特許第6228870号(P6228870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228870
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】検出器および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20171030BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H01J37/244
   H01J37/28 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-51170(P2014-51170)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-26596(P2015-26596A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-128577(P2013-128577)
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】金子 武司
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−026152(JP,A)
【文献】 特開平01−292282(JP,A)
【文献】 特開昭52−038880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0037802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/00−37/02
37/05
37/09−37/18
37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線の照射により試料で散乱された散乱荷電粒子線を検出し、前記試料を透過した透過荷電粒子線を通過させる検出器であって、
前記透過荷電粒子線を通過させるための第1貫通孔が設けられ、前記散乱荷電粒子線を光に変換するシンチレーターと、
前記シンチレーターで発生した光を第1開口から入射させて第2開口から射出する管部と、
前記第2開口から射出された光を導くライトガイドと、
前記ライトガイドで導かれた光を検出する光検出部と、
を含み、
前記管部には、前記透過荷電粒子線を通過させるための第2貫通孔が設けられている、検出器。
【請求項2】
請求項1において、
前記管部の内面は、鏡面である、検出器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記シンチレーターは、前記管部と接しており、
前記管部は、導電性を有している、検出器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記シンチレーターは、前記ライトガイドとキャップ部とで挟まれることにより固定されている、検出器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検出器を含む荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器および荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査透過電子顕微鏡(STEM)の暗視野像検出器は、試料で散乱された電子(散乱電子)を検出して暗視野像を得るための検出器である。暗視野像検出器には、一般的に、電子線の入射により光を発するシンチレーターが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セラミックシンチレーター、光電子増倍管、およびライトガイドを備えた暗視野像検出器が開示されている。特許文献1の暗視野像検出器では、セラミックシンチレーター、およびライトガイドには、試料で散乱されずに透過した電子(透過電子)を通過させるための貫通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−26152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の暗視野像検出器では、ライトガイドに貫通孔が設けられているため、セラミックシンチレーターの貫通孔の近傍で発生した光が、ライトガイドの貫通孔から外部に射出されてしまう場合がある。この結果、特許文献1に記載の暗視野像検出器では、セラミックシンチレーターの貫通孔の近傍で発生した光が光電子増倍管に効率よく転送されないという問題が生じる。
【0006】
図13は、ライトガイドに貫通孔が設けられている暗視野像検出器の結晶シンチレーターのSTEM像である。ここで、ライトガイドは、円柱状のガラスである。図13に示すSTEM像の中央の暗い部分(円の部分)が、結晶シンチレーターの貫通孔に対応する。図13に示すように、セラミックシンチレーターの貫通孔の近傍では、光にむらがみられる。この光のむらは、ライトガイドの貫通孔に起因する光のむらであり、シンチレーターで発生した光がライトガイドに効率よく転送されていないことを示している。
