特許第6229316号(P6229316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229316
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】光源装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20171106BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20171106BHJP
   G03B 21/00 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   G03B21/14 A
   H04N5/74 Z
   !G03B21/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-116767(P2013-116767)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-235323(P2014-235323A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】江川 明
【審査官】 小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−047951(JP,A)
【文献】 特開2012−027106(JP,A)
【文献】 特開2012−220811(JP,A)
【文献】 特開2012−002871(JP,A)
【文献】 特開2011−215332(JP,A)
【文献】 特開2011−158726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0249976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/10
21/12−21/13
21/134−21/30
33/00−33/16
H04N 5/66−5/74
F21K 9/00−9/90
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00−15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体層と、
前記蛍光体層を励起する励起光を射出する光源と、
前記励起光の強度を検出する第1の検出部と、
前記蛍光体層から射出された蛍光の強度を検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部で検出された励起光強度と、前記第2の検出部で検出された蛍光強度とに基づいて、前記光源を制御する制御部と、を備え
前記第2の検出部で検出された蛍光強度が周期的に発生する低出力部を含む場合、
前記制御部は、前記低出力部が生じるタイミングに同期させて、前記光源の出力を停止するように制御することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記励起光強度と前記蛍光強度とに基づいて、前記光源を制御する制御方法を選択する機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値以上であり、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値よりも弱い場合に、前記光源の制御方法を、前記第1の検出部で検出された励起光強度を無視する制御方法に変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記光源の故障の有無を検査する機能を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱く、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値よりも弱く、且つ前記光源が故障していない場合、初期駆動電力よりも大きい電力を前記光源に供給する
ことを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱く、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値以上である場合に、前記励起光を遮断する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記励起光強度の検出結果及び前記蛍光強度の検出結果に基づいて、所定のメッセージを表示する表示部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記蛍光体層は、一方の面から前記励起光が入射し、他方の面から前記蛍光を射出させる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記蛍光体層を透過した前記励起光の一部と、前記蛍光とを含んだ光が白色光を構成する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記蛍光体層は、回転軸の周りに回転可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調装置と、前記光変調装置によって変調された光を投写する投写光学系と、を備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置およびプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いられる光源装置の一つとして、レーザー光を励起光として蛍光体層に照射し、励起光とは異なる波長の蛍光を発生させる光源装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
