特許第6228992号(P6228992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228992
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/262 20110101AFI20171030BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20171030BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60R21/262
   B60R21/232
   B60R21/2346
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-554748(P2015-554748)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2014083078
(87)【国際公開番号】WO2015098587
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-269761(P2013-269761)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(74)【復代理人】
【識別番号】100204021
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田口 博之
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−006333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0141708(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/093389(WO,A1)
【文献】 特開平09−169253(JP,A)
【文献】 特開2011−168167(JP,A)
【文献】 特開2000−296751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ状のインフレータと、
このインフレータで発生させたガスによりドアウインドウに沿って車室内にカーテン状に展開する、複数のチャンバーとこれらチャンバーを繋ぐダクトを有するエアバッグと、
前記インフレータから噴射するガスを、前記ダクトと平行に車両の前後方向に導出させるディフレクタと、
を備え、
前記インフレータ及び前記ディフレクタを、前記エアバッグのダクト内に配置し、当該ダクト内に配置した前記ディフレクタの車両前方側の開口部の開口面積と前記ディフレクタの車両後方側の開口部の開口面積ダクト内に配置した前記インフレータの車両前方側に位置するチャンバーの内容積前記インフレータの車両後方側に位置するチャンバーの内容積の比に比例するように決定したものであることを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグのダクト部に、前記インフレータ及び前記ディフレクタを一体としたガス発生部を挿入可能なスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記スリットを覆う蓋部材を前記エアバッグの外側に設けたことを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記インフレータは、電気信号を受けるためのハーネスを有し、当該ハーネスは前記スリットを通って外部に導出されることを特徴とする請求項2又は3に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ディフレクタは、長手方向両端の開口部の開口面積が異なっていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記インフレータ及び前記ディフレクタの前記エアバッグへの取付けは、前記インフレータの外周部に突出状に設けたスタッドを使用して行うことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両が側方から衝突された時、乗員の頭部を保護するために、ドアウインドウに沿ってエアバッグをカーテン状に展開させるカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーテンエアバッグ装置は、車体に側部方向から高荷重が作用した時に、インフレータで発生させたガスにより、エアバッグをドアウインドウに沿ってカーテン状に鉛直下向きに展開させるものである。
【0003】
このカーテン状のエアバッグは、例えばロール状に折り畳まれた状態で自動車のルーフサイドレールに取付けられ、ルーフヘッドライニングに覆われて反車室側に格納される。
【0004】
そして、展開時には、展開するエアバッグによりルーフヘッドライニングが車室内側に押されてその先端とピラートリムとの係合が外れ、先端側が車室内側に押し広げられてできた開口部からエアバッグが車室内にカーテン状に展開する。
【0005】
ところで、前記エアバッグのインフレータとの接続部には、エアバッグのダクトに導くガスの流れを整流するための整流布と、この整流布を保護するための補強布が設けられている(例えば特許文献1)。
