特許第6228972号(P6228972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228972
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】放射線検出装置および放射線検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20171030BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G01T1/167 C
   G01T1/36 D
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-513263(P2015-513263)
(86)(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公表番号】特表2015-520855(P2015-520855A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】GB2013051315
(87)【国際公開番号】WO2013175191
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】1209036.1
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179589
【弁理士】
【氏名又は名称】酒匂 健吾
(72)【発明者】
【氏名】イアン ラドレイ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ ハミルトン ダフ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ ジョアンナ ハークネス
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−003532(JP,A)
【文献】 特開2006−329845(JP,A)
【文献】 米国特許第04550381(US,A)
【文献】 特開2012−063333(JP,A)
【文献】 特開2011−089901(JP,A)
【文献】 特表2008−511009(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/106440(WO,A1)
【文献】 特開2001−133419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出モジュール、処理モジュール、および表示モジュールを備えた放射線検出装置であって、
前記検出モジュールが、複数の分離したエネルギーバンドにおいて分光学的な分解法で入射放射線を検出するよう構成された検出器を備え、
前記処理モジュールが、分光学的に分解されたデータを数値的に処理し、それにより、少なくとも前記検出器に入射する放射線の測定値を示す第1のデータ項目を生成するよう構成され、また、分光学的に分解されたデータを数値的に処理し、それにより、前記第1のデータ項目に適用可能な統計的確実性を示す第2のデータ項目を生成するよう構成され、
前記表示モジュールが、前記第1のデータ項目および前記第2のデータ項目の両方を表す表示を生成するよう構成され、
前記データ処理モジュールが、少なくとも収集入射放射線データを数値的に処理して真のスペクトルを表すデータを導出する第1の工程を実行するよう構成されたという点で、前記処理モジュールが、前記検出器に入射する放射線の測定値を示す第1のデータ項目を生成するよう構成され
計算された不確実性をデータ収集処理の進度の指標として用いるとともに、前記データ処理モジュールが、前記計算された不確実性が所定のしきい値を下回ることよって判定されるものと定義されたデータ収集段階の完了の定義を含むようプログラムされ、前記計算された不確実性を、そうして定義されたデータ収集段階の完了に至る進度またはその完了の指標として用い、また、前記データ処理モジュールが、計算された不確実性に応じてデータ収集の進度を示すデータを判定するよう構成され、前記表示モジュールが、該データを表示するよう構成された、放射線検出装置。
【請求項2】
前記処理モジュールが、前記真のスペクトルを用いて線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルを生成させるさらなる工程と、該線量率スペクトルなどの該累積強度データスペクトルを統計的に分析して不確実性の測定値を生成するさらなる工程とを実行するよう構成された、請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記データ処理モジュールが、収集入射放射線データを処理して、単純デコンボリューション、ベイズデコンボリューション、および例えばカイ二乗最小化法または非線形法を用いた反復前進法から選択された方法によって、真のスペクトルおよび/または累積強度データスペクトルを導出するよう構成された、請求項1または2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記データ処理モジュールが、ポアソン誤差計算、T検定分析、信頼限界解析から選択された方法によって不確実性の測定値を生成するよう構成された、請求項1〜3のいずれか一に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記検出器が、所期の検出スペクトルにわたる少なくとも3つのエネルギーバンドに入射放射線を同時に差異化させるよう構成された、請求項1〜4のいずれか一に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記検出器が、所期の検出スペクトルの少なくとも一部にわたり分光学的に可変の応答を示すことにより、複数のエネルギーバンドに入射放射線を同時に差異化させることができる、請求項1〜5のいずれか一に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記表示モジュールが、適切な表示手段上に、視覚的、可聴、または他の表現で各データ項目の定量化を同時に提示するよう構成された、請求項1〜のいずれか一に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
エックス線および/またはガンマ線などの高エネルギー電磁放射線ならびに亜原子粒子線の1つ以上から選択された高エネルギー放射線に対する検出器を含み、
前記検出器が、高エネルギー物理学用途に適した半導体材料の、1つ以上の検出素子を備え、該検出素子の少なくとも1つの半導体材料が、用いられる前記所期の放射スペクトルの少なくとも大部分にわたって分光学的に可変の応答を示すよう適応させた材料であるから、前記検出器が、所期の放射スペクトルの少なくとも一部にわたり分光学的に可変の応答を示すことにより、分光学的な情報を取得することが可能となり、複数の差異化されたエネルギーバンドにおいて入射放射線情報を同時に検出することが可能となる、請求項1〜のいずれか一に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記半導体材料が、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、およびそれらの合金から選択され、例えば、不可避不純物を除けば基本的に結晶性のCd1−(a+b)MnZnTe(a+b<1であって、aおよび/またはbは0であり得る)からなる、請求項に記載の放射線検出装置。