【0007】
シンチレーターで発生した光が効率よく光検出部(光電子増倍管)に転送されないと、光検出部に入射する光の量が減少し、検出感度が低下してしまう。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、シンチレーターで発生した光を効率よく光検出部に転送して、高い検出感度を有することができる検出器を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記検出器を含む荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る検出器は、
荷電粒子線の照射により試料で散乱された散乱荷電粒子線を検出し、前記試料を透過した透過荷電粒子線を通過させる検出器であって、
前記透過荷電粒子線を通過させるための第1貫通孔が設けられ、前記散乱荷電粒子線を光に変換するシンチレーターと、
前記シンチレーターで発生した光を第1開口から入射させて第2開口から射出する管部
と、
前記第2開口から射出された光を導くライトガイドと、
前記ライトガイドで導かれた光を検出する光検出部と、
を含み、
前記管部には、前記透過荷電粒子線を通過させるための第2貫通孔が設けられている。
【0010】
このような検出器によれば、管部に透過電子を通過させるための第2貫通孔が設けられているため、例えばライトガイドに貫通孔が設けられている場合と比べて、シンチレーターで発生した光を効率よく光検出部に転送することができる。したがって、高い検出感度を有することができる。
【0011】
(2)本発明に係る検出器において、
前記管部の内面は、鏡面であってもよい。
【0012】
このような検出器によれば、管部において、光を効率よく伝搬させることができる。
【0013】
(3)本発明に係る検出器において、
前記シンチレーターは、前記管部と接しており、
前記管部は、導電性を有していてもよい。
【0014】
このような検出器によれば、シンチレーターの帯電を防ぐことができる。
【0015】
(4)本発明に係る検出器において、
前記シンチレーターは、前記ライトガイドとキャップ部とで挟まれることにより固定されていてもよい。
【0016】
このような検出器によれば、シンチレーターを容易に交換することができる。
【0017】
(5)本発明に係る走査透過電子顕微鏡は、
本発明に係る検出器を含む。
【0018】
このような走査透過電子顕微鏡によれば、本発明に係る検出器を含むため、良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る検出器を模式的に示す断面図。
図2】第1実施形態に係る検出器を模式的に示す図。
図3】第1実施形態に係る検出器の管部を模式的に示す斜視図。
図4】第1実施形態に係る検出器のキャップ部を模式的に示す斜視図。
図5】管部に貫通孔が設けられている暗視野像検出器の結晶シンチレーターのSTEM像。
図6】第1実施形態に係る検出器の製造方法を模式的に示す断面図。
図7】第2実施形態に係る荷電粒子線装置を模式的に示す断面図。
図8】参考例に係る検出器を模式的に示す断面図。
図9】第3実施形態に係る検出器を模式的に示す断面図。
図10】第3実施形態に係る検出器を含んで構成された荷電粒子線装置の構成を示す図。
図11】パイプを有さない検出器において、電子線をスキャン中に、検出器の下に蛍光板が有る場合と、検出器の下に蛍光板が無い場合と、を繰り返して撮像したSTEM像。
図12】パイプを有する検出器において、電子線をスキャン中に、検出器の下に蛍光板が有る場合と、検出器の下に蛍光板が無い場合と、を繰り返して撮像したSTEM像。
図13】ライトガイドに貫通孔が設けられている暗視野像検出器の結晶シンチレーターのSTEM像。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0021】
1. 第1実施形態
1.1. 検出器
まず、第1実施形態に係る検出器について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る検出器100を模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態に係る検出器100を模式的に示す図である。図2は、検出器100を電子線の入射方向から見た図である。なお、図2では、便宜上、筒体50、キャップ部60の図示を省略している。また、図1は、図2のI−I線断面図である。
【0022】
検出器100は、荷電粒子線の照射により試料で散乱(後方散乱)された散乱荷電粒子線を検出し、試料を透過した透過荷電粒子線を通過させる検出器である。ここで、荷電粒子線とは、電子線、およびイオン線等の電荷を帯びた粒子線である。また、散乱荷電粒子線とは、荷電粒子線の照射により試料で後方散乱された荷電粒子である。また、透過荷電粒子線とは、試料で散乱されずに透過した荷電粒子線である。
【0023】
本実施形態では、検出器100が走査透過電子顕微鏡(STEM)の暗視野像検出器である例について説明する。具体的には、検出器100は、図1に示すように、電子線の照射により試料で散乱された散乱電子EBを検出し、試料を透過した透過電子EBを通過させる。
