【文献】
【CEDEC2016】バンダイナムコが挑戦する、子供でも楽しめるVR遊具は「飽きてもOK」,GameBusiness.jp,2016年 8月26日,[2017年 5月19日検索],URL,https://www.gamebusiness.jp/article/2016/08/26/12539.html
【文献】
砂や粉体を流動化させた、乾式の比重分離技術,nikkei BPnet,2007年 1月25日,[2017年 5月19日検索],URL,http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco07q1/523670/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体粒子、前記固体粒子が充填されて固体粒子層を形成する上面開放の容器、及び前記容器内の底部に設けられ前記固体粒子層に流体を噴出することにより前記固体粒子層を流動化させる流体噴出手段を少なくとも有する仮想現実生成装置と、
生成する仮想現実に応じて前記流体噴出手段から噴出する流体噴出量を制御する噴出量制御手段と、
前記生成する仮想現実に応じて視覚的、聴覚的、嗅覚的、触覚的、力覚的の少なくとも1つの感覚を付与する感覚付与手段と、を備え、
前記生成する仮想現実は海、湖、川等の水域における操船シミュレーションであって、
前記容器に充填された固体粒子層の上に載置され、人が乗れる大きさのボートと、
前記感覚付与手段として、前記水域の映像を表示する視覚的感覚付与手段、前記水域の音を発生させる聴覚的感覚付与手段、前記水域の匂いを発生させる嗅覚的感覚付与手段、前記水域の風を発生させる触覚的感覚付与手段、及び前記ボートに非連結で外力を付与する力覚的感覚付与手段の少なくとも1つと、を備えたことを特徴とする仮想現実体験システム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面にしたがって本発明の仮想現実体験システムの好ましい実施の形態について説明する。
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0030】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を" 〜 "を用いて表す場合は、" 〜 "で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
[仮想現実体験システム]
【0031】
図1は、本発明の実施の形態の仮想現実体験システムにおける仮想現実生成装置の斜視図、
図2は仮想現実生成装置の流体噴出手段を構成する噴出管を木枠に固定した斜視図である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施の形態の仮想現実体験システム10は、主として、仮想現実生成装置12と、噴出量制御手段14と、感覚付与手段(
図7、
図8参照)とで構成される。感覚付与手段とは、生成する仮想現実に応じて視覚的感覚付与手段、聴覚的感覚付与手段、嗅覚的感覚付与手段、触覚的感覚付与手段、及び力覚的感覚付与手段の少なくとも1つのことを意味する。
図1では、噴出量制御手段14は、仮想現実体験システム10の全体を制御するコントローラ15に搭載されている場合で図示しているが、噴出量制御手段14とコントローラ15とは別設してもよい。
【0033】
仮想現実生成装置12は、主として、固体粒子18と、固体粒子18が充填されて固体粒子層20を形成する上面開放の容器22と、容器22内の底部に設けられ固体粒子層20に流体を噴出することにより固体粒子層20を浮遊懸濁して流動化させる流体噴出手段24とで構成される。
【0034】
容器22の大きさは、生成する仮想現実によって変わるが、例えば、生成する仮想現実が海、湖、川等の水域における操船シミュレーションの場合には、容器22内に形成される固体粒子層20の上に人が乗れる大きさのボート52(
図6参照)を載置することができる大型の容器22であることが好ましい。具体例として、容器22は、縦が1500〜2000mm、横1000〜1500mm、高さ(深さ)が500〜700mmのサイズ以上の大型のものが好ましい。
【0035】
