特許第6229411号(P6229411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229411
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20171106BHJP
   B23K 26/362 20140101ALI20171106BHJP
【FI】
   B23K26/70
   B23K26/362
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-203394(P2013-203394)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66581(P2015-66581A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 将介
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−033888(JP,A)
【文献】 特開2006−068808(JP,A)
【文献】 特開2013−049588(JP,A)
【文献】 特開平11−104868(JP,A)
【文献】 特開2011−067846(JP,A)
【文献】 特開昭52−099941(JP,A)
【文献】 特開昭53−053542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289958(US,A1)
【文献】 特開平06−285661(JP,A)
【文献】 特開2009−090598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/362
B23K 26/00
B23K 26/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射して加工する際に被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して密着可能な熱伝導体、
を備え
前記熱伝導体は、前記被加工物に密着する面を少なくとも除いた面がレーザ光からの熱影響を妨げるための被覆がされている
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記熱伝導体は、前記被加工物と同等の熱伝導性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記熱伝導体は、前記被加工物に対して差がある熱伝導性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記熱伝導体は、前記被加工物より高い熱伝導性を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記熱伝導体の前記被加工物に密着する面は、該密着する前記被加工物の面に対応した形状である
ことを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記熱伝導体の前記被加工物に密着する面は、柔軟性を有する
ことを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
レーザ加工装置のレーザ加工方法であって、
レーザ光を照射して加工する際に、被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して熱伝導体を密着させ
前記熱伝導体が前記被加工物より高い熱伝導性を有することにより、前記被加工物と前記熱伝導体が密着している付近の加工深さを浅くする
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料などへの加工手段として一般的には切削などの機械加工が用いられている。一方、射出成形用の金型などはそのキャビティ表面に製品のデザインとなる微細で複雑な形状を施すことがある。機械加工を用いて微細で複雑な形状を加工する場合、使用できる工具が限られてくることや、加工時の工具の消耗が激しく消耗品費用が高額となるという課題がある。そこで、加工時に工具等を使用せず消耗品が少ない加工方法としてレーザを用いた加工方法が用いられることがある。
【0003】
レーザ加工では、レーザ光が金属などの個体材料の表面に吸収されて熱に変換され、その熱エネルギーを利用して材料を溶融しながら加工が行われる。そのため、レーザ加工では、この熱の影響によって加工周辺部に熱損傷や加工の不均一が生じることがあり、高精度で微細な加工を行うことが難しい。
