(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229117
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】直流電源供給補償回路とそのモジュール体
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20171106BHJP
H02M 7/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H02M7/06 A
H02M7/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-99991(P2014-99991)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-208206(P2015-208206A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】505088330
【氏名又は名称】出川 三郎
(72)【発明者】
【氏名】出川 三郎
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3133340(JP,U)
【文献】
出川 三郎,ACアダプター用のノイズ吸収、欠落電流補充回路+CPM,[online],2014年 3月16日,[平成29年4月28日検索],インターネット,URL,http://www7b.biglobe.ne.jp/~degawa/product/current-supplement-cpm.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
H02M 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACアダプタの正極に接続される入力端子1に、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2の直列体の一方を接続し、他方は、負荷に接続される出力端子3に接続し、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2の直列体に並列に、第3の整流素子D3と第4の整流素子D4の直列体を接続し、該直列体の一方を入力端子1に、他方を出力端子3に接続すると共に、第1のコンデンサC1の正極(+)に接続し、該コンデンサC1の負極(−)は、負荷に接続される出力端子4に接続し、前記第3の整流素子D3と第4の整流素子D4の直列体の中点から第2のコンデンサC2の正極(+)に接続し、該コンデンサC2の負極(−)を負荷に接続される出力端子4に接続すると共に、前記出力端子3,4間に、第5の整流素子D5を接続したことを特徴とする直流電源供給補償回路。
【請求項2】
前記直流電源供給補償回路を絶縁ケースに封入し、一方の端子はACアダプタの出力端子に、他方の端子は負荷に接続する端子を備えたことを特徴とする請求項第1項記載の直流電源供給補償回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ACアダプタの直流出力に含まれる欠落電流を補填すると共に、負荷の変動に起因する過渡現象抑制機能を備えた直流電源供給保障回路及びそのモジュール体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器、パソコン、オーディオ機器等の電源には商用電源が多用されている。
これらはACアダプタを介して電源が供給されるのが一般的である。
具体的には、
図3に示すようにACアダプタの交流入力端子01,02と、直流端子21,22を備える。その内部は、トランスT1、交流を直流に変換する回路(図示せず)を有し、負荷Lに接続されている。
【0003】
上記の回路において、トランスT1で直流出力電圧に応じて降圧され、次段の直流に変換する回路に接続される。当該回路では、一般的にはダイオードによる整流により直流にされる。なお、ACアダプタの小型、軽量化、コスト低減の理由により、トランスレスとインバータ回路により、交流波形をパルス変換し降圧後、整流して直流出力するACアダプタもある。いずれの方式にしても、整流した波形の平滑化に、コンデンサを使用する、コンデンサインプット回路が使用されている。
【0004】
上記ACアダプタから出力された直流成分には、後述する電流の欠落が、交流の半サイクルごとに、数ミリセカンドの時間で発生する。さらに、インバータ回路を使用する場合にはその回路を介してノイズが発生している。
【0005】
ACアダプタに接続された多くの電子・電気機器は、不都合なく動作するが、オーディオ機器では、ACアダプタから供給される直流電流の欠落と、ノイズが再生音に影響を与え著しく品質が損なわれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−288180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ACアダプタでは、コンデンサインプット回路に起因する約10%の欠落電流が負荷に供給される。