(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6229087
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ダイカスト金型、ダイカストマシン及びダイカスト製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20171030BHJP
B22D 25/02 20060101ALI20171030BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B22D17/22 F
B22D17/22 B
B22D25/02 G
B22C9/06 C
B22C9/06 S
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-74699(P2017-74699)
(22)【出願日】2017年4月4日
【審査請求日】2017年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山田 奨
【審査官】
荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−047452(JP,A)
【文献】
特開2013−007097(JP,A)
【文献】
特開2009−045655(JP,A)
【文献】
特開平07−223062(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0079947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00−17/22
B22D 25/00−25/02
B22C 9/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯が流れる流路(22)に側方から連通し、前記流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて溶湯に気泡を含ませるためのガス供給路(61)を備えるダイカスト金型(11)。
【請求項2】
前記ガス供給路(61)の末端部に、多孔構造の気泡生成部材(65)が嵌合されている請求項1に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項3】
前記気泡生成部材(65)の各孔の径が1[mm]以下である請求項2に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項4】
前記気泡生成部材(65)は、前記流路(22)とガス供給路(61)とを連通する複数の貫通孔を形成してなる請求項2又は3に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項5】
前記気泡生成部材(65)は、セラミックスで構成されている請求項2に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項6】
前記ダイカスト金型(11)内に閉じ込められたガスを溶湯供給時に排出するガス抜き路(41)と、
前記ガス抜き路(41)の端部に嵌合され、ガスの通過を許容し溶湯の進入を規制するベント用メッシュ部材(45)とを備え、
前記ベント用メッシュ部材(45)と前記気泡生成部材(65)とが同一構造をなしている請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項7】
前記流路(22)の途中部分を絞ってなる絞り部(25C)を備え、前記絞り部(25C)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項8】
前記絞り部(25C)の両端にテーパー部(25B,25D)が備えられている請求項7に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項9】
製品を成形するためのキャビティ(21)と、
前記キャビティ(21)に溶湯を供給する前記流路(22)としてのランナー(22)とが備えられ、
前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項10】
全ての前記キャビティの上流側に位置する前記ランナーに前記ガス供給路が連通している請求項9に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項11】
前記キャビティ(21)が複数備えられ、一部の前記キャビティ(21)の上流側に位置しかつ他の前記キャビティ(21)の下流側に位置する前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項12】
前記キャビティ(21)に連絡する複数の前記ランナー(22)が備えられ、少なくとも一以上の前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項13】
複数の前記キャビティ(21)と、前記複数の前記キャビティ(21)の上流側にそれぞれ位置する複数の前記ランナー(22)とが備えられ、前記複数のランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)を有して、ポーラス金属製品(W)を成形するダイカストマシン(10)。
