(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変位する金属板に対して2つの検出回路を設けると、2つの検出回路のうち一方の回路に不具合が生じても他方の検出回路に設けられるコイルの電圧から金属板の位置を検出することができる。すなわち、渦電流式変位センサに冗長性を持たせることができる。しかしながら、2つの検出回路が正常に動作する場合、それぞれの検出回路に設けられるコイルに与えられる周波数及び位相の違いにより金属板に生じる渦電流の干渉が生じるおそれがある。ひいては、金属板の検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、冗長性を有するとともに検出精度の良い渦電流式変位センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、渦電流式変位センサは、第1の発振コイルを発振させる第1の発振回路と、第2の発振コイルを発振させる第2の発振回路と、前記第1及び第2の発振コイルが発振させる磁束によって渦電流が生じるとともに前記第1及び第2の発振コイルに対して変位する検出対象と、前記第1及び第2の発振コイルが発振させる磁束と前記検出対象に生じる渦電流が発生させる磁束に基づいて第1の受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を検出する第1の検出部と、前記第1及び第2の発振コイルが発振させる磁束と前記検出対象に生じる渦電流が発生させる磁束に基づいて第2の受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を検出する第2の検出部と、を備え、前記第2の発振回路が前記第2の発振コイルを発振させているとき前記第1の発振回路は前記第1の発振コイルを発振させず、前記第1の発振回路が前記第1の発振コイルを発振させているとき前記第2の発振回路は前記第2の発振コイルを発振させないことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、第1の発振コイルと第2の発振コイルとが同時に発振しない。したがって、検出対象において第1の発振コイルの発振に基づく渦電流と第2の発振コイルの発振に基づく渦電流とが干渉しない。また、第1の発振コイルの発振に基づく磁束と第2の発振コイルの発振に基づく磁束とが干渉しない。このため、第1の受信コイルに生じる誘導電圧は、第1の受信コイルと検出対象との間の距離に比例する。これにより、第1の検出部は、受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を精度よく検出することができる。また、第2の受信コイルに生じる誘導電圧は、第2の受信コイルと検出対象との間の距離に比例する。これにより、第2の検出部は、受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を精度よく検出することができる。さらに、第1の発振回路に不具合が生じた場合には第2の発振回路を通じて第2の発振コイルを、第2の発振回路に不具合が生じた場合には第1の発振回路を通じて第1の発振コイルを、それぞれ発振させることにより、検出対象の位置を検出することができる。すなわち、この構成の渦電流式変位センサは冗長性も有している。
【0008】
上記構成において、前記第1の発振回路を制御する第1の制御部と、前記第2の発振回路を制御する第2の制御部と、を備え、前記第1の制御部と前記第2の制御部との間は接続線により接続されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1の制御部は、接続線を介して第2の発振回路が第2の発振コイルを発振させているか否かを判断することができる。また、第2の制御部は、接続線を介して第1の発振回路が第1の発振コイルを発振させているか否かを判断することができる。
【0010】
上記構成において、前記第2の発振回路が前記第2の発振コイルの発振を停止したことをトリガとして起動し前記第2の発振コイルの発振が停止してから前記検出対象における渦電流が消失するのに十分な時間に設定された設定時間だけ駆動する第1のタイマと、前記第1の発振回路が前記第1の発振コイルの発振を停止したことをトリガとして起動し前記第1の発振コイルの発振が停止してから前記検出対象における渦電流が消失するのに十分な時間に設定された設定時間だけ駆動する第2のタイマと、を備え、前記第1の制御部は前記第1のタイマが駆動している間前記第1の発振コイルを、前記第2の制御部は前記第2のタイマが駆動している間前記第2の発振コイルを、それぞれ発振させないことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1の発振コイルが発振したことによって検出対象に生じる渦電流と第2の発振コイルが発振したことによって検出対象に生じる渦電流とが混在しない。したがって、受信コイルに生じる誘導電圧は、第1の発振コイルが発振したことによって検出対象に生じる渦電流によって生じるものか、第2の発振コイルが発振したことによって検出対象に生じる渦電流によって生じるものかのどちらかとなる。これにより、検出部は、受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を精度よく検出することができる。