【0006】
しかしながら、エアバッグへの整流布の取付けには固定具が必要である。従って、構造が複雑になって製造工数も多くなる。加えて、インフレータが火薬に着火してガスを発生させるパイロ式の場合は、整流布を保護するために多くの補強布が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−86721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、従来のカーテンエアバッグ装置は、エアバッグのインフレータとの接続部に固定具を使用して補強布で保護した整流布を取付ける必要があるため、構造が複雑になって製造工数も多くなるという点である。また、パイロ式インフレータを備えたカーテンエアバッグ装置は、多くの補強布が必要になるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような観点に基づき、カーテンエアバッグ装置において、整流布や、整流布を保護する補強布を必要としないようにすることを目的とするものである。
【0010】
すなわち、本発明のカーテンエアバッグ装置は、
シリンダ状のインフレータと、
このインフレータで発生させたガスによりドアウインドウに沿って車室内にカーテン状に展開する、複数のチャンバーとこれらチャンバーを繋ぐダクトを有するエアバッグと、
前記インフレータから噴射するガスを、前記ダクトと平行に車両の前後方向に導出させるディフレクタと、
を備え、
前記インフレータ及び前記ディフレクタを、前記エアバッグのダクト内に配置し、当該ダクト内に配置した前記ディフレクタの車両前方側の開口部の開口面積と前記ディフレクタの車両後方側の開口部の開口面積ダクト内に配置した前記インフレータの車両前方側に位置するチャンバーの内容積前記インフレータの車両後方側に位置するチャンバーの内容積の比に比例するように決定したものであることを最も主要な特徴としている。
【0011】
本発明は、エアバッグのダクト内に、シリンダ状のインフレータと、このインフレータから噴射するガスを、前記ダクトと平行に車両の前後方向に導出させるディフレクタを配置するので、従来の整流布や整流布の補強布が不要になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、エアバッグのダクト内に、シリンダ状のインフレータと、このインフレータから噴射するガスを、前記ダクトと平行に車両の前後方向に導出させるディフレクタを配置するので、従来必要としていた整流布や整流布の補強布が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】展開状態の本発明のカーテンエアバッグ装置の一実施例を示した図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3図2のB−B断面図である。
図4】本発明のカーテンエアバッグ装置の他の実施例を示した図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、整流布や補強布を不要とするという目的を、エアバッグのダクト内に、シリンダ状のインフレータと、インフレータから噴射するガスを、前記ダクトと平行に車両の前後方向に導出させるディフレクタを配置することで実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明のカーテンエアバッグ装置の実施例を図1図4を用いて説明する。
図1は展開状態の本発明のカーテンエアバッグ装置の一実施例を示した図、図2図1のA部拡大図、図3図2のB−B断面図である。
【0016】
1はカーテンエアバッグ装置であり、例えばパイロ式インフレータ2を使用している。パイロ式インフレータ2は、細長いシリンダ状の本体の内部に火薬を収納し、センサーが車体側方からの高荷重を検出したときにハーネス9を介して電気信号を受け、前記火薬に着火してガスを発生させる構成である。本発明では、このインフレータ2の外周面の、同一軸線上の所定間隔を隔てた2か所に、スタッド2aを突出状に取付けている。
【0017】
3は、インフレータ2で発生させたガスにより、図1に示すように、ドアウインドウWに沿って車室内をカーテン状に展開するエアバッグである。このエアバッグ3は、例えば、車両の前後方向に2個のチャンバー3a,3bを形成し、これらチャンバー3a,3bをストレートなダクト3cで繋いでいる。なお、3fは車体8への取付片、3gはテザーである。
【0018】
すなわち、本発明では、エアバッグ3は袋状に形成されてインフレータ2との接続口を有しておらず、インフレータ2はエアバッグ3のダクト3cの内部に設置する。エアバッグ3のダクト3cの内部への前記インフレータ2の設置は、前記スタッド2aをエアバッグ3の外面側に貫通して突出させ、ナット4で締付けることによって行う。
【0019】
5は、前記ダクト3cの内部に配置するディフレクタである。このディフレクタ5は、前記ダクト3cの内部に設置したインフレータ2のガス噴射口2bを覆い、かつ、前記インフレータ2で発生したガスを、できるだけ前記ダクト3cと平行に、車両の前後方向に導くものである。
【0020】
このディフレクタ5は、インフレータ2で発生したガスの噴射を受けても損傷しないように、例えば金属製のものが採用される。
