後、アスペクト比の影響を受けやすい高アスペクト比のパターンをエッチングする段階において、エッチングレートが低いNF
3を用いる。
【0040】
このようにエッチング条件をエッチング開始直後とその後とで切り替えることで、エッチング工程の始めから終わりまで、アスペクト比の影響を受けにくいエッチングを行うことができるため、エッチング対象のパターンに疎密の差があっても、エッチング量にばらつきが生じることを防ぐことができる。また、エッチングのプロセスガスをSF
6からNF
3に切り替えるタイミングを、膜圧測定モニタ207(
図1参照)を用いて溝深さをモニタリングしながら測ることで、適切なタイミングでエッチング条件を条件1から条件2への切り替えることができるため、より精度の高いエッチングを行うことができる。上記エッチングにおける溝深さのモニタリングは、例えばエッチングの実時間を計測することで行っても良い。
【0041】
言い換えれば、本実施の形態のエッチング工程は、溝または孔パターンが密に形成された第1パターンおよび溝または孔パターンが疎に形成された第2パターンを含むマスクを用いて、プラズマエッチングにより半導体基板の上面に溝または孔パターンを形成するものであり、以下の特徴を有する。なお、第1パターンと第2パターンは異なるアスペクト比を有する。
【0042】
すなわち、当該エッチング工程は、アスペクト比に対するエッチング速度依存性である第1疎密エッチング速度比の特性と第1エッチング速度の特性とを有するエッチングを行う第1工程と、アスペクト比に対するエッチング速度依存性である第2疎密エッチング速度比の特性と第2エッチング速度の特性とを有するエッチングを行う第2工程とを有する。なお、第1エッチング速度は、例えば
図3に示す条件1のエッチングレートを指し、第2エッチング速度は、例えば
図3に示す条件2のエッチングレートを指す。
【0043】
具体的には、第1疎密エッチング速度比は、
疎パターン(第
2パターン)におけるエッチング速度に対する
密パターン(第
1パターン)におけるエッチング速度の比であり、第2疎密エッチング速度比は、
疎パターン(第
2パターン)におけるエッチング速度に対する
密パターン(第
1パターン)におけるエッチング速度の比である。つまり、第1パターンでのエッチング速度をS1とし、第2パターンでのエッチング速度をS2とすれば、疎密エッチング速度比はS1/S2で表わされる。よって、疎パターンおよび密パターンでのそれぞれのエッチング速度が均等であれば、疎密エッチング速度比は1となり、例えば疎パターン(第2パターン)におけるエッチング速度が大きくなれば、疎密エッチング速度比は小さくなる。
【0044】
上記エッチング工程では、まず第1工程を行い、これにより半導体基板の主面に形成される溝または孔の深さをモニタし、溝または孔の深さが所定の深さに到達した時点で、第1工程から第2工程に切り替える。ここで、第2エッチング速度は、第1エッチング速度より小さく、第2疎密エッチング速度比の値は、第1疎密エッチング速度比の値より大きい。上記所定の深さは、第1疎密エッチング速度比の値が1より小さく、かつ第2疎密エッチング速度比の値が1より大きいエッチング深さである。このようなエッチング深さに達した時点でエッチング条件の切り替えを行うことで、アスペクト比の差に起因してエッチング量にばらつきが生じることを防ぐことができる。
【0045】
上記のように、溝深さをモニタリングしながら条件1から条件2へ切り替えてエッチングを行った後の半導体基板の断面を
図4に示す。
図4に示すように、半導体基板101の上面の一部であって、マスク102から露出する部分は、マスク102を用いた上記エッチング工程により除去されている。これにより、半導体基板101の主面には溝103が形成される。疎パターン領域SRの溝103は、密パターン領域DRの溝103よりも、幅および平面視における面積が広い。上記のように条件を切り替えつつエッチングを行うことで、疎パターン領域SRおよび密パターン領域DRにおいて、ほぼ同等の深さの溝103を半導体基板101の上面に形成することができる。
【0046】
次に、
図5に示すように、酸化シリコン膜などからなる絶縁膜を溝103内に埋め込み、マスク102を除去することで、当該絶縁膜からなる素子分離領域104を形成する。具体的には、例えばマスク102がハードマスクである場合において、CVD法を用いて、マスク102および半導体基板101の上に酸化シリコン膜を形成することで溝103内を埋め込んだ後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により当該酸化シリコン膜の上面を平坦化し、続いてマスク102を薬液により除去する。これにより、各溝103内に埋め込まれた酸化シリコン膜からなる素子分離領域104を形成する。