【0004】
なお、関連するレーザ加工方法として、特許文献1には、レーザの出力や加工速度を設定することで材料への熱損傷を低減させる加工方法が開示されている。また、関連するレーザ加工方法として、特許文献2には、2種のレーザを使用し、予熱工程と加工工程により熱損傷を低減させる加工方法が開示されている。また、関連するレーザ加工方法として、特許文献3には、加工する金属などの個体材料の表面に金属粉末を塗布し、その金属粉末をレーザ焼結することによって焼結体を形成して、加飾部(シボ加工や文字形成)を形成する加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−11409号公報
【特許文献2】特開2001−212685号公報
【特許文献3】特開2008−189956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すレーザ加工方法にあっては、実際にはレーザの出力をスキャニングに合わせて高速に変動させることは困難であった。また、特許文献2に示すレーザ加工方法にあっては、2種のレーザで1つの加工を2回に分けて行うことにより時間を要するため、生産性が悪く、高速加工や大きな面積への加工には向かないことがあった。また、特許文献3に示すレーザ加工方法にあっては、塗布する金属粉末の厚みや形成する凹凸の大きさなどが焼結体の強度に影響することがあるため、形状によって加工することが困難な場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、上述した課題を解決することができるレーザ加工装置、及びレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、レーザ加工装置のレーザ加工方法であって、レーザ光を照射して加工する際に被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して密着可能な熱伝導体、を備え、前記熱伝導体は、前記被加工物に密着する面を少なくとも除いた面がレーザ光からの熱影響を妨げるための被覆がされていることを特徴とするレーザ加工装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、レーザ光を照射して加工する際に、被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して熱伝導体を密着させ、前記熱伝導体が前記被加工物より高い熱伝導性を有することにより、前記被加工物と前記熱伝導体が密着している付近の加工深さを浅くすることを特徴とするレーザ加工方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、高精度で微細なレーザ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】成形品の一例を示す模式図である。
図2】成形品を成形するための金型構造の一例を示す模式図である。
図3図2に示す金型構造のA−A断面を示す図である。
図4】各材料の熱伝導率の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態によるレーザ加工装置の概略構成の一例を示す模式図である。
図6】レーザ加工中のときのレーザ加工装置の概略構成の一例を示す模式図である。
図7】レーザ加工中の被加工物の加工位置と熱伝導体の位置との関係の一例を示す模式図である。
図8】第1の実施形態によるレーザ加工処理の一例を示すフローチャートである。
図9図2に示す金型構造のA−A断面の第2の実施形態による例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
まず、本実施形態によるレーザ加工方法の概要について説明する。
【0013】
(概要)
図1は、表面に凹凸を有する成形品500の一例を示す模式図である。また、図2は、図1に示す成形品500を成形するための金型構造200の構造の一例を示す模式図である。この図2では、第1型板210と第2型板220とにそれぞれ組み込まれた第1金型100aと第2金型100bとにより、金型内部の空間であるキャビティ400が構成されていることを示している。
【0014】
図1に示すような成形品500を得るためには、図2に示すように第1金型100aと第2金型100bとの表面形状からなるキャビティ400の空間形状が成形品500の形状に対応するように第1金型100aと第2金型100bとを加工すればよい。つまり、第1金型100aと第2金型100bとの表面形状は、成形品500の表面形状を反転した形状となるため、例えば、成形品500の凸形状に対応する第2金型100bの部分は凹形状に加工することになる。
