【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
(1)基材(多孔質体)の作製
モノリス型基材30を作製し、そのセル4内に分離膜33を形成した。まず、基材30の作製について説明する。
【0067】
(基材)
平均粒径50μmのアルミナ粒子(骨材粒子)100質量部に対して焼結助剤(無機結合材)20質量部を添加し、更に、水、分散剤、及び増粘剤を加えて混合し混練することにより坏土を調製した。得られた坏土を押出成形し、ハニカム形状の未焼成の基材30を作成した。
【0068】
次に、基材30を焼成した。焼成条件は1250℃、1時間とし、昇温ないし降温の速度はいずれも100℃/時間とした。
【0069】
多孔質体9は、外形が円柱形であり、その外径が30mm、セル径が2.5mm、セル数が55個、長さが160mmであった。
【0070】
(2)DDR膜の形成
分離膜33としてDDR型ゼオライト膜(単に、DDR膜ともいう)を多孔質体9のセル4の内壁面4s上に形成した。
【0071】
(2−1)種結晶の作製
M.J.den Exter,J.C.Jansen,H.van Bekkum,Studies in Surface Science and Catalysis vol.84,Ed.by J.Weitkamp et al.,Elsevier(1994)1159−1166、または特開2004−083375号公報に記載のDDR型ゼオライトを製造する方法を基に、DDR型ゼオライト結晶粉末を製造し、これをそのまま、または必要に応じて粉砕して種結晶36として使用した。合成後または粉砕後の種結晶36を水に分散させた後、粗い粒子を除去し、種結晶分散液を作製した。
【0072】
(2−2)種付け(粒子付着工程)
(2−1)で作製した種結晶分散液をイオン交換水またはエタノールで希釈し、DDR濃度0.001〜0.36質量%(スラリー64中の固形分濃度)になるように調整し、スターラーで300rpmで攪拌し、種付け用スラリー液(スラリー64)とした。広口ロート62の下端に多孔質の多孔質体9を固着し、多孔質体9の上部から160mlの種付け用スラリー液を流し込みセル内を通過させた(
図3参照)。スラリー64を流下させた多孔質体9は、室温または80℃、風速3〜6m/sの条件で10〜30minセル内を通風乾燥させた。スラリー64の流下、通風乾燥を1〜6回繰り返してサンプルを得た。乾燥させた後、電子顕微鏡による微構造観察を行った。DDR粒子が多孔質体9の表面に付着していることを確認した。
【0073】
(2−3)膜化(膜形成工程)
フッ素樹脂製の100mlの広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30質量%のコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS,日産化学製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO
2=0.016、水/SiO
2=21だった。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器65内に(2−2)でDDR粒子を付着させた多孔質体9を配置し、調合した原料溶液(ゾル67)を入れ、140℃にて50時間、加熱処理(水熱合成)を行った(
図4参照)。なお、水熱合成時は、原料のコロイダルシリカとエチレンジアミンによって、アルカリ性であった。走査型電子顕微鏡で膜化させた多孔質体9の破断面を観察したところ、DDR膜の膜厚は、10μm以下であった。
【0074】
SiO
2/Al
2O
3は、EDS(エネルギー分散型X線分析)により測定した元素比率を酸化物換算して求めた。DDR膜は、SiO
2/Al
2O
3=∞(無限大)であった。DDR膜の付着量は20g/m
2であった。
【0075】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例1は、DDR膜(構造規定剤除去前)をMFI(構造規定剤除去前)で補修した。以下、具体的に、説明する。
【0076】
(MFIゾル調整)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(ライオンアクゾ社製)0.84gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(SACHEM社製)0.44gとを混合し、さらに蒸留水202.1g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)6.58gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0077】
(MFI(酸素原子数10個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去前のもの)を浸漬し、160℃の熱風乾燥器中で12時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用MFIの付着量は3.1g/m
2であった。なお、EDSの結果から、MFI膜の値は、SiO
2/Al
2O
3=1500であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で14%であった。
【0078】
(4)構造規定材除去前ゼオライト分離膜の補修評価(N
2透過量測定)
N
2ガスを、補修前の分離膜構造体1のセル4内に導入して0.2MPaで印加し、分離膜33を透過したN
2ガスの透過流量(L/min)をマスフローメーターにて測定し、透過量(L/min・m
2・kPa)を算出した。補修後も同様の方法で測定し、N
2透過量が低下していれば補修されたと判断した。
【0079】
【表1】
【0080】
補修後N
2透過量は補修前に比べて低下が確認されたことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみMFI型ゼオライトが析出していることが確認された(
図6)。また、EDSの結果から補修部34のMFI型ゼオライトはSiO
2/Al
2O
3=∞であった。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製、(2)DDR膜の形成((2−1)〜(2−3))を行った。
【0082】
(2−4)構造規定剤除去
膜形成工程で形成された膜を電気炉で大気中450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。X線回折により、結晶相を同定し、DDR型ゼオライトであることを確認した。また膜化後、多孔質体9がDDR型ゼオライトで被覆されていることを確認した。
