(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示すように機器102とセンサ101がケーブルで接続される場合、上述したケーブルの断線(
図12)だけでなく、
図13のように、センサ101の3つの端子(電源端子、グランド端子、信号端子)に誤った配線が接続される可能性もある。このような誤接続が起きた場合、センサ101のモジュールに含まれるICに不正な電圧が印加されてしまい、ICの内部回路に過電流が流れてしまうことがある。
【0007】
また、状況によっては、電源線,グランド線及び信号線の3つが任意の組み合わせでショートしたり、断線したりする場合がある。更には、センサ101のコネクタが誤って電圧レベルの異なるコネクタに接続されてしまうこともある。
【0008】
従って、誤接続等によって端子間の電圧の相対的な高低の関係が異常な状態になっても(例えば電源端子がグランド端子より低電位になっても)、センサモジュールのICには過電流が流れないことが望ましい。また、そのような異常状態の場合には、接続相手の機器に異常状態を通知できることが望ましい。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源端子,グランド端子及び信号端子に配線の誤接続等によって不正な電圧が印加されても、これらの端子から内部に流れる電流を抑制して回路を保護できるとともに、そのような異常状態にあることを外部の機器に通知することができる半導体集積回路装置、及びこれを備えたセンサモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る半導体集積回路装置は、グランド電位に接続されるグランド端子と、電源電圧を入力する電源端子と、信号端子と、前記信号端子において信号を出力又は入力し、前記信号端子における出力インピーダンス又は入力インピーダンスを制御信号に応じて高インピーダンス状態に設定する信号回路と、前記グランド端子の電圧を基準とする前記電源端子の電圧が正常範囲内にあるか否かを判定する第1判定回路と、前記グランド端子の電圧を基準とする前記信号端子の電圧が、前記電源端子の電圧より低くかつ前記グランド端子の電圧より高い正常範囲内にあるか否かを判定する第2判定回路と、前記第1判定回路において前記電源端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合、又は、前記第2判定回路において前記信号端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合に、前記信号端子における出力インピーダンス又は入力インピーダンスを高インピーダンス状態に設定する前記制御信号を出力する制御信号出力回路と、前記グランド端子の電圧、前記電源端子の電圧、及び、前記信号端子の電圧の中で最も高い電圧を選択する第1電圧選択回路とを有する。前記第1電圧選択回路は、全体の回路に含まれる少なくとも一部のP型MOSトランジスタのバルクに前記選択した電圧を印加する。
【0011】
上記の構成によれば、前記電源端子の電圧、前記グランド端子の電圧、及び、前記信号端子の電圧の中で最も高い電圧が前記第1電圧選択回路により選択され、その選択された電圧が全体の回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに印加される。これにより、配線の誤接続などによってこれらの端子における相対的な電圧の高低関係が異常な状態になった場合でも、P型MOSトランジスタのバルクに形成される寄生ダイオードには電流が流れない。
また、上記の構成によれば、前記第1判定回路の判定結果において前記電源端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合や、前記第2判定回路の判定結果において前記信号端子の電圧が正常範囲にないと判定された場合に、前記信号端子における前記信号回路の出力インピーダンス又は入力インピーダンスが高インピーダンス状態になる。そのため、誤配線や断線や短絡などの異常状態が起きた場合に、異常状態の発生が当該高インピーダンス状態として外部の機器に通知される。
【0012】
好適に、前記第1電圧選択回路は、前記信号回路、前記第1判定回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路に前記選択した電圧を電源電圧として供給してよい。
これにより、誤配線や断線や短絡などの異常状態が起きた場合でも、前記信号回路、前記第1判定回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路には前記グランド端子の電圧より高い電源電圧が供給されるため、これらの回路の動作により、外部の機器に対する異常状態の通知が可能となる場合が生じる。
【0013】
本発明の第2の観点に係る半導体集積回路装置は、グランド電位に接続されるグランド端子と、電源電圧を入力する電源端子と、信号端子と、前記信号端子において信号を出力又は入力し、前記信号端子における出力インピーダンス又は入力インピーダンスを制御信号に応じて高インピーダンス状態に設定する信号回路と、前記グランド端子の電圧を基準とする前記電源端子の電圧が正常範囲内にあるか否かを判定する第1判定回路と、前記グランド端子の電圧を基準とする前記信号端子の電圧が、前記電源端子の電圧より低くかつ前記グランド端子の電圧より高い正常範囲内にあるか否かを判定する第2判定回路と、前記第1判定回路において前記電源端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合、又は、前記第2判定回路において前記信号端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合に、前記信号端子における出力インピーダンス又は入力インピーダンスを高インピーダンス状態に設定する前記制御信号を出力する制御信号出力回路と、前記グランド端子の電圧、前記電源端子の電圧、及び、前記信号端子の電圧の中で最も高い電圧を選択する第1電圧選択回路と、前記グランド端子の電圧及び前記電源端子の電圧のうち高い電圧を選択する第2電圧選択回路と、前記電源端子において入力される電源電圧を内部電源電圧に変換して内部回路に供給するレギュレータ回路とを有する。前記第1電圧選択回路は、前記信号回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに前記選択した電圧を印加する。前記第2電圧選択回路は、前記第1判定回路及び前記レギュレータ回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに前記選択した電圧を印加する。
