特許第6229317号(P6229317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229317
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】無人搬送車の駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20171106BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20171106BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20171106BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20171106BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20171106BHJP
   B60L 11/12 20060101ALI20171106BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20171106BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B60W20/14
   B60W10/08 900
   B60K6/24ZHV
   B60K6/46
   B60K6/26
   B60L11/12
   B60L15/20 J
   B60L7/14
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-116985(P2013-116985)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-234081(P2014-234081A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】港 智史
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−153938(JP,A)
【文献】 特開2009−029388(JP,A)
【文献】 特開2003−116203(JP,A)
【文献】 特開2012−146252(JP,A)
【文献】 特開2010−064679(JP,A)
【文献】 特開平07−131905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、前記エンジンの駆動力で発電可能なものであって且つ電力が供給された場合には前記エンジンを駆動させる第1発電電動機、走行に用いられるものであって回生電力を発生可能な第2発電電動機、及び前記第1発電電動機及び前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る前記回生電力により充電可能な蓄電装置を有する無人搬送車の駆動システムであって、
前記エンジン又は前記第1発電電動機の回転数を制御する回転制御部と、
前記無人搬送車の積載重量を把握する重量把握部と、
前記無人搬送車の基準走行パターンを把握する基準走行パターン把握部と、
前記積載重量及び前記基準走行パターンに基づいて、前記基準走行パターンの減速開始タイミングである基準タイミングにおける前記回生電力の電力値を推定する推定部と、
前記推定部により、前記基準タイミングにおける前記回生電力の電力値が前記蓄電装置の許容電力値よりも高くなることが推定された場合に、前記基準タイミングよりも前のタイミングにて、前記許容電力値よりも低い電力値の前記回生電力が生じる減速度で減速が開始されるよう、前記無人搬送車の走行パターンを変更する走行パターン変更部と、を備え、
前記回転制御部は、前記減速が開始されたことに基づいて、前記エンジン又は前記第1発電電動機の回転数を上昇させるものであり、
前記走行パターン変更部は、前記基準タイミングよりも前の第1タイミングにて、前記許容電力値よりも低い電力値の前記回生電力が生じる第1減速度で減速が開始され、前記基準タイミングよりも後の第2タイミングにて、前記第1減速度よりも高い第2減速度で減速が行われ、前記第2タイミングよりも後の第3タイミングにて、前記無人搬送車の走行速度が前記基準走行パターンにて設定されている基準速度と一致し、且つ、前記基準走行パターンにて設定されている基準減速度で減速が行われるよう、前記走行パターンを変更するものであり、
更に前記走行パターン変更部は、前記第1タイミングから前記第3タイミングまでの前記無人搬送車の走行距離が、前記基準走行パターンにて設定されている前記無人搬送車の走行距離と一致するよう前記走行パターンを変更することを特徴とする無人搬送車の駆動システム。
【請求項2】
前記基準タイミングをt0、前記第2タイミングをtp2、前記第3タイミングをtp3とすると、
tp3−tp2=tp2−t0である請求項に記載の無人搬送車の駆動システム。
【請求項3】
前記走行パターン変更部は、前記走行パターンを変更する場合に、前記無人搬送車の走行速度と、前記基準走行パターンにおける前記無人搬送車の走行速度とのずれが予め定められた許容範囲内になるようにする請求項1又は請求項2に記載の無人搬送車の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車の駆動システムに関するものであって、特にハイブリッド型の無人搬送車の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有人のハイブリッド車両においては、減速によって生じ得る回生電力を用いて、当該ハイブリッド車両に搭載されている蓄電装置の充電を行うことが知られている。また、例えば、特許文献1には、キャパシタとバッテリとを有し、キャパシタに優先的に回生電力が供給されるようキャパシタの電圧を制御する建設機械及び産業車両について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2010/114036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、作業者が運転を行うことなく予め定められた走行経路を走行する無人搬送車(AGV)を、優れた環境性と経済性から、エンジンと、エンジンの駆動力で発電する発電電動機と、発電電動機に電力を供給可能であるとともに発電電動機にて発生する回生電力により充電可能な蓄電装置とを有するハイブリッドにすることに着目した。この場合、無人搬送車には、有人のハイブリッド車両とは異なり、走行パターンが予め定められているとともに積載重量の変動幅が広いといった特性がある。そして、このような特性は、蓄電装置の劣化に影響を与える場合がある。
