特許第6228971号(P6228971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディミューン,エルエルシーの特許一覧 ▶ メディミューン リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000016
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000017
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000018
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000019
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000020
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000021
  • 特許6228971-CTLA−4バリアント 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228971
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】CTLA−4バリアント
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20171030BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20171030BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20171030BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20171030BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20171030BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20171030BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20171030BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20171030BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C07K14/47ZNA
   C12N15/00 A
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 C
   C07K16/00
   C07K19/00
   A61K38/17
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P25/00
   A61P11/06
   A61P1/04
   A61P37/02
   A61P37/04
【請求項の数】11
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2015-511443(P2015-511443)
(86)(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公表番号】特表2015-523328(P2015-523328A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】US2013030179
(87)【国際公開番号】WO2013169338
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/645,686
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ミンター,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ダウスウェイト,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】モワザン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ボウエン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】プリヴェツェンツェフ,シリル
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−506581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00,19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型CTLA−4の配列番号35と比較して大きいヒトCD80結合親和性、大きい効力および/または大きい安定性を有する単離CTLA−4ポリペプチドであって、配列番号35のバリアントであるアミノ酸配列を含み、前記バリアントは、配列番号35中の以下のアミノ酸突然変異を含む、前記ポリペプチド:
I16におけるR;
A24におけるT;
S25におけるN;
G27におけるS;
L58におけるA;
S70におけるA;
M85におけるQ;および
K93におけるQ。
【請求項2】
野生型CTLA−4の配列番号35と比較して大きいヒトCD80結合親和性、大きい効力および/または大きい安定性を有する単離CTLA−4ポリペプチドであって、アミノ酸配列の配列番号43を含む、前記ポリペプチド。
【請求項3】
野生型CTLA−4(配列番号35)よりも大きいヒトCD86結合親和性を有する、請求項1に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【請求項4】
IgGFcアミノ酸配列にコンジュゲートしている、請求項1に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【請求項5】
前記IgGFcは、Fcエフェクター機能を低減させるように改変されたヒトIgG1Fcであり、天然ヒトIgG1Fcヒンジ領域を含む、請求項4に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【請求項6】
前記IgGFcアミノ酸配列は、配列番号59を含む、請求項4に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【請求項7】
核酸を含有する宿主細胞であって、前記核酸は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のCTLA−4ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、前記宿主細胞。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のCTLA−4ポリペプチド;および
1つ以上の医薬賦形剤
を含む組成物。
【請求項9】
前記CTLA−4ポリペプチドは、配列番号59を含むIgGFcアミノ酸配列にコンジュゲートしている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
配列番号43のCTLA−4ポリペプチドアミノ酸配列突然変異によりさらなるCTLA−4ポリペプチドを産生する方法であって:
アミノ酸配列の配列番号43を含み、またはそれからなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;
1つ以上の突然変異を前記アミノ酸配列中に導入してさらなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;および
前記さらなるCTLA−4ポリペプチドの安定性、親和性および/または効力を試験すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記さらなるCTLA−4ポリペプチドがFc領域にコンジュゲートしている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本出願とともに出願された、ASCIIテキストファイル(名称CTLA4101P1Sequencelisting.txt;サイズ:107,814バイト;および作成日:2012年5月11日)の電子的に提出された配列表の内容は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。
【0002】
本発明は、IgGFcに場合により融合している細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)のバリアントを含む組成物、および特に炎症病態、例えば、関節リウマチ(RA)に関するT細胞活性化を阻害するためのその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ナイーブT細胞の活性化は、2シグナルの機序により進行すると考えられる。抗原提示細胞(APC)と接触時、T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に関するペプチドと相互作用し、したがって第1の活性化シグナルをT細胞に送達する。この初期シグナルは、T細胞活性化をもたらすためには不十分であり、共刺激受容体からの第2のシグナルが絶対要件である。最も重要で、最良に記載された共刺激受容体の1つは、CD28であり、それは、マクロファージ、樹状細胞ならびにBおよび活性化Tリンパ球の表面上のCD80(B7.1)およびCD86(B7.2)と相互作用する。
【0004】
CD86遺伝子は、I型膜タンパク質(Swiss−Protアクセッション番号P33681)をコードする。選択的スプライシングは、異なるアイソフォームをコードするCD86遺伝子の2つの転写物バリアントをもたらす。追加の転写物バリアントが記載されているが、それらの全長配列は決定されていない。
【0005】
関連タンパク質CD80(Swiss−Protアクセッション番号P42081)は、CD86と類似の二次構造を有する。CD80は、CD86とそれぞれ26%および46%の同一および類似アミノ酸残基を共有する。CD80は、休眠APC中で低レベルにおいてのみ発現されるが、活性化後に上方調節され得る。CD80は、T細胞上の同一受容体CD28およびCD152(CTLA−4)を認識するが、それらにはCD86よりも約2から4倍高い親和性で結合する。
【0006】
CD28および/またはCTLA−4への結合を担う共有される直鎖ペプチドエピトープは、同定されていない(Ellis et al.,J Immunol.,156,2700−2709)が、二次構造(CD80およびCD86のIgVシート)中の保存残基は、CTLA−4との相互作用において見出されている(Swartz et al.,Nature,410,604−608)。
【0007】
CD28からのシグナル伝達は、T細胞活性化およびCTLA−4共阻害受容体の上方調節をもたらす。CTLA−4は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA−4は、CD28と比較して増加した親和性およびアビディティーでCD80およびCD86に結合し、活性化シグナルを有効に下方調節する。
【0008】
CTLA−4への結合におけるCD80およびCD86の相対的な役割に関して種々の理論が仮定されている。Slavik et al.(Immunol.Res.19(1):1−24 1999)は、CD28/CTLA−4およびCD80/CD86ファミリーのシグナリングおよび機能を概説している。Sansom(Immunology 101:169−177 2000)は、CD80とCD86との相違を調査したいくつかの試験をまとめた。
【0009】
Odobasic et al.(Immunology 124:503−513 2008)は、エフェクターT細胞応答におけるCD80およびCD86の役割を調査した。この試験は、関節炎の抗原誘導マウスモデルにおける抗CD80および抗CD86モノクローナル抗体の効果を調査した。CD80およびCD86の両方の遮断は、対照抗体処理マウスと比較して低減した疾患重症度に向かう傾向を引き起こすことが報告された。個々の抗体の処理の結果に基づき、著者らは、CD80は、全身性IL−4を下方調節し、関節中のT細胞蓄積を増加させることにより関節炎を悪化させる一方、CD86は、IL−17を上方調節し、関節中のエフェクターT細胞の蓄積を増加させることによりTh1発生にもTh2発生にも影響せずに疾患重症度を向上させることを結論づけた。しかしながら、この試験は、CD80およびCD86の両方が遮断された場合、関節炎重症度のさらなる追加の低減が観察されないことを報告しており、このことは、最大の疾患改善を得るためにいずれかの共刺激分子の阻害が適切であったことを示唆する。このモデルは、関節腔中で直接注射された抗原(この試験においてBSA)に対するリコール応答に基づいた。
【0010】
別の試験は、内因性抗原(コラーゲン)に対する寛容の破壊を含むネズミコラーゲン誘導関節炎モデルを使用した。この試験において、CD80およびCD86の両方の遮断が、最大利益に要求されることが報告された(Webb et al.Eur J.Immunol 26(10):2320−2328 1996)。
【0011】
改変IgG1Fcドメインに結合しているCTLA−4(「CTLA−4−Ig」)の細胞外ドメインを含む組換え融合タンパク質は、CD80およびCD86にインビボで結合し、CD28介在性T細胞活性化を有効に抑制することが示されている(Kliwinski et al.,J Autoimmun.2005;25(3):165−71)。
【0012】
CTLA−4融合タンパク質は、関節リウマチ(RA)用治療剤として開発されている。RAは、軟骨および骨破壊をもたらす進行性変性疾患である。免疫系の多くの武器が、線維芽細胞様滑膜細胞ならびに破骨細胞介在性関節損傷ならびに軟骨および骨破壊をもたらす炎症プロセスに関与する証拠が存在する。複数の試験は、滑膜中の増加したT細胞活性化を示しており、炎症パンヌスに浸潤する細胞の最大50%がTリンパである。さらに、RA患者の滑膜中のT細胞は、活性化関連マーカー、例えば、CD44、CD69、CD45RO、VLA−1およびCD27の増加した発現を示す活性化エフェクター表現型を示す。
【0013】
活性化T細胞は、RA滑膜中で見出される病的炎症応答の樹立および維持における重要な役割を担うことが示されている。活性化T細胞は、炎症促進性サイトカイン、例えば、IFNγ、IL−17およびTNFαの重要な源である。これらの因子は、軟骨破壊のメディエーターであるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の分泌ならびに炎症性メディエーター、例えば、IL−6、IL−1およびTNFαの分泌をもたらす線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)およびマクロファージ様滑膜細胞(MLS)の強力な活性化因子である。活性化CD4+細胞は、疾患進行にさらに寄与する抗体、例えば、リウマチ因子(RF)の産生をもたらすBリンパ球へのコグネイト補助(cognate help)も提供し得る。
【0014】
アバタセプト(Orencia(登録商標))は、IgG1のFcに融合しているCTLA−4の細胞外ドメインを含有するCTLA−4Ig融合タンパク質である。得られる可溶性タンパク質は、約92kDaの分子量を有するダイマーである。これは診療所におけるRA患者の治療において利益効果を有することが示されており、このことは、CD80およびCD86を含む共刺激経路の阻害がRAについての実行可能な治療アプローチであることを実証する。アバタセプトによるRA治療は、静脈内の月1回または週1回の皮下注射のいずれかとして施される。
【0015】
アバタセプトは、そのCDR3様ループ中で、CD28とCTLA−4との間で共有され、B7リガンドへの結合に必要であると報告されているアミノ酸ヘキサペプチドモチーフMYPPPYを含有する。このモチーフ中の最初のチロシン(Y)のアラニン(A)への突然変異は、CD80への結合を消失させるが、CD86への結合の低減ももたらす一方、フェニルアラニン(F)置換は、CD86結合の全損と共に、完全なCD80親和性の保持を可能とする(Harris et al.,J.Exp.Med.(1997)185:177−182)。CDR3様およびCDR1様領域中の他の残基も、アバタセプトとそのリガンドとの相互作用に重要である。したがって、104位におけるロイシン(L)に代えてグルタミン酸(E)を有し、29位におけるアラニン(A)に代えてチロシン(Y)を有する突然変異分子は、アバタセプトよりも約2倍大きいCD80(B7−1)結合アビディティーおよび約4倍大きいCD86(B7−2)結合アビディティーを示す。この化合物LEA−29Y(ベラタセプト、Nulojix(登録商標))は、CD80結合に対しCD86結合と類似の親和性(それぞれ、3.66nMおよび3.21nM)を有することが報告されている。ベラタセプトは、移植用の免疫抑制剤として開発されており(Larsen et al.,Am.J.Transplantation(2005)5:443−453;Gupta & Womer Drug Des Develop Ther 4:375−382 2010)、近年、腎臓移植を受ける成人患者における臓器拒絶の予防について承認された。アバタセプト自体は、移植片拒絶に対して限定された有効性を示し、これは、CD80依存性共刺激とは異なりCD86依存性共刺激のその低い阻害に起因する知見である(Gupta & Womer、前掲)。
【0016】
皮下投与用のアバタセプトおよびベラタセプトの配合は、国際公開第2007/07654号パンフレットに記載されている。
【0017】
改善された親和性および安定性の選択は、CTLA−4の改善されたバリアントを単離するリボソームディスプレイを使用して既に実施されている。遺伝子配列全体を突然変異させるエラープローンPCR突然変異誘発、および突然変異を重要な領域に標的化する位置指定突然変異誘発の両方が、タンパク質進化について成功している。例えば、国際公開第2008/047150号パンフレットは、野生型と比較して増加した活性および増加した安定性を示すCTLA−4のタンパク質バリアントを報告した。
【0018】
Maxygen,Inc.は、RAの治療のためにPerseid Therapeutics LLCとAstellas Pharma Incにより共同開発され、ASP2408と命名されたCTLA−4−Ig治療分子を報告した。このCTLA−4−Igは、Orencia(登録商標)(アバタセプト)と比較して改善された効力を示すことが報告された(国際公開第2009/058564号パンフレット)。
【0019】
米国特許第6,750,334号明細書(Repligen Corporation)は、免疫グロブリンの一部に融合しているCTLA−4を含む可溶性融合タンパク質のCTLA−4−Cγ4を記載した。ヒンジ領域ならびにCH2およびCH3ドメインを含む免疫グロブリン定常領域は、補体活性化またはFc受容体相互作用を低減するように少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、付加または欠失により改変されている。
【0020】
Xencor,Inc.は、近年、バリアントCTLA−4部分および免疫グロブリンFc領域を含むCTLA4−Ig分子を記載した(国際公開第2011/103584号パンフレット)。より大きいT細胞阻害活性を有するCTLA4−Igバリアントを生成するためのCTLA−4部分のアミノ酸配列中の多数のアミノ酸置換が記載された。国際公開第2011/103584号パンフレットは、例えば、FcγRへの結合を改善するため、Fc介在性エフェクター機能を向上させるため、および/またはCTLA4−Igのインビボ半減期を延長させるためのFc改変も記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2007/07654号
【特許文献2】国際公開第2008/047150号
【特許文献3】国際公開第2009/058564号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Swartz et al.,Nature,410,604−608
【非特許文献2】Odobasic et al.,Immunology 124:503−513 2008
【非特許文献3】Sansom.,Immunology 101:169−177 2000
【非特許文献4】Webb et al.,Eur J.Immunol 26,10:2320−2328 1996
【非特許文献5】Kliwinski et al.,J Autoimmun.2005;25(3):165−71
【非特許文献6】Harris et al.,J.Exp.Med.(1997)185:177−182
【非特許文献7】Larsen et al.,Am.J.Transplantation(2005)5:443−453