【0014】
上記の構成によれば、前記電源端子の電圧、前記グランド端子の電圧、及び、前記信号端子の電圧の中で最も高い電圧が前記第1電圧選択回路により選択され、その選択された電圧が前記信号回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに印加される。また、前記グランド端子の電圧及び前記電源端子の電圧のうち高い電圧が前記第2電圧選択回路により選択され、その選択された電圧が前記第1判定回路及び前記レギュレータ回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに印加される。これにより、配線の誤接続などによってこれらの端子における相対的な電圧の高低関係が異常な状態になった場合でも、P型MOSトランジスタのバルクに形成される寄生ダイオードには電流が流れない。
また、上記の構成によれば、前記第1判定回路の判定結果において前記電源端子の電圧が正常範囲内にないと判定された場合や、前記第2判定回路の判定結果において前記信号端子の電圧が正常範囲にないと判定された場合に、前記信号端子における前記信号回路の出力インピーダンス又は入力インピーダンスが高インピーダンス状態になる。そのため、誤配線や断線や短絡などの異常状態が起きた場合に、異常状態の発生が当該高インピーダンス状態として外部の機器に通知される。
【0015】
好適に、前記第1電圧選択回路は、前記信号回路、前記第2判定回路及び前記制御信号出力回路に前記選択した電圧を電源電圧として供給してよく、前記第2電圧選択回路は、前記第1判定回路に前記選択した電圧を電源電圧として供給してよい。
これにより、誤配線や断線や短絡などの異常状態が起きた場合でも、前記信号回路、前記第1判定回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路には前記グランド端子の電圧より高い電源電圧が供給されるため、これらの回路の動作により、外部の機器に対する異常状態の通知が可能となる場合が生じる。
【0016】
好適に、前記内部回路は、前記第1判定回路、前記第2判定回路、及び、前記制御信号出力回路の少なくとも1つにおいて出力される判定結果を示す信号を記録する回路を含んでよい。
これにより、異常状態に関するより詳しい情報が取得される。
【0017】
好適に、前記第1判定回路は、前記グランド端子と前記電源端子との間で直列に接続された複数の抵抗を含む分圧回路と、前記グランド端子の電圧に対して一定の基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、前記分圧回路において異なる分圧比によって分圧された複数の検出電圧と前記基準電圧とをそれぞれ比較する比較回路と、前記比較回路の比較結果に基づいて、前記グランド端子の電圧に対する前記電源端子の電圧が正常範囲内にあるか否かの判定結果を示す第1判定信号を出力する判定信号出力回路とを含んでよい。
【0018】
好適に、上記半導体集積回路装置は、通常動作時に前記電源端子と共通の電源電圧が入力され、非通常動作時に前記グランド電位が入力されるか若しくはオープン状態とされる制御端子を有してよい。この場合、前記分圧回路に含まれる前記複数の抵抗が、前記グランド端子と前記電源端子との間で直列に接続される代わりに、前記グランド端子と前記制御端子との間で直列に接続されてよい。
これにより、前記非通常動作時には前記第1判定回路において前記電源端子の電圧が正常範囲内にないと判定され、前記信号端子における前記信号回路の出力インピーダンス又は入力インピーダンスが高インピーダンス状態となる。
【0019】
好適に、前記基準電圧発生回路は、前記基準電圧の発生の有無を示す状態信号を出力し、前記比較回路は、前記基準電圧が発生していないことを示す前記状態信号が前記基準電圧発生回路から出力されている場合、前記電源端子の電圧が正常範囲内にあることを示す前記第1判定信号の出力を抑止する。
これにより、正常でない前記基準電圧に基づいて誤った前記第1判定信号が出力される可能性のある場合において、前記電源端子の電圧が正常範囲内にあることを示す前記第1判定信号が出力されなくなる。
【0020】
好適に、前記比較回路は、前記複数の検出電圧における第1検出電圧が前記基準電圧より低い状態から高い状態へ変化すると、前記電源端子の電圧が前記正常範囲の上限より高いことを示す信号を出力し、前記複数の検出電圧において前記第1検出電圧より高い第2検出電圧が前記基準電圧より高い状態から低い状態へ変化すると、前記電源端子の電圧が前記正常範囲の上限より低いことを示す信号を出力する第1ヒステリシスコンパレータと、前記複数の検出電圧において前記第2検出電圧より高い第3検出電圧が前記基準電圧より低い状態から高い状態へ変化すると、前記電源端子の電圧が前記正常範囲の下限より高いことを示す信号を出力し、前記複数の検出電圧において前記第3検出電圧より高い第4検出電圧が前記基準電圧より高い状態から低い状態へ変化すると、前記電源端子の電圧が前記正常範囲の下限より低いことを示す信号を出力する第2ヒステリシスコンパレータとを含んでよい。前記判定信号出力回路は、前記第1ヒステリシスコンパレータにおいて前記電源端子の電圧が前記正常範囲の上限より高いことを示す信号が出力されるか、又は、前記第2ヒステリシスコンパレータにおいて前記電源端子の電圧が前記正常範囲の下限より低いことを示す信号が出力される場合、前記電源端子の電圧が正常範囲内にないことを示す前記第1判定信号を出力してよい。
【0021】
本発明の第3の観点に係るセンサモジュールは、センサ部と、前記センサ部のセンシング結果に応じた信号を前記信号端子から出力する上記半導体集積回路装置とを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電源端子,グランド端子及び信号端子に配線の誤接続等によって不正な電圧が印加されても、これらの端子から内部に流れる電流を抑制して回路を保護できるとともに、そのような異常状態にあることを外部の機器に通知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセンサモジュール1の構成の一例を示す図である。