【0047】
疎パターン領域SRの素子分離領域104は、密パターン領域DRの素子分離領域104よりも、幅および平面視における面積が広い。ここで、溝103の深さは疎パターン領域SRおよび密パターン領域DRにおいてほぼ一定であるため、素子分離領域104の形成深さは疎パターン領域SRおよび密パターン領域DRにおいてほぼ一定である。以上の工程により、本実施の形態の半導体装置の製造方法を用いたパターン形成工程が完了する。
【0048】
なお、ここでは半導体基板をエッチングして素子分離領域を形成する工程について説明したが、エッチングにより形成するのは溝に限らず孔であってもよい。
【0049】
以下では、
図13および
図14を用いて、比較例のエッチング方法の問題点および本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について説明する。
図13および
図14は、比較例における半導体装置の製造工程を説明する断面図であり、素子分離領域をSTI法により形成する場合の工程を説明するものである。
【0050】
比較例の半導体装置の製造方法において素子分離領域をSTI法により形成する場合には、まず、
図2を用いて説明した工程と同様の工程を行う。すなわち、まず、
図13に示すように、例えば単結晶シリコンからなる半導体基板101を用意する。その後、半導体基板101上に、パターニングされたマスク102を形成する。マスク102は、例えば窒化シリコン膜などからなるハードマスクである。当該ハードマスクのパターンは、例えば半導体基板101上に形成した絶縁膜を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて加工することで形成する。当該ドライエッチング法による加工を行うことで、半導体基板101の上面の一部はマスク102から露出する。また、マスク102は、フォトリソグラフィ技術により形成したレジストパターンであってもよい。
【0051】
マスク102は、半導体基板101上に所定の膜厚、つまり高さHを有する膜である。半導体基板101の上面は、複数の領域でマスク102から露出しており、それぞれの領域において露出する半導体基板101の幅は一定ではなく、場所によって様々である。つまり、マスク102が密に形成されている領域(密パターン領域DR)では、マスク102間で露出する半導体基板101の幅W2は小さく、それに比べて、マスク102が疎に形成されている領域(疎パターン領域SR)では、マスク102間で露出する半導体基板101の幅W1は大きい。
【0052】
このように、ウェハ上に形成されたマスク102の疎密は場所によってばらつきがあるため、マスク102から露出する半導体基板101の幅は、マスク102が疎に形成された領域と密に形成された領域とで異なる。つまり、マスク102から露出する半導体基板101の面積は場所によってばらつきがある。
【0053】
ここで、疎パターン領域SRにおいて、基板材料であるシリコンが露出する幅W1とマスク上端から基板までの深さHとのアスペクト比はH/W1である。また、密パターン領域DRにおいて、基板材料であるシリコンが露出する幅W2とマスク上端から基板までの深さHとのアスペクト比はH/W2である。W1>W2であることから、マスク102は、場所によって異なるアスペクト比を有する。
【0054】
つまり、密パターン領域DRのマスク102に開口された溝パターン(第1パターン)は比較的大きいアスペクト比を有し、疎パターン領域SRのマスク102に開口された溝パターン(第2パターン)は第1パターンよりも小さいアスペクト比を有している。よって、マスク102を構成する第1パターンおよび第2パターンはそれぞれ異なるアスペクト比を有している。
【0055】
ここではマスク102の開口部のアスペクト比を、露出する半導体基板101の幅(距離)とマスク102の高さ(膜厚、深さ)との比により表わしたが、当該アスペクト比を、露出する半導体基板101の面積とマスク102の高さ(膜厚、深さ)との比により表わしても、同様にアスペクト比にばらつきが生じる。
【0056】
次に、
図14に示すように、上記のようなマスク102を用いてエッチングを行うことで、異なる幅を有し、また、異なるアスペクト比を有するパターンを形成する。ここでは、半導体基板101の上面の一部を除去することで、半導体基板101の主面に溝105を形成する。
【0057】
このようにウェハをエッチングする場合において、異なるアスペクト比を有するパターンを同時にエッチングする際には、疎密エッチング速度比(RIE-Lag)が生じる。一定量のエッチング対象物を除去する場合、エッチング速度が大きい領域では、エッチング速度が小さい領域よりも短時間でエッチングが完了する。
