特許第6228929号(P6228929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228929
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/06 20060101AFI20171030BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20171030BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20171030BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20171030BHJP
   F16D 3/06 20060101ALI20171030BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20171030BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171030BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20171030BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   B62D5/06 Z
   B62D5/04
   B62D6/00
   F16D7/02 A
   F16D3/06 Z
   F16D3/06 S
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-554233(P2014-554233)
(86)(22)【出願日】2013年11月18日
(86)【国際出願番号】JP2013080990
(87)【国際公開番号】WO2014103556
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-286561(P2012-286561)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】與田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−033805(JP,U)
【文献】 特開2010−132054(JP,A)
【文献】 特開平10−264837(JP,A)
【文献】 特開平10−258756(JP,A)
【文献】 特開2006−290043(JP,A)
【文献】 特開2007−253654(JP,A)
【文献】 特開2005−145436(JP,A)
【文献】 特開2008−038990(JP,A)
【文献】 特開2006−312421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/06
B62D 5/04
B62D 6/00
F16D 3/06
F16D 7/02
B62D 101/00
B62D 113/00
B62D 119/00
B62D 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵操作に伴い回転する入力軸と、
トーションバーを介して前記入力軸と接続される出力軸と、
ピストンにより隔成された1対の圧力室を有し、該圧力室に作用する液圧に基づいて操舵アシスト力を発生させるパワーシリンダと、
前記入力軸と前記出力軸との相対回転に応じて外部の油圧源より供給される作動液を前記1対の圧力室に選択的に供給するロータリバルブと、
前記入力軸の少なくとも軸方向の一部分を包囲するように設けられ、ロータの内周側に一体回転可能に設けられる円筒状の接続部材を介して前記入力軸に接続され、車両の運転状況に基づいて前記入力軸の回転を制御する中空モータと、
前記入力軸の外周と前記接続部材の内周とに設けられ、前記入力軸が前記接続部材の内周側に挿入された状態で相互に係合し、前記入力軸と前記接続部材との間で、軸方向の相対移動を許容し、かつ、回転方向の相対移動を規制するように構成された入力軸側係合部及びロータ側係合部と、
を備えたことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、該モータハウジングに設けられ、かつ前記接続部材の外周側に配置され、該接続部材の軸支に供する第1軸受及び第2軸受と、から構成されることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項3】
前記ロータに、前記入力軸の回転軸方向の中間部に前記ステータと対向するように配置された大径部と、該大径部の軸方向一方側及び他方側に前記大径部よりも小径となるように縮径形成された第1小径部及び第2小径部と、を設け、
前記ステータを、前記ロータの大径部よりも軸方向一方側及び他方側に延設すると共に、
前記第1軸受を前記第1小径部と前記ステータの間に、前記第2軸受を前記第2小径部と前記ステータの間に、それぞれ配置したことを特徴とする請求項2に記載のパワーステアリング装置。
【請求項4】
前記中空モータを、前記ロータの回転位置の検出に供するレゾルバを備えたブラシレスモータとして構成すると共に、
前記レゾルバを、前記第1軸受よりも軸方向外側に配設したことを特徴とする請求項3に記載のパワーステアリング装置。
【請求項5】
前記モータハウジングの内周側に、前記第1軸受を保持する第1軸受保持部を設け、
前記レゾルバを、前記ロータの外周側に配置されるレゾルバロータと、該レゾルバロータの外周側に配置されるレゾルバステータと、によって構成すると共に、
前記レゾルバロータの外径を、前記第1軸受保持部の内径よりも小さく設定したことを特徴とする請求項4に記載のパワーステアリング装置。
【請求項6】
前記ロータの前記レゾルバロータが設けられる領域は、前記第1軸受が設けられる領域よりも小さい外径に設定されることを特徴とする請求項5に記載のパワーステアリング装置。
【請求項7】
少なくとも前記第1軸受又は第2軸受の一方は、前記ロータの軸方向の移動を規制する機能を有するボールベアリングにより構成されることを特徴とする請求項2に記載のパワーステアリング装置。
【請求項8】
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、から構成され、
前記モータハウジングは、前記ステータの径方向外側に設けられた筒状部と、該筒状部の前記ロータリバルブ側の端部を閉塞するように設けられた軸方向端閉塞部と、から構成されることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項9】