図1に示すセンサモジュール1は、位置や速度などの物理量を電気信号として検出するセンサ部6と、そのセンサ部6のセンシング結果に応じた信号(センシング信号)を出力する半導体集積回路装置5を有する。センサ部6は、半導体集積回路装置5と独立した部品でもよいし、半導体集積回路装置5と同一の半導体チップ上に形成されてもよい。
【0025】
センサモジュール1の半導体集積回路装置5は、3つの端子(電源端子T1,グランド端子T2,信号端子T3)を備えており、それぞれの端子が外部の機器2の対応する端子(T21〜T23)に接続される。
図1の例において、センサモジュール1と機器2は、コネクタ付きのケーブルハーネス3を介して接続される。半導体集積回路装置5は、このケーブルハーネス3内部の誤配線や断線、短絡などによって3つの端子(電源端子T1,グランド端子T2,信号端子T3)に不正な電圧が印加された場合でも、内部の回路に過電流が流れることを防止する。
【0026】
また、半導体集積回路装置5は、誤配線や断線、短絡などによって3つの端子(電源端子T1,グランド端子T2,信号端子T3)に不正な電圧が印加された場合、信号端子T3における出力インピーダンスを高インピーダンス状態に設定する。
図2の例において、機器2の信号端子T23はプルアップ抵抗4を介して電源端子T21に接続されているため、半導体集積回路装置5の信号端子T3が高インピーダンス状態になると、信号端子T23の電圧が電源電圧VDDまで上昇する。機器2は、信号端子T23の電圧が電源電圧VDDに近いエラーレンジに含まれる場合、センサモジュール1の半導体集積回路装置5に不正な電圧が印加された異常状態であると判定する。
【0027】
なお、
図1におけるプルアップ抵抗4は、信号端子T23とグランド端子T12との間に接続されるプルダウン抵抗に置き換えてもよい。この場合、半導体集積回路装置5の信号端子T3が高インピーダンス状態になると、機器2の信号端子T23の電圧はグランド電位VSSまで低下する。この場合、機器2において異常状態を判定するエラーレンジはグランド電位VSS付近に設定される。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置5の構成の一例を示す図である。
図2に示す半導体集積回路装置5は、電源端子T1と、グランド端子T2と、信号端子T3と、信号回路10と、判定回路20,30と、制御信号出力回路40と、電圧選択回路51とを有する。
電源端子T1は、本発明における電源端子の一例である。
グランド端子T2は、本発明におけるグランド端子の一例である。
信号端子T3は、本発明における信号端子の一例である。
信号回路10は、本発明における信号回路の一例である。
判定回路20は、本発明における第1判定回路の一例である。
判定回路30は、本発明における第2判定回路の一例である。
制御信号出力回路40は、本発明における制御信号出力回路の一例である。
電圧選択回路51は、本発明における第1電圧選択回路の一例である。
【0029】
信号回路10は、センサ部6のセンシング結果に応じたセンシング信号を信号端子T3において出力する回路であり、例えば図示しない回路から入力される微弱なセンシング信号を増幅して出力するアンプ回路である。信号回路10は、制御信号出力回路40から出力される制御信号S40に応じて、信号端子T3における出力インピーダンスを高インピーダンス状態に設定する。具体的には、信号回路10は、制御信号S40が「1」の場合はセンシング信号を増幅するアンプ回路として動作し、制御信号S40が「0」の場合は出力インピーダンスを高インピーダンス状態に設定する。
【0030】
また、信号回路10は、信号端子T3が電源端子T1やグランド端子T2に短絡された場合でも出力に過電流が流れないようにする出力短絡保護回路を備える。
【0031】
判定回路20は、グランド端子T2の電圧(グランド電位VSS)を基準とする電源端子T1の電圧(電源電圧VDD)が正常範囲内にあるか否かを判定する。例えば、判定回路20は、電源電圧VDDが下限のしきい電圧より低い場合や、上限のしきい電圧より高い場合に異常状態と判定し、電源電圧VDDが下限値より高く上限値より低い場合は正常状態と判定する。
【0032】
なお、異常状態から正常状態へ判定が変化するしきい電圧と、正常状態から異常状態へ判定が変化するしきい電圧は同じでもよいし、異なっていてもよい。この2つのしきい電圧が異なるようにすることで、電源電圧VDDがしきい電圧付近にある場合に、電源電圧VDDの微小な変動によって判定結果が頻繁に変化することを防止できる。
【0033】
例えば、判定回路20は、上限の判定に2つのしきい電圧Vth1,Vth2(Vth1>Vth2)を用いるとともに、下限の判定に2つのしきい電圧Vth3,Vth4(Vth3>Vth4)を用いる。判定回路20は、正常状態と判定しているときに電源電圧VDDが上限のしきい電圧Vth1より高くなったら異常状態に変わったと判定し、異常状態と判定しているときに電源電圧VDDが上限のしきい電圧Vth2より低くなったら正常状態に変わったと判定する。また、判定回路20は、正常状態と判定しているときに電源電圧VDDが下限のしきい電圧Vth4より低くなったら異常状態に変わったと判定し、異常状態と判定しているときに電源電圧VDDが下限のしきい電圧Vth3より高くなったら正常状態に変わったと判定する。
【0034】
図2の例において、判定回路20は、分圧回路21と、基準電圧発生回路22と、比較回路23と、判定信号出力回路24とを有する。
分圧回路21は、本発明における分圧回路の一例である。
基準電圧発生回路22は、本発明における基準電圧発生回路の一例である。
比較回路23は、本発明における比較回路の一例である。
判定信号出力回路24は、本発明における判定信号出力回路の一例である。
【0035】
分圧回路21は、異なる分圧比によって分圧された複数の検出電圧(Vs1〜Vs4)を出力する回路であり、電源端子T1とグランド端子T2との間に直列に接続された複数の抵抗(R1〜R5)を有する。抵抗R1,R2,R3,R4,R5は、この順番で直列に接続される。抵抗R1〜R5の直列回路における抵抗R1側の一端がグランド端子T2に接続され、抵抗R5側の他端が電源端子T1に接続される。検出電圧Vs1は抵抗R1とR2の接続ノードにおいて発生し、検出電圧Vs2は抵抗R2とR3の接続ノードにおいて発生し、検出電圧Vs3は抵抗R3とR4の接続ノードにおいて発生し、検出電圧Vs4は抵抗R4とR5の接続ノードにおいて発生する。グランド電位VSSを基準とした場合の電圧の高低関係は「Vs1<Vs2<Vs3<Vs4」となる。