【0015】
図3は、図2に示す金型構造200のA−A断面を示す図である。第1金型100aと第2金型100bとを加工したとき、理想的にはキャビティ400の形状が成形品500として要求される形状となるように加工されるべきである(図3(a)参照)。
【0016】
しかしながら、実際にレーザ加工した場合には、例えば、第2金型100bの外周面となる加工端面のエッジ部分に熱ダレ5(過加工)が生じることがある(図3(b)参照)。これは、金型の外周面以外を加工する場合には、レーザ加工の熱が金型の全体に伝導して拡散していくのに対し、金型の外周面の近傍を加工する場合には、外周面に密接している空気と金型との熱伝導率に差があることにより熱が拡散しにくくなりこもるためである。図4は、各材料(物質)の室温付近の熱伝導率の一例を示す図である。金型に使われる材料は一般的に鉄やステンレス鋼である。しかし、この図4に示すように、外周の空気の熱伝導率(例えば、0.0241W/mK)は、鉄の熱伝導率(例えば、84W/mK)やステンレス鋼の熱伝導率(例えば、16.7〜20.9W/mK)に比べて小さく、その差は大きい。例えば、熱ダレ5が発生した部分に成形樹脂6を流し込んで成形を行うと(図3(c)参照)、第2金型100bの熱ダレ5の部分が成形品500ではバリ7となって、品質不良が発生してしまう(図3(d)参照)。
【0017】
そこで、本実施形態では、金型の外周面に金型と同等の熱伝導性を有する熱伝導体を密着させた状態でレーザ加工を行うように構成した。これにより、金型の外周面であっても、外周面以外と同様の加工条件とすることができ、高精度で微細なレーザ加工を行うことができる。なお、本実施形態において「密着」とは、ぴったりと着くことをいうが、全く隙間がない完全な密着に限定されるものではなく、部分的に隙間があってもよい。
以下に、熱伝導体を密着させた状態でレーザ加工を行う本実施形態によるレーザ加工装置1の構成について詳しく説明する。
【0018】
(レーザ加工装置1の構成)
図5は、本実施形態によるレーザ加工装置1の概略構成の一例を示す模式図である。レーザ加工装置1は、被加工物100に対してレーザ光を照射するヘッド部10と、被加工物100を設置するステージ部20と、を備えている。また、この図に示す制御装置30は、レーザ加工装置1が備えるヘッド部10及びステージ部20を制御する。ここで、被加工物100は、例えば、図2及び図3に示した第1金型100aや第2金型100bなどのような金型であるが、金型に限定されるものではなく、金型以外の被加工物であってもよい。
【0019】
ヘッド部10は、不図示の支持部を介して、ステージ部20の上方に設けられている。この図1に示すヘッド部10は、レーザヘッド11と、このレーザヘッド11が取り付けられたレーザ加工ステージ12とを備えている。レーザヘッド11は、被加工物100を切削、切断、または穴開けするための連続したレーザ光または断続したレーザ光を照射する。レーザ加工ステージ12は、ステージ部20に設置された被加工物100に対するレーザヘッド11の位置を移動させる。
【0020】
ステージ部20は、被加工物100が設置される台座を有するワークステージ21と、熱伝導体22が取り付けられた補助ブロック23と、補助ブロック23を移動させる可動部である可動ステージ24と、を備えている。ワークステージ21は、設置された被加工物100を保持してヘッド部10に対する位置を移動させる。また、熱伝導体22が取り付けられた補助ブロック23と可動ステージ24とが、ワークステージ21を挟んで左右対称の位置にそれぞれ配置されている。
【0021】
補助ブロック23には、被加工物100の熱伝導性に基づいた熱伝導性を有している熱伝導体22が取り付けられる。例えば、補助ブロック23に取り付けられる熱伝導体22は、被加工物100の種類などに応じて交換することが可能である。ここでは、補助ブロック23には、被加工物100と同等の熱伝導性を有する熱伝導体22が取り付けられている。例えば、被加工物100に使われる材料が鉄の場合には、熱伝導体22として鉄を用いてもよいし、鉄と同等の鉄以外の材料を用いてもよい。
【0022】
可動ステージ24は、左右それぞれの補助ブロック23を互いに接近する方向または離れる方向に移動させる。例えば、可動ステージ24は、左右それぞれの補助ブロック23を互いに接近する方向に移動させることにより、ワークステージ21に設置された被加工物100の外周面に熱伝導体22が密着する位置に補助ブロック23を移動させる。なお、この密着する位置を、以下の説明において「密着位置」とも称する。例えば、可動ステージ24は、左右それぞれの補助ブロック23を互いに接近する方向に移動させることにより、被加工物100の外周面の少なくとも加工位置に対して熱伝導体22を密着させる。すなわち、可動ステージ24は、ワークステージ21に設置された被加工物100に対して熱伝導体22を移動させて密着させる。