容器22に充填される固体粒子18は、砂18A、プラスチック粒子、セラミックス粒子、金属粒子等を使用することができる。固体粒子18の平均粒径は0.10〜0.15mm、カサ比重1.1〜1.3のものを使用することが好ましく、砂の場合には珪砂7号を好適に使用することができる。固体粒子18は容器22の高さの7〜8割の位置まで充填される。
本実施の形態では、固体粒子18として砂18Aを使用し、流体としてエア(空気)を使用した例で以下に説明するが、固体粒子層20の用語はそのまま使用する。
【0036】
図1及び
図2に示すように、流体噴出手段24は、主として、噴出管34と、エアコンプレッサ42と、噴出管34とエアコンプレッサ42とを繋ぐエアホース44と、エアホース44に設けられた噴出量調整バルブ48及び開閉バルブ50と、で構成される。エアコンプレッサ42、噴出量調整バルブ48、及び開閉バルブ50は信号ケーブル(又は無線)によってコントローラ15に接続される。
【0037】
図2に示すように、噴出管34は木枠26に設置される。木枠26は、容器22の底面サイズと同等に形成された平板28の上に複数本のT字状をした仕切板30が間隔を置いて平行に固着される。そして、仕切板30と仕切板30との間に長溝32が形成され、この複数の長溝32にそれぞれ噴出管34が載置される。
【0038】
これにより複数本の噴出管34が容器22内の底部に平行に配置される。ここで、木枠26は、噴出管34を固定できるものならば木枠に限らず何でも使用することができ、木製でなく、金属製であっても、プラスチック製であっても何でも良い。
【0039】
図2では、7本の噴出管34の例で説明したが、この本数に限定するものではない。噴出管34の材質としては、例えば加工のし易い塩化ビニルを好適に使用することができる。噴出管34は、一端が閉塞されるとともに他端が容器22外部のエアホース44(
図1参照)に連結部材35(
図1参照)を介して連結される。
【0040】
図3の(A)に示すように、噴出管34は長手方向の上面に一定の間隔を置いて噴出口36が開口される。
図3の(A)では、噴出口36の形状として噴出管34の周方向に穿設されたスリット形状としたが丸穴形状でもよい。
【0041】
また、
図3の(B)に示すように、噴出管34には噴出口36が被覆されるようにフィルタ38が巻回される。なお、
図3の(B)では1つの噴出口36のみにフィルタ38を被覆しているが、
図2のように全ての噴出口36にフィルタを被覆する。フィルタ38のメッシュは、噴出口36からエアを噴出できる一方、噴出口36から噴出管34の内部に砂が入り込まない大きさである。なお、フィルタ38を噴出管34に固定する方法としては、接着剤等で固着してもよいが、
図3の(B)のように結束バンド40で固定することが好ましい。これにより、フィルタ38の交換を容易に行えるとともに噴出管34の掃除も容易に行える。
【0042】
図4は、木枠26に固定した複数の噴出管34を容器22の底部に敷設した斜視図であり、
図5は仮想現実生成装置12の組立て分解図である。
図4及び
図5に示すように、複数本の噴出管34が載置された木枠26が容器22内の底部に置かれ、各噴出管34が連結部材35及びエアホース44を介して容器22外のエアコンプレッサ42に連結される。
図5の符号37は連結部材35を容器22に固定する連結孔であり、連結孔37と連結部材35との隙間は図示しないシール剤により密封されている。
【0043】
なお、
図5に示すように、噴出管34が載置された木枠26の上面に碁盤目状の金網46を敷設することが好ましい。これにより、砂18Aを流動化状態にしたときに人が乗っても、人の体重は木枠26と金網46とが支えるので、乗った人間が噴出管34を踏むことによる噴出管34の破損を防止することができる。ここで、人の体重が噴出管34にかからないようにして噴出管34の破損を防止する手段としては、上記手段に限らず人の体重が噴出管34にかからないように支える部材を配置すれば良い。
【0044】
エアコンプレッサ42の必要圧力としては、固体粒子層20を液状に流動化できることが必要である。例えば、縦1745mm、横1100mm、高さ600mmの容器に、平均粒径0.13mm、カサ比重1.2の砂を約1000Kg充填した場合、エアコンプレッサ42から最大圧力0.7MPsのエアを固体粒子層20に供給することで固体粒子層20は液状に流動化することができる。
【0045】
また、固体粒子層20の流動化において、複数本の噴出管34を容器22内の底部に平行に配置したときに、噴出口36の配置(
図4及び