【非特許文献8】Gupta & Womer Drug Des Develop Ther 4:375−382 2010
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の態様において、本発明は、野生型CTLA−4のバリアントであるCTLA−4ポリペプチドを提供する。本発明のCTLA−4ポリペプチドは、1つ以上の改善された特性、例えば、野生型よりも高い効力、高いCD80および/もしくはCD86親和性、向上したCD86を上回るCD80選択性、良好な交差反応性、ならびに/または高い安定性を有し得る。
【0024】
CTLA−4の改善は、可溶性CTLA−4としても公知のヒト野生型ヒトCTLA−4細胞外ドメインのアミノ酸配列の突然変異により達成することができる。アミノ酸置換、挿入または欠失であり得る1つ以上のアミノ酸突然変異をCTLA−4アミノ酸配列中に導入して本明細書に記載の改善されたCTLA−4ポリペプチドを産生することができる。ポリペプチドは、例えば、野生型CTLA−4に対して増加した効力、親和性および/または安定性を示し得る。
【0025】
CTLA−4細胞外ドメインは、野生型アミノ酸配列の配列番号35を含む。配列番号35は、細胞外ドメイン全体ではなく、アバタセプト(Orencia(登録商標))において用いられる領域である。
【0026】
本発明のCTLA−4ポリペプチドは、さらなるCTLA−4残基または配列番号35に対応する領域外の配列を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、本発明のCTLA−4ポリペプチドは可溶性である。したがって、一般に、それは、CTLA−4膜貫通領域を含まない。
【0027】
本発明において、改善された効力、親和性および/もしくは安定性に関連し、または他の目的のため、例えば、ダイマー化に影響を与えるために導入することができるCTLA−4アミノ酸配列内の多数の突然変異が同定される。
【0028】
野生型CTLA−4中のアミノ酸置換の例は:I16におけるR、S、VまたはT;A24におけるT;S25におけるNまたはP;G27におけるS;V32におけるI;D41におけるG;S42におけるG;V44におけるE;M54におけるKまたはV;N56におけるSまたはG;L58におけるA、G、SまたはP;T59におけるSまたはA;F60におけるT;L61におけるQまたはP;D62におけるG;D63におけるY;S64におけるP;I65におけるN、D、VまたはT;S70におけるA、T、MまたはH;Q80におけるR;M85におけるQ、S、V、R、KまたはL;T87におけるS;K93におけるQ、H、T、EまたはM;L104におけるR、QまたはE;I106におけるV;N108におけるDまたはS;I115におけるVまたはFおよびC120におけるSである。アミノ酸欠失の一例は、T51の欠失である。残基ナンバリングは、図1Aおよび図2に示されるCTLA−4配列に準拠し、最初の残基を1位の「配列ナンバリング」としてナンバリングする。図1は、比較のためのSwiss Protナンバリングも示す。
【0029】
CTLA−4バリアントは、例えば、ヒト野生型可溶性CTLA−4中の最大12または最大20のアミノ酸突然変異を有し得る。突然変異としては、上記列記のアミノ酸突然変異のいずれかまたは全て、および場合により1つ以上の異なる突然変異、例えば、それらまたは他の残基位置における異なる置換を挙げることができる。バリアントアミノ酸配列は、列記のアミノ酸突然変異の1つ以上、例えば、少なくとも5、6または7つを有するヒト野生型CTLA−4配列の配列番号35を含み得る。
【0030】
CTLA−4ポリペプチドは、配列番号35と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。
【0031】
本発明によるCTLA−4バリアントアミノ酸配列の例としては、図1Aに示される配列番号36〜55のものが挙げられる。CTLA−4バリアントは、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる「1299」CTLA−4アミノ酸配列を含み得る。NCIMBアクセッション番号41948は、免疫グロブリンFc領域に融合している1299CTLA−4ポリペプチドをコードする。コードされる1299CTLA−4ポリペプチド、コードされるFc領域、およびFc領域に融合している1299CTLA−4ポリペプチドを含むコードされるポリペプチドは、その全てがNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされ、全て本発明の個々の実施形態である。
【0032】
好ましい突然変異は、以下から選択されるアミノ酸置換である:I16におけるR、SまたはV;A24におけるT;S25におけるN;G27におけるS;M54におけるK;N56におけるS;L58におけるAまたはG;T59におけるS;F60におけるT;L61におけるQ;D63におけるY;S64におけるP;I65におけるNまたはD;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるQまたはS;K93におけるQまたはH;およびC120におけるS。したがって、バリアントアミノ酸配列は、規定の異なる残基により置換されているそれらのアミノ酸残基位置の1つ以上、例えば、少なくとも5または6つ、または全てを有するヒト野生型CTLA−4配列の配列番号35を含み得る。
【0033】
CTLA−4ポリペプチド配列は、好ましくは、16位におけるR、I、SもしくはV;24位におけるTもしくはA;25位におけるN;27位におけるSもしくはG;54位におけるMもしくはK;56位におけるNもしくはS;58位におけるA、LもしくはG;59位におけるTもしくはS;60位におけるFもしくはT;61位におけるLもしくはQ;63位におけるDもしくはY;64位におけるSもしくはP;65位におけるI、NもしくはD;70位におけるAもしくはS;80位におけるQもしくはR;85位におけるQ、MもしくはS;93位におけるQもしくはH;および/または120位におけるCもしくはSを含む。他の残基位置は、ヒト野生型であり得、または1つ以上のさらなる突然変異を受けていてよい。
【0034】
CTLA−4ポリペプチドは、25位におけるNを含み得、この位置における野生型Sの置換を表す。ポリペプチドは、93位におけるQまたはHを含み得、この位置における野生型Kの置換を表す。下記の実施例により説明されるとおり、残基25および93におけるこれらの置換は、CTLA−4の親和性、効力および/または安定性の改善に強力に関連すると考えられる。
【0035】
複数の高い効力のバリアントにおいて観察された好ましいアミノ酸モチーフは、STQDYPN(配列番号69)である。このモチーフは、残基59〜65において位置し、結合構造中でCD80およびCD86に近接すると思われるループ領域中に存在する。したがって、ある実施形態において、CTLA−4ポリペプチドは、残基59〜65における配列番号69を含む。残基ナンバリングは、図1A(1から始まる上行のナンバリング)および図2に示されるとおりである。挿入または欠失が存在する場合、ポリペプチドの実際の残基ナンバリングは、参照配列とは異なり得る。図1Aは、比較のためのSwiss Protナンバリングも示す。
【0036】
120位におけるCを、例えば、Sによる置換により突然変異させ、この位置におけるCTLA−4分子間で形成するジスルフィド架橋を除去し、CTLA−4ダイマー化を阻害することが望ましいこともある。他の状況において、CTLA−4ダイマー化またはより高次のマルチマー化(例えば、テトラマー形成)を保持または増進することが望ましい。このことは、例えば、C120の保持を介しておよび/または例えばIgGFc領域へのCTLA−4のコンジュゲーションによるダイマー化ドメインの付加を介して達成することができる。そのようなドメインの付加およびCTLA−4を含む巨大分子の形成は、さらに以下に考察される。
【0037】
CTLA−4ポリペプチドは、アミノ酸配列の配列番号68を含み得、または1つ以上の突然変異を有する配列番号68を含み得る。例えば、CTLA−4ポリペプチドは、最大12の突然変異、最大10のアミノ酸突然変異、または最大5つの突然変異、例えば、1、2または3つのアミノ酸突然変異を有する配列番号68を含み得る。配列番号68は、図2に説明され、実施例に記載のとおり産生された、非常に良好な機能活性を有する6つのCTLA−4ポリペプチドのグループ中で見出される残基のコンセンサス配列である。6つのポリペプチドは図1Aに示されるアミノ酸配列を有し、配列番号は以下のとおりである:配列番号43(バリアント1299)、配列番号37(バリアント1322)、配列番号38(バリアント1321)、配列番号36(バリアント1315)、配列番号42(バリアント1115)および配列番号47(バリアント1227)。これらの6つの配列、およびそれらの6つの配列のいずれかの中の1つ以上のアミノ酸突然変異、例えば、最大12、例えば、最大10のアミノ酸突然変異、例えば、最大5つの突然変異、例えば、1、2または3つのアミノ酸突然変異を有するバリアントは、本発明の例を表す。CTLA−4ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸突然変異、例えば、最大12、例えば、最大10のアミノ酸突然変異、例えば、最大5つの突然変異、例えば、1、2または3つのアミノ酸突然変異を有するNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された「1299」CTLA−4ポリペプチド配列を含み得る。
【0038】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、配列番号68と、配列番号36〜55のいずれかと、またはNCIMBアクセッション番号41948のもの寄託された「1299」CTLA−4ポリペプチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。
【0039】
突然変異は、アミノ酸置換を含み、またはそれからなっていてよく、場合により以下から選択することができる。
【0040】
残基16におけるT;残基25におけるP;残基32におけるI;残基41におけるG;残基42におけるG;残基44におけるE;残基54におけるV;残基56におけるG;残基58におけるSまたはP;残基59におけるA;残基61におけるP;残基62におけるG;残基65におけるVまたはT;残基70におけるT、MまたはH;残基85におけるV、R、KまたはL;残基87におけるS;残基93におけるT、EまたはM;残基104におけるR、QまたはE;残基106におけるV;残基108におけるDまたはS;残基115におけるVまたはF;残基120におけるS;残基51における欠失。
【0041】
好ましくは、ポリペプチドは、25位におけるNを含み、および/または93位におけるQもしくはHを含む。ポリペプチドは、120位におけるSを場合により含み得る。
【0042】
上記のとおり、ポリペプチドは、好ましくは、16位におけるR、I、SもしくはV;24位におけるTもしくはA;25位におけるN;27位におけるSもしくはG;54位におけるMもしくはK;56位におけるNもしくはS;58位におけるA、LもしくはG;59位におけるTもしくはS;60位におけるFもしくはT;61位におけるLもしくはQ;63位におけるDもしくはY;64位におけるSもしくはP;65位におけるI、NもしくはD;70位におけるAもしくはS;80位におけるQもしくはR;85位におけるQ、MもしくはS;93位におけるQもしくはH;および/または120位におけるCもしくはSを含む。したがって、ポリペプチドは、野生型CTLA−4の配列番号35に対する以下のアミノ酸置換の1つ以上、例えば、少なくとも5または6つ、または全てを含む:I16におけるR、SまたはV;A24におけるT;S25におけるN;G27におけるS;M54におけるK;N56におけるS;L58におけるAまたはG;T59におけるS;F60におけるT;L61におけるQ;D63におけるY;S64におけるP;I65におけるNまたはD;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるQまたはS;K93におけるQまたはH。
【0043】
野生型と比較した配列番号36〜55中の突然変異は、図1Aに説明される。本発明によるポリペプチドは、バリアント中で例示される1つ以上の突然変異、例えば、配列番号36〜55のいずれかに存在する突然変異の組合せを有する野生型CTLA−4の配列番号35を含み得る。ポリペプチドは、上記のさらなる突然変異、例えば、場合により1または2つのさらなる突然変異を場合により含み得る。
【0044】
例えば、ポリペプチドは、以下から選択される突然変異の組合せを含み得る:
− 1315突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;L58におけるG;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるS;およびK93におけるQ;
− 1322突然変異、すなわち、S25におけるN;G27におけるS;M54におけるK;N56におけるS;T59におけるS;F60におけるT;L61におけるQ;D63におけるY;S64におけるP;I65におけるN;およびK93におけるQ;
− 1321突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;M54におけるK;L58におけるG;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるS;およびK93におけるQ;
− 1115突然変異、すなわち、I16におけるV;S25におけるN;L58におけるG;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるQ;
− 1299突然変異、すなわち、I16におけるR;A24におけるT;S25におけるN;G27におけるS;L58におけるA;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるQ;ならびに
− 1227突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;G27におけるS;L58におけるA;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるH。
【0045】
したがって、CTLA−4ポリペプチドは、野生型に対する配列番号36〜55のいずれかの置換残基の組合せを含むものであり得、例えば、それは、以下を含み得る:
− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基58におけるG;残基70におけるA;残基80におけるR;残基85におけるS;および残基93におけるQ;
− 残基25におけるN;残基27におけるS;残基54におけるK;残基56におけるS;残基59におけるS;残基60におけるT;残基61におけるQ;残基63におけるY;残基64におけるP;残基65におけるN;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基54におけるK;残基58におけるG;残基70におけるA;残基80におけるR;残基85におけるS;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるV;残基25におけるN;残基58におけるG;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるR;残基24におけるT;残基25におけるN;残基27におけるS;残基58におけるA;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるQ;または
− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基27におけるS;残基58におけるA;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるH。
【0046】
突然変異は、好ましくは、置換であり、保存的置換であり得る。「保存的置換」は、第1および第2のアミノ酸残基が類似の生物物理学的特徴を有する側鎖を有する、第1のアミノ酸残基の第2の異なるアミノ酸残基による置換を意味する。類似の生物物理学的特徴としては、疎水性、電荷、極性または水素結合を提供もしくは許容する能力が挙げられる。保存的置換の例としては、セリンのトレオニンまたはトリプトファンへの変化、グルタミンのアスパラギンへの変化、リジンのアルギニンへの変化、アラニンのバリンへの変化、アスパラギン酸のグルタミン酸への変化、バリンのイソロイシンへの変化、アスパラギンのセリンへの変化が挙げられる。
【0047】
本発明によるポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸配列突然変異(アミノ酸残基の置換、欠失、および/または挿入)を含み得、約15 14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2つ未満のアミノ酸配列突然変異を含み得る。
【0048】
突然変異は、通常、機能の損失をもたらさないため、そうして変化したアミノ酸配列を含むポリペプチドは、ヒトCD80および/またはCD86への結合能を保持し得る。それは、例えば、本明細書に記載のアッセイにおいて計測されたときに、変化がなされていないポリペプチドと同一の結合親和性または機能を保持し得る。
【0049】
突然変異は、1つ以上のアミノ酸残基を、非天然存在もしくは非標準アミノ酸により置き換えること、1つ以上のアミノ酸残基を非天然存在もしくは非標準形態に改変すること、または1つ以上の非天然存在もしくは非標準アミノ酸を配列中に挿入することを含み得る。本発明の配列中の変化の数および場所の例は、本明細書の他箇所において記載される。天然存在アミノ酸としては、それらの標準1文字コードにより、G、A、V、L、I、M、P、F、W、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D、Eとして識別される、20の「標準」L−アミノ酸が挙げられる。非標準アミノ酸としては、ポリペプチド骨格中に取り込むことができる任意の他の残基が挙げられ、またはそれは既存のアミノ酸残基の改変から生じる。非標準アミノ酸は、天然存在でも非天然存在でもよい。いくつかの天然存在非標準アミノ酸は当分野において公知であり、例えば、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、3−メチルヒスチジン、N−アセチルセリンなどである[Voet & Voet,Biochemistry,2nd Edition,(Wiley)1995]。N−アルファ位において誘導体化されているアミノ酸残基は、アミノ酸配列のN末端のみにおいて局在する。通常、本発明において、アミノ酸は、L−アミノ酸であるが、D−アミノ酸であってもよい。したがって、変化は、L−アミノ酸をD−アミノ酸に改変すること、またはL−アミノ酸をD−アミノ酸により置き換えることを含み得る。アミノ酸のメチル化、アセチル化および/またはリン酸化形態も公知であり、本発明のアミノ酸はそのような改変を受けていてよい。
【0050】
本発明のポリペプチド中のアミノ酸配列は、上記の非天然または非標準アミノ酸を含み得る。非標準アミノ酸(例えば、D−アミノ酸)は、合成の間、またはアミノ酸配列の合成後に「元の」標準アミノ酸の改変もしくは置換によりアミノ酸配列中に取り込むことができる。
【0051】
非標準および/または非天然存在アミノ酸の使用は、構造的および機能的多様性を増加させ、したがって、所望の結合および中和特性を達成する潜在性を増加させ得る。さらに、D−アミノ酸および類似体は、動物、例えば、ヒトへの投与後に、L−アミノ酸を有するポリペプチドのインビボ分解により、標準L−アミノ酸と比較して異なる薬物動態プロファイルを有することが示されており、このことは、D−アミノ酸が一部のインビボ用途に有利であることを意味する。
【0052】
バリアントは、1つ以上の選択されたVHおよび/またはVL遺伝子のランダム突然変異誘発を使用して可変ドメイン全体内の突然変異を生成することにより生成することができる。そのような技術は、エラープローンPCRを使用したGram et al.[Gram et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3576−3580]により記載されている。使用することができる別の方法は、突然変異誘発をポリペプチド中の特定の領域または場所に指向することである。そのような技術はBarbas et al.[Barbas et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809−3813]およびSchier et al.[Schier et al.,1996,J.Mol.Biol.263:551−567]により開示されている。
【0053】
上記の技術は全て、当分野において自体公知であり、当業者は、そのような技術を使用し、当分野における定型的な方法を使用して本発明のポリペプチドを提供することができる。
【0054】
