(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコーン化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、且つ複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有する微細凹凸層を備えた反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛmin、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をdmaxとしたときに、
dmax≦Λmin
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が5〜12%であり、
−40〜80℃の温度範囲における反射防止物品の微細凹凸形状側の剛体振り子型自由減衰振動法による対数減衰率が、0℃以下で最大値を有することを特徴とする、反射防止物品。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「物品」は、「板」、「シート」、「フィルム」等の態様を含む概念であり、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本発明において硬化物とは、化学反応を経て硬くなったもののことをいい、硬化性とは、化学反応を経て硬くなる性質をいう。
【0014】
本発明に係る反射防止物品は、
シリコーン化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなり、且つ複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有する微細凹凸層を備えた反射防止物品であって、
前記微小突起は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛ
min、当該微小突起の隣接突起間隔dの最大値をd
maxとしたときに、
d
max≦Λ
min
なる関係を有し、且つ、前記微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有し、
前記微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が5〜15%であり、
−40〜80℃の温度範囲における反射防止物品の微細凹凸形状側の剛体振り子型自由減衰振動法による対数減衰率が、0℃以下で最大値を有することを特徴とする。
【0015】
上記本発明に係る反射防止物品について図を参照して説明する。
図1は、本発明に係る反射防止物品の一例を模式的に示す断面図である。
図1に例示される反射防止物品10は、複数の微小突起2が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有する微細凹凸層3を備える。また、本発明に係る反射防止物品は、
図1に示すように、支持体として透明基材1を含んでいてもよい。反射防止物品10は、通常、前記微細凹凸層3を、当該微細凹凸層3の微細凹凸形状が反射防止物品の少なくとも一面側の表面になるように備える。
前記微小突起2は、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛ
min、当該微小突起2の隣接突起間隔d(
図1)の最大値をd
maxとしたときに、
d
max≦Λ
min
なる関係を有し、且つ、前記微小突起2の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起2を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起2の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有している。微細凹凸層3がこのような構造を有することにより、Λ
min以上の波長を有する光の反射防止を図ることができる。
【0016】
本発明者は、本発明に係る反射防止物品の微細凹凸層を、シリコーン化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなるものとし、微細凹凸形状を有する表面の元素構成比におけるケイ素の割合を5〜15%の範囲内とすることにより、優れた反射防止性能を維持しつつ、耐擦傷性を向上することができることを見出した。本発明に係る反射防止物品は、微細凹凸層自体の表面に上記特定量のケイ素が存在するため、特許文献4に記載されるような微細凹凸層の表面に被覆層を形成する場合とは異なり、被覆層によって表面の微細凹凸形状の制御が困難になるという問題がなく、微細凹凸層を所望の形状に形成することが容易であるため、優れた反射防止性能を実現することができると考えられる。また、本発明に係る反射防止物品が耐擦傷性に優れるのは、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面に上記特定量のケイ素が存在することにより、当該微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面を滑り性に優れるものとすることができることから、傷が付きにくくなることによるものであると推定される。
さらに、本発明の反射防止物品は、−40〜80℃の温度範囲における、微細凹凸形状側の剛体振り子型自由減衰振動法による対数減衰率が、0℃以下で最大値を有する。これは0℃以下という低温で、振り子の荷重により、振り子と反射防止物品の微細凹凸形状側の表面との接地面積が大きくなることを示すものと推定される。そのため、このような場合には、室温など本発明の反射防止物品が通常使用される温度帯域において、反射防止物品の微細凹凸形状側のいずれかの部分が、適度な柔軟性を示すことにより、他の物体が接触しても応力を逃がし易いと推定される。本発明の反射防止物品は、微細凹凸形状側が応力を逃がし易い柔軟性を有しつつ、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面が滑り性に優れるという相乗作用から、耐擦傷性に優れると推定される。
【0017】
<表面元素比>
本発明に係る反射防止物品は、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が5〜15%であり、中でも5〜12%であることがより好ましい。これにより、本発明に係る反射防止物品は耐擦傷性に優れる。
前記表面元素比は、例えば、反射防止物品の微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の深さ10nmまでにおいて、X線光電子分光分析により、以下の条件下で構成元素(C1s、N1s、O1s、F1s及びSi2p)についてXPSスペクトルを取得し、そのピーク面積値を用いて求めることができる。
(X線光電子分光分析の条件)
装置:島津製作所社製 ESCA−3400
入射X線:Al Kα(非単色化X線)
測定領域:6mmφ
X線出力:150W(10kV・15mA)
測定時真空度:1×10
−5Pa以下
【0018】
<対数減衰率>
本発明において対数減衰率とは、ISO122013−2「塗膜の熱的性質(Tg、硬度)の測定方法」に準拠して測定される対数減衰率をいう。一例として反射防止物品の微細凹凸形状側の剛体振り子型自由減衰振動法における対数減衰率は、株式会社エーアンドディ社製、剛体振り子物性試験器RPT−3000Wを用いて下記測定方法により測定された減衰曲線から算出されたものが挙げられる。
(測定方法)
反射防止物品を5cm×1.5cmに切断したものを試料とし、当該試料の微細凹凸形状側を上面として、試料台(CHB100)上に置く。次いで、丸棒形状タイプ(RBP−060;60φ)のエッジを備えた振り子フレーム(FRB−100)を前記試料の微細凹凸形状側の表面に置き、振り子測定間隔を3.0秒、振り子吸着時間を2.0秒とし、−40℃から80℃を超える温度まで、例えば120℃まで、4℃/分で昇温しながら測定する。
【0019】
本発明に係る反射防止物品は、上記のように測定された対数減衰率を、温度−対数減衰率曲線としてプロットした時に、−40℃から80℃の温度範囲では、0℃以下で最大値を有する。そのため、室温など、本発明の反射防止物品が通常使用される温度帯域においては、反射防止物品の微細凹凸形状側が、適度な柔軟性を示し、他の物体が接触しても応力を逃がし易く、耐擦傷性の向上に寄与する。
以下、本発明の反射防止物品を構成する各層について順に説明する。
【0020】
<微細凹凸層>
本発明における微細凹凸層は、複数の微小突起が密接して配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を表面に有する。微小突起の形状は、当該微小突起の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微小突起の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する構造を有するものの中から適宜選択すればよい。このような微小突起の形状の具体例としては、半円状、半楕円状、三角形状、放物状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられる。複数ある微小突起は同一の形状を有していても異なる形状を有していてもよい。微小突起が上記の形状を有することにより、微細凹凸等の深さ方向に屈折率が連続的に変化するため、反射防止性が付与される。
