(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228914
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ヨーイングによって動力出力を制御する2枚羽根付き揺動ヒンジ風力タービンにおいて動力出力を制御するために必要とされるヨートルクを最小にするためのシステム
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20171030BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
F03D7/04 B
F03D1/06 A
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-509857(P2014-509857)
(86)(22)【出願日】2012年5月4日
(65)【公表番号】特表2014-513768(P2014-513768A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】IB2012002704
(87)【国際公開番号】WO2013027127
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/483,397
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513279504
【氏名又は名称】コンドル ウインド エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カルーソー,シルベストロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクボウスキ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】カイオリ,ルチアーノ
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−064062(JP,A)
【文献】
実開平06−058176(JP,U)
【文献】
特開2000−310179(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/120693(WO,A2)
【文献】
特開2005−269703(JP,A)
【文献】
特開2007−107410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動ヒンジを有するアップウィンド型2枚羽根付き風力タービンの動力出力を制限するために必要とされるヨートルクを低減するための方法であり、前記タービンは、(到来する風から見て)時計方向に運転するように設計されたロータを有し、塔の頂上のナセル内に収容され、前記方法は、
中央コントローラおよび従属されたヨーイング作動システムによってヨーイングを制御することと、
前記中央コントローラがロータ速度センサおよび風の相対的向きセンサから信号を受信することと、
定格風速より高い風速について動力出力を制限するため、風向きと別の方向に(ナセルの上から見て)反時計方向にロータ軸をヨーイングすることを含む方法。
【請求項2】
揺動ヒンジを有するアップウィンド型2枚羽根付き風力タービンの動力出力を制限するために必要とされるヨートルクを低減するための方法であり、前記タービンは、(到来する風から見て)反時計方向に運転するように設計されたロータを有し、塔の頂上のナセル内に収容され、前記方法は、
中央コントローラおよび従属されたヨーイング作動システムによってヨーイングを制御することと、
ロータ速度センサおよび風の相対的向きセンサから前記中央コントローラが信号を受信することと、
定格風速より高い風速について動力出力を制限するため、風向きと別の方向に(ナセルの上から見て)時計方向にロータ軸をヨーイングすることを含み、
前記中央コントローラは、速度誤差を積分し、任意選択で、前記速度誤差を非線形利得アルゴリズムによって補正することによって所望のヨー角を計算する、方法。
【請求項3】
前記風力タービンをシャットダウンすることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記風力タービンをシャットダウンすることをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記中央コントローラは、実際のロータ運転速度を所望のロータ運転速度と比較する請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記所望のロータ運転速度は、定格ロータ運転速度に等しい請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中央コントローラは、速度誤差を積分し、任意選択で、前記速度誤差を非線形利得アルゴリズムによって補正することによって所望のヨー角を計算する請求項1又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記中央コントローラは、前記所望のヨー角を、検知される相対的風向きと比較し、ロータ軸変更のための方向を計算する請求項2、4、又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記中央コントローラは、風向きおよびロータの回転方向に関して、動力制限またはシャットダウンの好ましい方向に留まるよう、上から見た、ナセルに指令指示する請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