図5のフィルタ38の配置と同じ)が千鳥状に配置されることが好ましい。これにより、容器22内の固体粒子層20の底面に対して噴出管34の噴出口36を均等に配置することができる。
【0046】
噴出量制御手段14は生成する仮想現実に応じて、流体噴出手段24から噴出する流体噴出量を制御するものであり、エアホース44に設けられた噴出量調整バルブ48及びエアコンプレッサ42からのエアの供給をON−OFFする開閉バルブ50を制御する。
【0047】
また、感覚付与手段は生成する仮想現実に応じて、視覚的、聴覚的、嗅覚的、触覚的、力覚的の感覚を付与するもので、視覚的感覚付与手段、聴覚的感覚付与手段、嗅覚的感覚付与手段、触覚的感覚付与手段、力覚的感覚付与手段の少なくとも1つで構成される。これらの視覚的感覚付与手段、聴覚的感覚付与手段、嗅覚的感覚付与手段、触覚的感覚付与手段、力覚的感覚付与手段は、すべてコンピュータで制御することができ、制御するためのコンピュータは、コントローラ15を構成するコンピュータを用いても良いし、専用のコンピュータを準備することもできる。
【0048】
視覚的感覚付与手段としては、例えば映像表示用ヘッドマウントディスプレイ、HMD(例えば、Oculus社製Oculus RiftやHTC社製HTC Vive)を好適に使用することができる。
聴覚的感覚付与手段としては、生成する仮想現実に関係する音等を立体的に発生する音響装置を好適に使用することができる。
【0049】
嗅覚的感覚付与手段としては、生成する仮想現実に関係する匂いを発生する匂い発生装置を好適に使用することができる。
触覚的感覚付与手段としては、生成する仮想現実に関係して皮膚に感じる感覚を発生させるもので、例えば風等を発生させる送風機や扇風機等を好適に使用することができる。
【0050】
また、力覚的感覚付与手段は、外力が加わる対象物に対して連結していない状態で外力を付与できるシリンダ装置を好適に使用できる。これにより、シリンダ装置のピストンロッドを伸長して対象物を押して揺らしたら、直ぐにピストンロッドを縮め、後は対象物自体の自然な揺れに任せることができる。
【0051】
次に、上記構成の仮想現実体験システム10を用いて、操船シミュレーション、湿地歩行シミュレーション、浮沈アトラクションを行う場合について説明する。
なお、本発明における仮想現実体験システム10では、上述した操船シミュレーションや湿地歩行シミュレーションのように、体験者Pが仮想現実体験システム10に搭乗して体験する場合以外に、浮沈アトラクションのように仮想現実体験システム10で実施される内容を見ることで体験する場合も含む。
【0052】
(操船シミュレーション)
図7は、海での操船シミュレーションを行う仮想現実体験システム10を用いて、ボート52に体験者Pが乗って海での操船シミュレーションを体験している模式図である。
【0053】
操船シミュレーションを行う仮想現実体験システム10は、主として、上記した仮想現実生成装置12と、噴出量制御手段14と、感覚付与手段との他に、容器22に充填された固体粒子層20の上に人が乗れる大きさのボート52を載置した構成とする。
感覚付与手段としては次のように構成した。
視覚的感覚付与手段としてHMD56(映像表示用のヘッドマウントディスプレイ)を使用し、体験者Pの頭に装着した。そして、HMD56に大海原の動画を映し出すようにした。
【0054】
また、聴覚的感覚付与手段としては、体験者Pの側方両側に一対の音響装置58を設け、海の波の音を発生させるようにした。
また、嗅覚的感覚付与手段及び触覚的感覚付与手段としては、体験者Pの上方に潮の香りのついたミストを発生させるミスト発生装置60を設け、海の潮の香や海のしぶきが体験者Pにかかるようにした。更に、触覚的感覚付与手段として、体験者Pの側方両側に一対の送風機62を設け、風を発生させるようにした。
【0055】
また、力覚的感覚付与手段としては、
図6に示すようにシリンダ装置54を使用した。即ち、固体粒子層20の上に載置されたボート52の両横腹の側方にそれぞれシリンダ装置54を一対配置し、シリンダ装置54のピストンロッド54Aの先端部はボート52に連結しない。そして、ボート52を揺らすときには、一方のシリンダ装置54のピストンロッド54Aを伸長させてボート52の横腹を押したら、直ぐにピストンロッド54Aを縮める。他方のシリンダ装置54でボート52の横腹を押す場合も同様である。これにより、ボート52は、波間で揺れる自然な揺れを発生する。
【0056】