【請求項15】
前記流路(22)のうち前記ガス供給路(61)との連通部分より下流側に溶湯の流速が前記連通部分より下がる拡張部(25A,25B)を備え、前記拡張部(25A,25B)で溶湯に混入されているガスの気泡を崩壊させる請求項14に記載のダイカストマシン。
【請求項16】
ダイカストマシン(10)のダイカスト金型のうち溶湯が流れる流路に側方から連通するガス供給路(61)を設けておき、前記流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて気泡を含んでなるダイカスト製品(W)を成形するダイカスト製品(W)の製造方法。
【請求項17】
ガス混入後の溶湯の流速を減速させることで溶湯の静圧を上昇させて、溶湯中のガスの気泡を崩壊させる請求項16に記載のダイカスト製品(W)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を含むダイカスト製品を製造するためのダイカスト金型、ダイカストマシン及びダイカスト製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の軽量化のために、ポーラス金属と呼ばれる気泡を含む金属でダイカスト製品を製造する方法が開発されている。具体的には、ダイカスト金型への注入前に、発泡剤や攪拌機等を用いて溶湯に気泡を含ませておく方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−045655号公報([0027])
【特許文献2】特開平7−223062号公報(
図1,[0017])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のダイカスト製品の製造方法では、ダイカスト金型に注入する前に溶湯に気泡を含ませておく必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、気泡を含むダイカスト製品を効率良く製造することが可能なダイカスト金型、ダイカストマシン及びダイカスト製品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、溶湯が流れる流路(22)に側方から連通し、前記流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて溶湯に気泡を含ませるためのガス供給路(61)を備えるダイカスト金型(11)である。
【0007】
請求項2の発明は、前記ガス供給路(61)の末端部に、多孔構造の気泡生成部材(65)が嵌合されている請求項1に記載のダイカスト金型(11)である。
【0008】
請求項3の発明は、前記気泡生成部材(65)の各孔の径が1[mm]以下である請求項2に記載のダイカスト金型(11)である。
【0009】
請求項4の発明は、前記気泡生成部材(65)は、前記流路(22)とガス供給路(61)とを連通する複数の貫通孔を形成してなる請求項2又は3に記載のダイカスト金型(11)である。
【0010】
請求項5の発明は、前記気泡生成部材(65)は、セラミックスで構成されている請求項2に記載のダイカスト金型(11)である。
【0011】
請求項6の発明は、前記ダイカスト金型(11)内に閉じ込められたガスを溶湯供給時に排出するガス抜き路(41)と、前記ガス抜き路(41)の端部に嵌合され、ガスの通過を許容し溶湯の進入を規制するベント用メッシュ部材(45)とを備え、前記ベント用メッシュ部材(45)と前記気泡生成部材(65)とが同一構造をなしている請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)である。
【0012】
請求項7の発明は、前記流路(22)の途中部分を絞ってなる絞り部(25C)を備え、前記絞り部(25C)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)である。
【0013】
請求項8の発明は、前記絞り部(25C)の両端にテーパー部(25B,25D)が備えられている請求項7に記載のダイカスト金型(11)である。
【0014】
請求項9の発明は、製品を成形するためのキャビティ(21)と、前記キャビティ(21)に溶湯を供給する前記流路(22)としてのランナー(22)とが備えられ、前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項1乃至
8の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)である。
【0015】
請求項10の発明は、全ての前記キャビティの上流側に位置する前記ランナーに前記ガス供給路が連通している請求項9に記載のダイカスト金型(11)である。
【0016】
請求項11の発明は、前記キャビティ(21)が複数備えられ、一部の前記キャビティ(21)の上流側に位置しかつ他の前記キャビティ(21)の下流側に位置する前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)である。
【0017】