【0058】
疎密エッチング速度比の値が1より小さい場合は、低アスペクト比のパターンでのエッチング速度が高アスペクト比のパターンでのエッチング速度より大きく、1より大きい場合は、高アスペクト比のパターンでのエッチング速度が低アスペクト比のパターンでのエッチング速度より大きいことを意味する。
【0059】
疎密エッチング速度比が生じる場合、
図14に示すように、パターンが高アスペクト比の領域のエッチング量と、パターンが低アスペクト比の領域のエッチング量とに差が生じるため、所望の深さの溝の実現が困難となる。例えば一定の深さの溝が形成できず、溝105の深さにばらつきが生じた場合、半導体基板101上に形成する素子分離領域の形成深さにばらつきが生じることで、素子間の耐圧などの特性を一定の水準以上に保つことが困難となり、半導体装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0060】
これに対し、本実施の形態では、溝深さをモニタリングしながら
図3の表の条件1から条件2へ切り替えてエッチングを行う。つまり、アスペクト比の影響をあまり受けないエッチング開始直後において、エッチングレートの高いSF
6ガスを用いたエッチングを用い、その後、エッチング条件を切り替えて、アスペクト比の影響を受ける高アスペクト比の領域においてエッチングレートの低いNF
3ガスを用いたエッチングを行う。
【0061】
このように、溝深さをモニタリングしながらエッチング条件を変更することで、半導体基板に形成する溝を、パターンの疎密にかかわらず、所望の深さで形成することができる。したがって、半導体基板に形成した溝に素子分離領域を埋め込む場合には、素子分離領域の深さにばらつきが生じることを防ぐことができるため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、SF
6ガスを用いた条件1でのエッチング(ステップ1)と、NF
3ガスを用いた条件2のエッチング(ステップ2)とを組み合わせることで、各条件での疎密エッチング速度比の値の差を利用してエッチング精度を高めている。これに対し、各条件でのプロセスガスの成分を変更しなくても、ステップ1でのエッチングが、ステップ2でのエッチングより窒素原子のプラズマ密度が低いものであれば、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。よって、窒素原子のプラズマ密度が低いステップ1と、窒素原子のプラズマ密度がステップ1よりも高いステップ2とを行う場合は、ステップ1およびステップ2において用いるプラズマガスを、共に例えばN
2(窒素)ガスとCHF
3(トリフルオロメタン)ガスとNF
3(三フッ化窒素)とを含むものとしてもよい。
【0063】
(実施の形態2)
本実施の形態では、SF
6とNF
3の2ステップで処理を行う際の切り替えについて説明する。つまり、本実施の形態は、
図3の表の条件1と条件2との切り替えの際に排気工程を設けるものである。
【0064】
ここで、
図7の表に、本実施の形態の処理条件を示す。本実施の形態では、ステップ1を行った後であってステップ2を行う前において、残留ガスを排気するステップを設けている。これは、ステップ2のエッチング工程が、ステップ1の残留ガスの影響を受けることを防ぐためである。
【0065】
ここで、
図8に、排気時間とチャンバ内の真空度との関係をグラフで示す。
図8に示すグラフの横軸は排気時間であり、縦軸はチャンバ内の真空度である。プラズマ発生時に残留ガスの影響を受けないためには、目的とする寸法に影響を受けない値まで装置(チャンバ)内の圧力を下げる必要があり、チャンバ内の真空度を処理圧力の1%以下である10
−2Pa以下に下げることが必要となる。そこで、本実施の形態では、チャンバ内の気圧を10
−2Paまで下げるために、SF
6を用いたエッチング(ステップ1)と、NF
3を用いたエッチング(ステップ2)との間に、エッチング装置(処理室)内の圧力が10
−2Pa以下となる排気ステップを設けている。これにより、ステップ1の残留ガスの影響を受けずにステップ2の処理をすることができる。
【0066】
(実施の形態3)
本実施の形態では、エッチング工程において、磁場コイルの電流値の条件を変更することについて説明する。
【0067】
図9の表に、本実施の形態のエッチングの処理条件を示す。前記実施の形態1と同様に、ここではSF
6を用いたステップ1のエッチング工程の後に、NF
3を用いたステップ2のエッチング工程を行う。
図9の表におけるコイルに関する欄では、チャンバの周辺において上下方向に複数並べられたコイルを上段、中段、下段に分け、それぞれのコイルに流す電流を示している。
