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特許6228923セラミック分離膜構造体、およびその補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228923
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】セラミック分離膜構造体、およびその補修方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20171030BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20171030BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D65/10
   B01D69/10
   B01D69/12
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-544632(P2014-544632)
(86)(22)【出願日】2013年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2013080366
(87)【国際公開番号】WO2014069676
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-241958(P2012-241958)
(32)【優先日】2012年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】宮原 誠
(72)【発明者】
【氏名】市川 真紀子
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−506700(JP,A)
【文献】 特開平08−131786(JP,A)
【文献】 特開2003−238147(JP,A)
【文献】 特開平07−155613(JP,A)
【文献】 特開2012−158718(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105511(WO,A1)
【文献】 特開2000−202282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/02
B01D 65/10
B01D 69/10
B01D 69/12
C04B 38/00
C04B 41/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック多孔質体と、
前記セラミック多孔質体上に配置したゼオライト分離膜と、
前記セラミック多孔質体の、前記ゼオライト分離膜に覆われていない表面が露出した欠陥部に析出した、環構造に含まれる酸素原子の数が前記ゼオライト分離膜のゼオライトの環構造に含まれる酸素原子数よりも少ない、同じ、または1〜4個多い、前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部と、を含み、
前記ゼオライト分離膜、および前記ゼオライト補修部は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトであり、
前記ゼオライト分離膜に対するゼオライト補修部の割合は、質量比で20%以下であるセラミック分離膜構造体。
【請求項2】
前記セラミック多孔質体が、モノリス形状である請求項1に記載のセラミック分離膜構造体。
【請求項3】
前記ゼオライト分離膜のゼオライトがDDR型、前記ゼオライト補修部のゼオライトがMFI型である請求項1または2に記載のセラミック分離膜構造体。
【請求項4】
セラミック多孔質体上にゼオライト分離膜を配置した後に、
環構造に含まれる酸素原子の数が前記ゼオライト分離膜のゼオライトの環構造に含まれる酸素原子数よりも少ない、同じ、または1〜4個多い、前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部を形成し、
前記ゼオライト分離膜、および前記ゼオライト補修部は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトであり、
前記ゼオライト分離膜に対するゼオライト補修部の割合は、質量比で20%以下であるセラミック分離膜構造体の補修方法。
【請求項5】
前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを形成する補修用ゾルを作製し、
前記補修用ゾルに、前記ゼオライト分離膜が配置された前記セラミック多孔質体を浸漬し、加熱処理を行うことにより、前記ゼオライト補修部を形成する請求項4に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【請求項6】
補修前の前記ゼオライト分離膜は、構造規定剤を含んでおり、前記構造規定剤を除去する前、または除去後に前記ゼオライト補修部を形成する請求項4または5に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【請求項7】
前記ゼオライト分離膜と前記ゼオライト補修部の前記構造規定剤が異なる請求項に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セラミック多孔質体上に成膜されたゼオライト分離膜を補修したセラミック分離膜構造体、およびその補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多成分の混合物(混合流体)から特定の成分のみを選択的に回収するために、セラミック製のフィルタが用いられている。セラミック製のフィルタは、有機高分子製のフィルタと比較して、機械的強度、耐久性、耐食性等に優れるため、水処理や排ガス処理、あるいは医薬や食品分野等の広範な分野において、液体やガス中の懸濁物質、細菌、粉塵等の除去に、好ましく適用される。
【0003】
このようなフィルタとして、セラミック多孔質上にゼオライト膜を成膜したものが知られている。セラミック多孔質体に水熱合成にてゼオライト膜を成膜する場合、多くのセルに良好なゼオライト膜が成膜できても、一部のセルに欠陥があることにより、製品としての良否に影響していた。欠陥の補修のため繰り返し水熱合成を行うと、欠陥以外の部分の膜厚が厚くなり、透過量が低下する。