また、インバータ回路を使用する場合には、それによる高周波ノイズの発生、さらには整流回路内で発生する逆起電圧発生に対する対応、配線によるL成分及び当該L成分負荷で発生する逆起電圧に対する対策については全く考慮されていないので、特に再生音の品質を命とするオーディオ機器にとって解決すべき重大な課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ACアダプタの正極に接続される入力端子1に、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2の直列体の一方を接続し、他方は、負荷に接続される出力端子3に接続し、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2の直列体に並列に、第3の整流素子D3と第4の整流素子D4の直列体を接続し、該直列体の一方を入力端子1に、他方を出力端子3に接続すると共に、第1のコンデンサC1の正極(+)に接続し、該コンデンサC1の負極(−)は、負荷に接続される出力端子4に接続し、前記第3の整流素子D3と第4の整流素子D4の直列体の中点から第2のコンデンサC2の正極(+)に接続し、該コンデンサC2の負極(−)を負荷に接続される出力端子4に接続すると共に、前記出力端子3,4間に、第5の整流素子D5を接続したことを特徴とする直流電源供給補償回路である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記直流電源供給補償回路を絶縁ケースに封入し、一方の端子はACアダプタの出力端子に、他方の端子は負荷に接続する端子を備えたことを特徴とする直流電源供給補償回路のモジュール体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成したので、概略以下のような顕著な効果を奏する。
(1)ACアダプタの直流出力は約10%の欠落電流が含まれているが、本発明の回路モジュールによってACアダプタの出力に含まれる欠落電流を補填することができる。
(2)同様に、ACアダプタからの高周波ノイズも効果的に除去できる。
(3)負荷電流の変動で、特にL負荷においては、それによって発生した逆起電力が負極に重畳することなく正極側に回生でき、過度現象を抑制できる。
(4)上記3つの効果により、負荷がオーディオ機器の場合、欠落電流が無くなり、再生音が途切れることなく、高周波ノイズもないので、クリアな再生音が実現でき、また、過度現象が抑制されるので、切れのない低域と高域再生ができるなど、付加価値を高めた今までにない高品質の画期的なオーディオ機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願発明の回路モジュール体の回路図である。
【
図2】本願発明の回路モジュール体の接続概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は本願発明の回路モジュールが実際に使用される場合の、ACアダプタと負荷との間に接続される形態を示す。交流電源に接続されたACアダプタADと、ACアダプタの直流出力に接続される本願発明の回路モジュール体Mと、このモジュール体Mに接続された負荷Lとの接続概念図である。
【0013】
図1の破線で囲まれた部分が、本願発明の回路モジュール体Mであり、これら回路は絶縁ケース(図示せず)に封入さている。
【実施例】
【0014】
本願発明の実施例を
図1に基づいて説明する。
破線で囲まれた回路ジュール体Mには、ACアダプタの直流出力の正極(+)と接続する入力端子1と、ACアダプタの直流出力の負極(−)と接続する入力端子2と、負荷に接続する直流出力の正極(+)端子3と、負極(−)端子4を備える。回路モジュール体Mの内部は、整流素子D1〜D5とコンデンサC1,C2で構成される。ここで、入力端子1と出力端子3を結ぶ配線を正極(+)ライン、入力端子2と出力端子4を結ぶ配線を負極(−)ラインと呼称する。
【0015】
第1の整流素子D1に直列に第2の整流素子D2を接続し、第1の整流素子D1のアノード側を入力端子1に接続し、第2の整流素子D2のカソード側を出力端子3に接続する。
【0016】
第1の整流素子D1と第2の整流素子D2の直列体に第3の整流素子D3と第4の整流素子D4の直列体を並列接続する。第3の整流素子D3のアノード側を入力端子1に接続し、第4の整流素子D4のカソード側を出力端子3に接続する。第2の整流素子D2と第4の整流素子D4のカソード側接続点には第1のコンデンサC1の正極(+)側を、該コンデンサC1の負極(−)側を、負極(−)ラインに接続する。
【0017】
第3の整流素子D3と第4整流素子D4の接続点に第2のコンデンサC2の正極(+)側を、該コンデンサC2の負極(−)側を、負極(−)ラインに接続する。
第1のコンデンサC1に並列に第5の整流素子D5を接続する。
【0018】
上記回路の整流素子D1、D2、D3、D4とコンデンサC1、C2、からなる構成によって、ACアダプタから入力された、欠落電流の有る直流は整流素子D1D2を介して第1のコンデンサC1を充電する。一方、ACアダプタから入力された、欠落電流の有る直流は整流素子D3を介して第1のコンデンサの容量よりも充分大きい第2のコンデンサを充電する。ここで欠落電流の有る直流が入力された時は、負荷への電流不足を、第2のコンデンサに充分充電された電荷が整流素子
D4を介して負荷に電流を供給する。この作用によって、負荷Lには欠落電流が補償される。
【0019】
さらに、この回路の効果として、第1、第2のコンデンサとC1,C2と第3の整流素子D3からなる接続の構成によって、ACアダプタからの直流に重畳された高周波ノイズおよびACアダプタからの配線インダクタンスによるノイズもカットされる。
【0020】
次に、第1のコンデンサC1に並列接続された第5の整流素子D5の作用により、特にL負荷の消費電流の変動による逆起電力によって、第1のコンデンサC1に逆電圧が印加されるその間はコンデンサの極性が逆になってしまう現象を、整流素子D5で逆起電力をバイパスできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願発明の回路モジュールは、ACアダプタを使用する機器のあらゆる機器に利用でき、高品質の直流を機器に供給できる。電子機器、電気機器、パソコン、オーディオ機器等に利用される。パソコン等はデジタル信号を扱っているので、電流の欠落が原因で誤動作を起こしかねないし、ハングアップの要因にもなる。家庭内の機器を無線でネットワークを組んでいる場合にも、これらの機器にACアダプタを使用しているので、ノイズカットが有用となる。
【符号の説明】
【0022】
1 ACアダプタの正極(+)からの入力端子
2 ACアダプタの負極(−)からの入力端子
3 直流の正極(+)出力端子
4 直流の負極(−)出力端子
M 直流電源供給補償回路とそのモジュール体
D1、D2、D3,D4、D5 整流素子
C1、C2 コンデンサ
AD ACアダプタ
L 負荷
T トランス
AC/DC 交流直流変換回路