【0005】
例えば、大型の無人搬送車においては、積載時と非積載時とで車両重量が3〜4倍程度異なる場合がある。このため、回生電力値の変動幅が広くなり易い。すると、積載重量によっては過度に高い電力値の回生電力が発生し、その結果、蓄電装置の電力値が許容電力値を超えてしまい、蓄電装置が劣化するといった不都合が発生し得る。かといって、上記のような広い変動幅に対応するべく、電池容量の大きな蓄電装置を用いることは、コストや大型化の観点から好ましくない。また、特許文献1のように、キャパシタを別途設けることは、構成の複雑化、部品点数の増加、及び大型化等の観点から好ましくない。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、蓄電装置の劣化を好適に抑制できる無人搬送車の駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する無人搬送車の駆動システムは、エンジン、前記エンジンの駆動力で発電可能なものであって且つ電力が供給された場合には前記エンジンを駆動させる第1発電電動機、走行に用いられるものであって回生電力を発生可能な第2発電電動機、及び前記第1発電電動機及び前記第2発電電動機に電力を供給可能であるとともに前記第2発電電動機にて発生し得る前記回生電力により充電可能な蓄電装置を有する無人搬送車の駆動システムであって、前記エンジン又は前記第1発電電動機の回転数を制御する回転制御部と、前記無人搬送車の積載重量を把握する重量把握部と、前記無人搬送車の基準走行パターンを把握する基準走行パターン把握部と、前記積載重量及び前記基準走行パターンに基づいて、前記基準走行パターンの減速開始タイミングである基準タイミングにおける前記回生電力の電力値を推定する推定部と、前記推定部により、前記基準タイミングにおける前記回生電力の電力値が前記蓄電装置の許容電力値よりも高くなることが推定された場合に、前記基準タイミングよりも前のタイミングにて、前記許容電力値よりも低い電力値の前記回生電力が生じる減速度で減速が開始されるよう、前記無人搬送車の走行パターンを変更する走行パターン変更部と、を備え、前記回転制御部は、前記減速が開始されたことに基づいて、前記エンジン又は前記第1発電電動機の回転数を上昇させるものであり、前記走行パターン変更部は、前記基準タイミングよりも前の第1タイミングにて、前記許容電力値よりも低い電力値の前記回生電力が生じる第1減速度で減速が開始され、前記基準タイミングよりも後の第2タイミングにて、前記第1減速度よりも高い第2減速度で減速が行われ、前記第2タイミングよりも後の第3タイミングにて、前記無人搬送車の走行速度が前記基準走行パターンにて設定されている基準速度と一致し、且つ、前記基準走行パターンにて設定されている基準減速度で減速が行われるよう、前記走行パターンを変更するものであり、更に前記走行パターン変更部は、前記第1タイミングから前記第3タイミングまでの前記無人搬送車の走行距離が、前記基準走行パターンにて設定されている前記無人搬送車の走行距離と一致するよう前記走行パターンを変更することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、基準タイミングにおける回生電力の電力値が蓄電装置の許容電力値よりも高くなることが推定された場合には、許容電力値よりも低い電力値の回生電力が生じる減速度で無人搬送車が減速するよう走行パターンが変更される。これにより、蓄電装置の電力値が許容電力値を超えないようになっている。よって、仮に第1発電電動機が、回生電力を受け入れることができない場合であっても、蓄電装置の電力値が許容電力値を超えることを抑制できる。
【0009】
また、減速が開始されたことに基づいて、エンジン又は第1発電電動機の回転数が上昇する。これにより、第1発電電動機が受入可能な電力値が高くなる。よって、減速開始タイミング以降に、許容電力値よりも高い電力値の回生電力が発生した場合には、第1発電電動機に回生電力を供給することを通じて、蓄電装置の電力値が許容電力値を超えることを抑制できる。以上のことから、蓄電装置の劣化を抑制できる。
特に、本構成によれば、基準走行パターンで走行した場合と、変更された走行パターンで走行した場合とで、無人搬送車の走行距離が変化しないようになっている。これにより、走行パターンの変更に起因して走行距離が変動することを抑制でき、それを通じて、走行パターンの変更に起因する無人搬送車の運行への支障を回避することができる。
【0010】
なお、「前記エンジン又は前記第1発電電動機の回転数を上昇させる」とは、エンジン又は第1発電電動機が停止している状態から始動させる態様を含む。つまり、エンジン又は第1発電電動機の回転数が「0」の状態から上昇する態様を含む。
【0012】
上記無人搬送車の駆動システムについて、前記基準タイミングをt0、前記第2タイミングをtp2、前記第3タイミングをtp3とすると、tp3−tp2=tp2−t0
であるとよい。かかる構成によれば、tp3−tp2=tp2−t0の条件式を設定することにより、各種パラメータの設定の容易化を図ることができる。
【0013】
上記無人搬送車の駆動システムについて、前記走行パターン変更部は、前記走行パターンを変更する場合に、前記無人搬送車の走行速度と、前記基準走行パターンにおける前記無人搬送車の走行速度とのずれが予め定められた許容範囲内になるようにするとよい。かかる構成によれば、基準走行パターンで走行する場合と、変更された走行パターンで走行する場合とで、無人搬送車の走行速度のずれが許容範囲内に収まっている。これにより、無人搬送車の走行速度が、基準走行パターンにて設定された走行速度から大きく外れることを抑制できる。また、例えば、走行速度のずれに基づいて、無人搬送車の走行に異常がないか否かを確認する構成においては、走行パターンの変更に起因して、無人搬送車の走行に異常があると誤認されることを回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、蓄電装置の劣化を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コンテナターミナルの全体像を示す模式図。
図2】無人搬送車の駆動システムを示す概念図。
図3】無人搬送車の構成を示すブロック図。
図4】回生電力の流れを示す概念図。
図5】車載コンピュータにて実行される減速対応処理を示すフローチャート。