2つのアミノ酸配列の%同一性を計算するために使用することができるアルゴリズムとしては、例えば、デフォルトのパラメーターを用いる、例えば、BLAST[Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:405−410]、FASTA[Pearson and Lipman(1988)PNAS USA 85:2444−2448]、またはSmith−Watermanアルゴリズム[Smith and Waterman(1981)J.Mol Biol.147:195−197]が挙げられる。
【0055】
本発明によれば、改善された生物学的活性、例えば、野生型CTLA−4と比較して向上したCD86を上回るCD80選択性、より高い親和性および/もしくはより高い効力を有し、ならびに/または良好な交差反応性、改善された安定性および/もしくは延長された半減期を示し得るCTLA−4ポリペプチドを含有する組成物を提供することができる。本明細書において詳細に考察されるとおり、そのような特性は、より大きい治療有効性に寄与し得、低減またはより低頻度の投与量における治療利益の達成を可能とし得る。改善された安定性は、医薬組成物への製造および配合を促進し得る。
【0056】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、例えば、融合タンパク質としてIgGFc領域に場合によりコンジュゲートしている。Fc領域は、分子のインビボ半減期を増加させ、組成物の全体安定性に寄与する一方、不所望なFcエフェクター機能を回避するように設計することができる。改善された安定性は、例えば、皮下投与用の高濃度における産物の配合を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】(A)CTLA−4バリアント配列(配列番号36〜55)と野生型ヒトCTLA−4(配列番号35)とのアラインメント。野生型からの突然変異を灰色の枠において示す。1から始まる上行のナンバリングは、特に記載のない限り、本明細書において称されるナンバリングである。Swiss Protナンバリングを比較のために下方に示す。(B)IgG1Fc配列の配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59および配列番号60のアラインメント。1から始まる上行のナンバリングは、特に記載のない限り、本明細書において称されるナンバリングである。Swiss Protナンバリングを比較のために下方に示す。
図2】CTLA−4ポリペプチド配列の配列番号68。1位としてのMetから始まる連続ナンバリングを用いると、配列番号68は、124残基を有し、残基16、24 27、54、56、58、59、60、61、63、64、65、70、80、85および93における変異性を有する。これらの変異位置のそれぞれにおけるアミノ酸残基は、それぞれの例において示される残基からなる群から選択される。
図3】(A)Raji−Jurkat二重細胞アッセイ;(B)プライマリーヒトCD4+T細胞アッセイ;(C)カニクイザル混合リンパ球反応アッセイにおける、CTLA−4バリアントおよびFc融合フォーマットの野生型CTLA−4のIC50プロファイル。
図4】他の関連タンパク質リガンドと比較したCD80およびCD86についてのCTLA−4バリアントの特異性。(A)バリアント1299。(B)バリアント1322。
図5】TMおよびYTE改変を有するCTLA−4バリアントについてのエフェクター機能(ADCCおよびCDC)の無効化の実証。(A)ADCC。(B)CDC。
図6】Fc融合フォーマットの野生型CTLA−4と比較したCTLA−4バリアントのCD80およびCD86に対する一価親和性の改善。
図7】(A)テトラマーCTLA−4タンパク質のための構築物設計。(B)テトラマーCTLA−4と、Fc融合フォーマットの野生型CTLA−4とのRaji Jurkatアッセイにおける効力比較。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書全体で使用されるCTLA−4残基のナンバリングは、特に記載のない限り、図1A(上行、配列ナンバリング)および図2に示されるとおりである。CTLA−4は、開裂されるリーダー配列を有し、成熟タンパク質の少なくとも2つの異なるナンバリング系が考えられる。CTLA−4配列は、とりわけ、1位におけるAla(米国特許第5,434,131号明細書)から、または1位におけるMet(Larsen et al.,Am.J.Transplantation(2005)5:443−453)から始まり得る。文脈が特に明示しない限り、本明細書において使用されるナンバリング系は、1位がMetであるものである。これは、製品アバタセプトの残基を指すために一般に使用されるナンバリングにも対応する。
【0059】
本明細書全体で使用されるFc残基のナンバリングは、特に記載のない限り、図1B(上行、1から始まる)に示されるとおりである。
【0060】
以下のナンバリングされた項は、本発明の態様を表す。
【0061】
1.野生型CTLA−4の配列番号35と比較して大きいヒトCD80結合親和性、大きい効力および/または大きい安定性を有する単離CTLA−4ポリペプチドであって、配列番号35のバリアントであるアミノ酸配列を含み、前記バリアントは、配列番号35中の以下のアミノ酸突然変異の5つ以上を含むポリペプチド:
I16におけるR、S、VまたはT;
A24におけるT;
S25におけるNまたはP;
G27におけるS;
V32におけるI;
D41におけるG;
S42におけるG;
V44におけるE;
M54におけるK;
N56におけるSまたはG;
L58におけるA、G、SまたはP;
T59におけるSまたはA;
F60におけるT;
L61におけるQまたはP;
D62におけるG;
D63におけるY;
S64におけるP;
I65におけるN、D、VまたはT;
S70におけるA、T、MまたはH;
Q80におけるR;
M85におけるQ、S、V、R、KまたはL;
T87におけるS;
K93におけるQ、H、T、EまたはM;
L104におけるR、QまたはE;
I106におけるV;
N108におけるDまたはS;
I115におけるVまたはF;
C120におけるS;
T51における欠失。
【0062】
2.配列番号35と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、項1に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0063】
3.以下のアミノ酸突然変異の5つ以上を含む、項1または2に記載のCTLA−4ポリペプチド:
I16におけるR、SまたはV;
A24におけるT;
S25におけるN;
G27におけるS;
M54におけるK;
N56におけるS;
L58におけるAまたはG;
T59におけるS;
F60におけるT;
L61におけるQ;
D63におけるY;
S64におけるP;
I65におけるNまたはD;
S70におけるA;
Q80におけるR;
M85におけるQまたはS;
K93におけるQまたはH;
C120におけるS。
【0064】
4.置換S25NまたはS25Pを含む、項1または2に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0065】
5.置換S25N、K93QまたはK93Hを含む、項1〜3のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0066】
6.配列番号36〜55のいずれかと少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは98%同一であるアミノ酸配列、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、98もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む、項1〜5のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0067】
7.残基59〜65におけるアミノ酸モチーフの配列番号69を含み、前記残基ナンバリングは、配列番号35に準拠する、項1〜6のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0068】
8.以下から選択される突然変異の組合せを含む、項1〜6のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド:
− 1315突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;L58におけるG;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるS;およびK93におけるQ;
− 1322突然変異、すなわち、S25におけるN;G27におけるS;M54におけるK;N56におけるS;T59におけるS;F60におけるT;L61におけるQ;D63におけるY;S64におけるP;I65におけるN;およびK93におけるQ;
− 1321突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;M54におけるK;L58におけるG;S70におけるA;Q80におけるR;M85におけるS;およびK93におけるQ;
− 1115突然変異、すなわち、I16におけるV;S25におけるN;L58におけるG;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるQ;
− 1299突然変異、すなわち、I16におけるR;A24におけるT;S25におけるN;G27におけるS;L58におけるA;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるQ;ならびに
− 1227突然変異、すなわち、I16におけるS;S25におけるN;G27におけるS;L58におけるA;S70におけるA;M85におけるQ;およびK93におけるH。
【0069】
9.配列番号36〜55から選択されるアミノ酸配列を含み、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、または最大10のアミノ酸突然変異を有するそれらの配列のいずれかのバリアントを含む、項1〜8のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0070】
10.配列番号36〜55から選択されるアミノ酸配列を含み、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、または最大5つのアミノ酸突然変異を有するそれらの配列のいずれかのバリアントを含む、項1〜9のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0071】
11.配列番号36〜55から選択されるアミノ酸配列を含み、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、または最大3つのアミノ酸突然変異を有するそれらの配列のいずれかのバリアントを含む、項10に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0072】
12.配列番号36〜55から選択されるアミノ酸配列を含み、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含む、項1または2に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0073】
13.配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42、配列番号47から選択されるアミノ酸配列、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含む、項12に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0074】
14.野生型CTLA−4の配列番号35と比較して大きいヒトCD80結合親和性、大きい効力および/または大きい安定性を有する単離CTLA−4ポリペプチドであって、
(i)アミノ酸配列の配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42もしくは配列番号47;
(ii)最大10のアミノ酸突然変異を含有する(i)のバリアントであるアミノ酸配列(残基25は、突然変異しておらず、Nである);
(iii)1つ以上のアミノ酸突然変異を含む(i)のバリアントであるアミノ酸配列(残基25は、突然変異しておらず、Nであり、前記バリアントは、(i)と少なくとも70%の配列同一性を有する);または
(iv)NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列
を含むポリペプチド。
【0075】
15.配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42もしくは配列番号47、または最大5つのアミノ酸突然変異を有するそれらの配列のいずれかのバリアントを含む、項14に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0076】
16.配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42もしくは配列番号47、または最大3つのアミノ酸突然変異を有するそれらの配列のいずれかのバリアントを含む、項15に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0077】
17.配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42または配列番号47と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項14に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0078】
18.配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42または配列番号47と少なくとも90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項17に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0079】
19.50nM以下のヒトCD80結合親和性を有し、前記親和性は、表面プラズモン共鳴により決定されるKである、項1〜18のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0080】
20.20nM以下のヒトCD80結合親和性を有し、前記親和性は、表面プラズモン共鳴により決定されるKである、項19に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0081】
21.野生型CTLA−4(配列番号35)よりも大きいヒトCD86結合親和性を有する、項1〜20のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0082】
22.− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基58におけるG;残基70におけるA;残基80におけるR;残基85におけるS;および残基93におけるQ;
− 残基25におけるN;残基27におけるS;残基54におけるK;残基56におけるS;残基59におけるS;残基60におけるT;残基61におけるQ;残基63におけるY;残基64におけるP;残基65におけるN;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基54におけるK;残基58におけるG;残基70におけるA;残基80におけるR;残基85におけるS;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるV;残基25におけるN;残基58におけるG;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるQ;
− 残基16におけるR;残基24におけるT;残基25におけるN;残基27におけるS;残基58におけるA;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるQ;または
− 残基16におけるS;残基25におけるN;残基27におけるS;残基58におけるA;残基70におけるA;残基85におけるQ;および残基93におけるH
を含む、項14〜21のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0083】
23.最大3つのアミノ酸突然変異を有するアミノ酸配列の配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42または配列番号47を含む、項14〜22のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0084】
24.16位におけるR、I、SまたはV;24位におけるTまたはA;27位におけるSまたはG;54位におけるMまたはK;56位におけるNまたはS;58位におけるA、LまたはG;59位におけるTまたはS;60位におけるFまたはT;61位におけるLまたはQ;63位におけるDまたはY;64位におけるSまたはP;65位におけるI、NまたはD;70位におけるAまたはS;80位におけるQまたはR;85位におけるQ、MまたはS;93位におけるQまたはH;および120位におけるCまたはSを含む、項14〜18のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0085】
25.前記アミノ酸突然変異は、以下から選択される、項14〜18のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド:残基16における置換T;残基32における置換I;残基41における置換G;残基42における置換G;残基44における置換E;残基56における置換G;残基58における置換SまたはP;残基59における置換A;残基61における置換P;残基62における置換G;残基65における置換VまたはT;残基70における置換T、MまたはH;残基85における置換V、R、KまたはL;残基87における置換S;残基93における置換T、EまたはM;残基104における置換R、QまたはE;残基106における置換V;残基108における置換DまたはS;残基115における置換VまたはF;残基120における置換S;残基51における欠失。
【0086】
26.アミノ酸配列の配列番号68、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42もしくは配列番号47を含み、またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含む、項14に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0087】
27.CD86結合親和性よりも少なくとも10倍大きいCD80結合親和性を有する単離CTLA−4ポリペプチド。
【0088】
28.CD86結合親和性よりも少なくとも50倍大きいCD80結合親和性を有する、項27に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0089】
29.項1〜26のいずれかに定義される、項27または28に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0090】
30.IgGFcアミノ酸配列にコンジュゲートしている、項1〜29のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0091】
31.前記IgGFcは、Fcエフェクター機能を低減させるように改変されたヒトIgG1Fcであり、天然ヒトIgG1Fcヒンジ領域を含む、項30に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0092】
32.前記IgGFcアミノ酸配列は、以下の残基群の一方または両方が以下のとおり置換されているヒトIgG1Fc領域を含む、項30または31に記載のCTLA−4ポリペプチド:
残基20におけるF;残基21におけるE;残基117におけるS;および
残基38におけるY、残基40におけるT、残基42におけるE
(前記残基ナンバリングは、配列番号56に準拠して定義される)。
【0093】
33.前記IgGFcアミノ酸配列は、配列番号59を含む、項30〜32のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0094】
34.NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA−4−Igアミノ酸配列を含む、単離CTLA−4ポリペプチド。
