(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228934
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】フコキサンチン含有組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/336 20060101AFI20171030BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20171030BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20171030BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20171030BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20171030BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20171030BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20171030BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20171030BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20171030BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20171030BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20171030BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20171030BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
A61K31/336
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/40
A61K47/36
A61K9/107
A61K9/14
A61P3/04
A23L33/10
A61K8/49
A61K8/39
A61K8/60
A61K8/73
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-557504(P2014-557504)
(86)(22)【出願日】2014年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2014050752
(87)【国際公開番号】WO2014112573
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-5966(P2013-5966)
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根橋 直大
(72)【発明者】
【氏名】室町 綾子
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕一郎
【審査官】
今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−297237(JP,A)
【文献】
特開2010−235574(JP,A)
【文献】
特開2012−214462(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/105546(WO,A1)
【文献】
特開2010−168285(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/145659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A23L 33/00−33/29
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フコキサンチン、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びアラビアガムからなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を含有するフコキサンチン含有組成物。
【請求項2】
乳化剤の含有量がフコキサンチン含有組成物の全重量に対して0.1〜50.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項3】
シクロデキストリンの含有量がフコキサンチン含有組成物の油性成分の全重量に対して0.5〜50倍量であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項4】
アラビアガムの含有量がフコキサンチン含有組成物の油性成分の全重量に対して0.5〜50倍量であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項5】
シクロデキストリンがα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン及びG2β-シクロデキストリンからなる群より選ばれる1種以上のシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項6】
(A)フコキサンチン、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含む乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びアラビアガムからなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を混合する工程、得られた混合物を乾燥させる工程を有するフコキサンチン含有組成物の製造方法。
【請求項7】
フコキサンチンを融解する工程を有しない、請求項6に記載のフコキサンチン含有組成物の製造方法。
【請求項8】
さらに抗酸化剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項9】
抗酸化剤が、トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群である請求項8記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項10】
抗酸化剤が、ミックストコフェロールである請求項8記載のフコキサンチン含有組成物。
【請求項11】