図6】(a)は無人搬送車の走行速度の変化を示すグラフであり、(b)は走行モータの電力変化を示すグラフであり、(c)はエンジン又はエンジン発電機の回転数変化を示すグラフであり、(d)はエンジン発電機の電力変化を示すグラフであり、(e)は蓄電装置の電力変化を示すグラフであり、(f)は(a)の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、無人搬送車の駆動システムを港湾のコンテナターミナルに適用した一実施形態について説明する。
まず、コンテナターミナルの全体像について説明する。図1に示すように、コンテナターミナルには、コンテナ船S付近に配置され、コンテナの積み降ろしを行うガントリークレーンC1と、コンテナヤードに配置され、コンテナの積み降ろしを行うラバータイヤクレーンC2とが設けられている。
【0017】
また、コンテナターミナルにおいては、無人搬送車(AGV)11が誘導ライン等の誘導部によって規定された走行経路Rを予め定められた方向(例えば反時計回り)で周回する。走行経路Rはループ状であり、複数のコーナRrを備えている。なお、本実施形態では、走行経路Rは傾斜がなく平坦であるとする。
【0018】
無人搬送車11は、コンテナを積載可能に構成されており、コンテナ船S付近及びコンテナヤード間のコンテナの搬送を行う。例えば、ガントリークレーンC1にてコンテナが無人搬送車11に積まれた場合には、無人搬送車11はそのコンテナをコンテナヤードに搬送する。そして、無人搬送車11がコンテナヤードに到着すると、そのコンテナはラバータイヤクレーンC2にて降ろされる。コンテナが降ろされた後は、無人搬送車11は再度ガントリークレーンC1に向けて走行する。
【0019】
走行経路Rには、無人搬送車11の減速が行われる減速区間Raが設けられている。減速区間Raは、走行経路RのコーナRrよりも進行方向の手前側にある。無人搬送車11は、減速区間Raにて減速された状態でコーナRrに進入する。また、走行経路RにおけるコーナRrよりも進行方向の先側には、無人搬送車11の加速が行われる加速区間Rbが設けられている。
【0020】
次に、上記のように周回する無人搬送車11の駆動システム10について説明する。図2に示すように、無人搬送車11の駆動システム10は、無人搬送車11に搭載された車載コンピュータ21と、当該車載コンピュータ21と無線通信可能な運行管理コンピュータ22とを備えている。運行管理コンピュータ22は、車載コンピュータ21に各種指令を送信することにより、無人搬送車11の走行を制御する。また、運行管理コンピュータ22は、ガントリークレーンC1及びラバータイヤクレーンC2の駆動制御を行う。
【0021】
次に、無人搬送車11の具体的な構成について説明する。本実施形態の無人搬送車11は、所謂シリーズ方式のハイブリッド車両である。詳細には、図3に示すように、無人搬送車11は、エンジン31と、そのエンジン31の駆動力によって発電可能な第1発電電動機(第1モータジェネレータ)としてのエンジン発電機32と、エンジン発電機32に接続された発電インバータ33とを備えている。さらに、無人搬送車11は、発電インバータ33に接続された蓄電装置34と、蓄電装置34及び発電インバータ33に接続された走行インバータ35と、走行インバータ35に接続された第2発電電動機(第2モータジェネレータ)としての走行モータ36とを備えている。各インバータ33,35は、直流電力が入力された場合には交流電力に変換して出力し、交流電力が入力された場合には直流電力に変換して出力する。
【0022】
エンジン発電機32は、そのロータがエンジン31の駆動軸に連結されており、エンジン31の駆動軸の回転にともなってロータが回転することにより、交流電力を発生させる。一方、エンジン発電機32は、交流電力が入力された場合、エンジン31を回転させることで、負荷として動作することも可能である。
【0023】
ここで、エンジン31の回転数とエンジン発電機32の回転数とは相関しており、詳細には両者の回転数は同一となっている。例えば、エンジン31の回転数が上昇すれば、エンジン発電機32の回転数も上昇する。
【0024】
走行モータ36は、走行に用いられるものである。詳細には、走行モータ36は、無人搬送車11のタイヤTに接続されており、走行インバータ35を介して、発電インバータ33(エンジン発電機32)及び蓄電装置34の少なくとも一方から電力が入力された場合には、タイヤTを回転させる。また、走行モータ36は、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能を有しており、無人搬送車11の減速時において発電する。
【0025】
蓄電装置34は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池で構成され、発電インバータ33を介してエンジン発電機32に電力を供給可能であるとともに、走行インバータ35を介して走行モータ36に電力を供給可能である。また、蓄電装置34は、エンジン発電機32又は走行モータ36にて発電された電力がインバータ33,35を介して入力されることにより充電される。
【0026】
図3に示すように、無人搬送車11は、蓄電装置34の電力値を測定するとともに、その測定結果を車載コンピュータ21に送信する電力値把握部としての電力値センサ37を備えている。さらに、無人搬送車11は、当該無人搬送車11の積載重量(荷重)を測定するとともに、その測定結果を車載コンピュータ21に送信する重量把握部としての荷重センサ38と、エンジン31の回転数を測定し、その測定結果を車載コンピュータ21に送信する回転数センサ39とを備えている。これにより、車載コンピュータ21は、蓄電装置34の電力値、積載重量及びエンジン31(エンジン発電機32)の回転数を把握可能となっている。
【0027】
車載コンピュータ21は、蓄電装置34の充放電を制御することにより、無人搬送車11の加減速を好適に行う。例えば、加速時には、車載コンピュータ21は、エンジン31の駆動によってエンジン発電機32にて発電し、その発電された電力を走行モータ36に供給するとともに、蓄電装置34の放電を行いその放電電力を走行モータ36に供給する。一方、減速時には、車載コンピュータ21は、走行モータ36にて発生した回生電力の一部又は全部を蓄電装置34に供給させて蓄電装置34の充電を行う。
【0028】
車載コンピュータ21は、エンジン31及びエンジン発電機32の双方の回転数を制御することが可能となっている。この場合、車載コンピュータ21は、エンジン31の回転数を制御する場合には燃料噴射量の制御等を行い、エンジン発電機32の回転数を制御する場合には蓄電装置34の電力の制御を行う。
