(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229213
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】トマト含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/02 20060101AFI20171106BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20171106BHJP
【FI】
A23L2/02 F
A23L23/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-201785(P2013-201785)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-65848(P2015-65848A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【審査官】
柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−223141(JP,A)
【文献】
特開2009−178053(JP,A)
【文献】
生物工学会誌, (2012), 90, [5], p.255
【文献】
日本食品科学工学会誌, (1999), 46, [6], p.410-415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23L 23/00−25/00,35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト果汁率が21〜83%のトマト含有飲料の製造方法であって、
Brixが28〜30であり、クエン酸酸度が1.3〜1.9質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるトマトペーストに、前記飲料の全質量に対し、1〜3質量%の砂糖と、0.05〜0.4質量%のL-グルタミン酸ナトリウムと、0.4〜0.8質量%の食塩とを添加し、さらに、該飲料のクエン酸酸度を0.1〜0.4質量%に調整する工程と、該飲料のpHを4.0未満であって3.5以上に調整する工程とを含む、トマト含有飲料の製造方法。
【請求項2】
さらに、増粘多糖類を添加する工程を含む、請求項1に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項3】
上記増粘多糖類がキサンタンガム、ペクチン、発酵セルロース及びグアガムから選択される1種以上である請求項1又は2に記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項4】
増粘多糖類の添加量が、前記飲料の全質量に対し、0.01〜0.5質量%である、請求項3記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項5】
さらに、酸味料を添加する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のトマト含有飲料の製造方法。
【請求項6】
(A)Brixが28〜30であり、クエン酸酸度が1.3〜1.9質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるトマトペースト、
(B)トマト含有飲料の全質量に対し、1〜3質量%の砂糖、
(C)前記飲料の全質量に対し、0.05〜0.4質量%のL-グルタミン酸ナトリウム、及び
(D)前記飲料の全質量に対し、0.4〜0.8質量%の食塩、
から調製され、該飲料のpHが4.0未満であって3.5以上であり、さらに該飲料のクエン酸酸度が0.1〜0.4質量%であることを特徴とする、トマト果汁率が21〜83%のトマト含有飲料。
【請求項7】
果実飲料、果実・野菜混合飲料、野菜飲料、炭酸飲料、乳性飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ゼリー飲料、アルコール飲料、スープ、ソース又はシロップの形態である、請求項6記載のトマト含有飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は消費者の健康意識の向上から野菜飲料が求められるようになり、中でもトマト含有飲料への注目が集まっている。
トマト含有飲料の中でもトマトスープ飲料については、これまで肉エキスやブイヨン、乳製品など油分やうま味成分を多量に含有させたものが多く、液状製品および粉末を規定濃度で希釈した市販品ではpHが4.0以上の低酸性領域の設計であるものが多かった。
