(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された構成によれば、苗の植付作業時は、圃場端に走行車体(機体)が到達するまで苗を植え付けることや、圃場端に苗植付装置を合わせて苗の植え付けを開始することがあるが、苗の植付間隔の設定や圃場の広さによっては、一株分植え付けを行うべき位置で苗の植え付けが行われないことがある。
【0005】
このため、空きスペースに作業者が手作業で苗を植え付ける必要があり、作業者の費やす時間と労力が増大する問題がある。
上記の問題は、走行操作レバーと副変速操作レバーの操作により解消することができるが、走行操作レバーの操作と同時に副変速レバーを走行中立に移動させ、一株分を植え付けると同時に副変速操作レバーを植付走行に移動させる必要があり、操縦者に煩雑な操作を要求せざるを得ず操作性が低下する問題がある。
【0006】
これに加えて、各レバーの操作タイミングを誤ると、苗を同じ箇所に重複して植え付けてしまい、苗の消費量が増大する問題があると共に、停止して植え付けた苗と走行開始後に植え付けた苗との前後間隔が揃わず、苗の植付精度が低下する問題がある。
【0007】
本発明の課題は、簡単な操作で走行車体を前後進させることなくその場に苗を植え付けられ、苗の植え始め位置や植え終え位置が揃えられ、苗の植え付け精度が良い苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車体(3)と、圃場に苗を植え付ける植付装置(55)を有する苗植付部(5)と、前記走行車体(3)の走行状態を「路上(走行のみ)」、「植付(走行低速+植付駆動)」及び「中立(植付のみ)」の何れかに切り替える副変速操作レバー(10)と、前記苗植付部(5)を上昇させる「植付上」、苗植付部(5)を苗植付姿勢に下降させる「植付下」、苗植付部(5)の昇降を行わない「中立」及び副変速操作レバー(10)を「中立」位置に移動させつつ苗植付部(5)の植付駆動力を入状態とする「その場植付」及び苗植付部(5)の植付駆動力を入状態としながら走行車体(3)を走行させる「植付入」のいずれかの位置に切り替える植付操作レバー(6)と、該植付操作レバー(6)を「その場植付」位置に操作すると、副変速操作レバー(10)を「中立」位置に移動させる連動機構(R)
とを備え、前記連動機構(R)は、植付操作レバー(6)の基部に設けた植付操作レバー(6)の操作に連動して回動し、走行車体(3)側に支持される取付ステー(78)と、該取付ステー(78)に取り付けた連動ロッド(79)と、前記取付ステー(78)を、その回動中心(78c)を中心として回動させると、連動ロッド(79)により押されて、取付ステー(78)とは独立に、走行車体(3)側に支持される回動中心(80c)を中心として回動する切替カム(80)と、該切替カム(80)に設けたケーブル受部(80a)と副変速操作レバー(10)を連結する連動ケーブル(82)から構成し、前記連動機構(R)は、植付操作レバー(6)を「その場植付」位置に移動させると連動ケーブル(82)が副変速操作レバー(10)を苗植付を切状態とする「中立」位置に移動させる構成を備えたことを特徴とする苗移植機である。
【0010】
請求項2記載の発明は、植付操作レバー(6)の操作位置である「その場植付」位置は、「植付入」位置の機体左右側方のどちらかとし、植付操作レバー(6)から手を離すと、植付操作レバー(6)を「その場植付」位置から「植付入」位置に移動させる弾性部材(88)を植付操作レバー(6)と走行車体(3)の間に取り付け、連動ケーブル(82)は、副変速操作レバー(10)が「植付」位置にあるときに張り、「中立」位置と「路上」位置にあるときには緩む構成としたことを特徴とする
請求項1記載の苗移植機である。
【0011】
請求項3記載の発明は、走行車体(3)の走行速度及び進行方向を変更する無段変速装置(29)を設け、該無段変速装置(29)を操作する走行操作レバー(13)と、無段変速装置(29)の出力と出力方向を検知する出力検知センサ(93)と、苗植付部(5)に設けた苗の残量が所定量以上か未満かを検知する苗検知センサ(84)と、植付操作レバー(6)を移動操作するレバーアクチュエータ(91)とを設け、苗検知センサ(84)が苗を検知している状態で、出力検知センサ(93)が検知する無段変速装置(29)の出力方向が「前進」であるときは、レバーアクチュエータ(91)を作動させて植付操作レバー(6)を「植付入」位置に移動させる制御装置(200)を備えたことを特徴とする
