【実施例】
【0050】
[実施例1]菌株分離および同定
【0051】
症状がある肺感染患者由来の痰試料から従来に記述されたとおり(Mun et al.,(2008).Mycobacterium senuense sp.nov.,a slowlygrowing,non−chromogenic species closely related to the Mycobacterium terrae complex.Int J Syst Evol Microbiol 58,641−646.)のように菌株を分離した。
【0052】
分離された菌株は、関連菌株である
Mycobacterium asiaticum ATCC 25276Tおよび
M.gordonae ATCC 14470Tに対して従来に記述されたとおり生化学分析を行った(Kent & Kubica,(1985).Public Health Mycobacteriology:a Guide for the Level III Laboratory.Atlanta:Centers for Disease Control and Prevention.1985;Pfyffer,Mycobacterium:General characteristics,laboratory detection,and staining procedures.In Manual of Clinical C Microbiology、9th edn,vol.1,p.559,573−578.Edited by P.R.Murray,E.J.Baron,J.H.Jorgensen,M.L.Landry & M.A.Pfaller.Washington:American EX Society for Microbiology.)。
【0053】
要約すると、コロニー形態、暗環境で色素沈着、光誘導および様々な温度での成長の有無、ナイアシン蓄積、ナイトレートレダクターゼ、Tween 80加水分解、ウレアーゼおよびピラジンアミダーゼ、TCH(thiophene−2−carboxylic acid hydrazide)耐性、PNB(p−nitrobenzoate)、5%塩化ナトリウム、エタンブトール、およびピクリン酸分析をOADC(Oleic Albumin Dextrose Catalase)で補充されたMiddlebrook 7H10寒天プレートで6週間培養して行った。
【0054】
結果は表1に記載されている。
【表1】
【0055】
表1で1、2、3は使用された菌株を示しており、次のとおりである:1.本願菌株
M.paragordonae(strain 49061);2.
M.asiaticum ATCC 25276
T;3.
M.gordonae ATCC 14470
T。符号説明は次のとおりである:+++,Strong growth;++、good growth;+、positive growth;−、negative/no growth;±、variable。すべての菌株はスムーズ型集落を示し、45℃で成長しなかった。
【0056】
形態学的に曲がった形が多い棒状の抗酸性を示す菌株で顕微鏡的には胞子やフィラメントは観察されなかった。最適な成長温度は25℃〜30℃であり、37℃または45℃では成長しなかった。Middlebrook 7H10寒天プレートでオレンジ色のスムーズ型集落を示した。ピクリン酸を含む培地では成長しておらず、ウレアーゼ活性は陽性であった。DNA−DNA関連度分析で最も関連性のある種は70%未満であった。MALDI−TOF MSを利用した脂質分析で他の種と異なることが示され、16SrRNA(1393bp)、rpoB(306bp)、およびhsp65(603bp)遺伝子でユニークな配列を有することが示された(
図1B、1Cおよび1D参照)。また、系統分析を介して分離された菌株は、ゆっくり育つマイコバクテリアであることが示された。16sRNAは属を区分して、hsp65、RPObは種間を区分できる遺伝子で、16SrRNA、hsp65遺伝子塩基配列は、
M.gordonaeと近いが、それぞれの塩基配列相同性は99%、95.9%で、
M.gordonaeとは特異的な配列を有しており、rpoB遺伝子塩基配列は、
M.asiaticumと近いが、塩基配列相同性95.4%でこれも特異的な塩基配列を有していることを確認することができた(
図1A)。このような結果は、本願に係る菌株が新規であることを示すものである。
【0057】
本バクテリアは、
Mycobacterium paragordonaeと命名されて2014年7月17日、韓国生命工学研究院微生物資源センターに寄託番号KCTC 12628BPで寄託された。
【0058】
[実施例2]
Mycobacterium paragordonae菌株の温度敏感性特徴確認および安全性分析
【0059】