HMD56は無線によってコントローラ15に接続され、音響装置58、ミスト発生装置60、送風機62、及びシリンダ装置54は、信号ケーブルを介してコントローラ15に接続される。
【0057】
なお、
図7では、視覚的感覚付与手段のHMD56、聴覚的感覚付与手段の音響装置58、嗅覚的感覚付与手段及び触覚的感覚付与手段のミスト発生装置60及び送風機62、力覚的感覚付与手段のシリンダ装置54の全て備えることで示したが、これに限定されず、少なくとも1つを備えることが好ましい。
【0058】
上記の操船シミュレーションを行う仮想現実体験システム10を用いて、体験者Pが操船シミュレーションを体験するには、
図7に示すように、容器22に充填された砂18Aで形成された固体粒子層20の上にボート52を置き、体験者Pはこの中に座る。
【0059】
そして、容器22の底部に設けられた流体噴出手段24からエアを固体粒子層20に噴出して、砂18Aに流動性を与えることによって、ボート52は砂の上に浮かび、水面上のボートに乗って浮かんでいる時と同じ乗り心地を疑似的に体験することができる。
【0060】
更には、体験者Pの頭にはHMD56が装着され、海の景色が映像として映し出され、音響装置58、ミスト発生装置60、送風機62からは波の音、潮の匂い、海のしぶき、風の感触が付与される。
【0061】
また、ボート52にはシリンダ装置54から非連結な外力が付与されてボート52が波間で自然に揺れる状況が形成される。この場合、コントローラ15は、体験者Pの頭に装着するHMD56の映像にリンクさせて一対のシリンダ装置54のピストンロッド54Aの伸縮動作を制御することが好ましい。これにより、ボート52が波間で自然に揺れる状況が一層リアルに形成される。
【0062】
なお、コントローラ15とHMD56の映像とをリンクして制御しない場合には、HMD56と同じ映像が映し出される大型(例えば24インチ)の液晶モニター(図示せず)を設け、仮想現実体験システム10の操作者が液晶モニターを見ることでシリンダ装置54を動作させてもよい。
【0063】
即ち、HMD56に荒海に浮かぶボート52からの視界の360度動画を表示する。この体験者Pが見ている映像をボート52の前に設定した液晶モニターにも表示する。そして、シミュレーションの操作者が液晶モニターに映る動画を見ながら、海の波によってボート52が揺れる瞬間に一方のシリンダ装置54をONにしてピストンロッド54Aを伸長しボート52の一方横腹を押し、直ぐにシリンダ装置54をOFFにしてピストンロッド54Aを縮める。
【0064】
この結果、ボート52の連続的な揺れ動作がシリンダ装置54によって抑制されないので、体験者Pは荒波でボート52が揺れる体験を現実に近いかたちで体験することができる。
【0065】
ちなみに、ボート52とシリンダ装置54とを連結してボート52をピストンロッド54Aの伸縮動作で動かす場合には、ボート52はピストンロッド54Aの伸縮動作に追随した機械的な揺れ動作を行う。この結果、体験者Pは、操船シミュレーション現実に近い自然なかたちで体験することができない。
【0066】
また、本実施の形態の仮想現実体験システム10は、流体噴出手段24からのエアの供給を止め、砂18Aの流動性を無くすと、ボート52が陸上の砂場に置かれた状態になり海で座礁した感覚を味わうことができる。このときに、体験者PにHMD56を装着させて水面に浮かぶボート52からの視点の360度の映像を表示することで、顔の位置や向きに応じて適切に変化する視界、例えば座礁した岩場等が見えると一層リアルな感覚を感じることができる。
【0067】
このように、操船シミュレーションにおいては、流動化した固体粒子層20の上に置かれたボート52は実際に水の上に浮かんでいるのと同じように、体験者Pの動きやボート52を押す外力に合わせて揺れる挙動が起こる。
【0068】
また、体験者Pがボート52に乗りこむ際にも、水の上と同じようにボート52は固体粒子層20の中に少し沈んで浮かび、ゆらゆらと揺れる。また、体験者Pが体重を右にかけるとボート52は右に傾き、身体を上下に跳ねるように動かすと、ボート52も上下に揺れる。これらの動きには水の上で行う時と同じように、わずかなタイムラグが発生しており、流体の慣性と粘性をリアルに感じるための一要素となっている。さらに、HMD56の映像の効果が加わることで、体験者Pは、あたかも水の上で船に乗っているかのように感じることができる。
【0069】
