【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、1つの態様によれば、少なくとも1つの第1のシステムと少なくとも1つの第2のシステムとの間での通信方法を使用し、第1のシステムから第2のシステムへの少なくとも1つのメッセージ、第2のシステムから第1のシステムへの少なくとも1つのメッセージ、およびクロック信号を含むデータを前記システム間で同時に送ることができる全二重同期シリアルリンクを手段として、この目的を達成し、
この方法は、
第2のシステムが、第1のシステムによって送信され、遅延され、かつ実質的に同位相であるメッセージとクロック信号とを受信するステップと、
第2のシステムが第1のシステムに、少なくとも1つのメッセージを送信するステップと、
第2のシステムによって受信されたクロック信号が、第2のシステムによって送信された前記メッセージと共に、第1のシステムに返送されるステップと、
第1のシステムが、第2のシステムによって送信され、遅延され、かつ実質的に同位相であるメッセージおよび返送クロック信号を受信するステップとを行う。
【0019】
上記の方法により、第1のシステムおよび第2のシステムがクロック信号と同期して受信するメッセージをサンプリングする必要がない、リンク上のデータ送信に生じる遅延なく、高速の全二重同期シリアルリンクを達成することが可能になる。
【0020】
リンクは、第2のシステムが第1のシステムに送信するメッセージおよび第1のシステムに返送されるクロック信号を、同時に送信し得る。これらのデータは、第1のシステムに同位相で到着する。第2のシステムが第1のシステムに送信するメッセージおよび第1のシステムに返送されるクロック信号には、リンクによって、実質的に等しい遅延がもたらされる。この遅延は、第1のシステムから第2のシステムに送信されるデータにリンクによってもたらされる遅延と同じであり得る。一変形形態では、リンクはデータ送信の1つの方向から他の方向に異なる遅延を施し得る。
【0021】
第1のシステムはマスタ、つまり第2のシステムとの通信を主導的にトリガするシステムであり得、よって第2のシステムはスレーブであり得る。
【0022】
一変形形態では、第1のシステムがスレーブで、第2のシステムがマスタである。
【0023】
全二重同期シリアルリンクは、シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)タイプのリンクであることが有利である。通信においては、クロック信号は第1のシステムによって生成される。
【0024】
リンクは、第1のシステムと第2のシステムとの間に配置される3本のワイヤを備え得、それぞれが、第1のシステムから第2のシステムへのメッセージ、第2のシステムから第1のシステムへのメッセージ、およびクロック信号を送る。第2のシステムが受信したクロック信号を第1のシステムに返送するために、第3のワイヤと第1のシステムの領域の間に第4のワイヤを備え得る。前記領域は、特に第2のシステムの近くであり、特に第1のシステムより第2のシステムに近い。前記領域は、第2のシステムのリンク側の入力に見つかり得る。前記領域は、第2のシステムによって受信されたクロック信号と実質的に同一のクロック信号を第1のシステムに返送するように配置され得る。
【0025】
各ワイヤは単向性またはそれ以外であり得る。
【0026】
本発明の第1の実施形態では、第1のシステムと第2のシステムとの間にガルバニック絶縁が挿置され、このガルバニック絶縁を全二重同期シリアルリンクが経由する。このような場合、リンク上を送信されるデータ上にリンクが生じさせる遅延は、このガルバニック絶縁に全体的または部分的に起因する。ガルバニック絶縁は、例えばトランスなどであり得る。
【0027】
ガルバニック絶縁は、例えばマルチチャネルであり、リンクの各ワイヤは絶縁のチャネルの1つに受けられる。
【0028】
本発明の第1の実施形態では、第3のワイヤの、第4のワイヤの起点となる領域は、第1のシステムから第2のシステムに向かう場合、ガルバニック絶縁の下流に配置される。
【0029】
本発明の第2の実施形態では、全二重同期シリアルリンクによって経由されるガルバニック絶縁は存在しない。リンクの長さは数メートル、例えば3メートルを超え、リンクによって送信されるデータにリンクによって生じる遅延は、リンクの長さに全体的または部分的に起因する。
【0030】
本発明の第2の実施形態では、第3のワイヤの、第4のワイヤの起点となる領域は、リンクをたどると、第1のシステムより第2のシステムの近くであり得る。第3のワイヤの前記領域は、リンクの、第2のシステムに最も近い、特に1/3、特に1/4、特に1/10の位置にあり、リンクは3/3、特に4/4、特に10/10を含む。第4のワイヤは、第2のシステムのリンク側の入力のレベルにある第3のワイヤを起点とし得る。