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、前記ロータに対して前記ロータリバルブの軸方向反対側に配置され、前記ロータの回転位置検出に供するレゾルバと、から構成されるブラシレスモータであって、
前記モータハウジングの前記ロータリバルブと対向する軸方向端側に、前記入力軸を包囲するように構成される凹状嵌合部を設ける一方、
前記ロータリバルブを収容するバルブハウジングの前記モータハウジングと対向する面に、前記凹状嵌合部と嵌合可能な凸状嵌合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項10】
前記入力軸側係合部及びロータ側係合部は、前記ロータの軸方向範囲のうち前記ロータリバルブ側部分のみに形成されることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項11】
前記入力軸側係合部とロータ側係合部とは、互いにセレーションによって係合されることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項12】
前記入力軸側係合部と前記ロータ側係合部の間に樹脂材料が充填されたことを特徴とする請求項11に記載のパワーステアリング装置。
【請求項13】
前記入力軸側係合部及びロータ側係合部は、前記ロータの軸方向範囲のうち所定範囲にのみ形成され、
残余の部分は、全周において平坦面同士が当接可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項14】
前記入力軸側係合部と前記ロータ側係合部の間にトルクリミッタが設けられたことを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項15】
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側にコイルが巻回された複数のステータと、から構成され、
前記複数のステータは、それぞれ互いに異なる通電回路に係る複数のコイルが巻回されることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項16】
前記出力軸と前記ピストンとの間に設けられ、前記出力軸の回転を前記ピストンの軸方向運動に変換するボールねじ機構と、前記ピストンに一体に設けられたラック歯と、該ラック歯と噛合し、その軸方向運動に伴って回転運動すると共に、該回転運動をピットマンアームを介して転舵輪に伝達するセクタギヤと、をさらに備え、
前記ロータリバルブを前記中空モータと前記パワーシリンダの間に配置したことを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
【請求項17】
ステアリングホイールの操舵操作に伴い回転する入力軸と、
トーションバーを介して前記入力軸と接続される出力軸と、
ピストンにより隔成された1対の圧力室を有し、該圧力室に作用する液圧に基づいて操舵アシスト力を発生させるパワーシリンダと、
前記入力軸と前記出力軸との相対回転に応じて外部の油圧源より供給される作動液を前記1対の圧力室に選択的に供給するロータリバルブと、
前記入力軸の少なくとも軸方向の一部分を包囲するように設けられ、ロータの内周側に一体回転可能に設けられる円筒状の接続部材を介して前記入力軸に接続され、車両の運転状況に基づいて前記入力軸の回転を制御する中空モータと、
前記入力軸の外周と前記接続部材の内周とに設けられ、前記入力軸が前記接続部材の内周側に挿入された状態で相互に係合し、前記入力軸と前記接続部材との間で、軸方向の相対移動を許容し、かつ、回転方向の相対移動を規制するように構成された入力軸側係合部及びロータ側係合部と、
車両走行方向の前方の車両もしくは道路上の白線を認識するカメラの情報、カーナビゲーションシステムの情報、又は、車両に発生するヨーモーメントを検出するヨーレイトセンサの情報に基づき前記中空モータを駆動制御するコントローラと、
を備えたことを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項18】
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、該モータハウジングに設けられ、前記ロータの軸支に供する第1軸受及び第2軸受と、から構成されることを特徴とする請求項17に記載のパワーステアリング装置。
【請求項19】
前記ロータに、前記入力軸の回転軸方向の中間部に前記ステータと対向するように配置された大径部と、該大径部の軸方向一方側及び他方側に前記大径部よりも小径となるように縮径形成された第1小径部及び第2小径部と、を設け、
前記ステータを、前記ロータの大径部よりも軸方向一方側及び他方側に延設すると共に、
前記第1軸受を前記第1小径部と前記ステータの間に、前記第2軸受を前記第2小径部と前記ステータの間に、それぞれ配置したことを特徴とする請求項18に記載のパワーステアリング装置。
【請求項20】
前記中空モータを、前記ロータの回転位置の検出に供するレゾルバを備えたブラシレスモータとして構成すると共に、
前記レゾルバを、前記第1軸受よりも軸方向外側に配設したことを特徴とする請求項19に記載のパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操舵力を液圧によってアシストするパワーステアリング装置のうち、液圧制御に供するロータリバルブをモータにより制御可能とした自動操舵可能なパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動操舵可能なパワーステアリング装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このパワーステアリング装置は、ラック・ピニオン型の油圧パワーステアリング装置であって、ステアリングホイールに接続する入力軸の下端側外周部に、当該入力軸とこれにトーションバーを介し相対回転可能に連結される出力軸との間にロータリバルブが設けられると共に、前記入力軸の上端側外周部に、中空モータが取り付けられている。
【0004】
そして、かかる構成より、通常運転時は、運転者による操舵トルクに基づきロータリバルブが開弁することによって操舵アシストトルクが発生する一方、自動運転時は、ECUにより駆動制御される中空モータの駆動トルクをもってロータリバルブが開弁することで、これにより発生する操舵アシストトルクに基づいた自動操舵が行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−96767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のパワーステアリング装置では、前記中空モータと装置本体とが一体に構成されていることから、装置の組付作業性が悪く、生産性の低下や製造コストの高騰といった問題を招来していた。