請求項12の発明は、前記キャビティ(21)に連絡する複数の前記ランナー(22)が備えられ、少なくとも一以上の前記ランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)である。
【0018】
請求項13の発明は、複数の前記キャビティ(21)と、前記複数の前記キャビティ(21)の上流側にそれぞれ位置する複数の前記ランナー(22)とが備えられ、前記複数のランナー(22)に前記ガス供給路(61)が連通している請求項10に記載のダイカスト金型(11)である。
【0019】
請求項14の発明は、請求項1乃至13の何れか1の請求項に記載のダイカスト金型(11)を有して、ポーラス金属製品(W)を成形するダイカストマシン(10)である。
【0020】
請求項15の発明は、前記流路(22)のうち前記ガス供給路(61)との連通部分より下流側に溶湯の流速が前記連通部分より下がる拡張部(25A,25B)を備え、前記拡張部(25A,25B)で溶湯に混入されているガスの気泡を崩壊させる請求項14に記載のダイカストマシンである。
【0021】
請求項16の発明は、ダイカストマシン(10)のダイカスト金型のうち溶湯が流れる流路に側方から連通するガス供給路(61)を設けておき、前記流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて、気泡を含んでなるダイカスト製品(W)を成形するダイカスト製品(W)の製造方法である。
【0022】
請求項17の発明は、ガス混入後の溶湯の流速を減速させることで溶湯の静圧を上昇させて、溶湯中のガスの気泡を崩壊させる請求項16に記載のダイカスト製品(W)の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1のダイカスト金型及び請求項14のダイカストマシン(10)及び請求項16のダイカスト製品(W)の製造方法によれば、流路(22)に側方から連通するガス供給路(61)が設けられていて、流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて、溶湯に気泡を含ませることができる。即ち、従来のように、ダイカスト金型内に注入する前の溶湯に気泡を含ませる手間がなくなり、効率良く気泡を含むダイカスト製品を製造することが可能となる。しかも、流路(22)を通過中の溶湯に対してガスが側方から注入されるため、溶湯の流れを利用して、ガスを溶湯内に効率よく混ぜ込むことができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、ガス供給路(61)の末端部に多孔構造の気泡生成部材(65)が嵌合されているので、ガス供給路(61)から供給する気泡を小さくすることができる。また、請求項3に示すように気泡生成部材(65)の各孔の径が1mm以下であると、ガス供給路(61)の内部に溶湯が入り込むことを抑制することができる。気泡生成部材(65)は、請求項4のように、複数の貫通孔を形成してなるものであってもよいし、請求項5のように、セラミックスで構成されたものであってもよい。
【0025】
また、請求項6の発明によれば、気泡生成部材(65)とベント用メッシュ部材(45)とが同一構造になっているので、部品の共通化を図ることができる。
【0026】
請求項7の発明のように、流路(22)の途中部分を絞ってなる絞り部(25C)にガス供給路(25)を連通させることで、ガス供給路(61)が連通する部分の速度を速くすることができ、ガス供給路(61)から供給されるガスの気泡を小さくすることができる。また、絞り部(25C)を通過した後に、流路(22)が広くなるため静圧が高くなり、溶湯に混入されたガスの気泡を崩壊させ、ガスの気泡をさらに小さくすることができる。このとき、請求項8のように、絞り部(25C)の両端にテーパー部(25B,25D)を設けることで、溶湯の流れをスムーズにすることができる。
【0027】
ガス供給路(61)はキャビティ(21)に連通する構成としてもよいし、請求項9の発明のように、ランナー(22)に連通する構成であってもよい。また、ガス供給路(61)をランナー(22)に連通する構成とすれば、キャビティ(21)に充填される全ての溶湯に気泡を含ませることが可能となる。また一般的にランナー(22)は、溶湯が充満状態且つ高速で通過するものであるため、本発明のガス供給路を連通する場所として適している。
【0028】
請求項10乃至請求項13の発明のように、キャビティ(21)及びキャビティ(21)に連通するランナー(22)の個数や形状にあわせて、ガス供給路(61)を設けることができる。
【0029】
請求項16及び請求項17の発明のように、溶湯に混入されているガスの気泡を崩壊させる機構を備えることで、より細かい気泡にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るダイカストマシンの概略図
【
図6】溶湯に注入した気泡の大きさの変化についての説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1には、本実施形態のダイカストマシン10が示されている。
図1に示すダイカストマシン10は、ダイカスト金型11に形成されたキャビティ21内を真空装置40によって減圧した後に、スリーブ30に供給された溶湯を射出装置35によってキャビティ21内に注入する構成となっている。