【0021】
また、前記微小突起群の中には、頂点を複数有する微小突起(以下、「多峰性の微小突起」と称する場合がある。)が含まれていても良い。なお、多峰性の微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を「単峰性の微小突起」と称する場合がある。多峰性の微小突起は、単峰性の微小突起に比して、頂点近傍の寸法に対する裾の部分の太さが相対的に太く、さらに、外力をより多くの頂点で分散して受ける為、各頂点に加わる外力を低減し、微小突起を損傷し難いようにすることができると考えられる。よって、本発明においては、前記微小突起群の中に多峰性の微小突起を含むことにより、機械的強度及び耐擦傷性がさらに向上する。また仮に微小突起が損傷した場合でも、その損傷箇所の面積を低減することができ、これによっても反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。
また本発明において、多峰性の微小突起、単峰性の微小突起に係る各頂点を形成する各凸部を、適宜、「峰」と称する。
【0022】
ここで多峰性微小突起は、単に頂点を複数有するだけでなく、微小突起を先端側より平面視覚した場合に、ほぼ中央より外方に向かって形成された溝により複数の領域に分割され、この複数の領域の各領域が、それぞれ各頂点に係る峰であるように形成される。
またこの多峰性の微小突起は、対応する形状を備えた微小孔の賦型処理により作製され、このような多峰性の微小突起に係る微小孔は、陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにおいて、極めて近接して作製された微小孔が、エッチング処理により、一体化して作製される。これにより多峰性の微小突起は、微小突起を先端側より平面視覚した場合の周囲長が、単峰性の微小突起に比して長く形成されている。なおこれら多峰性微小突起の形状は、特開2012−037670号公報に開示の賦型処理時の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起とは異なる特徴である。
【0023】
前記微細凹凸層3において、前記微小突起2は、隣接する前記微小突起2間の距離d(以下、「隣接突起間距離d」と称する。)が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下Λ
min以下(d≦Λ
min)となるよう密接して配置される。
この隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起2は、いわゆる隣り合う微小突起2であり、基材側の付け根部分である微小突起2の裾の部分が接している突起である。本発明に係る反射防止物品では、微小突起2が密接して配置されることにより、微小突起2間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起2を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。隣接突起間距離dに係る隣接する微小突起2は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
本発明に係る反射防止物品を、視認性の向上を主目的として画像表示パネルに配置して使用する場合は、この最短波長Λ
minは、個人差、視聴条件を加味した可視光領域の最短波長(通常380nm)に設定される。
【0024】
前記微小突起群中の各微小突起2が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接突起間距離dは、微小突起配列の周期pと一致するため、d
max=pとなる。よって、本発明に係る反射防止物品が反射防止効果を奏し得る条件は、d
max=p≦Λ
minであり、微小突起配列の周期p以上の波長を有する光に対して反射防止効果を奏することができる(例えば、特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報、特許第4270806号公報を参照することができる)。従って、例えば、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を得るためには、可視光線帯域の最短波長を380nmとした場合、微小突起配列の周期を380nm以下とすればよい。
【0025】
また、前記微小突起群中の各微小突起が同一の高さHを有するとき、反射防止効果を得ようとする波長のうち最長波長Λ
maxの0.2倍以上であることが好ましい(H≧0.2×Λ
max)。従って、例えば可視光線帯域の全波長に対して優れた反射防止効果を得ようとするためには、可視光線帯域の最長波長を780nmとした場合、H≧0.2×780nm=156nmであることが好ましい。また、特に限定されないが、H≦350nmであることが好ましい。
なお、本発明において各微小突起2の高さHとは、その頂部に存在する最高高さを有する峰(最高峰)の高さを言う。単峰性の微小突起の場合は、頂部における唯一の峰の高さが該微小突起の突起高さとなる。多峰性の微小突起の場合は、頂部に在る麓部を共有する複数の峰のうちの最高峰の高さをもって該微小突起の高さとする。
【0026】
本発明において、前記微小突起群中の各微小突起2が不規則に配列されている場合は、以下のようにして測定される微小突起2間の距離dの平均値d
AVGを求めることができる。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
【0027】
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。本発明において、平面視拡大写真を用いた画像データの処理は、例えば、1μm×1μmの領域を50,000倍に拡大した平面視拡大写真を、3枚用いて平均することにより行うことができる。
【0028】
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。
図2は、ドロネー図(白色の線分により表される図である)を平面視拡大写真の模式図と重ね合わせた図である。
【0029】
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(隣接突起間距離d)の度数分布を求める。なお、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に分裂している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
【0030】
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している微小突起(多峰性の微小突起)に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない微小突起(単峰性の微小突起)の場合の数値範囲から、隣接突起間距離が明らかに大きく異なることになる。これによりこの特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性の微小突起を選んで、その隣接突起間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接突起間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。
【0031】
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布を正規分布とみなして平均値d
AVG及び標準偏差σ
dを求める。本発明においては、隣接突起間距離dの最大値d
maxをd
max=d
AVG+2σ
dと定義して算出する。
【0032】
前記微小突起群中の各微小突起2の高さHに高低差がある場合、微小突起の高さHの平均値H
AVG及び標準偏差σ
Hは、上述の隣接突起間距離dの平均値d
AVG及び標準偏差σ
dを求める手法と同様の手法を適用して求めることができる。
まず、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値H
AVGを求める。突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性の微小突起の場合は、頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。この場合は麓(付け根)部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
【0033】