【0007】
本発明は、前記従来のパワーステアリング装置の実情に鑑みて案出されたものであり、組付作業性を向上し得るパワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ステアリングホイールの操舵操作に伴い回転する入力軸と、トーションバーを介して前記入力軸と接続される出力軸と、ピストンにより隔成された1対の圧力室を有し、該圧力室に作用する液圧に基づいて操舵アシスト力を発生させるパワーシリンダと、前記入力軸と前記出力軸との相対回転に応じて外部の油圧源より供給される作動液を前記1対の圧力室に選択的に供給するロータリバルブと、前記入力軸の少なくとも軸方向の一部分を包囲するように設けられ、車両の運転状況に基づいて前記入力軸の回転を制御する中空モータと、前記入力軸の外周と前記中空モータの内周とに設けられ、前記入力軸と前記中空モータのロータとの間で、軸方向の相対移動を許容し、かつ、回転方向の相対移動を規制するように構成された入力軸側係合部及びロータ側係合部と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転方向の相対移動を規制しつつ軸方向の相対移動を可能にする連結構造をもって入力軸と中空モータのロータとを連結する構成としたことから、モータアッセンブリ状態での装置本体への組み付けが可能となり、装置の組付作業性の向上に供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るパワーステアリング装置の縦断面図である。
図2図1に示す中空モータ周辺の拡大断面図である。
図3】(a)は図1に示す入力軸とロータの係合部近傍の拡大断面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図4図1に示すパワーステアリング装置のシステム構成図である。
図5図2に示す中空モータのシステム構成図である。
図6図2に示す中空モータの組立の説明に供する分解断面図である。
図7図1に示すパワーステアリング装置の組立の説明に供する分解断面図である。
図8】本発明に係るパワーステアリング装置の第2実施形態を示す図であって、図2に相当する中空モータの縦断面図である。
図9】同実施形態に係る要図であり、(a)は図8に示す入力軸とロータの係合部近傍の拡大断面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図10】本発明に係るパワーステアリング装置の第3実施形態を示す図であって、図2に相当する中空モータの縦断面図である。
図11】同実施形態に係る要図であり、(a)は図10に示す入力軸とロータの係合部近傍の拡大断面図であり、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るパワーステアリング装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、下記の各実施形態では、このパワーステアリング装置を大型車両等に用いられるインテグラル型のパワーステアリング装置として適用した例を示している。
【0012】
図1図7は本発明に係るパワーステアリング装置の第1の実施形態を示し、このパワーステアリング装置は、図1に示すように、一端側が図示外のステアリングホイールに連係され、他端側がハウジング13内に収容配置される入力軸11と、全体がハウジング13内に収容配置され、一端側が前記入力軸11の他端側にトーションバー10を介して接続される出力軸12と、図示外の転舵輪に連係され、前記出力軸12の他端側外周に設けられたピストン16の軸方向移動に伴って転舵を行うセクタシャフト17と、前記ハウジング13内においてほぼ筒状のピストン16により隔成される1対の圧力室P1,P2を有し、操舵トルクを補助するアシストトルクの生成に供するパワーシリンダ18と、前記両軸11,12間に設けられ、これら両軸11,12の相対回転に応じて図示外の液圧源(ポンプ)より供給される作動液を前記1対の圧力室P1,P2へと選択的に供給するロータリバルブ19とを有し、操舵機構を構成するパワーステアリング装置本体(以下、単に「装置本体」と略称する。)DBと、後述する円筒状のロータ31が入力軸11の一端側外周に嵌着されるかたちで設けられ、当該入力軸11に対してトルクを付与することで後述の自動運転等に供する中空モータ30と、車両運転状況に応じて前記中空モータ30を駆動制御する後述の複数の制御回路40a,40b(図5参照)を有するモータ用ECU40と、から主として構成されている。
【0013】
前記ハウジング13は、一端側が開口し他端側が閉塞されてなる筒状を呈し、前記圧力室P1,P2の構成に供する第1ハウジング14と、この第1ハウジング14の一端開口部を閉塞するように取り付けられ、内部にロータリバルブ19を収容するバルブハウジングたる第2ハウジング15と、から構成され、前記両ハウジング14,15同士は、所定の周方向位置に配置される図示外の複数のボルトをもって締結されている。
【0014】
前記第1ハウジング14の内部には、前記両軸11,12の回転軸Z方向に沿って形成されたシリンダ構成部14aと、このシリンダ構成部14aとほぼ直交するように、かつ、その一部が当該シリンダ構成部14aへと臨むように形成されたシャフト収容部14bと、が設けられていて、前記シリンダ構成部14a内には、出力軸12他端側及びその外周にボールねじ機構20を介して相対移動可能に嵌着されるピストン16が収容され、該ピストン16をもって一端側の第1圧力室P1と他端側の第2圧力室P2とに隔成される一方、前記シャフト収容部11b内には、一端側がピストン16に連係し、かつ、他端側が図示外のピットマンアームを介して前記図示外の転舵輪に連係されるセクタシャフト17が収容されている。
【0015】
ここで、前記ピストン16の外周部及びセクタシャフト17の外周部には、それぞれ相互に噛合可能な歯部16a,17aが設けられていて、これらが噛合することによってピストン16の軸方向移動に伴ってセクタシャフト17が回動し、これによって前記図示外のピットマンアームが車体幅方向に引っぱられることで、前記図示外の転舵輪の向きが変更される構成となっている。また、この際、前記シャフト収容部14bには、第1圧力室P1の作動液が導かれる構成となっていて、これによって前記両歯部16a,17a間の潤滑に供されている。
【0016】