請求項1または2に記載の苗移植機である。
【0012】
請求項4記載の発明は、苗植付部(5)が、機体左右方向に往復移動可能に構成し、苗植付部(5)が左右端部に移動したことを検知する左右の端部検知センサ(85)を設け、制御装置(200)は、苗検知センサ(84)が非検知状態であるときに出力検知センサ(93)が無段変速装置(29)の前進出力を検知しているときは、苗植付部(5)の左右の端部検知センサ(85)のどちらか一方が検知状態になるまで苗植付部(5)を移動させ、端部検知センサ(85)が検知状態になると、レバーアクチュエータ(91)を作動させて植付操作レバー(6)を「植付切=中立」位置に移動させる制御構成を備えたことを特徴とする
請求項3に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、植付操作レバー6を「その場植付」位置に操作すると副変速操作レバー10を「中立」位置に移動させる連動機構Rを設けたことにより、植付操作レバー6を「その場植付」位置に操作したときに、走行車体3を前後進させることなく、その場に苗を植え付けられるので、植付条の植付開始位置や植付終了位置に苗を植え付けることができ、苗の植え始め位置や植え終え位置が揃えられ、苗の植付精度が向上する。
【0014】
また、前記連動機構Rを設けたことにより、任意の位置に苗を確実に植え付けることができるので、株間が開き過ぎることが防止され、苗の植付精度が従来技術以上に向上する。
【0015】
さらに、請求項1記載の発明によれば、植付操作レバー6を「その場植付」位置に操作すると、連動ロッド79が切替カム80を回動させ、切替カム80に接続した連動ケーブル82が副変速操作レバー10を「中立」位置に移動させることにより、特定の操作時にのみ走行を停止させて、その場に苗の植付を行うことができるので、誤作動により走行車体3が意図しない位置で停止することが防止され、作業能率の低下が防止される。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、
請求項1記載の発明の効果に加えて、植付操作レバー6から手を離すと、植付操作レバー6を「植付入」位置に移動させるスプリング88を設けたことにより、走行車体3が停止した状態における「その場植付」位置で苗を植えた後で、すぐに植付走行を開始することができるので、苗を同じ位置に何度も植えることが防止され、余分な苗の消費が抑えられる。
【0017】
副変速操作レバー10が「植付」位置にあるときにのみ、連動ケーブル82が張り状態になることにより、副変速操作レバー10を「中立」にして走行を停止させているときや、「路上走行」にして圃場外を走行中に植付操作レバー6を誤って「その場植付」位置に移動させても、その場で走行が停止することを防止できるので、安定した走行が可能となる。
【0018】
また、不要な苗の植付動作を防止できるので、苗の消費量が抑えられると共に、苗植付部5が地面等に接触して破損することが防止される。
請求項3記載の発明によれば、
請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、苗がある状態で走行車体3が前進走行するときは、レバーアクチュエータ91が自動的に植付操作レバー6を「植付入」位置に移動させることにより、植付操作レバー6を「その場植付」位置に移動させた際にすぐにその場に苗を植え付けることができるので、旋回終了後の植付開始位置に確実に苗が植えられ、苗の植付開始位置と終了位置が揃えられ、苗の植付精度が向上する。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、