【0024】
検出器100は、図1に示すように、シンチレーター10と、管部20と、ライトガイド30と、光検出部40と、筒体50と、キャップ部60と、を含んで構成されている。
【0025】
シンチレーター10は、散乱電子EBを光に変換する。シンチレーター10は、例えば単結晶のシンチレーターである。単結晶のシンチレーター10の材質は、例えば、YAP:Ce(Yttrium aluminum perovskite)、YAG:Ce(Yttrium aluminum garnet)、LSO:Ce(LuSiO:Ce)等である。なお、シンチレーター10は、粉末のシンチレーターであってもよい。シンチレーター10として粉末のシンチレーターを用いる場合、例えば、ガラス板や、アクリル樹脂の板に粉末のシンチレーターを塗布したものを用いる。粉末のシンチレーターの材質は、例えば、P22(ZnS:Cu)、P43(GdS:Tb)、P46(YAl12:Ce)、P47(YSiO:Ce)、粉末LSO:Ce(LuSiO:Ce)等である。
【0026】
シンチレーター10は、図2に示すように、環状に設けられている。シンチレーター10には、透過電子EBを通過させるための貫通孔12が設けられている。貫通孔12は、透過電子EBの進行方向に沿って設けられている。貫通孔12は、管部20内の空間21と連通している。シンチレーター10は、図1に示すように、透過電子EBの進行方向に対して、所定の角度(例えば45度)傾いて配置されている。
【0027】
シンチレーター10の表面は、例えば、導電膜(図示せず)で覆われている。これにより、シンチレーター10の帯電を防ぐことができる。導電膜としては、例えば、アルミニウム膜等の金属膜、カーボン膜等を用いることができる。
【0028】
管部20は、シンチレーター10とライトガイド30との間に設けられている。図3は、管部20を模式的に示す斜視図である。管部20は、図3に示すように、第1開口22と、第2開口24と、空間21と、を有している。管部20は、シンチレーター10で発生した光を第1開口22から入射させて第2開口24から射出する。第1開口22上には、図1に示すように、シンチレーター10が配置されている。管部20とシンチレーター10とは、図示の例では、接している。第2開口24上には、ライトガイド30が配置されている。図示の例では、管部20とライトガイド30とは接している。
【0029】
なお、図示はしないが、管部20の内部の空間21にライトガイド30の一部が挿入されていてもよい。この場合、ライトガイド30は、管部20の貫通孔26を塞がないように配置される。
【0030】
管部20は、円筒の両端部を、該円筒の中心軸に対して所定の角度(例えば45度)で切断した形状を有している。すなわち、管部20の第1開口22および第2開口24は、管部20の中心軸に対して所定の角度(例えば45度)傾いた開口である。
【0031】
管部20の内部の空間21は、例えば空洞である。空間21は、シンチレーター10で発生した光を導くための導光路として機能する。管部20の内面(空間21を規定する面)は、例えば鏡面である。
【0032】
管部20には、透過電子EBを通過させるための貫通孔26が設けられている。貫通孔26は、図示の例では、管部20の側面に設けられている。貫通孔26は、空間21に連通している。透過電子EBは、シンチレーター10の貫通孔12を通って空間21に入射し、貫通孔26から射出される。
【0033】
管部20の材質は、例えば、アルミニウム等の金属である。管部20は、導電性を有していることが望ましい。これにより、シンチレーター10の帯電を防ぐことができる。
【0034】
ライトガイド30は、管部20の第2開口24から射出された光を光検出部40に導く。ライトガイド30の形状は、例えば、柱状である。ライトガイド30は、図示の例では、円柱の一方の端部を該円柱の中心軸に対して所定の角度(例えば45度)で切断した形状を有している。図示はしないが、ライトガイド30の形状は、円柱であってもよい。
【0035】
ライトガイド30の材質は、例えば、ガラス、アクリル樹脂等である。ライトガイド30は、例えば、柱状のガラスの側面に金属膜(アルミニウム膜)が形成された構造を有していてもよい。なお、ライトガイド30は、図示はしないが、複数の光ファイバーを束ねた構造を有していてもよい。
【0036】
検出器100では、管部20およびライトガイド30は、シンチレーター10で発生した光を光検出部40に導くための部材として機能する。図示の例では、管部20の中心軸およびライトガイド30の中心軸は、透過電子EBの進行方向に対して垂直な軸である。すなわち、管部20およびライトガイド30における光の伝搬方向は、透過電子EBの進行方向に対して垂直な方向である。
【0037】
光検出部40は、ライトガイド30で導かれた光を検出する。光検出部40は、シンチレーター10で発生し、管部20およびライトガイド30を介して、光検出部40に入射
