(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚が2mm以上6mm以下であり、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが2mm以上6mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚は5mm以下であり、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが5mm以下である
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤハーネス。
前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚は5mmを超え、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが5mmを超える
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤハーネス。
前記少なくとも一部の電線の導体周囲に設けられる絶縁体がポリ塩化ビニルである場合、前記発泡体は発泡塩化ビニルにより構成され、前記絶縁体がポリプロピレンである場合、前記発泡体は発泡ポリエチレンにより構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアルミニウム電線をエンジンルームやルーフに用いられるワイヤハーネス、すなわち使用環境における温度が100度以上となる箇所に用いられるワイヤハーネスに利用した場合、その使用環境における熱によって、熱処理されたときのように導体に鈍りが生じて強度が低下してしまう可能性があった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高温環境下におけるアルミニウム電線の導体の鈍りを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤハーネスは、複数の電線を束ねて構成され、使用環境における温度が100度以上となる箇所に用いられるワイヤハーネスであって、前記複数の電線のうち少なくとも一部の電線の導体が純アルミニウム又はアルミニウム合金であり、且つ、複数の電線の周囲に発泡体が設けられて当該複数の電線を束ねていることを特徴とする。
【0007】
本発明のワイヤハーネスによれば、一部の電線の導体が純アルミニウム又はアルミニウム合金であり、且つ、複数の電線の周囲に発泡体が設けられて当該複数の電線を束ねている。このため、使用環境における温度の伝達が発泡体によって遮られて純アルミニウム又はアルミニウム合金に伝わり難くなり、鈍りを抑えることとなる。従って、高温環境下におけるアルミニウム電線の導体の鈍りを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供することができる。
【0008】
さらに、本発明のワイヤハーネス
は、前記発泡体の熱伝導率は
0.034w/mk以下であること
を特徴とする。
【0009】
このワイヤハーネスによれば、発泡体の熱伝導率は
0.034w/mk以下であるため、熱伝導率が低い材料により電線を覆うこととなり、温度の伝達を好適に抑えることができる。特に、発泡体の熱伝導率は
0.034w/mk以下であるため、0.058w/mkを超える場合に生じる導体破断強度の低下による断線や耐振動性の低下という不具合の発生を防止することができる。
【0010】
また、本発明のワイヤハーネスにおいて、前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚が2mm以上6mm以下であり、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが2mm以上6mm以下であることが好ましい。
【0011】
このワイヤハーネスによれば、シート厚又は外接形状から厚みが2mm以上であるため、2mm未満であるときのように充分に熱を遮断できなくなってしまう事態を防止することができる。また、シート厚又は外接形状から厚みが6mm以下であるため、6mmを超えて更に厚みを増したとしても熱の遮断効果の向上が好適に見られなくなるまで発泡体を厚くすることなく、ワイヤハーネスの大型化を防止することができる。
【0012】
また、本発明のワイヤハーネスにおいて、前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚は5mm以下であり、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが5mm以下であることが好ましい。
【0013】
このワイヤハーネスによれば、シート厚又は外接形状から厚みが5mm以下であるため、発泡体が設けられた電線部分においても所定の柔軟性を維持することができ、ワイヤハーネスの配索作業における効率低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明のワイヤハーネスにおいて、前記発泡体が前記複数の電線に巻き付けられる発泡シートである場合にはシート厚は5mmを超え、前記発泡体が前記複数の電線の外接形状に対して均一の厚みで直接形成される場合には前記外接形状からの厚みが5mmを超えることが好ましい。
