特許第6228933号(P6228933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャガー・ランド・ローバー・リミテッドの特許一覧

特許6228933車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム
<>
  • 特許6228933-車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム 図000002
  • 特許6228933-車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム 図000003
  • 特許6228933-車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム 図000004
  • 特許6228933-車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム 図000005
  • 特許6228933-車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228933
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車両の渡り深さを決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/11 20120101AFI20171030BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20171030BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60W40/11
   B60R1/06 Z
   B60W40/06
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-557045(P2014-557045)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2015-513494(P2015-513494A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013053022
(87)【国際公開番号】WO2013120970
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年9月2日
【審判番号】不服2016-14626(P2016-14626/J1)
【審判請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】1202617.5
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ギリング
(72)【発明者】
【氏名】トゥイー−ユン・トラン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ホーア
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・クラーク
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 松下 聡
【審判官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0159020(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2356602(GB,A)
【文献】 英国特許出願公開第2376929(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W40/11
B60R1/06
B60W40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における現在の最大渡り深さにして、前記車両との関係における最高水レベルである現在の最大渡り深さを決定する方法であって、
(a)前記車両の姿勢を決定し、
(b)前記車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定し、及び
(c)前記車両の姿勢及び前記第1高さに基づいて前記現在の最大渡り深さを決定する、方法。
【請求項2】