する光を検出する。光検出部40は、ライトガイド30の端面に接続されている。光検出部40は、例えば、光電子増倍管(Photo Multiplier Tube、PMT)である。光電子増倍管とは、光電効果を利用して光エネルギーを増幅して電気エネルギーに変換する光検出器である。
【0038】
筒体50は、シンチレーター10、管部20、ライトガイド30、および光検出部40を収容する部材である。筒体50は、電子線EB、EBを通過させるための窓部52を有している。筒体50は、さらに、シンチレーター10の貫通孔12および管部20の貫通孔26を通過した透過電子EBを通過させるための窓部54を有している。筒体50は、例えば、導電性を有している。筒体50の材質は、例えば、アルミニウム等の金属である。
【0039】
キャップ部60は、シンチレーター10を固定するための部材である。図4は、キャップ部60を模式的に示す斜視図である。キャップ部60は、図4に示すように、円筒の一方の端部を該円筒の中心軸に対して所定の角度(例えば45度)で切断した形状を有している。キャップ部60の端面は、図1の例では、シンチレーター10に接している。キャップ部60には、電子線EB,EBを通過させるための貫通孔64が設けられている。
【0040】
検出器100では、シンチレーター10は、キャップ部60と管部20とで挟まれることで固定されている。キャップ部60は、ピン(ネジ)62によって筒体50に固定されている。キャップ部60は、アルミニウム等の導電性を有する材料で構成されている。これにより、シンチレーター10の帯電を防ぐことができる。
【0041】
第1実施形態に係る検出器100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0042】
検出器100では、管部20は、シンチレーター10で発生した光を第1開口22から入射させて第2開口24から射出し、管部20には、透過電子EBを通過させるための貫通孔26が設けられている。これにより、例えばライトガイドに貫通孔が設けられている場合と比べて、シンチレーター10で発生した光を効率よく光検出部40に転送することができる。したがって、検出器100は、高い検出感度を有することができる。
【0043】
図5は、管部20に貫通孔26が設けられている暗視野像検出器の結晶シンチレーターのSTEM像である。図5に示すSTEM像の中央の暗い部分(円の部分)が、結晶シンチレーターの貫通孔に対応する。図5に示すように、セラミックシンチレーターの貫通孔の近傍では光のむら(図9参照)が見られない。このことから、検出器100は、シンチレーター10で発生した光を、例えば管部を設けずにライトガイドに貫通孔を設けた場合と比べて、効率よく光検出部40に転送することができることがわかる。
【0044】
例えば管部を設けずにライトガイドに貫通孔を設けた場合には、ライトガイドの貫通孔が、シンチレーターの貫通孔の近傍で発生した光を外部に導く経路となる。これに対して、検出器100では、シンチレーター10とライトガイド30との間に、貫通孔26を設けた管部20が配置されている。そのため、シンチレーター10の貫通孔12の近傍で発生した光は、一部は管部20の貫通孔26を通って外部に射出されるものの、大部分は空間21を通ってライトガイド30に入射する。すなわち、検出器100では、上記のようなシンチレーター10の貫通孔12の近傍で発生した光を外部に導く経路ができない。したがって、検出器100では、シンチレーターで発生した光を効率よく光検出部40に転送することができる。
【0045】
検出器100では、管部20の内面は、鏡面である。これにより、管部20において、
光を効率よく伝搬させることができる。
【0046】
検出器100では、シンチレーター10は、管部20と接しており、管部20は、導電性を有している。これにより、シンチレーター10の帯電を防ぐことができる。
【0047】
検出器100では、シンチレーター10は、ライトガイド30とキャップ部60とで挟まれることにより固定されている。これにより、検出器100では、シンチレーター10の装着や取り外しを容易化できる。したがって、検出器100では、例えばシンチレーター10を容易に交換することができる。
【0048】
1.2. 検出器の製造方法
次に、第1実施形態に係る検出器の製造方法について図面を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態に係る検出器100の製造方法を模式的に示す断面図である。
【0049】
図6に示すように、光検出部40、ライトガイド30、および管部20を筒体50に収容する。なお、管部20にはあらかじめ貫通孔26を形成する。
【0050】
図1に示すように、管部20の端面上にシンチレーター10を配置してキャップ部60を筒体50に挿入する。そして、シンチレーター10をキャップ部60と管部20とで挟んで固定する。このとき、シンチレーター10の貫通孔12と管部20の貫通孔26とが、透過電子EBの進行方向からみて重なるように固定する。
【0051】
以上の工程により、検出器100を製造することができる。