抗酸化剤が、抗酸化力価が60以上、および総トコフェロール含量が50%以上のミックストコフェロールである請求項8記載のフコキサンチン含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコキサンチン含有組成物の製造方法に関する。さらに、詳しくはフコキサンチンを高含量含みながら、長期間保存しても安定で健康食品などへの配合が可能なフコキサンチン含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フコキサンチンは、コンブ、ワカメ、モズク、ヒジキなどの海藻類に微量に含まれるカロチノイドの一種である。近年、フコキサンチンに関する研究が進むにつれ、抗肥満、抗糖尿、抗酸化、抗炎症作用など様々な特性が報告されており、海藻由来の機能性素材として注目されている。特に、抗肥満作用においては、脂肪を熱として発散させる特殊なたんぱく質(UCP1) を白色脂肪細胞中に誘導する分子機構に基づいており、この様な作用を示す成分はこれまでに確認されていないため、ユニークなダイエット素材として国内外で注目を集めている。また、メタボリックシンドローム対応素材としてニーズが高いことに加え、アンチエイジング素材としての期待も高まっている。(非特許文献1)
一般的にフコキサンチンなどのカロチノイドは、熱、光、酸素に対して不安定であり、加工方法には非常に気を使わなければならない。そのため、カロチノイド組成物の製造において、様々な製造方法が検討されている。フコキサンチンをエタノールに溶解し、シクロデキストリンで包接させ、40 ℃以下で真空乾燥することにより、フコキサンチンのシクロデキストリン包接体を得る方法が開示されている(特許文献1)。カロチノイドを中鎖脂肪酸トリグリセライドに懸濁して加熱融解して得られる油相に、多価アルコール又は水とを加えた後、界面活性剤を加えてこれらを乳化して平均粒子径が500 nm以下のカロチノイド含有水性組成物を製造する方法が開示されている(特許文献2)。カロチノイドを融点以上の温度で加熱融解後、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて高圧乳化を行う方法が開示されている(特許文献3)。リコピンをγ−シクロデキストリンに包接させて水系組成物に添加すると共に、グルテン及び/又はアスコルビン酸を水系組成物に添加することで水系組成物中におけるリコピンの安定化を図る方法が開示されている(特許文献4)。
【0003】
結晶性のカロチノイドの製剤化に関しては、結晶を高温加熱して融解させて、非結晶として用いることがある。しかしながら、非結晶状態とするための高温処理によって、カロチノイドの分解又は消失が生じることがある。また、カロチノイドは物質として不安定であるため、時間と共に分解又は消失が進行することが知られている。この様なカロチノイドに関しては、結晶の状態で、乳化を行う方法や分散性を高める方法が検討されている。結晶性のカロチノイドを、非結晶の状態で乳化安定化して含有する組成物が開示されている(特許文献5)。
【0004】
食品類、飲料類のような水性系へ使用可能なカロチノイドの製造方法として、少量の乳化剤を用いて乳化することを特徴とする、有機溶媒類又は加熱工程を必要としない製造方法が開示されている(特許文献6)。ポリグリセリン組成中、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカグリセリンから選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するβ-カロチン組成物の製造方法が開示されている(特許文献7)。飲食品又は経口医薬品に添加する際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性などに優れたアスタキサンチン含有水溶性組成物の製造方法が開示されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-235574
【特許文献2】特開平8-120187
【特許文献3】特開2011-241177
【特許文献4】特開平8-259829
【特許文献5】特開2012-184221
【特許文献6】特表2005-506841
【特許文献7】特開2000-159663
【特許文献8】特開2009-27958
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】BIO INDUSTRY 2012年2月号7〜14ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、保存安定性の高いフコキサンチン含有組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の(1)〜(12)に関する
(1) (A)フコキサンチン、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群より選ばれる1種以上の乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びガム類からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を含有するフコキサンチン含有組成物。
(2) 乳化剤の含有量がフコキサンチン含有組成物の全重量に対して0.1〜50.0重量%であることを特徴とする(1)のフコキサンチン含有組成物。
(3) シクロデキストリンの含有量がフコキサンチン含有組成物の油性成分の全重量に対して0.5〜50倍量であることを特徴とする(1)のフコキサンチン含有組成物。
(4) ガム類の含有量がフコキサンチン含有組成物の油性成分の全重量に対して0.5〜50倍量であることを特徴とする(1)のフコキサンチン含有組成物。
(5) シクロデキストリンがα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン及びG2β-シクロデキストリンからなる群より選ばれる1種以上のシクロデキストリンであることを特徴とする(1)のフコキサンチン含有組成物。
(6) ガム類がアラビアガムであることを特徴とする(1)のフコキサンチン含有組成物。
(7) (A)フコキサンチン、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群より選ばれる1種以上の乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びガム類からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を混合する工程、得られた混合物を乾燥させる工程を有するフコキサンチン含有組成物の製造方法。
(8) フコキサンチンを融解する工程を有しない、(7)に記載のフコキサンチン含有組成物の製造方法。
(9) さらに抗酸化剤を含有する(1)〜(6)のいずれか1つに記載のフコキサンチン含有組成物。
(10) 抗酸化剤が、トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれることを特徴とする(9)記載のフコキサンチン含有組成物。