食品衛生法では、pH4.0未満のもので65℃、10分間、pH4.0以上のものでは85℃、30分間、またはこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌することと定められている。したがって、pH4.0以上の製品では、pH4.0未満の製品と比較して、加熱条件が厳しくなることから、素材本来の風味が損なわれることが懸念されてきた。
上記課題を解決するには、pHを4.0未満に設定する必要があるが、近年は、フルーツトマト等、甘味が強いトマトに人気が出ており、酸味の強いトマトは敬遠されがちになっている。
これまでに、トマト本来の自然のコク味や舌触りを維持・向上させながらも、のど越しや後味が大幅に改善され、併せて旨味や食感も改善がなされた容器詰めトマト含有飲料を提供することを目的とした、Bx4〜30で、アスパラギン酸含量が90〜160mg/100ml、アルギニン含量が17〜50mg/100ml、アスパラギン含量が40〜100mg/100ml、アラニン含量が20〜50mg/100mlとする飲料が報告されている(特許文献1)。
【0003】
濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘味があり且つトマトの酸味が抑制されており、主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても飲み易さが高められた、トマト含有飲料を提供することを目的とした、糖度を7.0〜13.0、糖酸比を19.0〜30.0とし、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.25〜0.60%であるトマト含有飲料もまた報告されている(特許文献2)。
トマト材料に酸を添加するか又は発酵によって酸を産生せしめ、そのpHを4以下、好ましくは3.8以下に調整する液状製品の製法が知られている。また、pHを4以下にするために加える酸として、有機酸が挙げられており、酢酸、クエン酸、乳酸が例示されている(特許文献3)。
Brixが6〜12であり、且つアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニンからなるアミノ酸群に対するグルタミン酸の重量比率が0.1〜0.65であることを特徴とする容器詰めトマト含有飲料もまた報告されている(特許文献4)。
トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料、例えば蔗糖を含有することで、甘味が強く、十分な食感があり、ドロドロとしたのど越しがなく飲みやすい野菜飲料もまた報告されている(特許文献5)。
濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された脱酸トマト汁及びその製造方法もまた報告されている(特許文献6、7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5221785号
【特許文献2】特開2012−223141号
【特許文献3】特開昭58−152464
【特許文献4】特許第5116884号
【特許文献5】特開2011−103783号
【特許文献6】特開2012−223142号
【特許文献7】特開2012−223144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、殺菌条件が緩やかなpH4.0未満であり、さらに、適度なコク、うま味、塩味、及び酸味を有しながら、野菜特有の青臭みが無い、トマト含有飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、以下のトマト含有飲料の製造方法及びトマト含有飲料を提供する;
1.トマト含有飲料の製造方法であって、
Brixが28〜30であり、クエン酸酸度が1.3〜1.9質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるトマトペーストに、前記飲料の全質量に対し、1〜3質量%の砂糖と、0.05〜0.4質量%のL-グルタミン酸ナトリウムと、0.4〜0.8質量%の食塩とを添加し、さらに、該飲料のクエン酸酸度を0.1〜0.4質量%に調整する工程と、該飲料のpHを4.0未満に調整する工程とを含む、トマト含有飲料の製造方法。
2. さらに、増粘多糖類を添加する工程を含む、請求項1に記載のトマト含有飲料の製造方法。
3. 上記増粘多糖類がキサンタンガム、ペクチン、発酵セルロース及びグアガムから選択される1種以上である請求項1又は2に記載のトマト含有飲料の製造方法。
4. 増粘多糖類の添加量が、前記飲料の全質量に対し、0.01〜0.5質量%である、請求項3記載のトマト含有飲料の製造方法。
5. さらに、酸味料を添加する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のトマト含有飲料の製造方法。
6. トマト果汁率が20%以上である、請求項1〜5のいずれか1項記載のトマト含有飲料の製造方法。