【0012】
上記構成において、前記第1の発振回路を制御する第1の制御部と、前記第2の発振回路を制御する第2の制御部と、を備え、前記第1の制御部は前記第1の受信コイルと、前記第2の制御部は前記第2の受信コイルと、それぞれ接続されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1の制御部は、第1の受信コイルの誘導電圧を通じて第2の発振回路が第2の発振コイルを発振させているか否かを判断することができる。また、第2の制御部は、第2の受信コイルの誘導電圧を通じて第1の発振回路が第1の発振コイルを発振させているか否かを判断することができる。
【0014】
上記構成において、前記第1の検出部は、前記第1の発振コイルの発振周期の半分の整数倍と異なる間隔で前記第2の発振コイルが発振されることによって誘起される前記第1の受信コイルの誘導電圧を検出し、前記第2の検出部は、前記第2の発振コイルの発振周期の半分の整数倍と異なる間隔で前記第1の発振コイルが発振されることによって誘起される前記第2の受信コイルの誘導電圧を検出することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1の検出部は第2の発振コイルの発振に伴う誘導電圧を第1の発振コイルの発振周期と異なる間隔で検出し、第2の検出部は、第1の発振コイルの発振に伴う誘導電圧を第2の発振コイルの発振周期と異なる間隔で検出する。したがって、第1及び第2の検出部が検出する誘導電圧が正弦波状となりやすい。このため、正弦波状の誘導電圧のピークを検出することが可能となり、第1の制御部は、第1の受信コイルの誘導電圧を通じて第2の発振回路が第2の発振コイルを発振させているか否かを精度よく判断することができる。また、第2の制御部は、第2の受信コイルの誘導電圧を通じて第1の発振回路が第1の発振コイルを発振させているか否かを精度よく判断することができる。よって、第1及び第2の検出部は、検出対象の位置を精度よく検出することができる。
【0016】
上記構成において、前記第1の発振回路は前記第1の発振コイルを発振させている場合に前記第1の検出部が前記検出対象の変位を検出しているときには前記第1の発振コイルを発振させ続け、前記第2の発振回路は前記第2の発振コイルを発振させている場合に前記第2の検出部が前記検出対象の変位を検出しているときには前記第2の発振コイルを発振させ続けることが好ましい。
【0017】
検出対象が変位している間に発振回路が切り替わると、検出部が切り替わる間における検出対象の変位を検出することが難しい。その点、この構成によれば、検出対象が変位している間は発振回路が切り替わらないので、第1及び第2の検出部は検出対象の変位を好適に検出することができる。
【0018】
上記構成において、前記第1の検出部は、前記第1の発振回路が前記第1の発振コイルを発振させていない場合でも前記第1の受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を検出し、前記第2の検出部は、前記第2の発振回路が前記第2の発振コイルを発振させていない場合でも前記第2の受信コイルに生じる誘導電圧の検出を通じて検出対象の位置を検出することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1及び第2の検出部は、発振させる回路にかかわらず第1及び第2の受信コイルに生じる誘導電圧から検出対象の位置を検出する。すなわち、第1の検出部は、第1の発振回路に不具合が生じても第2の発振回路が第2の発振コイルを発振させることによって第1の受信コイルに生じる誘導電圧から検出対象の位置を検出する。また、第2の検出部は、第2の発振回路に不具合が生じても第1の発振回路が第1の発振コイルを発振させることによって第2の受信コイルに生じる誘導電圧から検出対象の位置を検出する。このように、この構成の渦電流式変位センサは高い冗長性を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の渦電流式変位センサは、冗長性を有するとともに検出精度がよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、渦電流式変位センサの第1の実施形態を図面に従って説明する。
<渦電流式変位センサの構成>