車両サスペンションの運行姿勢を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現在の最大渡り深さを決定するステップが、前記車両の前進速度及び/又は加速度に基づく頭部波補償ファクターを適用するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1高さが、水面から離れる反射した信号を検出することにより測定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記検出された信号が信号減衰を補うべく増幅若しくは訂正される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記車両の第2参照ポイントに関する第2高さを測定するステップを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2高さを比較して前記車両の姿勢を決定するステップを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1参照ポイントが前記車両の第1側に設けられ、前記第2参照ポイントが前記車両の第2側に設けられる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における現在の最大渡り深さにして、前記車両との関係における最高水レベルである現在の最大渡り深さを決定するためのシステムであって、
水平軸に対する前記車両の角度配向を測定するための姿勢センサー;
前記車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定するための少なくとも一つの第1センサー;及び
前記測定された角度配向及び前記第1高さに基づいて前記車両との関係における前記現在の最大渡り深さを決定するためのプロセッサーを備える、システム。
【請求項10】
前記少なくとも一つの第1センサーが前記車両のサイドミラーアセンブリーに設けられる、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のシステムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係において渡り深さを決定するための方法及びシステムに関する。本発明の側面は、システム、車両、方法、及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフロード車両にとっては水塊を通じて運転することが普通であり、これが本明細書において渡りイベントと呼ばれる。しかしながら、渡り深さ(すなわち、車両との関係における水レベル)は、ある閾値を超えるべきではない。水を検出するための既知の技術は、抵抗若しくは容量の水センサーの使用を含む。しかしながら、特に車両の地面クリアランスを妥協することなく、渡りイベントの提示を折良く提供するのに十分に低い高さで、車両の周囲に水センサーを安全に包装することが難しいことが判明するかもしれない。
【0003】
出願人は、車両の渡りイベントに関する一連の出願を提出しており、2010年2月25日に出願されたGB1021268.6;2011年12月15日に出願されたGB1121625.6;2011年12月15日に出願されたGB1121621.5;2010年2月25日に出願されたGB1021278.5;2011年12月15日に出願されたGB1121624.9;2010年2月25日に出願されたGB1021272.8;2011年12月15日に出願されたGB1121622.3;2010年2月25日に出願されたGB1021297.5;2011年12月15日に出願されたGB1121626.4;2011年12月15日に出願されたGB1121629.8;2010年12月15日に出願されたGB1021295.9;2011年12月15日に出願されたGB1121623.1;2010年12月15日に出願されたGB1021296.7;2011年12月15日に出願されたGB1121620.7;2011年12月15日に出願されたGB1121619.9;2011年12月15日に出願されたGB1121618.1;2011年3月15日に出願されたGB1104367.6;及び2011年8月17日に出願されたGB1114124.9が含まれる。
【0004】
これらの出願の内容が参照によりその全体において本明細書に明確に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の着想はこの背景に反する。本発明の実施形態が、従来の構成よりも優れる方法、システム、モニター、若しくは車両を提供し得る。本発明の他の目的及び利益が、次の記述、請求項、及び図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の側面が、添付請求項において請求されるように、方法、システム、車両を提供する。
【0007】
保護が求められる本発明の別側面によれば、少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における渡り深さを決定する方法が提供され、当該方法が:
(a)車両の姿勢を決定し、
(b)車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定し、及び