また、海のシミュレーションとは別にHMD56に渓流の景色を映し出し、川の流れによってボート52の進路が変わったり、あるいはボート52が岩にぶつかったりする映像に合わせてボート52を上記の如く揺らすことによって、ボート52が渓流の中で動かされている感覚を体験者Pに与えることができる。
【0070】
また、ボート52の代わりにサーフィンのボード(図示せず)を固体粒子層20の上に置き、その上に体験者Pが乗れば、サーフィンの仮想現実を体験することもできる。
【0071】
本実施の形態では、体験者Pが見るボート52からの視界は、遠い景色に関してはHMD56によって適切な映像となっているが、体験者Pが下を向いた際に見えるはずのボート52自体の揺れる姿や、ボート52が水面に作り出す波紋等は映像に含まれていない。これらについては、ボート52に加速度センサを付加する等の方法で、ボート52の揺れに同期する映像を実現させることが可能である。
更に説明すると、HMD56に搭載された加速度センサの情報を用いることにより、体験者Pがどちらの方向を向いたか判別して、そちらの方向の画像をHMD56に映し出すことができる。しかしながら、下を向いたとき、ボート52の姿はHMD56に映し出されるが、ボート52がどのように揺れているかは、揺れの情報が無ければHMD56に映し出すことができない。
そこで、ボート52にも加速度センサを搭載することにより、ボート52の揺れをHMD56に映し出すことができる。これは、ボート52に搭載された加速度センサの情報を、HMD56を制御するためのコンピュータに有線または無線で送信することにより、コンピュータが揺れの情報に基づいてボート52が揺れる画像を生成しHMD56に表示させることによって成し遂げることができる。
【0072】
また、操船シミュレーションが川の場合に、川の渓流の流れの中で映像に同期する形で自動的にボート52に動きを与える方法としては、各噴出管34につながるエアホース44に設けた噴出量調整バルブ48を制御して容器22の底部からのエア噴出量を局所的に変えたり、容器22を傾けることにより、容器22の中に固体粒子層20の流れや波を作り出したりする等の方法で、ボート52の位置や向き、及び動きを制御すれば、一層現実に近い仮想現実を体験することができる。
【0073】
図8は、容器22を容器前後方向と容器左右方向とに傾ける容器傾動手段64の一例を示す斜視図である。
図8に示すように、容器傾動手段64は、容器22を載置する載置台23と、容器22を容器22の長手方向である容器前後方向に傾動させる前後傾動部65と、容器22の幅方向である容器左右方向に傾動させる左右傾動部67とで構成される。また、前後傾動部65は載置台23の上に設置され、左右傾動部67は床面等に設置される。
前後傾動部65は、主として、容器22の長手方向の一方端の上端中央から延設された第1の傾動アーム66と、第1の傾動アーム66の先端部を上下動させる第1の傾動用シリンダ装置68とで構成される。第1の傾動用シリンダ装置68のピストンロッド70の先端には中央に貫通孔を有する第1のリング状部材72が形成される。一方、第1の傾動アーム66の先端部にはコ字形状の第1の窪み74が形成され、この第1の窪み74に第1のピン76が支持される。そして、リング状部材72の貫通孔に第1のピン76が貫通される。
また、第1の傾動用シリンダ装置68の基台68Aには、一対の第1の回動軸69が設けられ、一対の第1の回動軸69がそれぞれ第1の軸受71に支持される。なお、
図8では、一対の第1の回動軸69及び一対の第1の軸受71のうち一方側の第1の回動軸69及び第1の軸受71は容器22に隠れて図示されていない。
また、容器22の長手方向の他方端の下端両側には、一対の容器用回動軸78が設けられ、一対の容器用回動軸78がそれぞれ容器用軸受80に支持される。これにより、前後傾動部65の傾動用シリンダ装置68のピストンロッド70が伸動作すると、容器22は容器前後方向に傾斜する。
【0074】
一方、左右傾動部67は、主として、載置台23の幅方向(容器22の長手方向と直交する方向)の一方端の上端中央から延設された第2の傾動アーム73と、第2の傾動アーム73の先端部を上下動させる第2の傾動用シリンダ装置75とで構成される。第2の傾動用シリンダ装置75のピストンロッド77の先端には中央に貫通孔を有する第2のリング状部材79が形成される。一方、第2の傾動アーム73の先端部にはコ字形状の第2の窪み81が形成され、この第2の窪み81に第2のピン83が支持される。そして、第2のリング状部材79の貫通孔に第2のピン83が貫通される。また、第2の傾動用シリンダ装置75の基台75Aには、一対の第2の回動軸85が設けられ、一対の第2の回動軸85がそれぞれ第2の軸受87に支持される。
