特許第6229059号(P6229059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特許6229059メソポーラスゼオライトに基づくゼオライト材料
<>
  • 特許6229059-メソポーラスゼオライトに基づくゼオライト材料 図000004
  • 特許6229059-メソポーラスゼオライトに基づくゼオライト材料 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229059
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】メソポーラスゼオライトに基づくゼオライト材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/04 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   C01B39/04
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-532720(P2016-532720)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-527179(P2016-527179A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】FR2014052029
(87)【国際公開番号】WO2015019014
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】1357763
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブービエ,リュディビンヌ
(72)【発明者】
【氏名】リュッツ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ペルシヨン,キトリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ルコント,イバン
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−529939(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043731(WO,A1)
【文献】 特表平09−507790(JP,A)
【文献】 特開平07−256094(JP,A)
【文献】 特開昭53−008400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 − 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料であって、前記凝集塊ゼオライト材料が少なくとも以下の特徴:
・凝集塊の全量に対して、少なくとも70重量%の全ゼオライト含有量;
・30%以上のメソポーラスゼオライト含有量;
・950℃、1時間で行われた焼成後の、30%以下の結合剤含有量;
・7mm以下の平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法);および
・平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)が1mm未満である材料については、ASTM7084−04に従って測定したバルク破砕強度(BCS)が0.5MPaと3MPaとの間(両限界値を含む)であるか、あるいは
・平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)が1mm以上である材料については、ASTMD4179(2011)およびASTMD6175(2013)に従って測定した粒子破砕強度が0.5daNと30daNとの間(両限界値を含む)である;
を有する、凝集塊ゼオライト材料。
【請求項2】
さらに、1つ以上の非メソポーラスゼオライトを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)が、0.05mmと7mmとの間(両限界値を含む)である、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
0.4g.cm−3と1g.cm−3との間(両限界値を含む)の単位体積当たりの見掛け質量をさらに有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記メソポーラスゼオライトが、Si/Al原子比が1と1.4との間(両限界値を含む)のLTA、EMTおよびFAU構造のメソポーラスゼオライトから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
ゼオライト結晶が、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンから選択されるクレイまたはクレイの混合物ならびにあらゆる比でのこれらの2種以上の混合物を含む結合剤で凝集している、請求項1からのいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
少なくとも以下の工程:
a)数平均径が0.1μmと20μmとの間(両限界値を含む)であり、Si/Al原子比が1と1.4との間(両限界値を含む)であり、t−プロット法で定義されるメソ細孔外部比表面積が40m.g−1と400m.g−1との間(両限界値を含む)である、少なくとも1つのメソポーラスゼオライト結晶を、少なくとも80%のクレイまたはクレイの混合物を含む結合剤、および最大5%の添加剤ならびに凝集塊材料を成形する水量とともに凝集する工程;
b)50℃と150℃の間の温度での凝集塊の乾燥工程;
c)150℃を超える温度で、数間で、酸化気体および/または不活性気体をフラッシュさせながら工程b)の凝集塊を焼成する工程
)次いで、工程b)で記載した条件下での、工程d)または工程e)において得られた凝集塊の洗浄および乾燥工程;および
g)工程c)で記載した条件下での、工程f)において得られた凝集塊の活性化による凝集塊ゼオライト材料の製造工程、
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料を製造するための方法。
【請求項8】
工程a)において、犠牲型板の存在下で製造されたゼオライト結晶の凝集が行われる請求項に記載の方法。
【請求項9】
犠牲型板が、オルガノシラン型の化合物およびオリゴマーなどから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記犠牲型板の除去が、工程a)の凝集前に、または工程c)と同時に、ゼオライト結晶の焼成によって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記犠牲型板の除去が、工程a)の凝集前に、または工程c)と同時に、ゼオライト結晶の焼成によって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)のフラッシュは、酸素、窒素、乾燥空気、脱炭酸空気、乾燥酸素滅損空気および脱炭酸された酸素滅損空気の中から選択される1つまたはいくつかの気体を用いて行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
さらに、工程c)において得られた凝集塊をアルカリ塩基性溶液と接触させることによる結合剤のゼオライト化工程d)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
さらに、少なくとも1つのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の溶液と接触させることによる工程c)の凝集塊のカチオン交換工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