(c)車両の姿勢及び第1高さに基づいて渡り深さを決定する。
【0008】
少なくとも一つの水平参照軸に対する車両の姿勢を決定することにより、車両に関する渡り深さが推定できる。より端的には、最大渡り深さ(すなわち、エンジンのための空気吸入口の高さ若しくは車両全体の重量及び占有面積といった車両の物理的特徴に基づく、車両に対する最高水レベル)が決定できる。渡り深さは、閾値渡り深さに到達若しくは超過した時に運転手に通知を提供するために用いられ得る。
【0009】
方法は、車両サスペンションの運行姿勢(travel position)を決定することを含むことができる。運行姿勢は、例えば、変位センサーにより測定され得る。代替として、若しくは加えて、運行姿勢は、車両サスペンションセッティングの参照で決定され得る。例えば、サスペンションが異なる動作モードのために調整可能であり、選択された動作モードに基づいて運行姿勢が決定され得る。
【0010】
渡り深さを決定するためのサスペンションの運行姿勢の利用は、独立して特許可能であるものと信じる。従って、更なる側面においては、本発明が、少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における渡り深さを決定する方法に関し、当該方法が、
(a)車両サスペンションの運行姿勢を決定し;
(b)車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定し;及び
(c)運行姿勢と第1高さに基づいて車両との関係における渡り深さを決定する。
【0011】
運行姿勢と測定された第1高さを組み合わせることにより、渡り深さが改善された精度で決定され得る。サスペンションの運行姿勢を活用した渡り深さの決定方法が、車両の姿勢を決定することを含むことができる。
【0012】
車両の姿勢が車両ロール(すなわち、車両の縦軸(長手軸)周りの回転)及び/又は車両ピッチ(すなわち、横軸周りの回転)を意味し得る。車両の姿勢は、典型的には水平軸又は面に対しての角度として測定される。
【0013】
第1参照高さは、第1参照ポイントのために規定され得る。代替として、若しくは加えて、第1参照高さは、車両が渡りイベントではない時、例えば、較正シーケンスの一部で測定され得る。第1参照高さから測定された第1高さを減算することにより水深が計算可能である。車両サスペンションの運行姿勢は、また、オプションとして、適切なように、加算若しくは減算され得る。渡り深さは、水深及びまたオプションとして車両の姿勢に基づいて決定可能である。
【0014】
本明細書に記述の方法が、第1位置における第1垂直オフセットを決定し、第1参照ポイントにおける測定された水の高さに前述の垂直オフセットを加えることを含むことができる。第1垂直オフセットは、例えば、三角法を用いて計算できる。代替として、第1垂直オフセットが参照テーブルにおいて検索され得る。第1位置は、第1参照ポイントから縦及び/又は横に変位され得る。第1位置は、車両のフロント若しくはバック若しくは車両の横端といった車両の端部を表すことができる。従って、第1垂直オフセットは、最大垂直オフセットを示す。方法は、1以上の垂直オフセットを決定することを含むことができ、例えば、車両のフロント及びバックでの垂直オフセットを決定する。
【0015】
渡り深さを決定するステップが、頭部波補償ファクターを適用することを含むことができる。頭部波補償ファクターは、車両が水を介して移動する時に形成される頭部波のプロファイルを見込むことができる。頭部波は車両のフロントホイールの後の水レベルを低減し得、水の高さがこの領域で測定されるならば、間違って低い渡り深さが決定され得る。頭部波補償ファクターは、実験的な分析若しくはコンピューターモデリングにより決定することができる。更には、頭部波補償ファクターは、1以上の次の動作パラメーターに基づいてカスタマイズされ得る:車両前進速度;車両加速度;車両姿勢(ピッチ及び/又はロール);サスペンション運行;車両旋回角度;水深;水の速度及び方向;及び測定した第1高さ。
【0016】
第1高さは、水面から離れる反射した信号を検出することにより測定可能である。例えば、信号は、超音波若しくはレーザーであり得る。第1高さは、送信器から受信器への信号の飛行時間を計測することにより決定可能である。
【0017】
検出された信号は、信号減衰を補償するために増幅可能である。信号減衰は、例えば、水面に対する車両の姿勢に起因して発生し得る。検出信号に対して適用される増幅は、車両姿勢に基づくものであり得る。
【0018】
方法が、車両の第2参照ポイントに関する第2高さを測定することを含むことができる。方法は、第1及び第2高さを比較して車両の姿勢を決定することを含むことができる。第1及び第2参照ポイントが横方向にオフセットされるならば、第1及び第2高さの比較が、横方向の勾配を決定することができる。第1参照ポイントは、車両の第1側に設定可能であり、第2参照ポイントが車両の第2側に設定可能である。もし第1及び第2参照ポイントが縦方向にオフセットされるならば、縦方向の勾配が決定される。もちろん、方法が、2以上の参照ポイントでの高さを測定することを含むことができる。