請求項3記載の発明の効果に加えて、苗の残量が少ないときに苗植付部5が左右のどちらかの端部まで移動すると、レバーアクチュエータ91が作動して植付操作レバー6を「植付切」位置に移動させることにより、苗の補充作業位置に苗植付部5を位置させることができるので、苗の補充作業を能率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例を図面とともに説明する。
図1と
図2には、本実施例の苗移植機の側面図と平面図を示す。前輪16と後輪17を配置して、操縦座席2の下側に搭載したエンジン1によって連動駆動して走行する乗用四輪走行形態の車体3の後部に、昇降シリンダ18の伸縮によって、リヤフレーム19に対して昇降回動される平行リンク形態の昇降リンク機構4が設けられて、この昇降リンク機構4後端部のヒッチリンク20にローリング軸21を介して苗植付部5の植付部フレーム22がローリング自在に連結される。
【0022】
なお、本明細書では、操縦席2に座って前後方向をそれぞれ前、後といい、左右方向をそれぞれ左、右という。
前記車体3は、操縦座席2の前方にステアリングポスト23や、この上端部のハンドル24及びボンネット25等を構成し、このハンドル24によって前輪16を操作して走行運転する。これら座席2、センタフロア26、及びボンネット25等の左右両側部には広幅のサイドフロア27を配置して、操縦者が車体3上を前後方向へ移動し易くしている。
【0023】
前記センタフロア26の下側には、ミッションケース28や、油圧無段変速装置29等が設けられ、前記エンジン1からベルト37を介して油圧無段変速装置29を駆動させ、ミッションケース28の連動機構を伝動する。このミッションケース28の連動機構から左右両側部のフロントアクスルハウジング30内の連動機構を介して前輪16を伝動駆動し、ミッションケース28の後側部に取出される後輪連動軸31を介して、リヤアクスルハウジング32に軸装の後輪17を伝動駆動し、ミッションケース28の後側部に取出されるPTO軸33が車体3後部に延出されて、前記苗植付部5の入力軸34を連動し、このPTO軸33の途中部から走行車体3の後部のリヤフレーム19上の施肥装置35を連動する形態である。
【0024】
前記前輪16、後輪17、及びPTO軸33を連動する伝動系には、主変速装置を油圧無段変速装置29によって構成して、
図3のステアリングポスト部25の平面図に示すように、前記ハンドル24の左手側に配置の走行操作レバー13によってクランク状形態のレバーガイド36に沿って「中立」N位置から「前進」F位置、又は「後進」R位置へ操作して、油圧無段変速装置29のトラニオン軸をシフト連動して、「中立」Nの走行停止の位置から「前進」F増速走行の位置、又は「後進」R増速走行の位置に主変速操作することができる。
【0025】
前記主変速装置29から駆動される副変速装置が、ミッションケース28内に設けられて、前記ハンドル24の足元部に配置の副変速操作レバー10によって、
図4の副変速操作レバーガイド部分の平面図に示すように、副変速操作レバーガイド38に沿って、副変速操作レバー10を中央部に位置する「駆動停止」P位置及び「中立」Q位置から「移動速」H位置、又は「植付速」L位置へそれぞれ操作して、走行車体3の走行伝動を、路上走行速に適応する伝動状態「移動速」Hにすることと、苗植付部5における苗の植付けに適する伝動状態「植付速」Lにすることができる。
【0026】
「駆動停止」P位置は、副変速操作レバー10を手動操作により、このP位置に操作すると、副変速操作レバー10の移動が規制され、作業者が副変速操作レバー10を再度手動操作するまで走行伝動が切られた状態が維持される。
【0027】
また、「駆動停止」P位置から、副変速操作レバー10の操作による走行伝動の切状態を、次に副変速操作レバー10が操作されるまで維持することができる「中立」Qに切替操作することができる。なお、副変速操作レバー10の操作位置は、副変速ポテンショメータ11(
図5)によって検知される。
【0028】