【0031】
第3の実施形態によれば、このリンク上を送信されるデータにリンクが生じさせる遅延は、ガルバニック絶縁を経由することに部分的に起因し、リンクの長さに部分的に起因する。
【0032】
本発明による方法により、このようにして、リンクが生じさせ得る比較的長い遅延、具体的には所望の通信速度のためのクロック信号の期間の1/4程度の長さの遅延にもかかわらず、リンクの良好な動作を保証することを可能にし得る。
【0033】
全二重同期シリアルリンクは、5Mビット/秒以上、特に10Mビット/秒以上、特に20Mビット/秒に等しい速度で動作することが好ましい。クロック信号の期間は、特に200ns未満、特に100ns未満、特に50ns程度である。
【0034】
第1のシステムは、リンク上でのデータの送信を担当する第1の半二重モジュールおよび、リンク上を送信されるデータの受信を担当する第2の半二重モジュールを備え得る。
【0035】
第2のシステムは、第1のシステムとの通信を担当する全二重モジュールを備え得る。
【0036】
このような第1のシステムおよびこのような第2のシステムで、第1のシステムによってクロック信号と同位相でメッセージが送信される。リンクが、該当する場合にはマルチチャネルのガルバニック絶縁を介して、これらのデータ、具体的には各ワイヤ上に同一の遅延を生じさせるとすれば、これらのデータはガルバニック絶縁を経由しても実質的に同位相を維持する。第2のシステムの全二重モジュールは、クロック信号を基準として、受信するメッセージを読み取り、これらのデータは同位相で受信されている。
【0037】
第2のシステムの全二重モジュールは、次に、受信したクロック信号および第1のシステムに返送するクロック信号と同位相で、第1のシステムにメッセージを送信し得る。このメッセージおよび返送されるクロック信号はガルバニック絶縁を経由し、同じだけ遅延して、第1のシステムの第2のモジュールに到着する。第1のシステムの第2のモジュールは次に、受信したクロック信号を基準として、受信したメッセージを読み取る。
【0038】
第1のシステムおよび第2のシステムが、5Mビット/秒超、特に10Mビット/秒超、例えば20Mビット/秒に等しい速度でも、受信したデータを満足にサンプリングすることができるように、各モジュールは、メッセージを、同じく受信するクロック信号と同位相で受信し得る。
【0039】
本発明によれば、マルチチャネル絶縁が使用される場合、この絶縁は、生じる遅延の値またはこの遅延の値に関する精度の点で、特定の性能を提供する必要はない。その理由は、この遅延はクロック信号の返送によって補償されるからである。この事実に関係する唯一の制約は、1つのチャネルと他のチャネルで実質的に等しい遅延が、ガルバニック絶縁によって送信の各方向、または送信の双方向にも生じることである。
【0040】
第1のシステムはマスタであり得る。マスタである場合、第1のシステムは、プログラマブル論理回路(FPGA)を備え得る。この場合、第2のシステムはスレーブであり、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備え得る。この場合、リンクの作成には4本のワイヤのみが使用可能であり、これは、ガルバニック絶縁が提供される場合、4本のワイヤのみが絶縁されなければならないことを意味する。
図2に示されるリンクに関しては、第1のシステムと第2のシステムを通信のクロック供給のために連結する追加のワイヤを絶縁する必要はなく、このクロック供給は第1のシステムの第1のモジュールによって送信されるクロック信号を使用して行われる。
【0041】
一変形形態では、第1のシステムはスレーブであり得る。第1のシステムがスレーブである場合、第1のシステムは、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備え得、よって、第2のシステムはマスタであり、FPGAを備え得る。この場合、通信のクロック供給のために追加のワイヤを備える必要があり得る。よって、上記の4本のワイヤが経由するガルバニック絶縁と平行に取り付けられる追加のガルバニック絶縁を、第1のシステムと第2のシステムとの間に備え得る。
【0042】
リンク上を送信されるデータは、インバータのスイッチへの適用を目的とするデューティサイクル値および電流の測定値から成り得る。リンク上を送信されるデータ、およびクロック信号以外は、上記のデューティサイクル値および電流の測定値から成り得る。一変形形態では、リンクは、クロック信号、デューティサイクル値および電流の測定値に加えて、他のデータを送信し得る。