前記第2ハウジング15の内周側には、一端側から他端側へと回転軸Z方向に沿って段差縮径状に設けられた軸挿通孔15aが貫通形成されている。そして、この軸挿通孔15aには、入力軸11の他端側が挿通配置されると共に、当該入力軸11の他端側外周にトーションバー10が収装された出力軸12の一端側が重合配置されることで、該両軸11,12の重合部により構成されるロータリバルブ19が収容配置されている。
【0017】
また、前記軸挿通孔15aにおける他端側の縮径部には、図示外の導入通路を通じて前記図示外の液圧源と接続され、出力軸12の一端側(前記重合部)に設けられた第1給排通路L1を介して外部からの作動液の導入に供する導入ポート21と、径方向外側に延設される第2給排通路L2を介して第2圧力室P2への作動液の給排に供する給排ポート22と、図示外の排出通路を通じて前記図示外のリザーバタンクと接続され、前記各圧力室P1,P2内の作動液の排出に供する排出ポート23と、がそれぞれ所定の軸方向位置に設けられている。
【0018】
前記ロータリバルブ19は、ステアリング中立時には開弁状態が維持されて導入ポート21と排出ポート23とが連通し、操舵時に発生する入力軸11と出力軸12の相対回転に応じて、一方向側に開弁し、他方向側に閉弁するような構成となっている。
【0019】
以上のような構成から、前記パワーステアリング装置は、前記図示外のステアリングホイールが操舵されると、前記図示外の液圧源より圧送された作動液がロータリバルブ19を介して操舵方向に応じた一方側の圧力室P1,P2に供給されると共に、他方側の圧力室P1,P2から前記供給量に対応する作動液(余剰分)が前記図示外のリザーバタンクへと排出され、当該液圧によってピストン16が駆動される結果、当該ピストン16に作用する液圧に基づいたアシストトルクがセクタシャフト17へと付加されることとなる。
【0020】
前記中空モータ30は、いわゆる3相交流式のブラシレスモータであって、図1図2に示すように、前記ハウジング13外に臨む入力軸11の外周部に後述するキー結合をもって一体回転可能に外嵌されるロータ31と、該ロータ31の外周側に所定の微小径方向隙間を隔てて配置されるステータ32とから構成されるモータ要素と、該モータ要素を収容し、一端側がハウジング13に取付固定される筒状のモータハウジング33と、該モータハウジング33内に収容され、ロータ31の一端側及び他端側をそれぞれ回転自在に支持する第1軸受B1及び第2軸受B2と、前記モータハウジング33の他端部に開口形成された筒状のレゾルバ収容部34b内に収容配置され、入力軸11の回転位置の検出に供するレゾルバ36と、前記レゾルバ収容部34bの端部開口(外端部開口)を閉塞し、外部からの水分や粉塵の侵入を抑制するカバー部材37と、を備えている。
【0021】
前記モータハウジング33は、アルミニウム合金など所定の金属材料により2分割に構成されてなるもので、一端側が前記モータ要素の収容に、他端側がレゾルバ36の収容に供するハウジング本体に相当する第1モータハウジング34と、かかる第1モータハウジング34の一端側開口部を閉塞すると共に、当該モータハウジング33の前記ハウジング13との接続に供する接続部材に相当する第2モータハウジング35と、から構成されている。
【0022】
前記第1モータハウジング34は、一端側に前記モータ要素の収容に供するモータ要素収容部34aが設けられると共に、他端側にレゾルバ36の収容に供する前記レゾルバ収容部34bが設けられ、当該両収容部34a,34bが中央部に軸挿通孔38aを有する隔壁38をもって隔成されることにより構成されている。そして、この第1モータハウジング34は、前記軸挿通孔38aに入力軸11及びその外周側に重合するロータ31(後述する接続部材39)の他端部が挿通した状態で、一端部における所定の周方向位置にて径方向に延設された取付部34cを介して複数のボルト24によって第2ハウジング15の一端面に取付固定される。
【0023】
前記モータ要素収容部34aは、隔壁38側へと向かって段差縮径状に形成されていて、中間部に有する段部へと突き当てられるかたちでステータ32が収容配置される構成となっている。この際、ステータ32は、当該モータ要素収容部34aに対し、焼き嵌めなど所定の手段により固定される。また、隔壁38の当該モータ要素収容部34a側の面(一側面)における軸挿通孔38aの孔縁には、前記第1軸受B1の収装に供する円筒状の第1軸受収容部38bが突出形成されている。
【0024】
前記レゾルバ収容部34bは、隔壁38の他側面における軸挿通孔38aの孔縁を拡径してなるレゾルバ受容部38cと共に一体に構成されていて、当該レゾルバ受容部38c内に後述のレゾルバステータ36bの軸方向一部が嵌挿固定されると共に、このレゾルバステータ36bの内周側において後述のレゾルバロータ36aがロータ31(後述する接続部材39)外周部に嵌着されることで、全体がレゾルバ収容部34b内に収容される構成となっている。
【0025】
前記第2モータハウジング35は、多少の凹凸が形成されてなるほぼ板状を呈し、その中央部には、入力軸11及びその外周側に重合するロータ31(後述する接続部材39)の一端部の挿通に供する軸挿通孔35aが貫通形成されている。そして、この第2モータハウジング35は、その外周部における所定の周方向位置に突設された取付部35bを介して前記複数のボルト24により第1モータハウジング34と一緒に第2ハウジング15の一端面に共締め固定されている。
【0026】
さらに、前記第2モータハウジング35の外側面の中央位置に、第2ハウジング15の外側面に突設された凸部15cと嵌合可能な凹部35cが凹設されていて、かかる両部15c,35cの嵌合をもって中空モータ30とロータリバルブ19との相対的な位置決めが行えるようになっている。また、前記凹部35cの内側面における軸挿通孔35aの孔縁には、前記第2軸受B2の収装に供する円筒状の第2軸受収容部35dが突出形成されている。
【0027】
前記ロータ31は、ハウジング13の外部へと突出した入力軸11の外周部に嵌着固定され、該入力軸11と一体回転可能に接続される円筒状の接続部材39と、該接続部材39の外周に嵌着され、磁性体によって形成されるロータコア31aと、該ロータコア31aの外周に接着される複数のマグネット31bと、から構成されている。なお、当該ロータ31としては、前記複数のマグネット31bをロータコア31aの内部に埋め込んでなるIPMモータのような構成を採ることも可能である。
【0028】
ここで、前記接続部材39は、その軸方向両端側が比較的小径の第1、第2小径部39a,39bとして構成され、第1小径部39aが第1軸受B1に、第2小径部39bが第2軸受B2にそれぞれ回転自在に支持され、前記両小径部39a,39b間に構成される大径部39cの外周面に前記ロータコア31aが圧入固定される構成となっている。