【請求項10】
携帯型検出器ユニットを備え、該携帯型検出器ユニットは、データ処理モジュールおよび表示モジュールとのデータ通信において、入射放射線に関する分光学的に分解されたデータを収集するとともに、適切な処理モジュールに取り込むことを可能にするために必要となり得るようなさらなる構成要素および制御電子装置と連携する1つ以上の検出素子を筐体内に備える検出器を含み、これにより、請求項1〜のいずれか一に記載の放射線検出装置を構成する放射線検出装置。
【請求項11】
少なくとも前記検出器、例えば請求項1〜10のいずれか一に記載の検出モジュールを備え、中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置にデータ通信をもたらすデータ通信手段を含む携帯型検出器ユニットと、
データ接続で接続された場合に、前記携帯型装置と前記追加のプログラム可能装置の組み合わせによって実行され、これにより、その組み合わせが請求項1〜10のいずれかによる検出モジュールおよびデータ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能する適切な機械可読命令とを、組み合わせて備える放射線検出装置。
【請求項12】
表示、好ましくはさらに複数の分離するエネルギーバンドに分光学的にされた検出放射線データの表示のための処理方法であって、
入射放射線が複数の分離したエネルギーバンドに分光学的に分解されるように、該入射放射線を検出器で収集する工程と、
分光学的に分解されたデータを数値的に処理して、少なくとも前記検出器に入射する放射線の測定値を示す第1のデータ項目を生成し、また、分光学的に分解されたデータを数値的に処理して、少なくとも前記第1のデータ項目に適用可能な統計的確実性を示す第2のデータ項目を生成する工程と、
必要に応じて、さらに前記第1のデータ項目および前記第2のデータ項目の両方を表す表示を提示する工程とを、含み、
前記分光学的に分解されたデータを数値的に処理して第1のデータ項目を生成する工程が、少なくとも収集入射放射線データを数値的に処理して真のスペクトルを表すデータを導出する第1の工程を有し、
計算された不確実性を、データ収集処理の進度の指標として用い、データ収集段階の完了が、前記計算された不確実性が所定のしきい値を下回ることにより判定されるものとして定義され、前記計算された不確実性が、そのように定義されたデータ収集段階の完了に至る進度またはその完了の指標として用いられ、また、前記表示工程が、計算された不確実性に応じてデータ収集の進度を示す表示を提示する工程を備える、方法。
【請求項13】
前記データ処理工程が、前記真のスペクトルを用いて線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルを生成させるさらなる工程と、該線量率スペクトルなどの該累積強度データスペクトルを統計的に分析して不確実性の測定値を生成するさらなる工程とを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
真のスペクトルおよび/または累積強度データスペクトルを導出する前記工程が、単純デコンボリューション、ベイズデコンボリューション、および例えばカイ二乗最小化法または非線形法を用いた反復前進法から選択された工程を備える、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
不確実性の測定値を導出する前記工程が、ポアソン誤差計算、T検定分析、信頼限界解析から選択された工程を備える、請求項12〜14のいずれか一に記載の方法。
【請求項16】
放射線の検出方法であって、請求項12〜15のいずれか一に記載の方法を含み、
入射放射線が複数の分離したエネルギーバンドに分光学的に分解されるように、該入射放射線を検出器で収集する前記工程が、請求項1〜11のいずれか一に記載の検出装置を検査する環境下に置き、適切な期間の間、前記検出器における入射放射線を収集することによって行われる、方法。
【請求項17】
適切なプログラム可能装置に搭載可能なコンピュータプログラム命令セットであって、
搭載された場合、前記プログラム可能装置が、請求項1〜11のいずれか一の装置に応じたデータ処理モジュールおよび/もしくは表示モジュールを少なくとも構成するか、または請求項12〜16のいずれか一の前記データ処理工程および/もしくは表示工程を少なくとも実行し、
また、携帯型検出器ユニットと組み合わせて設けられ、該携帯型検出器ユニットは、入射放射線に関する分光学的に分解されたデータを収集するとともに、適切な処理モジュールに取り込むことを可能にするために必要となり得るようなさらなる構成要素および制御電子装置と連携する1つ以上の検出素子を筐体内に備えた検出器を含み、合わせて中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置を使用時に変換し、請求項1〜11のいずれか一に記載の放射線検出装置として機能するよう構成される、コンピュータプログラム命令セット。
【請求項18】
中央処理装置を含む既存のプログラム可能装置を、本発明の第1の態様による検出装置
として機能するよう構成する方法であって、
携帯型検出器ユニットを、データ通信で中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置
に接続し、該携帯型検出器ユニットは、入射放射線に関する分光学的に分解されたデータ
を収集するとともに、適切な処理モジュールに取り込むことを可能にするために必要とな
り得るようなさらなる構成要素および制御電子装置と連携する1つ以上の検出素子を筐体
内に備える検出器を含む、工程と、
前記携帯型装置と前記追加のプログラム可能装置の組み合わせによって実行され、これ
により、その組み合わせが請求項1〜11のいずれか一による検出モジュールおよびデー
タ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能する適切な機械可読命令を搭載する工
程、とを備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置、放射線検出方法、例えば適切なプログラム可能装置と組み合わせて放射線検出方法を実施するためのパーツキット、および関連概念に関する。本発明は、とりわけ携帯用途、非熟練者ユーザによる使用に適し、既存の計算処理手段および特に、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話等、カスタムメイド携帯機器、パーソナルコンピュータ等に搭載されるような携帯型プロセッサとの併用に適した放射線検出装置および放射線検出方法に特に関する。本発明は、ハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアの適切な組み合わせにより実現される装置および方法や、必要に応じて携帯機器およびそのためのコンピュータ可読命令を備えるパーツキットや、収集した放射線データの処理方法および表示方法に関し得る。