【0019】
専用姿勢センサーが、車両の姿勢を測定するために提供され得る。姿勢センサーは、例えば、ジャイロスコープ及び/又は加速度計を備えることができる。姿勢センサーは、1以上の軸の周りの車両の姿勢を検出することができる。一軸姿勢センサーは、例えば、車両の縦軸若しくは横軸周りの車両の姿勢を測定することができる。二軸姿勢センサーは、縦軸及び横軸の両方の周りの車両の姿勢を測定することができる。姿勢センサーは、典型的には、水平面に対する車両の角度配向を測定する。
【0020】
姿勢センサーは、縦方向の加速度計を備えることができる。方法は、動的な車両(ホイール速度)加速度を減算することにより測定された縦方向の加速度を修正し、重力に起因する加速度及びその故の縦方向の勾配を求めることを含むことができる。方法が、姿勢センサーからの信号にフィルターを適用し、例えば、車両の制動及び/又は加速から帰結する加速度変動を補うことを含むことができる。ブレーキ圧及びスロットル入力の両方の大きさ及び変化率がモニターされて改善されたフィルタリングが提供される。方法は、計算された縦方向の勾配を出力し、少なくとも第1センサーを用いて車両の最深ポイントでの最大深さの計算をサポートすることができる。
【0021】
また更なる側面においては、本発明は、少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における渡り深さを決定するためのシステムに関し、当該システムが、
水平軸に対しての車両の角度配向を測定するための姿勢センサー;
車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定するための少なくとも一つの第1センサー;及び
測定された角度配向及び第1高さに基づいて車両との関係における渡り深さを決定するためのプロセッサーを備える。
【0022】
システムは、車両サスペンションの運行姿勢を決定するための手段を備えることができる。姿勢センサーは、ピッチ(すなわち、車両の横軸周りの回転角)及び/又はロール(すなわち、車両の縦軸周りの回転角)を測定するように構成され得る。
【0023】
また更なる側面においては、本発明は、少なくとも部分的に水に浸る時の車両との関係における渡り深さを決定するためのシステムに関し、当該システムが、
車両サスペンションの運行姿勢を決定するための手段;
車両の第1参照ポイントに関する水面の第1高さを測定するための少なくとも一つの第1センサー;及び
運行姿勢及び第1高さに基づいて車両との関係における渡り深さを決定するためのプロセッサーを備える。
【0024】
システムは、水平軸に対する車両の配向を測定するための姿勢センサーを備えることができる。姿勢センサーは、ピッチ(すなわち、車両の横軸周りの回転角)及び/又はロール(すなわち、車両の縦軸周りの回転角)を測定するように構成され得る。
【0025】
車両サスペンションの運行姿勢を決定するための手段が、変位センサー若しくは車両の動作モードに基づいて運行姿勢を特定する参照テーブルを備えることができる。
【0026】
本発明のシステムが、システムにより決定される時に車両姿勢及び/又は渡り深さを運転手に示すための手段を提供するように構成され得る。
【0027】
第1センサーが車両の第1サイドミラーアセンブリーに設けられ得る。サイドミラーアセンブリーは、典型的には、運転手の視界にある車両の外部に実装される。第2センサーが車両の第2参照ポイントに関する水面の第2高さを測定するために設けられ得る。第2センサーは、車両の第2サイドミラーアセンブリーに設けられ得る。少なくとも第1センサーは、信号を発信し、水面から離れる反射した信号を検出するトランシーバーを備えることができる。少なくとも第1センサーが、超音波若しくはレーザーのものであり得る。
【0028】
更なる側面においては、本発明は、本明細書に記述のシステムを備える車両に関する。
【0029】
本明細書に記述の方法(群)が機械実施され得る。本明細書に記述の方法が、電子マイクロプロセッサーといった1以上のプロセッサーを備える計算装置上で実施され得る。プロセッサー(群)は、メモリー若しくは記憶装置に記憶された計算指令を実行するように構成され得る。本明細書に記述の装置は、計算指令を実行するように構成された1以上のプロセッサーを備えることができる。
【0030】
更なる側面においては、本発明は、プログラマブル回路;及び本明細書に記述の方法を実行するようにプログラマブル回路をプログラムするように少なくとも一つのコンピューター読み取り可能媒体上にエンコードされたソフトウェアを備えるコンピューターシステムに関する。
【0031】