【0004】
特許文献1には、ゼオライト膜の粒界、亀裂、およびピンホールを補修する方法が開示されている。ゼオライト膜の片面にカップリング剤を接触させ、もう一方の面に水を接触させることにより補修する。
【0005】
特許文献2には、多孔質基体の表面に配設された分離膜とシール部との境界部分においてシール不良が生じにくい分離膜配設体が開示されている。分離膜とシール部との境界部分に被覆用ゼオライトを備えている。
【0006】
特許文献3では、分離性能の優れたゼオライト膜とするために、ゼオライト膜を積層させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−263457号公報
【特許文献2】特開2009−214075号公報
【特許文献3】特開2010−247150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のようにコーティングによって補修する場合、耐久性が低い。また、欠陥以外の細孔を閉塞し透過量が低下する。
【0009】
特許文献2は、分離膜とシール部との境界部分の欠陥を防ぐものである。分離膜の欠陥の補修については開示されていない。
【0010】
特許文献3は、分離性能を向上させるためのものであるが、ゼオライト膜を積層しており、単層に比べて透過量が減少しやすい。
【0011】
本発明の課題は、セラミック多孔質体上に成膜されたゼオライト分離膜を補修したセラミック分離膜構造体、およびその補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ゼオライト分離膜と異なる構造のゼオライトを含有したゼオライト補修部を設けることにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のセラミック分離膜構造体、およびその補修方法が提供される。
【0013】
[1] セラミック多孔質体と、前記セラミック多孔質体上に配置したゼオライト分離膜と、前記セラミック多孔質体の、前記ゼオライト分離膜に覆われていない表面が露出した欠陥部に析出した、環構造に含まれる酸素原子の数が前記ゼオライト分離膜のゼオライトの環構造に含まれる酸素原子数よりも少ない、同じ、または1〜4個多い、前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部と、を含み、前記ゼオライト分離膜、および前記ゼオライト補修部は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトであり、前記ゼオライト分離膜に対するゼオライト補修部の割合は、質量比で20%以下であるセラミック分離膜構造体。
【0016】
] 前記セラミック多孔質体が、モノリス形状である前記[1]に記載のセラミック分離膜構造体。
【0017】
] 前記ゼオライト分離膜のゼオライトがDDR型、前記ゼオライト補修部のゼオライトがMFI型である前記[1]または]に記載のセラミック分離膜構造体。
【0018】
[4] セラミック多孔質体上にゼオライト分離膜を配置した後に、環構造に含まれる酸素原子の数が前記ゼオライト分離膜のゼオライトの環構造に含まれる酸素原子数よりも少ない、同じ、または1〜4個多い、前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部を形成し、前記ゼオライト分離膜、および前記ゼオライト補修部は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトであり、前記ゼオライト分離膜に対するゼオライト補修部の割合は、質量比で20%以下であるセラミック分離膜構造体の補修方法。
【0020】
] 前記ゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを形成する補修用ゾルを作製し、前記補修用ゾルに、前記ゼオライト分離膜が配置された前記セラミック多孔質体を浸漬し、加熱処理を行うことにより、前記ゼオライト補修部を形成する前記[4]に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【0021】
] 補修前の前記ゼオライト分離膜は、構造規定剤を含んでおり、前記構造規定剤を除去する前、または除去後に前記ゼオライト補修部を形成する前記[4]または[5]に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【0022】
] 前記ゼオライト分離膜と前記ゼオライト補修部の前記構造規定剤が異なる前記[]に記載のセラミック分離膜構造体の補修方法。
【発明の効果】
【0023】
分離膜構造体は、ゼオライト分離膜と、セラミック多孔質体の、ゼオライト分離膜に覆われていない表面が露出した欠陥部に析出したゼオライト分離膜のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部と、を含んでいる。すなわち、ゼオライト分離膜の欠陥部分がゼオライト補修部により補修されており、分離性能に優れている。
【0024】
ゼオライト分離膜およびゼオライト補修部が、疎水性ゼオライトであるため、ゼオライト分離膜で覆われていない多孔質体(基材)の露出部分(欠陥部)に、ゼオライト補修部が選択的に析出し、膜厚も厚くならないため透過量が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るモノリス型分離膜構造体の一実施形態を示す図である。
図2A】セラミック多孔質体上に、種結晶を付着させた工程を示す模式図である。
図2B】ゼオライト分離膜を形成した工程を示す模式図である。
図2C】ゼオライト補修部を形成した工程を示す模式図である。
図3】粒子付着工程において、種付けスラリーを流し込む状態を示す模式図である。
図4】水熱合成により、多孔質体上にゼオライト分離膜を形成する膜形成工程の一実施形態を示す模式図である。
図5A】モノリス型分離膜構造体をハウジングに装着した実施形態を示し、セラミック分離膜構造体のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図5B】モノリス型分離膜構造体をハウジングに装着した他の実施形態を示し、セラミック分離膜構造体のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図6】補修後のゼオライト分離膜を示すSEM写真である。