【0029】
ここで、図4に示すように、走行モータ36にて発生した回生電力は、エンジン発電機32及び蓄電装置34に分配されて供給される(Pm=Pb+Pg)。この場合、回生電力値Pmの分配比は、エンジン発電機32及びエンジン31の回転数に依存する。エンジン発電機32及びエンジン31の回転数が高くなるほど、エンジン発電機32が受入可能な電力値が高くなる。
【0030】
エンジン31及びエンジン発電機32に供給された回生電力は、エンジン31の摩擦エネルギと、エンジン31及びエンジン発電機32の回転慣性エネルギとに変換される。この回転慣性エネルギは、回生電力の発生が終了した場合に、再度電力に変換可能である。
【0031】
運行管理コンピュータ22は、無人搬送車11を走行させる場合、走行指令とともに、無人搬送車11の加減速のパターンが設定された基準走行パターンを車載コンピュータ21に送信する。車載コンピュータ21は、運行管理コンピュータ22から上記走行指令及び基準走行パターンを受信した場合には、受信した基準走行パターンに従って無人搬送車11を走行させる。この場合、通常は、無人搬送車11のエンジン31の回転数は、燃費等を考慮して、基準走行パターンに対応させて設定されている。
【0032】
基準走行パターンには、走行経路Rを走行する無人搬送車11の走行距離、走行速度及び加速度等が設定されており、無人搬送車11は加減速を繰り返しながら走行するように設定されている。詳細には、既に説明した通り、走行経路R中、コーナRrよりも進行方向の手前側には減速区間Raが設けられており、コーナRrよりも進行方向の先側には加速区間Rbが設けられている。このため、コーナRrの走行速度は、直線の走行速度よりも低くなる。そして、車載コンピュータ21は、基準走行パターンを把握することを通じて、無人搬送車11が加速区間Rb及び減速区間Raに到達するよりも前のタイミングにて加速区間Rb及び減速区間Raを把握することができる。
【0033】
ちなみに、無人搬送車11は、定期的に走行速度等を運行管理コンピュータ22に対して送信している。運行管理コンピュータ22は、無人搬送車11から受信する無人搬送車11の走行速度等の情報に基づいて、無人搬送車11が基準走行パターン通りに走行しているか否かを確認する。例えば運行管理コンピュータ22は、実際の無人搬送車11の走行速度と、基準走行パターンにて設定されている走行速度とのずれが予め定められた許容範囲外となっている場合には、無人搬送車11の走行に異常があるとして各種確認処理等を行う。
【0034】
ここで、蓄電装置34の劣化に起因するパラメータとして、蓄電装置34の電力値(電流値)がある。詳細には、蓄電装置34は、蓄電装置34の電力値が予め定められた許容電力値Padjを超えた状態が続いた場合、劣化し得る。
【0035】
無人搬送車11の駆動システム10は、減速時に発生する回生電力に起因する蓄電装置34の劣化を抑制するべく、エンジン31の回転数及び走行パターンを制御する減速対応処理を実行する。減速対応処理は、無人搬送車11が減速区間Raに到達する前、例えば無人搬送車11が減速区間Raに到達するタイミングよりも所定時間(例えば10秒)前に開始される処理である。
【0036】
ちなみに、無人搬送車11は、ガントリークレーンC1又はラバータイヤクレーンC2周辺にて停車及び発進を行う区間を除いて、加速区間Rbと減速区間Raとの間の直線区間では、定速走行を行う。この場合、エンジン31及びエンジン発電機32は回転が停止している状態(アイドリングストップ状態)であり、無人搬送車11は、蓄電装置34の電力によって走行している。つまり、本実施形態では、少なくとも減速対応処理の実行タイミングから減速開始タイミングまでは、無人搬送車11はアイドリングストップ状態で蓄電装置34の電力を用いて定速走行しているものとする。なお、車載コンピュータ21は、回転数センサ39の測定結果によりエンジン31の回転数が「0」であることに基づいて、アイドリングストップ状態であることを把握する。また、以降の説明において、アイドリングストップ状態で蓄電装置34の電力を用いて走行している無人搬送車11の走行態様をEV走行という。
【0037】
図5に示すように、減速対応処理では、まずステップS101にて、荷重センサ38により無人搬送車11の積載重量を把握する。その後、ステップS102にて基準走行パターンを把握して、基準走行パターンにて設定されている減速区間Raの減速度等を把握する。当該処理が、基準走行パターン把握部に対応する。
【0038】
ステップS103では、上記ステップS101及びステップS102にて把握された積載重量及び基準走行パターンに基づいて、基準走行パターンにて設定されている減速開始タイミング(以降、基準タイミングt0という)における回生電力値Pmである基準回生電力値Pm0を推定する。ステップS103の処理が推定部に対応する。
【0039】
続くステップS104では、基準回生電力値Pm0が、予め定められた許容電力値Padjよりも高いか否かを判定する。
基準回生電力値Pm0が許容電力値Padj以下である場合、基準回生電力値Pm0の回生電力を全て蓄電装置34に供給しても、蓄電装置34の電力値が許容電力値Padj以下となることを意味する。この場合、走行パターンを変更することなく、基準走行パターンに基づいて無人搬送車11の減速を行う。詳細には、まずステップS105にて、基準タイミングt0となるまでEV走行を継続する。基準タイミングt0となった場合には、ステップS106に進み、基準減速度a0で減速を開始する。なお、減速度とは、減速加速度を意味する。
【0040】
一方、基準回生電力値Pm0が許容電力値Padjよりも高い場合には、ステップS107〜ステップS117にて、走行パターンを基準走行パターンから変更し、その変更された走行パターンで無人搬送車11を走行させるとともに、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数制御を行う。
【0041】
変更される走行パターンの概要について説明すると、図6(f)に示すように、まず基準タイミングt0よりも前の第1タイミングtp1にて第1減速度a1で減速を開始し、その後基準タイミングt0よりも後の第2タイミングtp2にて、減速度を、第1減速度a1から第2減速度a2に変更する。そして、第2タイミングtp2よりも後の第3タイミングtp3にて、減速度を、第2減速度a2から基準減速度a0に変更する。
【0042】
以下、これらの各パラメータの設定等、詳細に説明する。ここで、走行パターンが変更された無人搬送車11の走行速度を変更速度Vx(t)(又は単にVx(t))と、基準走行パターンにて設定されている無人搬送車11の走行速度を基準速度V0(t)(又は単にV0(t))という。