【0021】
また、ディフレクタ5の車両前方側の開口部5aの開口面積と車両後方側の開口部5bの開口面積は、ダクト3cの内部に配置されたインフレータ2よりも車両前方側に位置するチャンバー3aの内容積と、インフレータ2よりも車両後方側に位置するチャンバー3bの内容積に応じて決定する。
【0022】
例えば、両チャンバー3a,3bが同じ時間で展開するように、ディフレクタ5の車両前方側と車両後方側の開口部5a,5bの開口面積を決定する。この場合、図1図3に示す円錐台形状のディフレクタ5では、車両前方側のチャンバー3aと車両後方側のチャンバー3bが同じ時間で展開するように、円錐台の斜面の傾斜角度θを決定する。具体的には、円錐台の底面側(図1,2では車両前方側)の開口部5aの開口面積と上面側(図1,2では車両後方側)の開口部5bの開口面積が前方側のチャンバー3aと後方側のチャンバー3bの内容積の比に比例するように、円錐台の高さ(車両前後方向の長さ)と、斜面の傾斜角度を調整する。
【0023】
本実施例では、エアバッグ3のダクト3cの内部にインフレータ2及びディフレクタ5を設置する手段として、前記インフレータ2に取付けたスタッド2aの貫通孔3eを両端部に設けたスリット3dを、エアバッグ3のダクト3c部に設けている。
【0024】
そして、インフレータ2及びディフレクタ5を一体としたガス発生部を前記スリット3dから挿入した後は、エアバッグ3の展開状態における上下方向から、スタッド2aの貫通孔6aa,6baを設けた蓋部材6a,6bでスリット3dを覆いナット4で締付ける。このとき、例えばスリット3dからハーネス9を引出し、スリット3dを覆う蓋部材6a,6bの側面側から外部に導出する。このようにすることで、スリット3dからインフレータ2のガスが漏れないようになる。
【0025】
前記ガス発生部をエアバッグ3のダクト3cの内部にナット4で締付ける際に、図4に示すように、ブラケット7を別途用意してもよい。ブラケット7に蓋部材6a,6bを挟んでインフレータ2を固定すれば、カーテンエアバッグ装置1を車体8に取り付ける際には、ブラケット7を車体8に取り付けるだけで良いので、取り付け時の作業性が向上するほか、ガス漏れを少なくすることも可能となる。
【0026】
図1,2の実施例では、ディフレクタ5は、インフレータ2のガス噴射口2bに近い側のスタッド2aを貫通させることで、インフレータ2と一体となしている。
【0027】
上記カーテンエアバッグ装置1の場合、インフレータ2のガス噴射口2bから噴射されたガスは、ディフレクタ5の内面に衝突して方向転換した後、ディフレクタ5の前後端の開口部からダクト3cを通って両チャンバー3a,3bに所定量ずつ導入される。
【0028】
その際、ダクト3cがストレートであれば、両チャンバー3a,3bに導かれたガスがダクト3cに衝突してダクト3cを損傷させることを抑制できる。
【0029】
つまり、上記カーテンエアバッグ装置1では、インフレータ2のガス噴射口2bから噴射されたガスの流れを整流する整流布や、この整流布の損傷を防ぐ補強布を、エアバッグ3の内部に設ける必要がなくなる。
【0030】
また、整流布をエアバッグ3の内部に取付けるための固定具も必要としないので、エアバッグ3の構造が複雑にならず、製造工数も少なくて済む。
【0031】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0032】
すなわち、図1図3で説明した実施例は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0033】
例えば、上記の実施例では、スリット3dのガス噴射口2bの反対側からハーネス9を引出し、スリット3dを覆う蓋部材6a,6bのガス噴射口2b側の側面から外部に導出している。しかしながら、ハーネス9の引出し経路は上記実施例で示した経路に限らない。また、エアバッグ3からハーネス9を引出すために、エアバッグ3にハーネス9の引出し用孔を別途設けてもよい。また、インフレータ2へのハーネス9の接続位置も、ガス噴射口2bの反対側の端面に限らない。
【0034】
また、上記の実施例では、パイロ式のインフレータ2を使用したものについて説明したが、使用するインフレータはパイロ式に限らない。高圧ガスを放出させるストアードガス方式や、両方式を組み合わせたハイブリッド方式のインフレータでも良い。
【0035】
また、上記の実施例では、ディフレクタ5は金属製のものを示したが、インフレータ2のガスが当たることによって損傷せず、かつ、形状を維持できるものであれば、金属製に限らず、樹脂製のものやエアバッグの基布に用いるような布製のものでも良い。ディフレクタ5の形状も、ディフレクタ5の両端の開口部の開口面積が所定の面積となれば円錐台形状に限らない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のカーテンエアバッグ装置は、自動車だけでなく航空機や船舶等のサイドウィンドウ部に設置することも可能であり、同様な効果が発揮される。
【符号の説明】
【0037】
1 カーテンエアバッグ装置
2 インフレータ
2a スタッド
3 エアバッグ
3a,3b チャンバー
3c ダクト
3d スリット
5 ディフレクタ
5a 車両前方側の開口部
5b 車両後方側の開口部
6a,6b 蓋部材
9 ハーネス
W ドアウインドウ
図1
図2
図3
図4