【0002】
特に例えば非熟練者ユーザによって、様々な場所で容易に用いることができる簡易な携帯型放射線検出器を提供することが望ましい多くの理由が考えられる。このような簡易な検出器は、安全または保安装置として有用である場合があり、このような検出器を多数提供することは、個人レベルだけでなく地域社会においてある程度の環境安全および保安を提供するのに有用である。
【0003】
例えばカスタムメイドの処理装置または適切なコンピュータ上のプロセッサなどである、適切な処理装置を介した処理および表示に適した態様で入射放射線に関するデータを検出する分離式携帯型検出モジュールを設けることにより、検出装置の携帯性を向上させることが可能となり得る。
【背景技術】
【0004】
従来技術の携帯型の放射線検出器は公知である。それらは一般的に、携帯型ガイガー管または他の単純な放射線線量計などを備える。それらは一般的に、入射放射線の強度を粗計数率モデルで測定する。そのデータは単純かつ絶対的である。例えば、このような簡易な検出器は、入射放射線についての分光学的な分解情報を提供しない。例えば線源の識別を補助したり、核種を表示したりする、このようなより総合的な入射放射線の分光学的な分解表示により取得し得るさらなる情報は提供されない。データを統計的に処理できる範囲は制限されている。例えば、線量率の計算に分光学的に分解された強度を用いると有利である。線量はエネルギーに依存し、また、収集された光子の平均エネルギーについて想定する必要がないため、実際の線量はより正確となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存システムの欠点の少なくとも一部を軽減する放射線検出装置および放射線検出方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、特に放射線の性質の識別を改善し、および/または収集データの特異性の統計的分析を改善し、例えば任意の強度表示数値の統計的確実性の目安を与えて、データ処理の可能性を高める放射線検出装置および放射線検出方法を提供することを特に目的とする。
【0007】
本発明は、例えば非熟練者ユーザによる、野外における携帯操作に適した放射線検出装置および放射線検出方法を提供することを特に目的とする。
【0008】
本発明は、遠隔地における中央処理装置と連携させた使用に適した携帯検知部により実現される放射線検出装置および放射線検出方法を提供することを特に目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、第1の最も完全な態様の発明によれば、放射線検出装置は、検出モジュール、処理モジュール、および表示モジュールを備え、
検出モジュールが、複数の分離したエネルギーバンドにおいて分光学的な分解法で入射放射線を検出するよう構成された検出器を備え、
処理モジュールが、分光学的に分解されたデータを数値的に処理し、それにより、少なくとも検出器に入射する放射線の測定値を示す第1のデータ項目および第1のデータ項目に適用可能な統計的確実性を示す第2のデータ項目を生成するよう構成され、
表示モジュールが、第1のデータ項目および第2のデータ項目の両方を表す表示を生成するよう構成される。
【0010】
この検出器は、複数の分離したエネルギーバンドにおいて分光学的な分解法で入射放射線を検出するよう構成されるが、それは、所期の検出スペクトルにわたる複数のエネルギーバンド、好ましくは少なくとも3つのこのようなエネルギーバンドに入射放射線を同時に差異化させるよう構成されるという意味である。例えば、検出器は、所期の検出スペクトルの少なくとも一部にわたり分光学的に可変の応答を示すことにより、複数のエネルギーバンドに入射放射線をこのように同時に差異化させることができる。
【0011】
データ処理モジュールは、システムのその特徴を活用して、分解入射放射線データセットを共処理し、それによりさらなる情報を導出するよう構成される。特に、データ処理モジュールが、検出器に入射する放射線の強度を何らかの方法で示す第1のデータ項目を生成するだけでなく、第1のデータ項目を生成したデータの質を統計的に分析するために、検出器に入射する放射線に関する、収集され分光学的に分解されたデータを数値的に処理するよう構成されることは、本発明の特殊な特徴である。この分析の目的は、第1のデータ項目の不確実性の定量化指標を生成することである。当業者にとって多様な統計的技術が容易に使用可能であり、多くの可能性のある例を以下に提示する。採用される統計的技術が、第1のデータ項目を生成した収集データにおける分光学的な分解能を活用する数値解析を行い、これにより第2のデータ項目として第1のデータ項目の不確実性の定量化された測定値を生成する限り、本発明は特定の統計的技術に限定されない。
【0012】
これは、本明細書に記載する発明の所期の使用法におけるあらゆる態様を特徴づける重要な特徴である。検出器は、複数の分離したエネルギーバンドにおいて分光学的な分解法で入射放射線を検出するよう構成される。検出器において収集された入射放射線に関する分光学的に分解されたデータを用いて、少なくとも、データ処理モジュールが、このスペクトル分解能を活用して、分解入射放射線データの適切な数値的統計的分析によって、そうして収集された入射放射線データ、例えば任意の累積の収集強度データまたは累積の収集強度スペクトルまたは線量率スペクトルの不確実性の定量化を改善するよう構成される。
【0013】
表示モジュールは、第1のデータ項目および第2のデータ項目の両方を表す表示を生成するよう構成される。そのため、表示モジュールは、検出器で収集された放射線の測定値の表現を含み、その測定値の不確実性における特定の数値計算による定量化をさらに含む表示を生成するよう構成される。そのため、表示モジュールは、検出器に入射する放射線強度の測定値の表現を含み、その測定値の不確実性における特定の数値計算による定量化をさらに含む表示を生成するよう構成される。
【0014】
第1のデータ項目は、検出器における入射放射線、例えば入射放射線強度に関係する、例えば関数的に関係する任意の項目であり得る。これは未処理データの測定値である必要はない。より一般的には、第1のデータ項目は、検出器における入射放射線、例えば入射放射線強度に基づいて導出された定量化であり得、例えば、可能性のある場合では線量率である。第2のデータ項目は、測定値、例えば線量率の不確実性を数値的に定量化する項目であり得る。この、強度関連データおよび不確実性データの両方の表現を組み合わせることは、従来技術では提案されておらず、本発明にしたがって採用される数値解析技術により、収集スペクトルの分光学的な分解能による追加情報を活用することで、これが可能となる。
【0015】
