特許第6228943号(P6228943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228943
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】軽油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/08 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   C10L1/08
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-5789(P2015-5789)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-132673(P2016-132673A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108317
【氏名又は名称】東燃ゼネラル石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】青柳 良和
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−526637(JP,A)
【文献】 特表2005−529213(JP,A)
【文献】 特開2010−235740(JP,A)
【文献】 特開2011−127083(JP,A)
【文献】 特開2007−270109(JP,A)
【文献】 特開2003−105354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルマルパラフィンを有する基材を含む軽油組成物であって、
(1)炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し11.5質量%以上20質量%以下であり、
(2)炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し0.2質量%以上1.0質量%以下であり、及び
(3)炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し13.5質量%以上18質量%以下であることを特徴とする、軽油組成物。
【請求項2】
曇り点が−13℃以下であり、セタン指数が54以上である、請求項1に記載の軽油組成物。
【請求項3】
引火点が60℃以上である、請求項1又は2に記載の軽油組成物。
【請求項4】
流動点が−16℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の軽油組成物。
【請求項5】
目詰まり点が−16℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の軽油組成物。
【請求項6】
硫黄含有量が10質量ppm以下である、請求項1〜5のいずれか1項記載の軽油組成物。
【請求項7】
上記基材が、原油由来の基材からなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の軽油組成物
【請求項8】
上記基材が、直留軽油、脱硫直留軽油、減圧軽油、脱硫減圧軽油、直脱軽油、間脱軽油、分解軽油、及び軽質分解軽油から選ばれる少なくとも1を含む、請求項7記載の軽油組成物
【請求項9】
上記基材が、沸点範囲150℃〜270℃を有する軽質分解軽油と、沸点範囲140℃〜270℃を有する脱硫灯油と、沸点範囲160℃〜370℃を有する直留軽油とからなる、請求項記載の軽油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽油組成物に関し、特には、低温特性に優れ、且つ運転特性が良好である軽油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽油組成物には飽和炭化水素や芳香族炭化水素が含まれている。軽油組成物は低温になると飽和炭化水素のうちノルマルパラフィンがワックスとして析出し、燃料系統のメインフィルターを詰まらせ、ディーゼルエンジンの始動が困難になるという問題がある。そのため軽油組成物において低温特性は重要であり、従来、低温特性を改良した軽油組成物が多数検討されている(特許文献1〜7)。
【0003】
低温特性の指標としては、曇り点、流動点、及び目詰まり点等がある。中でも重要な指標が曇り点である。曇り点とはワックスが析出し始める温度であり、メインフィルターを閉塞させるワックス量の目安となる。従って、曇り点を十分低くすることが低温特性を向上させるために重要である。
【0004】
また軽油組成物のエンジン性能を示す指標としてセタン指数がある。該セタン指数はエンジンの運転特性に関わるものである。特にディーゼル車用燃料として使われる場合、着火性を向上するためにセタン指数が高いことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−285155号公報
【特許文献2】特開2004−323625号公報
【特許文献3】特開2006−342235号公報
【特許文献4】特開2007−270109号公報
【特許文献5】特開2007−270110号公報
【特許文献6】特開2007−270111号公報