上記光源装置においては、蛍光体層が破損すると、光源装置から射出される蛍光の強度が低下する。また、励起光の強度が低下した場合にも、光源装置から射出される蛍光の強度が低下する。蛍光体層が破損した場合、高出力のレーザー光が蛍光体層に入射せず、光源装置から射出される虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光源装置においては、光源装置から射出される蛍光の強度が低下する原因は1つではないため、蛍光の強度が低下したときに適切な処置を行うことが困難である、という問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、異常発生時に適切な処置が行われる光源装置およびプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に従えば、蛍光体層と、前記蛍光体層を励起する励起光を射出する光源と、前記励起光の強度を検出する第1の検出部と、前記蛍光体層から射出された蛍光の強度を検出する第2の検出部と、前記第1の検出部で検出された励起光強度と、前記第2の検出部で検出された蛍光強度とに基づいて、前記光源を制御する制御部と、を備え、前記第2の検出部で検出された蛍光強度が周期的に発生する低出力部を含む場合、前記制御部は、前記低出力部が生じるタイミングに同期させて、前記光源の出力を停止するように制御する光源装置が提供される。
【0007】
第1態様に係る光源装置は第1の検出部と第2の検出部とによって励起光を射出する光源の状態と蛍光体層の状態を判断し、励起光強度及び蛍光強度に基づいて光源を制御する。そのため、蛍光強度の低下を引き起こす異常状態は幾つかあり得るが、光源の状態と蛍光体層の状態に応じて適切な処置を選択することができる。具体的には、発生した異常状態に応じて、光源の駆動状態を変化させることができる。
【0008】
また、本発明による光源装置を例えばプロジェクターに適用した場合、何らかの原因により蛍光体層が破損したとしても、基準レベルを超える強度の光がプロジェクターの構成部品に直接照射され続けることを防止することができる。つまり、二次的な障害を引き起こすことを防止することができる。
【0009】
上記第1態様において、前記制御部は、前記励起光強度と前記蛍光強度とに基づいて、前記光源を制御する制御方法を選択する機能を有してもよい。
この構成によれば、光源の状態と蛍光体層の状態に応じた適切な制御方法によって光源を駆動することができる。
【0010】
上記第1態様において、前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値以上であり、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値よりも弱い場合に、前記光源の制御方法を、前記第1の検出部で検出された励起光強度を無視する制御方法に変更してもよい。
蛍光強度が予め設定された第2の閾値以上であり、且つ励起光強度が予め設定された第1の閾値よりも弱い場合、制御部は、蛍光体層に問題は無いが第1の検出部に故障が発生していると判断する。この場合、制御部は、光源の制御方法を、第1の検出部で検出された励起光強度を無視する制御方法に変更するため、光源を使用可能な状況であるにもかかわらず光源の駆動が停止されてしまうといった不具合の発生を防止できる。
【0011】
上記第1態様において、前記制御部は、前記光源の故障の有無を検査する機能を有してもよい。
この構成によれば、光源の状態と蛍光体層の状態に応じた適切な駆動方法によって光源を駆動することができる。
【0012】
上記第1態様において、前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱く、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値よりも弱く、且つ前記光源が故障していない場合、初期駆動電力よりも大きい電力を前記光源に供給してもよい。
この構成によれば、光源が故障していないけれども蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱くなった場合、励起光の強度が強められるため、蛍光強度を強くすることができる。このように、安定した蛍光強度を得ることができる。
【0013】
上記第1態様において、前記制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱く、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値以上である場合に、前記励起光を遮断する構成としてもよい。
制御部は、前記蛍光強度が予め設定された第2の閾値よりも弱く、且つ前記励起光強度が予め設定された第1の閾値以上である場合、蛍光体層に破損や劣化が生じていると判定する。この場合、制御部は励起光を遮断するため、基準レベルを超えた強度の光が射出され続けるといった不具合の発生を防止できる。
【0014】
上記第1態様において、前記励起光強度の検出結果及び前記蛍光強度の検出結果に基づいて、所定のメッセージを表示する表示部をさらに備える構成としてもよい。
この構成によれば、表示部に例えばエラーメッセージが表示されるので、ユーザーに装置で起こっている異常状態を容易に認識させることができる。
【0015】
上記第1態様において、前記蛍光体層は、一方の面から前記励起光が入射し、他方の面から前記蛍光を射出させる構成としてもよい。
この構成によれば、蛍光体層が破損した際に、基準レベルを超える強度の光が光源装置から射出されることが防止される。よって、他の障害を引き起こすことを防止するという効果を顕著に得ることができる。
【0016】
上記第1態様において、前記蛍光体層を透過した前記励起光の一部と、前記蛍光とを含んだ光が白色光を構成する構成としてもよい。
この構成によれば、白色光を得ることができる光源装置を提供できる。
【0017】
上記第1態様において、前記蛍光体層は、前記励起光の入射時に回転軸の周りに回転される構成としてもよい。
この構成によれば、蛍光体層において励起光が照射される位置を分散させることができるので、蛍光体層の寿命を延ばすことができる。
【0018】
本発明の第2態様に従えば、上記第一態様に係る光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調装置と、前記光変調装置によって変調された光を投写する投写光学系と、を備えるプロジェクターが提供される。
【0019】
第2態様に係るプロジェクターは上述の光源装置を備えるので、明るさの変動が小さい映像を投射することができる。また、基準レベルを超える強度の光による各部品の破損が防止されるため、高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るプロジェクターの構成を示す模式図。