【0015】
このワイヤハーネスによれば、シート厚又は外接形状から厚みが5mmを超えるため、発泡体が設けられた電線部分の剛性を高めることとなり、予め所定の形状等にて発泡体を電線の周囲に設けていれば発泡体により経路規制することができ、ワイヤハーネスの配索作業における効率向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明のワイヤハーネスにおいて、前記少なくとも一部の電線の導体周囲に設けられる絶縁体がポリ塩化ビニルである場合、前記発泡体は発泡塩化ビニルにより構成され、前記絶縁体がポリプロピレンである場合、前記発泡体は発泡ポリエチレンにより構成されていることが好ましい。
【0017】
このワイヤハーネスによれば、絶縁体がポリ塩化ビニルである場合、発泡体は発泡塩化ビニルにより構成され、絶縁体がポリプロピレンである場合、発泡体は発泡ポリエチレンにより構成されている。このため、脱塩酸反応による絶縁体の劣化を抑えることができる。
【0018】
また、本発明のワイヤハーネスにおいて、前記発泡体は、内部の気泡それぞれが独立して形成される独立気泡構造の層を少なくとも1層含んで構成されていることが好ましい。
【0019】
このワイヤハーネスによれば、発泡体は独立気泡構造の層を少なくとも1層含んで構成されているため、気泡が連結して熱が絶縁体に直接伝わってしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温環境下におけるアルミニウム電線の導体の鈍りを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は以下の実施形態に限られるものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスを示す上面図である。
図1に示すように本実施形態に係るワイヤハーネス1は、複数の電線10を束ねて構成され、例えばエンジンルームやルーフなど、夏場などの熱い時期に使用環境における温度が100℃以上となることがある箇所に用いられるものである。
【0024】
このようなワイヤハーネス1は、複数の電線10と、コネクタCと、発泡体20とから構成されている。複数の電線10は、その少なくとも一部の電線11の導体が純アルミニウム又はアルミニウム合金であり、他の電線12の導体が例えば純銅又は銅合金となっている。以下において符号11をアルミ電線11といい、符号12を銅電線12という。
【0025】
なお、複数の電線10(特にアルミ電線11)は、導体及び絶縁体のみによって構成されるものに限らず、例えばテンションメンバーを備え、その周囲に複数本の導体素線が設けられるものであってもよいし、複数本の導体素線が圧縮されるものであってもよい。また、複数本のテンションメンバーと複数本の導体素線とが混在するものであってもよい。テンションメンバーは、SUS(ステンレス鋼)又は鉄のように電位がアルミニウムに近く強度が高いものが好ましい。
【0026】
コネクタCは、各電線10の両端部に設けられており、他の機器との接続部となるものである。このコネクタCは、ワイヤハーネス1の一側端に設けられる第1コネクタ群C1と、ワイヤハーネス1の他側端に設けられる第2コネクタ群C2と、中間部から導出された電線10の端部に設けられる中間コネクタ群C3(図面上においてコネクタC3は1つであるがコネクタ群と称する)とからなっている。
【0027】
発泡体20は、熱導電率が低い物質により構成され、複数の電線10の周囲に設けられている。この発泡体20により、複数の電線10は束ねられている。なお、複数の電線10は発泡体20の他、テープ巻等によっても束ねられていることはいうまでもない。
【0028】
図2は、
図1に示した発泡体20を示す断面図である。
図2に示すように、発泡体20は、一面に粘着層を有する発泡シート21により構成されている。この発泡シート21は、粘着層が複数の電線10側となるように巻かれ、且つ、その一部がラップすることで(符号Wのように発泡シート21上に同シート21が重なることで)、複数の電線10の周囲に設けられている。
【0029】
特に、
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス1は、中間コネクタ群C3を有するため、例えば第1コネクタ群C1から中間コネクタ群C3までの間、及び、中間コネクタ群C3から第2コネクタ群C2までの間に、それぞれ発泡シート21が巻き回されている。
【0030】
このような発泡シート21は、複数の電線10の絶縁体(特にアルミ電線11の絶縁体)よりも熱伝導率が低くなっており、具体的には0.058w/mk以下となっている。すなわち、発泡シート21の熱伝導率は、絶縁体として一般的に用いられるPVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)の熱伝導率の約1/3以下となっており、これにより好適に高温環境下において電線11の導体である純アルミニウム又はアルミニウム合金の鈍りを防止するようにしている。