7. (A)Brixが28〜30であり、クエン酸酸度が1.3〜1.9質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるトマトペースト、
(B)トマト含有飲料の全質量に対し、1〜3質量%の砂糖、
(C)前記飲料の全質量に対し、0.05〜0.4質量%のL-グルタミン酸ナトリウム、及び
(D)前記飲料の全質量に対し、0.4〜0.8質量%の食塩、
から調製され、該飲料のpHが4.0未満であり、さらに該飲料のクエン酸酸度が0.1〜0.4質量%であることを特徴とする、トマト含有飲料。
8.果実飲料、果実・野菜混合飲料、野菜飲料、炭酸飲料、乳性飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ゼリー飲料、アルコール飲料、スープ、ソース又はシロップの形態である、前記7項記載のトマト含有飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、pHが4.0未満の領域で、食塩、L-グルタミン酸ナトリウム、砂糖を所定量含有することで、素材本来の風味を損なうことなく、適度なコク、うま味、塩味、及び酸味を有しながら、野菜特有の青臭みが無いトマト含有飲料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】比較例1、2および実施例1〜3で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【
図2】比較例3、4および実施例4〜8で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【
図3】比較例5〜9および実施例9〜13で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【
図4】比較例10〜12および実施例14〜17で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【
図5】比較例1および実施例5、18〜20で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【
図6】比較例13〜15および実施例21〜23で製造したトマト含有飲料の官能評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔トマトペースト〕
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)では、トマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、種子等を除去した後濃縮したもので無塩可溶性固形分が8%以上のものを「濃縮トマト」と定義し、その中でも、無塩可溶性固形分が24%以上のものを「トマトペースト」と分類しているが、本発明に使用するトマトペーストとは、Brixが28〜30であり、クエン酸酸度が1.3〜1.9質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるものをいう。
Brixが28〜29であり、クエン酸酸度が1.3〜1.8質量%であり、且つpHが4.0〜4.4であるのが好ましい。
本発明に用いるトマトペーストは、市販品を用いてもよく、公知の方法を用いてトマト果実から製造してもよい。市販品のトマトペーストには食塩が含まれることがあるが、1%以下のものを使用するのが好ましい。市販品のトマトペーストには、原料のトマト由来のグルタミン酸が含まれるが、25mg/g以下のものを使用するのが好ましい。
トマトペーストの原料となるトマト果実は、品種、産地、熟度等は特に限定されない。本発明所定のBrix値、クエン酸酸度及びpHであれば、二種以上のトマト果実から調製したトマトペーストを用いてもよい。
【0010】
〔Brix〕
本発明におけるBrix値は、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えばデジタル屈折系Rx-5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。
【0011】
〔クエン酸酸度〕
クエン酸酸度は、フェノールフタレイン指示薬を用いて水酸化ナトリウムで滴定し、クエン酸の相当量として以下のように算出する。
試料5〜15gを200ml形三角フラスコに正確にはかり取り、水で適宜希釈して1%フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、25mlビューレットに入れた0.1M水酸化ナトリウムで振り混ぜながら滴定する。30秒間赤色が持続する点を終点とする。水素イオン濃度計を用いる場合は、マグネティックスターラーでかき混ぜながら同様に滴定し、pHが8.1になったときを終点とする。