図7】パーベーパレーション試験を行う試験装置全体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0027】
(1)セラミック分離膜構造体
図1に、本発明に係るセラミック分離膜構造体1の一実施形態を示す。図2A図2Cに、セラミック多孔質体9上に、ゼオライト分離膜33とゼオライト補修部34を形成する工程を示す。図2Aは、セラミック多孔質体9上に、種結晶36を付着させた工程を示す。図2Bは、ゼオライト分離膜33を形成した工程を示す。図2Cは、ゼオライト補修部34を形成した工程を示す。
【0028】
本発明のセラミック分離膜構造体1(単に、分離膜構造体ともいう)は、セラミック多孔質体9(単に、多孔質体ともいう)と、セラミック多孔質体9上に配置したゼオライト分離膜33(単に、分離膜ともいう)と、セラミック多孔質体9の、ゼオライト分離膜33に覆われていない表面が露出した欠陥部37に析出したゼオライト分離膜33のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有するゼオライト補修部34と、を含む。なお、ゼオライト補修部34は、90質量%以上が異なる構造のゼオライトで形成されていることが好ましく、最も好ましくは100質量%である。このように、ゼオライト分離膜33のゼオライトの構造と異なる構造のゼオライトで補修することにより、ゼオライトがゼオライト分離膜33上に析出せず、膜厚が厚くなることがなく、欠陥部37を補修することができる。
【0029】
図1に示すように、多孔質体9は、多数の細孔が形成された多孔質からなる隔壁3を有し、その隔壁3によって、流体の流路となるセル4が形成されている。セル4の内壁面4sに分離膜33およびゼオライト補修部34が形成されている。
【0030】
本明細書では、セラミック多孔質体9とは、基材30をいうが、基材30の上に平均粒径を変えた複数の層を設けた場合は、その層も含んで、多孔質体9という。
【0031】
図2Aに示すように、分離膜33を形成する場合、種結晶36を付着させる。図2Bに示すように、水熱合成によって分離膜33を成膜するが、種結晶36が脱離して欠陥が生じる。そこで分離膜33の成膜後に、ゼオライト補修部34を形成する。すなわち、図2Cに示すように、セラミック多孔質体9上にゼオライト分離膜33が配置されており、ゼオライト分離膜33の欠陥が、ゼオライト補修部34によって補修されている。そして、ゼオライト分離膜33、およびゼオライト補修部34は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトである。ゼオライト分離膜33、ゼオライト補修部34は、疎水性ゼオライトであるため、水熱合成中も反発する力が働き、多孔質体9の表面の露出部分に選択的に析出する。そのため、ゼオライト分離膜33上にゼオライト補修部34が析出せず、膜厚も厚くならないため透過量が低下しない。
【0032】
補修前のゼオライト分離膜は、構造規定剤を含んでおり、構造規定剤を除去する前、または除去後にゼオライト補修部を形成することができる。また、ゼオライト分離膜33とゼオライト補修部34を形成するための構造規定剤が異なることが好ましい。すなわち、ゼオライト分離膜33と異なる構造規定剤をゼオライト補修部34の形成に用いることにより、ゼオライト分離膜33を成長させずに、欠陥部37を補修することができる。
【0033】
ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で20%以下であることが好ましい。ここでいう質量比とは、X線回折による定量分析で求めた質量比である。ゼオライト分離膜33、ゼオライト補修部34となるゼオライトの粉末を一定の質量割合で混合(例えば、分離膜:補修部=9:1)したものを予め調整して基準物質とする。そして、その基準物質のX線回折を行い、検量線を作成する。その後、補修後のゼオライト分離膜33のX線回折を行い、その検量線の値と基準物質の検量線の値とを比較することによりゼオライト補修部34の質量を定量する。以上のようにして求められるゼオライト補修部34の割合が20%以下であることにより、ゼオライト分離膜33の性能を十分に発揮させることができる。以下、基材30、分離膜33、ゼオライト補修部34等について詳しく説明する。
【0034】
(基材)
基材30の材質は、多孔質セラミックであることが好ましい。より好ましくは、骨材粒子が、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ムライト(Al・SiO)、セルベン及びコージェライト(MgAlSi18)等である。これらの中でも、粒径が制御された原料(骨材粒子)を入手し易く、安定な坏土を形成でき、かつ、耐食性が高いアルミナが更に好ましい。
【0035】
基材30は、その外形は円柱形であり、外周面6を有しているが、基材30の全体的な形状やサイズについては、その分離機能を阻害しない限りにおいて特に制限はない。全体的な形状としては、例えば、円柱状、四角柱状(中心軸に直交する断面が四角形の筒状)、三角柱状(中心軸に直交する断面が三角形の筒状)等の形状が挙げられる。中でも、押出成形がし易く、焼成変形が少なく、ハウジングとのシールが容易な円柱状が好ましい。精密濾過や限外濾過に用いる場合には、中心軸に直交する断面における直径が30〜220mm、中心軸方向における長さが150〜2000mmの円柱状とすることが好ましい。すなわち、基材30の一実施形態としては、モノリス型(モノリス形状)が挙げられる。「モノリス型」とは、長手方向の一方の端面から他方の端面まで複数のセルが形成された形状あるいはハニカム状を言う。あるいは、基材30は、中空の円筒状のものであってもよい。
【0036】
図1に示す実施形態の基材30は、長手方向の一方の端面2aから他方の端面2bまで多孔質の隔壁3によって区画形成された、流体の流路となるセル4を複数個有する。基材30は長手方向の両端側に貫通し、長手方向と平行なセル4を、30〜2500個有している。
【0037】
