(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明に係る非球面接合レンズの設計手法について説明する。光軸に平行な光束を一点に収束させる場合、出射面を非球面にした平凸レンズが知られている。この場合、理論的には光束は完全に一点に収束され、出射面は双曲面となり、離心率eがレンズの屈折率nと等しくなる。円錐係数kと離心率eとの間には、k=−e
2の関係があるので、k=−n
2の円錐曲線(ここでは円錐曲線の中心軸を中心として回転させた面のことを表す。放物面、双曲面、回転楕円面を含む。)であることがわかる。本発明者は、一般に次の関係があることを見出した。
図1を参照して、第1領域の屈折率をn1、第2領域の屈折率をn2、その間にある第1界面が曲率半径r1と円錐係数k1で表される円錐曲線と仮定したとき、第1領域を光軸に沿って平行に進む光束を、第1界面で屈折させ、第2領域における界面からの距離がLz1の点に収束させる場合、
r1=Lz1・(n2−n1)/n2
k1=−(n1/n2)
2
となる。第2領域が空気である場合、n2≒1であるから、k1≒−n1
2となり、上記の式が導かれる。逆に、点光源からの光束を光軸に平行にするには、L1を点光源から第1界面までの距離として、
r1=L1・(n2−n1)/n1
k1=−(n2/n1)
2
となる。
なお、Lz1やL1が負の場合も成り立ち、Lz1が負のときは虚像ができ、L1が負のときは第1界面を越えた点に収束する光束が第1界面に入射する。
【0014】
本発明の基本構成はこれらの関係を利用しており、界面が複数並んだときに、1つおきに領域中を進む光束を平行にすることにより、光束を一点に収束させることができる。
図2を参照して、領域が4つ、界面が3つの場合を考える。第1領域を進む光束が光軸に平行であるとすると、第3領域で進む光束が光軸に平行になるようにすれば、光束を一点に収束させることができる。第1領域と第4領域が空気の場合、レンズ自体は屈折率の異なる2種類のガラスで形成された接合レンズとなる。第1領域を光軸に平行に進む光束を、第1界面からの距離がLz1の点に収束するように第1界面で屈折させる条件は、上記のように、
r1=Lz1・(n2−n1)/n2
k1=−(n1/n2)
2
である。第1界面で屈折して第2領域に入った光束は、第1界面の像の位置に光源がある光束とみなすことができるので、第3領域を進む光束が光軸に平行になるように第2界面で屈折させる条件は、
r2=(L2−Lz1)・(n3−n2)/n2
k2=−(n3/n2)
2
である。第3領域で再び光軸に平行になった光束を第3界面からの距離がLz3の点に収束させる条件は、
r3=Lz3・(n4−n3)/n4
k3=−(n3/n4)
2
である。第1界面のr1の式と第2界面におけるr2の式におけるLz1を等しいとすると、r1とr2の関係が導かれる。
r1=L2・(n2−n1)/n2―r2・(n2−n1)/(n3−n2)
これが、第1界面に光軸に平行な光束が入射したときに、第2界面において再び光軸に平行になるように屈折させるための条件である。この関係と各界面における円錐係数kの条件を満たすことにより、第1界面に入射した光軸に平行な光束は、一点に収束され、球面収差は完全に補正される。
【0015】
一方、この3つの界面を有するレンズ構成は、通常の色消しレンズと同様であり、色収差を補正することができる。具体的には、第1界面からの距離Lz1の値を調節することにより、曲率半径r1とr2の値を同時に変えて、波長の異なる光束の集光位置(第3界面からの距離Lz3)が近似するようにする。このとき、設計波長では球面収差が完全に補正されているため、色収差のみを考慮すればよく、使用可能なガラスの種類を大幅に増やすことができ、また設計が容易になる。さらに、通常は困難とされる樹脂製の色消しレンズ(球面収差が補正されている)を実現することも可能である。本発明の基本構成に係る設計波長で一点に収束できるレンズを色消し収束円錐曲面レンズ(Achromatic Convergeable Conicoids Lens)(以下、ACCレンズ)と称する。
【0016】