【0095】
35.マルチマーである、項1〜34のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0096】
36.ダイマーである、項35に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0097】
37.テトラマーである、項35に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0098】
38.前記テトラマーは、CTLA−4ポリペプチドの2つのペアを含み、それぞれのペアは、抗体軽鎖定常領域に融合しているCTLA−4ポリペプチドおよび抗体重鎖定常領域に融合しているCTLA−4ポリペプチドを含む、項37に記載のCTLA−4ポリペプチド。
【0099】
39.核酸を含有する宿主細胞であって、前記核酸は、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された1299CTLA−4−Ig核酸配列を含む宿主細胞。
【0100】
40.項1〜39のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド;および
1つ以上の医薬賦形剤
を含む組成物。
【0101】
41.IgGFcアミノ酸配列にコンジュゲートしているアミノ酸配列の配列番号68、配列番号43、配列番号47、配列番号38、配列番号36、配列番号42 配列番号47またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含むCTLA−4ポリペプチド;および
1つ以上の医薬賦形剤
を含む組成物。
【0102】
42.前記CTLA−4ポリペプチドは、配列番号59を含むIgGFcアミノ酸配列にコンジュゲートしている、項40または41に記載の組成物。
【0103】
43.IgGFcにコンジュゲートしている前記CTLA−4ポリペプチドは、アミノ酸配列の配列番号13、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15または配列番号16を含む、項42に記載の組成物。
【0104】
44.NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA−4−Igポリペプチドおよび1つ以上の医薬賦形剤を含む組成物。
【0105】
45.少なくとも70mg/mlの濃度で前記CTLA−4ポリペプチドを含む、項40〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【0106】
46.少なくとも100mg/mlの濃度で前記CTLA−4ポリペプチドを含む、項45に記載の組成物。
【0107】
47.皮下または静脈内投与による患者の治療方法における使用のための、項1〜38のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド、または項40〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【0108】
48.関節リウマチ、多発性硬化症、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデスまたは移植片拒絶の治療方法における使用のための、項1〜38のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド、または項40〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【0109】
49.項1〜38のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチドまたは項40〜46のいずれか一項に記載の組成物を患者に28日間隔において投与することを含む治療方法における使用のための、項1〜38のいずれか一項に記載のCTLA−4ポリペプチド、または項40〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【0110】
50.配列番号36〜55から選択されるCTLA−4ポリペプチドアミノ酸配列またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列の突然変異によりさらなるCTLA−4ポリペプチドを産生する方法であって:
アミノ酸配列の配列番号36〜55またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、またはそれからなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;
1つ以上の突然変異を前記アミノ酸配列中に導入してさらなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;
前記さらなるCTLA−4ポリペプチドの安定性、親和性および/または効力を試験すること;ならびに
前記さらなるCTLA−4ポリペプチドを、1つ以上の医薬賦形剤を含む組成物に配合すること
を含む方法。
【0111】
51.前記さらなるCTLA−4ポリペプチドがFc領域にコンジュゲートしている、項50に記載の方法。
【0112】
生物学的効力
可溶性CTLA−4は、Tリンパ球の表面上で発現されたCD28と競合し、阻害がなければTリンパ球の共刺激および活性化をもたらすCD28へのリガンドCD80(B7.1)およびCD86(B7.2)の結合を阻害する。したがって、可溶性CTLA−4は、Tリンパ球の活性化を阻害する。外因性可溶性CTLA−4によるこの阻害の効力は、インビトロアッセイにおいて測定することができる。CTLA−4は、例えば、融合タンパク質として別の分子に場合によりコンジュゲートしていてよい。例えば、IgGFcが、本明細書の他箇所において記載のとおり存在し得る。アッセイを使用し、野生型CTLA−4(状況に応じて、Fcに場合によりコンジュゲートしている)を対照として使用してCTLA−4ポリペプチドが野生型よりも強力か強力でないかを定性的に測定することができ、効力の差の大きさに関する定量的情報も提供し得る。そのようなアッセイを実施する方法およびデータの統計的有意性を分析して定性または定量的情報を確実に生成する方法は、当分野において公知である。
【0113】
CTLA−4ポリペプチドの結合は、CD80およびCD86へのCTLA−4の結合がIL−2産生を減衰させるため、IL−2の産生を介して計測することができる。好適なアッセイは、産生されたIL−2の量を、例えば、ELISAにより検出することを含み得る。
【0114】
IL−2産生の量の低減は、一部でも全部でもよい。CTLA−4ポリペプチドは、IL−2産生を試験濃度において少なくとも50%、75%または80%、より好ましくは、少なくとも85%、90%または95%低減させ得る。
【0115】
二重細胞アッセイを使用し、野生型よりも高い効力を有するCTLA−4ポリペプチドを同定することができる。CTLA−4ポリペプチドをアッセイしてシグナリングの阻害を計測する。CD28を発現するT細胞(例えば、Jurkat細胞)ならびにCD80およびCD86を発現するB細胞(例えば、Raji細胞)の共培養は、フィトヘマグルチニン(PHA)の存在下でCD28とリガンドCD80およびCD86との相互作用に起因してIL−2の産生をもたらす。次いで、IL−2をELISAを介して検出する。このアッセイの詳細な実施例については実施例3を参照のこと。
【0116】
プライマリーヒトT細胞活性化アッセイを使用して選択されたポリペプチドの効力をさらに評価することができる。CTLA−4ポリペプチドは、プライマリーヒトCD4+Tリンパ球からのCD80/86介在性IL−2分泌を阻害するそれらの能力に基づき順位付けすることができる。CTLA−4ポリペプチドは、CD80およびCD86を発現するRaji細胞の存在下でヒトCD4+リンパ球の抗CD3刺激増殖を阻害するそれらの能力に基づいても順位付けすることができる。増殖は、ホモジニアス発光アッセイ(ATP lite)を使用してアッセイすることができる。このアッセイの利点は、それがプライマリーヒトCD4+リンパ球の活性化を遮断するCTLA−4ポリペプチドの効力を計測することである。このアッセイの詳細な実施例については実施例4を参照のこと。
【0117】
本発明によるあるCTLA−4ポリペプチドは、T細胞活性化を計測するアッセイにおいて高い効力でCD80およびCD86に結合することが示された。CTLA−4ポリペプチドは、リガンドCD80およびCD86を遮断し、それにより、それらの分子からの追加の活性化シグナルを妨害し、IL−2産生の低減をもたらす。
【0118】
CTLA−4ポリペプチドの効力は、当業者に公知のおよび/または本明細書に記載もしくは参照される1つ以上のアッセイを使用して測定または計測することができる。効力は、効果を生成するために要求される量に関して発現される活性の尺度である。典型的には、ポリペプチドの用量調整物を細胞アッセイにおいて比較し、IC50値を報告する。機能アッセイにおいて、IC50は、生物学的応答をその最大の50%だけ低減させる産物の濃度である。IC50は、最大生物学的応答の%を産物濃度のlogの関数としてプロットし、ソフトウェアプログラム、例えば、Prism(GraphPad)を使用してシグモイド関数をデータにフィットさせてIC50値を生成することにより計算することができる。IC50値が低いほど、産物の効力が大きい。
【0119】
CTLA−4ポリペプチドは、参照(例えば、野生型)CTLA−4ポリペプチドと比較して増加した効力を有し、IL−2産生の阻害を生成するために必要とされる量がより少ないと記載することができる。このことは、報告されたIC50値においても反映される。好ましいCTLA−4ポリペプチドは、ヒト野生型CTLA−4(配列番号35)と比較して増加した効力を有する。
【0120】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、配列番号35を含む野生型CTLA−4よりも大きい効力を有し得、効力は、B細胞により活性化されたT細胞を使用するIL−2産生のアッセイにおけるIC50の低減である。効力は、野生型よりも少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍または少なくとも50倍大きくあり得る。本明細書における実施例において記載されるとおり、1つのポリペプチド配列番号36(バリアント1315)は、野生型CTLA−4よりも約120倍大きい効力を有することが示された。効力は、例えば、野生型よりも最大150倍、最大130倍、最大120倍、最大100倍、最大80倍、最大70倍、または最大60倍大きくあり得る。効力改善は、例えば、野生型よりも10倍から100倍大きい範囲内であり得る。
【0121】
CTLA−4ポリペプチドの効力は、野生型に準拠するのではなく(またはさらに野生型に準拠して)本明細書に例示されるCTLA−4ポリペプチド配列に準拠して決定することができ、例えば、効力を、配列番号37(バリアント1322)、配列番号38(バリアント1321)、配列番号43(バリアント1299)、配列番号36(バリアント1315)、配列番号42(バリアント1115)、配列番号47(バリアント1227)またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるバリアント1299のいずれかと比較することができる。したがって、これらのCTLA−4バリアントの1つをアッセイにおいて対照として使用することができる。CTLA−4ポリペプチドは、これらのバリアントの1つ以上と少なくとも同程度に強力であり得、例えば、配列番号43(バリアント1299)または配列番号47(バリアント1227)と少なくとも同程度に強力であり得る。CTLA−4ポリペプチドは、配列番号36(バリアント1315)の効力とほぼ同一またはそれ未満の効力を有し得る。
【0122】
親和性
CTLA−4ポリペプチドのCD80またはCD86結合親和性は、一価親和性として表面プラズモン共鳴を使用して測定してKを決定することができる。結合親和性を計測し、Kを決定するための表面プラズモン共鳴の使用の実施例については実施例8を参照のこと。得られるKは、野生型CTLA−4の配列番号35のものと比較することができ、またはCTLA−4ポリペプチド配列番号37(バリアント1322)、配列番号38(バリアント1321)、配列番号43(バリアント1299)、配列番号36(バリアント1315)、配列番号42(バリアント1115)、配列番号47(バリアント1227)もしくはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるバリアント1299の1つのものと比較して相対親和性を決定することができる。CTLA−4ポリペプチドは、野生型CTLA−4の親和性と比較して大きいヒトCD86および/またはヒトCD80結合親和性を有し得る。
【0123】
CTLA−4ポリペプチドは、野生型CTLA−4よりも大きいヒトCD80結合親和性を有し得、例えば、野生型よりも少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍または少なくとも140倍大きい。CTLA−4ポリペプチドは、少なくとも、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42および配列番号47の1つ以上のヒトCD80結合親和性または少なくとも、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4バリアント1299の親和性を有し得る。CTLA−4ポリペプチドは、配列番号37の親和性とほぼ同一またはそれ未満のヒトCD80結合親和性を有し得る。ヒトCD80結合Kは、50nM以下、例えば、25nM以下、20nM以下、または10nM以下であり得る。例えば、Kは、5から50nMの範囲内であり得る。
【0124】
CTLA−4ポリペプチドは、野生型CTLA−4よりも大きいヒトCD86結合親和性を有し得、例えば、野生型よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍大きい。CTLA−4ポリペプチドは、少なくとも、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42および配列番号47の1つ以上のヒトCD86結合親和性または少なくとも、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4バリアント1299の親和性を有し得る。CTLA−4ポリペプチドは、配列番号37の親和性とほぼ同一またはそれ未満のヒトCD86結合親和性を有し得る。ヒトCD86結合Kは、2μM以下、例えば、1.5μM以下または1μM以下であり得る。例えば、Kは、0.5から2μMの範囲内であり得る。
【0125】
CD86を上回るCD80選択性
本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドは、CD80およびCD86の両方に結合し得るが、CD86に優先してCD80に選択的に結合し得る。野生型CTLA−4は、CD86と比較して大きいCD80結合親和性を有することが公知であり、本発明によるCTLA−4ポリペプチドも、CD86結合親和性よりも大きいCD80結合親和性を有し得る。しかしながら、CTLA−4ポリペプチドは、野生型CTLA−4と比較して大きい、CD86に優先するCD80結合選択性を有し得る。例えば、本明細書に記載の表面プラズモン共鳴アッセイにおいて、野生型CTLA−4は、CD86結合親和性よりも約4倍大きいCD80結合親和性を示した。対照的に、CTLA−4ポリペプチドは、CD86結合親和性よりも10倍超、20倍超、30倍超、40倍超または50倍超大きいCD80結合親和性を示し得る。例えば、CTLA−4ポリペプチドは、CD86結合親和性よりも最大120倍または130倍大きいCD80結合親和性を示し得る。したがって、野生型CTLA−4の親和性と比較した場合、CTLA−4ポリペプチドは、CD86結合親和性よりもCD80結合親和性の大きい増加を示し得る。CD86を上回るCD80選択的優位性は、ヒトCD80およびヒトCD86について確認することができる。
【0126】
さらに、同一の選択的優位性は、カニクイザルからのCD80およびCD86について保持することができる。CD86を上回るCD80結合親和性の倍の差は、ヒトおよびカニクイザルCD80およびCD86についてほぼ同一であり得る。
【0127】
CD80結合親和性の改善は、医学的使用のためのより良好な生物学的プロファイルを付与すべきである。活性免疫応答に関して抗原提示細胞上で上方調節されるCD80への結合により、CTLA−4は、T細胞上のCD28へのCD80の結合を阻害し、それによりT細胞への活性化シグナルを遮断する。したがって、CTLA−4ポリペプチドを使用してT細胞応答をインビボで減衰させ、本明細書の他箇所に記載の、それが有益である病態を治療することができる。
【0128】
CD86を上回ってCD80を選択的に標的化するCTLA−4ポリペプチドを設計することにより、極めて大きいCD80結合親和性を獲得することができる。文献は、CD80およびCD86の相対的役割に関して結論に達していないが、本発明のポリペプチドは、CD86を上回ってCD80に選択的に結合し、種々のアッセイにおいて示されるとおり治療的使用に好適な卓越した生物学的プロファイルを示す。理論により拘束されるものではないが、本発明CTLA−4ポリペプチドの特質は、少なくとも部分的に、高いCD80結合親和性および/またはCD86を上回ってCD80の優先的結合に起因し得る。
【0129】
種々のデータは、増加した活性化シグナルをTリンパ球に送達するCD80についての役割を指摘する。例えば:
CD80形質導入CHO細胞は、CD86形質導入CHO細胞と比較して増加したプライマリーヒトT細胞からのIL−2産生を誘導し(Slavik et al.JBC 274(5):3116−3124 1999);
CD80は、Jurkat T細胞中でCD86と比較して増加したNFκBおよびAP−1転写因子活性を誘導し(サイトカイン産生、例えば、IL−2に重要な因子)(Olsson et al.Int.Immunol.10(4):499−506 1998);
CD80は、ウイルス感染樹状細胞と相互作用するCD8+T細胞中でCD86と比較して増加したCD25発現を誘導し(T細胞の生存および増殖に重要)(Pejawar−Gaddy & Alexander−Miller J.Immunol.177:4495−4502 2006);
アレルギー喘息のネズミモデルにおいて、突然変異CTLA−4Ig分子を使用して、CD86ではなくてCD80が肺好酸球増加症の主なドライバーであることが見出された(Harris et al.J.Exp.Med.185(1)1997)。
【0130】
したがって、CD80に対するCTLA−4の親和性の優先的増加は、より有効なCD80T細胞活性化経路を標的化することによりT細胞活性化の改善された阻害をもたらし得る。
【0131】
さらに、CD86シグナリングが一部の疾患モデルにおける利益的な抗炎症効果を有し得るいくつかの証拠が存在する。例えば、マウス敗血症モデルにおいて、重症度および致死率は、CD80の上方調節およびそれに付随するCD86の下方調節と関連することが観察された(Nolan et al.PLoS ONE 4(8):6600 2009)。したがって、CD86を上回るCD80の選択的結合は、それがCD28へのCD80を阻害し得る一方、CD28の相互作用をより少ない程度に低減させるため、利点を提供し得る。
【0132】
CD80およびCD86陽性細胞の両方は、関節リウマチ患者の関節中で見出すことができ、それらの両方のB7分子の結合は、治療有効性に寄与し得る一方、CD86を上回るCD80選択性は、T細胞活性化の阻害における所望の定量および定性効果にさらに寄与し得る。したがって、本発明のCTLA−4ポリペプチドは、CD80およびCD86の両方に結合し得、野生型CTLA−4よりも高いCD80親和性を有し得、野生型CTLA−4よりも高いCD86親和性も有し得る。
【0133】
交差反応性
好ましくは、本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、野生型CTLA−4の交差反応性プロファイルを保持する。
【0134】
CTLA−4ポリペプチドは、カニクイザルおよび/またはマウスCD80およびCD86、ならびにヒトCD80およびCD86への結合についての交差反応性を示し得る。ヒトCD80と比較したカニクイザルCD80親和性の差は、10倍以内、5倍以内、2倍以内、1.5倍以内または1.2倍以内であり得る。ヒトCD86と比較したカニクイザルCD86親和性の差は、10倍以内、5倍以内、2倍以内、1.5倍以内または1.2倍以内であり得る。ヒトCD80と比較したマウスCD80親和性の差は、10倍以内、5倍以内、2倍以内、1.5倍以内または1.2倍以内であり得る。ヒトCD86と比較したマウスCD86親和性の差は、10倍以内、5倍以内、2倍以内、1.5倍以内または1.2倍以内であり得る。
【0135】
CTLA−4ポリペプチドは、例えば、カニクイザルからの末梢血単核細胞を使用する混合リンパ球反応におけるIL−2産生の阻害として計測されるカニクイザルTリンパ球の活性化を阻害し得る。ポリペプチドは、カニクイザルTリンパ球の活性化の阻害についてのアッセイにおいて野生型CTLA−4よりも大きい効力を示し得る。