【0052】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る荷電粒子線装置について図面を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係る荷電粒子線装置1の構成を示す図である。ここでは、荷電粒子線装置1が、走査透過電子顕微鏡(STEM)である例について説明する。
【0053】
荷電粒子線装置1は、図7に示すように、本発明に係る検出器を含んで構成されている。ここでは、荷電粒子線装置1が、本発明に係る検出器として検出器100(暗視野像検出器)を含んで構成されている場合について説明する。
【0054】
荷電粒子線装置1は、さらに、電子線源2と、照射レンズ(コンデンサーレンズ)3と、走査コイル4と、対物レンズ5と、投影レンズ6と、明視野像検出器7と、を含んで構成されている。
【0055】
電子線源2は、電子線EBを発生させる。電子線源2は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する。加速電圧は特に限定されず、例えば200kVである。電子線源2としては、公知の電子銃を用いることができる。電子線源2として用いられる電子銃は特に限定されず、例えば熱電子放出型や、熱電界放出型、冷陰極電界放出型などの電子銃を用いることができる。
【0056】
集束レンズ3は、電子線源2の後段(電子線EBの下流側)に配置されている。集束レンズ3は、電子線源2で発生した電子線EBを集束させるためのレンズである。集束レンズ3は、図示はしないが、多段に構成されていてもよい。
【0057】
走査コイル4は、集束レンズ3の後段に配置されている。走査コイル4は、集束レンズ3および対物レンズ5により集束された電子線EB(電子プローブ)を試料S上で走査する。
【0058】
対物レンズ5は、走査コイル4の後段に配置されている。対物レンズ5は、電子線EBを集束して試料Sに照射するためのレンズである。
【0059】
試料Sは、試料ホルダー(図示せず)によって支持されており、試料ステージによって試料室における位置決めが行われる。試料ステージは、例えば、試料Sの水平移動、上下移動、回転、傾斜などの動作を行うことができる。
【0060】
投影レンズ6は、対物レンズ5の後段に配置されている。投影レンズ6は、対物レンズ5の像面もしくは後方焦点面(回折面)を投影して検出器100上または明視野像検出器7上に結像するためのレンズである。
【0061】
検出器100は、投影レンズ6の後段に配置されている。なお、検出器100の位置は、試料Sよりも後段(後方)であれば特に限定されない。検出器100は、暗視野像検出器として機能している。検出器100は、試料Sで散乱された散乱電子EBを検出する。なお、試料Sで散乱されずに透過した透過電子EBは、検出器100を通過して明視野像検出器7に入射する。
【0062】
明視野像検出器7は、検出器100の後段(後方)に配置されている。明視野像検出器7は、検出器100を通過した透過電子EBを検出する。明視野像検出器7は、例えば、シンチレーターおよび光電子増倍管を含んで構成されている。
【0063】
次に、荷電粒子線装置1の動作について説明する。
【0064】
荷電粒子線装置1では、電子線源2から所定の加速電圧で加速されて放出された電子線EBは、集束レンズ3および対物レンズ5によって集束され試料Sに照射される。このとき、細く集束された電子線EBを、走査コイル4を用いて試料S上で走査する。
【0065】
試料Sに電子線EBが照射されると、試料Sで散乱された散乱電子EBおよび試料Sで散乱されずに透過した透過電子EBは、投影レンズ6を介して、検出器100の筒体50の窓部52に入射する。
【0066】
窓部52に入射した散乱電子EBは、キャップ部60の貫通孔64を通過して、シンチレーター10に入射する。
【0067】
シンチレーター10に入射した散乱電子EBは、シンチレーター10で光に変換される。シンチレーター10で発生した光は、管部20の第1開口22から入射し、空間21を通って管部20の第2開口24から射出される。そして、第2開口24から射出された光は、ライトガイド30によって光検出部40に導かれ、光検出部40で検出される。
【0068】
光検出部40は、入射した光を増幅して電気エネルギーに変換し、電気信号として出力する。荷電粒子線装置1では、この電気信号を、走査コイル4における走査信号と同期させて、画像(暗視野像)を生成する。
【0069】
一方、窓部52に入射した透過電子EBは、検出器100を通過する。具体的には、透過電子EBは、筒体50の窓部52、キャップ部60の貫通孔64、シンチレーター10の貫通孔12、管部20の第1開口22、空間21、管部20の貫通孔26、筒体50の窓部54を通過する。検出器100を通過した透過電子EBは、明視野像検出器7で検出される。
【0070】
荷電粒子線装置1では、明視野像検出器7で検出された検出結果に基づいて、画像(明視野像)を生成する。
【0071】
荷電粒子線装置1では、高い検出感度を有することができる検出器100を含んで構成されている。したがって、荷電粒子線装置1は、良好な画像(暗視野像)を得ることができる。
【0072】
なお、参考例として、キャップ部60を備えた検出器の他の形態について説明する。図8は、参考例に係る検出器200の一例を示す断面図である。