基材30のセル4の断面形状(セル4の延びる方向に直交する断面における形状)としては、例えば、円形、楕円形、多角形等を挙げることができ、多角形としては四角形、五角形、六角形、三角形等を挙げることができる。尚、セル4の延びる方向は、基材30が円柱状の場合には、中心軸方向と同じである。
【0038】
基材30のセル4の断面形状が円形の場合、セル4の直径は、1〜5mmであることが好ましい。1mm以上とすることにより、膜面積を十分に確保することができる。5mm以下とすることにより、強度を十分なものとすることができる。
【0039】
基材30の上に平均粒径を変えた複数の層を設けることもできる。具体的には、基材30の上に、平均粒径の小さい中間層、表面層を積層することもできる。中間層、表面層を設けた場合は、これらも含めて多孔質体9という。
【0040】
基材30の両端面2a,2bには、シール部1sが配設されていることが好ましい。このようにシール部1sが配設されていると、混合物の一部が分離膜33を通過することなく基材30の端面2から基材30の内部に直接流入し、分離膜33を通過したガス等と混ざって外周面6から排出されることを防止することができる。シール部1sとしては、例えば、ガラスシールや金属シールを挙げることができる。
【0041】
(分離膜)
分離膜33は、複数の細孔が形成され、その平均細孔径が多孔質体9(基材30、または、中間層、表面層を設けた場合は、それらも含む。)に比して小さく、セル4内の壁面(内壁面4s)に配置されたものである。あるいは、中空の円筒状の基材30の外周面に分離膜33を配置してもよい。
【0042】
分離膜33の平均細孔径は、要求される濾過性能または分離性能(除去すべき物質の粒径)により、適宜決定することができる。例えば、精密濾過や限外濾過に用いるセラミックフィルタの場合であれば、0.01〜1.0μmが好ましい。この場合、分離膜33の平均細孔径は、ASTM F316に記載のエアフロー法により測定した値である。
【0043】
ゼオライト分離膜33としては、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDR、CHA、BEAといった結晶構造のゼオライト等を利用することができる。分離膜33がDDR型ゼオライトである場合には、特に、二酸化炭素を選択的に分離するために用いられるガス分離膜として利用することができる。
【0044】
(ゼオライト補修部)
ゼオライト補修部34は、セラミック多孔質体9の、ゼオライト分離膜33に覆われていない表面が露出した欠陥部37に析出したゼオライト分離膜33のゼオライトとは異なる構造のゼオライトを含有して形成されている。
【0045】
ゼオライト補修部34のゼオライトは、環構造に含まれる酸素原子の数がゼオライト分離膜33のゼオライトの酸素原子数よりも少ない、同じ、または1〜4個多いことが好ましい。つまり「4個多い」以下であることが好ましい。例えば、ゼオライト分離膜33のゼオライトがDDR型の場合、酸素原子数が少ないSOD型、酸素原子数が2個多いMFI型や酸素原子数が4個多いBEA型が該当する。酸素原子数が多いゼオライトは一般的に細孔径が大きくなる傾向にあり、ゼオライト分離膜33よりもゼオライト補修部34の酸素原子数が多くなりすぎると、修復の効果が薄れる可能性がある。
【0046】
ゼオライト補修部34としては、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDR、CHA、BEAといった結晶構造のゼオライト等を利用することができる。
【0047】
ゼオライト補修部34は、温度や薬品等に対する耐久性を向上させるためには、構造規定剤を含まない状態で使用する方が好ましく、その場合は、上記のようなゼオライトを選択することが好ましい。一方、ゼオライト補修部34が構造規定剤を含む状態で使用する場合は、酸素原子数に関係なく、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライト用いることができる。
【0048】
ゼオライト分離膜33のゼオライトの構造と異なる構造のゼオライトとは、例えば、ゼオライト分離膜33のゼオライトがDDR型の場合、ゼオライト補修部34のゼオライトとしては、MFI型やBEA型である。このように、ゼオライト分離膜33のゼオライトの構造と異なる構造のゼオライトで補修することにより、ゼオライト分離膜33上に析出せず、膜厚が厚くなることもない。
【0049】
(2)製造方法
(2−1)基材
次に、モノリス型の基材30を用いた分離膜構造体1の製造方法について説明する。最初に、多孔質体9の原料を成形する。例えば、真空押出成形機を用い、押出成形する。これによりセル4を有するモノリス型の未焼成の基材30を得る。他にプレス成形、鋳込み成形などがあり、適宜選択できる。次いで、未焼成の基材30を、例えば、900〜1450℃で焼成する。
【0050】
(2−2)ゼオライト分離膜
次に、セル4の内壁面4s上にゼオライト分離膜33を形成する。本発明に用いるゼオライト分離膜33は従来既知の方法により合成できる。たとえば、図4に示すように、シリカ源、アルミナ源、構造規定剤、アルカリ源、水などの原料溶液(ゾル67)を作製し、耐圧容器65内に多孔質体9と調合した原料溶液(ゾル67)を入れた後、これらを乾燥器68に入れ、100〜200℃にて1〜240時間、加熱処理(水熱合成)を行うことにより、ゼオライト分離膜33を製造する。
【0051】
このときに種結晶36として予めゼオライトを多孔質体9(基材30)に塗布しておくことが好ましい(図2A参照)。図3に、流下法による種付けの一実施形態を示す。広口ロート62の下端に多孔質体9を固着し、コック63を開けることにより多孔質体9上部から種付けスラリー64を流し込み、セル4内を通過させて種結晶36を付着させることができる。
【0052】
次に、ゼオライト分離膜33が形成された多孔質体9を、水洗または、80〜100℃の温水にて洗浄し、それを取り出して、80〜100℃にて乾燥する。そして、多孔質体9を電気炉に入れ、大気中で、400〜800℃、1〜200時間加熱することにより、ゼオライト分離膜33の細孔内の構造規定剤を燃焼除去する。以上により、ゼオライト分離膜33を形成することができる。
【0053】
シリカ源としては、コロイダルシリカ、テトラエトキシシラン、水ガラス、シリコンアルコキシド、ヒュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。
【0054】