【特許文献7】特開2008−111082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし軽油組成物の低温特性を改良しようとすると、運転特性を多少犠牲にしなければならないことがしばしばある。特に、曇り点の改善とセタン指数の向上を両立させることは容易ではない。これまで、曇り点が十分低くない軽油に対しては、流動性向上剤を添加してワックスの結晶を小さくして流動点等を低下させていた。また、セタン指数が十分高くない軽油組成物にはセタン価向上剤を添加してセタン指数を向上していた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、低温特性の向上(特に、曇り点の低下)と運転特性(セタン指数)の向上を両立する軽油組成物を提供することを目的とする。さらに特には、流動性向上剤及びセタン価向上剤を使用しなくても、本質的に低温特性が向上し(特には、曇り点が低く)、同時に運転特性(セタン指数)を向上させることができる軽油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、軽油組成物に含まれる炭素数10〜30のノルマルパラフィンについて、特定の炭素数を有するノルマルパラフィンの含有量を制御することにより、軽油組成物の曇り点を改善し、且つ、セタン指数を向上できることを見出した。より詳細には、本発明者らは、軽油組成物中に含まれる炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計含有量、及び、炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計含有量が、軽油組成物の曇り点に関係しており、さらに、炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計含有量が、軽油組成物のセタン指数に関係していることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、ノルマルパラフィンを有する基材を含む軽油組成物であって、
(1)炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し11.5質量%以上20質量%以下であり、
(2)炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し0.2質量%以上1.0質量%以下であり、及び
(3)炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し13.5質量%以上18質量%以下であることを特徴とする、軽油組成物を提供する。
【0010】
さらに本発明は、下記1)〜6)の少なくとも1の特徴をさらに有する上記軽油組成物を提供する。
1)曇り点が−13℃以下であり、セタン指数が54以上である。
2)引火点が60℃以上である。
3)流動点が−16℃以下である。
4)目詰まり点が−16℃以下である。
5)硫黄含有量が10質量ppm以下である。
6)上記基材が、沸点範囲150℃〜270℃である軽質分解軽油と、沸点範囲が140℃〜270℃である脱硫灯油と、沸点範囲が160℃〜370℃である直留軽油とからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の軽油組成物は低温特性に優れ、特に曇り点が低く、同時にセタン指数が高い。従って、本発明の軽油組成物は、流動性向上剤やセタン価向上剤を添加しなくとも、低温特性の向上及び運転特性の向上を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明はノルマルパラフィンを含有する軽油組成物である。該ノルマルパラフィンは基材に由来するものである。本発明の軽油組成物は、下記(1)、(2)、及び(3)の要件:
(1)炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し11.5質量%以上である
(2)炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し1.1質量%以下である
(3)炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し13.5質量%以上である
を満たすことを特徴とする。
【0013】
本発明者らは、上記の通り、軽油組成物中に含まれる炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計含有量、及び、炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計含有量が、軽油組成物の曇り点に関係しており、さらに、炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計含有量が、軽油組成物のセタン指数に関係していることを見出した。
【0014】
上記(1)〜(3)の要件は上記を鑑みて設定された指標であり、上記(1)及び(2)に示す要件は、曇り点に関し、上記(3)に示す要件はセタン指数に関する。本発明の軽油組成物は、上記(1)、(2)及び(3)の要件を全て満たす事を特徴とし、これにより、低温特性に優れ、特に曇り点が低く、同時にセタン指数が高い軽油組成物となる。以下、各要件についてさらに詳細に説明する。
【0015】
要件(1)