【0023】
また、可動ステージ24は、左右それぞれの補助ブロック23を互いに離れる方向に移動させることにより、ワークステージ21への被加工物100の設置または取り外しが可能な位置に補助ブロック23を移動させる。なお、この被加工物100の設置または取り外しが可能な位置を、以下の説明において「退避位置」とも称する。
【0024】
以下、互いに直交する3方向により規定されるXYZ座標系を用いて説明する。ここで、XY平面とはワークステージ21の上面(被加工物100が設置される面)と平行な面を規定するものである。すなわち、X軸方向はワークステージ21の上面における一方向を規定し、Y軸方向はワークステージ21の上面においてX軸方向に直交する方向を規定する。また、Z軸方向はワークステージ21の上面に対して直交する方向を規定するものである。
【0025】
制御装置30は、例えばCPU(Central Processing Unit)等を備えたコンピュータ装置であって、設定された加工処理プログラムに従って、ヘッド部10及びステージ部20を制御する。例えば、制御装置30は、レーザ加工ステージ12の駆動部を制御することにより被加工物100に対するレーザヘッド11の位置をX軸方向、Y軸方向、またはZ軸方向に移動させる。また、制御装置30は、レーザヘッド11から照射するレーザ光の照射強度や照射時間などを制御する。また、制御装置30は、ワークステージ21の駆動部を制御することにより、ワークステージ21の上面に保持された被加工物100の位置をY軸方向に移動させる。また、制御装置30は、可動ステージ24の駆動部を制御することにより、補助ブロック23を密着位置または退避位置に移動させる。
【0026】
なお、上述した、レーザヘッド11、ワークステージ21、及び補助ブロック23のそれぞれの移動方向は一例であって、移動方向は任意に定められてよい。例えば、レーザヘッド11に代えてワークステージ21が、Y軸方向に加えてX軸方向またはZ軸方向にも移動可能な構成としてもよいし、レーザヘッド11とワークステージ21とのいずれもがX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能な構成としてもよい。また、レーザヘッド11のみが移動可能な移動軸を有する構成として、ワークステージ21の位置が固定されている構成としてもよい。また、反対に、ワークステージ21のみが移動可能な移動軸を有する構成として、レーザヘッド11の位置が固定されている構成としてもよい。
【0027】
この図5に示す例では、左右それぞれの補助ブロック23が退避位置に移動している。制御装置30は、例えば、レーザ加工を開始するときに、左右それぞれの補助ブロック23を密着位置に移動させ、被加工物100を挟み込む。これにより、熱伝導体22が被加工物100の外周面に密着する。
【0028】
図6は、レーザ加工中のときのレーザ加工装置1の概略構成の一例を示す模式図である。この図6に示す例では、左右それぞれの補助ブロック23が密着位置に移動している。そして、制御装置30は、設定された加工処理プログラムに従って、ヘッド部10及びステージ部20を制御して、被加工物100の加工位置に対してレーザ光15を照射する。
【0029】
図7は、レーザ加工中の被加工物100の加工位置と熱伝導体22の位置との関係の一例を示す模式図である。
この図7では、図6に示すレーザ加工装置1において、ワークステージ21に設置された被加工物100をヘッド部10の側から見たときの例を示している。ここでは、被加工物100として、図2に示した第2金型100bを例としている。加工される前の第2金型100bは平面体である。レーザ加工装置1は、この加工前の第2金型100bの上面(ワークステージ21に設置されたときにヘッド部10に対向する面)に対してレーザ加工を行う。この図7に示す例では、レーザ加工装置1は、第2金型100bの上面において、加工位置110、120、及び130がそれぞれ凹形状になるようにレーザ加工する。なお、加工する凹形状の長手方向をX軸方向として説明する。
【0030】
図7(a)は、被加工物100の上面における加工位置110を凹形状にレーザ加工するときの状態を示している。ワークステージ21に設置されている被加工物100の加工位置110が、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置となっている。また、補助ブロック23が密着位置に移動しており、被加工物100の外周面となる加工位置110の両端部分のそれぞれに熱伝導体22が密着している。