【0136】
本発明の代表的なCTLA−4ポリペプチドについての種交差反応に関するデータを、実施例8に示す。
【0137】
CTLA−4ポリペプチドは、B7ファミリーにおける他の関連タンパク質に優先するCD80およびCD86特異的結合を示し得る。したがって、PD−L2、B7−H1、B7−H2、B7−H3およびB7−H3Bとの交差反応性が欠落し得る。
【0138】
特異性を測定するためのアッセイは、当分野において公知である。例えば、酵素免疫アッセイを使用することができる。好適なアッセイの実施例については実施例6を参照のこと。
【0139】
安定性
CTLA−4ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも野生型CTLA−4の安定性を保持し、好ましくは、例えば、下記のとおりCTLA−4単独またはFc領域にコンジュゲート(例えば、融合)しているCTLA−4について計測されたときに野生型よりも安定である。
【0140】
より安定なCTLA−4Fcコンジュゲート(「CTLA−4Ig」)は、皮下送達に要求される高い(例えば、≧100mg/ml)濃度における配合をより良好に許容し得ると考えられる。
【0141】
安定性は、分解アッセイにおいて試験することができる。典型的には、これは、産物を固定温度(例えば、5℃または25℃)において一定期間、例えば、1ヵ月インキュベートし、その月にわたる純度損失の程度(分解の程度)を測定することを含む。凝集および/または断片化が純度損失に寄与し得、それぞれを別個に計測して割合を決定することができ、この2つの値の合計が%純度損失である。分解アッセイの実施例を実施例9および実施例10において記載する。
【0142】
改善された安定性を有するCTLA−4ポリペプチドは、有効性を増加させるだけでなく、誘発される中和または結合抗体のリスクも低減させる低減した凝集のため、投与経路、例えば、皮下経路に、より好適であり得る。
【0143】
Fcへのコンジュゲーション
一実施形態において、本発明は、皮下または静脈内配合のための、および中程度から重度のRAまたは記載の他の病態の治療のための月1回、28日間隔以下の頻度の投与のための、延長された半減期を場合により有する(例えば、本明細書にさらに記載のYTE突然変異を含む)親和性最適化CTLA−4Ig分子を提供する。
【0144】
本発明は、CTLA−4ポリペプチド配列からなり、またはペプチドもしくはポリペプチド配列、例えば、抗体分子もしくは抗体分子の一部を含み、もしくはそれにコンジュゲートしているポリペプチドを提供する。例えば、CTLA−4ポリペプチドは、抗体Fcアミノ酸配列、例えば、IgGFcにコンジュゲートしていてよい。Fc領域は、ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む。好ましくは、IgGは、ヒトIgG、例えば、IgG1、IgG2またはIgG4である。
【0145】
IgG1のアロタイプバリアントが公知である。好ましくは、IgG1Fc領域は、残基142におけるEおよび残基144におけるMを含む(図1に示される1から始まる配列番号56に対応するナンバリング)。このアロタイプは、一般集団において十分表わされる。異なるアロタイプを表す代替的なIgG1Fc領域は、残基142におけるDおよび残基144におけるLを含む。このアロタイプは、アバタセプトにおいて用いられる。
【0146】
IgGFcアミノ酸配列は、ある突然変異を有するヒトIgG(例えば、IgG1またはIgG4)Fcのアミノ酸配列を含み得る。例えば、ヒトIgGがIgG1である場合、アミノ酸配列は、Fcエフェクター機能、例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を低減または消失させるように突然変異させることができる。Fcエフェクター機能の除去は、公知の定型アッセイにおいて確認することができる。ADCCおよびCDCを測定する例示的なアッセイについては実施例7を参照のこと。
【0147】
IgG1エフェクター機能は、IgG1Fcヒンジ領域の突然変異により低減させることができることが公知である。この一例は、アバタセプトCTLA−4−IgG1Fc構築物であり、それは突然変異ヒンジ配列をIgG1Fc領域中で取り込み、その野生型CがSに突然変異している。アバタセプトのIgG1領域は、野生型CがSにより置換されている野生型ヒトIgG1Fcアミノ酸配列の配列番号70に対応するアミノ酸配列の配列番号71を含む。置換は、Fc領域の残基6、12および15におけるものである。
【0148】
【化1】
【0149】
本発明に関して、驚くべきことに、この突然変異は、Fcドメインの安定性を低減させ、その結果、アバタセプトCTLA4−IgG1Fc融合物が、野生型IgG1Fc配列が使用されるCTLA−4−IgG1Fc融合物よりも低い全体安定性を有することが発見された。この安定性損失は不所望であるが、それにもかかわらず、IgG1Fcエフェクター機能を低減させ、または回避することは重要である。
【0150】
本発明のCTLA−4ポリペプチドにコンジュゲートしているFc領域は、好ましくは、配列番号71を含まない。好ましくは、Fcの残基6、12および/または15におけるシステインが保持される。好ましくは、本発明によるCTLA−4−Fcコンジュゲートは、野生型ヒトIgG1Fcヒンジ領域を含む。好ましくは、Fc領域は配列番号70を含む。Fc領域は、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA4−IgポリペプチドのFc領域であり得る。
【0151】
アバタセプトFcの野生型への復帰は、Fc突然変異により引き起こされる不安定性を除去する一方、これは、多くの治療用途において不所望であるIgG1Fcのエフェクター機能も回復させる。したがって、この突然変異は、アバタセプトFcドメインの安定性を改善するが、不所望なエフェクター機能の再導入を犠牲とする。
【0152】
より低いエフェクター機能を有し、またはエフェクター機能を有さない他のIgGFc領域、例えば、IgG2を使用することができる。
【0153】
本発明は、IgG1Fc欠落エフェクター機能を使用する一方、アバタセプト突然変異に固有の低減した安定性の課題を克服する手法を提供する。本発明によるFc領域は、三重突然変異(TM)L20F、L21E、P117S(Oganesyan et al 2008 Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.64:700−4)を含むIgG1Fcであり得る。この突然変異は、安定性を低減させずにFcエフェクター機能を低減させる。したがって、そのようなFcドメインは、皮下投与用組成物の生成に好適である高濃度におけるCTLA−4−Fc構築物の形成を促進する。
【0154】
いっそうさらなる利益は、Fc領域中の「YTE」突然変異の取り込みを介して達成することができる(Dall’Acqua et al 2006 J Biol Chem.281:23514−24)。YTE突然変異は、延長されたインビボ半減期を提供し、それは治療有効性を改善し得、および/または低減もしくはより低頻度の投与、例えば、月1回の投与における治療利益の達成を可能とし得る。本発明の産物において使用されるFcドメインは、残基38におけるY、残基40におけるT、および残基42におけるEを含み得る。これは、ヒトIgG1Fcからの突然変異M38Y、S40T、T42Eを表す。
【0155】
上記のYTEおよび/または三重突然変異以外、Fcドメインの他の残基は、野生型ヒトIgG残基であることが好ましい。ヒトIgG1Fc中の一部の変異が公知であり、Fc領域は、YTEおよび/または三重突然変異を有する任意のヒトIgG1を含み得る。
【0156】
好ましくは、CTLA−4ポリペプチドは、IgG1Fcアミノ酸配列の配列番号59にコンジュゲートしている。これは、ヒトIgG1Fcヒンジ領域を含み、CのSへのアバタセプト突然変異を欠き、エフェクター機能を低減させる三重突然変異を取り込み、YTE半減期延長を含む。
【0157】
本明細書に記載の改善されたFc領域は、野生型CTLA−4とともに使用することができるが、本発明によるCTLA−4ポリペプチドにコンジュゲートしている場合、いっそうさらなる利益を提供する。CTLA−4ポリペプチドは、場合により1つ以上の結合アミノ酸またはリンカーペプチドを介して、そのC末端においてFc領域のN末端にコンジュゲートしていてよい。好ましくは、コンジュゲートは、CTLA−4−Fc融合タンパク質である。
【0158】
例えば、アミノ酸配列の配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42または配列番号47を含むCTLA−4ポリペプチドは、IgGFcアミノ酸配列の配列番号59またはIgGFcアミノ酸配列の配列番号60にコンジュゲートしていてよい。
【0159】
本発明によるCTLA−4−IgGFc融合タンパク質は、配列番号13、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15または配列番号16を含み得る。
【0160】
NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA−4−IgGFcポリペプチドは、本発明の一実施形態である。NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA−4ポリペプチドは、代替的に、所望により異なるFc領域にコンジュゲートしていてよい。
【0161】
CTLA−4ポリペプチド産物
CTLA−4ポリペプチドは、CTLA−4−Fcを含め、モノマーまたはマルチマー、例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーまたはペンタマーであり得る。本明細書の他箇所において考察されるとおり、CTLA−4は、ダイマーを形成し得る。この天然ダイマー化は、CTLA−4をFcドメインまたは他のダイマー化ドメインにコンジュゲートすることにより増進することができる。
【0162】
複数のCTLA−4ポリペプチドを含むポリペプチドマルチマーは、本発明の一態様である。マルチマー内の複数のCTLA−4ポリペプチドは、同一でも互いに異なっていてもよい。マルチマーは、いくつかの同一のポリペプチドおよび/またはいくつかの異なるポリペプチドを含み得る。マルチマーは、1つ以上の本発明によるCTLA−4ポリペプチド、および1つ以上の他のポリペプチドを含み得る。1つ以上の他のポリペプチドとしては、例えば、野生型CTLA−4および/またはCTLA−4ポリペプチドでないポリペプチドを挙げることができる。
【0163】
マルチマーは、2つの本発明によるCTLA−4ポリペプチドを含むダイマーであり得、それらは同一(ホモダイマー)でも異なって(ヘテロダイマー)いてもよい。
【0164】
マルチマーは、4つの本発明によるCTLA−4ポリペプチドを含むテトラマーであり得、それらは全て同一であり得(ホモテトラマー)、または1つ以上の異なる本発明によるCTLA−4ポリペプチドを含み得る(ヘテロテトラマー)。マルチマーは、2つの本発明によるCTLA−4ポリペプチド(同一または互いに異なる)および2つの他のCTLA−4ポリペプチド、例えば、野生型CTLA−4を含むテトラマーであり得る。
【0165】
CTLA4がマルチマー形態である場合、CTLA−4ポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域および/または抗体分子と場合によりコンジュゲートしている。コンジュゲートは、抗体抗原結合部位、VHドメインまたはVLドメインを含んでも含まなくてもよい。
【0166】
本発明の一態様は、1つ以上、例えば、2、3、4または5つのCTLA−4ポリペプチドおよび抗体分子または抗体ドメイン、好ましくは、ヒト抗体分子または抗体ドメインを含むコンジュゲートである。ダイマー化CTLA−4ドメインは、抗体重鎖−軽鎖ペアにコンジュゲートしていてよい。抗体分子は、2つの重鎖−軽鎖ペアを含み得、それぞれの重鎖は、VHドメインおよび1つ以上の定常重鎖ドメイン(例えば、CH1、CH2およびCH3)を含み、それぞれの軽鎖は、VLドメインおよび軽鎖定常領域を含み、2つの重鎖−軽鎖ペアは、重鎖定常ドメインのダイマー化を介して結合しており、4つのCTLA−4ポリペプチドは、抗体分子にコンジュゲートしており、1つのCTLA−4は、4つの可変ドメインのそれぞれに結合している。軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパ軽鎖であり得る。CTLA−4分子のペアは、それぞれのVH−VLドメインペアに結合していてよく、VHドメインに結合しているCTLA−4ポリペプチドは、VLドメインに結合しているCTLA−4ポリペプチドとのダイマーを形成する。好ましくは、CTLA−4のC末端は、VHまたはVLドメインのN末端に融合している。好ましくは、VHおよびVLペア形成は、公知のヒト抗原へのいかなる結合も付与しない。
【0167】
場合により、CTLA−4ポリペプチドがVHおよび/またはVLドメインに代えて、またはその一部に代えて含まれるように、抗体VHおよび/またはVLドメインの一部または全部が欠失している。したがって、ダイマーは、一方が抗体軽鎖定常領域に融合しており、一方が抗体重鎖定常領域に融合しているCTLA−4ポリペプチドのペアを含み得る。したがって、テトラマーは、CTLA−4ポリペプチドの2つのペアを含み得、それぞれのペアは、抗体軽鎖定常領域に融合しているCTLA−4ポリペプチドおよび抗体重鎖定常領域に融合しているCTLA−4ポリペプチドを含む。上記のとおり、重鎖定常領域は、1つ以上の重鎖定常ドメイン、例えば、CH1、CH2およびCH3を含み、軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパであり得る。
【0168】
本発明は、CTLA4ペンタマーも含む。5つのCTLA4ポリペプチドがアセンブルし、場合により、結合抗体Fc領域のペンタマー化を介してペンタマーを形成していてよい。ペンタマー形成は、天然でペンタマーであるIgMのFc領域を使用して促進される。したがって、IgM、好ましくは、ヒトIgMのFc領域を含む5つのCTLA4−Fcポリペプチドは、ペンタマーとして配列していてよい。ペンタマーCTLA4は、記載されている(Yamada et al.Microbiol.Immunol.40(7):513−518 1996)。
【0169】
マルチマー内のポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合により共有結合していてよい。共有結合は、CTLA4ポリペプチド間および/またはCTLA−4ポリペプチドに結合している任意のFc領域間で存在し得る。Fc領域および/または他の抗体ドメインが用いられる場合、ポリペプチドは、そのようなFcドメインおよび/または他の抗体ドメインについて天然存在と同一の様式で結合していてよい。CTLA−4ポリペプチドのシステイン残基間のジスルフィド結合の形成は、本明細書の他箇所において記載される。
【0170】
そのようなマルチマーおよびコンジュゲートは、CTLA−4ポリペプチドについて本明細書に記載の任意の方法においてまたは任意の使用に使用することができる。マルチマー構造は、CTLA−4の生物学的活性、例えば、T細胞活性化の阻害を増進し得る。野生型CTLA−4の阻害は、テトラマー形態において向上することが示されている(実施例11、図7)。
【0171】
CTLA−4ポリペプチドは、標識されていても標識されていなくてもよい。標識は、CTLA−4配列またはそれにコンジュゲートしているFc領域に付加することができる。
【0172】
CTLA−4および/またはFc領域は、グルコシル化されていてもグリコシル化されていなくてもよい。好ましくは、CTLA−4および/またはFcは、それらの通常のヒトグリコシル化を担持する。
【0173】
本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドをさらに改変および発達させて、改善され、または変化した追加のバリアントを提供することができる。例えば、本明細書に記載の本発明によるCTLA−4ポリペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上の突然変異、例えば、置換を導入することにより改変してさらなるCTLA−4ポリペプチドを提供することができ、次いでそれを本明細書の他箇所において記載のとおり効力、親和性(CD80および/またはCD86について)および/または安定性について試験することができる。
【0174】
CTLA−4ポリペプチドは、好ましくは、本明細書に記載の1つ以上の所望の機能特性を保持する。そのような特性としては、CD80および/もしくはCD86への結合能、野生型CTLA−4よりも大きい親和性でのCD80および/もしくはCD86への結合能、ならびに/または本発明のCTLA−4ポリペプチドについて本明細書に記載の効力、親和性および/もしくは安定性、例えば、表面プラズモン共鳴により決定される50nM以下のヒトCD80結合Kが挙げられる。本明細書に記載のとおり、本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、典型的には、野生型CTLA−4の配列番号35と比較して大きいヒトCD80結合親和性、大きい効力および/または大きい安定性を有する。
【0175】
CTLA−4ポリペプチドは、配列番号36〜55のいずれかと、例えば、配列番号43、配列番号37、配列番号38、配列番号36、配列番号42または配列番号47と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。CTLA−4ポリペプチドは、配列番号68と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。CTLA−4ポリペプチドは、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%を有するアミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。
【0176】
CTLA−4ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸突然変異を有する配列番号36〜55のいずれか、配列番号68またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。例えば、それは、最大12、例えば、最大10のアミノ酸突然変異、例えば、最大5つの突然変異、例えば、1、2または3つのアミノ酸突然変異を含み得る。突然変異の例は、本明細書の他箇所において記載される。
【0177】
1つ以上の突然変異の導入後、CTLA−4ポリペプチドは、所望の機能特性、例えば、CD80および/もしくはCD86への結合能、野生型CTLA−4よりも大きい親和性でのCD80および/もしくはCD86への結合能、ならびに/または本発明のCTLA−4ポリペプチドについて本明細書に記載の効力、親和性および/もしくは安定性、例えば、表面プラズモン共鳴により決定される50nM以下のヒトCD80結合Kについて試験することができる。
【0178】
本発明の一態様は、
本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドアミノ酸配列を含み、またはそれからなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;
1つ以上の突然変異をアミノ酸配列中に導入してさらなるCTLA−4ポリペプチドを提供すること;ならびに
さらなるCTLA−4ポリペプチドの安定性、親和性および/または効力を試験すること
を含む方法である。
【0179】
CTLA−4ポリペプチドアミノ酸配列は、例えば、配列番号36〜55のいずれかまたは配列番号68またはNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされるCTLA−4アミノ酸配列を含み、またはそれからなっていてよい。例えば、アミノ酸配列は、配列番号43、37、36、38、42または47であり得る。
【0180】
1から20の突然変異(両端含む)を、場合により導入することができ、それは置換、欠失、挿入またはそれらのいずれかの混合物を含み得る。例えば、1つ以上の置換、例えば、1から20の置換(両端含む)を導入することができる。
【0181】
さらなるCTLA−4ポリペプチドの安定性、親和性および/または効力を試験するアッセイの例は、本明細書に記載される。さらなるポリペプチドは、それが由来したCTLA−4ポリペプチドよりもそれほど低くない、または大きい安定性、親和性および/または効力を有し得る。
【0182】
本方法は、さらなるCTLA−4ポリペプチドが本発明のCTLA−4ポリペプチドについて本明細書に記載の効力、親和性および/または安定性を有すること、例えば、それが表面プラズモン共鳴により決定される50nM以下のヒトCD80結合Kを有することを決定することを含み得る。
【0183】
