特許第6228869号(P6228869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228869
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】津波漂流物衝突荷重の算定方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20171030BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   E02B3/26 H
   E02B3/12
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-50955(P2014-50955)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-175133(P2015-175133A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】小尾 博俊
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−186106(JP,A)
【文献】 特開2008−184760(JP,A)
【文献】 特開2009−013743(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01596009(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00−3/28
G01M 10/00
G06Q 10/04
E04H 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に作用する津波漂流物衝突荷重を算定する方法であって、
津波漂流物衝突荷重をF、漂流物衝突時の衝突力をFi、漂流物が津波から受ける力(抗力)をFdとし、時間tにおける津波漂流物衝突荷重Fが以下の3式を満たすことを特徴とする津波漂流物衝突荷重の算定方法。
(1)F=2(Fi + Fd)t/Δt (0<t≦Δt/2)
(2)F=(-2Fi)t /Δt +(2Fi + Fd) (Δt/2<t≦Δt)
(3)F= Fd (Δt<t)
ここで、Fは津波漂流物衝突荷重(kN)、Fi=2mV/Δt(kN)、Fd =ρCdu2Ad/2 (kN)、Δtは衝突時間(sec)、mは漂流物の質量(t)、Vは漂流物の衝突速度(m/sec)、uは津波速度(m/sec)、Adは漂流物の津波受圧面積(m2)、ρは津波の密度(t/m3)、Cdは抗力係数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物に対する津波漂流物の衝突荷重を算定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災では津波そのものによる被害のほかに、沿岸部の流木や自動車、コンテナ、船舶等が漂流物となり、それらの衝突による被害が甚大なものとなった。これらの被害対策には漂流物の衝突力を予め適切に評価することが極めて重要である。
【0003】
津波漂流物の衝突力を計算する式はいくつか提案されており、たとえば非特許文献1〜3にその開示がある。具体的には、非特許文献1は流木を対象とした研究結果を示すもの、非特許文献2は船舶を対象とした研究結果を示すもの、非特許文献3はコンテナを対象とした研究結果を示すものである。そして、これらの研究はいずれも、パラメータの設定に課題は残るものの、水理実験に基づいた衝突力算定式を提案するものである。
【0004】
しかしながら、これまで提案されている津波漂流物の衝突力算定式による計算値は大きくばらついており、また何れも対象とする漂流物が限定されていることから、様々な場合に対応できるような統一的な評価方法が未だ確立されていないのが現状である。
【0005】
また、上記提案式は漂流物衝突時の最大荷重を求めるものであり、この荷重値を等価静的荷重として構造物を設計することは過大設計となる恐れがあり、合理的とは言えない。
【0006】
また、漂流物衝突力は、漂流物の質量、速度や剛性、衝突を受ける構造物の質量や剛性、津波の水深や流速等に大きな影響を受け、これらを正確に評価するには水理実験でも困難である。そのため、現在は、津波-漂流物-構造物をそれぞれモデル化し、これらの連成による数値解析等に頼らざるを得ない。しかしながら、このような数値解析は一般に難易度が高く、計算時間も非常にかかることから、設計時のケーススタディには必ずしも適しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】松冨英夫:流木衝突力の実用的な評価式と変形特性、土木学会論文集、No.621、pp.111-127、1999年5月
【非特許文献2】池野正明、森 信人、田中寛好:砕波段波津波による波力と漂流物の挙動・衝突力に関する実験的研究、海岸工学論文集、第48巻、pp.846-850、2001年