図2】蛍光発光素子の斜視図。
図3】制御部が行うモニタリング処理の手順を表すフローチャート。
図4】モニタリング中に制御部に出力される信号を説明するための図。
図5】制御部に出力される変形例に係る信号を説明するための図。
図6】第2実施形態に係るプロジェクターの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光源装置1を備えたプロジェクター1000の光学系を示す模式図である。
図1に示すように、プロジェクター1000は、光源装置1と、照明光学系100と、色分離導光光学系200と、光変調装置としての液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学系600と、励起光強度検出部50と、蛍光強度検出部51と、制御部70と、表示部80と、を具備して構成されている。
【0023】
光源装置1は、励起光源(光源)10、コリメーターレンズアレイ13、集光レンズ20、蛍光発光素子30、及びコリメート光学系40を備えている。励起光源10から射出される励起光の光路上には、コリメーターレンズアレイ13、集光レンズ20、蛍光発光素子30、コリメート光学系40がこの順に配置されている。光源装置1は光変調装置を照明する。
【0024】
励起光源10は、複数のレーザー光源12が二次元的に配列されたレーザー光源アレイである。
【0025】
励起光源10は、後述する蛍光発光素子30が備える蛍光物質を励起させる励起光として、青色(発光強度のピーク:445nm付近)のレーザー光を射出する。なお、励起光源10は、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、445nm以外のピーク波長を有する色光を射出する励起光源であっても構わない。
【0026】
コリメーターレンズアレイ13は、各レーザー光源12に対応して設けられた複数のレンズ130が二次元的に配列されて構成されている。このコリメーターレンズアレイ13は、各レンズ130が、それぞれ、各レーザー光源12から射出される各レーザー光の光線軸上となるように配置され、各レーザー光を平行化する。
【0027】
集光レンズ20は、例えば凸レンズからなる。集光レンズ20は、コリメーターレンズアレイ13から入射する複数のレーザー光(励起光)の光線軸上に配置され、この励起光を収束する。
【0028】
図2は、蛍光発光素子30の斜視図である。
蛍光発光素子30はいわゆる透過型の回転蛍光板である。蛍光発光素子30は、図1及び図2に示すように、所定の回転軸Oを中心としてモーター33により回転駆動される回転板31の上に、蛍光発光領域が設けられてなる。蛍光発光領域は回転板31の回転軸の回りに設けられ、蛍光発光領域には蛍光体層32が設けられている。回転板31は、ガラスなど、励起光を透過する材料からなる。なお、ここでは回転板31として円板を用いる例について説明したが、回転板31の形状は円板に限定されず平板であればよい。
【0029】
蛍光体層32は図示しない蛍光体粒子とバインダーを含む。蛍光体粒子は、波長が例えば約445nmの励起光(青色光)を吸収して、波長帯域が概ね490〜750nmの蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。この蛍光には、緑色光(波長530nm付近)及び赤色光(波長630nm付近)が含まれる。
【0030】
蛍光体粒子としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体層を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体層を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いることとしても良い。
【0031】
この蛍光体層32には、集光レンズ20によって集光された励起光(青色光)が、回転板31の蛍光体層32が形成された側とは反対側の面から照射される。また、蛍光発光素子30は、励起光が入射する側とは反対側に向けて、すなわちコリメート光学系40に向けて、蛍光体層32が発した蛍光を射出する。さらに、励起光のうち蛍光体粒子によって蛍光に変換されなかった成分は蛍光とともに蛍光発光素子30からコリメート光学系40に向けて射出される。従って、蛍光発光素子30からコリメート光学系40に向かって白色光が射出される。
【0032】
回転板31は、使用時において所定の回転数で回転する。ここで、所定の回転数とは、励起光の照射により蛍光発光素子30に蓄積される熱を放熱することが可能な回転数である。この所定の回転数は、励起光源10から射出される励起光の強度、回転板31の直径、回転板31の熱伝導率、などのデータに基づいて設定される。所定の回転数は、安全率等を考慮して設定される。所定の回転数は、蛍光体層32を変質させたり、回転板31を溶融させたりするような熱エネルギーが蓄積されないように、十分大きい値に設定される。
【0033】
本実施形態において、上記所定の回転数は、例えば、7500rpmに設定される。この場合において、回転板31の直径は50mmであり、蛍光体層32に入射する青色光の光軸が回転板31の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。すなわち、回転板31においては、青色光の照射スポットが約18m/秒の速度で回転軸の回りに円を描くように移動する。
【0034】
コリメート光学系40は、蛍光発光素子30と照明光学系100との間の光(励起光及び蛍光)の光路上に配置されている。コリメート光学系40は、蛍光発光素子30からの光の広がりを抑える第1レンズ41と、第1レンズ41から入射される光を平行化する第2レンズ42とを含んで構成されている。第1レンズ41は、例えば凸のメニスカスレンズからなり、第2レンズ42は、例えば凸レンズからなる。コリメート光学系40は、蛍光発光素子30からの光を略平行化した状態で照明光学系100に入射させる。
【0035】
照明光学系100は、光源装置1と色分離導光光学系200との間の光路上に配置されている。照明光学系100は、集光レンズ101、ロッドインテグレーター102、及び平行化レンズ103を備えている。
【0036】