本発明のCTLA−4ポリペプチドについて本明細書に記載の効力、親和性および/または安定性を有すると同定されたさらなるCTLA−4ポリペプチドは、次いで、医薬組成物に配合し、または本明細書に記載の治療方法を含む方法において使用することができる。
【0184】
本方法は、さらなるCTLA−4ポリペプチドを、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物に配合することを含み得る。そのような組成物、その使用および配合は、本明細書の他箇所においてより詳細に記載される。CTLA−4ポリペプチドは、本明細書に記載の任意のフォーマットで提供することができ、例えば、それは、記載のとおりFc領域にコンジュゲートしていてよい。
【0185】
CTLA−4ポリペプチド、例えば、CTLA−4−Fc構築物をコードする核酸分子を産生することができる。例えば、核酸分子は、本発明による任意のCTLA−4ポリペプチドアミノ酸配列またはCTLA−4−Fcアミノ酸配列をコードし得る。核酸は、1299CTLA−4−Igポリペプチドをコードし、または少なくともそのCTLA−4ポリペプチド領域をコードするNCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸配列を含み得る。核酸分子は、単離することができ、ベクター、例えば、細胞中の核酸発現用の組換えベクター中で含めることができる。インビトロ細胞は、ベクターを含み得、CTLA−4ポリペプチドまたはCTLA−4Fc産物の発現に使用することができる。ポリペプチドは、NCIMB寄託アクセッション番号41948の大腸菌(E.coli)細胞系により発現させることができる。
【0186】
本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドは、ポリペプチドをコード核酸から発現させることを含む方法により産生することができる。これは、そのようなベクターを含有する宿主細胞を培養物中で、CTLA−4ポリペプチドの発現を引き起こし、または可能とする適切な条件下で成長させることにより簡便に達成することができる。CTLA−4ポリペプチドは、インビトロ系、例えば、網状赤血球ライセート中で発現させることもできる。発現によるCTLA−4ポリペプチドの産生後、その活性、例えば、CD86またはCD80へのその結合能を定型的に試験することができる。
【0187】
種々の異なる宿主細胞中のポリペプチドのクローニングおよび発現系が周知であり、CTLA−4−Fcポリペプチドを含む本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドの発現に用いることができる。好適な宿主細胞としては、細菌、真核細胞、例えば、哺乳動物および酵母、ならびにバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当分野において利用可能な哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、COS細胞および多くの他のものが挙げられる。一般の好ましい細菌宿主は、大腸菌(E.coli)である。適切な調節配列、例として、プロモーター配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を必要に応じて含有する好適なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じてプラスミド、ウイルス、例えば、バクテリオファージ、またはファージミドであり得る。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現における核酸の操作、ならびにタンパク質の分析のための多くの技術およびプロトコルは、公知である。
【0188】
一般に、本発明によるCTLA−4ポリペプチドをコードする核酸は、単離物として、単離および/または精製形態で、または汚染物質不含または実質的に不含で提供される。核酸は、全部または一部が合成であり得、核酸としてはゲノムDNA、cDNAまたはRNAを挙げることができる。
【0189】
核酸は、複製ベクターの一部として提供することができ、本発明のCTLA−4ポリペプチドをコードする核酸を含むベクター、特に、コードされるポリペプチドを適切な条件下で発現させることができる任意の発現ベクター、およびそのような任意のベクターまたは核酸を含有する宿主細胞である本発明により提供することもできる。これに関する発現ベクターは、関心対象のポリペプチドをコードする核酸およびインビトロ発現系、例えば、網状赤血球ライセート、またはインビボ、例えば、真核細胞、例えば、COSもしくはCHO細胞もしくは原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)中のポリペプチドの発現に適切な調節配列を含む核酸分子である。
【0190】
宿主細胞は、本明細書に開示の核酸を含有し得る。本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)中に統合することができる。統合は、標準的技術に従ってゲノムとの組換えを増進する配列の包含により増進することができる。核酸は、細胞内の染色体外ベクター上に存在し得る。
【0191】
核酸は、宿主細胞中に導入することができる。導入は、一般に、限定されるものではないが、「形質転換」または「形質移入」と称されることがあり(特にインビトロ導入について)、任意の利用可能な技術を用い得る。真核細胞については、好適な技術としては、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム介在性形質移入およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えば、牛痘、もしくは昆虫細胞についてはバキュロウイルスを使用する形質導入を挙げることができる。細菌細胞については、好適な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使用する形質移入を挙げることができる。
【0192】
当分野において周知のマーカー遺伝子、例えば、抗生物質耐性または感受性遺伝子を、関心対象の核酸を含有するクローンの同定において使用することができる。
【0193】
導入後、コードされるポリペプチドが産生されるように、核酸からの発現を引き起こし、または可能とし、例えば、宿主細胞(実際に形質転換された細胞を挙げることができるが、細胞は、形質転換細胞の子孫である可能性がより高い)を遺伝子の発現のための条件下で培養することができる。ポリペプチドが適切なシグナルリーダーペプチドに連結して発現される場合、それは、細胞から培養培地に分泌され得る。発現による産生後、ポリペプチドは、宿主細胞および/または培養培地から単離および/または精製することができ、状況に応じて、続いて所望により、例えば、1つ以上の追加の成分を含み得る組成物、例えば、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、ビヒクルまたは担体(例えば、以下参照)を含む医薬組成物の配合において使用することができる。
【0194】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、例えば、コード核酸からの発現による産生後に単離および/または精製することができる(例えば、抗体を使用)。したがって、CTLA−4ポリペプチドは、汚染物質不含または実質的に不含で提供することができる。CTLA−4ポリペプチドは、他のポリペプチド不含または実質的に不含で提供することができる。単離および/または精製されたCTLA−4ポリペプチドは、少なくとも1つの追加の成分を含み得る組成物、例えば、薬学的に許容可能な賦形剤、ビヒクルまたは担体を含む医薬組成物の配合において使用することができる。本発明によるCTLA−4ポリペプチドを含む組成物は、本明細書の他箇所において考察される予防および/または治療的治療において使用することができる。
【0195】
したがって、本発明の一態様は、本発明のCTLA−4ポリペプチド、場合により、IgGFcにコンジュゲートしているCTLA−4ポリペプチド、および1つ以上の医薬賦形剤を含み、またはそれらからなる組成物である。本発明によるCTLA−4ポリペプチドの多数の例は、本明細書の他箇所において記載され、いずれもFc領域にコンジュゲートしていてよい。
【0196】
例えば、本組成物は、
IgGFcアミノ酸配列の配列番号59にコンジュゲートしている、アミノ酸配列の配列番号43(バリアント1299)、配列番号37(バリアント1322)、配列番号38(バリアント1321)、配列番号36(バリアント1315)、配列番号42(バリアント1115)または配列番号47(バリアント1227)を含むCTLA−4ポリペプチド;および
1つ以上の医薬賦形剤
を含み、またはそれらからなっていてよい。
【0197】
本組成物は、NCIMBアクセッション番号41948のもとで寄託された核酸によりコードされる1299CTLA−4Igポリペプチド、および1つ以上の医薬賦形剤を含み、またはそれらからなっていてよい。
【0198】
例えば、CTLA−4ポリペプチドは、アミノ酸配列の配列番号13、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15または配列番号16を含み得る。
【0199】
本発明による組成物は、少なくとも70mg/ml、例えば、少なくとも80mg/ml、少なくとも90mg/mlまたは少なくとも100mg/mlの濃度でCTLA−4ポリペプチドを含み得る。濃度は、グルコシル化を含むポリペプチドの質量として計算され、存在する場合、Fc領域を含む。ポリペプチド濃度は、グルコシル化(存在する場合)を含むポリペプチドの計算質量に基づく吸光係数を使用する分光光度計測の標準的方法により測定することができる。グリコシル化が存在する場合、それは、完全であると想定することができる。好適な方法は、実施例に説明される。例えば、1299CTLA−4−Fcについて例示されるとおり濃度測定に1.09の吸光係数を使用することができる。
【0200】
配合および医学的使用
本発明のCTLA−4ポリペプチドは、月1回以下の頻度の投与により投与することができる。低頻度の投与は、一般に、患者および臨床医に対する負荷を低減させるために望ましいが、より低い治療有効性のリスクおよび/または製品用量の増加の必要性と関連し得る。本発明による効力、親和性および/または半減期の改善は、そのようなリスクを低減させ、従来の投与レジメンと比較して少ないまたは低頻度の投与の可能性を提供する。
【0201】
多くの患者について、治療は、長期間にわたり、例えば、数年間、場合により、患者の生涯にわたり要求される。したがって、複数の投与量が投与されることが予測される。投与間の間隔は、数日、1週間、または1ヵ月のオーダーであり得る。好ましくは、投与は、少なくともまたは約14、21または28日間の間隔におけるものである。好ましくは、患者への投与は、皮下送達により、28日間以上の投与間隔、例えば、月1回の投与である。
【0202】
投与は、静脈内であり得、または任意の他の好適な投与経路によるものであり得る。例えば、CTLA−4ポリペプチドは、皮下注射により投与することができ、自宅での患者による自己投与を促進し、静脈内投与レジメンと比較して診療所への患者の来訪を低減させる潜在的利点を提供する。
【0203】
皮下投与に好適な低減した容量へのCTLA−4の配合は、典型的には、静脈内投与用の配合と比較して高い濃度のCTLA−4産物を要求する。典型的には、少なくとも70mg/mlの濃度が、皮下投与に好ましく、より好ましくは、少なくとも100mg/mlである。本発明によるCTLA−4組成物の改善された安定性は、例えば、皮下投与用の高濃度における配合を促進する。
【0204】
本発明による、および本発明による使用のための医薬組成物は、活性成分に加え、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の材料を含み得る。そのような材料は、非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきでない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路に依存し、それは、任意の好適な経路であり得るが、注射(針を用いるまたは用いない)、特に皮下注射である可能性が最も高い。他の好ましい投与経路としては、吸入による投与または鼻腔内投与が挙げられる。
【0205】
静脈内、皮下または筋肉内注射については、活性成分は、パイロジェンフリーで好適なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば、等張ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、または乳酸リンガー注射液を使用して好適な溶液を十分に調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤および/または他の添加剤を必要により含めることができる。
【0206】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、ヒトまたは動物体、好ましくは、ヒトを診断または治療する方法において使用することができる。
【0207】
治療する方法は、本発明によるCTLA−4ポリペプチドの投与、例えば、CTLA−4ポリペプチドを含む医薬組成物の投与を含み得る。本明細書に記載のCTLA−4ポリペプチドまたはCTLA−4ポリペプチドを含む組成物は、皮下または静脈内投与により患者を治療する方法において使用することができる。
【0208】
CTLA−4ポリペプチドは、好ましくは、個体に利益を示すために十分な「予防有効量」または「治療有効量」(状況に応じて、予防は、治療とみなすことができるが)での投与により個体に与えることができる。実際の投与量、ならびに投与速度およびタイムコースは、治療されるものの性質および重症度に依存する。治療の処方、例えば、投与量の決定などは、一般実施者および他の医師の責務の範囲内である。
【0209】
組成物は、治療すべき病態に応じて単独で、または他の治療との組合せで同時にまたは連続的に投与することができる。
【0210】
CTLA−4ポリペプチドは、T細胞応答の減衰に有用であり、したがって、T細胞応答の減衰が利益的な病態の治療に使用することができる。CTLA−4ポリペプチドを使用して治療利益を提供することができる臨床適応症としては、自己免疫疾患および/または炎症疾患が挙げられる。治療適応症の例は、関節リウマチ(RA)、若年性関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、多発性硬化症、喘息、クローン病、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、強直性関節炎、移植片拒絶、I型糖尿病、シェーグレン症候群および潰瘍性大腸炎ならびに他の自己免疫病態、例えば、脱毛症(allopecia)である。本発明によるCTLA−4ポリペプチドは、中程度から重度のRAを有する患者に特に好適とみなされる。
【0211】
本発明によるCTLA−4ポリペプチドまたは医薬組成物により治療される患者は、中程度から重度に活性のRAを有する者であり得、合成疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)またはCTLA−4以外、例えば、アバタセプト以外の生物剤による以前のまたは継続中の治療を問わない。本発明によるCTLA−4ポリペプチドを使用して患者を単剤療法により、慣用のDMARDとの組合せで、慣用のDMARDに対して不適切な応答を示す患者、または生物剤が不適合の患者において治療することができる。
【0212】
治療の有効性はモニタリングすることができ、データを関節損傷の進行および/または患者機能に関して得ることができる。
【実施例】
【0213】
以下のCTLA4−Ig配列をNCIMBに寄託した:
大腸菌(Escherichia coli)DH5aバリアント1299=NCIMB41948
寄託日=2012年3月13日
CTLA−4Fc融合分子を生物学的効力を最適化するために使用される戦略は、2つの主要なアクティビティーからなるものであった。1つのアクティビティーは、CTLA−4ドメインの指向進化を実施してリガンドCD80およびCD86に対する改善された親和性、ならびにそのドメインの改善された安定性を選択するためのリボソームディスプレイの使用であった。リボソームディスプレイ選択からのアウトプットは、CTLA−4バリアントの多様な集団からなり、それを配列決定し、それらのコードユニーク配列をインビボT細胞刺激アッセイにおいて直接試験するためにFc融合相手とともに発現させた。このアプローチの利点は、多くの異なるCTLA−4バリアント(>1,000を試験した)を薬物様フォーマットで、すなわち、ダイマー化を増進するFcドメインに関して生物学的関連アッセイにおいて順位付けすることであった。この戦略の追加の特徴は、改善された生物学的機能に関連するCTLA−4突然変異の組換えを実施して相乗作用を介してさらなる効力の獲得を達成することであった。
【0214】
このアプローチは、より高い親和性のCTLA−4バリアントおよびタンパク質安定性を同時に選択し得た。親和性選択は、減少濃度の標的リガンド、この場合、CD80/86を用いてより高い親和性のCTLA−4バリアントを選択的に濃縮する。改善された安定性の選択は、脱安定剤、例えば、DTT、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ビーズのいずれかを使用して選択プールからより安定でない、またはより折り畳まれない傾向のバリアントを除去する。したがって、安定性および親和性圧力は、後続の並行アプローチではなく単一選択内で適用することができる。
【0215】
第2のアクティビティーは、Fc介在性エフェクター機能を除去し、インビボでの分子の循環半減期を向上させることが公知の突然変異を導入するFcドメインの合理的設計であった。異なるバリアントFc領域を、CTLA−4への融合物として調製し、加速インビトロ安定性試験において試験して最適な安定性プロファイルを有するFc領域を選択した。
【0216】
これら2つの並行アクティビティーおよび後続のスクリーニング後、複数のインビトロT細胞刺激アッセイにおける阻害により計測された最も強力なCTLA−4ドメインを、加速インビトロ安定性試験により計測された最も安定な遺伝子操作Fcドメインと組み合わせた。生物学的効力およびタンパク質安定性についてのさらなるインビトロ試験は、最終薬物フォーマットの分子の相対的順位付けを可能とした。
【0217】
実施例1.CTLA−4バリアントのライブラリーの構築ならびに改善された効力および安定性のリボソームディスプレイ選択
リボソームディスプレイは、Swiss−ProtエントリーP16410、Fc領域が付属しない細胞外ドメインの残基38〜161に対応するモノマーヒトCTLA−4ドメインに対して実施した。この配列(配列番号35)は、野生型CTLA−4とも称される。CTLA−4リボソームディスプレイ構築物は、ヒトCTLA−4cDNAの要求部分を、リボソームディスプレイに要求される5’および3’調節エレメントを含有するベクター中にクローニングすることにより得た(Hanes et al,Meth.Enzymol.(2000)328:404)。この構築物は、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列の後に、CTLA−4コード配列の上流の原核リボソーム結合部位(Shine−Dalgarno配列)を含む。ヒトCTLA−4のダイマー化界面中のアミノ酸120(またはSwiss−ProtエントリーP16410におけるナンバリングによる157位)におけるシステインを、セリンに突然変異させ、他では改善されたCTLA−4配列の選択を妨げ得るリボソームディスプレイフォーマットにおけるCTLA−4分子のダイマー化を防止した。CTLA−4配列の下流で、線状ファージからの遺伝子IIIタンパク質の一部を、スペーサーとして作用するように含めてリボソームトンネル外へのCTLA4バリアントのディスプレイを可能とした。CTLA−4リボソームディスプレイ構築物は、ヌクレアーゼ分解に対するmRNAライブラリーの安定化を補助するためのmRNAレベルにおける5’および3’ステム−ループ配列も含有した。
【0218】
エラープローンライブラリー
上記のヒトCTLA−4リボソームディスプレイ構築物を、テンプレートとしても使用してエラープローンPCRを使用してランダムバリアントのライブラリーを生成した。エラープローンPCRは、Diversify PCR Random Mutagenesis Kit(Clontech)を製造業者の説明書に従って使用してCTLA−4遺伝子に適用した。反応を、分子当たり平均4つのアミノ酸突然変異および約2.5×1010のバリアント分子のライブラリーを与えるように調整した。このランダム突然変異誘発手順は、さらに選択プロセス中に取り込み、それを第3の選択ラウンドのアウトプットに適用してより多くの多様性をバインダーの濃縮集団に導入してからさらに選択した。
【0219】
「Loop4」指定ライブラリー