【0029】
また、前記第1小径部39aについては、その先端部がさらに段差状に縮径形成され、後述するレゾルバロータ36aの取付に供する第3小径部39dとして構成されている。このようにして、当該第3小径部39dを前記第1軸受B1の取付に供する第1小径部39aよりもさらに小径化することによって、レゾルバロータ36aを当該接続部材39(第3小径部39d)に嵌着させた状態での外径をより小径に構成可能となる結果、当該レゾルバロータ36aの外周に配置されるレゾルバステータ36bの外径についても小径化でき、これによって、レゾルバ36全体の小型化に供されることとなる。
【0030】
そして、かかる接続部材39は、図2図3に示すように、入力軸11の外周面に軸方向に沿って切欠形成された溝状の凹部11aに金属片たるキー25が圧入固定されてなる入力軸側係合部に、その内周部において一端側開口より前記大径部39cと全域でオーバーラップするように軸方向に沿って切欠形成されたキー溝39eからなるロータ側係合部を係合させてなる、いわゆるキー結合をもって、入力軸11の外周に嵌着固定されている。
【0031】
なお、かかるキー結合は、周知のキー結合のごとくキー溝39eにキー25を圧入することによって入力軸11とロータ31とを固定するようなものではなく、本実施形態では、キー25とキー溝39eとが、キー25(入力軸11)に対してロータ31が着脱自在となるような寸法関係に設定されている。より具体的には、前記両者25,39e間における不要ながたつきを排除しつつ、一度係合させた両者25,39eを再び係合し直すことが容易な寸法関係に設定されている。
【0032】
前記ステータ32は、図2に示すように、複数のステータコア32aを積層し円形に構成してなるものがモータ要素収容部34aに圧入又は焼き嵌め固定されると共に、これら各ステータコア32aの内周部に突設されるティース(図示外)に3相(u相、v相、w相)のステータコイルSC(SC1,SC2)が巻回されることによって構成されている。
【0033】
この際、前記ステータコイルSCは、異なる制御回路40a,40bに接続された別系統の第1、第2ステータコイルSC1,SC2によって構成されると共に、これら両ステータコイルSC1,SC2が共に同一のティースに巻回される構成となっている。これにより、1つのモータ30で多重系の制御回路40a,40bを構成でき、その結果、一方の制御回路40a,40bが失陥してしまった場合であっても、他方の制御回路40a,40bによってモータ30の駆動制御が可能となっている(図5参照)。
【0034】
前記レゾルバ36は、ロータ31の極対数に応じた複数の回転突極を備え、その外径R0が第1、第2モータハウジング34,35の両軸挿通孔38a,35aの内径R1,R2よりも小さくなるように接続部材39の他端側外周に嵌着固定されるレゾルバロータ36aと(図6参照)、レゾルバ収容部34b内に保持されることで前記レゾルバロータ36aの外周側に微小の径方向隙間を隔てて非接触状態に配置され、それぞれ異なる制御回路40a,40bに接続されるセンサコイル36c,36dが巻回されたレゾルバステータ36bと、から主として構成されている。
【0035】
前記第1、第2軸受B1,B2は、いずれもボールベアリングによって構成されると共に、そのうちの少なくとも一方は、ロータ31の軸方向移動を規制可能に構成されている。これによって、中空モータ30の安定した駆動が確保されている。
【0036】
前記カバー部材37は、ほぼ板状を呈し、その中央部には、入力軸11の他端部の挿通に供する軸挿通孔37aが貫通形成されている。また、このカバー部材37の内側面における前記軸挿通孔37aの孔縁には、段差拡径状に形成されたシール収容部37bが凹設され、このシール収容部37bには、入力軸11とカバー部材37との間を液密にシールするシール部材26が嵌着されていて、前記軸挿通孔37aを通じての外部からの水分や粉塵の侵入が抑制されている。
【0037】
前記モータ用ECU40は、図4に示すように、運転者による操舵トルクTmとは別に、例えば車両走行方向における前方の車両もしくは道路上の白線を認識するカメラやカーナビゲーションシステム等の各種支援情報把握手段50により与えられる走行支援情報Ibと、例えば車速センサや舵角センサ、ヨーレイトセンサなど各種センサの検出値に基づく車載のメインECU51からの車両運転情報Idと、に基づいて演算された自動運転用ECU52からのトルク指令信号Stや前記レゾルバ36からの回転角度信号Sθを基に中空モータ30に制御電流Ceを付与することによって当該モータ30を駆動制御する。
【0038】
具体的には、前記モータ用ECU40は、図5に示すように、複数(本実施形態では2つ)の制御回路である第1制御回路40aと第2制御回路40bとによって構成され、当該各制御回路40a,40bに与えられる前記自動運転用ECU52(図4参照)からのトルク指令信号St及びレゾルバ36からの回転角度信号Sθに基づき演算された制御電流CeがそれぞれステータコイルSC1,SC2に通電されることとなる。
【0039】
以上のような構成から、前記パワーステアリング装置では、前述したような運転者の操舵トルクTmに基づいた手動操舵のほか、例えば居眠り運転時等により車両が走行レーンを逸脱しそうになった場合には、図1図4に示すように、前記各種支援情報把握手段からの走行支援情報Ib及び各種センサからの車両運転情報Idを基に中空モータ30が駆動制御され、これにより発生した操舵トルクToでもって入力軸11を回転させることにより前記走行レーン内の走行を維持する、といった自動操舵を行うことが可能となっている。
【0040】
なお、前記中空モータ30への通電による駆動制御は、操舵時のみならず、直進時にも行われる。すなわち、左右の操舵のために操舵トルクを発生させる場合のみならず、入力軸11の回転を抑制するための保舵トルクを発生させる場合にも、当該中空モータ30が駆動制御されうる。
【0041】
以下、本実施形態に係るパワーステアリング装置の組立手順について、図6図7に基づいて説明する。
【0042】
まず、前記パワーステアリング装置のうち装置本体DBの組立として、入力軸11と出力軸12をトーションバー10により連結してなるシャフトアッセンブリの一端側にピストン16を連結すると共に、他端側を軸受27を介して第2ハウジング15に挿通固定した後、ピストン16と一緒に入力軸11の一端側を第1ハウジング14内へと収容すると共に、第2ハウジング15を第1ハウジング14に嵌挿して固定する。このとき、併せて、前記両歯部16a,17aを噛み合わせるように、セクタシャフト17についても第1ハウジング14に収容組付する。
【0043】