なお、微小突起の高さを測る際の基準位置は、突起付け根位置、すなわち隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でうねった凹凸形状を有する場合等は、(1)先ず、透明基材の表面若しくは裏面又は微細凹凸層の微細凹凸面が存在する側とは反対側の面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを有し、且つ透明基材の表面若しくは裏面又は微細凹凸層の微細凹凸面が存在する側とは反対側の面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
【0034】
隣接する微小突起2の間の谷底の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば
図3に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面21が、可視光線帯域の最長波長λ
MAXよりも大きい周期D(すなわちD>λ
MAXである)でうねることもある。該周期的なうねりは、透明基材の表裏面に平行な平面(
図3におけるXY平面)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いは透明基材の表裏面に平行な平面(
図3におけるXY平面)における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λ
MAXを満たす周期Dでうねった凹凸面21が多数の微小突起2からなる微細凹凸層3の微細凹凸面22に重畳することによって、当該微細凹凸面22で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱させ、反射防止性を一段と向上させることができる。
【0035】
尚、係るうねりによる凹凸面21の周期Dが全面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸面21について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をD
AVG、標準偏差をΣとしたときの、
D
min=D
AVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離D
minを以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微細凹凸層30の凹凸面31の残留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
D
min>λ
MAX
である。通常、D又はD
minは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
【0036】
また、反射防止物品10の良好な平滑性を確保するために、前記周期Dでうねった凹凸面21の高低差(
図3中のh)は、10nm以下であることが好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。なお、前記凹凸面21により形成される凹凸面の高低差は、例えば500nm以上離れた微小突起2の谷底部の位置の高低差を測定することにより求めることができる。微小突起2の谷底部の位置は、反射防止物品10を、厚み方向に切断した垂直断面のTEM写真又はSEM写真を用いて観察することにより求めることができる。
【0037】
微小突起2が不規則に配置されている場合には、上述のようにして求めた隣接突起間距離dの最大値d
max=d
AVG+2σ
dが、d
max≦Λ
minを満たすことが必要である。例えば、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためには、d
max=d
AVG+2σ
d≦380nmとすればよい。
可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、d
max≦300nmであり、更に好ましい条件は、d
max≦200nmである。また反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、通常、d
max≧50nmであり、好ましくは、d
max≧100nmとされる。
【0038】
微小突起2の高さHに高低差がある場合については、微小突起の高さHの平均値H
AVGが、H
AVG≧0.2×Λ
maxを満たすことが好ましい。十分な反射防止効果を発現する為には、反射防止を図る光の波長帯域の最短波長をΛ
maxとしたときに、H
AVG≧0.2×Λ
maxとなることが好ましく、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得るためにはH
AVG≧0.2×780nm=156nmであることが好ましく、H
AVG≧170nmとすることがより好ましい。突起の高さH
AVGは、反射防止効果の点から、通常350nm以下とされる。また、微小突起2の高さHに高低差がある場合の突起の高さHの分布は、通常50〜350nmである。
【0039】
微細突起2のアスペクト比(平均突起高さH
AVG/平均隣接突起間隔d
AVG)は、特に限定されないが、反射防止性能の観点から、0.8〜2.5であることが好ましく、更に、0.8〜2.1であることがより好ましい。
【0040】
本発明において、前記微小突起群を構成する複数の微小突起は、頂点を複数有する多峰性微小突起と、頂点が1つの単峰性微小突起からなることが好ましい。単峰性の微小突起と多峰性の微小突起とを混在させる場合には、広い波長帯域で低い反射率を確保することができる。
すなわち、前記微小突起群が、単峰性の微小突起のみからなり、アスペクト比が一定である場合、例えば可視光城では十分に小さな反射率を確保できる場合でも、紫外線域では可視光域に比して反射率が増大して反射防止機能が不足する恐れがある。なお微小突起のピッチを一段と小さくして紫外線域で十分な反射防止機能を確保できるように設定すると、今度は、赤外線域で反射防止機能が低下する恐れがある。これに対し、多峰性の微小突起では、隣接突起間距離dを低下させた反射防止機能を確保することができる。そのため、多峰性微小突起と単峰性微小突起とを混在させると、広い波長帯域で低い反射率を確保することができることになる。
可視光域を中心にした広い波長帯域で十分に小さな反射率を確保する場合、可視光域に係る波長480〜660nmに対応する480〜660nmの隣接突起間距離dによる微小突起において、多峰性の微小突起と単峰性の微小突起とを混在させることが望ましい。
【0041】
本発明において、前記微小突起群を構成する全微小突起中における多峰性微小突起の個数の比率は、10%以上であることが好ましく、特に多峰性微小突起による耐擦傷性向上の効果を十分に奏するためには、多峰性微小突起の比率は20%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更により好ましい。また、多峰性微小突起の比率は、特に限定されないが、通常98%以下である。
【0042】
また、本発明に係る反射防止物品は、可視光域に係る入射光に対する反射防止機能を向上する点から、前記微小突起の高さHの度数分布における高さHの平均値H
AVGと標準偏差をσ
Hとは、
H<H
AVG−σ
Hの領域を低高度領域とし、
H
AVG−σ
H≦H≦H
AVG+σ
Hの領域を中高度領域とし、
H
AVG+σ
H<Hの領域を高高度領域とした場合に、
各領域内の前記多峰性微小突起の数Nmと、前記度数分布全体における前記微小突起の総数Ntとの比率が、
中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、
中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たすことが好ましい。
上記関係を満たすことにより、本発明に係る反射防止物品は、中高度領域の多峰性の微小突起の数(Nm)と、度数分布全体における微小突起の総数(Nt)との比(Nm/Nt)が、低高度領域や高高度領域の多峰性の微小突起の数と、度数分布全体における微小突起の総数(Nt)との比(Nm/Nt)よりも大きいので、反射防止機能の広帯域化をより具体的に図ることができる。
【0043】
中でも、微小突起の高さの度数分布が、峰が1つの分布であって、前記多峰性微小突起が前記度数分布の峰の裾野部よりも峰の頂部近傍に多く分布している場合には、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化を図るとともに、斜め方向からの光学特性を限定して視野角特性を制限することができる。
中でも、微小突起の高さの度数分布が、峰が1つの分布であって、前記微小突起の高さHの度数分布における高さHの平均値H
AVGと標準偏差をσ
Hとは、
H<H
AVG−σ
Hの領域を低高度領域とし、
H
AVG−σ
H≦H≦H
AVG+σ
Hの領域を中高度領域とし、
H
AVG+σ
H<Hの領域を高高度領域とした場合に、