構造規定剤はゼオライトの細孔構造を形成するために用いられる。特に限定されるものではないが、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、1−アダマンタンアミン、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機化合物が挙げられる。
【0055】
アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属や、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属や、四級アンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。
【0056】
ゼオライト分離膜33の製造方法は、LTA、MFI、MOR、FER、FAU、DDR、CHA、BEAといった結晶構造のゼオライトについて適用することができる。
【0057】
(2−3)ゼオライト補修部
次に、欠陥を補修するためにゼオライト補修部34を作製する方法を説明する。図2Bに示すように、水熱合成によって分離膜33を成膜した際に、種結晶36が脱離して欠陥が生じている。
【0058】
本発明のセラミック分離膜構造体の補修方法は、図2Cに示すように、セラミック多孔質体9上に配置されたゼオライト分離膜33のゼオライトの構造と異なる構造のゼオライトを含有したゼオライト補修部34を形成する。ゼオライト分離膜33、およびゼオライト補修部34は、SiO/Al=100以上の疎水性ゼオライトである。
【0059】
補修方法としては、まず、シリカ源、アルミナ源、構造規定剤、アルカリ源、水などにより、補修用ゾルを作製する。得られた補修用ゾルを耐圧容器65内に入れ、補修する分離膜構造体1(ゼオライト分離膜33が形成されたもの)に種結晶36を塗布せずに、分離膜構造体1を補修用ゾルに浸漬する。そして、これらを乾燥器68に入れ、100〜200℃にて1〜240時間、加熱処理(水熱合成)を行うことにより、ゼオライト分離膜33を補修するゼオライト補修部34を形成する。
【0060】
次に、ゼオライト補修部34が形成された分離膜構造体1を、水洗または、80〜100℃の温水にて洗浄し、それを取り出して、80〜100℃にて乾燥する。そして、分離膜構造体1を電気炉に入れ、大気中で、400〜800℃、1〜200時間加熱することにより、ゼオライト分離膜の細孔内の構造規定剤を燃焼除去する。以上により、ゼオライト分離膜33を補修することができる。構造規定剤を含んだままにする場合は、大気加熱は不要である。
【0061】
(3)分離方法
次に、本実施形態の分離膜構造体1を用いて複数種類が混合した流体から一部の成分を分離する方法について説明する。図5Aに示すように、本実施形態の分離膜構造体1を用いて流体を分離する際には、分離膜構造体1を、流体入口52及び流体出口53を有する筒状のハウジング51内に収納し、ハウジング51の流体入口52から流入させた被処理流体F1を分離膜構造体1で分離し、分離された被処理流体(処理済流体F2)を流体出口53から排出することが好ましい。
【0062】
分離膜構造体1をハウジング51に収納する際には、図5Aに示すように、分離膜構造体1の両端部において、分離膜構造体1とハウジング51との隙間を、シール材54,54で塞ぐことが好ましい。シール材54としては、特に限定されないが、例えば、O−リング等が挙げられる。
【0063】
流体入口52からハウジング51内に流入した被処理流体F1の全てが分離膜構造体1のセル4内に流入し、セル4内に流入した被処理流体F1は、分離膜33を透過して処理済流体F2となって基材30内に浸入する。そして、基材30の外周面6から基材30外に流出して、流体出口53から外部(外部空間)に排出される。シール材54,54によって、被処理流体F1と処理済流体F2とが混ざることを防止することができる。
【0064】
図5Bに、分離膜構造体1をハウジング51に装着した他の実施形態を示す。図5Bに示すように、分離膜構造体1を、流体入口52及び流体出口53,58を有する筒状のハウジング51内に収納する。この実施形態では、ハウジング51の流体入口52から流入させた被処理流体F1を分離膜構造体1で分離し、分離された被処理流体(処理済流体F2)を流体出口53から排出、残り(流体F3)を流体出口58から排出することができる。流体出口58から流体F3を排出することができるため、被処理流体F1の流速を大きく運転することができ、処理済流体F2の透過流速を大きくすることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
(1)基材(多孔質体)の作製
モノリス型基材30を作製し、そのセル4内に分離膜33を形成した。まず、基材30の作製について説明する。
【0067】
(基材)
平均粒径50μmのアルミナ粒子(骨材粒子)100質量部に対して焼結助剤(無機結合材)20質量部を添加し、更に、水、分散剤、及び増粘剤を加えて混合し混練することにより坏土を調製した。得られた坏土を押出成形し、ハニカム形状の未焼成の基材30を作成した。
【0068】
次に、基材30を焼成した。焼成条件は1250℃、1時間とし、昇温ないし降温の速度はいずれも100℃/時間とした。
【0069】
多孔質体9は、外形が円柱形であり、その外径が30mm、セル径が2.5mm、セル数が55個、長さが160mmであった。
【0070】
(2)DDR膜の形成
分離膜33としてDDR型ゼオライト膜(単に、DDR膜ともいう)を多孔質体9のセル4の内壁面4s上に形成した。
【0071】
(2−1)種結晶の作製
M.J.den Exter,J.C.Jansen,H.van Bekkum,Studies in Surface Science and Catalysis vol.84,Ed.by J.Weitkamp et al.,Elsevier(1994)1159−1166、または特開2004−083375号公報に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法を基に、DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これをそのまま、または必要に応じて粉砕して種結晶36として使用した。合成後または粉砕後の種結晶36を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液を作製した。