【0036】
基準電圧発生回路22は、グランド電位VSSに対して一定の基準電圧Vrefを発生する。また、基準電圧発生回路22は、基準電圧Vrefの発生の有無を示す状態信号R_RDYを出力する。これにより、電源電圧VDDの異常などによって正しい基準電圧Vrefを発生できない場合には、その状態が比較回路23へ通知される。
【0037】
比較回路23は、分圧回路21において異なる分圧比によって分圧された複数の検出電圧(Vs1〜Vs4)と基準電圧Vrefとをそれぞれ比較し、その比較結果として、電源電圧VDDが上限を超えるか否かを示す信号Sh1と、電源電圧VDDが下限を下回るか否かを示す信号Sh2をそれぞれ出力する。
【0038】
ただし、比較回路23は、基準電圧発生回路22において正常な基準電圧Vrefが発生していないことを示す状態信号R_RDYが出力されている場合には、電源電圧VDDが正常範囲内にあることを示す信号Sh1,Sh2の出力を抑止する。この場合、例えば、比較回路23は、電源電圧VDDが上限を超えることを示す信号Sh1、及び、電源電圧VDDが下限を下回る信号Sh2の少なくとも一方を出力する。これにより、正常でない基準電圧Vrefに基づいて誤った信号Sh1,Sh2が出力される可能性のある場合において、電源電圧VDDが正常範囲内にあることを示す信号Sh1,Sh2が出力されることを防止できる。
【0039】
図2の例において、比較回路23は、ヒステリシスコンパレータ231と232を有する。
ヒステリシスコンパレータ231は、本発明における第1ヒステリシスコンパレータの一例である。
ヒステリシスコンパレータ232は、本発明における第2ヒステリシスコンパレータの一例である。
【0040】
ヒステリシスコンパレータ231は、検出電圧Vs1が基準電圧Vrefより低い状態から高い状態へ変化すると、電源電圧VDDが正常範囲の上限より高いことを示す信号Sh1を出力し(例えばSh1=「0」)、検出電圧Vs2が基準電圧Vrefより高い状態から低い状態へ変化すると、電源電圧VDDが正常範囲の上限より低いことを示す信号Sh1を出力する(例えばSh1=「1」)。
【0041】
検出電圧Vs1,Vs2は、上限のしきい電圧Vth1,Vth2(Vth1>Vth2)を用いて、それぞれ次式のように表わされる。
【0042】
[数1]
Vs1=Vref×(VDD/Vth1) … (1)
Vs2=Vref×(VDD/Vth2) … (2)
【0043】
式(1)より、検出電圧Vs1が基準電圧Vrefより低い状態から高い状態へ変化することは、電源電圧VDDが上限のしきい電圧Vth1より高くなること(正常範囲の上限より高い異常状態になること)を示す。この場合、ヒステリシスコンパレータ231は、信号Sh1として「0」を出力する。
また、式(2)より、検出電圧Vs2が基準電圧Vrefより高い状態から低い状態へ変化することは、電源電圧VDDが上限のしきい電圧Vth2より低くなること(正常範囲の上限より低い状態になること)を示す。この場合、ヒステリシスコンパレータ231は、信号Sh1として「1」を出力する。
【0044】
ヒステリシスコンパレータ232は、検出電圧Vs3が基準電圧Vrefより低い状態から高い状態へ変化すると、電源電圧VDDが正常範囲の下限より高いことを示す信号Sh2を出力し(例えばSh2=「1」)、検出電圧Vs4が基準電圧Vrefより高い状態から低い状態へ変化すると、電源電圧VDDが正常範囲の下限より低いことを示す信号Sh2を出力する(例えばSh2=「0」)。
【0045】
検出電圧Vs3,Vs4は、下限のしきい電圧Vth3,Vth4(Vth3>Vth4)を用いて、それぞれ次式のように表わされる。
【0046】
[数1]
Vs3=Vref×(VDD/Vth3) … (3)
Vs4=Vref×(VDD/Vth4) … (4)
【0047】
式(3)より、検出電圧Vs3が基準電圧Vrefより低い状態から高い状態へ変化することは、電源電圧VDDが下限のしきい電圧Vth3より高くなること(正常範囲の下限より高い状態になること)を示す。この場合、ヒステリシスコンパレータ232は、信号Sh2として「1」を出力する。
また、式(4)より、検出電圧Vs4が基準電圧Vrefより高い状態から低い状態へ変化することは、電源電圧VDDが下限のしきい電圧Vth4より低くなること(正常範囲の下限より低い異常状態になること)を示す。この場合、ヒステリシスコンパレータ232は、信号Sh2として「0」を出力する。
【0048】
図3は、ヒステリシスコンパレータ231,232の構成の一例を示す図である。
図3の例において、ヒステリシスコンパレータ231は、コンパレータCP1,CP2とフリップフロップFF1を含む。ヒステリシスコンパレータ232は、コンパレータCP3,CP4とフリップフロップFF2を含む。
【0049】
コンパレータCP1の出力信号Scp1は、検出電圧Vs1が基準電圧Vrefより高い場合に「1」、低い場合に「0」となる。コンパレータCP2の出力信号Scp2は、検出電圧Vs2が基準電圧Vrefより高い場合に「0」、低い場合に「1」となる。フリップフロップFF1の出力信号Sh1は、信号Scp1=「1」かつ信号Scp2=「0」の場合に「0」となり、信号Scp1=「0」かつ信号Scp2=「0」の場合に前の状態と同じ値となり、信号Scp1=「0」かつ信号Scp2=「1」の場合に「1」となる。
検出電圧Vs1が基準電圧Vrefより高くなると(Vs2>Vs1>Vref)、信号Scp1=「1」かつ信号Scp2=「0」となるため、ヒステリシスコンパレータ231は信号Sh1として「0」を出力する。検出電圧Vs1が基準電圧Vrefより低く、かつ、検出電圧Vs2が基準電圧Vrefより高くなると(Vs2>Vref>Vs1)、信号Scp1=「0」かつ信号Scp2=「0」となるため、ヒステリシスコンパレータ231の値は変化しない。検出電圧Vs2が基準電圧Vrefより低くなると(Vref>Vs2>Vs1)、信号Scp1=「0」かつ信号Scp2=「1」となるため、ヒステリシスコンパレータ231は信号Sh1として「1」を出力する。