集光レンズ101は、例えば凸レンズからなる。集光レンズ101は、コリメート光学系40から入射する光の光線軸上に配置され、この光を集光する。
【0037】
集光レンズ101を透過した光は、ロッドインテグレーター102の一端側に入射する。ロッドインテグレーター102は、光路方向に延在する角柱状の光学部材であり、内部を透過する光に多重反射を生じさせることにより、集光レンズ101を透過した光を混合し、輝度分布を均一化するものである。ロッドインテグレーター102の光路方向に直交する断面形状は、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
【0038】
ロッドインテグレーター102の他端側から射出された光は、平行化レンズ103により平行化され、照明光学系100から射出される。
【0039】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220、反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250及びリレーレンズ260を備えている。色分離導光光学系200は、照明光学系100からの光を赤色光R、緑色光G及び青色光Bに分離し、赤色光R、緑色光G及び青色光Bのそれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bに導光する機能を有する。
【0040】
ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を透過させる波長選択透過膜が形成されたミラーである。具体的には、ダイクロイックミラー210は、青色光成分を透過させ、赤色光成分及び緑色光成分を反射する。ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、赤色光成分を透過させる。
【0041】
反射ミラー230、反射ミラー240、反射ミラー250は、入射した光を反射するミラーである。具体的には、反射ミラー230は、ダイクロイックミラー210を透過した青色光成分を反射する。反射ミラー240、反射ミラー250は、ダイクロイックミラー220を透過した赤色光成分を反射する。
【0042】
ダイクロイックミラー210を透過した青色光は、反射ミラー230で反射され、青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー210で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー220でさらに反射され、緑色光用の液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー220を透過した赤色光は、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ260、射出側の反射ミラー250を経て赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。
【0043】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、通常知られたものを用いることができ、例えば、液晶素子410と液晶素子410を挟持する入射側偏光板420、射出側偏光板430とを有した、透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。入射側偏光板420、射出側偏光板430は、例えば透過軸が互いに直交する構成(クロスニコル配置)となっている。
【0044】
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bは、光源装置1からの照明光、すなわち入射された色光を画像信号供給部64から供給される画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、光源装置1の照明対象である。これら液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G及び液晶光変調装置400Bによって、入射された各色光の光変調が行われる。
【0045】
例えば、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400B各々は、一対の透明基板に液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に応じて、入射側偏光板420から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0046】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板430から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなしている。直角プリズムを貼り合せた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向に揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0047】
クロスダイクロイックプリズム500から射出された画像光は、投写光学系600によってスクリーンSCR上に拡大投写され、ユーザーの目にカラー画像として認識される。
【0048】
このように、本実施形態に係るプロジェクター1000においては、励起光源10から射出され、蛍光体層32を透過したレーザー光がスクリーンSCRに照射される。
【0049】
ところで、光源装置1が正常に動作している場合には、光源装置1から射出された青色のレーザー光の強度は、異常を発生させないような強度を保っている。しかしながら、光源装置1から射出された青色のレーザー光の強度が何らかの原因によって所定の強度(基準レベル)を超える場合が想定される。
【0050】
このような原因として、光源装置1に異常が発生している場合が考えられる。ここでは、光源装置1に発生する異常として、蛍光発光素子30に発生した欠陥を例にとって説明する。蛍光発光素子30に欠陥を生じさせる要因としては、例えば、蛍光体層32が変質或いは劣化することや、回転板31が破損することなどが想定される。