風速が増加しロータ運転速度が増加した場合、前記中央コントローラは、前記タービンの動力出力を制限するために、動力制限の好ましい方向にナセルをさらに移動させるよう、ヨーシステムに指令し、
風速が減少しロータ運転速度が減少した場合、前記中央コントローラは、前記タービンの動力出力を制限するために、動力制限の好ましい方向とは反対の方向にナセルをさらに移動させるよう、ヨーシステムに指令する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中央コントローラは、高周波の風の乱れをろ過して取除くように構成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ロータ軸をヨーイングすることは、羽根の揺動振幅を低減する請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記揺動振幅の低減は、ハブオーバハングを最小にする、または、羽根先端と塔との間の隙間を最大にする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記羽根のピッチは、固定されている請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する陳述]
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる、2011年5月6日に出願された米国仮出願第61/483,397号に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ヨー制御風力タービンの稼働効率を増加させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの3枚羽根付きタービンおよび2枚羽根付きタービンは、風向きに追従し、ロータが風に向かって面することを保証するためにロータ軸の配向を変更できるヨーシステムを装備する。ほとんどの3枚羽根付きタービンおよび2枚羽根付きタービンは、タービンの速度、したがって、タービンの動力出力を制御すると共にシャットダウンするために、ロータ羽根のピッチを調節する。
【0004】
2枚羽根付き風力タービンでは、ピッチ制御を必要とすることなく、タービンの速度、したがって、タービンの動力出力を制御するために、風に向かってまたは風からそれてタービンをヨーイングすることが可能である。これは、2枚羽根付きタービンが、タービン羽根をタービンのドライブトレインに取付けるために揺動ヒンジ(または「シーソー(see-saw)ヒンジ」)を使用する場合に可能である。揺動ヒンジは、ロータに更なる自由度を与え、タービンが、ジャイロ力を克服し、タービンのロータ速度を制御するのに十分に迅速にヨー角を調節することを可能にする。
【0005】
ロータ運転速度を制御するためにヨー制御を使用するタービンでは、特に極端な風況によって高速ヨーイングを受けるときに、支持構造に当たることを回避し、ロータの効率的な動的性能を保証するために、揺動角度が制御され、一定の限度内に保たれることを保証するために、配慮が払われなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本特許出願は、必要なヨートルクならびに揺動振幅を最小にするための、ある技法を開示する。これは、ロータ、ヨーイングシステム、および揺動ヒンジの改善された動的制御および性能を可能にし、タービンの性能の改善をもたらす。これは、次に、ヨーシステムおよび揺動ヒンジに関する応力を低減し、タービンに対してより大きな信頼性および設計の改善をもたらす。これはまた、極端な風況におけるタービンの安全性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2枚羽根付き揺動ヒンジでヨー制御のアップウィンド型タービンを参照する。2枚羽根付き揺動ヒンジのヨー制御風力タービンでは、風速が定格より高いと、動力は、風からそれてロータをヨーイングすることによって制御される。本発明は、主に、動力制御のために、ヨー角の高速変更が必要とされるか、または、シャットダウンのために、ロータ軸を風向きから90°にもたらすことによる高速ヨーイングが必要とされるときに、塔軸の周りでナセルを転回させるのに必要とされるトルクを低減するためのシステムに関する。本発明は、ロータシャフト速度、風向き、およびロータ軸の方向の測定に基づいて、ヨー角が変更される方向を制御するためのシステムを開示する。