このACCレンズは、設計波長では光軸に平行な光束を完全に一点に収束させることができ、他の波長でもその近傍に集光させることができるが、若干の収差を許容できる場合は様々な用途に使用することができる。そこで、ACCレンズの条件から外れた場合に収差を許容できる範囲について検討する。
【0017】
ACCレンズは、大まかには色消しレンズと出射面が非球面になった集光レンズを組み合わせたものと見ることができる。但し、単にこれらを組み合わせたものではなく、光軸に平行に入射面(第1界面)に入射した光束を接合面(第2界面)で再び光軸に平行になるように屈折させることにより、色消しのための界面(第1界面及び第2界面)と集光のための界面(第3界面)を分離し、幅広い材料の中から最適な材料を選択して色消しレンズを実現することが可能になるという、特徴を備えている。ここで、重要なことは、光路の途中で光束を光軸に平行にさせることではなく、色収差補正と集光を分離していることである。ACCレンズでは、3つの界面のうち最初の2つの界面で色収差補正を行い、出射面を双曲面にして、この面のみで光を一点に収束させている
【0018】
これをもとに、本発明の要件は、次の4つである。
(1)少なくとも3つの界面を有し、
(2)出射面側から3つの界面を順に第3界面、第2界面及び第1界面として、第1界面及び第2界面で色収差を補正し、
(3)第3界面が双曲面又は双曲面に近い面であり、
(4)第1界面に光が光軸に平行に入射したとき、第3界面からの光がほぼ一点に収束する。
なお、色収差を補正するため、第1界面及び第2界面は曲面でなければならない。
【0019】
次に、上記(3)の「双曲面に近い面」について検討する。周知のように、出射面から出射された光束のうち一部に一点に収束しない光があったとしても、コントラストは低下するけれども像は形成されうる。そこで、出射面(第3界面)の有効領域、すなわち光束が通過する領域のうちどの程度の範囲を通過した光が結像に寄与すればよいか、MTFを用いて、出射面の有効領域に対して結像に寄与する範囲の面積比率として求める。要求されるMTFは用途によって異なるが、一般的なカメラレンズの場合、10本/mmのMTF特性が80%以上あれば優秀なレンズ、60%以上あれば満足できる画質が得られるといわれている。(http://cweb.canon.jp/ef/knowledge/参照)。
【0020】
一方、MTFの理論値は、例えば
図3に示すように、特開2009−147925号公報に記載されている無収差レンズにおける波動光学的MTFを参照して、よく使われるF8以下で空間周波数10本/mmの場合、約95%以上となっている。理論値と満足できる値の差、すなわち95%−60%=35%程度は低下しても許容されるとすると、少なくとも有効領域のうち65%以上が良好な収束性を有し、結像に寄与することが必要である。
【0021】
次に、理想的な双曲面からのずれについて検討する。本発明に係る非球面接合レンズにおける第3界面(出射面)は基本的に双曲面であるため、その特徴を表す円錐係数k3の許容範囲を検討する。
図4は、市販されている可視光用色消しレンズのうちデータが公開されている約600種のデータをプロットしたものである。
図5に示すように、レンズの有効半径をh0、焦点距離をf、光軸に平行に有効半径の高さに入射したd線の焦点位置における収差をhaとして、横軸はh0/f、縦軸は|ha/h0|を表す。
図4中、右に行くほど屈折力の強い凸レンズ、左に行くほど屈折力の強い凹レンズとなる。これらのレンズの中には、有効半径の端ではなく、少し内側の方が収差が大きいレンズもあると思われるが、全体的に見れば、このプロットの上限当たりが、現在の使用状況に置ける許容範囲の限界と思われる。
【0022】
これを用いて、本発明に係る非球面接合レンズの第3界面に光軸に平行に光束が入射する場合に円錐係数k3の許容範囲を検討する。例えば、n3/n4=1.5の場合、光束が完全に一点に収束するには、k3=−2.25となるが、円錐係数k3が変化したときに収差がどの程度増えるかを調べてみた。
図6は、n3/n4=1.5の場合において、円錐係数k3の値を1.02倍、1.04倍及び1.08倍にして同様の計算を行った結果を、
図5のプロット図に重ねて表示している。この場合は、有効半径の端に入射した光線の収差が最も大きくなる。なお、h0は第3界面への入射高さとし、焦点距離は第3界面のみで決まるものとして計算している。