また、蛍光体層32の一部が異常に過熱され、蛍光体層32の一部が消失することも想定される。蛍光体層32の一部が欠落することも想定される。
【0051】
蛍光体層32に欠陥が生じた部分では励起光のうち蛍光に変換される成分が減少するため、蛍光体層32に欠陥が生じた部分から射出される蛍光が弱くなり、蛍光体層32に欠陥が生じた部分を透過する励起光の強度は強くなる。また、回転板31が破損すると、励起光源10から射出されたレーザー光が、蛍光体層32に吸収されることなく光源装置1から射出するため、光源装置1から射出されるレーザー光の強度が基準レベルを超える可能性がある。
【0052】
強度が基準レベルを超えたレーザー光がプロジェクター1000内において光源装置1から射出されてしまうと、プロジェクター1000の構成部品である液晶光変調装置400R,400G,400B、入射側偏光板420、および射出側偏光板430等が破損、あるいは変質することで所望の画像をスクリーンSCRに投影することが出来なくなってしまうおそれがある。
【0053】
そこで、本実施形態に係る光源装置1は、励起光源10から射出される励起光の強度(励起光強度)を検出する第1の検出部としての上記励起光強度検出部50と、蛍光体層32から射出される蛍光の強度(蛍光強度)を検出する第2の検出部としての上記蛍光強度検出部51と、励起光源10を制御する制御部としての制御部70と、を備える。これにより、光源装置1では、光源装置1自身の状態がモニターされている。
【0054】
図1に示すように、プロジェクター1000は、制御系として、制御部70と、光源駆動部71と、モーター駆動部72と、画像信号供給部64と、励起光強度検出部50と、蛍光強度検出部51と、表示部80と、を備える。
【0055】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と(いずれも図示を省略する。)を含んで実現される。CPUは、ROMに記憶された制御プログラムを読み出してRAMに展開しこのRAM上のプログラムのステップを実行する。このCPUによるプログラム実行によって、制御部70は、プロジェクター1000全体の動作を制御する。
【0056】
制御部70は、光源駆動部71を介して電力供給信号のON/OFFを切り替えることで励起光源10の駆動を制御する。制御部70は、制御プログラムの実行により、画像出力要求信号を画像信号供給部64に供給する。制御部70は、モーター駆動部72を介してモーター33を制御することで回転板31の回転動作を可能とする。
【0057】
励起光強度検出部50及び蛍光強度検出部51としては、例えばフォトダイオードが用いられる。励起光強度検出部50は、集光レンズ20により集光された励起光の光束の一部に配置されたハーフミラー53により反射された励起光の強度を検出する。蛍光強度検出部51は、蛍光体層32から射出され、コリメート光学系40には入射しない蛍光の一部である迷光の強度を検出する。なお、蛍光は、蛍光体層32に垂直な任意の面内において、蛍光体層32の面法線から+90°〜−90°の範囲に射出されることから、例えば、蛍光強度検出部51は蛍光体層32の面法線と85°の角をなす位置に配置される。なお、蛍光のみを透過させるフィルター52が蛍光強度検出部51の受光面に設けられており、蛍光強度検出部51は蛍光のみを受光する。
【0058】
励起光強度検出部50及び蛍光強度検出部51は、制御部70に電気的に接続されており、それぞれの検出結果が制御部70に送信されるようになっている。制御部70は、励起光強度検出部50で検出された励起光強度と、蛍光強度検出部51で検出された蛍光強度と、に基づいて、励起光源10の駆動を制御する。
【0059】
表示部80は、例えば、プロジェクター1000の筐体に設けられたディスプレイから構成されるものであり、プロジェクターに関する種々の情報を表示してユーザーに認識させるために用いられるものである。なお、表示部80は、画像を表示する形態のものに限定されることはなく、例えば、複数色を点灯可能なランプを用い、ランプの点灯色に基づいて所定の情報をユーザーに認識させる構成を採用してもよい。
【0060】
次に、プロジェクター1000の動作について、図面を参照にしながら説明する。
まず、制御部70はモーター33を所定の回転周期で駆動させるとともに、励起光源10に所定の初期駆動電力を供給する。これにより、励起光源10は所定の強度の励起光を射出する。所定の回転数で回転する蛍光発光素子30(回転板31)は、集光レンズ20によって集光された励起光(青色光)が照射されることで蛍光体層32が発した蛍光をコリメート光学系40に向けて射出する。
【0061】
このようにして光源装置1から射出された蛍光および蛍光体層32によって蛍光に変換されなかったレーザー光(励起光の一部)は、照明光学系100を介して色分離導光光学系200に入射し、赤色光R、緑色光G及び青色光Bに分離された後、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bへと導かれる。
【0062】
制御部70は、画像出力要求信号を画像信号供給部64に供給する。画像信号供給部64は、制御部70から供給される画像出力要求信号を取り込み、この画像出力要求信号に応じて、外部から供給される画像信号をフレーム同期信号に同期させて液晶光変調装置400R,400G,400Bにそれぞれ供給する。
これにより、プロジェクター1000は、スクリーンSCR上にカラー画像を拡大投写することができる。
【0063】
本実施形態において、制御部70は、光源装置1の駆動を開始するとともに、該光源装置1の状態のモニタリングを開始する。図3は、制御部70が行うモニタリング処理の手順を表すフローチャートである。
【0064】
光源装置1の駆動が開始されると、励起光強度検出部50及び蛍光強度検出部51による検出結果が制御部70へと送信される。制御部70は、励起光強度検出部50で検出された励起光強度と、蛍光強度検出部51で検出された蛍光強度とに基づき、蛍光及び励起光の状態についてモニタリング(監視)を開始する(ステップSS1参照)。
【0065】
図4は、モニタリング中に制御部70に出力される信号を説明するための図である。