(11) 抗酸化剤が、ミックストコフェロールである(9)記載のフコキサンチン含有組成物。
(12) 抗酸化剤が、抗酸化力価が60以上、および総トコフェロール含量が50%以上のミックストコフェロールである(9)記載のフコキサンチン含有組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、保存安定性の高いフコキサンチン含有組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフコキサンチン含有組成物とは、(A)フコキサンチン、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群より選ばれる1種以上の乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びガム類からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を含有するフコキサンチン含有組成物である。
本発明で用いられるフコキサンチンとしては、天然物由来又は合成化合物由来などのものがあげられ、天然物由来としては藻類由来のものがあげられる。藻類は、フコキサンチンを含有する藻類であれば特に制限されず、天然又は養殖のいずれのものであってもよく、例えば、オキナワモズク、モズク及びフトモズクから選ばれるモズク類、ヒジキ、ホンダワラ及びアカモクから選ばれるホンダワラ類、ワカメ及びナンブワカメから選ばれるワカメ類、マコンブ及びガゴメコンブから選ばれるコンブ類などがあげられる。
【0011】
また、本発明で用いられるフコキサンチンの形態は特に限定されず、粉末又は溶液のいずれであってもよく、それらは天然物由来の抽出物であってもよい。抽出に用いられる抽出溶媒は、有機溶媒又はこれと水系溶媒の混合物であり、フコキサンチンを抽出できるものであれば特に種類を制限するものではない。この抽出溶媒の例としては、メタノール及びエタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、並びにクロロホルム等のアルキルハロゲン類等の有機溶媒から選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒又は前記有機溶媒と水との混合液があげられる。また、本発明で用いられるフコキサンチン含有組成物を食品用途に用いる場合には、溶媒としてエタノール又はエタノールと水との混合液を用いることが好ましい。
【0012】
本発明のフコキサンチン含有組成物は、いかなる形態であってもよい。本発明のフコキサンチン含有組成物の好適な形態として、例えば、水中油型の乳化組成物、及び該水中油型の乳化組成物を乾燥して得られた粉末組成物があげられる。特に、本発明のフコキサンチン含有組成物は、粉末組成物の形態をとる場合においても優れた保存安定性を発揮する。
【0013】
フコキサンチンの含有量としては、フコキサンチン含有組成物中の固形分(水を除く全成分)の全重量に対して0.1重量%〜5重量%が好ましく、0.2重量%〜4重量%がより好ましく、0.3重量%〜3重量%が更に好ましい。フコキサンチン類の含有量が、この範囲であれば、フコキサンチンの効果をより期待できる。
本発明のフコキサンチン含有組成物は、少なくとも1種の乳化剤を含有する。
【0014】
本発明で用いられる乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンを挙げることができ、好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンが、より好ましくはグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルが用いられる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
グリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸のエステルをあげることができる。これらのグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、フコキサンチン含有組成物を乳化組成物とした場合における分散粒子の安定性の観点から、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が12〜20であるものが好ましく、12〜18であるものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル及びショ糖モノラウリン酸エステル等があげられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル及びショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0017】
本発明に用いられるレシチンは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したものであれば特に限定されない。レシチンの好ましい例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物などに由来する各種レシチンをあげることができる。このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン及びヒドロキシレシチンなどを使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
フコキサンチン含有組成物における乳化剤の含有量は、当業者であれば組成物の形態によって設定することができる。フコキサンチン含有組成物における乳化剤の含有量は、乳化組成物の形態を採る場合であれば、組成物の全重量に対して0.1〜30.0重量%が好ましく、1〜20.0重量%がより好ましく、2〜15.0重量%が更に好ましく、粉末組成物の形態を採る場合であれば、組成物の全重量に対して0.1〜50.0重量%が好ましく、5〜45.0重量%がより好ましく、10〜30.0重量%が更に好ましい。
【0019】
本発明のフコキサンチン含有組成物は少なくとも1種の賦形剤を含有する。
賦形剤としては、シクロデキストリン及びガム類があげられる。
本発明に用いられるシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンなどがあげられる。また、それらの誘導体、例えばマルトシル誘導体であるG2β-シクロデキストリンなどもあげることができる。
【0020】
本発明で用いられるガム類としては、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、トラガンドガムなどがあげられ、好ましくはアラビアガムが用いられる。