【0043】
ちなみに、各種パラメータの設定を容易に決定するべく、第2タイミングtp2及び第3タイミングtp3間の時間であって第2減速度a2で減速する第2減速時間は、第2タイミングtp2から基準タイミングt0を差し引いた時間と同一時間であるとする(tp3−tp2=tp2−t0)。また、基準速度V0(tp3)と変更速度Vx(tp3)とは同一であるとする。なお、念のため説明すると、基準速度V0(tp3)及び変更速度Vx(tp3)は、第3タイミングtp3における基準速度V0(t)及び変更速度Vx(t)である。
【0044】
まず、図5に示すように、ステップS107にて、第1減速度a1を導出する。第1減速度a1は、回生電力値Pmが蓄電装置34の許容電力値Padjよりも低くなるよう設定されている。詳細には、第1減速度a1にて減速を開始する第1タイミングtp1にて発生する回生電力値Pmを第1回生電力値Pm1とすると、第1回生電力値Pm1は、第1減速度a1及び積載重量等に依存する。ステップS107では、積載重量等を考慮して、第1回生電力値Pm1が許容電力値Padj未満となるよう第1減速度a1を導出する。この場合、第1減速度a1は、基準減速度a0よりも低い。なお、減速度の大小関係は、特に断りがない場合には、絶対値での評価である。
【0045】
ちなみに、第1減速度a1は、第1タイミングtp1から第2タイミングtp2までに発生する回生電力値Pmによって、エンジン31及びエンジン発電機32が所定の回転数を確保できる程度に設定されている。「所定の回転数を確保できる程度」とは、例えば後述する受入要求電力値を受入可能な回転数である。
【0046】
続くステップS108では、第1減速度a1にて減速を開始するタイミングである第1タイミングtp1と、第2減速度a2にて減速を行うタイミングである第2タイミングtp2とを導出する。ここで、第1タイミングtp1及び第2タイミングtp2間の時間であって、第1減速度a1で減速する第1減速時間は、エンジン31及びエンジン発電機32が始動して所定の回転数に到達する時間以上に設定されており、例えば1秒である。
【0047】
また、第1タイミングtp1及び第2タイミングtp2は、基準速度V0(t)に対する変更速度Vx(t)のずれが許容範囲内に収まるよう設定されている。詳細には、第1タイミングtp1及び第2タイミングtp2は、基準速度V0(tp2)と変更速度Vx(tp2)とのずれが予め定められた許容範囲内に収まるよう設定されている。
【0048】
詳述すると、図6(f)に示すように、第1タイミングtp1にて、無人搬送車11が、基準減速度a0よりも低い第1減速度a1で減速を開始した場合、基準タイミングt0以降にて、変更速度Vx(t)と基準速度V0(t)とが一致し、その後、変更速度Vx(t)が基準速度V0(t)よりも高くなる。そして、第2タイミングtp2にて両者のずれが最大となる。また、変更速度Vx(tp2)及び基準速度V0(tp2)のずれは、第1減速時間、及び、基準タイミングt0に対する各タイミングtp1,tp2の相対時間に依存する。この点、本実施形態では、基準速度V0(tp2)と変更速度Vx(tp2)とのずれが許容範囲(Vmin〜Vmax)内に収まるよう、各タイミングtp1,tp2を設定することにより、変更速度Vx(t)が基準速度V0(t)から大きく外れないようになっている。なお、許容範囲(Vmin〜Vmax)は、例えば基準速度V0(t)に対して±1km/hである。
【0049】
図5の説明に戻り、第1タイミングtp1及び第2タイミングtp2を導出した後は、ステップS109にて、第2減速度a2を導出する。この場合、既に説明した通り、tp3−tp2=tp2−t0であり、V0(tp3)=Vx(tp3)である。また、変更速度Vx(tp2)は既に決まっている。このため、第2減速度a2が自ずと決まる。
【0050】
ここで、Vx(tp2)>V0(tp2)である関係上、第2減速度a2は、基準減速度a0よりも高くなる。つまり、第2減速度a2>基準減速度a0>第1減速度a1となる。
【0051】
続くステップS110では、各種パラメータの調整処理を実行する。詳細には、第2減速度a2にて減速を行った場合に生じ得る第2回生電力値Pm2を推定する。そして、第2回生電力値Pm2を蓄電装置34の許容電力値Padjで差し引いた受入要求電力値を算出する。そして、第1タイミングtp1からエンジン31及びエンジン発電機32が始動を開始して、第2タイミングtp2までに到達可能なエンジン発電機32等の回転数に基づいて、エンジン31及びエンジン発電機32が、上記受入要求電力値を受入可能であることを確認する。
【0052】
既に説明した通り、第1タイミングtp1及び第2タイミングtp2間の時間である第1減速時間は、エンジン31及びエンジン発電機32が始動して所定の回転数に到達する時間以上に設定されている。また、上記所定の回転数は、受入要求電力値を受入可能となるよう比較的高く設定されている。このため、通常、第2回生電力値Pm2は、許容電力値Padj、及び、第2タイミングtp2におけるエンジン発電機32が受入可能な電力値の総和よりも低くなる。しかしながら、例えば積載重量が過度に重い等といった特殊な場合には、受入要求電力値が、エンジン発電機32が受入可能な電力値よりも高くなる場合が生じ得る。この場合、受入要求電力値を受入可能となるよう各減速度a1,a2及び各タイミングtp1〜tp3の調整を行う。例えば、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数上昇の時間を更に確保するべく、第1タイミングtp1を、更に早める等の調整を行う。
【0053】
また、無人搬送車11の走行距離が、基準走行パターンで走行した場合の走行距離と一致するよう、走行パターンを変更する。詳細には、図6(f)に示すように、第1三角形の面積S1と、第2三角形の面積S2とが同一となるよう、各減速度a1,a2及び各タイミングtp1〜tp3の調整を行う。第1三角形は、変更速度Vx(t)を底辺とし基準速度V0(t)を2辺とする三角形であり、第2三角形は、基準速度V0(t)を底辺とし変更速度Vx(t)を2辺とする三角形である。
【0054】
なお、上記調整は、ステップS107〜ステップS109にて説明した条件を満たす範囲で行う。
ステップS110の調整処理の実行後は、ステップS111に進み、第1タイミングtp1まで待機する。その後、第1タイミングtp1となった場合には、ステップS112に進み、無人搬送車11が第1減速度a1で減速を開始するよう制御する。