各領域内の前記多峰性微小突起の数Nmと、前記度数分布全体における前記微小突起の総数Ntとの比率が、
中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、
中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たす場合には、反射防止機能の広帯域化及び視野角特性の制限をより具体的に図ることができる。
【0044】
微細凹凸層の厚み(
図1におけるT)は、適宜調整すればよいが、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜10μmであることがより好ましい。なお、本発明において微細凹凸層3の厚みTは、当該微細凹凸層3の微細凹凸面側とは反対側の面から、最も高い微小突起2の頂部までの厚みで定義される。
【0045】
(微細凹凸層用樹脂組成物)
本発明における微細凹凸層は、シリコーン化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなる。前記微細凹凸層の形成に用いられる樹脂組成物(以下、「微細凹凸層用樹脂組成物」又は単に「樹脂組成物」と称する場合がある。)が含有するシリコーン化合物は、シロキサン結合(Si−O−Si)を有し、且つ少なくとも炭素を含む有機基を有する化合物をいう。本発明で用いられるシリコーン化合物としては、25℃で液状又は固体状のものが挙げられ、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面に偏在し易くなる点から、25℃で液状のものが好ましく、シリコーンオイルが好適に用いられる。
【0046】
シリコーンオイルとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコキシ基含有シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、ビニル基含有シリコーンオイル、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0047】
シリコーンオイルは変性されていても良く、変性シリコーンとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、メタ(アクリル)変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン等が挙げられる。
なお、前記シリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明に用いられるシリコーン化合物としては、中でも、ブリードアウト性の点から、界面活性剤として機能するような側鎖を有しない、直鎖状ポリオルガノシロキサンであることが好ましく、更にアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、メタ(アクリル)変性シリコーン、カルボキシル基等の反応性基を含まない、非反応性シリコーン化合物であることが好ましい。また、ブリードアウト性の点から、シランカップリング剤が有するアルコキシシリル基のような加水分解性基を有しないことが好ましい。
また、本発明に用いられるシリコーン化合物としては、中でも、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面に偏在し易くなる点から、180℃以上の沸点を有するものが好ましい。
本発明に用いられるシリコーン化合物としては、中でも、ブリードアウト性の点から、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びメチルハイドロジェンポリシロキサンよりなる群から選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0049】
微細凹凸層用樹脂組成物中、シリコーン化合物の含有量は、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。シリコーン化合物の含有量が前記下限値以上であることにより、前記微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比におけるケイ素の割合を上記特定の範囲内とすることが容易になり、前記上限値以下であることにより、微細凹凸層用樹脂組成物の成形性が向上するため、所望の微細凹凸形状を得ることが容易になる。
【0050】
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、熱硬化性成分及び光硬化性成分から選択される1種以上を含む硬化性樹脂組成物であることが好ましく、中でも、光硬化性成分を含む光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
上記光硬化性成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む組成物であることが好ましく、(メタ)アクリレートを含む組成物であることがより好ましい。
光硬化性樹脂組成物は、少なくとも上記光硬化性成分を含有していればよく、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。
【0051】
以下、光硬化性成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む組成物中の各成分について順に説明する。
(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートであっても、多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、微細凹凸層が柔軟性及び耐擦傷性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートのうち、少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いる場合、後述する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の特性を兼ね備える。
【0052】
また、多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、微細凹凸層が柔軟性及び耐擦傷性に優れる点から、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートより選択される1種以上を含むことが更により好ましい。
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、硬化物が柔軟性及び耐擦傷性に優れる点から、中でも、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートより選択される1種以上を含むことが更により好ましい。
【0053】
また、微細凹凸層用樹脂組成物は、その硬化物表面の親油性が向上し、柔軟性が付与され、耐擦傷性が向上する点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有してもよい。炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、例えば、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを有する化合物等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、更に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基の他、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、光硬化性を備える点から、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。
なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、当該化合物は、前記(メタ)アクリレートにも該当し得る。
【0054】
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、微小突起の弾性復元性及び耐擦傷性の点から、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、多価イソシアネート化合物とを併用してもよい。多価イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルスルホキシドジイソシアネート、4,4’−ジフェニルスルホンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0055】