【0083】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例2は、構造規定剤除去後のDDR膜をMFIで補修した。以下、具体的に、説明する。
【0084】
(MFIゾル調整)
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(ライオンアクゾ社製)0.84gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(SACHEM社製)0.44gとを混合し、さらに蒸留水202.1g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)6.58gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0085】
(MFI(酸素原子数10個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去後のもの)を浸漬し、160℃の熱風乾燥器中で6〜30時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用MFIの付着量は3.5g/m
2であった。電気炉で450℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウムを除去した。
【0086】
(実施例3)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製、(2)DDR膜の形成((2−1)〜(2−3))を行った。
【0087】
(2−4)構造規定剤除去
膜形成工程で形成された膜を電気炉で大気中450または500℃で50時間加熱し、細孔内の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。X線回折により、結晶相を同定し、DDR型ゼオライトであることを確認した。また膜化後、多孔質体9がDDR型ゼオライトで被覆されていることを確認した。
【0088】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例3は、構造規定剤除去後のDDR膜をBEAで補修した。以下、具体的に、説明する。
【0089】
(BEAゾル調整)
35質量%のテトラエチルアンモニウム溶液85.1gと蒸留水33.7g及び約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)81.0gと硝酸アルミニウム水溶液を0.5gを加えて、室温で60分間マグネティックスターラーで攪拌して、ゾルとした。
【0090】
(BEA(酸素原子数12個)補修)
得られたゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、DDR膜を配設した分離膜構造体1(構造規定剤除去後のもの)を浸漬し、120℃〜150℃の熱風乾燥器中で80〜200時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、80℃で16時間乾燥した。補修用BEAの付着量は1.2g/m
2であった。電気炉で450℃まで昇温し、4時間保持して、テトラエチルアンモニウムを除去した。
【0091】
(4)構造規定材除去後ゼオライト分離膜の補修評価(実施例2,3)(CO
2透過量測定、分離性能)
分離膜33がDDR膜の場合、以下のようにして分離係数を求めた。二酸化炭素(CO
2)とメタン(CH
4)の混合ガス(各ガスの体積比を50:50とし、各ガスの分圧を0.2MPaとした。)を、分離膜構造体1のセル4内に導入し、分離膜33を透過したCO
2ガスの透過流量をマスフローメーターにて測定しCO
2透過量を算出した(表2)。CO
2透過量は、分離膜33のCO
2ガスの処理性能を表す。CO
2透過量が大きければ大きいほど処理量は多くなるため分離膜33としては高性能になる。
【0092】
また、分離膜33を透過したガスを回収しガスクロマトグラフを用いて成分分析を行い、「分離係数α=(透過CO
2濃度/透過CH
4濃度)/(供給CO
2濃度/供給CH
4濃度)」の式により分離係数を算出した。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例2は、補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM
の観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみMFI型ゼオライトが析出していることが確認された。また、EDSの結果から補修部34のMFI型ゼオライトはSiO
2/Al
2O
3=1000であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で16%であった。
【0095】
実施例3は、補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM
の観察結果、DDR膜上には析出せず、欠陥部37のみBEA型ゼオライトが析出していることが確認された
。また、EDSの結果から補修部34のBEA型ゼオライトはSiO
2/Al
2O
3=150であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で7%であった。
【0096】
(実施例4)
実施例1と同様にして、(1)基材(多孔質体)の作製を行った。
【0097】
(2)MFI膜の形成
分離膜33としてMFI膜を多孔質体9のセル4の内壁面4s上に形成した。
【0098】
(2−1)種付け用ゾルの調製
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)36.17gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)18.88gとを混合し、さらに蒸留水82.54g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)95gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して種付け用スラリー液(スラリー64)とした。
【0099】
(2−2)ゼオライト種結晶の生成
得られた種付け用スラリー液(スラリー64)を、