【0072】
(2−2)種付け(粒子付着工程)
(2−1)で作製した種結晶分散液をイオン交換水またはエタノールで希釈し、DDR濃度0.001〜0.36質量%(スラリー64中の固形分濃度)になるように調整し、スターラーで300rpmで攪拌し、種付け用スラリー液(スラリー64)とした。広口ロート62の下端に多孔質の多孔質体9を固着し、多孔質体9の上部から160mlの種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させた(図3参照)。スラリー64を流下させた多孔質体9は、室温または80℃、風速3〜6m/sの条件で10〜30minセル内を通風乾燥させた。スラリー64の流下、通風乾燥を1〜6回繰り返してサンプルを得た。乾燥させた後、電子顕微鏡による微構造観察を行った。DDR粒子が多孔質体9の表面に付着していることを確認した。
【0073】
(2−3)膜化(膜形成工程)
フッ素樹脂製の100mlの広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30質量%のコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS,日産化学製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO=0.016、水/SiO=21だった。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器65内に(2−2)でDDR粒子を付着させた多孔質体9を配置し、調合した原料溶液(ゾル67)を入れ、140℃にて50時間、加熱処理(水熱合成)を行った(図4参照)。なお、水熱合成時は、原料のコロイダルシリカとエチレンジアミンによって、アルカリ性であった。走査型電子顕微鏡で膜化させた多孔質体9の破断面を観察したところ、DDR膜の膜厚は、10μm以下であった。
【0074】
SiO/Alは、EDS(エネルギー分散型X線分析)により測定した元素比率を酸化物換算して求めた。DDR膜は、SiO/Al=∞(無限大)であった。DDR膜の付着量は20g/mであった。
【0075】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例1は、DDR膜(構造規定剤除去前)をMFI(構造規定剤除去前)で補修した。以下、具体的に、説明する。
【0076】
(MFIゾル調整)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(ライオンアクゾ社製)0.84gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(SACHEM社製)0.44gとを混合し、さらに蒸留水202.1g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)6.58gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0077】
(MFI(酸素原子数10個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去前のもの)を浸漬し、160℃の熱風乾燥器中で12時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用MFIの付着量は3.1g/mであった。なお、EDSの結果から、MFI膜の値は、SiO/Al=1500であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で14%であった。
【0078】
(4)構造規定材除去前ゼオライト分離膜の補修評価(N透過量測定)
ガスを、補修前の分離膜構造体1のセル4内に導入して0.2MPaで印加し、分離膜33を透過したNガスの透過流量(L/min)をマスフローメーターにて測定し、透過量(L/min・m・kPa)を算出した。補修後も同様の方法で測定し、N透過量が低下していれば補修されたと判断した。
【0079】
【表1】
【0080】
補修後N透過量は補修前に比べて低下が確認されたことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみMFI型ゼオライトが析出していることが確認された(図6)。また、EDSの結果から補修部34のMFI型ゼオライトはSiO/Al=∞であった。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製、(2)DDR膜の形成((2−1)〜(2−3))を行った。
【0082】
(2−4)構造規定剤除去
膜形成工程で形成された膜を電気炉で大気中450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。X線回折により、結晶相を同定し、DDR型ゼオライトであることを確認した。また膜化後、多孔質体9がDDR型ゼオライトで被覆されていることを確認した。
【0083】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例2は、構造規定剤除去後のDDR膜をMFIで補修した。以下、具体的に、説明する。
【0084】
(MFIゾル調整)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(ライオンアクゾ社製)0.84gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(SACHEM社製)0.44gとを混合し、さらに蒸留水202.1g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)6.58gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0085】
(MFI(酸素原子数10個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去後のもの)を浸漬し、160℃の熱風乾燥器中で6〜30時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用MFIの付着量は3.5g/mであった。電気炉で450℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウムを除去した。