制御部70は、図4に示すように、モニタリングにおいて、検出された励起光強度K1と励起光強度閾値(第1の閾値)S1とを比較するとともに、検出された蛍光強度K2と蛍光強度閾値(第2の閾値)S2とを比較する。ここで、励起光強度閾値S1は、例えば、工場出荷時における光源装置1の励起光源10が射出する励起光の強度に係数F1をかけた値である。励起光強度閾値S1は制御部70が有する図示略の記憶装置に記録されている。また、蛍光強度閾値S2は、例えば、工場出荷時における光源装置1が射出する蛍光の強度に係数F2をかけた値である。蛍光強度閾値S2は制御部70が有する図示略の記憶装置に記録されている。なお、係数F1は、0以上かつ1以下の範囲の値に適宜設定すればよい。また、係数F2は、例えば工場出荷時における励起光の強度に応じて、0以上かつ1以下の範囲の値に適宜設定すればよい。工場出荷時における励起光の強度が強いほど、係数F2を大きくすることが好ましい。本実施形態では、係数F1と係数F1とを、0より大きく1より小さい値に設定した。
【0066】
制御部70は、モニタリングにおいて、蛍光強度K2が蛍光強度閾値S2よりも弱いか否かを判定する(図3に示すステップSS2)。すなわち、制御部70は、光源装置1から蛍光が所定の光量で照射されているか否かを判定する。
【0067】
光源装置1から蛍光が所定の光量で照射されている場合、図4(a)に示すように、励起光強度K1及び蛍光強度K2は、それぞれ一定の出力値となる。一方、蛍光体層32に欠陥が生じた場合、図4(b)に示すように、蛍光強度K2の出力値が低下してゆき、蛍光強度閾値S2よりも光強度が弱くなることがある。
【0068】
制御部70は、上記ステップSS2において、蛍光強度K2が蛍光強度閾値S2よりも弱い(すなわち、光源装置1から所定の光量の蛍光が照射されていない)と判定したタイミングT1(図4(b)に示す状態)で、ステップSS3へと進む。
【0069】
制御部70は、ステップSS3において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1よりも弱いか否かを判定する。制御部70は、ステップSS3において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1以上であると判定した場合、蛍光体層32に発生した欠陥又は変質により、蛍光の出力低下が発生したものと判断する。そして、制御部70は、光源駆動部71を介して励起光源10に対して出力を停止する信号を供給する。これにより、励起光源10から蛍光体層32に射出される励起光が遮断される(図3に示すステップSS4)。また制御部70は、表示部80に励起光源10への電力供給を停止した旨のエラーメッセージを表示させる(図3に示すステップSS5)。
【0070】
欠陥又は変質が発生した蛍光体層32に励起光を照射し続けた場合、蛍光体層32が破損し、光源装置1から基準レベルを超える強度のレーザー光が射出されることとなる。この場合、基準レベルを超える強度のレーザー光が液晶光変調装置400R,400G,400Bに照射され続けるため、他の障害が引き起こされる虞がある。しかし、本発明によれば、他の障害が引き起こされる前に速やかに励起光を遮断することができる。
【0071】
制御部70は、上記ステップSS2において、蛍光強度K2が蛍光強度閾値S2以上である(すなわち、光源装置1から所定の光量の蛍光が射出されている)と判定した場合(図4(a)に示す状態)、ステップSS6へと進む。
【0072】
制御部70は、ステップSS6において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1よりも弱いか否かを判定する。制御部70は、ステップSS6において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1以上であると判定した場合、蛍光の出力及び励起光の出力に異常が生じていないものと判断し、ステップSS2へと戻る。
【0073】
一方、制御部70は、ステップSS6において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1よりも弱いと判定した場合、ステップSS7へと進む。所定光量の励起光が蛍光体層32に照射されていないにもかかわらず、所定光量の蛍光が射出されることはあり得ないため、制御部70は、ステップSS7において、励起光強度検出部50が故障等の要因により異常となったと判定する。そして制御部70は、光源装置1の制御方法を、励起光強度検出部50による検出結果を無視して、蛍光強度検出部51による検出結果に基づいて光源装置1の駆動を制御する制御方法へと切り替える。
【0074】
これによれば、制御部70は、励起光源10から所定光量の励起光が照射可能であるにもかかわらず、励起光強度検出部50の故障により光源装置1全体の駆動が停止されてしまうのを防止することができる。よって、所定光量の蛍光を射出することができる光源装置1の駆動が励起光強度検出部50の故障により制約されてしまうといった不具合の発生を防止できる。
【0075】
また、制御部70は、ステップSS3において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1よりも弱いと判定した場合、ステップSS8へと進む。
【0076】
励起光強度K1が励起光強度閾値S1よりも弱いことの原因として、例えば、励起光源10に生じた何らかの故障や、励起光源10の経時的な劣化が想定される。そこで、制御部70は、ステップSS8において、励起光源10の故障の有無について検査する。制御部70は、例えば、光源駆動部71を介して励起光源10にON信号とOFF信号を順次入力する。制御部70は、励起光源10のON/OFFの切り替えに伴って、励起光強度検出部50による検出結果及び蛍光強度検出部51による検出結果が変化するか否かを判定する。
【0077】
制御部70は、励起光源10のON/OFFの切り替えに連動して蛍光強度検出部51による検出結果が変化しない場合、励起光源10に故障が生じているものと判断する。
【0078】
一方、制御部70は、励起光源10のON/OFFの切り替えに連動して蛍光強度検出部51による検出結果が変化した場合、励起光源10に故障が生じておらず、励起光源10が経時的に劣化しているものと判断する。
励起光源10に故障が生じていない場合、励起光強度K1が低下しているが、励起光源10は制御可能な状態である。制御部70は、光源駆動部71を介して励起光源10に対して、初期駆動電力よりも大きい電力を供給するステップSS9へと進む。制御部70は、ステップSS9において、励起光源10をオーバードライブ状態で駆動させた後、ステップSS2へと戻る。これによれば、低下した蛍光強度K2を増加させ、蛍光強度K2を所望の強度に保つことができる。