さらに、少なくとも1つのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の溶液と接触させることによる工程d)の凝集塊のカチオン交換工程を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊の形態であるゼオライト材料およびその凝集したゼオライト材料を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスゼオライトは多くの工業分野において触媒および触媒支持体としてならびに吸着剤としても極めて有用であり、[比表面積/容積]比という用語で表される多孔率が大きい限り、接触する分子を粒子のコアに容易に近づけさせ、そして大きな比表面積で反応させることによって、これらの材料の触媒特性および/または吸着剤特性を高めることになる。
【0003】
界面活性剤の構造化効果を介する無機メソポーラス固体の合成が、特許US3556725号において最初に記載された。
【0004】
1990年代において、自動車会社は無機メソポーラス固体、特に(アルミノ)ケイ素化合物、より具体的には化合物MCM41(自動車組み立てのための材料41)に関して徹底的な研究を行い、その合成方法がNature,(1992),vol.359,pp710−712に記載され、これは後の多くの科学特許や総説の主題であった。
【0005】
このようなメソポーラス材料はその細孔構造および細孔分布、ならびにその合成法、触媒および/または吸着剤としての可能な用途についても今や実験室規模で周知となっている。
【0006】
これらの無機メソポーラス材料は水の存在下で熱的に不安定であるという重大な欠点があり、これはその工業用途を大幅に限定している。
【0007】
無機メソポーラス固体の探索研究により種々の方法で得られたメソポーラスゼオライトの開発がなされ、例えばFeng−Shoux Xiao et.al(Hierarchically Structured Porous Materials, (2012),435−455,Wiley−VCH Verlang GmbH&Co.KGaA:Weinheim, Germany 978−3−527−32788−1)の総説に記載されている。
【0008】
想定される経路の1つは、最初に合成した粉末状のゼオライト結晶を用いる後処理である。これらの後処理では、例えば水蒸気による処理、次いで脱アルミニウム化をもたらす酸処理および/または塩基処理を行い、次いでさらに処理をして、ネットワーク外化学種が取り除かれる。
【0009】
特許US8486369号および特許出願US2013/0183229号、US2013/0183231号および特許出願WO2013/106816号は、水蒸気との各種連続処理、次いで界面活性剤の存在下での酸処理によるメソポーラス構造のゼオライトを製造する該方法を明示する例である。
【0010】
該方法は大きな細孔容積を作る傾向にあるものの、そのかわり初期のゼオライト粉末の結晶化度を大幅にほとんど半分に低下させる。ゼオライトの骨格を安定化するため、ネットワーク外アルミニウム原子を除去するため、そして後続の熱処理を実施することができるために、別の焼成処理を用いることが最後の手段としてさらに必要である。
【0011】
該方法は多工程が連続するため実装するには非常に扱い難い。該方法はやや経済的ではないことから工業化することは困難である。さらに多工程はゼオライト構造が砕けやすくなる傾向にあるため、これらのゼオライトの固有の性質が減ずることになる。
【0012】
これは先行技術において公知の後処理もなく、メソポーラスゼオライトを直接合成することは昨今では好まれるからである。メソポーラスゼオライトの実験室合成の実現可能性は多くの刊行物で示されており、例えば特許出願WO2007/043731号およびEP2592049号には特に見うけられ、そのなかで、メソポーラスゼオライトの合成が、界面活性剤、特にTPOAC型([3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド)の界面活性剤に基づき実施されている。
【0013】
また、他の刊行物では、例えば、メソポーラスのLTAの合成を記述するR.Ryooの研究(Nature Materials,(2006),Vol.5,p.718)、または構造化剤としてのTPHAC([3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド)を使用するメソポーラスのFAU(X)の合成を記述するW.Schwieger(Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),51,1962−1965)などの研究を挙げている。
【0014】
しかしながら、現時点でメソポーラスゼオライトに基づく凝集塊の製造であって、これらのメソポーラスゼオライトの特性、特にそのミクロ細孔性を保持する凝集塊の製造に関して、いかなる記述もない。その結果として、現時点では、特に少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む高いミクロ細孔性を有するゼオライト凝集塊などを使用する、液体および/または気体の分離の分野、イオン交換の分野または触媒の分野における工業用途が存在しないままである。
【0015】
工業、特に上述の用途分野では、大部分の場合、ゼオライト凝集塊を使用することを思い起こすべきである。実際には、合成ゼオライトは、通常シリコアルミネートゲルの核生成および結晶化の工程後に得られ、ここで、生成した結晶子サイズは約1μmから数μmであり、そのため合成ゼオライトは粉末状のゼオライト結晶と称される。
【0016】
これらの粉末は乏しい流動性のため取扱いが困難であるので工業的に使用するのは容易ではなく、これらの粉末は、床における流れ、特に流れる流体が関与する動的工程における流れの実質的な圧損失および分布不良を起こす。
【0017】
したがって、これらの粉末の凝集塊形態が好ましく、通例ゼオライト凝集塊と称され、それが、粒子、ストランド、押し出し物、または他の凝集塊の形態であってもよく、これらの形態は、押し出し、ペレット、噴霧化または当業者に周知の他の凝集技術によって得ることも可能である。これらの凝集塊は粉末材料において固有の欠点を有しない。
【0018】
これらの凝集塊は通常ゼオライト結晶および結合剤からなり、凝集塊はふつうゼオライトが意図される用途に対しては不活性である。前記結合剤はゼオライト結晶の粘着力を確実にし、意図する工業用途のための必要十分な機械的強度をゼオライト結晶に付与することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3556725号明細書
【特許文献2】米国特許第8486369号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0183229号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0183231号明細書
【特許文献5】国際公開第2013/106816号
【特許文献6】国際公開第2007/043731号
【特許文献7】欧州特許第2592049号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Nature,(1992),vol.359,pp710−712.
【非特許文献2】Feng−Shoux Xiao et.al(Hierarchically Structured Porous Materials, (2012),435−455,Wiley−VCH Verlang GmbH&Co.KGaA:Weinheim, Germany 978−3−527−32788−1.
【非特許文献3】R.Ryoo,Nature Materials,(2006),Vol.5,p.718.