【0086】
(実施例3)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製、(2)DDR膜の形成((2−1)〜(2−3))を行った。
【0087】
(2−4)構造規定剤除去
膜形成工程で形成された膜を電気炉で大気中450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。X線回折により、結晶相を同定し、DDR型ゼオライトであることを確認した。また膜化後、多孔質体9がDDR型ゼオライトで被覆されていることを確認した。
【0088】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例3は、構造規定剤除去後のDDR膜をBEAで補修した。以下、具体的に、説明する。
【0089】
(BEAゾル調整)
35質量%のテトラエチルアンモニウム溶液85.1gと蒸留水33.7g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)81.0gと硝酸アルミニウム水溶液を0.5gを加えて、室温で60分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0090】
(BEA(酸素原子数12個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去後のもの)を浸漬し、120℃〜150℃の熱風乾燥器中で80〜200時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用BEAの付着量は1.2g/mであった。電気炉で450℃まで昇温し、4時間保持して、テトラエチルアンモニウムを除去した。
【0091】
(4)構造規定材除去後ゼオライト分離膜の補修評価(実施例2,3)(CO透過量測定、分離性能)
分離膜33がDDR膜の場合、以下のようにして分離係数を求めた。二酸化炭素(CO)とメタン(CH)の混合ガス(各ガスの体積比を50:50とし、各ガスの分圧を0.2MPaとした。)を、分離膜構造体1のセル4内に導入し、分離膜33を透過したCOガスの透過流量をマスフローメーターにて測定しCO透過量を算出した(表2)。CO透過量は、分離膜33のCOガスの処理性能を表す。CO透過量が大きければ大きいほど処理量は多くなるため分離膜33としては高性能になる。
【0092】
また、分離膜33を透過したガスを回収しガスクロマトグラフを用いて成分分析を行い、「分離係数α=(透過CO濃度/透過CH濃度)/(供給CO濃度/供給CH濃度)」の式により分離係数を算出した。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例2は、補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみMFI型ゼオライトが析出していることが確認された。また、EDSの結果から補修部34のMFI型ゼオライトはSiO/Al=1000であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で16%であった。
【0095】
実施例3は、補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみBEA型ゼオライトが析出していることが確認された。また、EDSの結果から補修部34のBEA型ゼオライトはSiO/Al=150であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で7%であった。
【0096】
(実施例4)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製を行った。
【0097】
(2)MFI膜の形成
分離膜33としてMFI膜を多孔質体9のセル4の内壁面4s上に形成した。
【0098】
(2−1)種付け用ゾルの調製
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)36.17gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)18.88gとを混合し、さらに蒸留水82.54g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)95gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して種付け用スラリー液(スラリー64)とした。
【0099】
(2−2)ゼオライト種結晶の生成
得られた種付け用スラリー液(スラリー64)を、図4に示すように、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、直径12mm、厚さ1〜2mm、長さ160mmの円筒状の多孔質体9を浸漬し、110℃の熱風乾燥機中で10時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の支持体表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、多孔質体9の表面全体を約0.5μmのゼオライト結晶粒子が覆っていた。そして、結晶粒子のX線回折によりMFI型ゼオライトであることが確認された。
【0100】
(2−3)膜形成用ゾルの調製
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)0.66gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)0.34gとを混合し、さらに蒸留水229.6g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)5.2gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して膜形成用ゾルとした。
【0101】
(2−4)ゼオライト分離膜の形成