【0031】
例えば、レーザヘッド11がレーザ光15を照射しながら加工位置110の一端から他端までX軸方向に移動することにより、加工位置110の一端から他端までが凹形状に加工される。なお、レーザヘッド11をX軸方向に移動させて加工を行う際に、加工する形状に応じてY軸方向またはZ軸方向への移動を伴ってもよいが、以下、説明を容易にするため、単にX軸方向に移動させて加工すると記述する。
【0032】
図7(b)は、図7(a)に示す加工位置110の加工が終了した後、加工する位置が次の加工位置120に移動した後の状態を示している。すなわち、加工位置110は加工済みであり、加工位置120がこれから加工する位置である。ワークステージ21に設置されている被加工物100の位置がY軸方向に移動し、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置が加工位置110から加工位置120に変更されている。また、補助ブロック23は、被加工物100の位置が移動する際に一旦退避位置に移動し、加工する位置が次の加工位置120に移動した後に再び密着位置に移動する。これにより、加工位置120の両端部分のそれぞれに熱伝導体22が密着される。
【0033】
例えば、レーザヘッド11がレーザ光15を照射しながら加工位置120の一端から他端までX軸方向に移動することにより、加工位置120の一端から他端までが凹形状に加工される。
【0034】
なお、加工位置130は、加工位置120の加工が終了した後に、次に加工する位置である。加工位置120の加工が終了した後、ワークステージ21に設置されている被加工物100の位置がY軸方向に移動し、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置が加工位置120から加工位置130に変更される。また、補助ブロック23は、被加工物100の位置が移動する際に一旦退避位置に移動し、加工する位置が次の加工位置130に移動した後に再び密着位置に移動する。そして、例えば、レーザヘッド11がレーザ光15を照射しながら加工位置130の一端から他端までX軸方向に移動することにより、加工位置130の一端から他端までが凹形状に加工される。
【0035】
このように、レーザ加工装置1は、被加工物100の外周面となる加工位置(例えば、加工位置110、120、及び130)の両端部分のそれぞれに熱伝導体22を密着させてレーザ加工を行う。ここで、この熱伝導体22が被加工物100と同等の熱伝導性を有することにより、被加工物100の外周面となる加工位置の両端部分においても被加工物100の外周面以外の加工位置の部分と同様に熱が拡散するようになる。そのため、レーザ加工装置1は、加工位置の両端のエッジ部分に、例えば図3(b)に示したような熱ダレ5(過加工)が生じることを抑制することができる。すなわち、レーザ加工装置1は、したがって、レーザ加工装置1は、レーザ加工範囲内で加工深さを均一にすることができ、例えば図3(a)に示したような理想的なキャビティ400の形状またはそれに近い形状が得られるように金型を加工することができる。
【0036】
次に、図8を参照して、本実施形態によるレーザ加工装置1が行うレーザ加工処理の動作について説明する。図8は、本実施形態によるレーザ加工処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、上述の図7を参照して説明した被加工物100(第2金型100b)に対するレーザ加工を例として説明する。
【0037】
まず、補助ブロック23が退避位置に移動している状態において、ワークステージ21に被加工物100が設置される(ステップS110)。次に、制御装置30は、被加工物100における加工位置(例えば、図7(a)に示す加工位置110)が、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置になるように、ワークステージ21をY軸方向に移動させる(ステップS120)。ここで、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置とは、例えば、レーザヘッド11の下方であって、Y軸方向において補助ブロック23の中心位置付近の位置である。
【0038】