また更なる側面によれば、本発明は、コンピューターにより実行される時、本明細書に記述の方法(群)の全ステップをコンピューターが実行するようにさせるコンピューター読み取り可能指令を其処に有する1以上のコンピューター読み取り可能媒体に関する。
【0032】
車両姿勢に関する本明細書の参照が、水平参照面に対する車両の配向に言及する。車両姿勢は、水平参照軸若しくは垂直参照軸に対する車両の縦軸及び/又は横軸の角度配向として定義され得る。参照軸は、添付図面において破線で図示される。
【0033】
本出願の範囲内において、先述の段落、請求項、及び/又は次の記述及び図面にて立案した様々な側面、実施形態、実施例、及び変形、また特にはこれらの個々の特徴は、独立に若しくは任意の組み合わせにおいて理解されることが明示的に意図される。例えば、一つの実施形態に関連して記述した特徴は、そのような特徴が相容れないものでない限り、全ての実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の実施形態が、例示のみのため、添付図面を参照して記述される。
図1図1は、本発明の実施形態に係る最大渡り深さを決定するために用いられる寸法が重ねられた車両を示す。
図2図2は、平坦な渡りイベントにおける図1の車両を示す。
図3図3は、ノーズダウン渡りイベントにおける図1の車両を示す。
図4図4は、ノーズアップ渡りイベントにおける図1の車両を示す。
図5図5は、横勾配渡りイベントにおける図1の車両を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
水を渡ることができる車両1が図1に図示される。本発明の実施形態においては、車両1には、車両1との関係における水レベルを表す最大渡り深さdMaxを推定するように構成された渡りモニター(不図示)が備えられる。渡りモニターは、運転手へ渡り情報を出力することができ、オプションとして、計算された最大渡り深さdMaxが閾値に接近するならば、ディスプレイ若しくは聞き取り可能な警報(不図示)を介してアラートを提供することができる。
【0036】
車両1は、独立エアーサスペンション(不図示)によりシャーシ上に実装された4つのホイールWを備える。サスペンションは、様々な運転シナリオのために車両1の乗車高さを変更するように調整可能である。詳細には、エアーサスペンションは、1以上の次の動作モードのために事前設定された乗車高さを提供することができる:アクセス;高速道路;標準;中間オフロード;及びオフロード。エアーサスペンションは、現在の積載量及び以前のホイール位置に基づく、乗車高さを高める時間調整されたインフレーション(timed inflation)を提供する拡張モードを提供することもできる。サスペンションは、サスペンション高さHnを動的に測定し、事前設定された値のセットの一つとしてこれを通信する。サスペンション高さの変化は、サスペンション高さ修正子Hn'として出力され得る。
【0037】
車両1は、フロントバンパー3、リアバンパー5、左サイドミラーアセンブリー7及び右サイドミラーアセンブリー9を備える。第1渡りセンサー11が左サイドミラーアセンブリー7に収容される;及び第2渡りセンサー13が右サイドミラーアセンブリー9に収容される。第1及び第2渡りセンサー11、13が、第1及び第2参照ポイントを規定し、これらが車両寸法と共に渡りモニターにより用いられて渡り深さdMaxが決定される。車両寸法は、図1を参照して次のように要約される:
Sensor 地面高さ上の渡りセンサー11、13の高さであり、これはエアーサスペンションの選択された動作モードに依存する
(本実施形態:オフロード=1.23m;標準=1.19m;アクセス=1.14m)
SensorToFront 車両のフロントから渡りセンサー11、13までの距離
(本実施形態:1.8m)
SensorToRear 車両のリアから渡りセンサーまでの距離
(本実施形態:2.9m)
【0038】
最大渡り深さdMaxは、車両1の縦軸Xに平行に横たわり、破線X1により図示される。この例においては、エアーサスペンションがオフロード動作モードにセットされる時に車両1のために運転中の渡り閾値(不図示)が0.7mに指定される。
【0039】
第1及び第2渡りセンサー11、13は、各々、超音波トランシーバー11a、13aを備え、これは、パドルライト若しくは方向指示器アセンブリ(方向変更信号)(不図示)に組み合わされ得る。第1及び第2渡りセンサー11、13は、車両1の垂直軸Zに実質的に平行に下方に向けられる。使用に際しては、超音波トランシーバー11a、13aが、超音波信号(図においては陰影のある三角形により図示される)を送信し、これが水塊の表面Sから離れるように反射される。車両が乾燥した道路上を移動する通常の運転においては、超音波信号が路面から反射して戻るものと理解される。この場合、乗車高さが既知であるため、システムは、乾燥した地面を既知の参照ポイントとして用い、自己診断及び/又は較正サイクルを周期的に実行するように構成され得る。車両が水塊を通じて運転するこの場合、反射した信号が関連のトランシーバー11a、13aにより検出され、超音波信号の飛行時間が用いられ、渡りセンサー11、13と水塊の表面Sの間の距離dSensedが決定される。