【非特許文献4】W.Schwieger,Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),51,1962−1965.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の1つの目的は、したがって、少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料を提案することである。他の目的として、本発明は少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含み、かつ、先行技術の材料と比較したとき、結晶化度特性を改良した凝集ゼオライト材料を提案する。
【0022】
さらに他の目的は、少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊形態のゼオライト材料を製造するための方法を提案することであり、該方法はすぐに工業化でき、先行技術で公知の凝集塊を生産する方法と比較した場合にも、コストおよび期間に関して改良されており、同時に該材料に存在するメソポーラスゼオライトの特性が劣化するのを回避する。
【0023】
より具体的には、本発明の目的の1つは、出発物質であるメソポーラスゼオライトの純度、結晶化度および細孔分布特性を有し、さらに良好な機械的強度および最適結晶化度も有する凝集塊ゼオライト材料を提案することにより、例えば触媒の分野(触媒または触媒支持体)、または動的分離もしくは静的分離、吸着工程もしくはイオン交換工程における、簡便で効率の良い工業的使用を可能にすることである。
【0024】
さらに他の目的は、以下に続く本発明の記述から明らかになる。
【0025】
本出願人は、全体的に、または少なくとも部分的に先行技術で言われた欠点を克服し、少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料を経済的且つ最適な方法で生産することが可能であり、その初期のミクロ細孔性が維持され、すなわち、前記凝集塊ゼオライト材料を製造するのに使用されるメソポーラスゼオライトが凝集塊ゼオライト材料のミクロ細孔性のすべてを保持することが可能であることを見出した。
【0026】
凝集塊ゼオライト材料は高いレベルの結晶化度を有し、動的吸着もしくは静的吸着またはイオン交換工程において使用するのに、十分な密度および機械的特性に恵まれている。
【0027】
本発明の記述で特段示されない限り、示した比は重量比であり、950℃で1時間行われる焼成に基づく焼成等価物としての固体成分に関する値である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は少なくとも1つのメソポーラスゼオライトおよび場合によって1つ以上の非メソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料に関し、前記凝集塊ゼオライト材料が少なくとも以下:
・凝集塊の全量に対して、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の全ゼオライト含有量、
・30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、有利には90%以上のメソポーラスゼオライト含有量、
・950℃、1時間で行われた焼成後の、30%以下、好ましくは20%以下、有利には10%以下の無水百分率として表される結合剤含有量、
・7mm以下、好ましくは0.05mmと7mmとの間(両限界値を含む)、より好ましくは0.2mmと5mmとの間(両限界値を含む)、さらにより好ましくは0.2mmと2.5mmとの間(両限界値を含む)の平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)、および
・平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)が1mm未満である材料については、規格ASTM7084−04に従って測定したバルク破砕強度(BCS)が0.5MPaと3MPaとの間(両限界値を含む)、好ましくは0.75MPaと2.5MPaとの間(両限界値を含む)であるか、あるいは
・平均体積径(D50)または長さ(その材料が球形ではない場合には、最大の寸法)が1mm以上である材料については、規格ASTMD4179(2011)および規格ASTMD6175(2013)に従って測定した粒子破砕強度が0.5daNと30daNとの間(両限界値を含む)、好ましくは1daNと20daNとの間(両限界値を含む)である、
の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】×220000の倍率で得られたTEM画像を示す(参照の吸着剤)。
図1b】×220000の倍率で得られたTEM画像を示す(本発明の吸着剤)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好ましい実施形態によれば、本発明の材料はまた0.4g.cm−3と1g.cm−3との間(両限界値を含む)の単位体積当たりの見掛け質量をさらに有する。
【0031】
本発明において、凝集塊は少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含み、前記メソポーラスゼオライトはSi/Al原子比が1と1.4との間(両限界値を含む)のLTA、EMTおよびFAU構造のメソポーラスゼオライトから選択され、好ましくはX、MSXおよびLSX型のFAU構造のメソポーラスゼオライトから選択される。「ゼオライトMSX」(中間シリカX)という用語は、Si/Al原子比が約1.05と約1.15との間(両限界値を含む)を有するFAU型のゼオライトを意味する。「ゼオライトLSX」(低シリカX)という用語は、Si/Al原子比が約1に等しいFAU型のゼオライトを意味する。
【0032】
前記メソポーラスゼオライトは、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した、20μm未満、好ましくは0.1μmと20μmとの間(両限界値を含む)、好ましくは0.1μmと10μmとの間(両限界値を含む)、好ましくは0.5μmと10μmとの間(両限界値を含む)、より好ましくは0.5μmと5μmとの間(両限界値を含む)の数平均径を有する結晶形態である。