図1に示すように、渦電流式変位センサ1は、第1の変位センサ10と、第2の変位センサ20と、金属板30と、を備えて構成されている。
【0023】
<第1の変位センサ>
第1の変位センサ10は、CPU11と、発振コイル12と、受信コイル13とを備えている。発振コイル12及び受信コイル13は、それぞれCPU11と接続されている。
【0024】
CPU11は、メモリ14と、発振回路15と、検出部16と、タイマ17と、制御部18と、クロック19と、を備えている。
メモリ14には、受信コイル13に生じる誘導電圧と金属板30の位置とが対応づけて記憶されている。
【0025】
発振回路15は、後述の発振開始信号を認識すると、発振コイル12を発振させる。また、発振回路15は、後述の発振停止信号を認識すると、発振コイル12の発振を停止する。
【0026】
検出部16は、受信コイル13に生じる誘導電圧を検出する。
タイマ17は、設定時間だけ駆動する。設定時間は、後述の発振コイル22が発振したことに伴い金属板30に生じる渦電流が消失するのに十分な時間だけ設定されている。
【0027】
クロック19は、発振コイル12の発振周波数の2倍の周波数且つデューティー比50%のクロック信号(矩形波)を生成する。
制御部18は、メモリ14、発振回路15、検出部16、タイマ17、及びクロック19のそれぞれと接続されている。制御部18は、これら各構成を統括的に制御する。なお、制御部18と後述する第2の変位センサ20の制御部28との間は、接続線40により接続されている。制御部18は、接続線40を介して制御部28との間で各種情報の授受を行う。
【0028】
制御部18は、自身が生成する発振停止信号を生成した後、後述するCPU21からの発振停止信号の受信をトリガとして起動させるタイマ17の駆動が停止したことを検出すると、発振開始信号を生成する。
【0029】
制御部18は、発振開始信号の生成後、クロック19が生成するクロック信号が立ち上がるタイミングに合わせて検出部16から誘導電圧を取得し、当該誘導電圧を通じて金属板30が変位しているか否かを判断する。金属板30が変位していると判断される場合には、誘導電圧とメモリ14に記憶されている情報との比較を通じて金属板30の位置を特定する。金属板30が変位していないと判断される場合には、発振停止信号を生成する。
【0030】
なお、発振コイル12が第1の発振コイルに、受信コイル13が第1の受信コイルに、発振回路15が第1の発振回路に、制御部18が第1の制御部に、金属板30が検出対象に、それぞれ相当する。
【0031】
<第2の変位センサ>
第2の変位センサ20は、第1の変位センサ10と同様の構成とされている。すなわち、第2の変位センサ20は、CPU21と、発振コイル22と、受信コイル23とを備えている。CPU21は、メモリ24と、発振回路25と、検出部26と、タイマ27と、制御部28と、クロック29と、を備えている。これら各構成の動作は、第1の変位センサ10の各構成の動作と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0032】
なお、発振コイル22が第2の発振コイルに、受信コイル23が第2の受信コイルに、発振回路25が第2の発振回路に、制御部28が第2の制御部に、それぞれ相当する。
<渦電流式変位センサの作用>
次に、渦電流式変位センサ1の作用について
図2に示すシーケンスチャートに従って説明する。当該説明は、CPU11(制御部18)が発振開始信号を生成する時点から開始する。なお、CPU21(制御部28)が発振停止信号を生成した後であるものとする。
【0033】
図2に示すように、CPU11は、発振開始信号を生成すると(ステップS11)、発振コイル12の発振が開始される(ステップS12)。発振開始信号は、接続線40を介してCPU21に送られる。CPU21は、発振開始信号の認識を通じてCPU11が発振を開始したことを認識する(ステップS21)。
【0034】
その後、CPU11は、金属板30の変位を検出する場合には当該金属板30の変位しなくなるまで金属板30の位置を検出する(ステップS13)。CPU11は、金属板30の変位を検出しなくなると、発振停止信号を生成する(ステップS14)。これにより、発振コイル12の発振が停止される(ステップS15)。発振停止信号は、接続線40を介してCPU21に送られる。CPU21は、発振停止信号の認識を通じてCPU11が発振を停止したことを認識する(ステップS22)。
【0035】
CPU21は、発振停止信号を認識すると、タイマ27を起動させる(ステップS23)。CPU21はタイマ27の駆動が停止したことを認識すると(ステップS24)、発振開始信号を生成する(ステップS25)。これにより、発振コイル22の発振が開始される(ステップS26)。発振開始信号は、接続線40を介してCPU11に送られる。CPU11は、発振開始信号の認識を通じてCPU21が発振を開始したことを認識する(ステップS16)。