図3に示すように、前記ハンドル24の右手側には、植付操作レバー6が設けられている。この植付操作レバー6は、植付操作レバーガイド40を前後方向に操作して、前記昇降シリンダ18の伸縮によって昇降される苗植付部5の上昇位置を示す「植付上」a位置、昇降シリンダ18の伸縮作動を停止させて苗植付部5を中立状態にする「中立」c位置、苗植付部5を苗植姿勢位置へ下降させる「植付下」b位置、及び苗植姿勢位置に下降された苗植付部5の植付駆動力を入状態としながら走行車体3を走行させる「植付入」d位置(苗植付部で苗を植え付けながら走行する位置)、さらに副変速操作レバー10を「中立」位置に移動させつつ苗植付部5の植付駆動力を入状態とする「その場植付」eのいずれかの位置に切り替えることができ、この植付操作レバー6のシフト操作によってレバー位置を検知するレバーポテンショメータ8が設けられている。
【0029】
なお、前記植付操作レバー6のシフト操作による苗植付部5の「植付上」a位置、「中立」c位置、「植付下」b位置及び「植付入」d位置への移動機構については、本出願人による特開2013−66391号公報などに詳細に開示している。
【0030】
前記ボンネット25の上端面には、操作パネル42を配置し、各種パイロットランプ43、44や、ダイヤル45、及び前記エンジン1の停止選択スイッチ9を設けている。この停止選択スイッチ9を押し操作することによって、所定条件のもとでエンジン1が停止する。
【0031】
図1、
図2に示すように、前記走行車体3の前端中央部には、走行視準のセンタポール46を設け、サイドフロア27の外側部にマット苗を複数段に積載する補助苗載棚枠(予備苗枠)47を設ける。
【0032】
前記苗植付部5は、植付部フレーム22の下部にセンタフロート48、及びサイドフロート49をフロート軸50の周りに上下揺動自在に支持して、走行土壌面を滑走しながら植付面を均平することができる。この植付部フレーム22の上方には、後下り傾斜の苗タンク51が左右往復移動するように支持構成されて、前上端部から供給されるマット苗を支持して、タンク底部の繰出ベルトの間歇的駆動によって苗を繰出すことができる。
【0033】
また、植付部フレーム22の後端部には、ダブルクランク機構形態により回転作動して、先端の植付爪52を略楕円形状の植付軌跡に沿って作動させて、この下動行程で前記苗タンク51の後下端の苗取口ガイド53の苗取口54に繰出された苗を分離保持して、土壌面に植付ける植付装置55を備えている。これら苗タンク51及び植付装置55は横方向に一定間隔を有して配置の多条植(図例では四条植)形態にしている。
【0034】
前記苗植付部5の前側には、一体的に昇降可能の代掻ロータ56が、各フロート48、49の正面幅に対向して配置され、フロート48、49で均平する土壌面を予め代掻ロータ56で掻き均して均平し易くする。各代掻ロータ56は、前記リヤアクスルハウジング32内の連動機構から取出される動力により連動軸57を介して伝動回転される。
【0035】
また、この代掻ロータ56は、ロータ支持機構58を介して植付部フレーム22の前側上部に吊下げられて、代掻抵抗を受けて植付部フレーム22の昇降に対して、独自にも昇降することができる形態である。
【0036】
前記苗植付部5は、センタフロート48の仰角揺動によって、仰角センサ59(
図5)の検知により昇降シリンダ18の油圧回路の制御弁が切替えられて、深い土壌面の走行植付では苗植付部5を上昇し、浅い土壌面の走行植付では下降して、土壌面に対する苗植付深さが一定に維持できる形態に構成している。
【0037】
前記苗移植機を路上走行のように比較的高速度で走行するときは、苗植付部5を非苗植姿勢位置に上昇させておき、この苗植付部5のPTO軸33からの伝動は切りにしておき、しかも副変速装置を「移動速」H位置乃至「植付速」L位置に操作可能にしておくもので、エンジン1を始動させた状態で、植付操作レバー6を「植付上」a位置へ操作して、苗植付部5を接地面から上昇させた姿勢に維持する。この状態で走行操作レバー13を、「中立」N位置から「前進」F位置、乃至「後進」R位置へ操作して、油圧無段変速装置29の伝動による走行速度を制御操作することができる。この走行を停止するときは、走行操作レバー13を「中立」Nに戻して、ブレーキペダル60を踏んで制動させる。
【0038】