本発明において、炭素数10ないし17のノルマルパラフィンは、その合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し11.5質量%以上である。好ましくは12.0質量%以上であり、さらに好ましくは12.4質量%以上、一層好ましくは13質量%以上である。軽油組成物中に含まれる炭素数10ないし17のノルマルパラフィンの合計含有量が上記下限値未満では、得られる軽油組成物の曇り点が上昇し、低温特性全般が悪化する。なお、炭素数10ないし17のノルマルパラフィンの合計含有量の上限値は特に制限されることはないが、特には、軽油基材の合計質量に対し20質量%以下、好ましくは17質量%以下、更には15質量%以下であるのがよい。
【0016】
要件(2)
本発明において、炭素数21ないし30のノルマルパラフィンは、その合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し1.1質量%以下である。好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.9質量%以下である。軽油組成物中に含まれる炭素数21ないし30のノルマルパラフィンの合計含有量が上記上限値を超えると、得られる軽油組成物の曇り点が上昇し、低温特性全般が悪化する。なお、炭素数21ないし30のノルマルパラフィンの合計含有量の下限値は特に制限されることはないが、特には、基材の合計質量に対し0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、更には0.4質量%以上であるのがよい。
【0017】
要件(3)
本発明においては、炭素数14ないし24のノルマルパラフィンは、その合計質量が、軽油組成物の合計質量に対し、13.5質量%以上である。好ましくは13.9質量%以上であり、さらに好ましくは14.1質量%以上である。軽油組成物中に含まれる炭素数14ないし24のノルマルパラフィンの合計含有量が上記下限値未満では、得られる軽油組成物のセタン指数が低下し、また運転特性が悪化する。なお、炭素数14ないし24のノルマルパラフィンの合計含有量の上限値は特に制限されることはないが、特には、基材の合計質量に対し20質量%以下、好ましくは18質量%以下、更には16質量%以下であるのがよい。
【0018】
以下、本発明の軽油組成物の物性について述べる。
【0019】
本発明の軽油組成物は、曇り点が−13℃以下であることが好ましく、より好ましくは−15℃以下であり、さらに好ましくは−16℃以下である。但しこれらに限定されるものではない。曇り点が上記上限値以下であることにより、低温運転時におけるフィルター閉塞を防止することができる。
【0020】
本発明の軽油組成物は、セタン指数が54以上であることが好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは56以上である。但しこれらに限定されるものではない。セタン指数が上記下限値以上であることにより、運転時における走行安定性が確保される。
【0021】
本発明の軽油組成物は、密度が0.800〜0.845g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.805〜0.840g/cmである。但しこれらに限定されることはない。密度が上記範囲内にあることが、発熱量が確保及びNOx、PM排出量低減の観点から好ましい。
【0022】
本発明の軽油組成物は、引火点が60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは72℃以上である。但しこれらに限定されるものではない。引火点が上記下限値以上であることにより、引火による発火の恐れが低下し取り扱い上の安全性が向上する。
【0023】
本発明の軽油組成物は、流動点が−16℃以下であることが好ましく、より好ましくは−18℃以下であり、さらに好ましくは−19℃以下である。但しこれらに限定されるものではない。流動点が上記上限値以下であることにより、低温運転時におけるフィルター閉塞を防止することができる。
【0024】
本発明の軽油組成物は、目詰まり点が−16℃以下であることが好ましく、より好ましくは−17℃以下であり、さらに好ましくは−18℃以下である。但しこれらに限定されるものではない。目詰まり点が上記上限値以下であることにより、低温運転時におけるフィルター閉塞を防止することができる。
【0025】
本発明の軽油組成物は、硫黄含有量が10質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは8質量ppm以下であり、さらに好ましくは7質量ppm以下である。但しこれらに限定されるものではない。硫黄含有量が上記上限値以下であることにより、腐食を最小限に防ぐことができる。
【0026】
本発明の軽油組成物は、特には、基材が、沸点範囲150℃〜270℃を有する軽質分解軽油と、沸点範囲140℃〜270℃を有する脱硫灯油と、沸点範囲160℃〜370℃を有する直留軽油とからなることが好ましい。これにより、曇り点を効果的に下げることができ、同時にセタン指数を向上させることができる。但し、本発明の軽油組成物は当該構成に限定されるものではない。
【0027】