【0050】
コンパレータCP3の出力信号Scp3は、検出電圧Vs3が基準電圧Vrefより高い場合に「1」、低い場合に「0」となる。コンパレータCP4の出力信号Scp4は、検出電圧Vs4が基準電圧Vrefより高い場合に「0」、低い場合に「1」となる。フリップフロップFF2の出力信号Sh2は、信号Scp3=「1」かつ信号Scp4=「0」の場合に「1」となり、信号Scp3=「0」かつ信号Scp4=「0」の場合に前の状態と同じ値となり、信号Scp3=「0」かつ信号Scp4=「1」の場合に「0」となる。
検出電圧Vs3が基準電圧Vrefより高くなると(Vs4>Vs3>Vref)、信号Scp3=「1」かつ信号Scp4=「0」となるため、ヒステリシスコンパレータ232は信号Sh2として「1」を出力する。検出電圧Vs3が基準電圧Vrefより低く、かつ、検出電圧Vs4が基準電圧Vrefより高くなると(Vs4>Vref>Vs3)、信号Scp3=「0」かつ信号Scp4=「0」となるため、ヒステリシスコンパレータ232の値は変化しない。検出電圧Vs4が基準電圧Vrefより低くなると(Vref>Vs4>Vs3)、信号Scp3=「0」かつ信号Scp4=「1」となるため、ヒステリシスコンパレータ232は信号Sh2として「0」を出力する。
【0051】
図2に戻る。
判定信号出力回路24は、比較回路23の比較結果に基づいて、電源電圧VDDが正常範囲内にあるか否かの判定結果を示す判定信号Sc1を出力する。すなわち、判定信号出力回路24は、ヒステリシスコンパレータ231において電源電圧VDDが正常範囲の上限より高いことを示す信号Sh1(=「0」)が出力されるか、又は、ヒステリシスコンパレータ232において電源電圧VDDが正常範囲の下限より低いことを示す信号Sh2(=「0」)が出力される場合、電源電圧VDDが正常範囲内にないことを示す判定信号Sc1(=「0」)を出力する。電源電圧VDDが正常範囲内にある場合(Sh1=「1」かつSh2=「1」の場合)、判定信号出力回路24は判定信号Sc1として「1」を出力する。
図2の例において、判定信号出力回路24は、信号Sh1と信号Sh2との論理積を演算するAND回路によって構成される。
【0052】
判定回路30は、信号端子T3の電圧(信号電圧VSIG)が電源電圧VDDより低くグランド電位VSSより高い正常範囲内にあるか否かを判定する。
【0053】
図4は、判定回路30の構成の一例を示す図である。
図4の例において、判定回路30は、コンパレータCP5,CP6とAND回路303を含む。コンパレータCP5は、信号電圧VSIGが電源電圧VDDより低い場合に「1」、高い場合に「0」を出力する。コンパレータCP6は、信号電圧VSIGがグランド電位VSSより高い場合に「1」、低い場合に「0」を出力する。AND回路303は、コンパレータCP5,CP6の出力が共に「1」の場合に判定信号Sc2として「1」を出力し、それ以外の場合に「0」を出力する。
図4に示す構成によれば、信号電圧VSIGが電源電圧VDDより低くグランド電位VSSより高い正常範囲内にある場合、AND回路303から判定信号Sc2として「1」が出力される。信号電圧VSIGが正常範囲内にない場合(VSIG>VDDの場合やVSS>VSIGの場合)、AND回路303から判定信号Sc2として「0」が出力される。
【0054】
再び
図2に戻る。
制御信号出力回路40は、判定回路20において電源電圧VDDが正常範囲内にないと判定された場合、又は、判定回路30において信号電圧VSIGが正常範囲内にないと判定された場合に、信号端子T3における出力インピーダンスが高インピーダンス状態となるように信号回路10を制御する制御信号S40を出力する。
図2の例において、制御信号出力回路40は、判定回路20の判定信号Sc1と判定回路30の判定信号Sc2との論理積を演算するAND回路によって構成される。
【0055】
電圧選択回路51は、グランド電位VSS、電源電圧VDD及び信号電圧VSIGの中で最も高い電圧を選択し、選択電圧VBULKとして出力する。電圧選択回路51は、例えば
図5において示すように、3つのダイオード(D1,D2,D3)を用いて構成される。ダイオードD1のアノードには電源電圧VDDが入力され、ダイオードD2のアノードには信号電圧VSIGが入力され、ダイオードD3のアノードにはグランド電位VSSが入力される。ダイオードD1,D2,D3のカソードが共通に接続され、この共通接続されたノードにおいて選択電圧VBULKが出力される。
【0056】
なお、
図2に示す半導体集積回路装置5の全体の回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクには、電圧選択回路51から出力される選択電圧VBULKが印加される。すなわち、P型MOSトランジスタのバルクには、3つの端子(T1〜T3)において半導体集積回路装置5に入力される最も高い電圧が印加される。
【0057】
また、
図2に示す半導体集積回路装置5では、逆接続等によって電源電圧VDDがグランド電位VSSより低い状態となっても外部の機器2へ異常状態を通知できるようにするため、信号回路10,判定回路20,判定回路30,制御信号出力回路40を含む少なくとも一部の回路には、電源電圧VDDの代わりとして、電圧選択回路51の選択電圧VBULKが供給される。これにより、逆接続等の異常状態においても、これらの回路にはグランド電位VSSより高い選択電圧VBULKが電源電圧として供給されるため、通常状態と同様な動作が可能になる。
【0058】
ここで、上述した構成を有する半導体集積回路装置5の動作を説明する。
まず、配線の誤接続などによって不正な電圧が端子T1〜T3に印加された場合(端子T1〜T3の相対的な電圧の高低関係が異常な場合)の保護動作について述べる。
【0059】
図6は、P型MOSトランジスタの寄生ダイオードを説明するための図である。
図6AはP型MOSトランジスタQpの構造を示し、
図6BはP型MOSトランジスタQpを含んだ回路の例を示す。P型基板の表面には、N型拡散領域(Nウェル)が形成される。そのNウェルの表面には、P型MOSトランジスタQpのソース(S)及びドレイン(D)となる2つのP型拡散領域(p+)と、Nウェルをバルク電極(B)に接続するためのN型拡散領域(n+)が形成される。