【0040】
測定された距離dSensedは、水の表面Sの動き、例えば、水のさざなみ/波/跳ねに起因して変動し得る。電子フィルターが適用され、検出信号からノイズが除去される。更には、車両1が水の表面Sに対して傾斜するならば反射した信号が減衰し得(超音波トランシーバー11a、13aに向かって直接的に反射されないため)、渡りモニターは、検出信号を増幅し、及び/又は訂正を適用できる。
【0041】
渡りセンサー11、13と水塊の表面Sの間の距離dSensedを測定することにより、局所的な水深dMeasured(つまり、渡りセンサー11、13の近位の水深)が次の数式を用いて計算されることが許容される:
【0042】
測定された水深(dMeasured)=センサー実装高さ(hSensor)−測定された水までの距離(dSensed)±サスペンション高さ修正子(Hn'
【0043】
渡りモニターは、車両サスペンション高さ修正子(Hn')を加算若しくは減算することにより水深dMeasuredを調整し、選択されたサスペンション動作モードのサスペンション高さの変更を補償する。渡りモニターは、また、車両1が水を通じて移動する時にフロントホイールの後の水の深さを減じる頭部波(bow wave)の形成から帰結する変動を見越す頭部波修正子(±ve)を適用することができる。頭部波修正子は、車両速度及び/又は水深に関して較正され得る。
【0044】
従って、車両1のための最大渡り深さdMaxは、汎用近隣検出モジュール(GPSM(General Proximity Sensing Module))により車両のクローズドエリアネットワーク(CAN(Closed Area Network))上を伝送される車両及びサスペンション高さ情報に基づく。計算された最大渡り深さdMaxは、次に、他の車両システムによる参照のためにGPSMによりCANバス上を伝送される。
【0045】
図2に図示された例示のアレンジメントにおいては、車両1が実質的に水平であり(すなわち、車両1の縦軸Xが実質的に水平である)、渡りイベントにおいて水塊を通じて運転している。車両1が水平であり、最大渡り深さdMaxは、測定された深さdMeasuredに等しく、また車両の長さに沿って実質的に一様である。車両のフロントでの水深dfrontは、車両のリアでの水深drearに実質的に等しいものと理解される。これは、次の記述により要約できる:
【0046】
最大渡り深さ(dMax)=測定された水深(dMeasured)=フロント深さ(dfront)=リア深さ(drear
【0047】
車両1が常に水平ではないものと理解される。水面Sに対する車両1の姿勢を決定するため、渡りモニターは、更に、車両1の縦方向のピッチを測定するための姿勢センサー(不図示)を備える。姿勢センサーは、車両1の縦軸Xに対する縦方向の勾配角θを測定する。従って、姿勢センサーは、車両1の縦方向のピッチの指標(すなわち、車両1の横軸Y周りの角度配向)を提供する。姿勢センサーは、車両の縦方向の加速度計を備え、これは、ホイール速度加速度を減算し、重力に起因する加速度及び従って縦方向の勾配を生成する。渡りモニターは、姿勢センサーからの信号にフィルターを適用し、車両の制動及び/又は加速から帰結する加速摂動を補うことができる。ブレーキ圧及びスロットル入力の両方の変化の大きさ及び率がモニターされ、縦方向の勾配を算出するための改善されたフィルタリングが提供される。姿勢センサーは、代替的に若しくは追加としてジャイロスコープであり得る。
【0048】
車両1がノーズダウン渡りイベントの図3に図示され、車両のフロントが車両のリアよりも低い。詳細には、車両1が縦方向の勾配角θでノーズダウン姿勢で図示される。第1の例示のアレンジメントのように、第1及び第2渡りセンサー11、13が、渡りセンサー11、13と水塊の表面Sの間の検知された距離dSensedを決定する。渡りモニターは、次に、センサー高さhSensorから検知された距離dSensedを減算することにより測定された水深dMeasuredを計算する。
【0049】
車両1がノーズダウン姿勢にあるため、車両のフロントでの水深dfrontが、車両のリアでの水深drearよりも大きい。姿勢センサーは、車両1の勾配角θを測定し、渡りセンサーがこのデータを用いて増加した車両1のフロントの水深を計算する。詳細には、車両のフロントでのノーズダウン深さdNoseDownが次のように計算される:
【0050】
NoseDown=tanθ×LSensorToFront
【0051】
一例としては、縦方向の勾配角θが6°ならば、Tan6×180cm(LSensorToFront)=18.9cmである。ノーズダウン深さdNoseDownが、測定された水深dMeasuredに加算され、最大フロント渡り深さdfrontが提供され、これが渡り深さdMaxとして設定される。