本発明の軽油組成物は、各種軽油基材を適宜混合して調製される。該基材は特に限定されるものではなく、上記要件(1)、(2)、及び(3)を満たすように配合されればどのような基材を用いてもよい。好ましくは原油由来の基材である。該基材としては、例えば、直留軽油、脱硫直留軽油、減圧軽油、脱硫減圧軽油、直脱軽油、間脱軽油、分解軽油、及び軽質分解軽油等の軽油基材を使用することができる。またいわゆるGTL軽油なども本発明の要旨を損なわない限りで使用できる。尚、本発明の軽油組成物は上記の通り分解軽油を含んでいてよいが、ワックスを生成しやすい分子量の大きいn−パラフィンの量が増え、曇り点が高くなる恐れがある。その為、含む場合は少量が好ましく、特に好ましくは含まないのがよい。
【0028】
さらに本発明の基材として、必要に応じて、直留灯油、脱硫直留灯油、減圧灯油、脱硫減圧灯油、直脱灯油、間脱灯油、分解灯油、軽質分解灯油、GTL灯油のような、灯油基材を使用することができる。これら灯油基材は、曇り点、流動点、及び目詰まり点を改善させる効果がある。ただし、灯油基材は、軽油組成物のセタン指数を低下させる恐れがある。そのため、灯油基材の添加量を必要以上とすることは避ける必要がある。例えば、軽油組成物中に10vol%以下が好ましく、より好ましくは8vol%以下であるのがよい。
【0029】
本発明の軽油組成物は上記した軽油基材を適宜混合して調製される。上記各基材の蒸留性状や組合せは限定されるものでなく、上記した本発明の要件(1)、(2)、及び(3)を満たすように適宜調製されればよい。例えば、基材が、沸点範囲150℃〜270℃を有する軽質分解軽油と、沸点範囲100℃〜270℃を有する脱硫灯油と、沸点範囲160℃〜370℃を有する直留軽油との組合せからなる、軽油組成物が挙げられる。
【0030】
沸点範囲150℃〜270℃を有する軽質分解軽油は、限定されるものでなく、例えば、初留点(IBP)が130〜190℃、10%留出温度(T10)が170〜230℃、50%留出温度(T50)が180〜240℃、90%留出温度(T90)が200〜250℃、95%留出温度(T95)が210〜260℃、蒸留終点(EP)が220〜270℃であるのものを使用することができる。軽油組成物中の当該軽質分解軽油の含有量は、限定されるものでなく、組成物の合計に対して2〜10vol%が好ましく、より好ましくは2.5〜9vol%であり、さらに好ましくは2.5〜7vol%である。
【0031】
沸点範囲140℃〜270℃を有する脱硫灯油は、限定されるものでなく、例えば、初留点(IBP)が140〜160℃、10%留出温度(T10)が145〜190℃、50%留出温度(T50)が160〜210℃、90%留出温度(T90)が200〜240℃、95%留出温度(T95)が220〜250℃、蒸留終点(EP)が225〜270℃のものを使用することができる。軽油組成物中の当該脱硫灯油の含有量は、限定されるものでなく、組成物の合計に対して2〜10vol%が好ましく、より好ましくは2.5〜9vol%であり、さらに好ましくは2.5〜7vol%である。
【0032】
沸点範囲160℃〜370℃を有する直留軽油は、限定されるものでなく、例えば、初留点(IBP)が160〜195℃、10%留出温度(T10)が220〜255℃、50%留出温度(T50)が260〜300℃、90%留出温度(T90)が290〜340℃、95%留出温度(T95)が310〜355℃、蒸留終点(EP)が320〜370℃のものを使用することができる。軽油組成物中の当該留軽油の含有量は、限定されるものでなく、組成物の合計に対して84〜95vol%が好ましく、より好ましくは85〜93vol%であり、さらに好ましくは85〜91vol%である。
【0033】
なお、上記に示した組成は、あくまで本発明の軽油組成物の実施態様の例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
本発明に係る軽油組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記基材に加えて添加剤を配合することができる。該添加剤としては、酸化防止剤、清浄剤、潤滑油向上剤、流動性向上剤、セタン価向上剤、静電気防止剤等、公知の添加剤を使用することができ、一種または二種以上を混合して用いることができる。但し、本発明の軽油組成物はセタン価向上剤及び流動性向上剤を添加しなくてもよい。本発明の軽油組成物は、上記の通り、セタン価向上剤及び流動性向上剤を添加しなくとも、低温特性を改善し、且つ、セタン指数を向上することができる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤またはアミン系酸化防止剤のいずれか、またはこれらの混合物があげられる。酸化防止剤は軽油組成物の全量に対して3〜100質量ppm、好ましくは5〜20質量ppmとなる量で配合されるのがよい。
【0036】
清浄剤としては、例えば、無灰系清浄剤があげられる。清浄剤は軽油組成物の全量に対して10〜200質量ppm、好ましくは10〜100質量ppmとなる量で配合されるのがよい。
【0037】
潤滑油向上剤としては、例えば、エステル系潤滑性向上剤があげられる。潤滑油向上剤は軽油組成物の全量に対して50〜500mg/L、好ましくは100〜300mg/Lとなる量で配合されるのがよい。
【0038】
流動性向上剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、ポリアルキルメタクリレート系化合物があげられる。流動性向上剤は軽油組成物の全量に対して50〜1000質量ppm、好ましくは100〜500質量ppmとなる量で配合されるのがよい。上記の通り、本発明の軽油組成物は、流動性向上剤を添加しなくとも流動性を向上できる。
【0039】