【0033】
本発明において、「メソポーラスゼオライト」という用語は、後述するt−プロット法で定義される、40m.g−1と400m.g−1との間(両限界値を含む)、好ましくは60m.g−1と200m.g−1との間(両限界値を含む)のメソポーラス外部比表面積を有するゼオライトを意味する。本発明の目的に対して拡張すると、「非メソポーラスゼオライト」は、後述するt−プロット法で定義される、厳密に40m.g−1未満のメソポーラス外部比表面積を有してもよいゼオライトである。
【0034】
本発明のゼオライト吸着剤のメソ細孔は、例えば、US7785563号に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する観察によって容易に特定することができる。
【0035】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法はゼオライトLTA、EMTおよびFAU、好ましくはFAUのメソポーラス結晶を含むゼオライト吸着剤を使用する。「メソポーラス」という用語は、(ミクロ細孔性の)ゼオライト結晶を意味し、これはミクロ細孔性と組み合せて、ナノメートルサイズの内部空洞(メソ細孔性)を有し、例えば、US7785563号に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する観察によって容易に特定することができる。
【0036】
US7785563号に示されるように、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって、ゼオライト粒子が固体のゼオライト結晶(即ち、非メソポーラス)であるか、もしくは固体のゼオライト結晶凝集塊であるかまたはメソポーラス結晶であるかどうかをチェックすることができる。好ましくは本発明の方法の吸着剤は、すべての結晶に対して、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、有利には90%以上の型のメソポーラスゼオライト結晶の量を含み、固体結晶を含まない。この統計的分析は、少なくとも50個のTEM画像の分析によって有利に実施される。
【0037】
本発明のゼオライト材料に含まれるメソポーラスゼオライト結晶は、単独で、または他の非メソポーラスゼオライト結晶との混合物として結合剤で凝集される。本発明の好ましい態様によれば、ゼオライト材料のゼオライト含有量を最適化するために、結合剤含有量はできる限り低い。
【0038】
本発明の凝集塊ゼオライト材料に含まれる結合剤は、クレイまたはクレイの混合物を含み、および好ましくはクレイまたはクレイの混合物からなる。これらのクレイは、好ましくは、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリン、ならびにあらゆる比でのこれらの2種以上の混合物から選択される。
【0039】
本発明において、「結合剤」という用語は、本発明の凝集塊ゼオライト材料におけるゼオライト結晶の粘着性を確実にする凝集結合剤を意味する。この結合剤はまた焼成後にいかなるゼオライト結晶性構造をも有しないゼオライト結晶とは区別される。その理由は結合剤がしばしば不活性であり、より正確には吸着および/またはイオン交換に対して不活性であるといわれているからである。
【0040】
特に好ましい態様によれば、本発明の凝集塊ゼオライト材料の中に存在する結合剤は単に1つまたは複数のクレイからなり、好ましくは一つのクレイのみからなる。
【0041】
本発明の凝集塊ゼオライト材料はまた、凝集塊ゼオライト材料の総重量に対して、0重量%と5重量%との間(両限界値を含む)、好ましくは0重量%と1重量%との間(両限界値を含む)、より好ましくは0重量%と0.5重量%との間(両限界値を含む)の量の1以上の他の成分を含むことができる。この他の成分またはこれらの他の成分は通常添加剤の残渣であり、そして前記凝集塊ゼオライト材料の合成のための他の助剤であり、特に本発明の解説で後述されるものである。
【0042】
そのような他の成分の例には、特に焼成後の添加剤の灰、シリカなどが含まれる。これらの他の成分は通常残渣の形態でまたは微量に存在し、本発明の少なくとも1つのメソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料にいかなる結合性または粘着性も付与するのに使用されないこと理解されるべきである。
【0043】
本発明の凝集塊ゼオライト材料は、粉末または結晶の、特にゼオライト結晶の凝集におけるスペシャリストである当業者に周知である形態などの種々の形態であってもよく、例えば本発明の凝集塊ゼオライト材料は、ビーズ、ストランド、押し出し物などの形態であってもよく、これに限定されない。
【0044】
さらに、メソ細孔性が後処理(例、WO2013/106816)によって得られるゼオライトの場合には、メソポーラス外部比表面積が増加するとミクロ細孔容積は大幅に減少する。他方、本発明のゼオライトの場合には、結晶の合成(直接合成)中にメソ細孔性は作られ、メソ細孔外部比表面積が増加しても吸着剤のミクロ細孔容積が実質的に一定のままであることが観察される。これは、本発明のゼオライト吸着剤が先行技術のメソポーラスゼオライト吸着剤とは違って、高いメソポーラス外部比表面積および高いミクロ細孔容積の両方を有することを示している。
【0045】
他の態様によれば、本発明の主題は先述した凝集塊ゼオライト材料を製造するための方法であって、少なくとも1つのメソポーラスゼオライトと、場合によって1つ以上の添加剤と、少なくとも1つの結合剤とを、先述の割合で混合する工程を少なくとも含み、例えば、押し出し、ペレット、噴霧化または当業者に周知の他の凝集技術に従って、凝集塊ゼオライト材料を成形するための方法である。
【0046】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は少なくとも以下の工程:
a)数平均径が0.1μmと20μmとの間(両限界値を含む)、好ましくは0.1μmと20μmとの間(両限界値を含む)、好ましくは0.1μmと10μmとの間(両限界値を含む)、より好ましくは0.5μmと10μmとの間(両限界値を含む)、さらにより有利には0.5μmと5μmとの間(両限界値を含む)であり、Si/Al原子比が1と1.4との間(両限界値を含む)であり、後述するt−プロット法で定義されるメソ細孔外部比表面積が40m.g−1と400m.g−1との間(両限界値を含む)、好ましくは60m.g−1と200m.g−1との間(両限界値を含む)である、少なくとも1つのメソポーラスゼオライト結晶を、場合によってゼオライト化できる、少なくとも80%のクレイまたはクレイの混合物を含む結合剤、および最大5%の添加剤ならびに凝集塊材料を成形する水量とともに凝集する工程、
b)50℃と150℃の間の温度での凝集塊の乾燥工程、
c)150℃を超える温度で、典型的には180℃と800℃との間、好ましくは200℃と650℃との間の温度で、数時間、例えば2時間から6時間で、酸化気体および/または不活性気体、特に酸素、窒素、空気、乾燥空気および/または脱炭酸空気、場合によって乾燥および/脱炭酸された、酸素滅損空気などの気体をフラッシュさせながら工程b)の凝集塊を焼成する工程、
d)場合により、工程c)において得られた凝集塊をアルカリ塩基性溶液と接触させることによる結合剤のゼオライト化工程
e)場合により、少なくとも1つのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の溶液と接触させることによる工程c)または工程d)の凝集塊のカチオン交換工程
f)次いで、工程b)で記載した条件下での、工程d)または工程e)において得られた凝集塊の洗浄および乾燥工程、および
g)工程c)で記載した条件下での、工程f)において得られた凝集塊の活性化による凝集塊ゼオライト材料の製造工程
を含む。
【0047】
凝集する工程a)において、使用される少なくとも1つのメソポーラスゼオライトが1以上のカチオン交換を事前に行う場合には、本発明の内容から逸脱しないであろう。この場合には、工程e)は結果的に不要となる。
【0048】
本発明の好ましい様式によれば、乾燥後および/または焼成後ならびに/またはイオン交換後には、このようにして得られた粉末(ゼオライト結晶)は、吸着のための不活性な結合剤によって凝集した形態で存在する。
【0049】
本発明の方法の全く好ましい実施形態によれば、工程a)において、調製されたゼオライト結晶の凝集は犠牲型板の存在下で行われるが、この鋳型はゼオライト結晶中のメソ細孔性を作る目的で、これによりメソポーラスゼオライトを得る目的で、当業者に公知の方法に従って、例えば焼成によって除去されるものである。
【0050】
使用される犠牲型板は、当業者に公知のいずれのタイプのものであってもよく、特に特許出願WO2007/043731に記載されているであってもよい。好ましい実施形態によれば、犠牲型板は有利にはオルガノシランから選択され、より好ましくは、[3-(トリメトキシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3-(トリメトキシリル)プロピル][3−(トリメトキシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシリル)プロピル)プロピル]−N−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシリル)プロピル]尿素、N−[3−(トリメトキシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシランおよびあらゆる比でのこれらの2種以上の混合物から選択される。
【0051】
上記の犠牲型板のうちで、[3-(トリメトキシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリドまたはTPOACが最も特に好ましい。
【0052】
より高分子量の犠牲型板、例えばPPDA(ポリマーのポリジアリルジメチルアンモニウム)、PVB(ポリビニルブチラル)およびメソ細孔の径を増加させる、分野で公知の他のオリゴマー化合物も使用してもよい。
【0053】
犠牲型板を除去する別の工程は、本発明の凝集塊ゼオライト材料を製造する方法の間いつ何時でも行うことができる。したがって、前記犠牲型板の除去は、工程a)の凝集前に、またはあるいは工程c)と同時に、ゼオライト結晶の焼成によって有利に行うことができる。
【0054】
凝集前のゼオライトがアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と1以上の連続的な交換を行う場合には、本発明の内容から逸脱しないであろう。
【0055】
乾燥した結晶は次いで焼成に供され、この工程はミクロ細孔性(水の除去)およびメソ細孔性(構造化剤の除去)の両方を放出する必要がある。加えて、焼成することによって犠牲型板を除去することが可能となる。この焼成工程は、当業者に公知の任意の焼成方法に従って、例えば、これに限定されないが、犠牲型板を含むゼオライト結晶の焼成は150℃を超える温度で、典型的には180℃と800℃との間、好ましくは200℃と650℃との間の温度で、数時間、例えば2時間から6時間で、酸化気体および/または不活性気体、特に酸素、窒素、空気、乾燥空気および/または脱炭酸空気、場合によって乾燥および/脱炭酸された、酸素滅損空気などの気体をフラッシュしながら実施することができる。気体の性質、温度上昇勾配、連続的な温度の定常状態とこれらの期間は犠牲型板の性質に応じて適応されることになる。
【0056】
工程a)において使用されるメソポーラスゼオライト結晶および凝集塊におけるメソポーラスゼオライト結晶のサイズは、走査型顕微鏡(SEM)による観察によって測定される。このSEM観察によって、例えば、残留結合剤(ゼオライト化工程中に変換されない)または凝集塊中に任意の他の非晶相を含む非ゼオライト相の存在を確認することができる。本発明の記述において、「数平均径」または「サイズ」という用語はゼオライト結晶に対して使用される。これらの大きさを測定する方法は以下の記述で説明される。
【0057】