図4に示すように、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、直径12mm、厚さ1〜2mm、長さ160mmの円筒状の多孔質体9を浸漬し、110℃の熱風乾燥機中で10時間反応させた。反応後の支持体は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の支持体表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、多孔質体9の表面全体を約0.5μmのゼオライト結晶粒子が覆っていた。そして、結晶粒子のX線回折によりMFI型ゼオライトであることが確認された。
【0100】
(2−3)膜形成用ゾルの調製
40質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM社製)0.66gと、テトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製)0.34gとを混合し、さらに蒸留水229.6g、約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学株式会社製)5.2gを加えて、室温で30分間マグネティックスターラーで撹拌して膜形成用ゾルとした。
【0101】
(2−4)ゼオライト分離膜の形成
得られた膜形成用ゾルを、フッ素樹脂製内筒が内部に配設されたステンレス製300ml耐圧容器内に入れ、上記ゼオライト種結晶36が析出した多孔質体9を浸漬し、180℃の熱風乾燥機中で60時間反応させた。反応後の多孔質体9は、5回の煮沸洗浄の後、80℃で16時間乾燥した。反応後の多孔質体9の表面部分における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、多孔質体9の表面に厚さ約13μmの緻密層(ゼオライト分離膜)が形成されていた。この緻密層のX線回折(XRD)による分析を行ったところ、MFI型ゼオライト結晶であることが確認された。
【0102】
(2−5)構造規定剤除去
得られた、多孔質体9上に形成されたMFI型ゼオライト膜を、電気炉で500℃まで昇温し、4時間保持して、テトラプロピルアンモニウムを除去して、ゼオライト膜を得た。
【0103】
SiO
2/Al
2O
3は、EDS(エネルギー分散型X線分析)により測定した元素比率を酸化物換算して求めた。MFI膜の値は、SiO
2/Al
2O
3=1000であった。MFI膜の付着量は30g/m
2であった。
【0104】
(3)ゼオライト分離膜の補修
実施例4は、構造規定剤除去後のMFI膜をSGT(構造規定剤除去前)で補修した。以下、具体的に、説明する。
【0105】
(SGT(酸素原子数6個)補修)
フッ素樹脂製の100mlの広口瓶に7.35gのエチレンジアミン(和光純薬工業製)を入れた後、1.156gの1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)を加え、1−アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解した。別の容器に98.0gの30質量%のコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS,日産化学製)と116.55gのイオン交換水を入れ軽く攪拌した後、これをエチレンジアミンと1−アダマンタンアミンを混ぜておいた広口瓶に加えて強く振り混ぜ、原料溶液を調製した。原料溶液の各成分のモル比は1−アダマンタンアミン/SiO
2=0.016、水/SiO
2=21だった。その後、原料溶液を入れた広口瓶をホモジナイザーにセットし、1時間攪拌した。内容積300mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器65内に調合した原料溶液(ゾル67)を入れ、MFI膜を配設した分離膜構造体1を浸漬し、160℃にて24時間、加熱処理(水熱合成)を行った。5回の煮沸洗浄(洗浄操作)の後、100℃で16時間乾燥した。補修用SGTの付着量は5.9g/m
2であった。
【0106】
(4)構造規定材除去後ゼオライト分離膜の補修評価(実施例4)(パーベーパレーション試験)
図7は、パーベーパレーション試験を行う試験装置全体を示す模式図である。SUS製モジュール75は、SUS製の円筒状の外側容器の中に、ゼオライト分離膜33が形成された分離膜構造体1が装着された構造である。SUS製モジュール75は、内部空間がゼオライト分離膜33により原料側空間76と透過側空間77とに仕切られている。また、原料側空間76に連通するように供給液導入口73と供給液排出口74とが形成されている。さらに、透過側空間77の上端部に透過蒸気を外部に排出するための透過蒸気回収口80が形成されている。
【0107】
原料タンク71内に入れられた、エタノールを10体積%含む水溶液を約70℃に加熱した。供給ポンプ72にてSUS(ステンレススチール)製モジュール75の原料側空間76に、供給液導入口73より原料を供給し、供給液排出口74から排出された原料を原料タンク71に戻すことで、原料を循環させた。原料の流量は流量計79で確認した。
【0108】
真空ポンプ83にてゼオライト分離膜33の支持体側(透過側空間77)を減圧することで、ゼオライト分離膜33を透過させ、透過蒸気回収口80から排出される透過蒸気を液体N
2トラップ81にて回収した。透過側空間77の真空度は圧力制御器82により制御した。
【0109】
得られた液体の質量は電子天秤にて秤量し、液体の組成はガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0110】
上記パーベーパレーション試験の結果得られた、分離係数及び透過量(kg/min・m
2)を表3に示す。ここで、分離係数とは、下記式で示されるように、供給液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比に対する透過液中のエタノール濃度(体積%)と水濃度(体積%)との比の値をいう。また、透過流束とは、単位時間(時間)、単位面積(m
2)当たりに、分離膜33を透過した全物質の質量をいう。
【0111】
分離係数=((透過液中のエタノール濃度)/(透過液中の水濃度))/((供給液中のエタノール濃度)/(供給液中の水濃度))
【0112】
【表3】
【0113】
補修後分離係数が補修前に比べて向上したことから、欠陥部37が補修されていると判断した。SEM観察結果、MFI膜上には析出せず、欠陥部37のみSGT型ゼオライトが析出した。また、EDS結果から補修部34のSGT型ゼオライトはSiO
2/Al
2O
3=∞であった。ゼオライト分離膜33に対するゼオライト補修部34の割合は、質量比で17%であった。