図6から、k3の値が1.04倍以下であれば、h0/fの全範囲で使用可能であることがわかる。この値はn3/n4の値によって変化するので、n3/n4の値を変えてh0/f=0.25のとき、|ha/h0|=0.01となるようなk3の値を調べた。
図7は、下記のAによる近似式による値も示している。
【0023】
円錐係数k3の値が大きい側に変化した場合と小さい側に変化した場合とで僅かに異なるが、大きい側の近似式で代用すると、k3は以下の範囲にあることが必要である。
k3の許容範囲=k3・(1±A)
A=0.325・(n4/n3−1)
2+0.0035
この範囲内の双曲線であれば使用できることがわかったが、完全な双曲線でなくても、それに近い曲線であれば同程度の範囲内で使用可能であると考えられる。従って、上記面積比率と合わせて、第3界面の有効領域の65%以上の面積が上記双曲線の限界範囲に含まれていなければならない。
【0024】
なお、用途によっては、他の収差を低減するなどの目的で、わざと光束を一点に収束させないようにする場合もあるし、第1界面及び第2界面を球面で代用した場合など第3領域を進む光束が光軸に完全に平行でない場合、円錐係数k3を補正することによって、かえって収束性がよくなることもある。従って、円錐係数k3は、ACCレンズの理論値である−(n3/n4)
2から外れる場合があるが、大きく外れると収束性が悪くなるので、その場合も補正した値を中心として上記許容範囲内で近似する。
【0025】
第1界面に光軸と平行な光束を入射して一点に集光させた場合に収差が許容できる程度は、上記カメラレンズのMTFを参考にして、使用波長範囲のMTFが、空間周波数10本/mmで60%以上あればよく、通常は色収差も補正されていることを意味する。
【0026】
また、ACCレンズは設計段階で光軸に平行な光束を入射した場合に光束が一点に収束されるようにしているが、実際の使用に際しては、入射光束は光軸に平行でなくてもよい。
【実施例1】
【0027】
図8(a)は、樹脂の光学材料として最も一般的なアクリル(PMMA)とポリカーボネイト(PC)を用いたACCレンズを示し、(b)及び(c)は、比較例としてエドモンドオプティクス社製のアクロマティックレンズ及び精密非球面アクロマティックレンズの構成を示す。また、表1〜表3は上記各レンズのスペックを示す。第1領域及び第4領域を空気(n1=n4=1)とし、焦点距離f=25mm、第1界面に入射する光束の径を22.5mmとしている。PMMA及びPCの屈折率はRefractiveIndex.INFO(http://refractiveindex.info)の計算式を使用した。表3におけるq4〜q14は高次の非球面係数である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0028】
実施例1のACCレンズでは、従来のアクロマティックレンズと比較して、凸レンズと凹レンズの配置が逆になっている。これは、屈折率の大きなPCレンズを前方に配置したためであり、屈折率の低いPMMAレンズを前方に配置すれば、従来のアクロマティックレンズと同じ配置になる。しかしながら、ACCレンズでは、光束を大きく屈折させるのは出射面(第3界面)であり、一般的に屈折率の低い材料の方が、波長分散が小さいため、屈折率の小さいPMMAレンズを後に配置する方が好ましい。また、第1界面における屈折は色収差補正に用いられ、第3界面による屈折で光束を収束させているため、第3界面の屈折力を大きくすることが必要である。各界面における屈折の程度は、その界面の屈折によってできる像の位置、すなわち上記Lz1とLz3の値を比較すればわかる。これらLz1及びLz3の絶対値が小さいほど屈折力が大きいことを示している。ACCレンズでは、通常|Lz1|>5・|Lz3|であるので、
|r1・n2/(n2−n1)|>5・|r3・n4/(n4−n3)|
となる。n1=n4=1で、n2及びn3が共に1.5程度のときは、|3・r1|>|10・r3|なので、|r1|は|r3|の約3倍以上となる。実施例1では、曲率半径の比は約9倍となり、全体として平凸レンズに近い形状になっている。通常のアクロマティックレンズでは、これとは逆に|r1|<|r3|である。
【0029】
上記各レンズの集光の様子を