【0043】
この方法の一適用例では、第1のシステムおよび第2のシステムの一方が、デューティサイクル値のジェネレータと相互作用し、第1のシステムおよび第2のシステムの他方が、インバータおよび電動モータを備える電気回路と相互作用する。
【0044】
例えば、第1のシステムがマスタであって、例えば電気回路と相互作用し、例えば、第2のシステムがスレーブであって、デューティサイクル値のジェネレータと相互作用する。
【0045】
一変形形態では、スレーブであるシステムが電気回路と相互作用し、マスタであるシステムがデューティサイクル値のジェネレータと相互作用する。
【0046】
本発明の別の主題は、別の態様によれば、少なくとも1つの第1のシステムと少なくとも1つの第2のシステムとの間での全二重同期シリアルリンクであり、このリンクは、
前記システム間に敷設され、第1のシステムから第2のシステムへの単数または複数のメッセージの伝送を可能にする、第1のワイヤと、
前記システム間に敷設され、第2のシステムから第1のシステムへの単数または複数のメッセージの伝送を可能にする、第2のワイヤと、
前記システム間に敷設され、第1のシステムによって生成されるクロック信号の第2のシステムへの伝送を可能にする、第3のワイヤと
を備え、
このリンクはさらに、第3のワイヤの1つの領域と第1のシステムを連結する第4のワイヤを備える。
【0047】
第4のワイヤは特に、第1のシステムから送信され、リンクによって遅延されて第2のシステムに受信されるクロック信号が、第1のシステムに返送されることを可能にし、このことにより、上記の利点を獲得できるようになる。
【0048】
通信方法に関する上記の特徴のすべてまたは一部、特に、第3のワイヤの、第4のワイヤの起点となる領域の位置に関する特徴は、上記のリンクの定義と組み合わせ得る。
【0049】
本発明の別の主題は、別の態様によれば、1つの第1のシステムと1つの第2のシステムとの間でガルバニック絶縁された通信システムであり、このシステムは、
上記に定義されたリンクと、
リンクによって経由されるガルバニック絶縁であって、リンクが第1のシステムから第2のシステムに向かってたどられる場合、第3のワイヤの前記領域が絶縁の下流に配置されるガルバニック絶縁と
を備える。
【0050】
第1のシステムによって第2のシステムに送信されるメッセージと同じ遅延が、絶縁を経由することによって、生じることになるクロック信号が、第1のシステムに返送されることが第4のワイヤによって可能になり、したがって、このクロック信号には第2のシステムによって第1のシステムに送信されるメッセージが伴う。このメッセージおよびこのクロック信号は、第1のシステムから第2のシステムに送信されるデータにリンクがもたらす遅延と等しいかそれ以外の、同一の遅延分だけ遅延されて、第1のシステムによって同位相で受信されるのが有利である。
【0051】
本発明の別の主題は、別の態様によれば、
上記に定義された通信システムと、
特に、プログラマブル論理回路(FPGA)を備える、第1のマスタシステムと、
第2のスレーブシステムと
を備え、
リンクに、第1のワイヤ、第2のワイヤ、第3のワイヤおよび第4のワイヤ以外のいかなるワイヤもない、
アセンブリである。
【0052】
本発明の別の主題は、別の態様によれば、
上記に定義された通信システムと、
特に、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備える、第1のスレーブシステムと、
第2のマスタシステムと
を備え、
第1のシステムと第2のシステムを連結してガルバニック絶縁を経由する第5のワイヤをリンクが備える、
アセンブリである。
【0053】
ガルバニック絶縁は、5つのチャネルを備えるアイソレータを使用して作成し得、この場合、同一のアイソレータが5本のワイヤによって経由される。
【0054】
一変形形態では、ガルバニック絶縁は平行に配置された2つの部分を備え、第1の部分は、第1、第2、第3および第4のワイヤに経由され、第2の部分は、第5のワイヤに経由される。
【0055】
一変形形態では、この場合も、第1および第3のワイヤが絶縁の第1の部分を経由し、この部分は第1の遅延を生じさせる。第2および第4のワイヤは絶縁の第2の部分を経由し、第1の遅延とは異なる第2の遅延を生じさせる。第5のワイヤは、絶縁のこれら2つの部分のどちらか片方、または第1および第2の部分とは別の、絶縁の第3の部分を経由し得る。
【0056】
本発明は、下記の非限定的な本発明の例示的実施形態の説明を読むこと、および添付図面について考察することにより、よりよく理解されるであろう。添付図面の内容は次のとおりである。