【0036】
その後、CPU21は、金属板30の変位を検出する場合には当該金属板30の変位しなくなるまで金属板30の位置を検出する(ステップS27)。CPU21は、金属板30の変位を検出しなくなると、発振停止信号を生成する(ステップS28)。これにより、発振コイル22の発振が停止される(ステップS29)。発振停止信号は、接続線40を介してCPU11に送られる。CPU11は、発振停止信号の認識を通じてCPU21が発振を停止したことを認識する(ステップS17)。
【0037】
CPU11は、発振停止信号を認識すると、タイマ17を起動させる(ステップS18)。CPU11はタイマ17の駆動が停止したことを認識すると(ステップS19)、発振コイル22の発振を開始する(ステップS11)。これ以降は、ステップS11〜S19及びステップS21〜S29の繰り返しとなる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)制御部18と制御部28との間を接続線40で接続した。そして、制御部28が生成する発振開始信号及び発振停止信号を認識してから発振コイル12を発振するようにCPU11を構成した。また、制御部18が生成する発振開始信号及び発振停止信号を認識してから発振コイル22を発振するようにCPU21を構成した。このように構成したことにより、CPU11が発振コイル12を発振させるタイミングとCPU21が発振コイル22を発振させるタイミングとが重ならない。従って、発振コイル12,22の発振周波数や位相の違いによる干渉が抑制される。すなわち、発振コイル12,22は、他の発振コイルによるインダクタンスの変化が抑制されているので、金属板30の検出精度が高い。
【0039】
なお、CPU11及びCPU21のどちらかに不具合が発生した場合でも、他方のCPUが金属板30の位置を検出することができるので、渦電流式変位センサ1は冗長性も有している。
【0040】
(2)CPU11にタイマ17を、CPU21にタイマ27をそれぞれ設けた。タイマ17,27は、それぞれ発振停止信号をトリガとして金属板30に生じる渦電流が消失するのに十分な時間に設定された設定時間だけ駆動する。そして、制御部18はタイマ17の駆動中において、制御部28はタイマ27の駆動中において、それぞれ発振開始信号を生成しないようにした。これにより、発振コイル12が発振したことにより金属板30に生じる渦電流と発振コイル22が発振したことにより金属板30に生じる渦電流とが混在しないので、CPU11,21は金属板30の位置を精度よく検出することができる。
【0041】
(3)金属板30の変位を検出している間、発振停止信号を生成しないように制御部18,28を構成した。すなわち、金属板30が変位している間、発振回路は切り替わらないので、高い精度で金属板30の位置を検出することができる。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、渦電流式変位センサの第2の実施形態について説明する。なお、
図3に示すように、第2の実施形態の渦電流式変位センサ2では、上述した第1の実施形態において、CPU11とCPU21との間を接続する接続線40が省略されたことが主たる相違点である。また、タイマ17,27も省略されている。そのため、第1の実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
【0043】
<第1の変位センサ>
制御部18は、発振停止信号を生成してから発振開始信号を生成するまでの間、すなわちCPU21(制御部28)が発振コイル22を発振させている間、クロック19が生成するクロック信号が立ち上がるタイミングの10回に1回の割合及びクロック信号が立ち下がるタイミングの10回に1回の割合で検出部16が検出する誘導電圧を取得する。当該誘導電圧を通じて、制御部18は、CPU21が発振コイル22を発振させているか否かを判断する。制御部18は、取得する誘導電圧が0(零)でない、すなわちCPU21が発振コイル22を発振させていると判断される場合には、発振開始信号を生成しない。また、制御部18は、取得する誘導電圧が0(零)である、すなわちCPU21が発振コイル22を発振させていないと判断される場合には、発振開始信号を生成する。
【0044】
<第2の変位センサ>
第2の変位センサ20の各構成の動作は、第1の変位センサ10の各構成の動作と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0045】
<渦電流式変位センサの作用>
次に、渦電流式変位センサ2の作用について
図4に示すシーケンスチャートに従って説明する。なお、当該説明は、CPU21(制御部28)が発振停止信号を生成した後、CPU11(制御部18)が発振開始信号を生成する時点から開始する。
【0046】