図9に示す。これらはr線、C線、d線、F線、g線の合成である(以下同じ)。なお、スポットダイアクラムと像面強度曲線はスケールが異なる。
図9から、安価な樹脂を用いたACCレンズの方が、高価な精密非球面アクロマティックレンズよりも収束性が高いことがわかる。この実施例1のACCレンズのMTFは、空間周波数10本/mmで約91%である。
【実施例2】
【0030】
非球面レンズは、入射光束が光軸から傾くとコマ収差が現れることが知られている。本発明のACCレンズにおいてもコマ収差が現れるが、収束性が高く、且つ、高次の非球面係数を用いた非球面レンズと異なり、非球面の形状が単純であることから、きれいな(理論に近い)コマ収差になる。コマ収差があると、大きく尾を引くことから一般的には欠点のように思われるが、次のように用いると利点となる。
【0031】
実施例2は、同一構成の2つのACCレンズを使用し、2つのACCレンズの間で光束が光軸と平行になるように対称に配置し、リレーレンズを構成したものである。
図10において、(a)は2つのACCレンズを対称に配置したリレーレンズの構成を示し、(b)は市販のアクロマティックリレーレンズ(エドモンドオプティクス社製#46−000)の構成を示す。
【0032】
同一構成のレンズを対称に配置するとコマ収差などいくつかの収差が補正されることが知られているが、本発明のACCレンズは収束性が高く、コマ収差が単純であるため、収差補正が容易である。また、同一構成の2つのACCレンズを対称に配置すると、入射面及び出射面が何れも双曲面になるので、像面湾曲を補正する効果も有している。主に光束が入射面及び出射面で屈折するレンズで、その入射面及び出射面が球面である場合、光軸から傾くほど像面が内側(レンズに近づく方向)に湾曲する。ところが、実施例2の配置では、入射面及び出射面が何れも双曲面になるので、入射光束が傾くと曲率半径の大きな部分を通る光束の割合が増える。そのため、入射光束が傾いたときに像ができる距離が長くなり、像を外側(レンズから離れる方向)に湾曲させる。これらの特性を互いに打ち消し合うように設計すれば、傾いて入射する光束に対しても像面湾曲を小さくして収束性を高くすることができる。また、一般的に、PCは紫外線による劣化が比較的大きいが、実施例2の配置では、PCレンズが内側、PMMAレンズが外側に配置されているので、外側のPMMAレンズによって紫外線が吸収されるため、全体として耐光性が向上する。
【0033】
表4及び表5は、上記各レンズのスペックを示す。物体からレンズまでの距離及びレンズの有効径(9.5mm)を揃えた。また、
図11において、(a)は2つのACCレンズを対称に配置したリレーレンズのMTFの角度依存性を示し、(b)は市販のアクロマティックリレーレンズのMTFの角度依存性を示す。
図11(a)及び(b)において、上から順に空間周波数が10本/mm、30本/mm及び50本/mmのMTFを表し、実線はサジタル方向、破線はメリジオナル方向を表す。(以下も同様である。)
【表4】
【表5】
【0034】
図11から明らかなように、2つのACCレンズを対称に配置したリレーレンズは、入射面及び出射面などに非球面を採用しているため、球面しか採用していない市販のアクロマティックリレーレンズに比べて、入射角0度付近で収束性が高いのは当然であるが、入射光束に角度を付けてもMTFの低下が少ないことがわかる。このことは、ACCレンズを対称に配置することの利点を示している。
【実施例3】
【0035】
実施例3は、リレーレンズの別の構成例を示す。上記実施例2では、2つのACCレンズの全ての界面が非球面の場合を示したが、実施例3では、
図12に示すように2つのACCレンズの最外面(リレーレンズとしての入射面と出射面)以外の界面(
図8(a)における第1界面及び第2界面)を球面としたものである。この場合、出射面に入る光束が光軸に対して完全な平行ではなくなるため、入射面と出射面の円錐係数k3を補正している。光束を完全に一点に収束させる必要がない場合は、リレーレンズを構成する2つのACCレンズの入射面及び出射面以外の界面を球面にしても、入射面又は出射面の円錐係数を補正することにより、入射面と出射面以外も全て非球面であるACCレンズと同様の特性を得ることができる。表6は、