また、載置台23の長手方向(容器22の長手方向と同義)の両端であって幅方向中央位置には、一対の載置台用回動軸89が設けられ、一対の載置台用回動軸89がそれぞれ載置台用軸受91に支持される。これにより、左右傾動部67の第2の傾動用シリンダ装置75のピストンロッド77が伸動作すると、容器22はX方向に回動して容器22は左側に傾斜し、ピストンロッド77が縮動作すると、容器22はY方向に回動して容器22は右側に傾斜する。
このように、容器傾動手段64を設けることにより、容器22内の固体粒子層20に容器前後方向の流れと容器左右方向の流れを作り出すことができる。また、前後傾動部65の第1の傾動用シリンダ装置68のピストンロッド70が伸縮すると、容器22は容器前後方向に揺れるので、容器22内の固体粒子層20に容器前後方向の波を作り出すことができる。更には、左右傾動部67の第2の傾動用シリンダ装置75のピストンロッド77が伸縮すると、容器22は容器左右方向に揺れるので、容器22内の固体粒子層20に容器左右方向の波を作り出すことができる。
なお、容器22を容器前後方向と容器左右方向に傾動させる容器傾動手段64は、上記構成の前後傾動部65と左右傾動部67との機構に限定するものではない。図示しないが例えば、6本の電動シリンダを組み合わせた6軸モーションベースに容器22を支持させることができる。6軸モーションベースを使用すれば、容器22を、前後方向や左右方向に傾けることができるだけでなく、容器22を平行移動することもできる。
【0075】
(湿地歩行シミュレーション)
図9は、湿地歩行シミュレーションを行う仮想現実体験システム10を用いて、体験者Pが湿地歩行シミュレーションを体験している模式図である。
【0076】
湿地歩行シミュレーションを行う仮想現実体験システム10は、主として、上記した仮想現実生成装置12と、噴出量制御手段14と、感覚付与手段とで構成される。
【0077】
感覚付与手段は、視覚的感覚付与手段としてHMD56(映像表示用のヘッドマウントディスプレイ)、聴覚的感覚付与手段として一対の音響装置58、嗅覚的感覚付与手段及び触覚的感覚付与手段としてミスト発生装置60、触覚的感覚付与手段として一対の送風機62を設けた。なお、力覚的感覚付与手段は設けていない。
【0078】
そして、噴出量制御手段14は湿地の種類に応じて、仮想現実生成装置12の流体噴出手段24から噴出するエアの噴出量を制御する。この場合、予め予備試験等により、湿地の種類に応じて流動化状態になった固体粒子層20の硬さと流体噴出手段24からのエア噴出量との関係を調べておき、湿地の種類とエア噴出量との関係を粒子層硬さ設定手段(図示せず)に入力しておくとよい。粒子層硬さ設定手段はコントローラ15に搭載することができる。
そして、噴出量制御手段14は体験する湿地の種類に応じて粒子層硬さ設定手段で設定した流体噴出量になるように流体噴出手段を制御する。
【0079】
流動化していない状態の固体粒子層20の表面は、その上を歩くことが可能であり、その際に体験者Pの足が砂18Aの中にめり込むことはない。これは公園の砂場を歩く時と同じであるが、一般の砂場と比べて粒度の小さい砂を使っているために、地面を踏んだ感覚は若干柔らかい印象を受ける。
【0080】
一方、流動化した状態の固体粒子層20の表面は液体状となるため、
図9に示すように、その上に立つと足が砂の中に沈む(例えば約40cm)が、そのまま歩くことが可能である。
【0081】
このように、噴出量制御手段14を制御して流体噴出手段24から噴出するエアの噴出量を調整することによって、固体粒子層20の表面状態を通常の砂の路面から、沼や池のような湿地状態まで湿地の種類を変えることができ、さらには水面のような状態まで変えることができる。
【0082】
また、HMD56に湿地帯の映像を流し、音響装置58から木々がそよぐ音を発生させ、ミスト発生装置60から湿地帯の匂いつけたミストを発生させ、送風機62から風を発生させることによって、一層現実に近い湿地歩行の仮想現実を体験することができる。
このように、湿地歩行シミュレーションでは、流動化した固体粒子層20の中を歩くことで、まるで湿地帯を歩いているような感覚を味わうことができる。