【非特許文献3】池谷 毅ほか:津波による漂流物の衝突力の実験と評価方法の提案、海岸工学論文集、第53巻、pp.276-280、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、多様な漂流物に対して適用が可能であり、合理的でかつ簡易に津波漂流物衝突荷重を算定することのできる津波漂流物衝突荷重の算定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による津波漂流物衝突荷重の算定方法は、構造物に作用する津波漂流物衝突荷重を算定する方法であって、津波漂流物衝突荷重をF、漂流物衝突時の衝突力をFi、漂流物が津波から受ける力(抗力)をFdとし、時間tにおける津波漂流物衝突荷重Fが以下の3式を満たすことを特徴とする津波漂流物衝突荷重の算定方法である。
【0010】
(1)F=2(Fi + Fd)t/Δt (0<t≦Δt/2)
(2)F=(-2Fi)t /Δt +(2Fi + Fd) (Δt/2<t≦Δt)
(3)F= Fd (Δt<t)
【0011】
ここで、Fは津波漂流物衝突荷重(kN)、Fi=2mV/Δt(kN)、Fd =ρCdu2Ad/2 (kN)、Δtは衝突時間(sec)で漂流物と構造物をモデル化した数値解析にて算定、mは漂流物の質量(t)、Vは漂流物の衝突速度(m/sec)、uは津波速度(m/sec)、Adは漂流物の津波受圧面積(m2)、ρは津波の密度(t/m3)、Cdは抗力係数。
【0012】
本発明の津波漂流物衝突荷重の算定方法は、既述する非特許文献1〜3に記載の従来方法が最大衝突荷重を等価静的荷重として取り扱っているのに対して、漂流物の衝突とその後に続く津波による荷重を動的現象として捉え、動的応答解析を用いて荷重−時間曲線を算定する方法を提案するものである。
【0013】
荷重−時間曲線を算定する方法として、難易度が高く、計算時間も非常にかかる流体−構造連成解析をおこなうことなく、漂流物とその衝突を受ける構造物のみをモデル化した動的応答解析によるものとした。
【0014】
漂流物衝突力は、ごく短時間にその大きさが時々刻々変化することから、衝突中の時間軸を考慮した設計の方が合理的な場合がある。ここで、衝突時の最大荷重を運動量の考え方から求めるには、衝突時間Δtが必要になるが、本来、この衝突時間Δtは漂流物およびその衝突を受ける構造物の剛性や形状等に大きく依存する。
【0015】
しかしながら、本発明では、衝突時間Δtを求める方法として、漂流物と構造物をモデル化した有限要素法等による数値解析を用いることとした。尤も、衝突時間Δtについて十分な知見がある場合は、その値を直接用いることが当然に可能である。なお、この数値解析の際に、使用する材料物性値は安全側かつ簡便に評価するために線形材料とすることができる。
【0016】
漂流物衝突時の衝突力は一般に三角形波で近似することができ、衝突荷重Fiは力積の考え方に基づいて次式で表すことができる。
【0017】
FiΔt/2=mV → Fi=2mV/Δt
【0018】
ここで、Fi:衝突荷重(kN)、Δt:衝突時間(sec)、m:漂流物の質量(t)、V:漂流物の衝突速度(m/sec)である。
【0019】
一方、漂流物が津波から受ける力は、抗力の考え方に基づいて次式で表すことができる。
【0020】
Fd =ρCdu2Ad/2
【0021】
ここで、Fd:抗力(kN)、ρ:津波の密度(t/m3)、Cd:抗力係数、u:津波速度(m/sec)、Ad:漂流物の津波受圧面積(m2)である。
【0022】
本発明の算定方法では、津波漂流物衝突時の衝突荷重:Fiとその後の津波による継続荷重:Fdを足し合わせ、時間がΔt/2以下の範囲、Δt/2とΔtの範囲、Δt以降の範囲で算定式を場合分けしている。
【0023】
本発明者等による検証によれば、本発明の算定式と、難易度が高く、計算時間も非常にかかる既往の算定方法、すなわち、津波-漂流物-構造物をそれぞれモデル化し、これらの連成による数値解析による方法において、双方の荷重−時間グラフの間に高い相関があることが確認されている。
【0024】
すなわち、本発明の算定方法によれば、簡易かつ合理的に、津波漂流物衝突荷重を精度よく算定できることが確認されている。また、本発明の算定方法は、様々な漂流物に適用可能であることもその大きな効果の一つである。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の津波漂流物衝突荷重の算定方法によれば、多様な漂流物に対して、合理的かつ簡易に、津波漂流物衝突荷重を算定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は漂流物衝突時の衝突力に関する荷重−時間グラフであり、(b)は漂流物が津波から受ける力(抗力)に関する荷重−時間グラフであり、(c)は(a)と(b)を足し合わせてなる本発明の津波漂流物衝突荷重の算定式に基づく荷重−時間グラフである。
図2】(a)は漂流物衝突解析(Aシリーズで、漂流物がワンボックスカー)で使用した解析モデルの模式図であり、(b)は漂流物衝突解析(Bシリーズで、漂流物が大型バス)で使用した解析モデルの模式図である。
図3】(a)は漂流物衝突解析(Aシリーズ)の解析モデルの側面図および平面図であり、(b)は漂流物衝突解析(Bシリーズ)の解析モデルの側面図および平面図である。