【0055】
その後、ステップS113に進み、エンジン31及びエンジン発電機32を始動し、回転数を所定の回転数まで上昇させる。この場合、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数が所定の回転数まで到達した場合にはその回転数を維持する。
【0056】
続くステップS114では、第2タイミングtp2まで待機する。第2タイミングtp2になった場合には、ステップS115にて、無人搬送車11の減速度を、第1減速度a1から第2減速度a2に変更する。これにより、無人搬送車11が第2減速度a2で減速を行う。
【0057】
ステップS116では、第3タイミングtp3まで待機する。第3タイミングtp3となった場合には、ステップS117に進み、無人搬送車11の減速度を、第2減速度a2から基準減速度a0に変更する。これにより、無人搬送車11が基準減速度a0で減速を行う。なお、ステップS113を除いたステップS107〜ステップS117の処理が、走行パターン変更部に対応し、ステップS113の処理が回転制御部に対応する。
【0058】
ステップS106又はステップS117の処理の実行後は、ステップS118にて減速終了タイミングtp4まで待機する。減速終了タイミングtp4となった場合には、ステップS119に進み、減速終了処理を実行して本処理を終了する。減速終了処理では、減速を終了し、エンジン31及びエンジン発電機32を再度アイドリングストップ状態にする。
【0059】
次に、本実施形態の作用として無人搬送車11の一連の流れについて、図6を用いて説明する。なお、図6には、比較対象として、基準走行パターンで走行した場合の各種数値の変化を、二点鎖線にて示す。また、図6(d)では、エンジン発電機32が受入可能な電力値の変化を、一点鎖線にて示す。
【0060】
まず、無人搬送車11が基準走行パターンで走行した場合を説明する。図6(a)及び図6(b)の二点鎖線に示すように、基準タイミングt0にて基準減速度a0で無人搬送車11の減速が行われた場合、走行モータ36にて、蓄電装置34の許容電力値Padjよりも高い基準回生電力値Pm0の回生電力が発生したとする。この場合、図6(c)の二点鎖線に示すように、基準タイミングt0では、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数は「0」である。このため、図6(d)の二点鎖線に示すように、基準タイミングt0では、エンジン発電機32に供給される回生電力値Pgは「0」である。よって回生電力は、ほとんど全て蓄電装置34に供給される(Pb(t0)=Pm0)。このため、図6(e)の二点鎖線(特に一点鎖線で囲まれた領域)に示すように、蓄電装置34の電力値は、許容電力値Padjを超える。
【0061】
次に、走行パターンが変更された場合について説明する。
図6(a)に示すように、第1タイミングtp1にて、無人搬送車11が第1減速度a1で減速を開始する。これにより、図6(b)に示すように、走行モータ36にて、第1回生電力値Pm1の回生電力が発生する。この場合、図6(c)に示すように、第1タイミングtp1では、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数は「0」であるため、回生電力は、ほとんど全て蓄電装置34に供給される(Pb(tp1)=Pm1)。ここで、第1回生電力値Pm1は、許容電力値Padjよりも低いため、蓄電装置34の電力値は許容電力値Padjよりも低い。
【0062】
また、図6(c)に示すように、無人搬送車11の減速が開始された場合、エンジン31及びエンジン発電機32が始動し、回転数が上昇する。これにより、図6(d)の一点鎖線に示すように、エンジン発電機32が受入可能な電力値が高くなる。そして、第1タイミングtp1〜第2タイミングtp2間において、回生電力の一部は、エンジン発電機32に供給される。
【0063】
ちなみに、エンジン発電機32に供給される回生電力は、エンジン発電機32及びエンジン31の回転数の上昇及び維持に用いられる。エンジン31及びエンジン発電機32の回転数は、所定の回転数まで到達した場合には、その回転数を維持する。
【0064】
その後、図6(a)に示すように、第2タイミングtp2にて、無人搬送車11が第2減速度a2にて減速される。この場合、図6(b)に示すように、許容電力値Padj及び第1回生電力値Pm1よりも高い第2回生電力値Pm2が発生したとする。
【0065】
ここで、図6(c)に示すように、第2タイミングtp2では、エンジン31及びエンジン発電機32は、所定の回転数で回転している。つまり、回転数が「0」である第1タイミングtp1よりも第2タイミングtp2の方が、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数は高くなっている。このため、図6(d)に示すように、エンジン発電機32が受入可能な電力値が高くなっており、第2回生電力値Pm2は、許容電力値Padj、及び、第2タイミングtp2におけるエンジン発電機32が受入可能な電力値の総和よりも低くなっている。そして、図6(d)及び図6(e)に示すように、第2タイミングtp2では、第2回生電力値Pm2の一部、詳細には許容電力値Padj分は、蓄電装置34に供給される(Pb(tp2)=Padj)。一方、第2回生電力値Pm2の残りは、エンジン発電機32に供給される(Pg(tp2)=Pm2−Padj)。このため、蓄電装置34の電力値が許容電力値Padjを超えない。
【0066】
その後、第3タイミングtp3にて、無人搬送車11が基準減速度a0にて減速を行い、その後は、基準走行パターンに従って走行する。詳細には、減速終了タイミングtp4にて無人搬送車11の減速を終了し、走行を継続する。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)無人搬送車11の駆動システム10の車載コンピュータ21は、無人搬送車11の積載重量と、予め定められた基準走行パターンとに基づいて、基準走行パターンの減速開始タイミングである基準タイミングt0における回生電力の電力値(基準回生電力値Pm0)を推定する。そして、車載コンピュータ21は、推定された基準回生電力値Pm0が許容電力値Padjよりも高い場合には、無人搬送車11の走行パターンを基準走行パターンから変更する。詳細には、車載コンピュータ21は、基準タイミングt0よりも前の第1タイミングにて、許容電力値Padjよりも低い電力値(第1回生電力値Pm1)の回生電力が生じる第1減速度a1で減速が開始されよう、走行パターンを変更する。そして、車載コンピュータ21は、第1タイミングtp1にてエンジン31及びエンジン発電機32を始動し、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数を上昇させる。