ヒトCTLA−4リボソームディスプレイ構築物をテンプレートとしても使用し、CD80およびCD86との相互作用に寄与する潜在性を有するCTLA−4分子の領域に標的化された突然変異誘発を有するバリアントのライブラリーを生成した。ヒトCTLA−4:ヒトCD80複合体(Protein Data Bank(PDB):1I8L)およびヒトCTLA−4:ヒトCD86複合体(PDB:1I85)の共結晶構造を試験して分子間、特にリガンドに近接するCTLA−4のアミノ酸側鎖間の結合相互作用を可視化した。アミノ酸59から65位(またはCTLA−4エントリーP16410のSwissProtナンバリングによる96から102位)を含むヒトCTLA−4タンパク質(配列番号35)の領域は、CD80およびCD86の方向に延びるループを形成することが確認された。この領域中の残基のそれぞれを、飽和(NNS)突然変異誘発を使用して完全にランダム化して約3.4×1010のバリアント分子のライブラリーを創成した。この「Loop4」ライブラリーは、重複オリゴヌクレオチド(配列番号33および配列番号34)を使用して標準的な技術により構築した。
【0220】
改善された親和性および安定性の選択
ヒトCD80およびCD86へのヒトCTLA−4バリアントの改善された結合の選択を、Hanes et al(Meth.Enzymol.(2000)328:404)に記載のリボソームディスプレイ親和性ベース選択を使用して実施した。手短に述べると、CTLA−4バリアントDNAライブラリーを転写させ、次いで無細胞原核翻訳系中で翻訳させ、翻訳反応を停滞させて三元リボソームディスプレイ選択複合体(mRNA−リボソーム−タンパク質)を生成し、次いでそれをヒトCD80またはヒトCD86Fc融合タンパク質(R&D Systems)のいずれかとインキュベートした。CD80またはCD86結合複合体を、プロテインGコート磁気ビーズ(Dynal)とのインキュベーションにより捕捉し、結合三元複合体を磁気分離により回収した一方、未結合複合体を洗浄除去した。結合CTLA−4バリアントをコードするmRNAを逆転写およびPCRにより回収した。改善された結合を有するCTLA−4バリアントの選択をドライブするため、選択プロセスを、減少濃度のCD80またはCD86をいくつかのラウンドにわたり使用して繰り返した。
【0221】
CD80およびCD86に対する改善された親和性の選択とともに、CTLA−4バリアントプールを改善された安定性についてのリボソームディスプレイにより同時に選択した。早期の選択ラウンド(ラウンド1および3)においてDTTを使用してより安定なCTLA−4バリアントの回収に好ましい選択圧力を適用した(Jermutus et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2001 Jan 2;98(1):75−80)。0.5mMの最終濃度のDTTを翻訳反応物中で含め、その後に反応物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)sepharoseビーズ(GE Healthcare)のスラリーと、さらに0.5mMのDTTの存在下でインキュベートした。HICステップを使用して不十分に折り畳まれたバリアントを捕捉し、それらを反応物から遠心分離により除去してから、CD80とインキュベートし、上記の親和性選択を行った。
【0222】
ホットスポット突然変異誘発ライブラリー、および重要な突然変異の合理的組換え
エラープローンPCRおよびLoop4指定ライブラリーからのCTLA−4バリアントの初回スクリーニング後、改善された活性に関連する突然変異を同定し、それを使用してさらなるCTLA−4バリアントを設計した。1つの戦略において、飽和(NNS)突然変異誘発を使用して配列番号35の16、25、58、70、85および93位(またはCTLA−4エントリーP16410のSwissProtナンバリングによる53、62、95、107、122および130位)が単一ライブラリー中で完全にランダム化されたホットスポット突然変異誘発ライブラリーを構築した。ライブラリーは、重複および突然変異誘発オリゴヌクレオチド(配列番号61から配列番号67(両端含む))を使用して創成した。次いで、このライブラリーを上記のとおり改善された親和性について選択した。
【0223】
代替アプローチにおいて、改善された活性に関連するエラープローン、Loop4およびホットスポット突然変異誘発ライブラリーから同定されたより少数の突然変異を、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発により組み合わせて合理的組換え体を創成し、次いでそれを生物学的活性について直接試験した。この戦略のために選択された突然変異は:I16S、S25N、S25P、G27S、M54K、N56S、L58G、T59S、F60T、L61Q、L61P、D62G、D63Y、S64P、I65N、I65V、S70A、Q80R、M85SおよびK93Q(または、CTLA−4 SwissProtエントリーP16410によるナンバリング:I53S、S62N、S62P、G64S、M91K、N93S、L95G、T96S、F97T、L98Q、L98P、D99G、D100Y、S101P、I102N、I102V、S107A、Q117R、M122SおよびK130Q)であった。
【0224】
実施例2.Fc融合タンパク質としてのCTLA−4野生型およびバリアントの発現
リボソームディスプレイ選択からのバリアントCTLA−4遺伝子を、ベクターpEU7.1中にクローニングした。このベクターは、IgG1Fc領域(配列番号56)とのインフレーム融合物としてのCTLA−4遺伝子の発現を可能とする。リボソームディスプレイアウトプットをPCR増幅させ、pEU7.1中にクローニングしてから大腸菌(E.coli)DH5−アルファ細胞中に形質転換した。PCRクローニングに使用されたオリゴヌクレオチドは、120位(Swiss−ProtエントリーP16410におけるナンバリングによる残基157)におけるセリンを野生型アミノ酸のシステインに復帰するようにも設計した。個々の形質転換体の配列決定後、ユニークなCTLA−4アミノ酸配列を有する合計1,000を上回るバリアントをタンパク質発現のために選択した。88のバリアントのバッチにおいて、コードプラスミドDNAを供給業者のプロトコル(Qiagen)に従って精製し、DNA濃度を使用して形質移入のための正確な量のDNAを計算することができるように分光光度法により260nmにおいて定量した。
【0225】
24ウェルプレートからのCTLA−4タンパク質の発現、精製および定量
3mlのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ECACC)を、24ウェルプレート(Whatman 734−2558)の別個のウェル中で、25μMのL−メチオニンスルホキシイミン(Sigma M5379)を含有するCD−CHO培地(Invitrogen 10743−029)中で1ml当たり100万の細胞において播種した。細胞を含有する24ウェルプレートを通気性サンドイッチ蓋(Applikon biotechnology、Z365001224)により密封し、ディープウェルプレート(Applikon biotechnology、Z365001700)用クランプ中に配置した。細胞を250rpm、湿度80%、5%のCO2および37℃において振とうした。形質移入のため、3μgのプラスミドDNAを含有する50μlのNaCl 150mMを、21μgの直鎖25kDa PEI(Polysciences、23966)を含有する50μlと混合した。形成されたDNA−PEI複合体を細胞に添加し、複合体形成の開始と細胞への添加の間を15分間以下とした。形質移入から16から24時間後、細胞を300μl/ウェルのCD−CHO Efficient Feed B(Invitrogen A10240)の添加によりフィードした。プレートを、250rpm、湿度80%、5%のCOおよび37℃においてさらに5から6日間振とうして成長培地中にタンパク質を発現させた。発現後、タンパク質を含有する使用済みの培養培地を3000rpmにおける10分間の遠心分離により澄明化した。Freedom Evo(登録商標)液体ハンドリングロボット(Tecan)を使用して澄明化された上清(1.2ml)を96ウェルフィルタープレート(3M Empore,12146036)に再分注した。残留細胞残屑を、真空ポンプおよびQIAvac 6Sバキュームマニホールド(Qiagen)を使用する濾過により除去した。1.8mlの澄明化された濾過上清を、PhyTip(RTM)プロテインA親和性カラム(Phynexus、PTP−92−20−01)、20μlの樹脂床容量)を使用してMinitrack(RTM)液体ハンドリングロボット(Perkin Elmer)により実施される精製のために処理した。PhyTip(RTM)カラムを500μlのNaP 20mM pH7.0によりコンディショニングした。次いで、PhyTip(RTM)カラムを、6×300μlバッチにおける粗製物上清を流すことによりロードし、200μlのD−PBS、200μlのNaP 20mM pH7.0により洗浄し、120μlの100mMのHEPES 140mMのNaCl pH3により溶出させ、20μlの1MのHEPES pH8.0により中和した。
【0226】
精製されたタンパク質を96ウェル黒色ポリプロピレンプレート(Greiner、655209)に移し、次いで145μlのPBS、0.02%のTween20、1mg/mlのBSA、0.05%のアジ化ナトリウム緩衝液(Octet buffer)を添加した。同一緩衝液中の既に精製されたCTLA−4野生型Fc融合タンパク質を使用して標準曲線を作成した。一組の標準濃度を黒色ポリプロピレンプレート中で150μlの容量中で、500μg/mlの出発濃度および3倍希釈で調製した。プロテインAコートバイオセンサーを有するOctet RED(ForteBio Inc、18−0004)を使用して200rpmの流量で120秒間の読取時間を使用して定量を実施した。8つのバイオセンサーの1つのカラムを、試料のそれぞれの96ウェルプレートに使用した。バイオセンサーは、96ウェルプレート中の200μlの10mMのグリシンpH1.7(Sigma、G−7403)への添加により再生させた。バイオセンサーを中和してから、200μlのOctet緩衝液への添加により次の試料を処理した。3回の再生/中和サイクルを、30秒間の時間および200rpmの流量で実施した。未知試料の濃度を、Octet REDデータ分析ソフトウェアパッケージを使用する未知試料と標準曲線との間の結合率の比較により測定した。
【0227】
より大規模のCTLA−4タンパク質の発現、精製および定量
Fc融合物としての個々のCTLA−4タンパク質のより大規模の調製のため、24ウェルプレート法に使用したものと同一の一般ステップを適用した。IgG1Fcへのインフレーム融合物としてのバリアントCTLA−4遺伝子を含有するプラスミドを大腸菌(E.coli)細胞から調製した。>100mgスケールにおけるタンパク質の調製のため、IgG1Fc遺伝子との直接インフレームでCTLA−4遺伝子を含有する構築物全体を、遺伝子合成により調製した。全ての場合、関心対象のタンパク質をコードするプラスミドDNAを調製し、発現のためにCHO細胞中に形質移入した。24ウェルプレートに代えて、より大きい容量の細胞を組織培養フラスコまたはウエーブバッグ(wave−bag)中で成長させてから培養物上清から精製した。ハーベストをプールし、濾過してからプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。培養物上清を適切サイズのCeramic Protein A(BioSepra)のカラム上でロードし、50mMのTris−Hcl pH8.0、250mMのNaClにより洗浄した。0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用して結合IgGをカラム(oclumn)から溶出させ、Tris−Hcl(pH9.0)の添加により中和した。Nap10カラム(GE、17−0854−02)を使用して溶出した材料をPBSに緩衝液交換し、タンパク質のアミノ酸配列に基づく吸光係数を使用してIgGの濃度を分光光度的に測定した。SEC−HPLCおよびSDS−PAGEを使用して精製されたタンパク質を凝集または分解について分析した。
【0228】
実施例3.Raji(B細胞)およびJurkat(T細胞)二重細胞アッセイ中のCTLA−4バリアントの生物学的活性
本明細書に記載のスクリーニング戦略は、インビトロT細胞刺激アッセイにおける、Fc融合相手とともに発現された1,000を上回るCTLA−4バリアントの生物学的活性の計測を含んだ。全ての異なる突然変異誘発戦略(エラープローンPCR、標的化突然変異誘発、ホットスポット組換えおよび合理的組換えを含む)からのCTLA−4バリアントを、生物学的活性について試験し、同様にFc融合フォーマットで発現された野生型CTLA−4(配列番号35)に対するそれらの生物学的活性により順位付けした。
【0229】
CTLA−4バリアントの生物学的活性を測定するため、試料を、Raji(B細胞)およびJurkat(T細胞)細胞からなる二重細胞アッセイに添加した。Jurkat細胞により発現されたCD28と、Raji細胞上で発現されたCD80(B7−1)およびCD86(B7−2)リガンドとの相互作用は、T細胞受容体のための共活性化シグナル(例えば、PHA(フィトヘマグルチニン))と組み合わせられ、Jurkat細胞からのインターロイキン−2(IL−2)放出をもたらす。可溶性CTLA−4は、CD80およびCD86リガンドに結合し得、それらとCD28との相互作用を遮断し、この応答を減衰させる。したがって、CTLA−4Igクローンの効力は、IL−2HTRFアッセイ(CisBio 64IL2PEC)において計測されるT細胞からのIL−2放出の阻害により測定する。
【0230】
384ウェル低タンパク質結合プレート(Greiner #781280)を使用して試験試料の11の1対3段階希釈を実施し、それは完全成長培地(RPMI1640 Glutamax、Invitrogen #61870、10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、Invitrogen #15140)中で行った。全ての試料希釈物を、細胞上の5〜30μg/mlの頂部細胞濃度から出発して二重で作製した。
【0231】
RajiおよびJurkat懸濁細胞を、フラスコから遠心分離バイアルに移し、240gにおいて5分間回転させた。両方の細胞系を成長培地中で750,000の細胞/mlの濃度において再懸濁させ、それぞれを0.02ml/ウェル(=15,000の細胞/細胞系/ウェル)において384ウェルMaxisorpプレート(Nunc464718)中にプレートアウトした。0.02mlを試料希釈物プレートから細胞プレートに移し、0.02mlの40μg/mlのPHA(Sigma #L−1668)(または陰性対照ウェルについては0.02mlの培地)を全ての他のウェルに添加して10μg/mlの最終濃度を得、37℃において5%のCOでインキュベートした。
【0232】
20〜24時間後、細胞上清をハーベストし、市販のIL−2HTRFキット(CisBio 64IL2PEC)を使用してIL−2分泌を計測した。手短に述べると、抗hIL−2クリプテート(ドナーフルオロフォア)および抗hIL−2d2(アクセプターフルオロフォア)の「マスターミックス」を、新たに構成されたコンジュゲート緩衝液(0.2%のBSA/0.8MのKF/PBS)中で1/200希釈することにより構成した。2ng/mlの頂部濃度を有する培地中で1対2希釈されたIL−2(NIBSC #96/504)を使用して8点の標準曲線を作成した。等容量の試薬マスターミックスおよび試料を384ウェル低容量アッセイプレート(Costar3676)中で混合し、室温において3〜168時間インキュベートした。Envision(Perkin Elmer)上で320nmの励起波長ならびに620nmおよび665nmの発光波長を使用してプレートを読み取った。
【0233】
%デルタFおよび特異的結合値は、それぞれのウェルについて以下のとおり計算した。
【0234】
【数1】
【0235】
培地のみのウェル(最小/非特異的結合(NSB))をバックグラウンドとして使用し、PHAのみのウェル(最大/合計)のウェルを使用してアッセイについての最大シグナルを決定した。Graphpad Prism(v5.01)ソフトウェアを使用して結果を分析し、最小二乗フィット法を使用する非線形回帰曲線フィットモデル(Log[阻害剤]対応答、可変傾斜)を使用してIC50濃度を決定した。
【0236】
以下の表は、同様にFc融合フォーマットで発現された野生型CTLA−4(配列番号35)に対して生物学的効力の有意な改善を有するとカテゴライズされたCTLA−4バリアント分子の数をまとめる。
【0237】
【表1】
【0238】
これら107のCTLA−4バリアントの反復試験後、正確なIC50計測値を決定し、Fc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)を上回る倍の改善が計算された。以下の表は、このデータを、突然変異誘発戦略のそれぞれからの最も強力なCTLA−4バリアントの一部についてまとめる。
【0239】
【表2】
【0240】
これらのCTLA−4バリアントの配列を図1Aに示す。
【0241】
Raji−Jurkat二重細胞アッセイにおける最も強力なCTLA−4バリアントの6つおよびFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)のIC50プロファイルを、図3Aに示す。
【0242】
実施例4.Raji(B細胞)およびプライマリーヒトCD4+T細胞二重細胞アッセイにおけるCTLA−4バリアントの生物学的活性
ヒト血液をCPT Vacutainer回収チューブ(BD Biosciences)中で回収し、400μlのCD4+RosetteSep精製試薬(Stem Cell Technologies)を添加した。20分間のインキュベーション後、チューブを1700gにおいて25分間回転させた。細胞を回収し、50mlのコニカルチューブに移し、350gにおいて10分間回転沈降させた。赤血球を、20mlのVitalize試薬中で再懸濁させ、30分から1時間インキュベートすることにより溶解させた。次いで、細胞を350gにおいて10分間回転沈降させ、T細胞培地(1%のAnti/Anti(Invitrogen)を補給したXvivo−15培地(Lonza))により1回洗浄した。1ml当たり100万の細胞のRajiおよびプライマリーヒトCD4+T細胞の懸濁液を完全T細胞培地中で調製し、96ウェルアッセイプレートに添加する直前まで別個に保持した。別個の96ウェルプレート(低タンパク質結合)において、CTLA−4バリアント分子の希釈物を、完全T細胞培地中で100μg/mlの初期濃度から出発し、12の1:5段階希釈を行って作製した。100μlのCTLA−4バリアント濃度のそれぞれを組織培養処理96ウェルアッセイプレートに分注した。RajiおよびヒトCD4+T細胞の細胞懸濁液を、1:1の比において混合し、抗CD3抗体(クローンUCHT1(BD Bioscience))を10μg/mlの最終濃度まで添加した。100μlの細胞懸濁液を、CTLA−4バリアントを含有するそれぞれのウェルに分注し、18から24時間インキュベートした。次いで、プレートを、350gにおいて5分間遠心分離し、上清を新たな96ウェルプレートに移すことによりハーベストした。ヒトIL−2Duosetキットを製造業者のプロトコル(R&D Systems)に従って使用してIL−2分泌を計測した。
【0243】
最も強力なCTLA−4バリアントの6つについてのプライマリーヒトCD4+T細胞アッセイにおけるFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)との効力の比較を、図3Bに示す。
【0244】
実施例5.カニクイザルからの末梢血単核細胞を使用する混合リンパ球反応におけるCTLA−4バリアントの生物学的活性
2つの別個の動物からのカニクイザル血液をCPT Vacutainer回収チューブ(BD Biosciences)中で回収し、1700gにおいて25分間回転沈降させた。細胞を回収し、50mlのコニカルチューブに移し、350gにおいて10分間回転沈降させた。赤血球を、20mlのVitalize試薬中で再懸濁させ、30分から1時間インキュベートすることにより溶解させた。次いで、細胞を350gにおいて10分間回転沈降させ、T細胞培地(1%のAnti/Anti(Invitrogen)を補給したXvivo−15培地(Lonza))により1回洗浄した。別個の96ウェルプレート(低タンパク質結合)において、CTLA−4バリアント分子の希釈物を、完全T細胞培地中で100μg/mlの初期濃度から出発し、12の1:5段階希釈を行って作製した。100μlのCTLA−4Ig希釈物を組織培養処理96ウェルアッセイプレートに分注した。それぞれの動物からのPBMC細胞懸濁液を1;1の比において混合し、100μlの細胞懸濁液を、CTLA−4Ig希釈物を含有する全てのウェルに分注し、24時間インキュベートした。次いで、プレートを350gにおいて5分間回転させ、上清を新たな96ウェルプレートに移すことによりハーベストした。カニクイザルIL−2ELISAキットを製造業者のプロトコル(MABTech)に従って使用してIL−2分泌を計測した。