凝集および成形(工程a)は、当業者に公知の任意の技術、例えば、押し出し、小型化、造粒板上での凝集、造粒ドラム、噴霧などの技術にしたがって実施される。使用される凝集結合剤とゼオライトとの比は、典型的には先行技術の比であり、すなわち95重量部から70重量部のゼオライト当たり5重量部と30重量部との間の結合剤である。工程a)で使用される凝集塊がビーズ、押し出し物などの形態であるにせよ、通例、該凝集塊は数平均径または長さ(凝集塊が球形でない場合には、最大の寸法)が7mm以下、好ましくは0.05mmと7mmとの間、より好ましくは0.2mmと5mmとの間、より有利には0.2mmと2.5mmとの間である。
【0058】
工程a)において、ゼオライト結晶および結合剤以外に、一以上の添加剤も加えることができる。レオロジーおよび/もしくは結合力の変更によるゼオライト/クレイパルプの取扱いを容易にするため、または特にマクロ細孔性という観点から最終的な凝集塊に満足な性質を付与するため、添加剤は、好ましくは有機分子、例えばリグニン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、界面活性剤(カチオン性、アニオン性、非イオン性または両性)である。好ましくは完全ではないが、メチルセルロースおよびその誘導体、リグノスルホン酸塩、ポリカルボン酸およびカルボン酸コポリマー、これらのアミノ誘導体およびこれらの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。0%から5%、好ましくは0.1%から2%の割合で添加剤が導入される。
【0059】
添加剤はまた液体および/または固体シリカ、好ましくは1%から5%の全質量の固体シリカ源を示す。シリカの選択源はゼオライト合成のスペシャリストである当業者に公知のいかなるタイプであってよく、例えば、コロイド状シリカ、珪藻土、パーライト、燃料灰、砂または固体シリカの他の形態であってもよい。
【0060】
焼成工程c)において、気体の性質、温度上昇勾配、連続的な温度の定常状態とこれらのそれぞれの期間は、除去されるべき犠牲型板の性質に応じて、および凝集塊工程a)において使用される結合剤の性質に応じて、適応されることになる。
【0061】
任意の工程d)において、凝集結合剤のゼオライト化は当業者に現在周知の任意の方法に従って実施され、そして、例えば、工程c)の生成物をアルカリ塩基性溶液中に浸漬させることによって実施してもよく、前記アルカリ塩基性溶液は一般的には水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液である。
【0062】
本発明の凝集塊ゼオライト材料は、メソポーラスゼオライトの特性および特に、先行技術から公知の、即ちゼオライトが非メソポーラスである従来の凝集塊ゼオライトの機械的特性を有する。
【0063】
より具体的には、本発明の凝集塊ゼオライト材料は凝集塊ゼオライト材料内の結晶化度およびゼオライトのメソ細孔性を維持し、そして非分解性で機械的に強い凝集塊ゼオライト材料を得ることが可能であることを示す。加えて、本発明のメソポーラスゼオライトを有する凝集塊ゼオライト材料を製造する方法は、実施するのに簡便、迅速かつ経済的であるため最小限の工程で容易に工業化することができる方法である。
【0064】
以下の実施例は本発明の主題を例証し、実施例は単に参考のために与えられ、多少なりとも本発明の種々の実施形態に限定されるものではない。
【0065】
以下の実施例において、凝集塊の物理的特性は当業者に公知の方法によって評価され、そのうちの主要なものは以下に想起される。
【実施例】
【0066】
ゼオライト吸着剤の強熱減量
規格NF EN196−2(2006年4月)に記載されるように、950℃±25℃の温度における空気中でのサンプルの焼成による酸化性雰囲気で強熱減量を決定する。測定標準偏差は0.1%未満である。
【0067】
純度測定
略記XRDの当業者に公知であるX線散乱解析によって凝集塊のゼオライト相の純度を評価する。この特定はBruekerのXRD装置で行う。
【0068】
各々のゼオライト構造は回折ピークの位置およびその相対強度で定まる固有の回折スペクトル(またはディフラクトグラム)を有するので、この解析によって、分析した固体に存在する結晶相を特定することが可能になる。
【0069】
凝集塊ゼオライト材料は粉末であり、そして散らばり、単純な機械的圧縮によってサンプルホルダー上で平らになる。
【0070】
Brueker D5000装置で行う回折スペクトル(またはディフラクトグラム)の取得条件は以下の通りである。
・40kV−30mAで使用されるCuチューブ
・スリットサイズ(発散、拡散および分析)=0.6mm
・フィルター:Ni
・サンプル回転装置:15rpm
・測定範囲:3°<2θ<50°
・インクレメント:0.02°
・インクレメント当たりの計数時間:2秒
【0071】
得られた回折スペクトル(またはディフラクトグラム)の解釈は、ベースICCD PDF−2(発売:2011年)を使用して、相を特定してEVAで行う。
【0072】
XRD分析によってゼオライトX画分の量を測定する。この分析をBruekerブランド装置上で行い、次にBrueker社製のTOPASソフトウエアを使用してゼオライトX画分の量を評価する。
【0073】
X線回折による定性分析および定量分析
各々のゼオライト構造は回折ピークの位置およびその相対強度で定まる固有のディフラクトグラム(または回折スペクトル)を有するので、この解析によって、分析した固体に存在する結晶相を特定することが可能になる。
【0074】
凝集塊ゼオライト材料は粉末であり、そして散らばり、単純な機械的圧縮によってサンプルホルダー上で平らになる。Brueker D5000装置で行うディフラクトグラムの取得条件は以下の通りである。
・40kV−30mAで使用されるCuチューブ
・スリットサイズ(発散、散乱および分析)=0.6mm
・フィルター:Ni
・サンプル回転装置:15rpm
・測定範囲:3°<2θ<50°
・インクレメント:0.02°
・インクレメント当たりの計数時間:2秒
【0075】