【0068】
かかる構成によれば、基準タイミングt0よりも前の第1タイミングtp1にて、1段階目の減速が行われる。この場合、1段階目の減速に係る第1減速度a1は、当該減速によって生じ得る第1回生電力値Pm1が許容電力値Padjよりも低くなるよう基準減速度a0よりも低く設定されている。これにより、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数が「0」であり、エンジン発電機32が受入可能な電力値が「0」であっても、蓄電装置34の電力値が許容電力値Padjを超えることを抑制できる。
【0069】
また、減速が開始されてから、エンジン31及びエンジン発電機32が始動し、これらの回転数が上昇することにより、エンジン発電機32が受入可能な電力値が高くなる。これにより、許容電力値Padjよりも高い電力値の回生電力が発生した場合には、許容電力値Padjを超えた余剰電力を、エンジン発電機32に供給することができる。よって、蓄電装置34の電力値が許容電力値Padjを超えることを抑制できる。
【0070】
(2)詳細には、車載コンピュータ21は、第1タイミングtp1にて、許容電力値Padjよりも低い第1回生電力値Pm1の回生電力が生じる第1減速度a1で減速が開始され、基準タイミングt0よりも後の第2タイミングtp2にて、第1減速度a1よりも高い第2減速度a2で減速が行われるよう走行パターンを変更する。そして、車載コンピュータ21は、第2タイミングtp2におけるエンジン発電機32の回転数を、第1タイミングtp1におけるそれよりも高くする。かかる構成において、第2タイミングtp2にて発生する回生電力の電力値である第2回生電力値Pm2は、許容電力値Padjと、第2タイミングtp2におけるエンジン発電機32が受入可能な電力値との総和よりも低い。これにより、蓄電装置34に供給される電力値が許容電力値Padjを超えることを抑制しつつ、変更された走行パターンを、基準走行パターンに近づけることができる。
【0071】
詳述すると、第1減速度a1が基準減速度a0よりも低い場合、変更速度Vx(t)と基準速度V0(t)とのずれは、徐々に大きくなる。これに対して、第2タイミングtp2において、第1減速度a1(及び基準減速度a0)よりも高い第2減速度a2で減速を行うことにより、変更速度Vx(t)を基準速度V0(t)に徐々に近づけることができ、走行パターンのずれを補正することができる。
【0072】
かかる構成においては、その特性上、第2減速度a2が高くなり易いため、第2回生電力値Pm2が許容電力値Padjよりも高くなる場合がある。これに対して、第2タイミングtp2では、エンジン31及びエンジン発電機32の回転数が高められているため、第2回生電力値Pm2が許容電力値Padjよりも高くなっても、エンジン発電機32がその余剰電力を受け入れることできる。換言すれば、第1タイミングtp1にて第1減速度a1で減速を開始し、第2タイミングtp2にて第2減速度a2で減速を行うことにより、減速区間Raにて最大の回生電力が発生するタイミングを、エンジン発電機32が受入可能な状態となるタイミングまで時間的にずらしている。よって、上述した効果を得ることができる。
【0073】
(3)車載コンピュータ21は、第2タイミングtp2よりも後の第3タイミングtp3にて、無人搬送車11の走行速度が基準走行パターンにて設定されている基準速度と一致し(Vx(tp3)=V0(tp3))、且つ、基準走行パターンにて設定されている基準減速度a0で減速が行われるよう、走行パターンを変更する。これにより、第3タイミングtp3以降は、無人搬送車11は基準走行パターン通りに走行することとなる。かかる構成において、車載コンピュータ21は、第1タイミングtp1から第3タイミングtp3までの無人搬送車11の走行距離が、基準走行パターンで走行した場合の走行距離と一致するよう走行パターンを変更する。これにより、基準走行パターンで走行した場合と、変更された走行パターンで走行した場合とで、無人搬送車11の走行距離が変化しないため、走行パターンの変更に起因した走行距離の変動を抑制でき、それを通じて、走行パターンの変更に起因する無人搬送車11の運行への支障を回避することができる。
【0074】
(4)tp3−tp2=tp2−t0とした。これにより、各減速度a1,a2及び各タイミングtp1〜tp3の設定を容易に行うことができる。
詳述すると、仮に、ステップS107及びステップS108にて、第1タイミングtp1、第2タイミングtp2及び第1減速度a1が導出されている場合、第2減速度a2及び第3タイミングtp3の2変数を設定する必要がある。この場合、上記条件式を用いることにより、第3タイミングtp3を一義的に決定することができる。すると、変更速度Vx(tp2)及び変更速度Vx(tp3)が決まっている関係上、第2減速度a2は容易に決まる。これにより、各パラメータを容易に設定することができる。
【0075】
(5)車載コンピュータ21は、走行パターン変更後の無人搬送車11の走行速度である変更速度Vx(t)と、基準走行パターンにおける無人搬送車11の走行速度である基準速度V0(t)とのずれが、予め定められた許容範囲内になるよう走行パターンを変更する。これにより、無人搬送車の走行速度が、基準走行パターンから大きく外れることを抑制できる。
【0076】
ここで、運行管理コンピュータ22は、実際の無人搬送車11の走行速度を定期的に把握し、実際の走行速度と、基準走行パターンにて設定されている走行速度とのずれが許容範囲外である場合に、無人搬送車11の走行に何らかの支障があると判断する。このような構成において、走行パターンが変更されることにより走行速度のずれが大きくなると、運行管理コンピュータ22は、無人搬送車11の走行に支障があると誤認し得る。
【0077】
これに対して、本実施形態では、走行速度のずれが許容範囲内に収まっているため、上記のような誤認を回避することができる。これにより、蓄電装置34の劣化を抑制しつつ、無人搬送車11の円滑な運行を実現できる。
【0078】
(6)特に、本実施形態の減速態様では、変更速度Vx(tp2)と、基準速度V0(tp2)とのずれが、最も大きくなる。この点に着目し、変更速度Vx(tp2)と基準速度V0(tp2)とのずれが許容範囲内に収まるよう、各減速度a1,a2及び各タイミングtp1〜tp3を設定した。これにより、第2タイミングtp2のみに着目することで、自ずと第1タイミング〜第3タイミングtp3までの変更速度Vx(t)を、許容範囲内に収めることができる。よって、比較的簡素な設定で、(5)の効果を得ることができる。