【0083】
また、固体粒子層20を流動化させて体験者Pの足が沈み込んだ状態にした後で、噴出量制御手段14が開閉バルブ50を閉じて、エアの供給を止めて流動化を止める。これにより、体験者Pの足が固体粒子層20の中に固定されたまま抜けなくなる感覚を体験することができる。この感覚は例えばエンターテインメント分野においては危険な蟻地獄のような沼から這い出せない状況等に活用できる。
【0084】
また、視覚的感覚付与手段、聴覚的感覚付与手段、嗅覚的感覚付与手段、触覚的感覚付与手段等の感覚付与手段が生成する仮想現実の環境を伴わない状態で固体粒子層20を流動化した場合、固体粒子層20の中に体験者Pが手を入れた感触は、厳密には水の中に手を入れた場合とは異なる。しかしながら、実際に水に手を入れた感覚に近いものである。
【0085】
感覚付与手段が生成する仮想現実の環境を伴った状態で固体粒子層20の中で手を動かした場合には、体験者Pの頭の中は湿地にいる感覚になっており、しかも砂18Aのカサ比重が1.1〜1.3で水に近いため、手に感じる抵抗感は極めて水に近い感触になる。この場合、使用する砂18Aのカサ比重を小さくして、できるだけ水のカサ比重に近づけることが好ましい。
【0086】
(浮沈アトラクション)
図10は、浮沈アトラクションを行う仮想現実体験システムを用いて、体験者Pが浮沈アトラクションを体験している模式図である。浮沈アトラクションを行う仮想現実体験システム10は、主として、上記した仮想現実生成装置12、噴出量制御手段14、感覚付与手段の他に、流動化した砂18Aよりも比重が軽い物体Aを準備する。
【0087】
図10では、生成する仮想現実は物体が水面上に浮上又は水面下に沈降する浮沈アトラクションの例で説明する。流動化した砂18Aよりも比重が軽い物体として発泡スチロール製の人形82を用いた。そして、人形82を固体粒子層20の砂18Aの中に予め沈めた状態にしておく。
【0088】
図10の(A)に示すように、固体粒子層20の流動化を止めた状態では、人形82は砂18Aの中で固定され、浮かぶことはない。この状態でアトラクション時に噴出量制御手段14が流体噴出手段24を制御して固体粒子層20を流動化させることで、
図10の(B)に示すように、人形82は浮力によって固体粒子層20の表面上に自動的に浮かび上がる。
【0089】
これとは逆に、砂18Aよりも比重の重い物体Bとして、内部に錘を仕込んだ人形86を
図10の(B)のように固体粒子層20の上に置いておく。そして、アトラクション時に噴出量制御手段14が流体噴出手段24を制御して固体粒子層20を流動化させることで、
図10の(A)に示すように、人形86はその比重のため固体粒子層20の中に沈んでいく。
【0090】
このように、物体A,Bの浮上と沈降を行う浮沈アトラクションでは、固定的な比重の物体のみを扱ったが、魚の浮袋のような構造の袋(図示せず)を人形の内部に持たせ、袋の内部のエア量を調節可能な機構を形成すれば、流動化した状態の固体粒子層20の中を浮かび上がって表面に現れたり、沈んで内部に消えたりするオブジェクトを製作することができる。
なお、人形82(86)を固体粒子層20の表面上に浮上させたり表面から沈降させたりする方法として浮力を利用するようにしたが、モータやシリンダ装置を利用して人形82(86)を浮沈させるようにすることもできる。
【0091】
なお、
図10には、感覚付与手段を図示しなかったが、生成する仮想現実に応じて視覚的感覚付与手段、聴覚的感覚付与手段、嗅覚的感覚付与手段、触覚的感覚付与手段、及び力覚的感覚付与手段の少なくとも1つを備えることができる。
【0092】
また、魚のヒレのような構造を人形に持たせれば固体粒子層20の中を泳いだり、更にはプロペラのような機構によって固体粒子層20の中を移動したりするオブジェクトを製作することも可能である。これらの動作はエンターテインメント分野において、お化け屋敷のアトラクションとして、お客が歩く歩道の脇からお化けを出現させたり、あるいはもぐら叩きゲームとして、お客が立っている同じ床面からもぐらが現れたりする演出等が可能となる。また、演劇やコンサートなどの舞台装置として、人間が歩きまわるステージの中から物体を出し入れ(浮上、沈降)するという新しい演出が可能になる。
【0093】