そのため、本発明の要点は次のことにある。すなわち、収集された放射線データにおける分光学的な分解能が、検出器がそのデータの統計的有意性分析を行うことができる手段、つまり入射放射線、特に入射放射線の強度に関する定量的測定値および入射放射線のその定量的測定値における不確実性の定量的測定値を示し、例えば検出器における累積収集強度などの強度または累積集積強度スペクトルまたは線量率とその累積強度または線量率の不確実性との両方の定量的測定値を示す手段を提供することにある。
【0016】
第1のデータ項目は、累積線量測定値、線量率、累積スペクトル、または検出器における放射線強度から何らかの方法で導出される他の任意の測定値のいずれかとして示され、検出器における入射強度に関係する、例えば関数的に関する、いずれかの任意の項目であり得る。簡単にするために、本明細書においては、このようなデータ項目を強度測定値として言及するため、その意味で理解されたい。
【0017】
最も広範には、本発明の装置は本質的に、収集された入射放射線データの分光学的な分解能を活用して収集入射放射線データの測定値の不確実性を分析し、表示するが、収集強度を示す測定値自体の測定および表示は分光学的に分解する必要はない。しかしながら、強度データを分光学的に分解することも、複数のエネルギーバンドにわたって分光学的に分解した強度データを示すことも可能となりうることが本発明の検出器の特徴である。例えば後者が可能な場合では、スペクトル全体に対し、かつ/あるいは各バンドにおけるデータに対して不確実性の測定値が示される。データ処理モジュールおよび表示モジュールは、例えばその特徴に適応するように構成され得る。
【0018】
すなわち、処理モジュールは、分光学的に分解されたデータを数値的に処理し、それにより検出スペクトルの少なくとも一部にわたる複数のエネルギーバンドで、少なくとも検出器に入射する放射線の測定値、例えば放射線強度を示す第1のデータ項目セットを生成するよう構成され得、表示モジュールは、複数のエネルギーバンドにわたって差異化された第1のデータ項目セットを表す表示を生成するよう構成され得る。こうして、本実施形態では、処理モジュールが、検出器に入射する放射線に由来する強度スペクトルまたは線量率スペクトルなどのスペクトルを発生させ、表示モジュールが該スペクトルを表示する。第1のデータ項目セットを構成する複数の第1のデータ項目が、例えば同時に強度スペクトルまたは線量率スペクトルとして表示され得る。
【0019】
例えば、このような分光学的に分解された収集入射放射線データ情報を用いて、上述のように、またはさらなる数値解析によって、例えば特定のターゲット核種の識別し、自然線源と人工線源の比較を可能にし、特定の人工線源を識別するなどのための、線源核種の識別に関する指標を示すことができる。
【0020】
好ましくは、データ処理モジュールが、分解された入射放射線データセットを処理し、このデータセットから強度データが検出器で収集されるにつれ徐々に不確実性情報を得るよう構成され、表示モジュールがこれに対応して、データが時間の経過とともに徐々に収集されるにつれ変化する第1および第2のデータ項目の両方を典型的な方法で表示するよう構成される。すなわち、徐々に変化する入射放射線の測定値およびそれに対応して変化する不確実性、つまりデータが時間の経過とともに徐々に収集されるにつれ生成される完全な画像を反映して変化する不確実性を、データ処理モジュールで生成し、表示モジュールで表示する。一般的には、例えばこれにより、ユーザが入射放射線の表示値を監視し、一般的な場合では収集データの量が増加するにつれ高まる確実性の度合いの表示を受けることができる。
【0021】
計算された不確実性は、直接または間接的にデータ収集処理の進度の指標として用い得ることが分かる。特に、データ収集段階の完了は、計算された不確実性が所定のしきい値を下回ることにより判定されるものとして定義され得る。計算された不確実性は、直接または間接的に、そのように定義されたデータ収集段階の完了に至る進度またはその完了の指標として用い得る。例えば、不確実性情報の表示の一部として、またはそれとは別に、処理モジュールは、計算された不確実性に応じてデータ収集処理の進度を示すデータを判定するよう構成され、表示モジュールが、該データを表示するよう構成され得る。例えば、これは、計算された不確実性が所定のしきい値を下回ることにより判定される、データ収集段階の完了を示す完了指標となり得る。これは、時間の経過とともにデータが徐々に収集されるにつれ所定のしきい値に向かって低下する、計算された不確実性により判定される、データ収集段階の進度を示す完了進度指標となり得る。
【0022】
本発明は、特に、分光学的に分解された収集強度データ情報を、強度測定値などの入射放射線の測定値である第1のデータ項目、例えば強度スペクトルまたは線量率スペクトルの決定のみならず、決定された強度測定値における統計的不確実性である第2のデータ項目の数値計算でも基礎として用いること、および決定された入射放射線の測定値の表示とともにその統計的不確実性を表示することにある。
【0023】
これらの2つの項目を合わせた表示では、表示モジュールの適切な表示手段上に、視覚的、可聴、または他の表現で各データ項目の定量化が同時にまたは間断なく連続して提示される。各データ項目の定量化表現は、異なる感覚様相(例えば視覚的および可聴の)によって同時に表示される離散的表現の形式で、同時にかつ離間して表示される離散的視覚的表現ディスプレイの形式で、または連続的な離散的表現の形式で示され得、あるいは各データ項目の同時定量化を示す単一の表現の形式で示し得る。好ましい場合では、第1および第2のデータ項目が同時に表示される。特に好ましい場合では、各データ項目を視覚的に表現する定量化は、単一の視覚的表現が各データ項目の同時定量化を示して表示される点で、同時に行われる。
【0024】
単一の視覚的表現が各データ項目の同時定量化を示して表示されるような場合、空間分解能を用いてさらなる情報を提供し得る。例えば、スペクトル分解能は、複数のエネルギーバンドに割り当てられる複数の部分に表示を分割することにより、空間的に表される複数のエネルギーバンドにわたって分解したデータや、単一のこのような部分に同時に表示される各エネルギーバンドの第1および第2のデータ項目とともに、空間的に与えられる。
【0025】
組み合わせた視覚的表示が、多様な方式を用いるよう適応させて各データ項目の、例えば色、明るさ、彩度、ピクセル化、英数字による表現などを含む定量化表現を提供し得る。単一の視覚的表現が各データ項目の同時定量化を示して表示されるような好ましい場合、少なくとも1つの別のこのような方式を用いて各データ項目を示し得る。
【0026】
検出する放射線は、例えば電離放射線などの高エネルギー放射線、例えばエックス線および/もしくはガンマ線などの高エネルギー電磁放射線、または亜原子粒子線であり、検出器はこのスペクトルの放射線を検出することに対応するよう構成される。
【0027】
検出器は、好ましくは、このスペクトルの少なくとも一部にわたり分光学的に可変の応答を示すことにより、分光学的な情報を取得することが可能となり、また複数の差異化されたエネルギーバンドにおいて入射放射線の情報を同時に検出することが可能となる。好ましくは、入射放射線データを、少なくとも3つのエネルギーバンド間で同時に分光学的に分解する。
【0028】