【0052】
車両1が図4のノーズアップ渡りイベントに図示される。このアレンジメントにおいては、車両1のフロントが、車両のリアよりも高い。車両1は、縦方向の勾配角θでノーズアップ姿勢で図示される。繰り返すが、第1及び第2渡りセンサー11、13が、渡りセンサー11、13と水塊の表面Sの間の距離dSensedを決定する。
【0053】
車両1がノーズアップ姿勢にあるため、車両のリアの水深drearは、車両のフロントの水深dfrontよりも大きい。姿勢センサーは、車両1の傾角θを測定し、渡りセンサーがこのデータを用いて増加した車両1のリアの水深を計算する。渡りセンサーが増加した車両1のリアの水深を計算する。詳細には、車両のフロントでのノーズアップ深さdNoseUpが次のように計算される:
【0054】
NoseUp=tanθ×LSensorToRear
【0055】
一例としては、縦方向の勾配角θが6°であるならば、Tan6×290cm(LSensorToRear)=30.5cmである。ノーズアップ深さdNoseUpは、測定された水深dMeasuredに加算され、最大リア渡り深さdrearを提供し、これが渡り深さdMaxとして設定される。
【0056】
最大渡り深さdMaxを決定するため、渡りモニターは、縦方向の勾配角θが正若しくは負であるかに基づいて最大フロント渡り深さdfront若しくは最大リア渡り深さdrearを計算することができる。代替として、渡りモニターは、最大フロント渡り深さdfrontと最大リア渡り深さdrearを比較し、最大渡り深さdMaxをより大きいほうの値に設定することができる。
【0057】
図5に更なるアレンジメントが図示され、車両1が横方向の勾配角αで傾斜される。渡りモニターは、検知した深さdSense1とdSense2の差分を比較して車両1のどちら側が低いかを決定することができる。次に、渡りモニターは、車両のその側の検知した深さdSenseを用いて、最大渡り深さdMaxを決定することができる。専用の姿勢センサーが、車両1の横方向の角度αを測定するために設けることができ、最大渡り深さdMaxが3次元において計算される。例えば、ロール速度の変化率を測定するように構成された縦方向の加速度計及び/又はジャイロスコープは、運転手に追加的に表示され得る適切な車両姿勢データをシステムに提供するために用いられ、これは、運転手が、車両の挙動に影響し得る外部要因に対して報知されつつ機動を安全に完了することを可能にする。
【0058】
渡りモニターは、渡りイベントの過程で最大渡り深さdMaxを出力するように用いることができる。最大渡り深さdMaxが閾値渡り深さに接近する若しくは超えるならばアラートが提供され、運転手が適切な措置を取ることが許容される。
【0059】
渡りモニターは、車両1が渡りイベントにある時を決定するために湿度センサーといった他の渡りセンサーと一緒に用いることができる。追加的若しくは代替的に、渡りモニターは、当初の水深が渡りイベントと考えられるのに浅すぎるような状況においても、運転手がマニュアル操作でシステムに水深を測定するように指令することを許容するように構成され得る。
【0060】
更には、渡りモニターは、車両の動的動作パラメーターを用いて渡りイベントを評価することもできる。例えば、渡りモニターは、車両の進行方向(前進、後進、及び左若しくは右への方向転換)を用い、車両1の最大渡り深さdMaxが増加若しくは減少する見込みであるかを予想することができる。車両1がノーズダウン姿勢にあるならば、渡りモニターは、車両が前進するならば最大渡り深さdMaxが増加する見込みであり、また車両が後方に運転しているならば減少する見込みであると決定することができる。車両1がノーズアップ姿勢にあるならば、渡りモニターは、車両が前方に運転しているならば最大渡り深さdMaxが減少する見込みであり、車両が後方に運転しているならば増加する見込みであると決定することができる。同様にして、車両1が勾配(縦方向の勾配若しくは横方向の勾配)上にあるならば、渡りモニターは、車両が方向転換して勾配を上る若しくは下るかに基づいて最大渡り深さdMaxが増加若しくは減少する見込みであることを決定することができる。渡りモニターが最大渡り深さdMaxが増加及び/又は閾値を超える見込みであると決定するならば、アラートが運転手に提供され得る。
【0061】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正が本明細書に記述の渡りモニターに為されうるものと理解される。例えば、姿勢センサーは、車両1の縦方向の勾配θを測定する単一軸センサーとして記述した。姿勢センサーは、1以上の軸において姿勢を測定することもでき、例えば、横方向の勾配角αも決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5