図6の例では、P型MOSトランジスタQpのソース(S)は電源線(VDD)に接続され、そのドレイン(D)はN型MOSトランジスタ等の素子91を介してグランド(VSS)に接続される。
【0060】
図6において示すように、P型MOSトランジスタQpにおけるソース(S)及びドレイン(D)とバルク(Nウェル)との間には、それぞれ寄生ダイオードDp1,Dp2が形成される。この寄生ダイオードDp1,Dp2は、ソース(S)やドレイン(D)がバルク(Nウェル)より高い電圧になると導通する。
また、P型MOSトランジスタQpのバルク(Nウェル)とP型基板との間にも寄生ダイオードDp3が形成される。この寄生ダイオードDp3は、P型基板がP型MOSトランジスタQpのバルク(Nウェル)より高い電圧になると導通する。
【0061】
一般に、P型MOSトランジスタQpのバルク(Nウェル)の電圧Vbkは電源電圧VDDと等しくなっているが、その場合、
図6において点線で示すように電源電圧VDDがグランド電位VSSより低くなると、素子91と寄生ダイオードDp2を介して電流が流れる可能性がある。これに対し、
図2に示す半導体集積回路装置5では、バルク(Nウェル)の電圧Vbkが選択電圧VBULKと等しくなっているため、寄生ダイオードDp1,Dp2,Dp3のカソード側が最高電圧となり、これらの寄生ダイオードには電流が流れない。
【0062】
なお、
図2に示す半導体集積回路装置5では、ロジック信号のハイレベル電圧が選択電圧VBULKに基づいた電圧となるように、内部のロジック回路が構成されていてもよい。例えば、半導体集積回路装置5に含まれるロジック回路には、ハイレベルの電圧として、電源電圧VDDの代わりに選択電圧VBULKが供給されてもよい。これにより、電源電圧VDDがグランド電位VSSより低くなる異常な状態となっても、選択電圧VBULKがグランド電位VSSより低くなることはないため、ハイレベルの電圧を出力するP型MOSトランジスタQpには、異常状態において正常時と逆方向の電流が流れることはない。
【0063】
また、この場合、判定回路20及び30において異常状態と判定されたら(判定信号Sc1及びSc2が共に「0」となったら)、ハイレベルのロジック信号を出力するように内部のロジック回路が構成されていてもよい。これにより、ロジック回路中のP型MOSトランジスタQpのゲート電圧Vgには、異常状態において最高電圧(選択電圧VBULK)が印加されることになり、P型MOSトランジスタQpのチャンネルがオフ状態となるため、P型MOSトランジスタQpのチャンネルに電流が流れることはない。
【0064】
次に、異常状態の通知動作について説明する。
【0065】
[電源電圧VDDが正常範囲内にない場合]
電源電圧VDDが正常範囲内にない場合は、判定回路20の判定信号Sc1が「0」となり、制御信号出力回路40の制御信号S40が「0」となるため、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態になる。そうすると、信号端子T3に接続された信号線に電流が流れず、機器2の信号端子T23の電圧がプルアップ抵抗4によって電源電圧まで上昇し、エラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0066】
[信号電圧VSIGが電源電圧VDDより高いか、グランド電位VSSより低い場合]
信号電圧VSIGが電源電圧VDDより高い場合やグランド電位VSSより低い場合は、判定回路30の判定信号Sc2が「0」となり、制御信号S40が「0」となるため、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態になる。これにより、上述と同様に機器2の信号端子T23の電圧がエラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0067】
[信号線が電源線と短絡している場合]
信号線が電源線と短絡している場合、機器2の信号端子T23の電圧が電源電圧VDDと等しくなり、エラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0068】
[信号線がグランド線と短絡している場合]
信号線がグランド線と短絡している場合、機器2の信号端子T23の電圧がグランド電位VSSと等しくなり、エラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0069】
[電源線が断線している場合]
電源端子T1は分圧回路21の抵抗(R1〜R5)を介してグランド端子T2に接続されているため、電源線が断線している場合、電源端子T1の電圧(電源電圧VDD)はグランド端子T2の電圧(グランド電位VSS)と等しくなる。他方、信号端子T3は機器2においてプルアップ抵抗4を介して機器2側の電源線に接続されるため、信号端子T3の電圧(信号電圧VSIG)はグランド電位VSSより高い電圧となる。従って、信号電圧VSIGが電源電圧VDDより高くなるため、判定回路30は異常状態を示す判定信号Sc2として「0」を出力する。
また、電源電圧VDDがグランド電位VSSと等しくなることから、電源電圧VDDが正常範囲の下限より低くなるため、判定回路30も異常状態を示す判定信号Sc1として「0」を出力する。
【0070】
判定信号Sc1,Sc2が「0」のため、制御信号S40も「0」となり、信号回路10の出力インピーダンスは高インピーダンス状態になる。これにより、信号端子T3に接続された信号線にはほとんど電流が流れず、機器2の信号端子T23の電圧がプルアップ抵抗4によって電源電圧まで上昇し、エラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0071】
なお、機器2の信号端子T23がプルアップ抵抗4で電源線に接続されておらず、プルダウン抵抗でグランド線に接続されている場合には、電源線の断線によって半導体集積回路装置5への電源供給が断たれる。この場合、半導体集積回路装置5の回路全体に電流が流れず、信号回路10からプルダウン抵抗へ電流を流すこともできないため、機器2の信号端子T23の電圧がグランドレベルと等しくなる。従って、機器2の信号端子T23の電圧がエラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0072】
[グランド線が断線している場合]