【0008】
風速が定格より高くない場合、タービンは、風に向かって稼働し(ロータ軸は風向きに整列し)、したがって、システムは、風向きに追従するという役割を有する。風速が定格より高いとき、ロータ軸は、ロータディスクに垂直な風速成分を一定に保つようにヨーイングされ、したがって、ヨーシステムは、ロータトルクが他の手段(たとえば、発電機および動力変換器)によって制御されている間に、ロータ運転速度を制御するという役割を有する。
【0009】
2枚羽根付きの揺動ヒンジヨー制御タービンでは、羽根は、ハブに強固に接合され、ハブは、その軸がシャフト軸に垂直であるヒンジを通してシャフトに結合される。ヒンジによって導入される自由度は、これは捻じれ剛性≠0を有するが、タービンのジャイロ負荷を劇的に低減し、したがって、必要なヨーレートを作動させるのに必要とされるヨートルクおよびその結果生じる加速度が制限される。ヨートルクの更なる低減は、風向きに関するアップウィンド型ロータの位置とシャフト運転速度の方向との間の適切な組合せによって達成可能である。
【0010】
開示されるシステムは、高いヨーレートでも、シャフト軸を回転させるために必要とされるトルク量を低減することになり、ヨーイング操縦中のタービンシステム全体にかかる負荷の低減およびヨーモータ寿命の増加を同様にもたらす。本発明は、ナセルハウジングが数千キログラムの重量があり得る大型(たとえば、1MWより大きい)タービンについて特に有用である。
【0011】
運転中のロータの揺動の振る舞いは、2つの羽根がその垂直位置の周りにある(方位角=0)ときに揺動角度が常にほとんどなく、一方、羽根が水平であるときに揺動角度が最大値に達するようなものである。開示されるシステムはまた、ゼロ方位角の周りの羽根について揺動角度をさらに低減することになり、したがって、ハブオーバハング(塔軸からのハブの距離である)の低減を可能にし、極端な状況下で羽根先端と塔との間の正しい隙間を保証するために必要である。
【0012】
一例では、本発明のシステムは、中央処理ユニット(CPU)と、作動ヨーイングシステム(塔の周りでタービンを転回するための)と、ロータシャフト運転速度センサと、風の相対的向きセンサ(タービン軸方向に関する)と、塔に関するロータ軸方向(絶対方向)のセンサとを含む。
【0013】
ヨー作動システムは、ヨーモータを通して、ロータシャフトのベッドプレートと塔との間にヨーイングトルクを加えることによって、ロータ軸方向を(上から観察される場合、すなわち、ナセルの上から下を見ながら観察される場合)時計方向にまたは反時計方向に変更することが可能である。
【0014】
タービンを特徴付けるロータ運転方向は、ロータおよび発電機の特定の設計に由来する。一般に、アップウィンド型ロータは、到来する風向きから見ると、時計方向に運転するように設計される。しかし、発明されたシステムは、ロータが、反時計方向に運転するように設計される場合に同様に適用可能である。
【0015】
本発明のシステムおよび方法は、シャットダウン時にも有用であり、タービンが、ロータ軸が風向きから90°に配向された状態でパークされ、この位置に保たれるときに、風向きの任意の変化についてナセルの位置を補正するために必要とされる小さなヨートルクが非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】2枚羽根付き揺動ヒンジ風力タービンの一般化された図である。
【
図2】ロータ位置が、第4象限、したがって、到来する風向きWDから反時計方向に配向された状態の、上から見た2枚羽根付き揺動ヒンジ風力タービンの一般化された図である。
【
図3】ロータ位置が、第1象限、したがって、到来する風向きWDから時計方向に配向された状態の、上から見た2枚羽根付き揺動ヒンジ風力タービンの一般化された図である。
【
図4】風速ベクトル、および、ロータシャフトが、風と別の方向に反時計方向に角度φだけヨーイングしたときに、ロータシャフトの上に垂直に配向された羽根が時計方向に回転することに関連する角度を示す図である。
【
図5】ロータが、到来する風向きから見て時計方向に運転している間の、アクティブなヨートルクの方向に関連するトルクを維持する揺動ヒンジの方向を示す図である。
【
図6】ロータが風からそれてヨーイングされた状態で、風が羽根に角度φで当たるときの、上側羽根の迎え角を示す図である。
【
図7】ロータが風からそれてヨーイングされた状態で、風が羽根に角度φで当たるときの、下側羽根の迎え角を示す図である。
【
図8】水平からのロータ軸の傾斜を示す図であり、さらなるヨーモーメントをもたらす。
【
図9】時計方向に回転し、ロータ軸が、風と別の方向に反時計方向にヨーイングされたときの、2枚羽根付き揺動ヒンジロータの羽根に関する平面内力を概念的に示す図である。
【
図10】羽根が水平に配向された状態の、上から観察される場合のタービンロータに関する揺動変位を示す図である。
【
図11】本発明を実施するための概略的な制御システムを示す図である。
【