また、前記装置本体DBの組立とは別工程で、中空モータ30の組立を行う。すなわち、まず、図6に示すように、第1モータハウジング34の内周面に、ステータコイルSCが巻回されたステータコア32aを嵌着固定する。同時に、ロータ31側についても、接続部材39の大径部39cの外周面にロータコア31aを嵌着した後、接続部材39の第1小径部39aの外周面に第1軸受B1を、第3小径部39dの外周面にレゾルバロータ36aをそれぞれ嵌着すると共に、当該接続部材39の第2小径部39bの外周面に、第2軸受B2を嵌着固定する。その後、このロータ31を、前記第1モータハウジング34に組み付けられたステータ32の内周側に第1小径部39a側から挿通して、第1軸受B1を介して第1モータハウジング34に組付固定する。
【0044】
このように、本実施形態では、第1、第2モータハウジング34,35の各軸挿通孔38a,35aの内径R1,R2に対しレゾルバロータ36aの外径R0が大きく設定されているため、レゾルバロータ36aをロータ31(接続部材39)へ組み付けた状態でモータハウジング33内へと収容配置することが可能となって、当該レゾルバロータ36aを後からロータ31に組み付けるかたちでモータハウジング33内へと収容配置する場合に比べて、装置の組立作業性の向上を図ることができる。
【0045】
続いて、前述のようにして前記モータ要素が収容配置された第1モータハウジング34の一端側開口を第2モータハウジング35によって閉塞する。その後、当該第1モータハウジング34の他端側から、レゾルバステータ36bをレゾルバ受容部38cに嵌挿して組み付けた後、当該他端側開口をカバー部材37によって閉塞し、前記中空モータ30の組立が完了する。当該組立完了後、この組み立てた中空モータ30を回転駆動することにより、作動試験等を行う。
【0046】
最後に、前記キー25を入力軸11へと組み付けた後、前記試験が完了したモータアッセンブリたる中空モータ30を、図7に示すように、そのロータ31を入力軸11の他端側外周に嵌着するようにしてハウジング13(第2ハウジング15)に組み付けることで、前記パワーステアリング装置の組立が完了する。具体的には、入力軸11外周のキー25をロータ31(接続部材39)内周のキー溝39e内に嵌挿させながら入力軸11他端側を接続部材39内周へと嵌挿させることによって中空モータ30を入力軸11外周に嵌着させると共に、第2ハウジング15の凸部15cを第2モータハウジング35の凹部35c内へと嵌挿させた後、当該中空モータ30を、前記両取付部34c,35bを介して複数のボルト24によって第2ハウジング15に締結する。
【0047】
この際、本実施形態では、前記キー25の係合に供するキー溝39eは接続部材39の一端側開口からロータ31に対しての動力伝達に必要な軸方向位置までのみに形成され、残余の部分は接続部材39に対し最小限の径方向隙間を介して嵌合するような構成となっていることから、前記入力軸11と接続部材39の両係合部間にがたつきが生じたとしても、前記残余の部分によって当該がたつきを抑制することが可能となっている。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るパワーステアリング装置によれば、入力軸11に設けたキー25と、ロータ31(接続部材39)内周面に設けたキー溝39eとからなる、回転方向の相対移動を規制しつつ軸方向の相対移動を可能にする係合構造をもって入力軸11とロータ31を連結させる構成としたことで、中空モータ30をアッセンブリ状態でもって装置本体DBへと組み付けることが可能となり、装置の組付作業性の向上を図ることができる。
【0049】
また、かかる中空モータ30のアッセンブリ供給化にあたって、当該モータ30では、ロータ(接続部材39)の両端部がモータハウジング33内で第1、第2軸受B1,B2によって回転自在に支持される構成となっていることから、当該モータ30単独で前記作動試験等を行うことができ、装置の組立作業性についての自由度の向上が図れる。すなわち、中空モータ30単独でもって前記作動試験等が可能となっていることにより、当該モータ30を装置本体DBとは別工程で組み立てたり、外部から購入して利用したりすることが可能となり、装置の製造コストの低減化にも寄与できる。
【0050】
なお、上記第1、第2軸受B1,B2によるロータ31の両端部軸受構造の採用に際し、本実施形態では、当該両軸受B1,B2が、ステータコイルSCがロータ31の両端よりも軸方向外側に延出することによってその内周側に形成されるデッドスペース状の空間部S1,S2に配置されることになるため、中空モータ30内のスペースを有効活用でき、当該モータ30の大型化、ひいては装置の大型化の抑制に供される。
【0051】
しかも、本実施形態では、前記中空モータ30につき、レゾルバ36が第1軸受B1よりも軸方向外側に配置されるようになっていることから、当該第1軸受B1を前記デッドスペース状の空間部S1に配置することが可能となり、その結果、部品レイアウトを最適化でき、装置の小型化を図ることができる。
【0052】
加えて、本実施形態では、前記中空モータ30につき、レゾルバ36をロータリバルブ19の反対側に配置するようになっていることから、当該レゾルバ36と第2モータハウジング35(凹部35c)との干渉を回避できる結果、良好な部品レイアウト構成に供される。
【0053】
さらに、前記中空モータ30のアッセンブリ供給化にあたって、当該モータ30につき、そのロータリバルブ19側(装置本体DBへと組み付ける側)についても第2モータハウジング35により閉塞する構成となっていることから、当該モータ30単独でもって所定の防塵性も確保されることとなる。
【0054】
図8図9は本発明に係るパワーステアリング装置の第2実施形態を示し、前記第1実施形態における入力軸11とロータ31(接続部材39)との係合構造を変更したものである。なお、以下では、前記第1実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、前記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すことで具体的な説明は省略する。
【0055】
すなわち、本実施形態では、入力軸11の他端側外周の所定範囲(接続部材39の大径部39cと重合する範囲)に雄セレーション部41が設けられると共に、ロータ31の接続部材39内周の前記雄セレーション部41と対向する位置に雌セレーション部42が設けられていて、当該入力軸11とロータ31とが前記両セレーション部41,42を介して係合する構成となっている。
【0056】