クエン酸酸度は次式によって算出する。
クエン酸酸度(%)=A×f×100/W×0.0064
[A:0.1M水酸化ナトリウム溶液による滴定量(ml)、f:0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価、W:試料質量(g)、0.0064:0.1M水酸化ナトリウム溶液1mlに相当する無水クエン酸の質量(g)]
トマト含有飲料のクエン酸酸度は、酸味料を添加することにより、又は、トマトペーストの配合量を調節することにより調整することができる。
【0012】
〔pH〕
トマトペースト及びトマト含有飲料のpHは、ガラス電極pHメーターを用い、20℃において希釈せずに測定する。
トマト含有飲料のpHは、酸味料を添加することにより、又は、トマトペーストの配合量を調節することにより調整することができる。
【0013】
本発明品のトマト含有飲料には、砂糖を添加する。添加量の上限は3質量%であり、さらに好ましくは2.5質量%である。また、添加量の下限は1質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%である。
本発明品のトマト含有飲料には、L-グルタミン酸ナトリウムを添加する。添加量の上限は0.4質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%である。また、添加量の下限は0.05質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%である。
本発明品のトマト含有飲料には、食塩を添加する。添加量の上限は0.8質量%であり、さらに好ましくは0.7質量%であり、特に好ましくは0.6質量%である。また、添加量の下限は0.4質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%である。
本発明のトマト含有飲料には、更に、増粘多糖類;酸味料;果糖、ぶどう糖などの単糖、乳糖、麦芽糖等の二糖類;スクラロース、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料;大豆多糖類、ペクチン等の安定剤;ビタミンC、ビタミンB6等のビタミン類;カルシウム、マグネシウム等のミネラル類;マリーゴールドやカラメル等の色素;香料等を、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で添加してもよい。
【0014】
〔増粘多糖類〕
増粘多糖類を添加することにより、コクを上げて飲み応えを向上させることができる。また、トマトペースト由来の不溶性固形分の沈殿を防止したり、分散性を向上させることができる。
本発明のトマト含有飲料に用いることができる増粘多糖類としては、食品や飲料に用いることが出来る増粘多糖類であれば特に制限無く用いることができるが、特にキサンタンガム、HMペクチン、発酵セルロース、及びグアガムが好ましい。中でもキサンタンガム、発酵セルロースがより好ましい。増粘多糖類は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。
キサンタンガムとは、タマリンドの種子から抽出される増粘多糖類である。例えば、市販されている「サンエース(三栄源エフ・エフ・アイ(株))」等を使用できる。
HMペクチンとは、主に柑橘類から抽出される多糖類である。例えば、市販されている「YM-115-LJ(三晶(株))」等を使用できる。
発酵セルロースとは、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に分類されるセルロース産生菌が生産するセルロースである。市販品としては、グアガムを含有している製剤があり、例えば「サンアーティストPG(三栄源エフ・エフ・アイ(株))」等を使用できる。
グアガムとは、グア豆由来の増粘多糖類である。
増粘多糖類の量は、トマト含有飲料の全質量を基準として、0.01〜0.5質量%となる量が好ましい。より好ましくは0.01〜0.2質量%であり、さらに好ましくは、0.01〜0.15質量%が好ましく、最も好ましくは、0.01〜0.12質量%である。
【0015】
〔酸味料〕
本発明のトマト含有飲料に用いることができる酸味料の種類と量は、前記飲料のpHとクエン酸酸度を所定の範囲に調整することができれば特に限定されない。例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸等の有機酸やその塩、リン酸等の無機酸やその塩、果汁等が使用できるが、好ましくは乳酸である。乳酸は、例えば、ピューラック社製等の市販の乳酸、化学合成した乳酸等の食品添加剤に通常使用されている乳酸を用いることができる。
【0016】
〔トマト果汁率〕
本発明品の「果汁率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁の糖用屈折計示度(Brix)を100%としたときの相対濃度である。