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、前記微細凹凸層用樹脂組成物は、更に、帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤を含有することにより、微細凹凸層表面に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。
帯電防止剤は、従来公知のもの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
【0057】
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体的としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
【0058】
前記微細凹凸層用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤、安定化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、離型剤等が挙げられる。
【0059】
微細凹凸層用樹脂組成物中の前記シリコーン化合物以外の各成分の含有量は、特に限定されないが、当該微細凹凸層用樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率(E’)が後述する所定の範囲内になるようにその配合割合を調整することが好ましい。
微細凹凸層用樹脂組成物中、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して、10〜99質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。
中でも、微細凹凸層用樹脂組成物中、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して、35〜85質量%含有することが好ましく、40〜75質量%含有することがより好ましい。
微細凹凸層用樹脂組成物中、アルキルアクリレート化合物の含有量は、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して、0〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
光重合開始剤の含有量は、通常、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、微細凹凸層用樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
微細凹凸層用樹脂組成物の溶剤を含む全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお本発明において固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外のすべての成分を表す。
【0060】
本発明において微細凹凸層用樹脂組成物は、耐擦傷性に優れる点から、当該樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)が300MPa以下であることが好ましく、1〜250MPaであることがより好ましく、1〜200MPaであることが更により好ましい。
また、押圧後の復元性に優れていることから、微細凹凸層用樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比(tanδ(=E”/E’))が0.2以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましい。
【0061】
なお、本発明において貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。
まず、微細凹凸層用樹脂組成物を、2000mJ/cm
2のエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微細凹凸形状を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。
次いで、25℃下、上記樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E400を用いる。
【0062】
<透明基材>
本発明に係る反射防止物品は、支持体として透明基材を含むものであっても良い。本発明に用いられる透明基材は、反射防止物品に用いられる公知の透明基材の中から用途に応じて適宜選択して用いることができる。透明基材に用いられる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の透明樹脂や、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)等のセラミックス、石英、蛍石等の透明無機材料等が挙げられる。
【0063】
前記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0064】
前記透明基材の厚みは、本発明の反射防止物品の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記透明基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
【0065】
本発明に用いられる透明基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
また、透明基材と前記微細凹凸層との密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性(耐傷性)を向上させるためのプライマー層を透明基材上に形成してもよい。このプライマー層は、透明基材と、当該透明基材とプライマー層を介して隣接する微細凹凸層に密着性を有し、可視光を透過するものが好ましい。
プライマー層の材料としては、例えば、フッ素系コーティング剤及びシランカップリング剤等から適宜選択して使用することができる。フッ素系コーティング剤の市販品としては、例えば、フロロテクノロジー製のフロロサーフ FG−5010Z130等が挙げられ、前記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、ハーベス製のデュラサーフプライマーDS−PC−3B等が挙げられる。
【0066】
また、本発明に係る反射防止物品においては、微細凹凸層3の微細凹凸形状側の表面に、剥離可能な保護フィルムを仮接着させてもよい。これにより、微細凹凸層3の微細凹凸形状側の表面に保護フィルムを仮接着した状態で、本発明に係る反射防止物品の保管、搬送、売買、後加工又は施工を行い、適時、該保護フィルムを剥離除去する形態とすることができるため、保管、搬送等の間における微細凹凸層3の微細凹凸形状側の表面の損傷、汚染を防止することができる。
【0067】
<反射防止物品の製造方法>
本発明に係る反射防止物品の製造方法は、上述の本発明に係る反射防止物品を製造できる方法であれば特に限定されないが、例えば、まず透明基材1上に微細凹凸層用樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、所望の微細凹凸形状を有する微細凹凸層形成用原版の該微細凹凸形状を、前記樹脂組成物の塗膜に賦型した後、前記樹脂組成物を硬化させることにより微細凹凸面22を形成し、前記微細凹凸層形成用原版を剥離する方法等が挙げられる。
なお、微細凹凸層形成用原版の微細凹凸形状とは、多数の微小孔が密に形成されたものであり、微細凹凸層の微細凹凸面の形状に対応する形状である。
微細凹凸層形成用原版の微細凹凸形状を微細凹凸層用樹脂組成物に賦型し、該樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
また、微細凹凸層3は、
図1に示すように、透明基材1の一方の面に形成してもよい。この場合、透明基材1は微細凹凸層3の支持体となる。或いは、前記樹脂組成物を硬化させることにより微細凹凸層3を形成した後、製造に使用した透明基材は必要に応じて剥離して、微細凹凸層3のみとしてもよい。
【0068】
前記微細凹凸層形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
前記微細凹凸層形成用原版の微細凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微細凹凸層形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は他の層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
【0069】
また、前記微細凹凸層形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、前記微細凹凸層形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
【0070】