信号端子T3は機器2においてプルアップ抵抗4を介して機器2側の電源線に接続されるため、グランド線が断線していると、半導体集積回路装置5への電源供給が断たれる。この場合、半導体集積回路装置5の回路全体に電流が流れず、機器2の電源線からプルアップ抵抗4を介して信号回路10に電流を流すこともできないため、機器2の信号端子T23の電圧が電源電圧と等しくなる。従って、機器2の信号端子T23の電圧がエラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0073】
なお、機器2の信号端子T23がプルアップ抵抗4で電源線に接続されておらず、プルダウン抵抗でグランド線に接続されている場合には、信号回路10からプルダウン抵抗を介して機器2側のグランド線に電流が流れるため、信号端子T3の電圧(信号電圧VSIG)は電源端子T1の電圧(電源電圧VDD)より低い電圧となる。他方、グランド端子T2は分圧回路21の抵抗(R1〜R5)を介して電源端子T1に接続されているため、グランド線が断線している場合、グランド端子T2の電圧(グランド電位VSS)は電源端子T1の電圧(電源電圧VDD)と等しくなる。従って、信号電圧VSIGがグランド電位VSSより低くなるため、判定回路30は異常状態を示す判定信号Sc2として「0」を出力する。
また、電源電圧VDDがグランド電位VSSと等しくなることから、電源電圧VDDが正常範囲の下限より低くなるため、判定回路30も異常状態を示す判定信号Sc1として「0」を出力する。
【0074】
判定信号Sc1,Sc2が「0」のため、制御信号S40も「0」となり、信号回路10の出力インピーダンスは高インピーダンス状態になる。これにより、信号端子T3に接続された信号線にはほとんど電流が流れず、機器2の信号端子T23の電圧がプルダウン抵抗によってグランドレベルまで低下し、エラーレンジに入るため、機器2に異常状態が通知される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、電源端子T1の電圧(VDD),グランド端子T2の電圧(VSS)及び信号端子T3の電圧(VSIG)の中で最も高い電圧が選択電圧VBULKとして電圧選択回路51により選択され、その選択電圧VBULKが全体の回路中に含まれるP型MOSトランジスタのバルクに印加される。これにより、配線の誤接続などによってこれらの端子における相対的な電圧の高低関係が異常な状態になった場合でも、P型MOSトランジスタのバルクに形成される寄生ダイオードには電流が流れないため、これらの端子から半導体集積回路装置5の内部に流れ込む電流を抑制して、内部の回路を保護することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、電源電圧VDDが所定の正常範囲から外れている場合や、信号電圧VSIGがグランド電位VSSより高く電源電圧VDDより低い正常範囲から外れている場合に、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態となる。そのため、誤配線や断線や短絡などの異常状態が起きた場合に、異常状態の発生を外部の機器2に通知することができる。
【0077】
第1の実施形態に係る半導体集積回路装置5の変形例について、
図7を参照して説明する。
【0078】
図2示す半導体集積回路装置5では、分圧回路21の一端が電源端子T1に接続されているが、
図7に示す半導体集積回路装置5では、この分圧回路21の一端が電源端子T1の代わりに制御端子T4に接続される。分圧回路21に含まれる複数の抵抗(R1〜R5)は、制御端子T4とグランド端子T2との間において直列に接続される。
【0079】
制御端子T4に電源電圧VDDを供給すると、
図7に示す半導体集積回路装置5の動作は
図2に示す半導体集積回路装置5と同じになる。通常の使用状態において、制御端子T4には電源電圧VDDが供給される。
【0080】
他方、制御端子T4にグランド電位VSSを供給するか、又は制御端子T4を開放状態にすると、分圧回路21の検出電圧Vs1〜Vs4は全てゼロ(グランド電位VSS)になる。そのため、判定回路20において異常状態と判定され、制御信号S40が「0」となり、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態となる。また、
図7に示す半導体集積回路装置5では、制御信号S40が「0」になった場合(判定回路20又は30において異常状態と判定された場合)、クロック発振等の動的な動作が停止されるようにロジック回路が構成されている。そのため、外部の機器から制御端子T4にグランド電位VSSを供給する(あるいは、制御端子T4を開放状態にする)ことによって、半導体集積回路装置5を消費電流の小さい待機状態にすることができる。また、半導体集積回路装置5の動的な動作が停止されることから、この待機状態において回路素子の評価方法の一つである静電流計測(IDDQテスト)を行うことも可能である。
【0081】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置5の構成の一例を示す図である。
図8に示す半導体集積回路装置5は、
図2に示す半導体集積回路装置5と同様な構成を有するとともに、電圧選択回路52と、レギュレータ回路60と、内部回路70と、レベルシフト回路71,80とを有する。
電圧選択回路52は、本発明における第2電圧選択回路の一例である。
レギュレータ回路60は、本発明におけるレギュレータ回路の一例である。
内部回路70は、本発明における内部回路の一例である。
【0082】
電圧選択回路52は、グランド電位VSS及び電源電圧VDDのうち高い電圧を選択し、選択電圧VBULK2として出力する。電圧選択回路52は、例えば
図5に示す電圧選択回路51と同様に、カソードが共通接続された2つのダイオードを用いて構成することが可能である。
【0083】
レギュレータ回路60は、電源端子T1において入力される電源電圧VDDを所定レベルの内部電源電圧VDD2に変換して内部回路70に供給する。レギュレータ回路60は、電源電圧VDDがグランド電位VSSより低い場合に出力から入力へ逆方向に電流が流れることを防止する保護回路を備えてもよい。これにより、内部電源電圧VDD2はグランド電位VSSより低い電圧にならないため、内部回路70に負の電源電圧が加わることによる逆方向の異常な電源電流が流れることを防止できる。