苗移植機を補助の苗植行程に用いて植付作業するときは、前記走行操作レバー13を「中立」N位置にして、副変速操作レバー10を「植付速」L位置に操作し、植付操作レバー6を「(昇降)中立」c位置から「植付下」b位置、又は「植付入」d位置にする。そして、この植付操作レバー6を「植付入」d位置に操作した状態で、走行操作レバー13を「前進」F位置側へシフト操作することによって、前記副変速操作レバー10によって設定された「植付速」L伝動による走行速のもとに苗植付部5による苗植作業が行われる。
【0039】
このとき、本実施例では、
図6を用いて説明するように、副変速操作レバー10を「中立」Q位置に移動させつつ、植付操作レバー6を苗植付部5の植付駆動力を入状態とする「その場植付」e位置に操作することができる。
【0040】
本実施例の植付操作レバー6は
図6(A)の要部斜視図に示す通りの構成であり、該植付操作レバー6の植付操作レバーガイド40は
図6(B)に示す通り、T字状の溝から構成されている。
【0041】
図6(B)に示す植付操作レバーガイド40は操縦席の手前から「植付上」a、「中立」c、「植付下」b及び「植付入」dが順に上下方向に直線上に配置され、「植付入」dの左右方向のガイド溝には
図6(B)の左側にある旋回時や後進時の苗植付部5の自動上昇を行わなくする「切」fと、右側にある走行を停止させると共に苗植付装置45を作動させ、移動せずに苗を植え付ける「その場植付」eが配置されている。
【0042】
また、
図6(A)に示すように植付操作レバー6の基部には取付ステー78が取り付けられており、該取付ステー78には走行車体(機体)3に支持された回動中心78cがあり、該回動中心78cを支点として取付ステー78が回動する構成である。また植付操作レバー6の基部側には、該レバー6の長手方向に直交する方向に伸びた連動ロッド79が設けられている。該連動ロッド79はクランク状に折れ曲がった形状をしており、該連動ロッド79の折れ曲がり部に切替カム80の回動中心80cを支点として回転するプロペラ状の複数の羽根の外縁が各々当接するように配置されている。
【0043】
切替カム80の複数の羽根の中心部は走行車体(機体)3に支持されて、回動中心80cを支点として回動可能になっているので、連動ロッド79が回動中心78cを支点として矢印Aに回動することで、連動ロッド79が当接した羽根を回転させるように作動する。切替カム80の複数の羽根の一部の羽根にはケーブル82の一端が接続しており、該ケーブル82の他端が副走行操作レバー10に接続している。
【0044】
従って、植付操作レバー6を「その場植付」e位置に操作するとケーブル82が緩み、副変速操作レバー10は「中立」Q位置に移動され、走行車体3は停止状態となるので、畦際などで車両を停止させた状態で苗の植付ができる。
【0045】
また、取付ステー78と走行車体3の間にはスプリング88が取り付けられ、後述するように、該スプリング88が植付操作レバー6を「その場植付」e位置側から「植付入」d側に移動させる方向に付勢しているので、「その場植付」e位置にある植付操作レバー6から操縦者が手を離すと植付操作レバー6は「その場植付」e位置から「植付入」d側に移動させることができる。
【0046】
植付操作レバー6を「その場植付」e位置に操作すると副変速操作レバー10を「中立」Q位置に移動させる連動機構Rは、上記記載と
図6に示すように取付ステー78、連動ロッド79、切替カム80及びケーブル82から構成されることが分かる。
【0047】
本実施例では前記連動機構Rを設けたことにより、植付操作レバー6を「その場植付」d位置に操作したときに、走行車体3を前後進させることなく、その場に苗を植え付けられるので、植付条の植付開始位置や植付終了位置に苗を植え付けることができ、苗の植え始め位置や植え終え位置が揃えられ、苗の植付精度が従来技術より向上する。
【0048】
また、前記連動機構Rを設けたことにより、任意の位置に苗を確実に植え付けることができるので、株間が開き過ぎることが防止され、苗の植付精度が従来技術以上に向上する。
【0049】
さらに、植付操作レバー6を「その場植付」e位置に操作すると、連動ロッド79が切替カム80を回動させ、切替カム80に接続した連動ケーブル82が副変速操作レバー10を「中立」c位置に移動させることにより、特定の操作時にのみ走行を停止させて、その場に苗の植付を行うことができるので、誤作動により走行車体3が意図しない位置で停止することが防止され、作業能率の低下が防止される。