セタン価向上剤としては、例えば、硝酸エステル及び有機過酸化物があげられる。セタン価向上剤は軽油組成物の全量に対して100〜1500mg/L、好ましくは200〜1000mg/Lとなる量で配合されるのがよい。上記の通り、本発明の軽油組成物は、セタン価向上剤を添加しなくともセタン指数を向上できる。
【0040】
上記各成分を混合して本発明の軽油組成物を調製する方法は、特に制限されるものでなく、従来公知の軽油組成物の製造方法に従えばよい。また、本発明の軽油組成物の用途、使用環境に関しては、例えばディーゼルエンジン等に関する従来公知の方法に従えばよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0042】
下記実施例及び比較例において、軽油組成物の性状は下記の試験方法に準じて評価した値である。尚、下記試験方法は、上述した本発明の詳細な説明の記載においても適用される。
(1)曇り点(℃):JIS K2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」
(2)セタン指数:JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」
(3)密度(g/cm):JIS K2249「原油及び石油製品−密度・質量・容量換算表」
(4)引火点(℃):JIS K2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」
(5)動粘度(mm/s):JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」
(6)流動点(℃):JIS K2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」
(7)目詰まり点(℃):JIS K2288「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」
(8)硫黄含有量(質量ppm):JIS K2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」
(9)芳香族分(vol%):JPI−5S−49「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」
(10)蒸留性状:JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」
(11)ノルマルパラフィン分(質量%):炭素数毎のノルマルパラフィン分は、ガスクロマトグラフ法を用いて測定した。
【0043】
下記実施例及び比較例において使用した基材の密度及び蒸留性状を下記表1〜5に示す。
【0044】



【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
実施例1〜8
上記基材を、下記表6に示す組成及び配合量(容量%)で混合し、軽油組成物を調製した。各軽油組成物に含まれるノルマルパラフィン(炭素数C6〜C30)の炭素数毎の含有量を、軽油組成物の合計質量に対する含有量(質量%)として下記表7に示す。
【0050】
また各軽油組成物について、下記(1)〜(3):
(1)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
(2)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
(3)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
の値を下記表8に記載する。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
【0054】
比較例1〜5
上記基材を、下記表9に示す配合量(容量%)で混合し、軽油組成物を調製した。各軽油組成物に含まれるノルマルパラフィン(炭素数C6〜C30)の、炭素数毎の含有量を、軽油組成物の合計質量に対する含有量(質量%)として下記表10に示す。
【0055】
また各軽油組成物について、下記(1)〜(3):
(1)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数10ないし17を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
(2)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数21ないし30を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
(3)軽油組成物の合計質量に対する、炭素数14ないし24を有するノルマルパラフィンの合計質量(質量%)
の値を下記表11に記載する。
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
上記実施例及び比較例の軽油組成物について、上記した試験方法に従い、各種性状を測定した。結果を下記表12及び13に示す。
【0060】
【表12】
【0061】
【表13】
【0062】
上記表12に示す通り、本発明の軽油組成物は、曇り点が低く、且つ、セタン指数が高い。さらに本発明の軽油組成物は、流動点及び目詰まり点が低い。本発明の軽油組成物は、流動性向上剤並びにセタン価向上剤を添加していなくとも、低温特性の改善とセタン指数の向上を共に達成することができる。