賦形剤は、乳化組成物を調製する際における乳化時に添加されていることが好ましいが、その一部又は全部を乳化後に添加することもできる。賦形剤は、フコキサンチン含有組成物において、形状維持と融解性の観点から組成物の油性成分の全重量に対して好ましくは0.5倍量〜50倍量、より好ましくは1倍量〜20倍量、更に好ましくは1倍量〜10倍量であり、より更に好ましくは2倍量〜5倍量である。
【0021】
本発明のフコキサンチン含有組成物は、抗酸化剤を含有することができる。
本発明に用いられる抗酸化剤としては、例えば、ポリフェノール、トコフェロール類、アスコルビン酸又はその塩、ルチン、カフェイン及びイソフラボン等をあげることができる。これらの抗酸化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。抗酸化剤であるトコフェロール類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものをあげることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0022】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群には、dl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、リノール酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール、及びこれらの混合物(ミックストコフェロール)が含まれ、これらから選ばれる2種以上の化合物を組み合わせて用いることが好ましく、ミックストコフェロールがより好ましい。
【0023】
ミックストコフェロールとしては、抗酸化力価が60以上、及び総トコフェロール含量が50%以上のミックストコフェロールが好ましい。
該抗酸化力価及び該総トコフェロール含量は、食品添加物公定書(日本食品添加物協会)に記載の方法により測定することができる。
また、該抗酸化力価が60以上、及び総トコフェロール含量が50%以上のミックストコフェロールとしては、トコフェロールAT-160(J-オイルミルズ社製)、理研Eオイル600(理研ビタミン株式会社製)、イーミックス70L(エーザイフード・ケミカル社製)が好ましく、トコフェロールAT-160がより好ましい。
【0024】
抗酸化剤の含有量は、フコキサンチン含有組成物の全重量に対して、0.1重量%〜10重量%が好ましく、0.5重量%〜8.0重量%がより好ましく、1.0重量%〜5.0重量%が更に好ましい。
本発明のフコキサンチン含有組成物は、油相組成物と水相組成物とを乳化混合して得られた水中油型乳化組成物又は当該水中油型乳化組成物を乾燥して得られた粉末組成物であってもよい。
【0025】
油相組成物は、少なくともフコキサンチンを含み、更に本発明のフコキサンチン含有組成物の構成成分に包含される各成分から選択された油性成分を含むものであることが好ましい。
油相組成物の含有量は、油性成分の機能発揮の観点から、乳化組成物の場合には、該組成物の全重量に対して好ましくは0.1重量%〜50重量%、より好ましくは0.5重量%〜25重量%、更に好ましくは0.2重量%〜10重量%である。また、粉末組成物の場合には、油相組成物の含有量は、粉末組成物全重量に対して10重量%〜50重量%であることが好ましく、10重量%〜40重量%であることがより好ましく、10重量%〜30重量%であることが更に好ましい。
【0026】
水中油型乳化組成物とする場合には、油性組成物には上記成分の他、油相成分として使用可能な乳化剤を含んでもよい。
水相組成物は、本発明のフコキサンチン含有組成物の構成成分に包含される各成分から選択された水性成分を含むものであることが好ましい。
本発明のフコキサンチン含有組成物は、保存安定性に優れ、フコキサンチンによる所期の効果が充分に期待されるフコキサンチン含有組成物である。このため、食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物に適用できる。
【0027】
本発明のフコキサンチン含有組成物を含有する食品又は化粧品には、必要に応じて、食品又は化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。フコキサンチン含有組成物を、特に食品に用いた場合には、粉末状の食品中で長期安定保存が可能であり、水性媒体に融解したときには、微細な分散粒子を有する透明性に優れた分散組成物となる。
本発明のフコキサンチン含有組成物を含む食品、化粧品等は、結晶体の存在に起因して充分に発揮されない場合がある効果、例えばフコキサンチンの良好な吸収性を示し得る。
【0028】
本発明のフコキサンチン含有組成物を含有する食品としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤、嗜好性飲料、冷菓などの一般的な食品類のみならず、錠剤状・顆粒状・カプセル状、ゼリー状の栄養補助食品などをあげることができる。
機能性食品に含有する場合には、本発明にかかる粉末組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なるが、例えば製品の総重量に対して、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.05
重量%〜5重量%の範囲となるように添加して用いることができる。添加量が0.01重量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10重量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
【0029】
本発明のフコキサンチン含有組成物を含有する化粧品組成物としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等をあげることができる。
本発明のフコキサンチン含有組成物は、以下に詳述するフコキサンチン含有組成物の製造方法(本発明の製造方法)により製造することができる。
【0030】
本発明のフコキサンチン含有組成物の乾燥物の製造方法は、(A)フコキサンチン、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群より選ばれる1種以上の乳化剤、並びに(C)シクロデキストリン及びガム類からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を混合する工程、得られた混合物を乾燥させる工程を有するフコキサンチン含有組成物の製造方法である。
【0031】
本発明の組成物の乳化物は、(A)フコキサンチン、(B)乳化剤及び(C)賦形剤を混合し、加圧乳化すること(乳化工程)により得ることができる。これにより、フコキサンチン成分を含む油相成分が油滴(分散粒子)として水中に微細分散された水中油滴型の乳化組成物を得ることができる。
乳化における油相と水相との比率(重量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(重量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