得られた膜形成用ゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、上記ゼオライト種結晶36が析出した多孔質体9を浸漬し、180℃の熱風乾燥機中で60時間反応させた。反応後の多孔質体9は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の多孔質体9の表面部分における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、多孔質体9の表面に厚さ約13μmの緻密層(ゼオライト分離膜)が形成されていた。この緻密層のX線回折(XRD)による分析を行ったところ、MFI型ゼオライト結晶であることが確認された。
【0102】
(2−5)構造規定剤除去
得られた、多孔質体9上に形成されたMFI型ゼオライト膜を、電気炉で500℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウムを除去して、ゼオライト膜を得た。
【0103】
SiO/Alは、EDS(エネルギー分散型X線分析)により測定した元素比率を酸化物換算して求めた。MFI膜の値は、SiO/Al=1000であった。MFI膜の付着量は30g/mであった。
【0104】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例4は、構造規定剤除去後のMFI膜をSGT(構造規定剤除去前)で補修した。以下、具体的に、説明する。
【0105】
(SGT(酸素原子数6個)補修)
フッ素樹脂製の100mlの広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30質量%のコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS,日産化学製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO=0.016、水/SiO=21だった。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器65内に調合した原料溶液(ゾル67)を入れ、MFI膜を配設した分離膜構造体1を浸漬し、160℃にて24時間、加熱処理(水熱合成)を行った。5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、100℃で16時間乾燥した。補修用SGTの付着量は5.9g/mであった。
【0106】
(4)構造規定材除去後ゼオライト分離膜の補修評価(実施例4)(パーベーパレーション試験)
図7は、パーベーパレーション試験を行う試験装置全体を示す模式図である。SUS製モジュール75は、SUS製の円筒状の外側容器の中に、ゼオライト分離膜33が形成された分離膜構造体1が装着された構造である。SUS製モジュール75は、内部空間がゼオライト分離膜33により原料側空間76と透過側空間77とに仕切られている。また、原料側空間76に連通するように供給液導入口73と供給液排出口74とが形成されている。さらに、透過側空間77の上端部に透過蒸気を外部に排出するための透過蒸気回収口80が形成されている。
【0107】
原料タンク71内に入れられた、エタノールを10体積%含む水溶液を約70℃に加熱した。供給ポンプ72にてSUS(ステンレススチール)製モジュール75の原料側空間76に、供給液導入口73より原料を供給し、供給液排出口74から排出された原料を原料タンク71に戻すことで、原料を循環させた。原料の流量は流量計79で確認した。
【0108】
真空ポンプ83にてゼオライト分離膜33の支持体側(透過側空間77)を減圧することで、ゼオライト分離膜33を透過させ、透過蒸気回収口80から排出される透過蒸気を液体Nトラップ81にて回収した。透過側空間77の真空度は圧力制御器82により制御した。
【0109】
得られた液体の質量は電子天秤にて秤量し、液体の組成はガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0110】
上記パーベーパレーション試験の結果得られた、分離係数及び透過量(kg/min・m)を表3に示す。ここで、分離係数とは、下記式で示されるように、供給液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比に対する透過液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比の値をいう。また、透過流束とは、単位時間(時間)、単位面積(m)当たりに、分離膜33を透過した全物質の質量をいう。
【0111】
分離係数=((透過液中のエタノール濃度)/(透過液中の水濃度))/((供給液中のエタノール濃度)/(供給液中の水濃度))
【0112】
【表3】
【0113】
補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、MFI膜上には析出せず、欠陥部37のみSGT型ゼオライトが析出した。また、EDS結果から補修部34のSGT型ゼオライトはSiO/Al=∞であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で17%であった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のセラミック分離膜構造体の補修方法は、セルの内壁面にゼオライト分離膜が成膜されたセラミック分離膜構造体の欠陥の補修に用いることができる。本発明のセラミックス分離膜構造体は、混合ガス、混合液体の分離に用いることができる。
【符号の説明】
【0115】
1:分離膜構造体、1s:シール部、2,2a,2b:端面、3:隔壁、4:セル、4s:内壁面、6:外周面、9:多孔質体、30:基材、33:分離膜、34:ゼオライト補修部、36:種結晶、37:欠陥部、51:ハウジング、52:流体入口、53,58:流体出口、54:シール材、62:広口ロート、63:コック、64:スラリー、65:耐圧容器、67:ゾル、68:乾燥器、71:原料タンク、72:供給ポンプ、73:供給液導入口、74:供給液排出口、75:SUS製モジュール、76:原料側空間、77:透過側空間、79:流量計、80:透過蒸気回収口、81:液体Nトラップ、82:圧力制御器、83:真空ポンプ。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7