図4】Aシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突力−時間グラフである。
図5】Aシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突速度−時間グラフである。
図6】Aシリーズで、津波をモデル化せず、漂流物を防衝工に直接衝突させ、漂流物および防衝工の材料がともに線形モデルの場合の衝突力−時間グラフである。
図7】本発明の算定方法に基づく荷重−時間グラフである。
図8図7のグラフで時間軸を拡大した荷重−時間グラフである。
図9】Bシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突力−時間グラフである。
図10】Bシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突速度−時間グラフである。
図11】Bシリーズで、津波をモデル化せず、漂流物を防衝工に直接衝突させ、漂流物および防衝工の材料がともに線形モデルの場合の衝突力−時間グラフである。
図12】本発明の算定方法に基づく荷重−時間グラフである。
図13図12のグラフで時間軸を拡大した荷重−時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の津波漂流物衝突荷重の算定方法の実施の形態を説明する。
【0028】
(津波漂流物衝突荷重の算定方法の実施の形態)
図1(a)は漂流物衝突時の衝突力に関する荷重−時間グラフであり、図1(b)は漂流物が津波から受ける力(抗力)に関する荷重−時間グラフであり、図1(c)は図1(a)と図1(b)を足し合わせてなる本発明の津波漂流物衝突荷重の算定式に基づく荷重−時間グラフである。
【0029】
本発明の津波漂流物衝突荷重の算定式は、漂流物衝突力の大きさがごく短時間に時々刻々変化することから、衝突中の時間軸を考慮した設計をおこなうことで合理的な算定方法を実現しようとしたものである。
【0030】
衝突時間Δtを求める方法として、漂流物と構造物をモデル化した有限要素法による数値解析を適用する。さらに、この数値解析では、使用する漂流物や防衝工の材料物性を安全側かつ簡便に評価できる線形材料とする。
【0031】
漂流物衝突時の衝突力は一般に三角形波で近似することができ、衝突荷重Fiは力積の考え方に基づいて次式で表す。
【0032】
FiΔt/2=mV → Fi=2mV/Δt
【0033】
ここで、Fi:衝突荷重(kN)、Δt:衝突時間(sec)、m:漂流物の質量(t)、V:漂流物の衝突速度(m/sec)である。
【0034】
図1aは、この漂流物衝突時の衝突力に関する荷重−時間グラフである。
【0035】
一方、漂流物が津波から受ける力(抗力)は抗力の考え方に基づいて次式で表す。
【0036】
Fd =ρCdu2Ad/2
【0037】
ここで、Fd:抗力(kN)、ρ:津波の密度(t/m3)、Cd:抗力係数、u:津波速度(m/sec)、Ad:漂流物の津波受圧面積(m2)である。
【0038】
図1bは、この漂流物が津波から受ける力に関する荷重−時間グラフである。
【0039】
本発明の算定方法は、衝突時の衝突力とその後に続く津波による荷重を考慮したものであり、したがって、図1a、図1bで示す各荷重−時間グラフを重ね合わせてなる、図1cの荷重−時間グラフが本発明の算定方法を表すグラフとなる。
【0040】
図1cで示す荷重−時間グラフを式で表すと、津波漂流物衝突荷重:Fの算定式は以下のようになる。
【0041】
(1)F=2(Fi + Fd)t/Δt (0<t≦Δt/2)
(2)F=(-2Fi)t /Δt +(2Fi + Fd) (Δt/2<t≦Δt)
(3)F= Fd (Δt<t)
【0042】
上記する発明の算定式を適用することで、簡易かつ合理的に、津波漂流物衝突荷重を精度よく算定することができる。
【0043】
次に、以下、本発明の津波漂流物衝突荷重の算定式の精度を検証する解析とその結果を説明する。
【0044】
(津波漂流物衝突荷重の算定式の精度を検証する解析とその結果)
本発明者等は、構造物に作用する津波漂流物の衝突力評価を目的として数値解析をおこなった。この解析においては、粒子法の一つであるSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法によって津波を表現し、構造物に作用する津波漂流物の衝突力を数値解析的に評価することを試みた。
【0045】
解析ケースは、漂流物としてワンボックスカー(長さ4.7m×幅1.8m×高さ2.0m,質量2.0ton)を想定したAシリーズと、大型バス(長さ11.0m×幅2.5m×高さ3.0m,質量13.0ton)を想定したBシリーズとした。AシリーズおよびBシリーズの各解析モデルの模式図をそれぞれ、図2a、bに示し、各解析モデルの側面図および平面図(解析領域)をそれぞれ図3a,bに示す。
【0046】
漂流物のモデル化に当たり、車両は極力単純な形状とし、タイヤや窓ガラス、内装材等は考慮せず、車両をモデル化したシェル要素の密度を調整することで所定の質量を与えた。
【0047】