【0031】
ここで、発泡シート21には、熱伝導率0.034w/mk以下の素材(例えば発泡ポリエチレン)を用いることが好ましく、さらには熱伝導率0.026w/mk以下の素材(例えば発泡PVC)を用いることが好ましい。また、さらに好ましくは、発泡シート21には、熱伝導率0.025w/mk以下の素材(例えば発泡ウレタン)を用いる。これにより、一層純アルミニウム又はアルミニウム合金の鈍りを防止することができるからである。
【0032】
さらに、アルミ電線11の絶縁体にPVCが使用されている場合、発泡シート21は、発泡塩化ビニルにより構成されていることが好ましい。また、アルミ電線11の絶縁体にPPが使用されている場合、発泡シート21は、発泡ポリエチレンにより構成されていることが好ましい。これにより、脱塩酸反応による絶縁体の劣化を抑えることができるからである。
【0033】
加えて、発泡シート21は、内部の気泡がそれぞれ独立して形成されている独立気泡構造であることが好ましい。これにより、気泡が連結して熱が絶縁体に直接伝わってしまうことを防止することができるからである。なお、発泡シート21は、発泡構造体が重ねられた2層以上の構造となっていてもよい。さらに、2層以上の構造となっている場合には、そのうちの少なくとも1層が独立気泡構造であればよい。
【0034】
次に、本実施形態に係るワイヤハーネス1の実施例及び比較例を説明する。表1は、本実施形態に係るワイヤハーネス1の実施例及び比較例を示す第1の表である。
【0036】
実施例1〜3及び比較例2,3においては、アルミ電線10本、及び、銅電線10本を束にして発泡ポリエチレンからなる発泡シートを巻き付け、これを120℃の恒温槽内に投入した直後の電線表面の温度と、投入して5分経過したときの電線表面の温度を測定した。また、比較例1については、上記束に発泡シートを巻き付けず、120℃の恒温槽内に投入した直後の電線表面の温度と、投入して5分経過したときの電線表面の温度を測定した。なお、電線表面の温度が90℃以上となる場合を「×」とし、90℃未満となる場合を「○」と評価した。
【0037】
さらに、各実施例1〜3及び比較例1〜3については、それぞれ発泡シートなし、発泡シートの厚さを1mm、2mm、5mm、6mm、及び7mmとした(シートのラップ部分については極力小さくしてラップ部分の影響が極力小さくなるようにした)。また、各実施例1〜3及び比較例1〜3について、発泡シートが巻き付けられた部位の柔軟性(組み付け性)を評価した。このとき、容易に曲がり、形状が戻りにくい状態であるときに、柔軟性「○」とし、若干力が必要であるが曲げることができ、形状の戻りがある状態であるときに、柔軟性「△」とし、固くて曲げにくく曲がったとしてももとの状態にすぐ戻ってしまう状態であるときに、柔軟性「×」とした。
【0038】
まず、比較例1に示すように、発泡シートを設けない場合、柔軟性は「○」となった。また、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は110℃であった。
【0039】
次に、比較例2に示すように、発泡シートの厚さが1mmである場合、柔軟性は「○」となった。さらに、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は108℃であった。
【0040】
次いで、実施例1に示すように、発泡シートの厚さが2mmである場合、柔軟性は「○」となった。さらに、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は88℃であった。
【0041】
また、実施例2に示すように、発泡シートの厚さが5mmである場合、柔軟性は「△」となった。さらに、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は81℃であった。
【0042】
次に、実施例3に示すように、発泡シートの厚さが6mmである場合、柔軟性は「×」となった。さらに、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は78℃であった。
【0043】
次いで、比較例3に示すように、発泡シートの厚さが7mmである場合、柔軟性は「×」となった。さらに、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は77℃であった。
【0044】
このように、温度の観点からすると、発泡シートの厚さは2mm以上6mm以下が好適であるとわかった。すなわち、発泡シートの厚さが2mm以上であると120℃の温度環境に曝しても電線表面の温度が90℃を下回ることがわかった。また、発泡シートの厚さが6mmを超えると、これ以上厚さが増しても温度の遮断効果があまり上昇しないことがわかった。よって、発泡シートの厚さは2mm以上6mm以下が好適であるとわかった。
【0045】