【0032】
射出装置35は、ロッド31の先端に取り付けられたピストン32がスリーブ30を進退移動するように制御されている。具体的には、ロッド31の後端が図示しないアクチュエータに接続されている。そして、アクチュエータは、制御装置50と電気的に接続され、制御装置50がアクチュエータの動作を制御することで、ロッド31の移動速度、注入圧、注入量等が制御される。
【0033】
また、射出装置35は、例えば、ロッド31の位置を検出する図示しない位置センサと、ロッド31にかかる圧力を検出する図示しない圧力センサとを有している。これらセンサの検出値は、制御装置50へ出力され、射出装置35の制御に用いられる。
【0034】
ダイカスト金型11は、固定型12と、固定型12に接離可能に構成された可動型13とを有している。固定型12と可動型13とが当接したときに、固定型12及び可動型13との間に、製品部分を形成するキャビティ21と、キャビティ21とスリーブ30とを連絡するランナー22(本発明の「流路」に相当する。)とを有する内部空間20が形成される。
【0035】
内部空間20は、真空用配管41を介して真空装置40と接続されている。真空装置40は、電磁弁42、真空ポンプ43及び図示しない真空タンクを備えている。真空タンクは、真空ポンプ43が駆動することで、真空度が高められた状態に維持される。そして、電磁弁42を開かれると、内部空間20内が減圧される。真空装置40は、制御装置50と電気的に接続され、制御装置50が真空ポンプ43の動作の制御、及び電磁弁42の開閉を制御することで、内部空間20内の真空度が制御される。真空用配管41には、真空用配管41のうち内部空間20側の一端を覆うメッシュ部材を備えたベントホール45が嵌合されている。なお、真空用配管41は可動型13に貫通形成されている。
【0036】
制御装置50は、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータにより構成されている。制御装置50は、予め設定されたプログラム、各種設定値及び各種センサに基づいて、各種の装置(ダイカスト金型11の型締、ロッド31の移動、内部空間20内の減圧等)へ制御信号を出力する。
【0037】
ところで、本実施形態のダイカストマシン10は、
図1に示すように、内部空間20に連絡するガス供給路61を備えている。ガス供給路61は、可動型13に貫通形成されている。ガス供給路61の一端は、内部空間20のうちランナー22の内側面に連通し、ガス供給路61の他端はエア供給装置60に接続している。エア供給装置60は、制御弁62、エアポンプ63及び図示しないエアタンクを備えている。エア供給装置60は、制御装置50と電気的に接続され、制御装置50がエアポンプ63の動作の制御、及び制御弁62の開閉を制御することで、ランナー22にエアが供給される。
【0038】
なお、制御装置50には、予め定められた位置にロッド31が到達すると、エア供給装置60及び真空装置40が駆動する制御プログラムが組み込まれている。
【0039】
ランナー22には、ランナー22の途中位置の一部の流路が絞られた形状をなすバブル生成部25が備えられている。具体的には、
図2に示されるように、バブル生成部25は、キャビティ21側から順に第1大径部25Aと、第1大径部25Aから離れるにつれて窄まる第1テーパー部25B、第1大径部25Aよりも小径な小径部25C(本発明の「絞り部」に相当する。)、小径部25Cから離れるにつれて拡がる第2テーパー部25D、小径部25Cよりも大径な第2大径部25Eとから構成される。
【0040】
そして、バブル生成部25のうち小径部25Cに向けて開口するガス供給孔28にガス供給路61の一端が連通している。なお、ガス供給路61は小径部25Cに対して略直角に延びている。
【0041】
また、
図3に示すように、ガス供給孔28には、気泡生成部材65が嵌合されている。気泡生成部材65は、ガス供給路61に嵌め込まれる筒部と筒部の一端が内側に折り曲げられてガス供給孔28の開口縁と略面一となる枠部66と、枠部の内側に形成されるメッシュ状のフィルター部67とを備えている。フィルター部67に設けられた各孔の径は約0.02〜0.5mmとなっている。また、フィルター部67の気孔率は20%以上であることが望ましい。
【0042】
本実施形態のダイカストマシン10の構成に関する説明は以上である。次に、このダイカストマシン10の作用効果について説明する。ダイカストマシン10を起動すると、
図4(A)に示されるように、スリーブ30内に溶湯が供給される。
【0043】
そして、
図4(B)に示されるように、ピストン32がスリーブ30内を移動して、溶湯を供給するための開口よりも手前側の地点である始点P0から開口を通過したP1に到達すると、電磁弁42が開いて、内部空間20内が減圧された状態となる。
【0044】
図5(A)に示されるように、ピストン32がスリーブ30内をさらに移動して、溶湯がバブル生成部25の第1テーパー部25Bに到達すると、制御弁62が開かれるとともに、エア供給装置60から小径部25Cを流れる溶湯に向けてエアの噴出が開始される。
【0045】