図12】本発明の概略的なより完全な制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、一般に、2枚羽根付き揺動ヒンジヨー制御風力タービンに関する。これらのタービンは、風速が定格より低いとき、風に向かってロータを保ち(keep)、最適先端速度比(羽根先端の周辺速度と風速との比である)を維持するためにロータ制限トルクを調節することによって制御される。ロータは、タービンコントローラ(CPU)によって作動されるヨーイングシステムによって風に向かって保たれる。ロータ制限トルクは、他の手段(すなわち、タービンコントローラに従属した適切なコントローラを有するタービン発電機に結合された電力変換器)によって調節される。
【0018】
ロータトルクが、その定格値で「一定(constant)」に保たれている間に、風速が定格より高いとき、ロータ運転速度は、風向きから外れてロータ軸を常にヨーイングし、ロータ軸方向を、風速が減少する場合に風向きに向かって、または、風速が増加する場合に風向きから外れて変更することによって、その定格値で「一定」に保たれる。2枚羽根付き揺動ヒンジロータでは、ロータ軸方向を変更するために必要とされるヨーイングトルクは、タービンシステムのジャイロ負荷を減結合する揺動ヒンジによって制限される。
【0019】
ロータ軸方向を変更するために必要とされるヨーイングトルクが低くなればなるほど、結果として得られるヨーイングレートが速くなり、したがって、動力制御の性能が高くなる。シャットダウンの場合、ロータ軸は、風向きから外れて90°になるようにヨーイング(移動)する。
【0020】
必要なヨーイングトルクが、実際のヨー角、すなわち、タービンがそこで稼働する、風向きとロータ軸方向との角度に対して増加する傾向があり、平均風速が高くなればなるほど、必要なヨー角が高くなる。ヨー角は、定格より低い風速で0°、カットアウト時の風速で60°、シャットダウン時に90°である。そのため、風向きに関して、タービンは、ロータ軸方向が同じ象限の0°と90°との間に存在する状態で稼働することを求められ、一方、ロータ軸の絶対方向は、絶対風向きに依存する。
【0021】
揺動ヒンジの恩恵を施す作用を超えて、ヨーイングトルクは、ロータ運転速度の方向、および、ロータが風向きに関して稼働する象限を連携させることによってさらに低減されうる。連携はまた、主に2枚の羽根が垂直に配向されるときに揺動振幅の低減をもたらし、これは、アップウィンド型タービンの羽根先端と塔との間の必要な隙間によって左右されるハブオーバハングを制限することを可能にする。
【0022】
本発明は、2枚羽根付き揺動ヒンジタービンを、ヨーイングによって制御するために必要とされるヨートルクを最小にするシステムおよび方法を開示する。
【0023】
通常、ヨーイングによってタービンを制御するために必要なセンサは、
−シャフト運転速度センサ(すなわち、ピックアップ)、
−ロータ軸絶対方向センサ(すなわち、ドライブトレインベッドプレートと塔との間のエンコーダ)、
−風の相対的向きセンサ(すなわち、タービンルーフによって支持される風向き翼)
であり、風速センサは、ヨーイングによって動力を制御するために必要でなく、カットイン未満の風速およびカットアウトを超える風速についてタービンをシャットダウンさせ、カットインより高くかつカットアウトより低い風速に関して稼働を可能にすることが必要であるだけである。
【0024】
塔の頂上のナセルによって取付けられた2枚羽根付き揺動ヒンジロータの一般化された図が
図1に示される。
【0025】
図2および
図3は、上から(タービンの上部から下部を)見たロータを示す。
図2では、ロータは、風向きWDが12時から吹いている状態で、第4象限、すなわち、12時と9時との間で稼働し、
図3では、ロータは、第1象限、すなわち、12時と3時との間で稼働する。動力制御のために必要なヨートルクを最小にするため、
図2の場合、Aから見たロータは時計方向に運転しなければならず、
図3の場合、ロータは反時計方向に運転しなければならないことがわかった。
【0026】
ロータ回転方向は、ロータの設計に関する選好によって左右される。
図4は、羽根が垂直位置にある状態で、時計方向運転しながら、第4象限で稼働するロータ2を示す。ロータ2は、上部羽根3と下部羽根4と揺動ヒンジ7とを含む。ロータは角速度ωでスピンする。ロータ軸が、角度φだけ風からそれて移動すると、入って来る風のベクトルWは、法線成分W
Nおよび横成分W
Cに沿って分割される。ヨー制御式タービンでは、ヨー制御システムは、ロータシャフト速度を定格値に保つため角度φを調整するために使用され、一方、残りのトルクTは、発電機および関連する手段(すなわち、動力変換器)によってその定格値に保される。風速が増加または減少するにつれて、φは、風法線W
Nを一定に保つために調整される。通常、φは、平均して、0°〜60°の範囲にあるとすることができる。60°の角度は、カットアウトに近い平均風速に対応する。しかし、風速および風向きの変動性による過渡状態中に、φは、不安定性を引起すことなく、60°より高い値に達する場合がある。シャットダウンでは、φは、90°まで増加し、その値では、風によって、負の空気力学的トルクが全くまたはほとんど生成されず、したがって、ロータが、停止することを可能にする。定格未満の風速では、同じ制御システムが、エネルギー生成を最大にするために、ヨー角φを、ほぼ0にまたは風に直接整列して保つ。