前記微細凹凸層形成用原版に微細凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微小孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微小孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微小孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
すなわち、
図5に示すように、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理する。
微細な凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な孔をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、前記微細凹凸層形成用原版は、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微小孔が密に作製される。当該微細凹凸層形成用原版を用いて製造される微細凹凸層には、前記微小孔に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる微小突起群を備えた微細凹凸が形成され、すなわち、当該微細凹凸の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微細凹凸を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微細凹凸の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微細凹凸形状が形成される。
【0071】
多峰性の微小突起を含む微小突起群を有する微細凹凸層形成用の原版においては、特に限定されないが、例えば、以下の第1〜第5の工程を有する方法により、深さの分布が制御された微小孔を形成することができ、ひいては、微小突起の高さHの度数分布における高さHの平均値H
AVGと標準偏差をσ
Hとが、
H<H
AVG−σ
Hの領域を低高度領域とし、
H
AVG−σ
H≦H≦H
AVG+σ
Hの領域を中高度領域とし、
H
AVG+σ
H<Hの領域を高高度領域とした場合に、
各領域内の前記多峰性微小突起の数Nmと、前記度数分布全体における前記微小突起の総数Ntとの比率が、
中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、
中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たすような、微細凹凸面を作製するための微細凹凸形状を微細凹凸層形成用原版に形成することができる。
上述したように、微細凹凸層形成用原版に形成される微小孔は、陽極酸化処理及びエッチング処理の交互の繰り返しによって形成されるが、この繰り返しの陽極酸化処理における印加電圧を可変することによって、微小孔の深さ(微小突起の高さ分布)を制御することができる。ここで、陽極酸化処理における印加電圧と、形成される微小孔の間隔(ピッチ)とは、比例する関係にあるため、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにおいて、陽極酸化処理の印加電圧を可変すれば、深さ方向に掘り進める時間が相違する微小孔を混在させてその比率を制御することができる。
【0072】
また、このように陽極酸化処理における印加電圧を可変する場合にあっては、太さの太い微小孔の底面に、複数の微小孔を作成して多峰性の微小突起に係る微小孔とすることができる。この太さの太い微小孔の高さの制御等により、多峰性の微小突起についても、高さ分布を制御することができる。
【0073】
図6は、このような高さの分布の制御の説明に供する模式図であり、微細凹凸層形成用原版の製造工程における陽極酸化工程とエッチング工程とにより作製される微小孔を示す図である。
上述したように、陽極酸化処理における印加電圧と、微小孔のピッチとの関係は比例関係であるが、実際上、処理に供するアルミニウムの粒界等により微小孔のピッチにはばらつきが生じる。しかし、
図6においては、このばらつきが存在しないものとして、微小孔が規則正しい配列により作製されるものとして説明する。なお、
図6(a)〜
図6(e)において、左側の図は、微小孔が形成されるロール版の表面の拡大図を示し、右側の図は、左側の図におけるa−a断面図を示す。
【0074】
(第1の工程)
図6(a)に示すように、まず、微細凹凸層形成用原版の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微小孔f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
【0075】
(第2の工程)
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、
図6(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微小孔f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微小孔f1を更に掘り下げる。
本実施形態では、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微小孔f1を二つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、微細凹凸層形成用原版の表面には、二つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微小孔f2が形成され、ロール版の表面には、微小孔f1と微小孔f2とが混在する状態となる。
【0076】
(第3の工程)
続いて、電圧V2よりも高い電圧V3(V3>V2)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微小孔を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V2から電圧V3へ徐々に上昇させ、この印加電圧の上昇を離散的(段階的)に実行すると、微小突起の高さ分布(微小孔の深さ分布)を離散的に作製することができ、この印加電圧の上昇を連続的に実行すると、微小突起の高さ分布を正規分布に設定することができる。そのため、本実施形態では、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程、第2の工程よりも長く設定することにより、
図6(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微小孔f1が二つ、一つに纏まるように広くかつ深く掘り進められ、また、その一つに纏められた微小孔f3の底面が略平坦に形成される(平坦微小孔形成工程)。ここで、略平坦とは、微小孔の底面が平坦な状態だけでなく、その底面が大きい曲率半径で湾曲している状態をも含む状態をいう。
【0077】
(第4の工程)
続いて、電圧V3よりも高い電圧V4(V4>V3)を印加して陽極酸化工程A4を実行した後に、エッチング工程E4を実行する。この工程では、目的とする突起間間隔によるピッチにより微小孔を作成する。この陽極酸化工程A4においても、印加電圧は、電圧V3から電圧V4へ徐々に上昇させる。これにより、上記第3の工程により掘り進められた微小孔f3の一部が更に掘り進められ、その結果、
図6(d)に示すように、微小孔f4となり、この微小孔f4が高さの高い単峰性の微小突起を形成する。
【0078】
(第5の工程)
続いて、印加電圧を上記第1の工程における電圧V1に変更して陽極酸化工程A5を実行した後に、エッチング工程E5を実行する。この工程では、陽極酸化工程A3において形成された微小孔f3であって、第4の工程の陽極酸化工程A4の影響を受けていない微小孔f3の底面に、
図6(e)に示すように、微小孔を複数個形成し、多峰性の微小突起に対応する微小孔f5を形成する(多峰性微小突起用微小孔形成工程)。ここで、印加する電圧V1の大きさを調整することによって、微小孔f5の底面に形成される微小孔の数を増減したり、その微小孔の間隔を調整したりすることができる。
【0079】
以上より、微細凹凸層形成用原版の表面には、高さの異なる微小突起を形成する微小孔f1、f2、f4や、多峰性の微小突起を形成する微小孔f5が形成される。
ここで、この一連の工程では、第1の工程及び第2の工程により作製された深さの異なる微小孔f1、f2を、第3の工程で掘り進めて底面の略平坦な微小孔f3を作製し、第4の工程において、この微小孔f3を掘り進めて単峰性の微小突起に係る微小孔f4を作製し、また、第5の工程において、この微小孔f3の底面を加工して多峰性の微小突起に係る微小孔f5を作製している。ここで、第1の工程から第4の工程に係る陽極酸化工程の印加時間、処理時間、エッチング工程の処理時間等を制御して、各工程で作製される微小孔の深さを制御することにより、微小突起の高さの分布や、多峰性の微小突起の高さの分布を制御することができる。なお、上述の第1の工程〜第5の工程は、必要に応じて回数を省略したり、繰り返したり、工程を一体化したりすることができる。