本発明の実施に適切な検出器は、高エネルギー放射線、例えばエックス線もしくはガンマ線などの高エネルギー電磁放射線または亜原子粒子線に対する検出器として作用し得る材料などの、高エネルギー物理学用途に適した半導体材料の1つ以上の検出素子を備える。得られる検出素子は、このような材料の少なくとも1つの層を備え、そのため、これは、高エネルギー物理学用途に適応させた装置、例えばエックス線もしくはガンマ線などの高エネルギー放射線または亜原子粒子線に対する検出器である。
【0029】
本発明によれば、収集データは、線源のスペクトル内の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって分光学的に分解される。検出素子の少なくとも1つの半導体材料は、用いられる所期の放射スペクトルの少なくとも大部分にわたり、分光学的に可変の応答を示すよう適応させた材料であることが好ましい。特に、本質的に、直接材料特性として、用いられる放射線スペクトルの異なる部分に対し、直接的に可変な電気応答、例えば光電応答を示す半導体材料を用いる。
【0030】
好ましい実施形態では、半導体材料を、バルク結晶として、例えばバルク単結晶(この文脈におけるバルク結晶は、少なくとも500μm、好ましくは少なくとも1mmの厚さを示す)として形成する。
【0031】
好ましい実施形態では、半導体材料は、II−VI属半導体から選択してもよく、特にテルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、およびそれらの合金から選択してもよく、例えば、不可避不純物を除けば基本的に結晶性のCd1−(a+b)MnZnTe(a+b<1であって、aおよび/またはbは0であり得る)からなる。検出器は、付加機能のために他の材料の他の検出素子をさらに有し得る。
【0032】
本発明の第1の態様の検出器は、互いに緊密に関連し合うような検出素子を、例えば筐体内に、携帯可能な態様で備えて、例えば携帯型検出器ユニットを構成し、これとともに、入射放射線強度に関する分光学的に分解されたデータを収集し、かつ適切な処理モジュールに取り込むことを可能にするために必要となり得るような、適切なさらなる構成要素および制御電子装置が筐体内または他の場所に設けられると好都合である。
【0033】
検出モジュールは、このような検出器を含み、最も完全な本発明の第1の態様を実施する完全な検出装置は、上述のとおり、この検出モジュールをデータ処理モジュールおよび表示モジュールと組み合わせる。これを前提として、本発明にしたがって検出モジュールのさらなる機能を実現する厳密な手段ならびにデータ処理モジュールおよび表示モジュールを実現する厳密な手段は、限定されない。
【0034】
特に、他の場合において、検出モジュールは、検出器と一体または検出器とは分離されたカスタムメイドの装置に内蔵されるか、これにより実行されるか、もしくはこれに設けられるか、または検出器がともに使用するために設けられ、検出器が使用にあたり機能的に接続される、中央処理装置を含むさらなる装置に設けられる、追加のハードウェア、ファームウェアおよびソフトウェアの任意の適切な組み合わせを含み得、処理モジュールおよび表示モジュールもこれらの組み合わせを含み得る。
【0035】
本発明の第1の態様の装置は、検出モジュール、処理モジュールおよび表示モジュールの機能を併せ持つ一体型装置を備え得、あるいは複数の離散ユニットから形成され得る。後者の場合、1つまたは複数のカスタムメイドの離散ユニットを、中央処理装置を含む1つまたは複数の既知のプログラム可能装置など、1つまたは複数の既知の装置とともに用いるよう構成し得え、例えば適切な装置可読命令が設けられた既知のプログラム可能装置の場合、離散ユニットと既知の装置が組み合わさって、上述のような検出モジュールならびデータ処理モジュールおよび表示モジュールの組み合わせを構築するようにする。
【0036】
本発明の原理の特に好ましい実施態様では、本発明の第1の態様による検出装置は、
少なくとも検出器、例えば上述のような検出モジュールを備え、中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置にデータ通信をもたらすデータ通信手段を含む携帯型検出器ユニットと、
データ接続で接続される場合、携帯型装置と追加の装置の組み合わせによって実行され、これにより、その組み合わせが上述のような検出モジュールおよびデータ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能する適切な機械可読命令とを、組み合わせて用いることにより実現される。特に、その組み合わせ、特に適切な機械可読命令でプログラムされた場合の追加のプログラム可能装置は、上述のようなデータ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能し、かつ/あるいは、本明細書に記載のデータ処理工程および表示工程を行う。
【0037】
携帯型検出器ユニットは、互いに緊密に関連し合うような上述の適切な検出素子を、例えば筐体内に、携帯可能な態様で備え、これとともに、入射放射線強度に関する分光学的に分解されたデータを収集し、かつ適切な処理モジュールに取り込むことを可能にするために必要となり得るような、適切なさらなる構成要素および制御電子装置が筐体内または他の場所に設けられ、例えば分解されたデータを分析するためのマルチチャンネルアナライザを含み、例えばそのような分解されたデータの転送を可能とするように、携帯型ユニットを適切な処理モジュールに接続するためのデータ接続手段を含む。
【0038】
したがって、好ましい場合では、本発明の第1の態様による検出装置は、使用に当たり、中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置とデータ接続する上述の検出器を少なくとも備え、上述のようなデータ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能させ、かつ/あるいは上述のデータ処理工程および表示工程を行わせるための適切なプログラム命令を保持する携帯型検出器ユニットにより実現される。
【0039】
適切な追加のプログラム可能装置は、例えば、データ通信および転送のために携帯型検出器ユニットを接続し得る、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯電話等などの、視覚的または他の表示能力を有する携帯型計算処理装置、またはカスタムメイドの携帯型装置である場合がある。
【0040】
適切なプログラム命令を、追加のプログラム可能装置の処理装置に対し実行することにより、処理装置がデータ処理モジュールとして機能し得、そこに搭載されたディスプレイが表示モジュールとして機能し得る。このため、当該プログラム命令と組み合わせた携帯型検出器ユニットは、このような追加のプログラム可能装置の変換を含み、この追加のプログラム可能装置を本発明の第1の態様による放射検出器に変換することができる。
【0041】
したがって、本発明の第1の態様の最大の範囲を逸脱することなく、処理モジュールを、すべてまたは部分的に離散的装置またはその一部として構成し、かつ/あるいはすべてまたは部分的に、追加のプログラム可能装置とともに用いる際に同等の機能を実現するための適切なプログラム命令として構成し得る。