【0073】
検出器200では、粉末のシンチレーター10が塗布された基板(ガラス基板やアクリル樹脂基板)210をキャップ部60およびライトガイド30で挟むことにより固定している。これにより、検出器200では、粉末のシンチレーター10を容易に交換することができる。なお、検出器200では、ライトガイド30に貫通孔32が設けられているが、図示はしないが、上述した検出器100と同様に管部20を設けて、管部20に貫通孔26を形成してもよい。
【0074】
3. 第3実施形態
まず、第3実施形態に係る検出器について図面を参照しながら説明する。図9は、第3実施形態に係る検出器300を模式的に示す断面図である。以下、第3実施形態に係る検出器300において、上述した第1実施形態に係る検出器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
検出器300では、図9に示すように、筒体50の窓部54と連通するパイプ310が設けられている。
【0076】
パイプ310は、筒体50の外面56に設けられている。パイプ310の形状は、例えば、円筒であり、中心軸が透過電子EBの光軸に沿うように設けられる。パイプ310は、筒体50の外側に向かって延在している。パイプ310は、アルミニウム等の導電性を有する材料で構成されている。これにより、帯電を防ぐことができる。パイプ310の材質は、例えば、筒体50の材質と同じである。パイプ310の孔径は、例えば、窓部54の孔径と同じである。
【0077】
透過電子EBは、筒体50の窓部52から入射し、キャップ部60の貫通孔64、シンチレーター10の貫通孔12、管部20の第1開口22、空間21、管部20の貫通孔26、筒体50の窓部54、パイプ310を通過して射出される。
【0078】
図10は、第3実施形態に係る検出器300を含んで構成された荷電粒子線装置1Dの構成を示す図である。以下、第3実施形態に係る荷電粒子線装置1Dにおいて、上述した第2実施形態に係る荷電粒子線装置1の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0079】
荷電粒子線装置1では、図10に示すように、検出器300を通過した透過電子EBは、蛍光板8に照射される。蛍光板8は、透過電子EBが照射されることにより、発光する。この蛍光板8からの光Lの一部は検出器300の筒体50の窓部54に向かって進行するが、検出器300ではパイプ310が設けられているため、光Lが窓部54から検出器300内に入ることを抑制することができる。なお、光Lが窓部54から検出器300内に入ることを抑制する効果を高めるためには、パイプ310の長さ(透過電子EBの光軸に沿う方向の大きさ)は、長いことが望ましい。
【0080】
図11は、パイプ310を有さない検出器(例えば図1に示す検出器100)において、電子線EBをスキャン中に、検出器の下に蛍光板8が有る場合と、検出器の下に蛍光板8が無い場合と、を繰り返して撮像したSTEM像である。図11に示す(a)の範囲は、検出器の下に蛍光板8が有る場合であり、(b)の範囲は検出器の下に蛍光板8が無い場合である。
【0081】
図11に示すように、パイプ310を有さない検出器では、検出器の下に蛍光板8が有る場合と、検出器の下に蛍光板8が無い場合とでは、STEM像の輝度(信号量)の差が大きいことがわかる。
【0082】
図12は、パイプ310を有する検出器(例えば検出器300)において、電子線EBをスキャン中に、検出器の下に蛍光板8が有る場合と、検出器の下に蛍光板8が無い場合と、を繰り返して撮像したSTEM像である。図12に示す(a)の範囲は、検出器の下に蛍光板8が有る場合であり、(b)の範囲は検出器の下に蛍光板8が無い場合である。
【0083】
図12に示すように、パイプ310を有する検出器では、検出器の下に蛍光板8が有る場合と、検出器の下に蛍光板8が無い場合とでは、図11に示す例と比べて、STEM像の輝度(信号量)の差が小さいことがわかる。これは、窓部54にパイプ310が設けられているため、蛍光板で発生した光が窓部54から検出器内に入ることを抑制することができるためと考えられる。
【0084】
検出器300では、筒体50の窓部54と連通するパイプ310が設けられているため、筒体50の窓部54から光が検出器300内に入ることを抑制することができる。これにより、S/Nの良いSTEM像の取得が可能となる。
【0085】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0086】
1,1D…荷電粒子線装置、2…電子線源、3…集束レンズ、4…走査コイル、5…対物レンズ、6…投影レンズ、7…明視野像検出器、8…蛍光板、10…シンチレーター、12…貫通孔、20…管部、21…空間、22…第1開口、24…第2開口、26…貫通孔、30…ライトガイド、32…貫通孔、40…光検出部、50…筒体、52…窓部、54…窓部、56…外面、60…キャップ部、64…貫通孔、100,200…検出器、210…基板、300…検出器、310…パイプ
図1
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