図12に示すリレーレンズのスペックを示す。また、
図13は、
図12に示すリレーレンズのMTFの角度依存性を示す。
【表6】
【実施例4】
【0036】
実施例4は、リレーレンズのさらに別の構成例を示す。実施例4では、
図14に示すように2つのACCレンズの間の領域をBK7とした(あるいはBK7の両凸レンズを接合した)ものである。
図14の構成では、色収差補正のための界面の符号が替わり、PMMAレンズの形状がメニスカスレンズとなっている。表7は、
図14のリレーレンズのスペックを示す。また、
図15は、
図14に示すリレーレンズのMTFの角度依存性を示す。
【表7】
【0037】
図11(a)と
図15を比較して、実施例4のように2つのACCレンズの間にBK7の両凸レンズを接合することにより、2つのACCレンズの間が空気の場合と比較して、光軸上では収束性が低いが、入射光束に角度がついた場合のメリジオナル方向の収束性が改善されていることがわかる。
【実施例5】
【0038】
上記のような2つのACCレンズを対称に配置した構成は、設計波長では、理論的に光束を一点に収束させることができるが、実際にはそこまでの収束性を必要としないことも多い。例えば、像面が湾曲しており、光軸付近の収束性を許容できる範囲内で低下させながら、湾曲している方向にデフォーカスさせると、使用できる角度範囲が広くなる。また、2つのACCレンズの配置の対称性を多少崩したとしても、良好な結果が得られる場合もある。実施例5は、
図16に示すように、−3倍の対物レンズと10倍(虚像)の接眼レンズを組み合わせた30倍の顕微鏡であって、対物レンズ及び接眼レンズを、それぞれ2つのACCレンズを対称に配置した構成としたものである。この接眼レンズは、構造が単純な割に比較的特性が良いとされるプレスル式接眼レンズと似た構成であるが、凸レンズと凹レンズの配置が逆になっている。表8は、この実施例5の顕微鏡を構成する各レンズのスペックを示す。
【表8】
【0039】
表8に示すように、実施例5では、全ての界面が非球面である。
図17は、この実施例5の顕微鏡のMTFの角度依存性を示す。このように、実施例5の顕微鏡は、2種類の樹脂製の接合レンズを組み合わせただけで構成されているが、MTFの角度依存性は非常に良好である。本発明のACCレンズは、入射面に対して光軸に平行に光を入射させたときに球面収差をなくすように設計されているが、このように、入射面に対して光軸に平行に光を入射させない場合であっても、十分な光学特性を持たせることができる。
【実施例6】
【0040】
実施例6は、上記実施例5と同様に、対物レンズ及び接眼レンズを、それぞれ2つの本発明に係る非球面接合レンズを対称に配置した構成とした顕微鏡であるが、対物レンズ及び接眼レンズをそれぞれ構成する2組のレンズにおいて、入射面及び出射面(最外面)以外の界面を球面としたものである。表9は、この実施例6の顕微鏡を構成する各レンズのスペックを示し、
図18は、この実施例6の顕微鏡のMTFの角度依存性を示す。
図18から、入射面及び出射面以外の界面を球面としても、実施例5と同様の結果が得られることがわかる。
【表9】
【0041】
参考例として、
図19に、特開2013−92658号公報に記載された顕微鏡の構成を示し、
図20に倍率を30倍に設定した場合のMTFの角度依存性を示す。なお、レンズ間隔データがないため、推定値に基づいている。この参考例と比較して、実施例5及び実施例6の顕微鏡は、構成が簡単であるにもかかわらず、MTFが大幅に改善されていることがわかる。
【0042】
なお、上記実施例5及び実施例6は顕微鏡の場合を示したが、対物レンズ及び接眼レンズによる構成は望遠レンズでも同じであり、物体と対物レンズの距離が異なるだけで同様に設計することができる。特に図示及びレンズスペックは記載していないが、望遠鏡においても、対称に配置された本発明のACCレンズを用いることにより、良好な特性が得られる。
【解決手段】少なくとも3つの界面を有し、出射面側から3つの界面を順に第3界面、第2界面及び第1界面として、第1界面及び第2界面で色収差を補正し、第3界面が双曲面又は双曲面に近い面であり、第1界面に光が光軸に平行に入射したとき、第3界面からの出射光をほぼ一点に収束させる。色収差を補正するため、第1界面及び第2界面は曲面である。