【0068】
図10および
図11に、エッチング中のチャンバ500内の堆積物501の分布およびプラズマ502の強度分布を表す。
図10および
図11は、プラズマエッチング装置の概略図を示すものである。ECR型のエッチング装置では、電子がサイクロトロン共鳴を起こす磁場強度の面(ECR面と呼ぶ)でプラズマ502の密度が最も高くなる。つまり、
図10および
図11のプラズマ502はECR面近傍に発生する。したがって、ガスの分解はECR面付近で最も盛んに生じる。例えば
図9の表のステップ1に示すSF
6を含むガスを用いた場合、SF
6が分解して生じる反応性生物SF
X(X=1〜5)のチャンバへの堆積物501は、ECR面近傍で最も多くなる。
【0069】
次のステップ2において、堆積性が比較的少ないNF
3を用いて放電すると、ECR面近傍のチャンバ500の内側の面においてイオンの入射量が多くなり、堆積物501が削れて堆積物がプラズマ502中に放出される。放出されたSF
XはNF
3のエッチング特性に影響を与え、疎密エッチング速度比の値が意図したものとは異なる値になる。このように、ステップ1で生じた堆積物が再放出されることで、エッチング精度が低下し、半導体基板に対して所望の形状で溝等を形成することが困難となるため、半導体装置の信頼性が低下する虞がある。
【0070】
上記のようにステップ1で生じた堆積物が再放出されることを防ぐためには、ステップ1とステップ2とでECR面が異なる高さに位置するようにすればよい。具体的には、
図9に示すように、磁場コイルの電流値をステップ1とステップ2とで変更することでステップ2のECR面(
図11参照)がステップ1のECR面(
図10参照)よりも下に位置するように設定する。または、逆に、ステップ2のECR面をステップ1のECR面より上に位置するように設定してもよい。この方法により、
図10に示すプラズマ502の発生する高さと
図11に示すプラズマ502の発生する高さとは異なるものとなる。
【0071】
本実施の形態では、ステップ1のプラズマ密度が最大となる位置の、半導体基板を載置する試料台からの高さを、ステップ2のプラズマ密度が最大となる位置の、半導体基板を載置する試料台からの高さより高くしている。これにより、ステップ1で生じた堆積物が再放出されることによる影響をステップ2において受けることを防ぐことができる。
【0072】
また、残留ガスやチャンバ内のコンディションを一定に保つため、2ステップ目の後にクリーニングステップを入れることで、より安定した形状を得ることができる。
【0073】
(実施の形態4)
ここでは、プロセスガスにSF
6を用いたステップ1のエッチング工程においてパルス放電を用いることについて以下に説明する。
【0074】
図12の表に、本実施の形態のエッチングの処理条件を示す。本実施の形態のエッチング工程では、
図12に示すように、SF
6を用いたステップ1のエッチング工程の後に、NF
3を用いたステップ2のエッチング工程を行う。ここでは、ステップ1においてパルス放電を用いている。つまり、ステップ1のエッチング工程でチャンバ内に発生するプラズマは、パルス変調されたプラズマである。
【0075】
パルス放電を用いた際のチャンバ内の熱は、プラズマの着火点で最も高温となり、そこから熱伝達によりチャンバ内に拡散していく。常にプラズマを放電したまま処理をした場合、チャンバ内の温度勾配は小さいが、パルスを用いることにより着火点から下流に行くにつれて温度勾配ができる。温度勾配は状態方程式より、圧力との相関があり、結果として、着火点から下流側へ圧力勾配ができる。圧力勾配ができた場合にチャンバ内の流速に注目すると、流速は圧力が低い方が速くなるため、着火点から下流への排気性能が向上する。排気性能が向上するとステップ1の残留ガスを減らすことができ、ステップ2の処理への切り替えを効率よく行うことができるため、ステップ1においてパルス放電を使うことが望ましい。
【0076】
よって、本実施の形態では、ステップ1のプラズマをパルス放電により着火することで、チャンバ内に熱勾配を生じさせ、チャンバ内の排気性能を向上させることを可能としている。これにより、ステップ1の残留ガスを低減し、ステップ2の処理への切り替えを効率よく行うことができるため、エッチング精度が低下することを防ぐことができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0077】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0078】
例えば、上記の実施の形態1〜4では、半導体基板としてSi(シリコン)からなる基板を用いた例を説明したが、半導体基板の材料は例えばSiGe(シリコンゲルマニウム)であってもよい。