生ワクチンで接種する場合の安全性を証明するために次の実験を行った。
【0060】
まず、実際に温度敏感性マイコバクテリア菌株(
Mycobacterium paragordonae,strain 49061)が37℃で育たないか確認するために、他の比較菌株(
M.gordonae、
M.asiaticum、および
M.marinum)と初期接種量を吸光度で同じに合わせた後、液体培地(Middlebrook 7H9)で30℃、37℃温度により生長の有無を時間別に(1、3、5、7日)吸光度(OD
600)で測定した。結果は
図2に記載されている。これに示された通り温度敏感性マイゴバクテリア
M.paragordonae(strain 49061)は、正常体温(37℃)に該当する温度で育たなかったが、それより低い温度(30℃)では良く育つことを確認することができる。
【0061】
次に感染分析を行った。感染分析は、液体培地および固体培地培養時、
M.paragordonae菌株が37℃で育たない特徴を有していたため、実際大きい食細胞に感染させた時にも温度による差を示すか否かを確認するためのものである。このために、30℃と37℃でマクロファージ(J774細胞株、ATCC TIB−67
TM)に菌を感染(〜1×10
7、10M.O.I.)させた後、細胞を融解した後(0.5% Triton
TMX−100が含まれたPBSを添加してピペット操作で細胞を引き離す)、7H10固体培地に塗抹後30℃で培養した後、生成されたコロニー数を計測した。
【0062】
結果は
図3に記載されている。これに示された通り、比較菌株とは異なって37℃で感染させた
M.paragordonaeはほとんど育たないことが示された。
【0063】
また、インビボ実験でBALB/cマウス(7週齢、n=3)に
M.paragordonaeおよび比較菌株(10
6CFU)を静脈注射して感染させた後、肝と脾臓を1、4、7日目に摘出、均質化してリン酸緩衝溶液で希釈した後、7H10固体培地にプレーティングした後30℃で培養してCFUを測定した。
【0064】
結果は、
図4Aに記載され、これに示された通り、肝または脾臓で
M.paragordonaeの生長を測定した場合、他の菌株に比較してほとんど育たないことが示され、これは本願菌株が生体に使用時安全であることを示す。
【0065】
また、インビボ実験でBALB/cマウス(7週齢、n=3)に
M.paragordonaeおよび比較菌株(
M.gordonae、
M.marinum、または
M.bovis BCG)(10
6CFU in 100μl PBS)を静脈注射して感染させた後、肝と脾臓を1、4、7日目(
M.gordonae、
M.marinumと比較時)または、1、7、14日目(
M.bovis BCGと比較時)に摘出、均質化してリン酸緩衝溶液で希釈した後7H10固体培地にプレーティングした後30℃で培養してCFUを測定した。
【0066】
結果は、
図4Bに記載されて、これに示された通り、肝、肺、または脾臓で
M.paragordonaeの生長を測定した場合、他の菌株に比較してほとんど育たないことが示された。
【0067】
[実施例3]
Mycobacterium paragordonaeワクチン分析
【0068】
引き続き、ワクチン分析を下記の通り行った。第一に、
図5Aの手続きのようにALB/c mouse(7週齢、n=4)に10
6CFUの
M.paragordonae(strain 49061)を尻尾に2回(0週および8週)静脈注射した。対照群としては、PBSとBCGを使用した。引き続き、12週に
M.abscessus関連菌株(
M.abscessus subsp.
bolletii 50594)〜10
6CFUを尻尾の下の部分に皮下注射した。引き続き、3日、14日後に各臓器(肝、脾臓、肺)別
M.abscessus subsp.
bolletii 50594のCFUを実施例2同様に測定した。
M.abscessus subsp.
bolletii 50594菌で攻撃して14日後に脾臓を摘出して、脾臓細胞内に
M.abscessus subsp.
bolletii 50594菌株の全体タンパク質を処理した時IFN−γを分泌する細胞数を測定するために、ELISPOTを実施した。具体的に、PVDF膜がある96ウェルプレートにIFN−γ抗体(eBiosciense,Cat.,16−7313−85,3μg/ml)を入れて4℃に一日培養した。翌日各ウェルを洗浄した後、完全培地(DMEM+抗生剤+10%FBS)で満たして37℃に培養した。各マウスの脾臓を摘出して70μm cell strainerで脾臓細胞を得て各群の脾臓細胞数を約5×10
5細胞に合わせた後培養させておいたPVDFがコーティングされた96ウェルプレートの各ウェルに追加した。引き続き、
M.abscessus subsp.