この際、前記接続部材39内周の第2小径部39bと重合する範囲(前記雌セレーション部42よりも一端側の範囲)は、前記雄セレーション部41と干渉しない所定の内径からなる平坦部43として構成されている。このように、前記雌セレーション部42をトルク伝達に必要な所定の軸方向範囲のみに形成することで、接続部材39内周における雄セレーション部41の嵌挿範囲全域に雌セレーション部42を形成する場合に比べて、係合範囲を最小限に止めることが可能となる結果、当該係合に係る組付作業(係合作業)の容易化が図れ、装置の生産性の向上に供されることとなる。
【0057】
さらに、本実施形態における上記セレーション結合は、圧入のような強固な係合ではなく、前記両部材11,39の相対移動が比較的容易に行えるような構成となっていて、装置本体DBへの組み付け時において係合作業のやり直しが可能となっている。この結果、中空モータ30を装置本体DBに組み付けた後に不具合が生じても、両者を分解して再組み付けすることができ、歩留まりの向上に供されている。
【0058】
そして、かかる所定隙間を介した係合構造を採用するにあたり、本実施形態では、前記両セレーション部41,42間に所定の樹脂材料が充填される構成となっている。これによって、上記歩留まりの向上を確保しつつも、その組み付け後における前記両セレーション部41,42間のがたつきを抑制し、良好なトルク伝達が可能となっている。
【0059】
以上のような構成から、本実施形態においても、前記セレーションをもって、入力軸11とロータ31とが、その回転方向の相対移動を規制しつつ軸方向の相対移動が可能となるように係合され、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられる。
【0060】
特に、本実施形態に係る前記セレーション結合は、前記第1実施形態に係るキー結合に比べて回転方向の接触面積が増大し、より一層良好なトルク伝達に供されることとなる。
【0061】
図10図11は本発明に係るパワーステアリング装置の第3実施形態を示し、前記第1実施形態における入力軸11とロータ31(接続部材39)との係合構造を変更したものである。なお、以下では、前記第1実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、前記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すことで具体的な説明は省略する。
【0062】
すなわち、本実施形態では、入力軸11の他端側外周の所定範囲(接続部材39の大径部39cと重合する範囲)に、円環状の基部44と当該基部44の外周面に設けられた複数の突条部45とからなる周知のトレランスリングTRが嵌着され、当該トレランスリングTRにより構成されるトルクリミッタを介して入力軸11とロータ31(接続部材39)とが係合する構成となっている。
【0063】
具体的には、前記基部44の内周面が入力軸11の外周面に嵌着すると共に、前記各突条部45の先端面45aが接続部材39の内周面39fに所定の面圧でもって圧接することにより、これら両面39f,44a間に生ずる摩擦力をもって入力軸11とロータ31とが一体回転可能となっている。
【0064】
以上のような構成から、本実施形態においても、前記トレランスリングTRによって構成されるトルクリミッタをもって、入力軸11とロータ31とが、その回転方向の相対移動を規制しつつ軸方向の相対移動が可能となるように係合され、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられる。
【0065】
特に、本実施形態に係る前記トルクリミッタによる結合構造によれば、中空モータ30から入力軸11へと過大なトルクが入力された場合には、前記両者11(TR),39間に滑りが生ずることによって前記過大トルクを逃がすことができ、当該両者11(TR),39間の係合部に破損が生じてしまうおそれがない。
【0066】
また、前記トレランスリングTRを採用することで、接続部材39の内周面が比較的ラフな精度の平坦面で構成できるため加工コストの低減が図れるうえ、入力軸11と接続部材39の熱膨張率の違いにより生ずる寸法変化の補償にも供される。
【0067】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、該各実施形態に係るインテグラル型のパワーステアリング装置以外にも、例えば普通乗用車等に用いられるラック・ピニオン型のパワーステアリング装置等、前記パワーシリンダ18やロータリバルブ19(コントロールバルブ)等といった本発明の発明特定事項を具備するものであれば、他の形式のパワーステアリング装置にも適用可能である。
【0068】
さらには、上記構成を採用することにより、各種の液圧パワーステアリング装置において、例えば前記外部の液圧源であるポンプや当該ポンプと装置本体DBとを接続する配管等の失陥によって装置本体DBに作動液が供給されなくなってしまった場合でも、前記中空モータ30を駆動させることで操舵力補助が行えるようになるといったメリットも得られ、車両の安全性のさらなる向上に供されることとなる。
【0069】
以下に、前記各実施形態から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について説明する。
【0070】
(a)請求項5に記載のパワーステアリング装置において、
前記ロータの前記レゾルバロータが設けられる領域は、前記第1軸受が設けられる領域よりも小さい外径に設定されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0071】
このように、ロータの外径を小さく設定することで、その外周側のレゾルバロータについて小径化されると共に、さらにその外周側のレゾルバステータについても小径化され、レゾルバ全体の小型化に供される。
【0072】
(b)請求項2に記載のパワーステアリング装置において、
少なくとも前記第1軸受又は第2軸受の一方は、前記ロータの軸方向の移動を規制する機能を有するボールベアリングにより構成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0073】
かかる構成とすることで、ロータの軸方向位置を規制することができる。
【0074】
(c)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、から構成され、
前記モータハウジングは、前記ステータの径方向外側に設けられた筒状部と、該筒状部の前記ロータリバルブ側の端部を閉塞するように設けられた軸方向端閉塞部と、から構成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0075】
このように、モータハウジングについてロータリバルブ側も閉塞する構成とすることで、モータ単独における所定の防塵性を確保することができる。