【0079】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、減速区間Raの手前の区間では、無人搬送車11のエンジン31及びエンジン発電機32はアイドリングストップ状態であったが、これに限られず、ある回転数で回転していてもよい。この場合、ステップS104では、基準回生電力値Pm0が、許容電力値Padj、及び、エンジン発電機32が受入可能な電力値の総和よりも高いか否かを判定するとよい。
【0080】
○ 走行経路Rの少なくとも一部が傾斜していてもよい。この場合、運行管理コンピュータ22は、走行経路Rの傾斜に関する傾斜情報を所定の記憶領域に記憶させておく構成としてもよい。そして、運行管理コンピュータ22は、走行パターンに加えて、走行経路Rの傾斜情報を車載コンピュータ21に送信する構成としてもよい。この場合、車載コンピュータ21は、減速区間Raにおける傾斜を把握し、積載重量、走行パターン及び傾斜に基づいて、基準回生電力値Pm0を推定する構成としてもよい。
【0081】
○ 各減速度a1,a2及び各タイミングtp1〜tp3の具体的な導出態様については、各パラメータに設定されている条件を満たすよう設定されていれば、実施形態のものに限られず任意である。例えば、上記条件を満たす各種パラメータを予め車載コンピュータ21の所定の記憶領域に記憶させ、当該記憶領域から読み出す構成としてもよい。
【0082】
○ 実施形態では、変更された走行パターンの走行距離が、基準走行パターンの走行距離と一致するよう設定されていたが、これに限られず、一致しなくてもよい。
○ 実施形態では、Vx(tp2)とV0(tp2)とのずれが許容範囲内に収まっていたが、これに限られず、例えば許容範囲外となっていてもよい。
【0083】
○ tp3−tp2=tp2−t0と設定されていたが、これに限られない。例えば、第3タイミングtp3を、減速終了タイミングtp4と一致させてもよい。この場合、第2減速度a2を、より低くすることができるため、第2回生電力値Pm2を低くすることができる。
【0084】
○ 実施形態では、第2回生電力値Pm2は、許容電力値Padjと、エンジン発電機32が受入可能な電力値との総和よりも低くなっているが、これに限られず、例えば高くてもよい。この場合であっても、エンジン発電機32の回転数が、第1タイミングtp1時よりも高くなっているため、蓄電装置34に供給される回生電力値Pbを低くすることができ、蓄電装置34の劣化を、ある程度抑制できる。但し、蓄電装置34の劣化抑制の観点に着目すれば、第2回生電力値Pm2が、許容電力値Padjと、エンジン発電機32が受入可能な電力値との総和よりも低くなるよう、エンジン発電機32の回転数を十分に上昇させておくとよい。
【0085】
○ 実施形態では、荷重センサ38を用いて積載重量を測定する構成であったが、積載重量を把握する構成は任意である。例えば、加速時に要した電力量から積載重量を推定する構成としてもよいし、運行管理コンピュータ22から無線通信で取得する構成としてもよいし、ガントリークレーンC1又はラバータイヤクレーンC2にて測定された測定結果を取得する構成であってもよい。
【0086】
○ 実施形態では、無人搬送車11の車載コンピュータ21は、運行管理コンピュータ22から基準走行パターンを受信することにより、基準走行パターンを把握する構成であったが、これに限られず、車載コンピュータ21が基準走行パターンを把握することができれば任意である。例えば、車載コンピュータ21の所定の記憶領域に基準走行パターンを記憶しておき、車載コンピュータ21がその情報を読み出す構成であってもよい。
【0087】
○ 実施形態では、減速対応処理の実行主体は車載コンピュータ21であったが、これに限られず、運行管理コンピュータ22であってもよいし、これらとは別の制御部が実行してもよい。
【0088】
○ 車載コンピュータ21は、エンジン31又はエンジン発電機32の回転数を制御可能であればよい。例えば車載コンピュータ21は、エンジン31の燃料噴射を制御することによりエンジン31の回転数制御を行なってもよいし、エンジン発電機32に供給される電力制御を行うことでエンジン発電機32の回転数制御を行ってもよい。
【0089】
○ 実施形態では、蓄電装置34はニッケル水素電池やリチウムイオン電池であったが、これに限られず、例えば電気二重層キャパシタ等であってもよい。
○ 実施形態では、車載コンピュータ21が一連の制御を行う構成であったが、これに限られず、複数の制御部が各種制御を行う構成であってもよい。つまり、エンジン31、エンジン発電機32及び走行モータ36の制御主体は任意である。
【0090】
○ 走行モータ36は、1つに限られず、複数設けられていてもよい。
○ 推定された基準回生電力値Pm0が許容電力値Padjを超えている場合には、減速度が徐々に高くなるよう走行パターンを変更する構成としてもよい。
【0091】
○ 実施形態では、運行管理コンピュータ22が各クレーンC1,C2の駆動制御を行う構成であったが、これに限られず、別の管理コンピュータがこれらの駆動制御を行う構成であってもよい。
【0092】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記回転制御部は、前記第2タイミングにおける回転数を、前記第1タイミングにおける回転数よりも高くし、前記第2タイミングにて発生する前記回生電力の電力値は、前記許容電力値と、前記第2タイミングにおける前記第1発電電動機が受入可能な電力値との総和よりも低い請求項1に記載の無人搬送車の駆動システム。
【0093】
(ロ)前記第1減速度、前記第2減速度、前記第1タイミング、前記第2タイミング及び前記第3タイミングは、前記変更された走行パターンにおける前記第2タイミングの前記無人搬送車の走行速度と、前記基準走行パターンにおける前記第2タイミングの前記無人搬送車の走行速度とのずれが前記許容範囲内となるよう設定されている請求項に記載の無人搬送車の駆動システム。
【符号の説明】
【0094】
10…無人搬送車の駆動システム、11…無人搬送車、21…車載コンピュータ、22…運行管理コンピュータ、31…エンジン、32…エンジン発電機(第1発電電動機)、34…蓄電装置、36…走行モータ(第2発電電動機)、37…電力値センサ、38…荷重センサ、39…回転数センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6