【0027】
図4の、時計方向運転しながら第4象限にあるロータを考えると、横成分W
Cは、下部羽根4(W
Cに抗して移動する)の場合と異なる迎え角を上部羽根3(W
Cと共に移動する)の場合にもたらす。これは、2つの羽根3および4上に異なる負荷を生成し、次に、塔から下部羽根を移動させる方向に作用する制限モーメントM
hΔαを揺動ヒンジ7の周りに生成する。φが高くなればなるほど、M
hΔαが高くなる。ヨートルクM
yが、ナセル1を介して(たとえば、ナセルのベースプレートを介して)ロータシャフトに加えられるため、ロータのジャイロ効果が、
図5に示すようにヒンジモーメントM
hyを生成する。M
hyの方向は、ヨーモーメントM
yの方向およびロータ回転方向に依存する。ヨートルクが大きくなればなるほど、ヒンジモーメントが大きくなる。
【0028】
ロータが、
図5に示すように第4象限で稼働しながら、時計方向に運転する場合、反時計方向へのロータシャフト軸の角度変位φをもたらすヨートルク(シャットダウン時に通常起こる状態)は、相殺制限モーメントM
hΔαおよびヒンジモーメントM
hyをもたらすことになる。その結果、高いヨーレートおよび高いヨートルクにおいて動力制御およびシャットダウンについて起こる反時計方向ヨーイングの場合、結果として得られる揺動振幅が低減される。
【0029】
上部羽根3と下部羽根4についての迎え角の差は、
図6および
図7により詳細に示される。
図6は、法線風速W
Nと、横風速W
Cと、上部羽根3の先端における周辺速度ωRを示す。上部羽根3の場合、W
CおよびωRは反対方向にあり、迎え角α
1をもたらす。逆に、下部羽根4(
図7)は、W
CおよびωRの加法的作用により迎え角α
2を見る。結果として得られるベクトルV
1およびV
2の大きさの有利な差であるが、迎え角の差は、羽根の間の空気力学的負荷のアンバランスをもたらし、揺動振幅(揺動ハブを持たない羽根の歪)の増加を引起す。
【0030】
図6〜7で論じた風ベクトルおよび羽根の回転速度に加えて、ヨー角変更を作動させるために必要な、結果として得られるヨートルクを与えるために、他の力およびモーメントが同時に起こる。他の力およびモーメントは、ヨー軸の周りでナセルに作用するシャフトトルクの垂直成分、ロータハブに作用するロータ風動作の側方力、羽根がほぼ水平位置にあるときの揺動角度に対応する揺動制限トルク、および、求められるヨー加速度に対応するヨートルクである。
【0031】
図8に示すように、ロータシャフトは、ロータと塔との間の隙間を増加するために、γというわずかな高度が与えられることが多い。(時計方向に運転しているロータの)シャフトトルクM
Sの垂直成分M
SVは、塔軸の周りで時計方向に作用し、塔に関してシャフト軸の角度φを変更するために必要とされるトルクの計算時に反映される必要があることになる。
【0032】
図9に示すように、時計方向に運転するロータシャフトが、第4象限で稼働しているとき、上部羽根平面内負荷8と下部羽根平面内負荷9との間の差は、ロータのハブ7において側方力F
yuをもたらす。側方力の平均化された値は、制限ヨーモーメント成分を引起し、制限ヨーモーメント成分は、シャフトトルクM
Sの垂直成分M
SVに抗し(すなわち、
図8に示すように)、したがって、ヨー角を変更するために必要な平均ヨートルクを低減する。
【0033】
先に述べたように、羽根が水平位置(
図10)の周りにある状態で、最大揺動角度θに達する。対応する揺動ヒンジ制限トルクM
yθ(揺動角度θに捻じれ剛性Kを掛けた値にちょうど等しい)は、ヨー角φを変更するために必要なヨートルクの成分である。必要とされるヨー加速度によるトルクは、ロータ質量が、硬質ディスクとしてではなく、「ハブ(hub)」に(すなわち、
図10の揺動ヒンジ7に)配置される擬点状質量として働くため、ほとんどない。
【0034】
本発明のシステムが使用されると、ナセルをヨーイングするために必要な最大トルクが、実際に低減され、主に、羽根が垂直位置の周りにあるとき、ティータ角度も低減される。本発明のシステムによって得られるヨートルク低減の大きさのオーダは50%である。
【0035】
システムの最も単純な実施形態では、2枚羽根付き揺動ヒンジヨー制御アップウィンド型タービンのロータ運転速度の制御が
図11に示される。
図11は、到来する風から見られる場合(たとえば、
図2の参照Aを参照)、時計方向に運転するように設計され搭載されるロータを参照し、また、風速が定格速度より高いときのロータ運転速度の制御モダリティを述べる。したがって、ロータは、速度および方向における風の変動に関して調節される角度φだけ風からそれてヨーイングされなければならない。
【0036】