【0042】
同様に、表示手段は、すべてまたは部分的に離散的装置内に設けられ、かつ/あるいはすべてまたは部分的に、追加のプログラム可能装置とともに用いる際に同等の機能を実現するための適切なプログラム命令の形で設けられ得る。
【0043】
こうして第1の態様の発明は、本実施形態において、適切な離散的携帯型ユニットが適切なプログラム可能装置とデータ接続で連携する場合に完全に実施される。
【0044】
したがって、さらなる態様の発明によれば、適切なプログラム可能装置を本発明の第1の態様による放射線検出装置に変換するためにプログラム可能装置との使用に適したパーツキットが提供される。
【0045】
このようなパーツキットは、例えば、少なくとも検出器、例えば上述のような検出モジュールを備え、中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置にデータ通信をもたらすデータ通信手段を含む携帯型検出器ユニットと、
データ接続で接続される場合に、携帯型検出器ユニットと追加のプログラム可能装置の組み合わせによって実行され、そのように接続されプログラムされたその組み合わせが、上述の検出モジュール、データ処理モジュールおよび表示モジュールを構成する適切な機械可読命令とを、備える。
【0046】
機械可読命令は、携帯型検出器ユニット上の適切なデータ媒体にプログラム命令を備えるかそうでなくともよく、あるいは携帯型検出器ユニットによって、例えば遠隔ダウンロードによって、アクセス可能にされ、これにより、携帯型検出器ユニットがデータ接続でプログラム可能装置に接続される場合に、携帯型ユニットとプログラム可能装置の組み合わせが上述のデータ処理モジュールおよび表示モジュールを含むようにする一連の処理工程を、プログラム可能装置の中央処理装置で実行する。
【0047】
本発明は、任意の適切なデータ接続が、携帯型検出器ユニットとプログラム可能装置の間で例えば有線または無線で利用され、例えば携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットなどの既定規格にしたがって従来搭載されるような、光接続および音声接続等を含むことを想定している。好ましくは、このようなプログラム可能装置に従来搭載される既存の標準的な接続を利用する。これは、一次デジタルデータダウンロード接続である必要はない。このような一次デジタルデータ接続は空けておくことが望ましい場合もある。そのためには、可能性のある実施形態では、携帯型検出器ユニットを、オーディオジャックなど二次データリンクによってデータをプログラム可能装置にダウンロードするためのデータ接続をもたらすよう構成する。
【0048】
類推から理解されるように、本発明は、表示の処理および検出放射線の表示の方法、上述の装置の使用方法および中央処理装置を含む既存のプログラム可能装置を上述の装置として機能するよう構成する方法を包含する、放射線を検出するための方法を含む、前述の原理の一部またはすべてを実施する方法をさらに備える。
【0049】
特に、さらなる態様において、本発明は、分光学的な分解法で複数の分離したエネルギーバンドに分解された入射放射線データを収集し、該データから、少なくとも検出器に入射する放射線の測定値、例えば放射線強度を示す第1のデータ項目および第1のデータ項目に適用可能な統計的確実性を示す第2のデータ項目を計算し表示する、上述の装置の使用方法を含む。
【0050】
特に、方法のさらなる態様において、本発明は、表示、好ましくはさらに複数の分離するエネルギーバンドに分光学的にされた検出放射線データの表示のための処理方法であって、
分光学的に分解されたデータを数値的に処理し、少なくとも検出器に入射する放射線の測定値、例えば放射線強度を示す第1のデータ項目および第1のデータ項目に適用可能な統計的確実性を示す第2のデータ項目を生成する工程と、
必要に応じて、第1のデータ項目および第2のデータ項目の両方を表す表示を提示する工程とを含む方法を、含む。
【0051】
特に、方法のさらなるより完全な態様において、本発明は、放射線の検出方法であって、前述の工程の実行に先立ち、
検出器における入射放射線を、例えば上記のような検出装置などの適切な放射線検出装置を検査する環境下に置き、適切な期間の間、検出器における入射放射線を収集することによって、該入射放射線が複数の分離したエネルギーバンドに分光学的に分解されるように、収集する工程をさらに備える方法を含む。
【0052】
したがって、本発明の方法態様の原理は、装置態様の原理に類似し、以下に検討される特徴を含むがそれらに限定されない好適な特徴は類推により理解されるだろう。
【0053】
特に、その方法は、分光学的な分解法で収集され、複数の分離したエネルギーバンドに分解された入射放射線を活用するが、それは、好ましくは所期の検出スペクトルにわたる複数のエネルギーバンド、好ましくは少なくとも3つのこのようなエネルギーバンドに入射放射線を同時に差異化させるよう構成されるという意味である。
【0054】
スペクトル分解能は、分解された入射放射線データセットをこれらの複数のエネルギービンにわたり共処理し、さらなる情報を導出することにより活用される。特に、第1のデータ項目が放射線の強度を何らかの方法で示すよう生成されるだけでなく、放射線強度に関する第1のデータ項目を生成したデータの質の統計的分析を実行するために、分光学的に分解されたデータが数値的に処理され、これにより第1のデータ項目の不確実性の定量化指標が生成される。
【0055】
分光学的に分解された入射放射線データを用いて、少なくとも、分解強度データの適切な数値的統計的分析によって、そうして収集された入射放射線データ、例えば任意の累積の収集強度データまたは累積収集強度スペクトルまたは線量率スペクトルの不確実性の定量化を改善する。
【0056】
さらなる表示工程では、表示は、測定された入射放射線データ、例えば何らかの方法による収集された放射線の強度の表現を含み、その入射放射線の測定値の不確実性における特定の数値計算による定量化をさらに含み、これを提示し得る。この、入射放射線データおよび不確実性データの両方の表現を組み合わせることは、従来技術では提案されておらず、本発明にしたがって採用される数値解析技術により、収集スペクトルの分光学的な分解能による追加情報を活用することで、これが可能となる。
【0057】
最も広範には、本発明の方法は本質的に、収集されたデータの分光学的な分解能を活用して収集されたデータを表す測定値の不確実性を分析し、表示するが、収集されたデータ自体の測定および表示は分光学的に分解する必要はない。ただし、好ましい場合では、このような入射放射線データも分光学的に処理され、複数のエネルギーバンドにわたって分光学的に分解して提示され、例えばこの場合では、スペクトル全体に対し、かつ/あるいは各バンドにおけるデータに対して不確実性の測定値が提示される。例えば、このような分光学的に分解された収集入射放射線データ情報を用いて、上述のように、またはさらなる数値解析によって、例えば特定のターゲット核種を識別し、自然線源と人工線源の比較を可能にし、特定の人工線源を識別するなどのための、線源核種の識別に関する指標を示すことができる。