図4に示すように、CPU11は、発振開始信号を生成すると(ステップS31)、発振コイル12の発振が開始される(ステップS32)。
なお、CPU21は、受信コイル23の誘導電圧の検出を通じてCPU11が発振コイル12の発振を開始したと判断する(ステップS41)。
【0047】
その後、CPU11は、金属板30の変位を検出する場合には当該金属板30の変位しなくなるまで金属板30の位置を検出する(ステップS33)。CPU11は、金属板30の変位を検出しなくなると、発振停止信号を生成する(ステップS34)。これにより、発振コイル12の発振が停止される(ステップS35)。
【0048】
CPU21は、受信コイル23の誘導電圧(零)の検出を通じてCPU11が発振コイル12を発振させていないと判断し(ステップS42)、発振開始信号を生成する(ステップS43)。これにより、発振コイル22の発振が開始される(ステップS44)。
【0049】
なお、CPU11は、受信コイル13の誘導電圧の検出を通じてCPU21が発振コイル22の発振を開始したと判断する(ステップS36)。
その後、CPU21は、金属板30の変位を検出する場合には当該金属板30の変位しなくなるまで金属板30の位置を検出する(ステップS45)。CPU21は、金属板30の変位を検出しなくなると、発振停止信号を生成する(ステップS46)。これにより、発振コイル12の発振が停止される(ステップS47)。
【0050】
続いて、CPU11は、受信コイル13の誘導電圧(零)の検出を通じてCPU21が発振コイル22を発振させていないと判断し(ステップS37)、発振開始信号を生成する(ステップS31)。これ以降は、ステップS31〜S37及びステップS41〜S47の繰り返しとなる。
【0051】
<誘導電圧を取得するタイミング>
次に、制御部18,28が検出部16,26から誘導電圧を取得するタイミングについて説明する。なお、制御部18,28が誘導電圧の取得先が異なるだけで、その取得タイミングについては同じであることから、ここでは、制御部18における誘導電圧の取得タイミングについてのみ説明する。
【0052】
図5に示すように、制御部18は、クロック信号が立ち上がるタイミングの10回に1回の割合及びクロック信号が立ち下がるタイミングの10回に1回の割合で検出部16が検出する誘導電圧を取得する。これにより、検出部16が受信する誘導電圧が上昇しているとき、誘導電圧が下降しているとき、上昇から下降に転じるとき、及び下降から上昇に転じるとき、というように多様な状況の誘導電圧を取得することができる。また、常に同じタイミング(同じ位相)で誘導電圧を取得する場合、他のCPU側の発振コイルが発振しているにもかかわらず取得する誘導電圧が0(零)となり、発振していないと誤判定するおそれがある。これらの点において、本例の制御部18,28は、検出精度がよい。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態における(3)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
(4)制御部18を、自身が発振コイル12を発振させていない状態における受信コイル13の誘導電圧からCPU21が発振コイル22を発振させているか否かを判断するように構成した。そして、CPU21が発振コイル22を発振させていない場合のみ発振コイル12を発振させるように構成した。また、制御部28についても同様に構成した。
【0054】
また、制御部28を、自身が発振コイル22を発振させていない状態における受信コイル23の誘導電圧からCPU11が発振コイル12を発振させているか否かを判断するように構成した。そして、CPU11が発振コイル12を発振させていない場合のみ発振コイル22を発振させるように構成した。
【0055】
このように構成したことにより、CPU11が発振コイル12を発振させるタイミングとCPU21が発振コイル22を発振させるタイミングとが重ならない。従って、発振コイル12,22の発振周波数や位相の違いによる干渉が抑制される。すなわち、発振コイル12,22は、他の発振コイルによるインダクタンスの変化が抑制されているので、金属板30の検出精度が高い。
【0056】
なお、CPU11及びCPU21のどちらかに不具合が発生した場合でも、他方のCPUが金属板30の位置を検出することができるので、渦電流式変位センサ1は冗長性も有している。
【0057】
(5)また、渦電流式変位センサ2は、上記第1の実施形態のように制御部18と制御部28とを接続する接続線が省略されている。したがって、渦電流式変位センサ2は、上記第1の実施形態の渦電流式変位センサ1と比較して部品点数が少ない。ひいては、渦電流式変位センサ2は、製造にかかる工数が少ない。
【0058】
(6)制御部18を、自身が発振コイル12を発振させていない状態で取得する誘導電圧が0(零)である場合にCPU21が発振コイル22を発振させていないと判断するように構成した。