【0079】
一方、制御部70は、ステップSS8において、励起光源10に故障が生じた場合(YESの場合)、蛍光の出力低下が励起光源10の故障によるものであると判定する。この場合、制御部70は、光源駆動部71を介して励起光源10に対して出力を停止する信号を供給して励起光源10の駆動を停止する(図3に示すステップSS10)。また制御部70は、表示部80に励起光源10が故障したことで電力供給を停止した旨のエラーメッセージを表示させる(図3に示すステップSS11)。
【0080】
以上のように本実施形態の光源装置1では、制御部70は励起光強度K1及び蛍光強度K2に基づいて励起光源10の駆動を制御する。これにより、光源装置1に異常が発生した場合でも、蛍光強度K2の低下の度合いを小さくすることができる。また、光源装置1に重大な異常が発生した場合、さらに他の障害を引き起こす前に励起光源10の駆動を速やかに停止させることができる。
【0081】
光源装置1は励起光強度検出部50と蛍光強度検出部51とを備えているため、制御部70は、励起光を射出する励起光源10の状態と蛍光体層32の状態を判断できる。そのため、蛍光強度の低下を引き起こす異常状態は幾つか考えられるが、励起光源10の状態と蛍光体層32の状態に応じて制御部70は適切な処置を選択することができる。例えば、制御部70は発生した異常状態に応じて励起光源10の制御方法を選択できるため、異常状態に応じた適切な制御方法によって光源を駆動することができる。
また、制御部は、前記光源の故障の有無を検査する機能を有しているため、光源の状態と蛍光体層の状態に応じた適切な駆動方法によって光源を駆動することができる。たとえば、制御部70は発生した異常状態に応じて励起光源10をオーバードライブ法によって駆動することができる。これにより、安定した蛍光強度を得ることができる。従って、光源装置1の信頼性を高めることができる。
【0082】
また、光源装置1を備えるがプロジェクター1000においては、液晶光変調装置400R,400G,400B、入射側偏光板420、および射出側偏光板430等が破損、あるいは変質するという他の障害の発生を防止することができる。またその結果、所望の画像をスクリーンSCRに投影することが出来なくなるといった不具合の発生を防止できる。従って、プロジェクター1000の信頼性を高めることができる。
【0083】
また、本実施形態のプロジェクター1000は、励起光強度K1及び蛍光強度K2の検出結果に基づいて、エラーメッセージを表示する表示部80を備えるので、ユーザーにプロジェクター1000で起こっている異常状態を容易に認識させることができる。
【0084】
なお、本実施形態においては、モニタリング中に制御部70に出力される信号として、蛍光強度K2が時間の経過に伴って漸次低下していく場合を例に挙げたが、これに限定されることは無い。すなわち、上記説明においては、蛍光体層32の全体において蛍光強度K2が均一に低下する場合を例に挙げた。しかしながら、蛍光体層32においては、欠陥が一部に生じることもあり、欠陥が生じた部分のみで蛍光強度K2が低下することが想定される。
【0085】
このような場合、励起光が蛍光体層32の欠陥位置に照射されると、蛍光強度K2が低下するものの、蛍光体層32は回転しているため、すぐに欠陥が生じていない部分に励起光が照射され、蛍光強度K2が元に戻る。
【0086】
ここで、蛍光体層32は、周期的な回転運動を行っているため、励起光が欠陥位置に照射されるタイミングは回転運動の周期に一致する。そのため、図5に示すように、回転運動の周期に応じて、蛍光強度K2が低下した低出力部K2a,K2b,K2c,K2dが周期的に発生する。
【0087】
このような低出力部K2a,K2b,K2c,K2dは、励起光が周期的に照射され続けることで、経時的に、蛍光強度K2の低下の度合いがこの順に大きくなる。
【0088】
このように周期的に蛍光の出力低下が生じる場合においても、制御部70はモニタリングにより、蛍光強度K2が蛍光強度閾値S2よりも弱いか否かを判定する。制御部70は、低出力部K2dの蛍光強度K2が蛍光強度閾値S2を下回ったタイミングT2で上記ステップSS3へと進み、上記実施形態と同様のフローに基づいたモニタリング動作を行う。
【0089】
このように本実施形態に係るプロジェクター1000によれば、蛍光体層32の一部に欠陥が生じることで、蛍光強度K2に周期的な低出力部が生じた場合であっても、制御部70によるモニタリングにより励起光源10の駆動を良好に制御することができる。
【0090】
また、このように蛍光強度K2に周期的に低出力部が生じた場合において、低出力部が生じるタイミングに同期させて、制御部70が励起光源10の出力を停止するように制御してもよい。
【0091】
この場合、制御部70は、例えば、モーター駆動部72から供給される回転板31(蛍光体層32)の位置情報、光源駆動部71から供給される発光タイミング信号、及び蛍光強度K2において低出力部が生じる周期(タイミング)等に基づき、励起光源10の駆動を制御すればよい。これによれば、低出力部が生じるタイミングに同期して励起光源10の出力が停止されるので、蛍光体層32に生じた欠陥部分に励起光が照射されるのを防止することができる。これによれば、蛍光体層32に生じている欠陥の度合いが進行する(低出力部K2aが低出力部K2b、低出力部K2c、低出力部K2dへと順に進行する)のを抑制することができ、蛍光体層32の寿命を延ばすことができる。
【0092】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は第2実施形態に係るプロジェクター1000Aの構成を示す模式図である。
本実施形態において、第一実施形態のプロジェクター1000と共通する構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0093】
プロジェクター1000Aは、図6に示すように、光源装置1Aと、照明光学系100と、色分離導光光学系200と、光変調装置としての液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学系600と、励起光強度検出部50と、蛍光強度検出部51と、制御部70と、表示部80と、を具備して構成されている。