図5(B)に示されるように、ピストン32がスリーブ30内をさらに移動すると、内部空間20が気泡を含んだ溶湯で満たされる。そして、キャビティ21内の溶湯が気泡を含んだ状態で固化して、ポーラス金属からなるダイカスト製品Wが形成される。
【0046】
次いで、ダイカスト金型11が開かれて、ダイカスト製品Wが取り出される。その後、内部空間20内面に離型剤が吹き付けられてからダイカスト金型11が閉じられ、その間にピストン32が始点P0に戻る。
【0047】
上述したように、本実施形態のダイカストマシン10には、ランナー22に側方から連通するガス供給路61が設けられているので、ランナー22を通過中の溶湯にガスを混入させて、溶湯に気泡を含ませることができる。即ち、ダイカスト製品Wを製造するために必ず必要なキャビティ21に溶湯を注入する工程を利用して、溶湯に気泡を含ませることができる。このように、本実施形態のダイカストマシン10は、キャビティ21に溶湯を注入する前に、発泡剤を投入し撹拌するという工程を必要とする従来のダイカストマシン10と比べて、効率よく気泡を含むダイカスト製品Wを製造することができる。
【0048】
さらに、本実施形態のダイカストマシン10は、溶湯に発泡剤を混入する必要がないので、溶湯の温度や、発泡剤の混入から製品の成形までの時間の制限が少なく、容易にポーラス金属を含んでなるダイカスト製品Wを形成することができる。
【0049】
また、ガス供給路61が溶湯の流れる流路の側方から連通しているので、エアが供給されるときに生じる溶湯の流れの乱れを利用して、溶湯にエアを混ぜ込むことができる。
【0050】
また、ダイカストマシン10は、内部空間20に連通するガス供給路61からエアが供給される構成となっている。これにより、予め溶湯に発泡剤を混入する必要がなく、ガスを供給するタイミングを調整することで、任意の位置に気泡が混入されたダイカスト製品Wを形成することができる。具体的には、溶湯が第1テーパー部25Bに到達した時点から、内部空間20が溶湯で満たされるまで、ガス供給路61からガスを供給することで、製品領域の全体に気泡を含んだダイカスト製品Wを形成することができ、一定量の溶湯が充填された後に、ガス供給路61からガスを供給することで、製品領域の一部にのみ気泡を含んだダイカスト製品Wを形成することができる。
【0051】
さらに、ダイカスト製品Wに含まれる気泡の総量と、溶湯がガス供給孔28に達した後から、溶湯がキャビティ21内を充填するまでの間にエア供給装置60から供給されたエアの総量とが略同一であるので、ダイカスト製品Wにおける気泡の発生量のばらつきを抑制することが可能となり、その結果、ダイカスト製品の重さ、強度等の品質の安定化を図ることができる。
【0052】
また、ガス供給路61がランナー22に連通しているので、キャビティ21全体に気泡を含んだ溶湯を充填させることができ、製品領域の全体に気泡を含んだダイカスト製品Wを形成することができる。また、ランナー22にガス供給路61を連通させることで、製品の形状に依拠させる必要がないため、バブル生成部25を形成するなど流路の形状を自由に設計することができる。さらに、一般的にランナー22は、溶湯が充満状態且つ高速で通過するものであるため、ガス供給路61を連通する場所として適している。
【0053】
また、ガス供給孔28がフィルター部67で覆われているので、ガス供給路61への溶湯の侵入を抑制するとともに、ガス供給路61から溶湯に混入される気泡を小さくすることができる。
【0054】
さらに、本実施形態のダイカストマシン10は、真空用配管41に取り付けられているベントホール45と、ガス供給路61に取り付けられている気泡生成部材65とが同一部材で構成されている。これにより、部品の共通化を図ることができる。
【0055】
ところで、流体にガスを注入するときに、流体の流れが速いところでガスを注入した方が、流体の流れが遅いところでガスを注入したときと比べて、ガスの気泡の大きさが小さくなることが知られている。
【0056】
ここで、本実施形態のダイカストマシン10は、
図6(A)に示されるように、バブル生成部25は、第2大径部25Eの下流側に、第2大径部25Eよりも内径の小さい小径部25Cを備えている。これにより、バブル生成部25における小径部25Cを流れる溶湯の流速を、第2大径部25Eを流れる溶湯の流速よりも速くすることが可能となる。そして、ガス供給路61を溶湯の流速が速くなっている小径部25Cに連通させることで、その他の部位にガス供給路61を連通させる場合と比べて、ガス供給路61から小径部25Cを流れる溶湯に向けてより小さい気泡を注入することが可能となる。これにより、微細な気泡を多数含んだダイカスト製品Wを製造することが可能となる。
【0057】
また、気泡は、圧力が急激に上昇すると気泡の崩壊が進行して、小さくなる特性があることが知られている。
【0058】
ここで、本実施形態のダイカストマシン10は、
図6(B)に示されるように、バブル生成部25は、小径部25Cの下流側に、小径部25Cよりも大径な第1大径部25Aを備えている。即ち、小径部25Cを流れる溶湯の速度よりも、第1大径部25Aを流れる溶湯の速度が低下するとともに、小径部25Cの静圧よりも第1大径部25Aの静圧が上昇させることが可能となる。これにより、小径部25Cを流れる溶湯に注入された空気の気泡を、第1大径部25A側に流れるに従って崩壊を進行させることが可能となり、溶湯に注入された気泡を小さくすることが可能となる。これにより、微細な気泡を多数含んだダイカスト製品Wを製造することが可能となる。