また、本実施の仮想現実体験システム10では、水を伴うシミュレーションやアトラクションに実際の水ではなく、流動化によって液体のようにふるまう固体粒子18(例えば砂18A)を用いている。したがって、水を使う場合に問題となる金属の腐食、木材や衣服などへの浸透、腐敗、電気回路のショート、わずかな隙間からの漏出、コケの繁殖、蒸発による減量、氷点下になった場合に固体化し体積が増えるなどの問題を解決できることも一つのメリットである。
【0094】
更に、万一ボートが転覆して人が流動化された固体粒子18の上に落ちても、センサで検知してすぐに、開閉バルブ50を閉めるか、コンプレッサ42を止めるか等によりエアの噴出を止めるような構成にすれば、固体粒子18はすぐに流動化状態では無くなるので、人は柔らかい砂地に落ちたのと同様になり、怪我もせず、溺れることも、水に濡れることもなく安全かつ快適である。
【0095】
また、透明な水はプロジェクタの映像を投影することはできないが、白色の不透明な固体粒子18(例えば砂18A)により固体粒子層20を形成すれば、固体粒子層20の表面をスクリーンとして図示しない投影手段(例えばプロジェクタ)により映像を投影することができる。しかも、本実施の態様で固体粒子18として使用した砂18Aは、平均粒径が0.13mmと小さいため表面の凹凸も小さく、スクリーンとして十分に使用可能である。また、白色の固体粒子18を使用することで固体粒子層20のスクリーンに投影される映像の色がそのまま反映させることができる。
【0096】
また、湿地歩行シミュレーションにおいて、湿地面が硬く体験者Pの足が沈まない状態と、湿地面が柔らかく体験者Pの足が沈む状態との切り替えを水で行うことは不可能であるが、本実施の形態のように固体粒子層20にエアを噴出することで切り替えを瞬時に行うことができる。したがって、新しいスポーツの競技、例えば水球に似た競技やトレーニングにも応用可能である。
【0097】
また、水の上と同じように固体粒子層20の上でパドル(櫂)を使ってボート競技を行ったり、固体粒子層20の中を走ったり泳いだりすることも可能である。その際にエアの供給量を調節して固体粒子層20の流動化率を変化させることで、従来の水では不可能な、体験者Pが動く際の負荷の調整が可能である。このことから、「動きやすさ」を変化させることができる新しい競技やトレーニング法の開発が可能になる。
また、ボート52を使った仮想体験の場合、容器22を思い切り長くし(例えば10m〜100m)、容器傾動手段64で容器22に前後方向の傾斜をつけ、更に容器22の上流側から砂18Aを供給し続けることによって固体粒子層20に砂18Aの流れを形成することができる。そして、ボート52に乗った体験者Pに装着したHMD56に川下りの映像を映し出す。これにより、ボート52は下流に流されるので、ボート52に乗った体験者Pは川下りのような仮想体験をすることができる。
【0098】
また、固体粒子層20の表面を入力インタフェースとして捉えることもできる。固体粒子層20の表面は赤外線を反射することから、KINECT(登録商標)等の赤外線を使用するデプスカメラで距離を計測することができる。これにより、固体粒子層20の表面に映像を投影し、固体粒子層20の中から突き出した身体をデプスカメラで認識することによってコンピュータの操作を行ったり、手の平ですくい取った砂に映像を投影したりする等が可能である。
【0099】
また、固体粒子層20の表面の固体粒子18(例えば砂18A)をエアや振動で吹き飛ばすことで、映像投影面から実物体が吹き飛ぶ爆発の表現が可能であり、ゲームなどに利用できる。このように、液体のように流動化した固体粒子層20のインタフェースには新しいインタラクションを開拓できる大きな可能性がある。
【0100】
また、本実施の形態では、固体粒子18として砂18Aを、流体としてエアを使用した。しかし、固体粒子18として樹脂や金属を組み合わせたり、流体として水や油を組み合わせたりして使用することで流動化したときの固体粒子層20の比重や粘性を変化させることも可能である。
【解決手段】固体粒子18、固体粒子18が充填されて固体粒子層20を形成する上面開放の容器22、及び容器22内の底部に設けられ固体粒子層20に流体を噴出することにより固体粒子層20を浮遊懸濁して流動化させる流体噴出手段24を少なくとも有する仮想現実生成装置12と、生成する仮想現実に応じて流体噴出手段24から噴出する流体噴出量を制御する噴出量制御手段14と、生成する仮想現実に応じて視覚的、聴覚的、嗅覚的、触覚的、力覚的の少なくとも1つの感覚を付与する感覚付与手段と、を備えた。