例えば、果汁率60%のトマト含有飲料を製造する場合は、搾汁時Brixが4.8である、28.8Brixのトマトペーストを10質量%配合する。
本発明のトマト果汁率は、所望のトマトスープらしさを実現するために、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。上限は特に無いが、トマト果汁由来の酸味や青臭さを抑制する観点から85%以下であることが好ましく、65%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明のトマト含有飲料は、果実飲料、果実・野菜混合飲料、野菜飲料、炭酸飲料、乳性飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ゼリー飲料、アルコール飲料、スープ、ソース、シロップ等として供することができる。
本発明のトマト含有飲料は、冷蔵庫で冷やしてもよいし、常温のままでもよいし、50℃〜80℃程度に加温してもよい。
本発明のトマト含有飲料のpHは4.0未満であり、上限は3.9が好ましい。また、pHの下限は3.0が好ましく、さらに3.5がより好ましい。pHがこの範囲であると、原料トマト由来の青臭さがなく、酸味とコクのバランスが良いので好ましい。
本発明のトマト含有飲料のクエン酸酸度の上限は、0.4%が好ましく、さらに0.35%がより好ましく、さらに0.3%であるのがより好ましい。また下限は0.1%であるのが好ましく、0.15%であるのがより好ましく、さらに0.18%であるのがより好ましい。通常、加温すると酸味が立つが、クエン酸酸度がこの範囲であると、加温しても酸味が強くならず、適度な酸味を有するので好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例により本発明が限定されるものではない。
〔比較例1、2および実施例1〜3〕
<試作方法>
表1に示す配合量で、以下に示す方法によりトマト含有飲料としてトマトスープ飲料を調製した。
市販のトマトペースト(Brix:28.3(搾汁時Brix:4.8)、クエン酸酸度:1.6質量%、pH:4.2、無塩)を水で希釈し、L-グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖を添加し、乳酸(発酵乳酸50%(ピューラック社製)あるいはクエン酸を添加してpHを3.9あるいは3.5に調整し、イオン交換水を用いて全量を10kgとした後に均質化処理を行った。その後、クエン酸酸度を測定し、トマトスープ飲料(トマト果汁率41%)を得た。得られたトマトスープ飲料を加熱殺菌した後に、200g缶にホットパック充填し、室温まで冷却した。
なお、pHの測定は、殺菌後に充填し、一度冷却したものをサンプルとし、ガラス電極pHメーター(東亜ディーケーケー社製)を用いて20℃において行った。
クエン酸酸度の測定は、殺菌後に充填し、一度冷却したものをサンプルとし、前記記載方法にて行った。
【0019】
<評価方法>
一晩室温下においた各サンプルを55℃のインキュベーターで加温した後に風味差を評価した。
風味評価はパネラー10名による官能評価を実施し、以下のように点数化した。
項目:青臭さ、うま味、塩味、酸味、コク、トマトスープ飲料らしさ
0点:ない
2点:わずかにある
4点:ややある
6点:ある
8点:かなりある
ここで、トマトスープ飲料らしさとは、トマト特有の青臭さがなく、うま味、コク、適度な塩味と酸味を感じられるトマトスープ飲料を表す。
【0020】
【表1】
【0021】
結果を表2および
図1に示す。
比較例1および2では、トマト特有の青臭さが強く感じられており、うま味や塩味、コクなどのトマトスープ飲料に必要な要素の点数が低い一方で、砂糖、食塩、L-グルタミン酸ナトリウムを添加した実施例1〜3では、青臭さが低減され、うま味や塩味、コクが感じられ、トマトスープ飲料らしく感じられるようになった。トマトスープ飲料らしさの点数を
図1に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
〔比較例3、4および実施例4〜8〕
<試作方法>
表3に示す配合量で、実施例1と同様の方法によりトマトスープ飲料を調製した。
<評価方法>
実施例1と同様の方法で評価を実施した。なお、風味評価はパネラー5名による官能評価を実施した。
【0024】
【表3】
【0025】
結果を表4および
図2に示す。
グルタミン酸量の増加とともにうま味と酸味が強くなった。比較例3では、それほど強い酸味は感じられていないが、うま味が低く、トマトスープ飲料らしさが低かった。比較例4では、うま味は強く感じられているが、L-グルタミン酸ナトリウムを多量に添加することで、pHを4.0未満にするために必要な乳酸量が多くなり、酸味を強く感じることで、比較例3と同程度に低いトマトスープ飲料らしさとなった。一方で、実施例4〜8では、うま味と酸味のバランスが良く、トマトスープ飲料らしさが強く感じられるようになった。比較例3、4および実施例4〜8におけるL−グルタミン酸ナトリウムの添加量と、トマトスープ飲料らしさ、うま味及び酸味との関係を