【0032】
乳化は、具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)、高圧ホモジナイザー等を用いる等の方法で乳化するのが特に好ましい。使用可能な乳化手段は、自然乳化法、界面化学的乳化法、電気乳化法、毛管乳化法、機械的乳化法及び超音波乳化法等一般に知られている乳化法のいずれも使うことができる。
【0033】
また、汎用的に用いられる乳化法としては、機械力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法もあげることができる。機械力として最も一般的なものは、高速、高剪断攪拌機である。このような攪拌機としては、ホモミキサー、ディスパーミキサー及びウルトラミキサーと呼ばれるものもあげることができ、本発明の製造方法に用いることができる。
【0034】
また、微細化に有用な別の機械的な乳化装置として高圧ホモジナイザーがあり、種々の装置が市販されている。高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて大きな剪断力を与えることが出来るために、乳化剤の量が比較的少なくても微細化が可能である。
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10 ℃〜100 ℃であることが好ましい。また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50 MPa以上、より好ましくは50 MPa〜280 MPaに設定できる。また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0035】
また、本発明の製造方法は、乳化工程によって得られた水中油型乳化組成物を乾燥して粉末組成物を得る方法である。この粉末組成物としてのフコキサンチン含有組成物は、優れた保存安定性を備えた粉末化形態の組成物である。
粉末化工程で用いられる乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥及び噴霧乾燥等があげられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
また、本発明の製造方法に用いられる乾燥手段としては、噴霧乾燥法が好ましい。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状の組成物が熱風中に数100 μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
【0037】
なお、本発明の製造方法は、(A)フコキサンチン、(B)乳化剤及び(C)賦形剤を混合し、加圧乳化すること(乳化工程)により、乳化組成物を得る工程を含むが、フコキサンチン成分の融点以上の温度条件で加熱する工程(融解工程という、特にフコキサンチンが結晶の場合は結晶融解工程という)を採用しないことが好ましい。これは、フコキサンチンが熱に対して不安定であることが理由である。
【0038】
以下に、フコキサンチン含有組成物に関する実施例を示す。
【実施例1】
【0039】
フコキサンチン含有組成物の製造と評価 (1)
フコキサンチンを乳化させるための乳化剤として、酵素分解レシチン(SLP-ホワイトリゾ、辻製油社製)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノラウリン酸デカグリセリン)、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステル S-1670、三菱化学フーズ社製)について、それらの組合せを評価した。処方は表1の通りであり、評価は下記のように行った。
【0040】
蒸留水150 gに、表1に示す比率で乳化剤を合計5.0 g、γ-シクロデキストリン(シクロデキストリンγ-100、清水港精糖)30.0 g、ショ糖54.0 gを加え融解させた水溶液に対し、フコキサンチン(フコキサンチン1.0%含有オイル、BGG社製)10.0 gとトコフェロール(トコフェロールAT-160、J-オイルミルズ社製)1.0 gを50〜60 ℃で混合した油溶成分を添加し、エースホモジナーザー(日本精機社製)を用いて混合して乳化液を得た。混合条件は、6,000 rpm、20分である。
【0041】
得られた乳化液を蒸留水にて希釈後、pHをクエン酸にて3.0に調整し、90 ℃、5分の加熱殺菌後、60 ℃のインキュベータ内で0.5ヶ月間保存した。評価は、目視にて乳化の状態を下記に示す評価に基づいて行った。
<乳化安定性の評価基準>
○:結晶析出や濁りを認めず、透明である。
【0042】
△:濁りが認められた。
×:ネックリングが発生、または結晶が析出する。
なお、全ての温度帯において○を合格品とする。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表2で示すように、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノラウリン酸デカグリセリン)とショ糖脂肪酸エステルとの組合せにおいて良好な乳化の安定性があることが明らかとなった。
なお、処方1および3は参考例である。
【実施例2】
【0046】
フコキサンチン含有組成物の製造と評価 (2)
蒸留水150 gに、モノラウリン酸デカグリセリン2.5 g、ショ糖脂肪酸エステル7.5 g、表3に示す各賦形剤を表4に示す比率で合計30.0 g、およびショ糖49.0 gを加え融解させた水溶液に対し、フコキサンチン(1.0%オイル、BGG社製)10.0 gとトコフェロール(トコフェロールAT-160、J-オイルミルズ)1.0 gを50〜60 ℃で混合した油溶成分を添加し、水相と油相の混合液を得た。その後、撹拌器(TKホモミキサーMARII、特殊機化、7000 rpm、15分)を用いて混合し、高圧式ホモジナイザー(APV2000、エスエムテー、700 bar、3回)を用いて乳化し、乳化液を得た。得られた乳化液は、ミニスプレードライヤー(B-290、ビュッヒ)により噴霧乾燥させ、粉末を得た。得られた粉末を60 ℃のインキュベータにて0.5ヶ月間保存し、HPLCにてフコキサンチンの含量を測定した。製造直後の含量に対する残存率(%)を表5に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
表5で示すように、アラビアガム又はγ−シクロデキストリンを使用した場合に保存安定性が高いことが明らかとなった。さらに、アラビアガムとシクロデキストリンを併用することにより、フコキサンチンの安定性が高まることが明らかとなった。
なお、処方2および3は参考例である。
(比較例1)
フコキサンチン結晶の融解と残存率
フコキサンチン(1.0%オイル)を160 ℃、1時間で加熱し、結晶の状態を光学顕微鏡にて観察したところ、結晶は残存しており、さらにフコキサンチンの残存率が、10%以下まで低下していた。