続いて、制御装置30は、可動ステージ24を制御することにより補助ブロック23を密着位置に移動させ、被加工物100の外周面となる加工位置110の両端部分のそれぞれに熱伝導体22を密着させる(ステップS130)。これにより、ワークステージ21に設置された被加工物100と熱伝導体22とのそれぞれの位置は、例えば、図7(a)に示す状態となる。
【0039】
次に、制御装置30は、レーザ加工ステージ12を制御することにより、レーザヘッド11を加工位置110の一端(例えば、図7(a)に示す加工位置110の右端)に移動させる。その後、制御装置30は、被加工物100の材料特性に合ったレーザ光15をレーザヘッド11から照射させて、加工を開始する(ステップS140)。そして、制御装置30は、レーザヘッド11からレーザ光15を照射させながら、レーザヘッド11を加工位置110の他端(例えば、図7(a)に示す加工位置110の左端)までX軸方向に移動させることにより加工を行う。
【0040】
次に、制御装置30は、加工位置110に対する加工が終了したか否かを判定する(ステップS150)。ステップS150において加工が終了していないと判定された場合(ステップS150:No)、制御装置30は、加工位置110に対する加工を継続する。
【0041】
一方、ステップS150において加工が終了したと判定された場合(ステップS150:Yes)、制御装置30は、レーザヘッド11からのレーザ光15の照射を停止し、加工位置110に対する加工を完了する。レーザ加工の完了後、制御装置30は、補助ブロック23を退避位置に移動させる(ステップS160)。
【0042】
そして、制御装置30は、被加工物100に次の加工位置があるか否か(すなわち、加工すべき箇所が残っているか否か)を判定する(ステップS170)。ステップS170において、被加工物100に次の加工位置がない(すなわち、加工すべき箇所が残っていない)と判定された場合(ステップS170:No)、制御装置30は、被加工物100に対する加工を終了する。例えば、制御装置30は、ワークステージ21を移動させて被加工物100を最初に設置した位置に戻してレーザ加工処理を終了する。
【0043】
一方、ステップS170において、被加工物100に次の加工位置がある(すなわち、加工すべき箇所が残っている)と判定された場合(ステップS170:Yes)、制御装置30は、ステップS120に処理を戻す。そして、制御装置30は、被加工物100における次の加工位置(例えば、図7(b)に示す加工位置120)が、ヘッド部10からレーザ光15が照射される位置になるように、ワークステージ21をY軸方向に移動させる。続いて、制御装置30は、補助ブロック23を密着位置に移動させ、加工位置120の両端部分のそれぞれに熱伝導体22を密着させる。これにより、ワークステージ21に設置された被加工物100と熱伝導体22とのそれぞれの位置は、例えば、図7(b)に示す状態となる。
【0044】
次に、制御装置30は、加工位置110に対する加工と同様に、レーザヘッド11からレーザ光15を照射させながら、レーザヘッド11を加工位置120の一端から他端までX軸方向に移動させることにより加工を行う。そして、制御装置30は、被加工物100における全ての加工位置に対する加工が終了まで、ステップS120からS170の処理を繰り返し、被加工物100における全ての加工位置に対するレーザ加工を行う。
【0045】
このように、本実施形態によるレーザ加工装置1では、被加工物100の外周面の少なくとも加工位置に対して被加工物100と同等の熱伝導性を有した熱伝導体22を密着させた状態でレーザ加工を行う。そのため、本実施形態のレーザ加工装置1によれば、レーザ加工処理において、レーザ加工する範囲(レーザ加工範囲)において同等の熱伝導条件が得られ、熱伝導性の差により熱損傷(例えば、熱ダレ5)が生じることを抑制することができる。すなわち、本実施形態のレーザ加工装置1によれば、レーザ加工範囲内で加工深さを均一にすることができる。したがって、本実施形態によれば、高精度で微細なレーザ加工を行うことができる。
【0046】
なお、被加工物100と熱伝導体22との密着度合は高い方がよく、レーザ加工する加工位置(例えば、加工位置の端部)においてなるべく隙間なく密着することが望ましい。そのため、熱伝導体22の被加工物100に密着する面の形状を、その密着する被加工物100の面に対応した形状(例えば、反転形状)としてもよい。また、熱伝導体22の被加工物100に密着する面が被加工物100の面に対応した形状となるように、熱伝導体22の材料として柔軟性のある材料を用いてもよい。柔軟性のある材料を用いることにより、熱伝導体22を被加工物100に対して押し付けたときに、被加工物100の形状に応じて熱伝導体22が変形することにより熱伝導体22を被加工物100に対して密着させることができる。