図2に示す。
【0026】
【表4】
【0027】
〔比較例5〜9および実施例9〜13〕
<試作方法>
表5に示す配合量で、実施例1と同様の方法によりトマトスープ飲料を調製した。
<評価方法>
一晩室温下においた各サンプルを55℃のインキュベーターで加温した後に風味差を評価した。
風味評価はパネラー5名による官能評価を実施し、以下のように点数化した。
項目:全体の風味
0点:まずい
2点:ややまずい
4点:どちらとも言えない
6点:ややおいしい
8点:おいしい
項目:甘味の強さ、塩味の強さ、酸味の強さ
0点:弱い
2点:やや弱い
4点:丁度良い
6点:やや強い
8点:強い
項目:コク、トマトスープ飲料らしさ
0点:ない
2点:わずかにある
4点:ややある
6点:ある
8点:かなりある
【0028】
【表5】
【0029】
結果を表6および
図3に示す。
砂糖量の増加とともにコクが強く感じられ、酸味が弱く感じられるようになった。比較例5および6では、甘みがない、あるいは弱く、逆に酸味が強いために、トマトスープ飲料らしさが低かった。比較例7〜9では砂糖の量が多いために甘味は強くなるが、コクはそれ以上高くならず、トマトスープ飲料らしさが低くなった。一方で、実施例9〜13では、コク、酸味が程よく感じられ、全体の風味も評価が高く、トマトスープ飲料らしさが強く感じられるようになった。比較例5、6および7〜9、実施例9〜13におけるトマトスープ飲料らしさ、全体の風味、コク、酸味の強さの関係を
図3に示す。
【0030】
【表6】
【0031】
〔比較例10〜12および実施例14〜17〕
<試作方法>
表7に示す配合量で、実施例1と同様の方法によりトマトスープ飲料を調製した。
<評価方法>
実施例9と同様の方法で実施した。
【0032】
【表7】
【0033】
結果を表8および
図4に示す。
食塩量の増加とともに、コクが強く感じられるようになった。比較例10および11では塩味が足りず、トマトスープ飲料らしさが低く、比較例12では食塩の量が多いために塩味は強くなるがコクはそれ以上に高くならず、比較例11と同程度にトマトスープ飲料らしさが低くなった。一方で、実施例14〜17では、塩味が程よく感じられ、トマトスープ飲料らしさが感じられるようになった。比較例10〜12、実施例14〜17におけるトマトスープ飲料らしさと塩味の強さの関係を
図4に示す。
【0034】
【表8】
【0035】
〔実施例18〜20〕
<試作方法>
表9に示す配合量で、実施例1と同様の方法によりトマトスープ飲料を調製した。なお、実施例18〜20での均質化は増粘多糖類を添加した後に実施した。
<評価方法>
実施例1と同様の方法で実施した。なお、風味評価はパネラー5名による官能評価を実施した。
【0036】
【表9】
【0037】
結果を表10および
図5に示す。
増粘多糖類を含有した場合には、実施例5よりもコクが強く感じられ、トマトスープ飲料らしさが高くなった。
【0038】
【表10】
【0039】
〔比較例13〜15および実施例21〜23〕
<試作方法>
表11に示す配合量で、実施例1と同様の方法によりトマト果汁率が21%、62%、83%のトマトスープ飲料を調製した。
<評価方法>
実施例1と同様の方法で実施した。なお、風味評価はパネラー5名による官能評価を実施した。
【0040】
【表11】
【0041】
結果を表12および
図6に示す。
表12より、比較例13〜15では、トマト特有の青臭さが強く感じられており、うま味や塩味、コクなどのトマトスープ飲料に必要な要素の点数が低い。また、トマト果汁率を上げても、トマトスープ飲料らしさは極めて低かった。
一方、実施例21〜23では、所定量の砂糖、食塩、L-グルタミン酸ナトリウムを添加した結果、青臭さが低減され、うま味や塩味、コクが感じられ、トマトスープ飲料らしさも高い値となった。
したがって、本発明で規定するトマト果汁を使用した場合には、トマト果汁率を変更しても、所定量の砂糖、食塩、L-グルタミン酸ナトリウムを添加することで、十分なトマトスープ飲料らしさを感じられるトマトスープ飲料を作製することができる。
ここで、実施例23と比較例4(表3)を比べると、両者のクエン酸酸度はそれぞれ0.36と0.35である。実施例23の方が、若干クエン酸酸度が高いにも関わらず、官能評価の結果から酸味が抑えられ、トマトスープ飲料らしさが十分に感じられていた。したがって、単純にグルタミン酸ナトリウムと乳酸を増やした場合には本発明の効果は得られないが、本発明で規定する砂糖、食塩、L-グルタミン酸を所定量添加すると、果汁率を変えて乳酸の量を増やしても本発明の効果が得られることが分かる。
【0042】
【表12】