【0080】
図7に、微細凹凸層形成用の樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、微細凹凸層形成用原版としてロール金型を用いた場合に、透明基材上に微細凹凸層を形成する方法の一例を示す。
図7に示す方法では、樹脂供給工程において、帯状フィルム形態の透明基材1の一面側に、ダイ11により微細凹凸層用樹脂組成物を塗布し、微小突起形状の受容層3’を形成する。なお微細凹凸層用樹脂組成物の塗布方法については、ダイ11による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ13により、微細凹凸層形成用原版であるロール金型12の周側面に透明基材1を加圧押圧し、これにより透明基材1に受容層3’を密着させると共に、ロール金型12の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に、受容層3’を構成する微細凹凸層用樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により微細凹凸層用樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材の表面に微細凹凸層3を作製する。続いて剥離ローラ14を介してロール金型12から、硬化した微細凹凸層3と一体に透明基材1を剥離する。必要に応じてこの透明基材1に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止物品10を作製する。これにより反射防止物品は、ロール材による長尺の透明基材1に、微細凹凸層形成用原版であるロール金型12の周側面に作製された微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
【0081】
なお、上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦型処理によりフィルム形状の反射防止物品を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による微細凹凸層形成用原版を使用した賦型処理等により、枚葉状の反射防止物品を作成する場合等、賦型処理に係る工程、微細凹凸層形成用原版は、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて適宜変更することができる。
【0082】
<反射防止物品の用途>
本発明に係る反射防止物品は、例えば、画像表示装置の画像表示面、店舗のショーウィンドウや、美術館の展示物の展示窓;時計等、各種計測機器の表示窓表面;道路標識や、ポスター等の各種印刷物;自動車、航空機等の乗り物や、各種建築物の窓等の前面又は両面に配置して、視認性を向上することができる。なお、前記画像表示装置にあっては、単に表示機能のみを有する装置(例えば、LCDモニター、CRTモニター等)でも良いが、装置の機能の一部として表示機能を有する装置も該当する。例えば、携帯情報端末、カーナビゲーションシステム等である。また、眼鏡、カメラ、望遠鏡、顕微鏡等の各種光学機器や、各種照明機器の窓材として用いることもできる。
【0083】
また、本発明に係る反射防止物品は、反射防止を図る電磁波の波長帯域を、可視光線帯域に限らず、赤外線、紫外線等の可視光線以外の波長帯域に設定してもよい。その場合は前記の各条件式中において、電磁波の波長帯域の最短波長Λ
min及び最長波長Λ
maxを、それぞれ、赤外線、紫外線等の波長帯域に於ける反射防止効果を希望する最短波長及び最長波長にそれぞれ設定すればよい。例えば、最短波長Λ
minが850nmの赤外線帯域の反射防止を希望する場合は、隣接突起間距離d(若しくは其の最大値d
max)を850nm以下、例えば、d
max=800nmと設計すればよい。
【0084】
<変形例>
上述した実施の形態において、反射防止物品10が、一方の面側のみに、微細凹凸層3の微細凹凸形状を有する例を示したが、本発明はこれに限らず、一方の面側および他方の面側の両側に微細凹凸層3の微細凹凸形状を有していてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、反射防止物品10が、透明基材1と、微細凹凸層3とからなる例を示したが、本発明はこれに限らず、透明基材1が省かれてもよいし、本発明の効果が失われない範囲においてさらに他の層が追加されてもよい。
【実施例】
【0085】
(微細凹凸層形成用原版の作製)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて160秒間、陽極酸化工程A1を実施した。次に、濃度1.8mol/L(18wt%)のリン酸水溶液で35℃の条件で900秒間エッチング工程E1を行い、第1の工程とした。次に、第2の工程として、印加電圧45V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化工程A2を実施した後、濃度1.8mol/L(18wt%)のリン酸水溶液で35℃の条件で700秒間エッチング工程E2を行った。続いて、第3の工程として、印加電圧50V、20℃の条件にて90秒間、陽極酸化工程A3を実施した後、、濃度1.8mol/L(18wt%)のリン酸水溶液で35℃の条件で600秒間エッチング工程E3を行った。続いて、第4の工程として、印加電圧55V、20℃の条件にて60秒間、陽極酸化工程A4を実施した後、、濃度1.8mol/L(18wt%)のリン酸水溶液で35℃の条件で300秒間エッチング工程E4を行った。続いて、第5の工程として、印加電圧60V、20℃の条件にて60秒間、陽極酸化工程A5を実施した後、、濃度1.8mol/L(18wt%)のリン酸水溶液で35℃の条件で300秒間エッチング工程E5を行った。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微細凹凸層形成用原版を得た。
【0086】
(微細凹凸層用樹脂組成物A〜Gの調製)
表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物A〜Gの成分を各々混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の微細凹凸層用樹脂組成物A〜Gを調製した。
なお、表1には、微細凹凸層用樹脂組成物A〜G各々に含まれる成分の配合量を質量部で示す。
また、表1に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート:ダイセル・オルネックス社製、商品名EBECRYL40
ヘキサンジオールジアクリレート:共栄社化学、商品名ライトアクリレート1.6HX−A
EO変性ビスフェノールAジアクリレート:東亜合成社製、商品名M−211B
PEG600ジアクリレート:ダイセル・オルネックス社製、商品名EBECRYL11
ウレタンアクリレート:東亞合成社製、商品名M−1100
ジメチルポリシロキサン:信越化学社製、商品名KF−96L−1.5cs
フッ素化合物:ダイキン社製、商品名オプツールDAC−HP
開始剤(LUCIRIN TPO):BASF社製
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例1]
微細凹凸層用樹脂組成物Aを、上記で得られた微細凹凸層形成用原版の微細凹凸面が覆われ、硬化後の微細凹凸層の厚さが5μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材(厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製))を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm
2の加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して微細凹凸層形成用樹脂組成物を硬化させた。その後、原版より剥離し、実施例1の反射防止物品を得た。実施例1の反射防止物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、微小突起の平均高さH
AVGが250nmの先細り形状の微小突起が、隣接突起間隔の平均d
AVGが170nmで密に配置されてなるものであり、単峰性微小突起と多峰性微小突起とが混在するものであった。
【0089】
実施例1で得られた反射防止物品の微細凹凸面1μm×1μmの領域における微小突起の高さHの度数分布を作成した。該度数分布は、微細凹凸面1μm×1μmの領域を50,000倍に拡大したSEMによる平面視拡大写真を3枚用い、3枚の写真から求めた平均値により作成した。
微小突起の高さの平均値H
AVGが250nmであり、その標準偏差σ
Hが10nmであったため、微小突起の高さHの度数分布において、低高度領域は、H<H
AVG−σ
H=240nmとなり、中高度領域は、H
AVG−σ
H=240nm≦H≦H