【0245】
最も強力なCTLA−4バリアントの2つについてのカニクイザル混合リンパ球反応アッセイにおけるFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)との効力の比較を、図3Cに示す。
【0246】
実施例6.CD80およびCD86へのバリアント結合の特異性
活性化HRP標識キット(Pierce)を使用してCTLA−4バリアントをセイヨウワサビペルオキシダーゼにより標識した。B7ファミリーメンバー(R&D Systems)の細胞外ドメインのFc融合タンパク質を、Maxisorpプレート(Nunc)上でPBS中5μg/mlの濃度において一晩コートした。プレートを1%のBSAによりブロッキングし、HRP標識CTLA−4バリアントを種々の濃度において添加し、発色基質(BD OptEIA基質、BD Biosciences)を使用して結合タンパク質の量を測定した。
【0247】
他の関連タンパク質リガンドと比較したCD80およびCD86についての最も強力なCTLA−4バリアントの2つの特異性を図4に示す。
【0248】
実施例7.Fc介在性エフェクター機能の分析
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイ
ヒト血液をCPT Vacutainer回収チューブ(BD Biosciences)中で回収し、1700gにおいて25分間回転沈降させた。細胞を回収し、50mlのコニカルチューブに移し、350gにおいて10分間回転沈降させた。赤血球を、20mlのVitalize試薬中で再懸濁させ、30分から1時間インキュベートすることにより溶解させた。次いで、細胞を350gにおいて10分間回転沈降させ、T細胞培地(1%のAnti/Anti(Invitrogen)を補給したXvivo−15培地(Lonza))により1回洗浄した。500,000のPBMCを200ulのXvivo−15培地中で種々の抗体およびFc融合タンパク質の存在下でプレーティングした。24時間のインキュベーション後、抗CD19抗体(BD Biosciences)および7−AAD(Molecular Probes)により染色することによりフローサイトメトリーを使用してBリンパ球生存率を測定した。生存B細胞の数は、CD19および7−AADでもある前方/側方散乱特性による生存ゲート中の細胞の割合に500,000を乗じることによりそれぞれの試料について計算した。
【0249】
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ
ヒト血清を血清分離チューブ中で回収し、Xvivo−15培地に最終濃度10%w/vまで添加した。100,000のRaji B細胞を、種々の抗体およびFc融合タンパク質を含有する培地中で18時間インキュベートした。7−AAD(Molecular Probes)により染色することによりフローサイトメトリーを使用してRaji細胞生存率を測定した。生存細胞の数は、7−AADでもある前方/側方散乱特性による生存ゲート中の細胞の割合に100,000を乗じることによりそれぞれの試料について計算した。既に56℃において30分間加熱不活化されたヒト血清を含有する培地を対照として使用して補体介在性細胞傷害を確認した。TM改変を有する最も強力なCTLA−4バリアントの2つについてのエフェクター機能(ADCCおよびCDC)の無効化の実証を図5に示す。
【0250】
実施例8.ヒト、カニクイザルおよびマウスCD80およびCD86へのCTLA−4バリアント結合のカイネティック分析
CD80およびCD86試薬のクローニングおよび発現
ヒトおよびマウスからのCD80およびCD86の細胞外ドメイン(ECD)をコードするcDNA分子を、プライマー伸長PCRクローニングにより合成し、pDONR221(Invitrogenカタログ番号12536−017)中にクローニングした。ヒトおよびマウスCD80およびCD86についてのデータベース配列を使用した(表1参照)。カニクイザル配列は利用可能でなかったため、カニクイザルとアカゲザルとの間の予測される高い相同性に基づき、アカゲザルCD80(ensembleアクセッション番号ENSMMUG00000016367)およびCD86(ensembleアクセッション番号ENSMMUG00000000912)の配列を使用してカニクイザル中の遺伝子のコード配列を増幅させ得るプライマーを設計した。
【0251】
次いで、LR Gateway Clonase II酵素を製造業者の説明書(Invitrogenカタログ番号12538−120)に従って使用して細胞外ドメインをコードするcDNA断片を哺乳動物発現ベクターpDEST12.2(Invitrogen)に移した。pDEST12.2ベクターは、FLAG10×hisタグ(DYKDDDDKAAHHHHHHHHHH)を関心対象の挿入遺伝子とインフレームで含有するように、およびEBNA−1遺伝子産物を発現する細胞系(例えば、HEK293−EBNA細胞)中への形質移入時にエピソームプラスミド複製を可能とするpCEP4ベクター(Invitrogenカタログ番号V044−50)からのoriP複製起点の挿入によっても改変していた。HEK293−EBNA上清中で発現されたタンパク質を、Ni−NTA親和性クロマトグラフィー(Histrap HPカラム(GE Healthcareカタログ番号17−5248−02))を使用して精製し、次いでサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200カラム(GE Healthcareカタログ番号17−1069−01))を使用して精製した。
【0252】
【表3】
【0253】
【表4】
【0254】
結合親和性の表面プラズモン共鳴(SPR)分析
CTLA−4:CD80およびCD86相互作用のSPR分析は、Biacore 2000 SPR装置上で実施した。約200RUのCTLA4バリアントを、CM5 Biacoreチップ(GE healthcareカタログ番号BR−1000−14)にアミンカップリングキット(GE healthcareカタログ番号BR−1000−50)を使用して第1級アミン基を介して共有結合させた。HBS−EP緩衝液(GE healthcareカタログ番号BR−1001−88)中のCD80およびCD86の用量調整物を、固定化CTLA−4バリアント上で流動させた。全てのトレースを二重参照減算した。会合および解離定数をフィットさせる1:1Langmuirモデルを使用するBiacore評価ソフトウェアを使用して分析を実施した。バリアントが極めて急速なカイネティックスを有した場合、平衡分析を実施した。
【0255】
ヒト、カニクイザルおよびマウスリガンドについての選択CTLA−4バリアントおよびFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)の一価親和性(K、nM)を以下に示す。
【0256】
【表5】
【0257】
ヒト、カニクイザルおよびマウスリガンドについての選択CTLA−4バリアントの親和性の改善(Fc融合フォーマットの野生型CTLA−4を上回る倍の改善)を以下に示す。
【0258】
【表6】
【0259】
生物学的活性アッセイにおいて試験される最も強力なバリアントであるこれらのバリアントは、ヒトCD86リガンドよりも大きいヒトCD80リガンドに対する親和性獲得を実証することが見出された(図6にまとめるとおり)。類似のパターンのCD86よりも大きいCD80親和性獲得は、カニクイザルリガンドを使用して観察された。
【0260】
実施例9.Fc突然変異を有する野生型CTLA−4の加速安定性試験
CTLA−4タンパク質の発現、精製および定量
Fcバリアント1から4と融合している天然CTLA4細胞外ドメインをコードするcDNAを、pEE12.4(Lonza)中にクローニングし、CHO細胞中で発現させた。手短に述べると、1×10のCHOK1SV細胞(Lonza)を、プログラムU−024および5mcgの線形化プラスミドDNAを有するSolution Vを使用するnucleofection(Lonza)により形質移入した。形質移入後、細胞をCD−CHO(Invitrogen)、1×GSサプリメント、および50μMのMSX中で培養した。細胞は形質移入から約2週間後に成長し始め、そのとき、それらをタンパク質産生のために振とうフラスコ中に拡張させた。精製のため、Mabselect捕捉ステップから出発し、次いでSuperQアニオン交換ポリッシングステップを行い、次いでSECを行って凝集物を除去する一連のステップを使用した。タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2中で貯蔵した。
【0261】
安定性試験
異なるFcバリアントに融合しているCTLA−4分子に対して安定性試験を実施してそれらの安定性を比較し、最も安定なFc構成を決定した。試験された分子は:CTLA−4Fcバリアント−1(配列番号7);CTLA−4Fcバリアント−2(配列番号8);CTLA−4Fcバリアント−3(配列番号9);およびCTLA4Fcバリアント−4(配列番号10)を含んだ。Fcバリアント−1(配列番号57)、Fcバリアント−2(配列番号58)、Fcバリアント−3(配列番号59)およびFcバリアント−4(配列番号60)についてFc領域中のアミノ酸相違を図1Bで強調する。
【0262】
CTLA−4Fcバリアント−1(配列番号7)は、改変ヒンジを有するIgG1Fc領域(配列番号57)に融合している野生型CTLA−4(配列番号35)を含むアバタセプト分子である。
【0263】
CTLA−4Fcバリアント−2(配列番号8)は、Fc領域中でYTE突然変異を取り込むように改変されたアバタセプトであり、改変ヒンジおよびYTE突然変異を有するIgG1Fc(配列番号58)に融合している野生型CTLA−4(配列番号35)を含む。
【0264】
CTLA−4Fcバリアント−3(配列番号9)は、野生型ヒンジを含み、三重突然変異(TM)およびYTE突然変異をさらに含む、アバタセプト中で見られるC>S突然変異が復帰しているIgG1Fc(配列番号59)に融合している野生型CTLA−4(配列番号35)を含む。
【0265】
CTLA−4Fcバリアント−4(配列番号10)は、YTE突然変異および111位におけるプロリンを含むヒンジ領域突然変異を含むIgG4Fc(配列番号60)に融合している野生型CTLA−4(配列番号35)を含む。
【0266】
Swiss Protナンバリングの111位は、図1に示される対応するIgG1配列の配列番号56の残基14、またはIgG4の全長定常領域中の残基228に対応する。この位置におけるセリンのプロリンへの突然変異の導入は、鎖間ジスルフィド相互作用を安定化し、したがってIgG半分子の形成を最小化することが公知であり(Aalberse and Schuurman,Immunology 105(1):9−19 2002;Van der Neut Kolfschoten et al,Science 307(5844):1554−7 2007;Angal et al,Mol Immunol 30(1):105−8 1993;Schuurman et al Mol Immunol 38(1):1−8 2001)、したがって、候補薬物開発に伴う困難を最小化する。さらに、このプロリン残基はIgGの対応位置中で見出されるため、いかなる免疫原性の懸念も生じないと予期される。
【0267】
分子を液体形態で約10mg/mLにおいてPBS緩衝液中に入れた。Amicon μltra遠心式フィルター、30,000MWカットオフを使用して4つの分子を濃縮した。分子を標的容量が達成されるまで(30〜60分間)4200gにおいて遠心分離した。濃度を標準的な抗体吸光係数1.4を使用して分光光度的に計測した。最終濃度を71〜85mg/mlになるように計算した。この実施例において、抗体吸光係数1.4を使用したが、ポリペプチドの実際の吸光係数は、1.1により近いことが続いて決定された。したがって、これらの計算濃度は、実際に、91〜108mg/mlの濃度範囲を表す。所望により、超遠心を継続し、容量制限に供することにより高い濃度を達成することができる。
【0268】
それぞれのFcバリアントの試料を5℃および25℃において1ヵ月インキュベートした。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)は、4つの分子について分解率を決定し、比較するために使用される安定性を示すアッセイであった。SE−HPLCは、SOP DV−9525に従って1ml/分の流量で実行した。HPLCクロマトグラム中のモノマーピーク前に溶出する任意のピーク(モノマーの溶出時間未満の溶出時間を有する)を、凝集物ピークと命名する。HPLCクロマトグラム中のモノマーピーク後に溶出する任意のピーク(モノマーの溶出時間よりも長い溶出時間を有する)を、断片ピークと命名する。凝集物および断片の総割合は、クロマトグラム中の全てのタンパク質ピークの総面積分率としての凝集物ピークおよび断片ピークの面積により決定する。インキュベーション前、SE−HPLCを全ての試料に対して時点0のデータ点について実行した。その後、SE−HPLCデータを、25℃の安定性試験については毎週、5℃の安定性試験については2週間毎に回収した。両方の試験についての総持続時間は1ヵ月であった。1ヵ月データへの線形フィットを使用して計算された凝集、断片化および分解率を以下に示す。
【0269】
【表7】
【0270】
【表8】
【0271】
このデータに基づき、Fcバリアント−3(配列番号59)を、5℃および25℃の両方における最小の純度損失率に基づく最適な融合相手として選択した。
【0272】
実施例10.Fcバリアント−3に融合しているCTLA−4バリアントの加速安定性試験
Fcバリアント−3(配列番号59)に融合している最も強力なCTLA−4バリアント分子の6つに対して安定性試験を実施して最も安定なCTLA−4バリアントを決定した。このフォーマットで試験された分子は:バリアント1115(配列番号15)、バリアント1227(配列番号16)、バリアント1299(配列番号13)、バリアント1315(配列番号14)、バリアント1321(配列番号12)、バリアント1322(配列番号11)であった。
【0273】
分子を液体形態で約10mg/mLにおいてPBS緩衝液中に入れた。Amicon μltra遠心式フィルター、30,000MWカットオフを使用して6つの分子を濃縮した。分子を標的容量が達成されるまで(30〜60分間)4200gにおいて遠心分離した。アミノ酸配列を使用して吸光係数を計算した。計算吸光係数は、1315および1321については1.10;1115、1227、1299および1322については1.09であった。適切な吸光係数を使用して濃度を計測した。最終濃度は94.6〜101.6mg/mlであった。
【0274】
安定性試験は、上記セクションに記載の同一の指針に従って5℃および25℃において実施し、但し5℃の安定性試験について0および1ヵ月の時点のみで回収した。両方の試験についての総持続時間は1ヵ月であった。1ヵ月データへの線形フィットを使用して計算された凝集、断片化および分解率を以下に示す。
【0275】
【表9】
【0276】
【表10】
【0277】
バリアント1299および1322は、1ヵ月にわたる5℃および25℃試験の両方において最小の純度損失レベルを有することが見出された。したがって、安定性試験をバリアント1299および1322について5℃において6ヵ月まで延長した。月1回の時点から得られた結果を以下に示す。
【0278】
【表11】
【0279】
【表12】
【0280】
実施例11.四価CTLA−4分子の構築
四価CTLA−4発現ベクターの設計および構築
ニトロフェノール結合IgG NIP74(重鎖配列番号17;軽鎖配列番号18)を足場として使用して、CTLA−4を抗体VおよびV鎖の両方のアミノ末端に融合することにより四価CTLA−4を産生した(図7A)。2ステップPCR戦略を使用してCTLA−4をVおよびVに融合し、次いでPCR産物を、抗体定常ドメインを含有するIgG発現ベクター中にサブクローニングすることにより発現構築物を産生した。一次PCRは、フレキシブルリンカーをCTLA−4の3’末端ならびにVおよびVの5’末端において付加する遺伝子特異的プライマー(配列番号21〜28)によりCTLA−4およびIgGVおよびVを増幅させた。二次「プルスルー(pull−through)」PCRは、相補的リンカー配列のアニーリングによりCTLA−4をVおよびVの5’末端に結合させた。最終CTLA−4−V構築物は、BssHIIを5’末端において、およびBstEII部位を3’末端において導入するプライマー(配列番号29〜30)を使用して増幅させた。最終CTLA−4−VL構築物は、ApaLIを5’末端において、およびPacI部位を3’末端において導入するプライマー(配列番号31〜32)を使用して増幅させた。次いで、PCR産物をそれぞれの制限酵素により消化してからそれらを予め消化されたIgG発現ベクター(CTLA−4−VカセットについてはpEU1.4、CTLA−4−VカセットについてはpEU3.4)中に直接ライゲートし、それを使用して化学的にコンピテントな大腸菌(E.coli)DH5−アルファ細胞を形質転換した。配列番号19および20に対応する正確なクローンを発現試験のために配列分析により同定した。
【0281】
テトラマーCTLA−4の発現および精製
形質移入に要求されるプラスミド、CTLA−4重鎖融合物をコードするものおよびCTLA−4軽鎖融合物をコードするものの両方について、単一コロニーを使用して100μg/mLのアンピシリンを含有する100mlの2×TYブロスに植菌した。培養物を、37℃および300rpmにおいて一晩(16時間)インキュベートした。EndoFree Plasmid Maxi Kit(QIAGEN;12362)を製造業者の説明書に従って使用してプラスミドDNAを細菌ペレットから単離した。形質移入の朝、CHO細胞を、25μMのL−メチオニンスルホキシイミン(Sigma;M5379)を含有するCD−CHO培地(Invitrogen;10743−029)中で1ml当たり100万の細胞において播種した。細胞を500mlの容量で培養し、37℃、140rpm、80%の湿度および5%のCOにおいてインキュベートした。形質移入のためのDNA−PEI複合体を形成するため、250μgのそれぞれのベクターを混合し、150mMのNaCl中で希釈して1mlの最終容量で500μgのDNAを得た。次いで、DNAを1mlの5mg/mlのPEI(Polysciences;23966)と混合し、150mMのNaCl中で希釈し、室温において1分間インキュベートした。次いで、DNA−PEIミックスをCEP6培養物に慎重に添加し、次いでそれを24時間インキュベートしてから150mlのCD−CHO Efficient Feed B(Invitrogen;A10240)を添加した。次いで、培養物をさらに6日間インキュベートした。
【0282】
培養物を2000gにおいて30分間遠心分離し;次いで澄明化された培養物上清を500mlのStericup(Millipore;SCGVU05RE)に通して濾過した。澄明化された培養物上清からの四価CTLA−4の精製は、AeKTApurifier10システム(GE Healthcare;28−4062−64)および親和性クロマトグラフィーに続くゲル濾過クロマトグラフィーを使用して実施した。5mlのMabSelect Sureカラム(GE Healthcare;11−0034−94)を、10カラム容量のD−PBS(Invitrogen;14040−174)により平衡化した。澄明化された培養物上清をカラム上に流してからカラムをさらなる10カラム容量のD−PBSにより洗浄した。結合タンパク質を0.1Mのグリシン、pH2.7により溶出させ、1mlのフラクションを回収した。それぞれのフラクションを100μlの1MのTris、pH10により中和し、溶出タンパク質を含有するフラクションをプールし、Vivaspin、10,000MWCO濾過ユニット(Sartorius Stedim;VS2002)を製造業者の説明書に従って使用して2mlに濃縮した。2ml濃縮試料を、D−PBS中で平衡化されたHiLoad Superdex200、16/60ゲル濾過カラム(GE Healthcare;17−1069−01)上にロードした。プロセス全体にわたり、1.2mlのフラクションを回収した。正確な分子量の標的タンパク質を含有するフラクション(56mlの保持容量)をプールし、Vivaspin、10,000MWCO濾過ユニットを使用して1mlに濃縮し、−80℃において貯蔵した。
【0283】
精製されたテトラマーCTLA−4を、Raji−Jurkat二重細胞アッセイにおいてFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)とともにプロファイリングし、データを図8に示す。テトラマーCTLA−4およびFc融合フォーマットの野生型CTLA−4(配列番号35)についてのこのアッセイにおけるIC50値は、それぞれ1.93nMおよび11.39nMであった。このことは、ダイマーFc融合フォーマットからテトラマーIgG様フォーマットへの変換時に5.9倍の効力の獲得を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]