【0050】
また、
図6(A)に示すように、植付操作レバー6の操作位置である「その場植付」e位置は、「植付入」d位置の機体左右側方のどちらかとし、植付操作レバー6から手を離すと、植付操作レバー6を「その場植付」e位置から「植付入」d位置に移動させるスプリング88を植付操作レバー6と走行車体3の間に取り付け、または植付操作レバー6にトルクスプリング(図示せず)を取り付けている。また、連動ケーブル82は、副変速操作レバー10が「植付」L位置にあるときに張り、「中立」P位置と「移動(路上走行)」H位置にあるときには緩む構成としても良い。
【0051】
こうして、植付操作レバー6から手を離すと、植付操作レバー6を「その場植付」e位置から「植付入」d位置に移動させるスプリング88又は図示しないトルクスプリングを設けたことにより、走行車体3が停止した状態における「その場植付」e位置で苗を植えた後で、すぐに植付走行を開始することができるので、苗を同じ位置に何度も植えることが防止され、余分な苗の消費が抑えられる。
【0052】
副変速操作レバー10が「植付」L位置にあるときにのみ、連動ケーブル82が張り状態になることにより、「中立」Q位置にして走行を停止させているときや、「路上走行(移動)」H位置にして圃場外を走行中には連動ケーブル82が緩んでいる状態にあるので、植付操作レバー6を誤って「その場植付」e位置に移動させても、副変速操作レバー10が連動ケーブル82に引っ張られて移動することが無く、その場で走行が停止することを防止できるので、安定した走行が可能となる。
【0053】
また、不要な苗の植付動作を防止できるので、苗の消費量が抑えられると共に、苗植付部5が地面等に接触して破損することが防止される。
また本実施例には、油圧式無段変速装置(HST)29の出力と出力方向を検知する出力検出センサ(ポテンショメータ)93と苗の残量が所定量以上か未満かを検知する苗検知センサ84を苗植付部5に設け、また、植付操作レバー6を移動操作するレバーアクチュエータ91を設けておき、苗検知センサ84が苗植付部5の苗タンク51に載置されている苗を検知している状態で、出力検出センサ93が検知する無段変速装置29の出力方向が「前進」であるときは、前記レバーアクチュエータ91を作動させて植付操作レバー6を「植付入」位置に移動させる制御装置200を設けている。
【0054】
従って、苗が苗植付部5の苗タンク51に載置されている状態で走行車体3が前進走行するときは、レバーアクチュエータ91が自動的に植付操作レバー6を「植付入」位置に移動させることにより、植付操作レバー6を「その場植付」位置に移動させた際にすぐにその場に苗を植え付けることができるので、旋回終了後の植付開始位置に確実に苗が植えられ、苗の植付開始位置と終了位置が揃えられ、苗の植付精度が向上する。
【0055】
なお、本実施例の無段油圧式変速装置(HST)29は、
図7に示すように、トラニオン軸62及びトラニオンアーム63を回動して無段変速する装置であり、走行操作レバー13と、アシストモータ64とによって操作される。このうち走行操作レバー13は、運転席2の一側に設けられて、前後方向に沿うクランク形態の走行操作レバーガイド38(
図3)に案内させて、中立位置Nから前側の前進高速位置Fへ回動案内させて、前進高速に無段変速し、又、中立Nから後側の後進高速位置Rへ回動案内させて、後進高速に無段変速して走行伝動することができる。また、このレバーガイド36(
図3)の中立位置Nには、この走行操作レバー13を後進変速側へ操作することを検出するリミットスイッチ等からなる後進センサ(図示せず)を設ける。この後進センサは、走行操作レバー13によって押されている初期の間はスイッチONして、エンジン1の回転を上げるが、この走行操作レバー13が後進高速位置Rへ操作されるとスイッチOFFになって、エンジン1の回転を戻すように連動制御するものである。又、この走行操作レバー13をレバー軸66周りに回動すると、レバー軸66に回動軸芯を持つ三角アーム67が回動し、このアーム67の長穴67aに係合したリンクロッド68、アシストモータ70によって駆動される軸71、及びこのリンクロッド68等を介して前記トラニオンアーム63が連動して、トラニオン軸62を操作し、HST29を無段変速する。