【0058】
好ましくは、データ処理工程は、入射放射線データが時間の経過とともに検出器で収集されるにつれ徐々に収集されたデータに対し繰り返し行われる工程を備え、表示工程はこれに応じて、データが時間の経過とともに徐々に収集されるにつれ変化する第1および第2のデータ項目の両方を典型的な方法で提示する。
【0059】
前述の方法工程の他の好ましい特徴は、装置の実施形態およびその作用の記述から類推される。
【0060】
本発明の上記態様の方法におけるデータ処理工程または表示工程は、少なくとも一部が、適切な機械可読命令、データまたはコードのセットにより実行され得ることは一般的に理解されるだろう。
【0061】
これらの機械可読命令、データまたはコードを汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に搭載して明記した工程を実行するための手段をもたらす。また、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置が特定の方法で機能するよう命令することができるこれらの機械可読命令、データまたはコードを、コンピュータ可読媒体に格納してもよく、これにより、コンピュータ可読媒体に格納された命令が、本発明の方法における数値的工程の一部またはすべてを実行する命令手段を含む製品を生成するようにし得る。
【0062】
計算機プログラム命令、データまたはコードをプログラム可能装置に搭載してコンピュータ実行プロセスを実行可能な機械を製造し、命令がプログラム可能装置上で実行され、本発明の上記態様の方法における工程の一部またはすべてを実施するための工程をもたらすようにし得る。例えば、コンピュータプログラム命令、データ、コードをプログラム可能装置に搭載して、プログラム可能装置を少なくとも上記にしたがうデータ処理モジュールおよび/もしくは表示モジュールに変換するか、または少なくとも上記にしたがうデータ処理工程および/もしくは表示工程を実行し得る。適切な追加のプログラム可能装置は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯電話等などの、視覚的または他の表示能力を有する携帯型計算処理装置、またはカスタムメイドの携帯型装置である場合がある。
【0063】
特に、さらなる態様によれば、本発明は、例えば適切なデータ媒体上に搭載されうるコンピュータプログラム命令セットを含み、このコンピュータプログラム命令セットは、適切なプログラム可能装置に搭載され得、これが搭載された場合、プログラム可能装置は、少なくとも本発明の装置態様にしたがうデータ処理モジュールおよび/または表示モジュールを構成し、あるいは少なくとも本発明の方法態様にしたがうデータ処理および/または表示工程を実行する。
【0064】
コンピュータプログラム命令を上述のような携帯型検出器ユニットと組み合わせて設けることにより、合わせてプログラム可能装置を本発明の第1の態様による放射検出装置に変換し得る。
【0065】
さらなる態様によれば、本発明は、中央処理装置を含む既存のプログラム可能装置を、本発明の第1の態様による検出装置として機能するよう構成する方法を含む。
【0066】
特に、この方法は、
少なくとも検出器、例えば上述のような検出モジュールを備える携帯型検出器ユニットを、データ通信で中央処理装置を含む追加のプログラム可能装置に接続する工程と、
携帯型装置と追加のプログラム可能装置の組み合わせによって実行され、これにより、その組み合わせが本発明の第1の態様によって上述された検出モジュールおよびデータ処理モジュールおよび表示モジュールとして機能する適切な機械可読命令を搭載する工程とを備える。
【0067】
適切な追加のプログラム可能装置は、例えば、データ通信および転送のために携帯型検出器ユニットを接続し得る、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、もしくは同様の携帯型コンピュータなどの視覚的または他の表示能力を有する携帯型計算処理装置、携帯電話もしくは同様の移動体通信装置、またはカスタムメイドの携帯型装置である場合がある。
【0068】
前述の態様の他の好ましい特徴は、装置の実施形態およびその作用の記述から類推される。
【0069】
本発明は、すべての態様において、特に、分光学的に分解された収集入射放射線データ情報を、例えば一般的に線量率などの強度測定値である第1のデータ項目、例えば線量率スペクトルなどの強度スペクトルの決定のみならず、決定された強度測定値における統計的不確実性である第2のデータ項目の数値計算でも基礎として用いること、および判定された入射放射線の測定値の表示とともにその統計的不確実性を表示することにある。
【0070】
この方法のデータ処理工程はしたがって、少なくとも第1および第2のデータ項目を収集された強度データから数値的に導出するために必要な工程を含み、データ処理モジュールはしたがって、その工程を実行するよう構成される。
【0071】
その方法のデータ処理工程は、収集された強度データを数値的に処理して真のスペクトルを表すデータを導出する第1の工程と、真のスペクトルを用いて線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルを生成させるさらなる工程と、線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルを統計的に分析して不確実性測定値を生成するさらなる工程とを含むことが好ましく、データ処理モジュールはしたがってそれらの工程を実行するよう構成されることが好ましい。
【0072】
例えばデコンボリューション、ベイズデコンボリューション、および例えばカイ二乗最小化法または非線形法を用いた反復前進法を含むがこれらに限定されない任意の数値的技術を用いて、収集された強度データを処理して、真のスペクトルおよび/または累積強度データスペクトルを導出し得る。
【0073】
例えばポアソン誤差計算、T検定分析、信頼限界解析などを含むがこれらに限定されない任意の適切な数値的技術を用いて、不確実性測定値を生成し得る。
【0074】
その方法の表示工程は、少なくとも線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルおよび不確実性の測定値の表示を含むことが好ましく、表示モジュールは、したがって少なくとも線量率スペクトルなどの累積強度データスペクトルおよび不確実性の測定値を表示するよう構成されることが好ましい。必要に応じて、導出された真のスペクトルを、核種識別などの他の目的のために表示および/または使用してもよい。
【0075】
情報表示の例を含む、本発明の原理による作用の実施形態の例を、例としてのみ添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】システム例の動作方法の工程フローチャートである。