【0059】
また、制御部28を、自身が発振コイル22を発振させていない状態で取得する誘導電圧が0(零)である場合にCPU11が発振コイル12を発振させていないと判断するように構成した。
【0060】
これにより、発振コイル12が発振したことにより金属板30に生じる渦電流と発振コイル22が発振したことにより金属板30に生じる渦電流とが混在しないので、CPU11,21は金属板30の位置を精度よく検出することができる。
【0061】
(7)クロック信号が立ち上がるタイミングの10回に1回の割合及びクロック信号が立ち下がるタイミングの10回に1回の割合で検出部16,26が検出する誘導電圧を取得するように制御部18,28を構成した。すなわち、制御部18,28は、発振コイル12、22の発振周期(クロック信号の周期)の半分の整数倍と異なる間隔で誘導電圧を取得する。これにより、検出部16,26が受信する誘導電圧が上昇しているとき、誘導電圧が下降しているとき、上昇から下降に転じるとき、及び下降から上昇に転じるとき、というように多様な状況の誘導電圧を取得することができる。したがって、誘導電圧が上昇から下降に転じるとき及び下降から上昇に転じるときといったピーク付近の電圧を取得できる。一方で、常に同じタイミングで誘導電圧を取得する場合、他のCPU側の発振コイルが発振しているにもかかわらず取得する誘導電圧が0(零)となり、発振していないと誤判定するおそれがある。これらの点において、本例の制御部18,28は、検出精度がよい。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態において、制御部18,28は、接続線40を通じて授受する発振停止信号だけでなく、上記第2の実施形態のように、自身が発振させていない場合に生じる受信コイルの誘導電圧から、他のCPUによる発振の有無を判断してもよい。このように構成すれば、他のCPUによる発振の有無を精度よく判断することができる。
【0063】
・上記第2の実施形態において、クロック信号が立ち上がるタイミングの10回に1回の割合及びクロック信号が立ち下がるタイミングの10回に1回の割合で検出部16,26が検出する誘導電圧を取得するように制御部18,28を構成したが、誘導電圧を取得するタイミングは、この限りではない。誘導電圧を取得するタイミングの間隔が発振コイル12、22の発振周期の半分の整数倍と異なる間隔であればよい。また、誘導電圧の取得は、等間隔でなくてもよい。このように構成すれば、上記第2の実施形態の(7)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
・上記各実施形態において、受信コイルを複数設けてもよい。そして、制御部18,28は、複数の受信コイルに生じる誘導電圧から金属板30の変位の有無の判断及び位置の検出を行ってもよいし、複数の受信コイルのうち誘導電圧の大きい受信コイルの誘導電圧から金属板30の変位の有無の判断及び位置の検出を行ってもよい。
【0065】
・上記各実施形態において、受信コイル13,23を
図6に示すように8の字状に巻回させてもよい。このように構成すれば、金属板30の位置に応じて受信コイル13,23に生じる誘導電圧が金属板30の位置に対してより直線的に変化するので、金属板30の変位の有無の判断及び位置の検出における精度が高まる。
【0066】
・上記各実施形態において、金属板30は、銅、鉄など、発振コイルの磁束を遮ることにより渦電流を発生させるものであればよい。
・上記各実施形態において、金属板30は、必ずしも渦電流を発生させるものに限らず、コイルなどの受信コイルに発生する誘導電圧を変化させるものであればよい。
【0067】
・上記各実施形態の渦電流式変位センサ1,2は、シフトセンサに適用してもよい。この場合、金属板30は、シフトレバーに連動する部位に取り付けられる。
次に、上記実施形態及び上記別例より想起される技術的思想について追記する。
【0068】
(イ)上記構成において、前記第1の発振回路が発振させる前記第1の発振コイルの発振クロックの周期は、前記第2の発振回路が発生させている電圧の周期の二分の一であり、前記第2の発振回路が発振させる前記第2の発振コイルの発振クロックの周期は、前記第1の発振回路が発生させている電圧の周期の二分の一であって、前記第1の検出部は、前記第1の発振回路が発振させる前記第1の発振コイルの発振クロックの立ち上がりと立ち下がりとを検出するタイミングで前記第1の受信コイルの誘導電圧を検出し、前記第2の検出部は、前記第2の発振回路が発振させる前記第2の発振コイルの発振クロックの立ち上がりと立ち下がりとを検出するタイミングで前記第2の受信コイルの誘導電圧を検出することが好ましい。
【0069】
この構成によれば、制御部は、他のCPU側の発振コイルが発振しているか否かの判断を誤りにくい。