【0056】
また、これらアーム67の回動角を検出する走行操作レバーセンサ13a(
図5)と、このセンサ13aの検出によって駆動されるアシストモータ70とによって駆動される前記軸71上のギヤ72、スプリング74による摩擦ブレーキ等を回動駆動して、前記トラニオン軸62を駆動すると共に、この走行操作レバー13の操作力を補助して、軽快な変速操作を行わせる。又、トラニオンアーム63の回動角を検出する出力検知センサ93が設けられる。
【0057】
三角アーム67の中央部を中立位置Nとすると、この中立位置Nから前進変速F側一ノッチ目の角度領域の操作の間は、エンジン1の回転数が上らないように規制連動構成することができ、急発進のおそれをなくして安全性を高めるものである。走行操作レバー13を前進側に操作することにより、スロットルワイヤー(図示せず)を引いてエンジン1の回転を増速するが、この走行操作レバー13が回動操作開始時の一ノッチ目の回動ではスロットルワイヤーを引かないようにワイヤー連結の逃穴等を形成する。
【0058】
前記苗検知センサ84が苗植付部5の苗タンク51に載置されている苗を検知している状態で、前記出力検知センサ93が検知する無段変速装置29の出力方向が「中立」位置となる制御が行われると、副変速操作レバー10をレバーアクチュエータ91の作動で「植付速」に移動させる。
【0059】
その後、走行操作レバー13の操作で前進走行にすると、植付操作レバーアクチュエータ91を作動させて植付操作レバー6を「植付入」d位置のままとすることで植付操作レバー6を「その場植付」位置に移動させた際にすぐにその場に苗を植え付けることができる。そして走行操作レバー13の操作で後進走行にすると、植付操作レバーアクチュエータ91は植付操作レバー6を「植付切=中立」位置に移動させて、苗の植付を行わないようにする。
こうして「その場植付」を行った後に後進走行する場合には、苗の植付を行わない。
【0060】
前記苗移植機において、エンジン1を駆動、停止するエンジン制御装置は、
図5のようにコントローラ200の入力側に、植付操作レバー6の操作位置を検知するレバーポテンショメータ8や、副変速操作レバー10の操作位置を検知する副変速ポテンショメータ11、エンジン駆動スイッチ66、操縦者の押し操作で選択される停止選択スイッチ9、センタフロート48の揺動角を検知する仰角センサ59、昇降リンク機構4の昇降角を検知するリンクセンサからなる下降検知センサ7、及び操縦座席2に作業者が着座したことを検知する着座検知センサ12等を配置している。
【0061】
苗植付部5の苗タンク51は、機体左右方向に往復移動可能に構成し、苗タンク51が左右端部に移動したことを検知する左右の端部検知センサ85を設けている。制御装置200は、苗タンク51の苗検知センサ84が苗の非検知状態であるときに出力検知センサ93がHST29の前進出力を検知しているときは、左右の端部検知センサ85のどちらか一方が検知状態になるまで苗タンク51を移動させ、端部検知センサ85が検知状態になると、レバーアクチュエータ91を作動させて植付操作レバー6を「植付切=中立」位置に移動させる制御構成を備えている。
【0062】
そのため、苗タンク51に載置されている苗の残量が少ないことを苗タンク51の苗検知センサ84が検知すると、苗タンク51が左右のどちらかの端部まで移動し、レバーアクチュエータ91が作動して植付操作レバー6を「植付切」位置に移動させることにより、苗の補充作業位置に苗タンク51を位置させることができるので、苗の補充作業を能率良く行うことができる。
【0063】
図8には、苗植付部5の苗植付装置55の伝動装置を示す。植付伝動ケース102の苗植付具伝動ギアケース101内のベベルギア機構により植付伝動軸104にエンジン動力が伝達される。植付クラッチ103が係合するとそれぞれの苗植付装置55の苗植付爪52がチェーン106により駆動される。
【0064】
また苗植付具伝動ギアケース101から伸びる常時回転しているリードカム軸107に設けた溝107aに内周部に中心軸方向に向けて設けられた突起部(図示せず)が係合しながら左右に移動するリードカム108と連結された苗タンク51が左右に移動する。