さらに、柔軟性の観点からすると、発泡シートの厚さは5mm以下が好適であるとわかった。すなわち、ワイヤハーネスの配索作業の効率を考えると、発泡シートの厚さが5mmを超えると、発泡シートの設置部分を曲げ難くなってしまい、配索作業の効率の低下を招いてしまう。よって、発泡シートの厚さは5mm以下が好適であるとわかった。
【0046】
加えて、経路規制の観点からすると、発泡シートの厚さは5mmを超えることが好適であるとわかった。すなわち、発泡シートの厚さが5mmを超えると、発泡シートが設けられた部分の剛性を高めることとなり、予め所定の形状等にて発泡シートを電線の周囲に設けていれば発泡シートにより経路規制することができる。よって、発泡シートの厚さは5mmを超えることが好適であるとわかった。
【0047】
表2は、本実施形態に係るワイヤハーネス1の実施例及び比較例を示す第2の表である。
【0049】
実施例4〜7及び比較例5,6においては、アルミ電線10本、及び、銅電線10本を束にして発泡ポリエチレンからなる所定の厚みの発泡シートを巻き付け、これを120℃の恒温槽内に投入した直後の電線表面の温度と、投入して5分経過したときの電線表面の温度を測定した。また、比較例4については、上記束に発泡シートを巻き付けず、120℃の恒温槽内に投入した直後の電線表面の温度と、投入して5分経過したときの電線表面の温度を測定した。なお、電線表面の温度が90℃付近(89℃以上91℃以下)である場合を「△」とし、91℃を超える場合を「×」とし、89℃未満となる場合を「○」と評価した。
【0050】
さらに、実施例4,5及び比較例4,5については、複数の電線10の絶縁体をPVCとし、比較例5について発泡シートを連続気泡構造とし、実施例4について発泡シートを独立気泡構造とし、実施例5について発泡シートを連続気泡構造と独立気泡構造との2層構造とした。
【0051】
同様に、実施例6,7及び比較例6については、複数の電線10の絶縁体をPPとし、比較例6について発泡シートを連続気泡構造とし、実施例6について発泡シートを独立気泡構造とし、実施例7について発泡シートを連続気泡構造と独立気泡構造との2層構造とした。
【0052】
まず、比較例4に示すように、発泡シートを設けない場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は110℃であった。
【0053】
次に、比較例5に示すように、所定厚みの連続気泡構造からなる発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は91℃であった。
【0054】
次いで、実施例4に示すように、所定厚みの独立気泡構造からなる発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は70℃であった。
【0055】
また、実施例5に示すように、連続気泡構造及び独立気泡構造からなる2層構造の発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は81℃であった。
【0056】
次に、比較例6に示すように、所定厚みの連続気泡構造からなる発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は89℃であった。
【0057】
次いで、実施例6に示すように、所定厚みの独立気泡構造からなる発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は67℃であった。
【0058】
また、実施例7に示すように、連続気泡構造及び独立気泡構造からなる2層構造の発泡シートを設けた場合、恒温槽内への投入直後における電線表面温度は20℃であったが、投入して5分経過したときの電線表面温度は80℃であった。
【0059】
このように、温度の観点からすると、発泡シートは独立気泡構造の1層構造又は連続気泡構造と独立気泡構造との2層構造のものが連続気泡構造の1層構造よりも好適であるとわかり、独立気泡構造の1層構造が最も好ましいことがわかった。なお、上記結果からすると2層構造に限らず、3層以上の多層構造であっても、その少なくとも1層が独立気泡構造であれば連続気泡構造の1層構造よりも好適であると予測できる。
【0060】
さらに、電線の絶縁体はPVC及びPPのいずれにおいても同様の結果が見られたが、電線表面温度は僅かにPPの方が低くなることがわかった。
【0061】
次に、本実施形態に係るワイヤハーネス1の変形例を説明する。
図3は、本実施形態の第1変形例に係るワイヤハーネス1の断面図である。
図3に示すように発泡体20は発泡シート21に限らず、複数の電線10の周囲に直接成形される構造のものであってもよい。この場合、発泡体20は、押し出し等によって直接成形される。
【0062】
また、第1変形例に係るワイヤハーネス1において発泡体20は複数の電線10の外接形状Oに対して略均一な厚さTにより形成されている。この厚さTを表1に示した実施例と同じとすることにより(例えば厚さ2mm以上6mm以下とすることにより)、上記と略同じ効果を得ることができる。
【0063】