【0084】
内部回路70は、内部電源電圧VDD2に基づいて動作する回路であり、例えばCPU等のロジック回路を含む。また、内部回路70は、レベルシフト回路71を介して入力される判定信号Sc1,Sc2を記録する回路を含む。
【0085】
レベルシフト回路80は、判定回路20から出力される判定信号Sc1のハイレベル電圧を変更して制御信号出力回路40Aに入力する回路である。
【0086】
図8に示す半導体集積回路装置5において、判定回路20とレギュレータ回路60には、電圧選択回路52の選択電圧VBULK2が電源電圧として供給されており、これらの回路に含まれるP型MOSトランジスタのバルクにも選択電圧VBULK2が印加される。一方、信号回路10,判定回路30及び制御信号出力回路40Aには、
図2に示す半導体集積回路装置5と同様に、電源電圧とP型MOSトランジスタのバルク電圧として、電圧選択回路51の選択電圧VBULKが供給される。そのため、判定信号Sc1のハイレベル電圧は選択電圧VBULK2であり、制御信号出力回路40Aのハイレベル電圧は選択電圧VBULKであって、両者の信号レベルは異なる。従って、判定信号Sc1の信号レベルを変換するレベルシフト回路80が必要となる。
【0087】
図9は、レベルシフト回路80の一例を示す図である。
図9に示すレベルシフト回路80は、N型のMOSトランジスタQn1と抵抗R10,R11を有する。MOSトランジスタQn1のソースとバルクにはグランド電位VSSが入力され、そのドレインには抵抗R11を介して選択電圧VBULKが入力され、そのゲートには判定信号Sc1が入力される。抵抗R10は、MOSトランジスタQn1のゲートとソースの間に接続される。MOSトランジスタQのドレインにおいて、レベルシフトされた判定信号Sc1Aが出力される。
【0088】
図9に示すレベルシフト回路80では、レベルシフト後の判定信号Sc1Aがレベルシフト前の判定信号Sc1に対して論理反転する。すなわち、判定信号Sc1がハイレベル(VBULK2)の場合に判定信号Sc1Aがローレベル(VSS)となり、判定信号Sc1がローレベル(VSS)の場合に判定信号Sc1Aがハイレベル(VBULK)となる。そのため、
図8における制御信号出力回路40Aは、判定信号Sc1Aを論理反転した結果と判定信号Sc2との論理積を演算し、
図2における制御信号出力回路40と同じ論理レベルを有した制御信号S40を出力する。
【0089】
レベルシフト回路71は、上述のように信号レベルが異なる判定信号Sc1,Sc2を内部電源電圧VDD2の信号レベルに変換して内部回路70に入力する。レベルシフト回路71は、例えば
図9に示すレベルシフト回路80と同様にN型MOSトランジスタを用いて構成することができる。
【0090】
上述した構成を有する半導体集積回路装置5によれば、レギュレータ回路60を構成するP型MOSトランジスタのバルクには、電源電圧VDD又はグランド電位VSSのいずれか高い電圧である選択電圧VBULK2が印加される。もし、レギュレータ回路60のP型MOSトランジスタのバルクに電圧選択回路51の選択電圧VBULKが印加されると、信号電圧VSIGが最高電圧の場合、P型MOSトランジスタのバルクは電源電圧VDDより高くなる。その場合、基板バイアス効果によってP型MOSトランジスタのしきい電圧が変化し、レギュレータ回路60において出力される内部電源電圧VDD2が低下してしまう可能性がある。内部電源電圧VDD2が大きく低下すると、内部回路70においてCPU等のロジック回路の動作がリセットされてしまうなどの不安定な現象が起こる。レギュレータ回路60のP型MOSトランジスタのバルクに選択電圧VBULK2を印加することにより、P型MOSトランジスタの基板バイアス効果による内部回路70の不安定な現象を生じ難くすることができる。
【0091】
また、上述した構成を有する半導体集積回路装置5によれば、信号電圧VSIGが電源電圧VDDより高くなる異常な状態においても内部回路70を動作させ続け易くなるため、内部回路70において判定信号Sc1,Sc2を記録することが可能になる。このような異常状態の記録をとることにより、センサモジュール1を含んだシステムの検証や信頼度を高めることができる。
【0092】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0093】
例えば、レギュレータ回路60の内部電源電圧VDD2が規定の電圧に達しているか否かを判定する判定回路を設けて、規定の電圧に達していないことを示す判定信号が当該判定回路から出力される場合は、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態となるように制御信号出力回路40から制御信号S40を出力してもよい。あるいは、内部回路70に含まれるCPUやロジック回路のリセット信号に基づいて動作開始前の状態か否か判定する判定回路を設けて、CPUやロジック回路が動作開始前の状態であることを示す判定信号が当該判定回路から出力される場合は、信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態となるように制御信号出力回路40から制御信号S40を出力してもよい。これにより、例えば電源起動時など、CPUやロジック回路が動作を開始するまでの間は信号回路10の出力インピーダンスが高インピーダンス状態になり、信号端子T3から不要な信号が出力されなくなるため、システムの安定性を更に向上することができる。
【0094】
また、上述した実施形態では、信号回路10がセンシング信号を出力する回路である例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、信号回路10が信号端子T3において機器2からの信号を入力する回路を含んでいてもよい。この場合、信号回路10は、制御信号出力回路40の制御信号S40に応じて入力インピーダンスを高インピーダンス状態とする。信号回路10の入力インピーダンスが高インピーダンス状態になると、機器2の側に設けられたプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗によって信号線の電圧が電源電圧VDD付近又はグランド電位VSS付近のエラーレンジに入るため、異常状態が機器2へ通知される。