【0065】
リードカム108が左右に移動することで、例えば,
図8の左に移動するとリードカム軸107の先端の当接片107bが図示しない縦送り伝動軸に直結した左右の横送り片(ワンウェイクラッチ付き)に当たり、伝動軸を縦送りベルト15(
図1,
図2)の苗の1回の植付け分だけ回動させる。
【0066】
図8の丸枠S内に示すように、リードカム軸107の側面にさび検出センサ接点87をスプリング96により押し付ける構成を採用する。このさび検出センサ接点87を配置する位置は、リードカム軸107の対向する側面ではなく、それより内側に配置し、リードカム軸107のさびが発生しやすい箇所にセンサ接点87を配置することでさび検出センサの検知性能が良くなる。
【0067】
走行車体3の両脇には線引きマーカ89を備える構成を採用している。
線引きマーカ89の根元部に凹形状の脆弱部89bを設ける。
図9(A)に線引きマーカ89の根元部の正面図を示し、
図9(B)に
図9(A)の丸枠T部分の拡大図、
図9(C)に線引きマーカ89の根元部の断面図を示す。
図9(A)に示すように線引きマーカ89の根元部のガード部材94を設け、線引きマーカ89の根元部に
図9(C)に示すように凹形状の脆弱部89bを設けることにより、線引きマーカ89が強い力で変形する場合にも、その根元部から破損するので、交換が容易に行える。
【0068】
図10(A)に苗移植機の側面図で苗植付部5をリフトしたときの様子を示すように、苗植付部5をリフトしたときに、整地ロータ56がリンク機構4のロアリンク4aに押し下げられて湿田で整地ロータ56が表土に接地するのを防止する工夫をする。
【0069】
図10(B)は、苗植付部5をリフトすると、整地ロータ56全体を後方に振るようにロータ支持部材58の上端を支点としてワイヤ61に連動させる構成を示す要部側面図である。
【0070】
図10(A)に示すように苗植付部5の裏面側に設けられたロータ吊下げフレーム95の先端にロータ支持部材58の回動支点58aを接続し、ロータ支持部材58の中間部にはワイヤ61の先端が接続した円筒部材73が貫通する長孔75aを備えた補強部材75(
図10(A)の丸枠拡大図参照)が取り付けられている。該補強部材75の前方側に設けられた長孔75aを摺動自在の円筒部材73はロータ支持部材58に支持されている。また補強部材75の後端部は苗植付部5の左右摺動用支持枠体99に支持固定されている。補強部材75はロアリンク4aの一端部とヒッチリンク20との連結部より下側に設けられている。
【0071】
また昇降リンク機構4の前端部が回動自在に支持されている支持アーム14には前記ワイヤ61の前端を支持するためのL字状プレート97が固着しており、該プレート97の折り曲げ片97aを貫通してワイヤ61が取り付けられている。L字状プレート97の側面にはく字状のアーム98の中心部98aが回動自在に支持されている。該く字状のアーム98の下端にはワイヤ61の前端が支持され、さらにく字状のアーム98の下端部にはロアリンク4aの下面に当接するローラ98bが設けられている。プレート97の折曲片97aを貫通して設けられたワイヤ61の後端は円筒部材73に接続され、補強部材75に機体後ろ側から支持されている。なおワイヤ61は周知のインナワイヤ61aとアウタワイヤ61bからなっている。
【0072】
そこで昇降リンク機構4を上昇させるとワイヤ61のインナワイヤ61aの後端部が引っ張られてインナワイヤ61aの後端が接続した円筒部材73が、補強部材75の長孔75aの最後端部に移動し、次いでく字状のアーム98が回動中心98aを中心に回転して、その上端点が矢印T方向に回動する。このく字状のアーム98の動きに連動してロータ支持部材58の下端部が回動中心58aを中心に後方に振れる。このためロータ56が上側に上がり、ロータ56が圃場面と接触することを防ぐことができる。
【0073】
また、
図10(C)にロータ56部分の要部背面図に示すように、湿田で旋回する場合に、整地ロータ56が表土に付かないように、ロアリンク4aに対向する部分の整地ロータ56の羽根をなくして、少しでも、整地ロータ56が湿田に接地しないようにすることが望ましい。