さらに、第1変形例では押し出し成形やモールド成形等によって発泡体20を直接成形するため、ワイヤハーネス1の配索時において予め屈曲させると定められた部位について発泡体20を薄く成形(例えば厚さ2mm〜5mmに成形)し、予め経路規制すると定められた部位について発泡体20を厚く成形(例えば厚さ5mm〜6mmに成形)することができる。このように構成することにより、1つのワイヤハーネス1に対してアルミ電線11の導体鈍りを抑制しつつも、屈曲させたい部位と経路規制したい部位とを発泡体20によって作成することができる。
【0064】
さらに、
図3に示すように、発泡体20が複数の電線10の周囲に直接成形されるため、中間コネクタ群C3を有する場合であっても、例えば第1コネクタ群C1から第2コネクタ群C2までの間に、押し出し成形やモールド成形等によって連続的に発泡体20を設けることができ、中間コネクタ群C3の根元に発泡体20が設けられなくなってしまう事態を防止することができる。
【0065】
なお、発泡体20については表2に示すように独立気泡構造(又は独立気泡構造を少なくとも1層含む多層構造)であることが好ましいことはいうまでもない。
【0066】
図4は、本実施形態の第2変形例に係るワイヤハーネス1の断面図である。
図4に示すように発泡体20は
図3と同様に押し出し成形やモールド成形等によって直接成形されている。さらに、第2変形例において発泡体20は、断面が角部22を有する多角形状(四角形状)となっている。これにより、厚さの最も薄い部位T1が例えば2mmであったとしても、厚い部位T2が形成されると共に角部22によりその剛性が確保されるため、経路規制に適切なワイヤハーネス1を提供することができる。
【0067】
なお、表1に示す「発泡シート厚さ」を、発泡体20の薄い部位T1で読み替えた場合、第2変形例においては発泡体20が角部22を有するため、柔軟性が厚さ1mm〜7mmの全てにおいて「×」となる。また、120℃雰囲気5分後においては、厚い部位T2の存在によりそれぞれの温度がやや低くなる傾向にある。また、発泡体20については表2に示すように独立気泡構造(又は独立気泡構造を少なくとも1層含む他層構造)であることが好ましいことはいうまでもない。
【0068】
このようにして、本実施形態に係るワイヤハーネス1によれば、アルミ電線11の導体が純アルミニウム又はアルミニウム合金であり、且つ、複数の電線10の周囲に発泡体20が設けられて当該複数の電線10を束ねている。このため、使用環境における温度の伝達が発泡体20によって遮られて純アルミニウム又はアルミニウム合金に伝わり難くなり、鈍りを抑えることとなる。従って、高温環境下におけるアルミ電線11の導体の鈍りを抑制することが可能なワイヤハーネス1を提供することができる。
【0069】
また、発泡体20の熱伝導率は0.058w/mk以下であるため、熱伝導率が低い材料により電線10を覆うこととなり、温度の伝達を好適に抑えることができる。特に、発泡体20の熱伝導率は0.058w/mk以下であるため、0.058w/mkを超える場合に生じる導体破断強度の低下による断線や耐振動性の低下という不具合の発生を防止することができる。
【0070】
また、シート厚又は外接形状Oから厚みが2mm以上であるため、2mm未満であるときのように充分に熱を遮断できなくなってしまう事態を防止することができる。また、シート厚又は外接形状Oから厚みが6mm以下であるため、6mmを超えて更に厚みを増したとしても熱の遮断効果の向上が好適に見られなくなるまで発泡体20を厚くすることなく、ワイヤハーネス1の大型化を防止することができる。
【0071】
また、シート厚又は外接形状Oから厚みが5mm以下であるため、発泡体20が設けられた電線部分においても所定の柔軟性を維持することができ、ワイヤハーネス1の配索作業における効率低下を防止することができる。
【0072】
また、シート厚又は外接形状Oから厚みが5mmを超えるため、発泡体20が設けられた電線部分の剛性を高めることとなり、予め所定の形状等にて発泡体20を電線10の周囲に設けていれば発泡体20により経路規制することができ、ワイヤハーネス1の配索作業における効率向上を図ることができる。
【0073】
また、絶縁体がポリ塩化ビニルである場合、発泡体20は発泡塩化ビニルにより構成され、絶縁体がポリプロピレンである場合、発泡体20は発泡ポリエチレンにより構成されている。このため、脱塩酸反応による絶縁体の劣化を抑えることができる。
【0074】
また、発泡体20は独立気泡構造の層を少なくとも1層含んで構成されているため、気泡が連結して熱が絶縁体に直接伝わってしまうことを防止することができる。
【0075】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0076】
例えば、本実施形態に係るワイヤハーネス1はアルミ電線11と銅電線12を含むものであり、これらの電線10に対して発泡体20を設けているが、これに限らず、銅電線12を有さずアルミ電線11のみを有し、複数のアルミ電線11の周囲に発泡体20を設ける構造であってもよい。
【0077】
さらに、銅電線12において銅の鈍りを防止したい場合、銅電線12のみを有するワイヤハーネスの、複数の銅電線12の周囲に発泡体20を設けるようにしてもよい。