図2a】可能性のある1つの表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図2b】可能性のある1つの表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図2c】可能性のある1つの表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図3a】可能性のある別の表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図3b】可能性のある別の表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図3c】可能性のある別の表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
図3d】可能性のある別の表示原理によるいくつかの情報表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、計数データをテルル化カドミウム放射線検出器に基づく携帯型分光計ユニットから取り、スマートフォン、タブレットまたはコンピュータ等の装置に入力するシステム例の動作方法を示す。この測定されたスペクトルをその後真の放射線スペクトルに変換し、次に線量率測定値に変換する。時間の経過とともに、収集されたカウント数が増加するにつれ、線量の不確実性の程度が低下し、この不確実性の程度が計算され、ユーザに示される。図1のフローチャートは、このための適切な工程例を示す。
【0078】
この方法の重要な特有の特徴は、収集された放射線データの分光学的な分解能が、核種情報を提供するか、またはスペクトル情報とともに累積線量を表示するためだけに使用されるのではないことに見られる。それは、テルル化カドミウムなどの分光学的に分解可能な分光学的分解検出器からの分光学的に分解されたデータを用いる利点である。
【0079】
しかし、本発明は、収集放射線データの分光学的な分解能をそのデータの統計的有意性解析にも用いて、線量率スペクトルとともに表示され得る不確実性の定量化測定値を提供することを特徴とする。
【0080】
本願の目的は、線量率および不確実性の情報をユーザが利用しやすい方法で提示することである。各測定の結果を表示するためのいくつかの選択肢を例として説明する。
【0081】
第1の選択肢セットは、本明細書においてRadバーと呼ばれる細長い可視表現とともに本明細書において不確実性バーと呼ばれる不確実性の同様の細長い可視表現またはデータ収集段階の進行ステータスの指標として提示される特定の場合では、ステータスバーに基づいている。図2に例を示す。
【0082】
図2の例では、エネルギーの増加を示す複数のエネルギービンにセグメント化されたバーを用いてRadバーが色に応じて線量を表示している。Radバーの下のステータスバーは、測定の開始時、進行中または完了を示すよう提示される。これは、線量計算における不確実性の分析により判定される。
【0083】
不確実性バーのいくつかの選択肢が提案される。図2cの例では、バー全体が合計線量の不確実性を示す。バーは赤色で始まり、合計線量の不確実性が低下するにつれ、こはく色を経て緑色に色が変化する。緑色を表示する不確実性の程度は、規定値であってもよく、ユーザにより設定可能であってもよい。
【0084】
別の方法では、不確実性バーをRadバーと同じエネルギービンにセグメント化してもよい。バー全体は上記のとおり赤色で始まり、特定のビンの線量の不確実性が低下するにつれ、各セグメントが緑色に変わる。
【0085】
図2の例は、Radバーとともに個別の不確実性バーを示す。これは、1つの別の方法にすぎない。さらに別の方法では、Radバーは、線量を色に応じて示し、同時に不確実性を別の方法、例えば彩度に応じて示し得る。
【0086】
これらは、組み合わせた視覚的表示が、多様な可視方式を用いるよう適応させて各データ項目、例えば色、明るさ、彩度、ピクセル化、英数字による表現などを含むデータ項目の定量化表現を提供し得る方法の例にすぎない。
【0087】
表示のためのさらなる選択肢セットは、本明細書においてRadパイと呼ばれる、扇型で分割された円形の可視表現に基づいている。図2に例を示す。これは、簡潔な方法で種類別に線量を比率で提示することが望ましい場合、例えば、線源、同位体などにより識別する際に有用である場合がある。
【0088】
さらなる可能性として、不確実性の測定値を、例えば適切なウェブサイト/データ記憶等への、表示基準またはデータアップロード基準のいずれかとして用いることが挙げられる。ユーザは、ある程度(規定またはユーザにより設定可能)を上回る確実性の線量率のみを表示することを選択してもよく、あるいはシステムが特定の規定の確実性を上回るデータのみをウェブサイト/データ記憶にアップロード可能にしてもよい。
【0089】
提案したデータ提示方法は、以下を含む。
a) 自然線量がある1色で彩色され、人工線量(例えば人造線源からのであると識別されたもの−原子炉からの漏出等)は別の色で彩色される(図3a参照)。各項目の比率は面積で示され、合計線量は、円グラフの合計サイズで表される。
b) 合計線量は同じく円グラフのサイズで表されるが、色は、測定における不確実性を表し、例えば、高い不確実性として赤色から始まる(図3b参照)。
c) 線量は色で表され、薄い色から始まり、不確実性が低下するにつれ濃くなる(図3c参照)。
d) 合計強度が高さで表される3次元円グラフ(図3d参照)。不確実性は上述のいずれかの方法で表示されうる。
e) 同様であるが、不確実性の低下とともに高さが増加する。
【0090】
上記とは別の方法として、円の各セグメントをエネルギースペクトルのセグメントとすることが挙げられる。
【0091】
装置からのデータは、ウェブサイトまたは他のデータ領域にアップロードすることができる。これにより、同位体線量レベルを示すマップを描画することが可能となる。各同位体用の個別のマップが存在してもよく、すべての同位体を同じマップ上に表示してもよい。レベルは、スポットサイズ、バー高さまたは色によって示し得る。同じマップ上の異なるアイソトープは、色またはマーカの種類によって区別し得る。
【0092】
現在、真のスペクトルへの変換工程および不確実性計算の両方に提案されている方法がいくつかある。厳密な方法は本発明に関連せず、以下は単なる例である。
【0093】
(測定スペクトルから真のスペクトルへの変換)
1) 反復前進法−真のスペクトルをまず推定し、それにより検出器の応答行列によって表される測定スペクトルを計算する。計算された測定スペクトルと実際の測定スペクトルの差を用いて真のスペクトルの推定を改善する。この反復法はカイ二乗最小化または非線形法を用い得る。
2) 単純デコンボリューション−測定スペクトルから、応答行列の逆行列を用いて真の測定スペクトルを計算する。
3) ベイズデコンボリューション−単純デコンボリューションと同様であるが、ベイズ法を用いる。
【0094】
(不確実性計算)
1) ポアソン−各エネルギーセグメントまたは特定のセグメントにおける線量率のポアソン誤差を計算し得る。
2) T検定
3) 信頼限界
4) 重み付けされた信頼度−概ねセグメント幅、線量率、エネルギーピークの数によって各セグメントが重み付けされる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d