【0047】
さらに、熱伝導体22は、被加工物100の外周面となる加工位置の両端部分のそれぞれに対して、より広い範囲で密着させることが望ましい。そのため、熱伝導体22は、被加工物100の外周面のうちの1つの側面全体を覆う形状としてもよいし、複数の側面にわたって覆う形状としてもよい。
【0048】
また、熱伝導体22自体がレーザヘッド11から照射されたレーザ光15による熱影響を受ける可能性がある場合には、熱伝導体22の上面(熱伝導体22のレーザヘッド11側の面)にレーザ光15を遮る部材(カバーなど)を設けてもよい。また、熱伝導体22の上面を、レーザ光15を遮る部材で覆ってもよい。すなわち、熱伝導体22は、被加工物100に密着する面を少なくとも除いた面が被覆されていてもよい。これにより、熱伝導体22は、レーザ光15からの熱伝導体22に対する熱影響を妨げることができる。
【0049】
また、図5図6、及び図7では、熱伝導体22がワークステージ21を挟んで左右対称の位置にそれぞれ配置されている構成例を説明したが、熱伝導体22の数や位置はこれに限られるものではない。例えば、レーザ加工装置1は、1つまたは3以上の熱伝導体22を被加工物100に密着可能に備えていてもよい。また。それぞれの熱伝導体22が設けられている位置は任意の位置であってもよい。また、熱伝導体22が補助ブロック23に取り付けられた構成に代えて、熱伝導体22が可動ステージ24に直接取り付けられた構成としてもよい。
【0050】
なお、図5及び図6では、レーザ加工装置1の外部に備えられた制御装置30がレーザ加工装置1を制御する例を示したが、制御装置30の機能はレーザ加工装置1の内部に備えられていてもよい。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1の構成は、第1の実施形態と同様であるので、本実施形態において特徴的な処理について説明する。第1の実施形態では、被加工物100と同等の熱伝導性を有する熱伝導体22を用いてレーザ加工処理を行う例を説明した。本実施形態では、被加工物100に対して差がある熱伝導性を有する熱伝導体22を用いる点が第1の実施形態と異なる。
【0052】
被加工物100の熱伝導性に基づいて、熱伝導体22の材料を被加工物100に対して差がある熱伝導性を有する材料に変えることにより、被加工物100を加工したときに被加工物100の外周面となる加工端面のエッジ部分の形状を変えてもよい。例えば、熱伝導体22の材料として、被加工物100の熱伝導性より高い材料を用いることにより、被加工物100の外周面となる加工端面のエッジ部分に加工残りを発生させてもよい。
【0053】
図9は、図2に示す金型構造200のA−A断面の本実施形態による例を示す図である。ここでは、熱伝導体22の材料として、被加工物100より高い熱伝導性を有する材料(熱伝導率が高い材料)を用いる例を示している。なお、図9において、図3に示す各部に対応する部分には同一の符号を付けており、その説明を省略する。
【0054】
図9(a)は、第1金型100aと第2金型100bとを図1に示す成形品500が得られるように加工したときの金型の形状を示している。これは、例えば、第1の実施形態において説明したように、被加工物100(第1金型100a、第2金型100b)と同等の熱伝導性を有する熱伝導体22を被加工物100の外周面の加工位置に密着させてレーザ加工することにより得られる。
【0055】
図9(b)は、第2金型100bを加工する際に第2金型100bより高い熱伝導性を有する熱伝導体22を被加工物100の外周面の加工位置に密着させてレーザ加工したときの一例を示している。被加工物100の外周面の近傍ではレーザ光15による熱が熱伝導体22に伝わりやすく拡散しやすいため加工深さが浅くなり、図3に示した熱ダレ5とは逆方向に加工残り8が生じる。
【0056】
この加工残り8が生じた部分に成形樹脂6を流し込んで成形を行うと(図9(c)参照)、この加工残り8の部分が、成形品500を金型から取り出しやすくするための抜きテーパの役目を果たしてもよい。また、第2金型100bの加工残り8の部分が、成形品500では面取り9(またはコーナーR)のような形状となる(図9(d)参照)。つまり、金型に改めて加工することなく、成形品500のエッジ部分に面取り9(またはコーナーR)のような形状を成形してもよい。
【0057】
なお、加工残り8の形状は、熱伝導体22の材料、被加工物100の外周面に対する熱伝導体22の密着位置(加工位置に対する熱伝導体22の密着位置)、熱伝導体22の密着面積などによって様々な形状とすることが可能である。
【0058】