bolletii 50594全体タンパク10μg/mlを抗原処理群に処理して、残りは完全培地で処理した。陽性対照群でPMA(Phorbol myristate acetate)(5ng/ml)とiononmycin(500ng/ml)を処理した。その後、37℃で一日培養して翌日洗浄後検出抗体(eBiosciense,Cat.,13−7311−85,3μg/ml)を各ウェルに処理した。引き続き、4℃で一日培養した後各ウェルを洗浄した後、streptavidin−HRPを処理して2時間室温培養後洗浄してAEC substrate発色キット(Dako)を製造者の方法に従って使用して発色した後、スポットを確認した。第二に、
図6Aの記載された方法のようにBALB/c mouse(7週齢、n=6)に10
6CFUの
M.paragordonae(strain 49061)を尻尾の下の部分に2回(0週および8周)皮下注射してワクチン分析を行った。実験群は次のとおりである:実験群1:PBS 2回皮下注射、実験群2:BCG 2回皮下注射、実験群3:BCG 1回皮下注射後
M.paragordonae 1回皮下注射、実験群4:
M.paragordonae 2回皮下注射。引き続き、12週に非病原性結核菌である
M.tuberculosis H37Ra〜10
6CFUを尻尾静脈注射した。引き続き、4週後に各臓器(肝、脾臓、肺)別
M.tuberculosis H37RaのCFUを実施例2と同様に測定した。
M.tuberculosis H37Ra菌で攻撃して4週と8週後に脾臓を摘出して、脾臓細胞内に
M.tuberculosis H37Ra菌株の全体タンパクを処理した時IFN−γを分泌する細胞数を測定するためのELISPOTと抗原処理後細胞培養液に放出されたTNF−α、IFN−γ、およびIL−2に対するELISAを実施した。ELISAの場合、R&D systems(TNF−α,Cat.No.,DY410)またはBioLegend社(IFN−γ,Cat.No.,430805;IL−2,Cat.No.,431002)から提供するキットを製造者の方法し従って行った。引き続き、4週と8週後に集めた血液サンプルから血清を分離して血清内
M.tuberculosis H37Ra全体タンパクおよびAg85B抗原に反応するimmunoglobulin G2aタイプの発現差を分析するために、IgG2aに対するELISAを行った。
【0069】
結果は、
図5および
図6に記載されている。
図5Bの場合、
M.paragordonaeをワクチンさせたマウス臓器で
M.abscessus subsp.
bolletii 50594のCFUがPBSや他の
M.gordonaeおよび
M.bovis BCGをワクチンさせたマウス臓器でより低いCFUを示す。また、IFN−γに対するELISPOT施行時
M.paragordonaeを接種したマウスでより多くのspotが観察された。ワクチンテスト後CFU結果から、
M.paragordonaeがM.abscessus subsp.
bolletii 50594に対する防御能を与えたことを示す。
【0070】
また、既存の
M.bovis BCGと比較して
M.abscessus関連菌株のCFUをさらに減少させることにより、
M.abscessus関連菌株に対する防御能がさらに高いことを示している。また、脾臓細胞内
M.abscessus subsp.
bolletii 50594に対する防御免疫細胞の数が
M.paragordonaeをワクチンとして使用した場合、BCGより多いことを、ELISPOTを介して確認したところ、
M.abscessus subsp.
bolletii 50594を含むカメ結核菌群に対する効果的な防御能を与える可能性があることを示す。
【0071】
図6Bの場合、
M.paragordonaeをワクチンさせたマウス臓器で
M.tuberculosis H37RaのCFUがPBS処理群に比べてずっと低いCFUを示し、BCGを2回ワクチンさせたグループに比べて
M.paragordonaeを2回ワクチンさせたグループのCFUが統計的に有意に低いCFUを示す。IFN−に対するELISPOT施行時
M.paragordonaeを2回ワクチンさせたマウス脾臓細胞でBCGおよび二つの菌株をワクチンさせたマウス脾臓細胞に比べてより多くのspotが統計的有意性を示して観察された(
図6C)。また、各実験群で摘出した脾臓細胞を
M.tuberculosis H37Ra全体タンパクで刺激させた後、細胞培養液に発現されたサイトウカインをELISAで確認した時、
M.paragordonae菌株でワクチンさせた脾臓細胞で防御免疫に関与するIFN−γ、TNF−α、およびIL−2の発現がPBS実験群だけでなく他の実験群に比べて有意に増加することを確認することができた(
図6D)。最後に、各実験群マウスの血清内
M.tuberculosis H37Raに対するIgG2a抗体の発現程度をELISAで確認した。IgG2a抗体は主にTh1−type免疫反応によって形成されて、ワクチン効能と関連している抗体isotypeとして知られている。IgG2a抗体ELISA結果、PBSまたはBCGをワクチンさせた実験群に比べて
M.paragordonaeでワクチンさせた実験群の血清サンプル内に
M.tuberculosis H37Ra全体タンパク質およびAg85B抗原に対するIgG2a抗体が有意に多く存在していることを確認することができた(
図6E)。これらの結果は、
M.paragordonaeが
M.abscessus subsp.
bolletii 50594および
M.tuberculsos H37Raに対する防御能を与えたことを示す。
【0072】
さらに本願に係るワクチンは、自然に温度に敏感な特徴を有するため、安全性も担保されて、ヒトだけでなく動物にもカメ結核菌群、結核およびウシ型結核菌を含むマイコバクテリア感染症に対するワクチンとして効果的に使用できる可能性があることを示すものである。
【0073】
以上、本願の例示的な実施例に対し詳細に説明したが、本願の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の請求範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本願の権利範囲に属するものである。
【0074】
本発明で使用されたすべての技術用語は、別に定義されない以上、本発明の関連分野で通常の当業者が一般的に理解するものと同じ意味として使用される。本明細書に参考文献と記載されるすべての刊行物の内容は本発明に取り込まれる。