システムは、コントローラ(たとえば、CPU)1.0およびヨーイング作動システム2.0によって構成される。コントローラは、ロータ運転速度センサ(複数可)1.2から信号を受信する。実際のロータ運転速度1.2と所望のロータ運転速度1.4が比較され、関連する速度誤差1.1が、プロセッサ1.5によって積分されて、所望の反時計方向のヨー角1.6(
図2に従って、ロータ軸方向が、風向きからそれて反時計方向に回転する状態での、ロータ軸方向と風向きとの間の所望の角度である)を与える。コントローラは、風向きセンサ(複数可)から、風向きとナセル(ロータ軸方向)との間の実際の相対的角度1.7を受信する。値1.6と1.7との比較は、要求されるロータ軸方向の変化の値1.11(ロータ軸方向に整列するナセルと塔の絶対角度の変化である)を与える。
【0037】
値1.11が正である場合、ヨー作動システム2.0は、ナセルを反時計方向に転回させるようヨーイングモータ2.1に指示する。値1.11が負である場合、ヨー作動システム2.0は、ナセルを時計方向に転回させるようヨーイングモータ2.1に指示する。ヨーイングモータ2.1は、その効果がヨー角の変化2.3であるヨーイングトルク2.2を生成する。その結果、ロータ速度が変化することになり、したがって、検知されるロータ速度1.2が、所望のロータ運転速度1.4に達するように変化し、速度誤差1.1がゼロにされる。
【0038】
システムの代替の実施形態では、2枚羽根付き揺動ヒンジヨー制御アップウィンド型タービンのロータ運転速度の制御が
図12に示される。図は、到来する風から見られる場合(たとえば、
図2の参照Aを参照)、時計方向に運転するように設計され搭載されるロータを参照し、また、風速が定格速度より高いときのロータ運転速度の制御モダリティを述べる。したがって、ロータは、速度および方向における風の変動に関して調節される角度だけ風からそれてヨーイングされなければならない。
【0039】
システムは、コントローラ(たとえば、CPU)1.0およびヨーイング作動システム2.0によって構成される。コントローラは、ロータ運転速度センサ(複数可)1.2から信号を受信する。所望のロータ運転速度1.4は、コントローラの設定点である。任意選択で高周波フィルタ1.3によってろ過された実際のロータ運転速度1.2と所望のロータ運転速度1.4が比較され、関連する速度誤差1.1が、プロセッサ1.5によって積分されて、所望の反時計方向のヨー角1.6(
図2に従って、ロータ軸方向が、風向きから外れて反時計方向に回転する状態での、ロータ軸方向と風向きとの間の所望の角度である)を与える。コントローラは、風向きセンサ(複数可)から、風向きとナセル(ロータ軸方向)との間の実際の相対的角度1.7を受信する。コントローラはまた、ロータ軸絶対方向センサの信号1.10を受信する。コントローラは、値1.7と1.10を比較して、絶対風向き1.12を得る。絶対風向きは、乱れが高い場合、高周波フィルタ1.8によってろ過されうる。ろ過された絶対風向きは、所望のヨー角1.6と比較され、所望のロータ軸方向1.9を与える。検知される軸方向1.10と所望のロータ軸方向1.9の差は、ロータ軸方向1.11の要求(ナセル、別名、ロータ軸方向と塔の絶対角度の変化である)を与える。
【0040】
値1.11が正である場合、ヨー作動システム2.0は、ナセルを反時計方向に転回させるようヨーイングモータ2.1に指示する。値1.11が負である場合、ヨー作動システム2.0は、ナセルを時計方向に転回させるようヨーイングモータ2.1に指示する。ヨーイングモータ2.1は、その効果がヨー角の変化2.3であるヨーイングトルク2.2を生成する。その結果、ロータ速度が変化することになり、したがって、ロータ速度2.4が変化することになりしたがって、検知されるロータ速度1.2が所望のロータ運転速度1.4に達するように変化し、速度誤差1.1がゼロにされる。
【0041】
述べたシステムを使用することによって、2枚羽根付き揺動ヒンジヨー制御風力タービンについて、ヨーならびに揺動振幅を調整するために必要とされるトルクを最小にすることが可能である。本発明のシステムおよび方法を実施するさらなる方法は、当業者に明らかになり、添付特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。
【0042】
[参照による組み込み]
特許、特許出願、特許公報、定期刊行物、本、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書に対する参照および引用が、本開示全体を通して行われた。全てのこうした文書は、全ての目的のために参照によりその全体を本明細書に組込まれる。
【0043】
[均等物]
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。したがって、先の実施形態は、全ての点で、本明細書で述べる発明に関して制限としてではなく例証であると考えられる。そのため、本発明の範囲は、先の説明によってではなく、添付特許請求の範囲によって指示され、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変更は、したがって、本明細書に包含されることが意図される。