得られた回折スペクトル(またはディフラクトグラム)の解釈は、ベースICCD PDF−2(発売:2011年)を使用して、相を特定してEVAソフトウエアで行い、これによって完璧に結晶相を実証することが可能になる。
【0076】
XRD分析によってゼオライトX画分の重量を測定する。この方法はまたゼオライトLTA、EMTおよび他のFAU画分の量を測定するのに使用する。この分析をBrueker装置上で行い、次いでBrueker社製のTOPASソフトウエアによりゼオライトX画分、またはLTA、EMTおよび他のFAU画分の量を評価する。
【0077】
ミクロ細孔容積の測定
ミクロ細孔容積の測定はDubinin−Raduskevitch容積の測定(77Kでの液体窒素の吸着または87Kでの液体アルゴンの吸着)などの標準法を介して推定する。
【0078】
Dubinin−Raduskevitch容積を、気体、例えば窒素またはアルゴンなどの液化温度での吸着等温線の測定から決定する。ゼオライト構造の細孔開口に応じて、アルゴンはLTAに対して、および窒素はFAUに対して選択されることになる。その吸着に先立ち、ゼオライト吸着剤を300℃と450℃の間で9時間から16時間の時間、真空下(P<6.7×10−4Pa)で脱気する。次いで、0.002と1との間のP/P0相対比率圧で少なくとも35個の測定ポイントを採って、MicrometicsからのASAP2020型装置で吸着等温線の測定を行う。規格ISO15901−3(2007)を適用することによって得られた等温線からDubininおよびRaduskevitchに従い、ミクロ細孔容積を決定する。Dubinin−Raduskevitch方程式に従って評価されたミクロ細孔容積を、吸着剤1g当たりの液体吸着質のcmで表す。測定不確実性は、±0.003cm.g−1である。
【0079】
t−プロット法によるメソ細孔外部比表面積(m/g)の測定
t−プロット計算法は、吸着等温線データQads=f(P/P0)を利用することでミクロ細孔比表面積を計算することが可能になる。全細孔比表面積(m/g)を計算するBET比表面積(BET S=ミクロ細孔比表面積+メソ細孔外部比表面積)との差を決めることによって外部比表面積をそれから推測できる。
【0080】
t−プロット法を介してミクロ細孔比表面積を計算するために、曲線Qads(cm.g−1)を分圧P/P0[参照非細孔固体で形成される、log(P/P0)のt関数]に依存する相の厚さ=tの関数としてプロットする。Harkins−Jura方程式:[13.99/(0.034−log(P/P0))Λ0.5]が適用される。0.35nmと0.5nmとの間の間隔tでは、原点Qadsorbedでy軸を規定する直線をプロットすることができることによって、ミクロ細孔比表面積を計算することが可能になる。固体がミクロ孔でない場合には、その直線はゼロを通過する。
【0081】
透過型電子顕微鏡によるメソ細孔構造の観察
吸着剤を乳鉢で粉砕後、超音波処理で1分間、得られた粉末をエタノール中に分散する。一滴の溶液を顕微鏡格子上に置く。サンプルを周囲条件下で放置乾燥する。
【0082】
透過型電子顕微鏡(FEIからのCM200)で、電圧120kVで観察する。図1aおよび図1bは、参照の吸着剤(図1a)および本発明の吸着剤(図1b)の×220000の倍率で得られたTEM画像を示す。図1bの画像によってメソ細孔の存在を視覚化でき、しかもその粒径を推定することが可能となる。
【0083】
結晶の粒径
工程a)で使用されるメソポーラスゼオライト結晶および凝集塊に含まれるゼオライト結晶の数平均径の推定は、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察によって前に示したように行う。
【0084】
サンプル上のゼオライト結晶のサイズを推定するために、少なくとも5000倍の倍率で一組の画像を撮影する。次いで、例えばeditor LoGraMiからのSmile View ソフトウエアなどの専用ソフトウエアを使用して少なくとも200個の結晶の粒径を測定する。精度は約3%である。
【0085】
バルク破砕強度
本発明で記述されるゼオライト吸着剤の床の破砕強度は、Vinci Technologies社により販売されている「BCSテスター」装置と組み合せて、Shell法シリーズのSMS1471−74(Shell法シリーズSMS1471−74「触媒のバルク破砕強度の決定、圧縮―篩の方法」)に従い、特性評価される。この方法は、425μmの篩を使用して、3mmと6mmとの間のサイズの触媒を、元々特性評価することを意図しており、それによって特に破砕中に作られる微粉末を分離することが可能になる。425μmの篩の使用は、1.6mmを超える粒径を有する粒子には好適であるものの、特性評価するのに望まれる凝集塊の粒径に従って適応されなければならない。
【0086】
粒子破砕強度
規格ASTM D4179およびD6175に従って、Vinci Technologies社により販売されている粒子破砕強度装置を使用して機械的粒子破砕強度を決定する。
【0087】
本発明の凝集塊ゼオライト材料を、前記凝集塊ゼオライト材料の元素化学分析により、さらに正確には、規格NF EN ISO 12677(2011)で記述したように、蛍光X線化学分析によって、例えばBrueker社製のTigerS8装置である波長分散型分光器(WDXRF)でSi/Al比について評価した。蛍光X線スペクトルは元素の化学的な組み合わせに殆ど依存しないという利点がり、これは定量的にも且つ定性的にも正確な測定を提供することになる。
【0088】
0.4重量%未満の測定不確実性は、各々の酸化物、とりわけSiOおよびAlに対して、通常較正後に得られる。Si/Al原子比の測定不確実性は±5%である。
【0089】
[実施例1]
TPOAC/Al比=0.04での、核形成ゲルおよび成長ゲルの添加によるX型のメソポーラスゼオライトの合成
【0090】
a)300rpmのアルキメデスポンプを備えた攪拌反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび攪拌機を備えたステンレス製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(65.2重量%のAlを含む、Al・3HO)128gおよび水195.5gを含むアルミン酸塩水溶液を、25℃で25分間、300rpmの攪拌速度で、ケイ酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび25℃の水1997.5gを含むケイ酸塩水溶液中において混合することによって成長ゲルを調製する。