このように、本実施形態によるレーザ加工装置1では、被加工物100の外周面の少なくとも加工位置に対して密着させる熱伝導体22と被加工物100との熱伝導性に差を持たせるように構成した。これにより、被加工物100の外周面となる加工位置の端部の形状を任意に変化させることができる。例えば、熱伝導体22の材料として被加工物100より高い熱伝導性を有する材料を用いることにより、被加工物100と熱伝導体22が密着している付近の加工深さを浅くすることができる。よって、本実施形態によれば、例えば上述したように、成形品500のエッジ部の面取り9(またはコーナーR)に対応した形状を容易に加工することができる。
【0059】
なお、この熱伝導体22と被加工物100との熱伝導性の差を、必要する加工残り8の形状の大きさに応じて決めてもよい。例えば、加工残り8の形状を大きくする場合には熱伝導体22と被加工物100との熱伝導性の差を大きくしてもよいし、加工残り8の形状を小さくする場合には熱伝導体22と被加工物100との熱伝導性の差を小さくしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、図9を参照して、被加工物100に対して差がある熱伝導性を有する熱伝導体22の材料として、被加工物100より高い熱伝導性を有する材料(熱伝導率が高い材料)を用いる例を示したが、これに限られるものではない。例えば、熱伝導体22の材料として、被加工物100より低い熱伝導性を有する材料(熱伝導率が低い材料)を用いてもよい。これにより、被加工物100の外周面となる加工端面のエッジ部分に、意図して過加工を発生させてもよい。
【0061】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
【0062】
(付記1)レーザ光を照射して加工する際に被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して密着可能な熱伝導体、を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【0063】
(付記2)前記熱伝導体は、前記被加工物と同等の熱伝導性を有することを特徴とする付記1に記載のレーザ加工装置。
【0064】
(付記3)前記熱伝導体は、前記被加工物に対して差がある熱伝導性を有することを特徴とする付記1に記載のレーザ加工装置。
【0065】
(付記4)前記熱伝導体は、前記被加工物より高い熱伝導性を有することを特徴とする付記3に記載のレーザ加工装置。
【0066】
(付記5)前記熱伝導体は、前記被加工物に密着する面を少なくとも除いた面がレーザ光からの熱影響を妨げるための被覆がされていることを特徴とする付記1から4の何れかに記載のレーザ加工装置。
【0067】
(付記6)前記熱伝導体の前記被加工物に密着する面は、該密着する前記被加工物の面に対応した形状であることを特徴とする付記1から5の何れかに記載のレーザ加工装置。
【0068】
(付記7)前記熱伝導体の前記被加工物に密着する面は、柔軟性を有することを特徴とする付記1から6の何れかに記載のレーザ加工装置。
【0069】
(付記8)前記被加工物が設置される台座と、前記台座に設置された前記被加工物に対して前記熱伝導体を移動させて密着させる可動部と、を備えることを特徴とする付記1から7の何れかに記載のレーザ加工装置。
【0070】
(付記9)レーザ加工装置のレーザ加工方法であって、レーザ光を照射して加工する際に、被加工物の外周面の少なくとも加工位置に対して熱伝導体を密着させることを特徴とするレーザ加工方法。
【0071】
(付記10)前記熱伝導体が前記被加工物と同等の熱伝導性を有することにより、レーザ加工範囲内で加工深さを均一にすることを特徴とする付記9に記載のレーザ加工方法。
【0072】
(付記11)前記熱伝導体が前記被加工物より高い熱伝導性を有することにより、前記被加工物と前記熱伝導体が密着している付近の加工深さを浅くすることを特徴とする付記9に記載のレーザ加工方法。
【符号の説明】
【0073】
1 レーザ加工装置、5 熱ダレ、6 成形樹脂、7 バリ、8 加工残り、9 面取り、10 ヘッド部、11 レーザヘッド、12 レーザ加工ステージ、20 ステージ部、21 ワークステージ(台座)、22 熱伝導体、23 補助ブロック、24 可動ステージ(可動部)、30 制御装置、100 被加工物、100a 第1金型、100b 第2金型、110、120、130 加工位置、200 金型、210 第1型板、220 第2型板、400 キャビティ、500 成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9