【0076】
(d)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、前記ロータに対して前記ロータリバルブの軸方向反対側に配置され、前記ロータの回転位置検出に供するレゾルバと、から構成されるブラシレスモータであって、
前記モータハウジングの前記ロータリバルブと対向する軸方向端側に、前記入力軸を包囲するように構成される凹状嵌合部を設ける一方、
前記ロータリバルブを収容するバルブハウジングの前記モータハウジングと対向する面に、前記凹状嵌合部と嵌合可能な凸状嵌合部を設けたことを特徴とするパワーステアリング装置。
【0077】
このように、凹状嵌合部と凸状嵌合部とを嵌合させることで、中空モータとロータリバルブとの相対的な位置決めが可能となり、装置の組付作業性を向上させることができる。
【0078】
加えて、レゾルバをロータリバルブの軸方向反対側に配置することで、凹状嵌合部とレゾルバとの干渉も回避可能となり、装置の軸方向寸法の小型化にも供される。
【0079】
(e)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記入力軸側係合部及びロータ側係合部は、前記ロータの軸方向範囲のうち前記ロータリバルブ側部分のみに形成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0080】
かかる構成とすることで、ロータの軸方向範囲の全域に上記係合部を設ける場合に比べて、当該係合に係る組付作業の容易化が図れる。
【0081】
(f)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記入力軸側係合部とロータ側係合部とは、互いにセレーションによって係合されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0082】
これにより、中空モータと入力軸の軸方向における相対移動を許容しつつ、当該両者間のトルク伝達が可能となる。
【0083】
(g)前記(f)に記載のパワーステアリング装置において、
前記入力軸側係合部と前記ロータ側係合部の間には樹脂材料が充填されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0084】
これにより、入力軸とロータの間のがたつきが抑制され、良好なトルク伝達に供される。
【0085】
(h)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記入力軸側係合部及びロータ側係合部は、前記ロータの軸方向範囲のうち所定範囲にのみ形成され、
残余の部分は、全周において平坦面同士が当接可能に構成されていることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0086】
かかる構成とすることで、両係合部間にがたつきが生じても、残余の部分によって当該がたつきを抑制することが可能となる。
【0087】
(i)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記入力軸側係合部と前記ロータ側係合部の間にはトルクリミッタが設けられることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0088】
これにより、過大なトルク入力時における両係合部の破損を抑制することができる。
【0089】
(j)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側にコイルが巻回された複数のステータと、から構成され、
前記複数のステータは、それぞれ互いに異なる通電回路に係る複数のコイルが巻回されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0090】
かかる構成とすることで、モータを複数設けることなく多重系の電気回路を構成することが可能となる。
【0091】
(k)請求項7に記載のパワーステアリング装置において、
前記中空モータは、ほぼ円筒状に形成されたロータと、該ロータの外周側に配置されるステータと、前記ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、該モータハウジングに設けられ、前記ロータの軸支に供する第1軸受及び第2軸受と、から構成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
【0092】
かかる構成とすることで、モータ単独でキャリブレーション等の回転検査を行うことが可能となり、より自由度の高い装置の製造に供される。
【0093】
(l)前記(k)に記載のパワーステアリング装置において、
前記ロータに、前記入力軸の回転軸方向の中間部に前記ステータと対向するように配置された大径部と、該大径部の軸方向一方側及び他方側に前記大径部よりも小径となるように縮径形成された第1小径部及び第2小径部と、を設け、
前記ステータを、前記ロータの大径部よりも軸方向一方側及び他方側に延設すると共に、
前記第1軸受を前記第1小径部と前記ステータの間に、前記第2軸受を前記第2小径部と前記ステータの間に、それぞれ配置したことを特徴とするパワーステアリング装置。
【0094】
かかる構成とすることで、両軸受がロータの小径部とステータとの間に形成されるいわゆるデッドスペースに配置されることとなり、装置の大型化の抑制に供される。
【0095】
(m)前記(l)に記載のパワーステアリング装置において、
前記中空モータを、前記ロータの回転位置の検出に供するレゾルバを備えたブラシレスモータとして構成すると共に、
前記レゾルバを、前記第1軸受よりも軸方向外側に配設したことを特徴とするパワーステアリング装置。
【0096】
このように、第1軸受を前記デッドスペースへと配置し、その軸方向外側にレゾルバを配置することにより、部品レイアウトの最適化が図れ、装置の小型化に供される。
【符号の説明】
【0097】
10…トーションバー
11…入力軸
12…出力軸
16…ピストン
18…パワーシリンダ
19…ロータリバルブ(コントロールバルブ)
25…キー(入力軸側係合部)
30…中空モータ
39e…キー溝(ロータ側係合部)
39f…内周面(ロータ側係合部)
41…雄セレーション部(入力軸側係合部)
42…雌セレーション部(ロータ側係合部)
45a…突条部の先端面(入力軸側係合部)
P1…第1圧力室(一対の圧力室)
P2…第2圧力室(一対の圧力室)
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