【0091】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。3.48NaO/Al/3.07SiO/180HO。成長ゲルの均一化は、25℃で25分間、300rpmで攪拌して行う。
【0092】
b)核形成ゲルの添加
成長ゲルと同じ仕様で調製し、40℃で1時間熟成した、組成が12NaO/Al/10SiO/180HOである核形成ゲル61.2g(即ち、2重量%)を、300rpmで攪拌しながら25℃で成長ゲルに添加する。300rpmで5分間均一化後に攪拌速度を100rpmに減じて、30分間攪拌を続ける。
【0093】
c)反応媒体への構造化剤の導入
メタノール(MeOH)中60%のTPOAC溶液27.3gを、300rpmで攪拌しながら反応媒体に入れる(TPOAC/Al比=0.04)。熟成工程を、結晶化が始まる前に25℃において1時間300rpmで行う。
【0094】
d)結晶化
攪拌速度を50rpmに下げ、反応媒体の温度が80分間に渡って75℃に上がるように、反応ジャケットの表示温度を80℃にセットする。75℃で22時間の安定な段階後、冷水をジャケットに循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止する。
【0095】
e)ろ過/洗浄
固体を焼結させて回収し、次いで脱イオン水で洗浄して中性pHにする。
【0096】
f)乾燥/焼成
生成物を特性評価するために、90℃で8時間、オーブンで乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0097】
構造化剤を除去することによってミクロ細孔性(水)およびメソ細孔性を放出するのに必要な乾燥生成物の焼成を以下の温度プロファイル:200℃への温度上昇30分間、次いで200℃の安定した段階での1時間、それから550℃への温度上昇の3時間、最後に550℃の安定した段階での1.5時間で行う。
【0098】
こうして、ゼオライトXPHの無水等価物固体255gを得る。これは使用したアルミニウムの量に対して99モル%の収率を示す。蛍光X線によって決定したZPHのSi/Al比は1.24に等しい。
【0099】
凝集塊ゼオライト材料の調製の比較目的のため、Si/Al原子比が1.25に等しい市販の非メソポーラスゼオライトを使用する。この参照ゼオライトは、例えば、CECA社で販売されているSiliporite(R)G5 APである。
【0100】
実施例1において調製されたメソポーラスゼオライトXの特性評価および上記した参照ゼオライトの特性評価を下記表1に照合する。
【0101】
【表1】
【0102】
メソ細孔の粒径分布を、円筒状細孔モデルを使った密度関数理論(DFT)法により特性評価する。結晶化度の百分率を、ベースICDD PDF−2(発売:2011年)を使用してTOPASソフトウエアにより計算する。
【0103】
[実施例2]
メソポーラスゼオライトX凝集塊の調製(本発明)
以下の文章において、所与の質量は無水等価物として表す。
【0104】
実施例1で得られたメソポーラスゼオライトX結晶1600g、カオリン350g、コロイド状シリカ(商標名Klebosol(R)30(30重量%のSiOおよび0.5重量%のNaOを含む))130gおよび押し出しを許容する水量からなる均一混合物を調製する。押し出し前のパルプの強熱減量は44%である。
【0105】
直径1.6mmの押し出し物が形成される。押し出し物を喚気オーブンの中80℃で一晩乾燥する。次いで、押し出し物を、窒素流下で550℃、2時間焼成し、それから乾燥した脱炭酸空気流下550℃で、2時間焼成する。
【0106】
メソポーラスゼオライトX押し出し物の機械的粒子破砕強度は2.6daNである。それらの単位体積当たりの見掛け質量は0.64g/cmである。
【0107】
[実施例3]
非メソポーラスゼオライトX凝集塊の調製(比較例)
実施例2の操作を、メソポーラスゼオライトXを参照の非メソポーラスゼオライトX押し出し物と置き換えて同じ仕様で繰り返す。参照の非メソポーラスゼオライトX押し出し物の機械的粒子破砕強度は2.5daNである。それらの単位体積当たりの見掛け質量は0.66g/cmである。
【0108】
メソポーラスゼオライトXを含む本発明の凝集塊ゼオライト材料は機械的特性を有し、非メソポーラスゼオライトを含む凝集塊ゼオライト材料の機械的特性と全く同等であることが観察される。
【0109】
したがって、本発明はメソポーラスゼオライトの特性、ミクロ細孔性と関連する特性およびこれまで公知であるゼオライト凝集塊の機械的特性を兼ね備える凝集塊ゼオライト材料を提供することは全く注目に値することである。したがって、触媒、分離、吸着などの工業用途のあらゆる分野において、問題なく、本発明の凝集塊ゼオライト材料の使用を想定することが可能になる。
【0110】
[実施例4]
実施例2の凝集塊と先行技術の凝集塊に相当する実施例3の凝集塊との比較
特許出願WO2013/106816(PCT/US2013/021420)中の実施例4、表4の最終行に記述の非メソポーラスゼオライトXの後処理によって得られたメソポーラスゼオライトを比較検討のため使用する。
【0111】
上記実施例2で記述の手順にしたがって、ゼオライトNaXから凝集塊を調製する。
【0112】
その比較分析の結果を下記表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
結晶化度の百分率を、ベースICDD PDF−2(発売:2011年)を使用してTOPASソフトウエアにより計算する。
【0115】
本発明の凝集塊は先行技術のミクロ孔容積よりも著しく大きいミクロ細孔容積および少なくとも等価のメソ細孔外部比表面積を有する。これらの結果は、後処理によって得られたメソ細孔性のゼオライトを含む凝集塊が本発明で調製した凝集塊よりも著しく不効率な細孔性特性を有することを示している。
図1a
図1b