【0059】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
(1)上記実施形態では、気泡生成部材65は、枠部66とメッシュ構造のフィルター部67とを有する構造であったが、枠部66とフィルター部67が一体構造となっていてもよい。例えば、セラミックスなどの多孔質材料で構成してもよいし、多数の貫通孔を有する金属ブロックで構成してもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では、気泡生成部材65は、メッシュ構造のフィルター部67を有していたが、気泡生成部材65は複数の小径孔を有する構成であればよく、例えば、スリット構造であってもよいし、複数の小径孔がパンチなどによって形成された構造であってもよい。また、各孔の径は1mm以下であってもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、流路の一部が絞られてなるバブル生成部25が設けられた構成であったが、バブル生成部25を設けない構成としてもよい。具体的には、絞り部分のない直線状の流路の途中位置にガス供給路61を連通させる構成としてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、ランナー22にガス供給路61を連通させる構成であったが、キャビティ21にガス供給路61を連通させる構成であってもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、内部空間20が、1つのキャビティ21とキャビティ21に連絡する1つのランナー22とから構成されていたが、1つのキャビティ21に対して複数のランナー22を設ける構成としてもよい。このとき、複数のランナー22の全てにガス供給路61を連通させる構成であってもよいし、一部のランナー22にのみガス供給路61を連通させる構成であってもよい。複数のランナー22の全てにガス供給路61を連通させる構成とすれば、全体に気泡を有するダイカスト製品Wを形成することができる。また、一部のランナー22にのみガス供給路61を設ける構成とすれば、一部にのみ気泡を有するダイカスト製品Wを形成することができる。
【0065】
(6)上記実施形態では、内部空間20が、1つのキャビティ21とキャビティ21に連絡する1つのランナー22とから構成されていたが、複数のキャビティ21と複数のランナー22を設ける構成としてもよい。例えば、複数のキャビティ21がランナー22を介して連絡しているとき、複数のランナー22のうち、キャビティ21同士を連絡するランナー22にのみ、ガス供給路61を連通させる構成とすれば、気泡を有するダイカスト製品Wと気泡を有さないダイカスト製品Wとを一度に形成することができる。
【0066】
(7)上記実施形態では、ガス供給路61の他端にエア供給装置60が接続されていたが、エア供給装置60が接続されない構成であってもよい。この場合、溶湯が小径部25Cを流れる際に負圧によって、外部の空気がガス供給路61を介して、小径部25Cを流れる溶湯に混入される。
【0067】
(8)上記実施形態では、バブル生成部25が、小径部25Cの上流及び下流に、小径部25Cよりも大径な第1大径部25A及び第2大径部25Eを有する構成であったが、何れか一方のみを有する構成であってもよい。
【0068】
(9)上記実施形態では、ガス供給路61は流路に対して略直角に延びていたが、流路に対して交差していればよく、ガス供給路61が流路に対して斜めに延びていてもよい。
【0069】
(10)上記実施形態では、溶湯が第1テーパー部25Bに到達した時点で、エアの供給が開始される構成となっていたが、エアの供給のタイミングは適宜変更することができる。例えば、エアの供給のタイミングを小径部25Cに溶湯が到達する前にすれば、キャビティ21に供給されるすべての溶湯に気泡を含ませることが可能となる。
【0070】
(11)上記実施形態では、溶湯の充填が完了するとエアの供給も終了する構成となっていたが、エアの供給の終了のタイミングは適宜変更することができる。
【0071】
(12)上記実施形態は、コールドチャンバー方式のダイカストマシン10であるが、本発明をホットチャンバー方式のダイカストマシン10に適用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 ダイカストマシン
11 ダイカスト金型
21 キャビティ
22 ランナー
25 バブル生成部
25C 小径部(絞り部)
61 ガス供給路
63 エア供給装置
65 気泡生成部材
W ダイカスト製品
【要約】
【課題】気泡を含むダイカスト製品を効率良く製造することが可能なダイカスト金型、ダイカストマシン及びダイカスト製品の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のダイカストマシン(10)及びダイカスト金型(11)は、溶湯が流れる流路(22)に側方から連通し、流路(22)を通過中の溶湯にガスを混入させて溶湯に気泡を含ませるためのガス供給路(61)を備えている。
【選択図】
図2