AVG+σ
H=260nmとなり、高高度領域は、H>H
AVG+σ
H=260nmとなる。
度数分布全体の微小突起の総数Ntは、49個であった。また、中高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは5個であったので、中高度領域のNm/Ntは、0.10となった。低高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは2個であったので、低高度領域のNm/Ntは、0.04となった。高高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは4個であったので、高高度領域のNm/Ntは、0.08となった。
【0090】
[実施例2]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の反射防止物品を得た。実施例2の反射防止物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0091】
[実施例3]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の反射防止物品を得た。実施例3の反射防止物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0092】
[実施例4]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の反射防止物品を得た。実施例4の反射防止物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0093】
[実施例5]
実施例1において、微細凹凸層形成用原版として、綜研化学社製のFleFimo(登録商標)ARP80−350/350から転写されたレプリカ版を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の反射防止物品を得た。実施例5の反射防止物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、微小突起の平均高さH
AVGが300nmの先細り形状の微小突起が、隣接突起間隔の平均d
AVGが350nmで密に配置されてなるものであり、単峰性微小突起のみからなるものであった。
【0094】
[比較例1]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、以下の組成の微細凹凸層用樹脂組成物Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の物品を得た。比較例1の物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0095】
[比較例2]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の物品を得た。比較例2の物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0096】
[比較例3]
実施例1において、微細凹凸層用樹脂組成物Aの代わりに、表1に示す組成の微細凹凸層用樹脂組成物Gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の物品を得た。比較例3の物品において、微細凹凸層の微細凹凸形状は、実施例1の反射防止物品と同様の形状であった。
【0097】
[比較例4]
比較例2において、微細凹凸層の微細凹凸面に、さらにシリコーン系離型剤(ジメチルポリシロキサン)を、乾燥後の厚みが2.8×10
−12g/μm
2となるように塗布及び乾燥させたこと以外は、比較例2と同様にして、比較例4の物品を得た。比較例4の物品においては、微細凹凸面にシリコーン系離型剤を塗布したことにより、微小突起間の溝が該シリコーン系離型剤によって埋まってしまい、微細凹凸層側の表面は、先細り形状の微小突起が密接して配置されてなる微細凹凸形状とならなかった。
【0098】
[評価]
<対数減衰率の測定>
各実施例で得られた反射防止物品及び各比較例で得られた物品をそれぞれ5cm×1.5cm角に切断したものを試料とし、微細凹凸層側を上面として、株式会社エーアンドディ社製、剛体振り子物性試験器RPT−3000Wの試料台(CHB100)上に置いた。次いで、丸棒形状タイプ(RBP−060;60φ)のエッジを備えた振り子フレーム(FRB−100)を前記試料の微細凹凸層上に置き、振り子測定間隔を3.0秒、振り子吸着時間を2.0秒とし、−40℃から120℃まで4℃/分で昇温しながら対数減衰率を測定し、得られた温度−対数減数率曲線から−40℃から80℃の温度範囲における最大値をとる温度を求めた。なお、当該最大値は、ノイズを除去した温度−対数減数率曲線から求めた。また、参考例として、透明基材(厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(富士フィルム社製)についても同様に対数減衰率曲線を測定した。各実施例の測定結果を
図8に示し、各比較例の測定結果を
図9に示し、参考例の測定結果を
図10に示し、対数減衰率の−40〜80℃の温度範囲における最大値(T)を表2に示す。
【0099】
<表面元素比の測定>
各実施例で得られた反射防止物品及び各比較例で得られた物品の表面(微細凹凸面)において、X線光電子分光分析により、以下の条件下で構成元素(C1s、N1s、O1s、F1s及びSi2p)についてXPSスペクトルを取得し、そのピーク面積値を用いて組成比を求めた。測定結果を表2に示す。なお、上記表面元素比は、表面の深さ10nmまでの分析である。
(X線光電子分光分析の条件)
装置:島津製作所社製 ESCA−3400
入射X線:Al Kα(非単色化X線)
測定領域:6mmφ
X線出力:150W(10kV・15mA)
測定時真空度:1×10
−5Pa以下
【0100】
<耐擦傷性評価>
各実施例で得られた反射防止物品及び各比較例で得られた物品に対して、耐スチールウール性評価を行うことにより、各物品の耐擦傷性について評価を行った。
すなわち、まず、先端径がφ11.3mmである耐スチールウール性評価用治具に、スチールウール#0000(ボンスターポンド製)を取り付け、次に、物品の評価面(微細凹凸面)が上側を向くようにガラス板にサンプルを置き、エアーが入らないよう注意しながら、その四辺のテープ留めを行った。重量が100gとなるように調整した上記耐スチールウール性治具を用いて、走査速度が20〜30mm/secで、同一箇所を10往復するよう横方向にスライドさせながら、サンプル表面を擦った。評価したサンプル面とは反対側に黒テープを貼り付け、三波長管を用いて、サンプル表面の擦られたキズ本数を観察し、カウントし、下記評価基準により物品の耐擦傷性を評価した。
◎:キズなし
○:キズ1〜2本
△:キズ3〜9本
×:キズ10本以上
【0101】
<反射防止性能評価>
各実施例及び各比較例で得られた各物品の裏面(基材側の面)に、黒色テープを貼り付け、紫外可視分光光度計(日本分光社製、商品名「V−7100」)を用いて、JIS Z8701−1999に準拠して2度視野(D65光源)により、反射防止物品表面への5°正反射率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
(結果のまとめ)
実施例1〜5で得られた反射防止物品は、微細凹凸層表面の微細凹凸形状が、本発明で特定する形状であり、前記微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が5〜15%であり、−40〜80℃の温度範囲における反射防止物品の微細凹凸形状側の剛体振り子型自由減衰振動法による対数減衰率の最大値(T)が、0℃以下であったため、耐擦傷性及び反射防止性能に優れるものであった。また、多峰性の微小突起を含む実施例1〜4の反射防止物品は、単峰性の微小突起のみからなる実施例5の反射防止物品に比べ、耐擦傷性に優れていた。
比較例1で得られた物品は、対数減衰率の最大値(T)が0℃よりも大きく、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が5%未満であり、耐擦傷性に劣っていた。
比較例2で得られた物品は、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が存在しておらず、耐擦傷性に劣っていた。
比較例3で得られた物品は、対数減衰率の最大値(T)が0℃よりも大きく、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が存在しておらず、耐擦傷性に劣っていた。
比較例4で得られた物品は、対数減衰率の最大値(T)が0℃よりも大きく、微細凹凸層の微細凹凸形状側の表面の元素構成比においてケイ素が15%よりも大きく、反射防止性能に劣っていた。反射防止性能に劣っていたのは、微細凹凸層形成後にシリコーン系離型剤を塗布したことにより、微細凹凸層の微細凹凸形状が所望の形状にならなかったからと考えられる。