津波の粒子間隔は計算時間等を考慮して200mm間隔とし、その総数はAシリーズで約13.5万粒子、Bシリーズで約20.3万粒子とした。津波は初期条件として、初速5.0m/s、水深3.0m、波先勾配30°を仮定した。また、津波粒子の最後部には造波板(剛板)を設け、速度5.0m/sで強制的に水平移動させている。衝突力を受ける構造物には漂流物の衝突から建物等を防護する目的で設置する鉄筋コンクリート製の杭(防衝工)を想定した。防衝工の配置は、漂流した車両が容易に通過できないように杭間を2mとし、景観等の観点から千鳥配置とした。杭寸法は断面1m×1m、高さ10mとし、配筋は軸方向鉄筋としてD32×12本、帯鉄筋としてD13@350mmピッチを仮定した。なお、本解析では防衝工の基礎部は省略し、底面を固定条件とした。
【0048】
以下、表1に水の物性値を示し、表2に材料物性値を示し、表3に解析ケースを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
(注記)
・「津波あり」は、流体−構造連成解析を示す。
・Aシリーズで「津波あり」は、現象時間が4.0秒、計算時間が93.5時間であり、「津波なし」は、現象時間が1.0秒、計算時間が19分である。
・Bシリーズで「津波あり」は、現象時間が4.0秒、計算時間が180.4時間であり、「津波なし」は、現象時間が1.0秒、計算時間が45分である。
【0052】
解析結果を図4図13に示す。ここで、図4図8はAシリーズの解析結果を示し、図9図13はBシリーズの解析結果を示している。具体的には、図4はAシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突力−時間グラフであり、図5はその時の衝突速度−時間グラフである。また、図6はAシリーズで、津波なし、漂流物および防衝工の材料がともに線形モデルの場合の衝突力−時間グラフである。さらに、図7は本発明の算定方法に基づく荷重−時間グラフであり、図8図7のグラフで時間軸を拡大した荷重−時間グラフである。一方、図9はBシリーズで、津波をモデル化した詳細な連成解析による衝突力−時間グラフであり、図10はその時の衝突速度−時間グラフである。また、図11はBシリーズで、津波なし、漂流物および防衝工の材料がともに線形モデルの場合の衝突力−時間グラフである。さらに、図12は本発明の算定方法に基づく荷重−時間グラフであり、図13図12のグラフで時間軸を拡大した荷重−時間グラフである。
【0053】
図4より、衝突力は衝突の瞬間にパルス的な波形を示し、その後、津波による継続的な荷重が作用することが分かる。
【0054】
また、図5より、Aシリーズの解析におけるワンボックスカーの衝突速度は7.45m/secと算定された。
【0055】
また、図6より、Aシリーズの解析におけるワンボックスカーの衝突時間は0.011secと算定された。
【0056】
これらの解析結果に基づき、上記する本発明の算定式(1)〜(3)を求め、荷重(衝突力)−時間グラフを作成して図7に示す。なお、同図における点線のグラフは、流体−構造連成解析から得られた荷重−時間グラフ(図4)である。
【0057】
図7における両者の一致度をより明瞭に確認するべく、図8で示すように時間軸を拡大して図示した。
【0058】
図8より、両者のグラフはほぼ一致していることが分かる。この結果より、本発明による算定式は、難易度が高く、計算時間も非常にかかる流体−構造連成解析と高い相関があることが実証されており、したがって、簡易な方法で精度よく、津波漂流物衝突荷重を算定できることが確認できた。
【0059】
ただし、図4図8は小型の漂流物を対象とした場合の解析結果である。大型の漂流物においても本発明の算定式の精度が高いことを、Bシリーズの解析結果を示す図9図13を参照して説明する。
【0060】
図4と同様、図9においても、衝突力は衝突の瞬間にパルス的な波形を示し、その後、津波による継続的な荷重が作用することが分かる。
【0061】
また、図10より、Bシリーズの解析における大型バスの衝突速度は6.38m/secと算定された。
【0062】
また、図11より、Bシリーズの解析における大型バスの衝突時間は0.025secと算定された。
【0063】
これらの解析結果に基づき、上記する本発明の算定式(1)〜(3)を求め、荷重(衝突力)−時間グラフを作成して図12に示す。なお、同図における点線のグラフは、流体−構造連成解析から得られた荷重−時間グラフ(図9)である。
【0064】
図12における両者の一致度をより明瞭に確認するべく、図13で示すように時間軸を拡大して図示した。
【0065】
図13より、両者のグラフはほぼ一致していることが分かる。この結果より、本発明による算定式は、大型の漂流物においても、難易度が高く、計算時間も非常にかかる流体−構造連成解析と高い相関があることが実証されている。
【0066】
このように、図4図13で示す規模の異なる2種類の漂流物を対象とした解析結果より、本発明の津波漂流物衝突荷重の算定方法が、簡易な方法で精度よく、津波漂流物衝突荷重を算定できることが確認できた。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13