【0094】
本実施形態において、上記第一実施形態との違いは、光源装置1Aの構成である。第一実施形態に係る光源装置1は、蛍光発光素子30として、所謂、透過型の回転蛍光板を用いる方式を採用したが、本実施形態に係る光源装置1Aは、蛍光発光素子30として、所謂、反射型の回転蛍光板を用いている。以下の説明では、光源装置1Aの構成の違いを主体に説明する。
【0095】
本実施形態において、励起光源10から射出された励起光は、集光レンズ22aとコリメートレンズ22bで一旦光束が細められる。その後、ダイクロイックミラー26にて90度光路が折り曲げられ、ピックアップ光学系25で回転板31の蛍光体層32上に集光される。
【0096】
本実施形態において、回転板31は、例えば、アルミニウム基板等の金属基板で形成されている。回転板31の蛍光体層32が形成される面は、蛍光体層32から射出された蛍光を反射する反射面となっている。回転板31は、励起光源10から射出された励起光が回転板31とは反対側から蛍光体層32に入射するように、蛍光体層32が形成された面を励起光が入射する側に向けて設けられている。
【0097】
ピックアップ光学系25は、単一または複数のレンズ、例えば、第1レンズ25aと第2レンズ25bとを備えており、励起光源10から射出された励起光を蛍光体層32上に集光するとともに、蛍光体層32から射出された蛍光を略平行化する。
【0098】
ダイクロイックミラー26は、励起光源10から射出された励起光を反射し、蛍光体層32から射出された蛍光を透過する波長選択透過反射部材である。蛍光体層32から射出された蛍光は、ピックアップ光学系25によって略平行化され、ダイクロイックミラー26によって残留励起光が除去された後、照明光学系100を通過する。
【0099】
本実施形態では、反射型の回転蛍光板を用いるため、照明光学系100に向かって赤色光R、緑色光Gを含んだ光が射出される。そのため、青色用光源装置110から射出した青色光Bを液晶光変調装置400Bに入射させるようにしている。青色用光源装置110は、光源110aと、ロッドインテグレーター110bと、コリメートレンズ110cと、を備えている。
【0100】
光源110aとしては、例えば、青色光を射出する発光ダイオード(Light Emitting Diode; LED)が用いられる。光源110aから射出された青色光は、ロッドインテグレーター110bによって輝度が均一化された後、コリメートレンズ110cで略平行化され、液晶光変調装置400Bに入射する。
【0101】
本実施形態において、励起光強度検出部50は、集光レンズ22aにより集光された励起光の光束の一部に配置されたハーフミラー54により反射された励起光の強度を検出する。また、蛍光強度検出部51は、ダイクロイックミラー26を透過して射出された蛍光の光束の一部に配置されたハーフミラー55により反射された蛍光の強度を検出する。
【0102】
本実施形態においても、励起光強度検出部50及び蛍光強度検出部51は、それぞれの検出結果を制御部70に送信するようになっており、制御部70は、検出された励起光強度及び蛍光強度に基づいて、励起光源10の駆動を制御する。
【0103】
このような構成に基づき、本実施形態に係るプロジェクター1000Aは、上記第一実施形態と同様、蛍光及び励起光の状態について上述のフローに基づいたモニタリング(監視)を行う。
【0104】
本実施形態においても、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0105】
以上、発明の一実施形態について説明したが、発明の内容は上記実施形態に限定されることはなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、ステップSS3において、励起光強度K1が励起光強度閾値S1以上であると判定した場合、励起光源10の出力をOFFすることで励起光源10から蛍光体層32に射出される励起光を遮断する場合を例に挙げたが、開閉可能なシャッターを閉じることで励起光源10から射出される励起光を遮断する構成としても良い。
【0106】
また、上記実施形態の光源装置1,1Aでは、蛍光体層が形成された基板を回転軸Oの周りに回転させたが、これに限らない。例えば、蛍光体層が形成された基板を、励起光が入射する方向に対して交差する方向に振動させてもよい。蛍光体層の過熱による不具合の発生を防止するためには、上記のように、蛍光体層が形成された基板を励起光が入射する方向に対して交差する方向に移動可能に構成することが好ましい。しかし、必ずしも蛍光体層が形成された基板を移動可能に構成する必要はない。
【0107】
また、上記実施形態のプロジェクター1000、1000Aでは、液晶光変調装置として3つの液晶光変調装置を用いたが、これに限らない。1つ、2つ又は4つ以上の液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。液晶光変調装置の数に関わらず、蛍光体層32を透過した励起光が入射される液晶光変調装置の遮光状態を解除するか否かを蛍光強度検出部51による検出結果に基づいて判断することにより、高出力の光がスクリーンSCRに投影されることを抑制し安全性を確保することが可能となる。
【0108】
また、上記実施形態のプロジェクター1000、1000Aでは、透過型のプロジェクターを用いたが、これに限らない。例えば、反射型のプロジェクターを用いてもよい。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味している。「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0109】
1、1A…光源装置、10…励起光源、32…蛍光体層、50…励起光強度検出部(第1の検出部)、51…蛍光強度検出部(第2の検出部)、70…制御部、80…表示部、K1…励起光強度、K2…蛍光強度、S1…励起光強度閾値(第1の閾値)、S2…蛍光強度閾値(第2の閾値)、400B…液晶光変調装置、400G…液晶光変調装置、400R…液晶光変調装置、600…投写光学系、1000、1000A…プロジェクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6