(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態における電動機の一例としてのモールドモータ100を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、モールドモータ100の概略断面図である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1において、モールドモータ100は、ステータコア10と、外郭20と、ロータ30と、軸方向に与圧された導電性の回転軸である出力回転軸31と、出力回転軸31の一端側(端面311側)を導電性の内輪421で軸支するベアリング42と、ベアリング42の導電性の外輪422を保持するベアリングハウス520が形成された導電性のブラケット52と、出力回転軸31の一端とブラケット52との間に配置された導通部材60とを備える。
【0010】
ステータコア10は、鋼板を積層して構成され、図示しない円環状のヨーク部と、ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部11とを備えている。ステータコア10にプレモールドによってインシュレータ12が形成され、インシュレータ12を介してティース部11に巻線13が巻回されている。巻線13が巻回されたステータコア10を、内周面を除いてモールド樹脂でモールド成形して円筒状の外郭20を形成することでステータを構成している。なお、インシュレータ12は、プレモールドによらず、ステータコア10とは別に成形してステータコア10に取付けてもよい。
【0011】
外郭20の反出力側には、例えば亜鉛メッキ鋼板からなる金属製のブラケット52が一体に埋設されている。反出力側のブラケット52は、反出力側のベアリング42が収容されるベアリングハウス520が外郭20から露出した状態になっている。
【0012】
ロータ30は、出力回転軸31と複数の磁極をもつ永久磁石32とを備えている。永久磁石32の磁極は、等間隔で、かつ、隣接同士がN、S交互に逆磁極となるようにして出力回転軸31の周囲に配置され(不図示)、出力回転軸31と一体化されている。永久磁石32は、樹脂材にフェライト磁性体を混入させて成形後、着磁することでフェライトボンド磁石として形成することができる。なお、永久磁石32はこれに限らず、フェライト磁石の代わりに希土類磁石を用い、ボンド磁石の代わりに焼結磁石を用いてもよい。
【0013】
ロータ30は、ステータコア10の内周より内側に、所定の空隙(ギャップ)をもって対向して収められている。そして、出力回転軸31は、出力側のベアリング41及び反出力側のベアリング42によって回転可能に軸支されている。出力側のベアリング41及び反出力側のベアリング42には、ボールベアリングが用いられ、転動体としてのボール410、420と内輪411、421と外輪412、422とを備えている。
【0014】
出力側のベアリング41は、例えば亜鉛メッキ鋼板からなる金属製の出力側のブラケット51に形成された出力側のベアリングハウス510に収容されている。出力側のブラケット51は、外郭20の出力側の側面に嵌合している。
【0015】
ロータ30は、ブラケット51と出力側のベアリング41の外輪412との間に配置された予圧ばね43によって反出力側に荷重(与圧)が加えられる。予圧ばね43によって反出力側に与圧を与えることにより、外輪412とボール400と内輪411の隙間が無くなり、出力回転軸31の回転が安定化する(回転軸方向のブレが小さくなる)。予圧ばね43により外輪412に予圧が加えられると、ボール400を介して内輪411と内輪411に軸支される出力回転軸31も同様に反出力側に押される。その与圧は、20N〜30N程度で、例えば、25.7Nが加えられる。
【0016】
反出力側のベアリングハウス520は、例えば、プレス加工によって有底円筒状に形成されている。反出力側のベアリングハウス520の内側には環状のベアリング受け44とベアリング42が収容され、ベアリング受け44の内径側には導通部材60が配置されている。
【0017】
以下に、実施形態における導通部材60について詳細に説明する。
図2(a)は、導通部材60の平面図、(b)は側面図である。
図1及び
図2において、導通部材60は、ベアリング42の内輪421と外輪422とを電気的に導通させる導通部材60であって、内輪421に軸支された出力回転軸31の端面311と接触する接触部61と、接触部61を取り囲む環状の保持部62と、接触部61の外周縁61Eから保持部62の内周縁62Eまで、出力回転軸31の回転方向(反時計回り方向)に沿って曲がりながら放射状に延在し、接触部61を水平に保持する連結部63とを備える。従って、接触部61と保持部62は連結部63により接続される構造となる。なお、連結部63の保持部側端部632と接触面610の中心Oとを結ぶ線分(点線R’)に対して連結部63の接触部側端部631と接触面610の中心Oとを結ぶ線分(実線R)がなす角度を、回転方向角度θとする。
【0018】
接触部61の形状は円盤形状で、出力回転軸31の端面311と接する円形の接触面610を有している。円形の接触面610の中心Oと出力回転軸31の回転中心とは一致するように配置されているのが好ましい。ここで、接触面610は平面に限らず、出力回転軸31に向かって膨らんだ球面状であってもよい。出力回転軸31は回転中心付近では速度が遅いので、接触面610の中心Oと出力回転軸31の回転中心とが一致すると、出力回転軸31と接触面610との摩擦、摺動が少なくなる。
【0019】
保持部62の形状は円環形状で、ベアリング受け44の内径よりも小さい外径を有し、ベアリング受け44の内径側でベアリングハウス520に載置される。保持部62がベアリングハウス520に載置されることで、保持部62と外輪422とは、ブラケット52を介して電気的に接続される。
図2(b)において、接触部61の接触面610は、保持部62から回転軸方向にdだけ突出するように離間して配置されている。このdは、導通部材60の高さに相当し、本実施例ではdは、例えば、1mmの距離で離間して配置されている。
【0020】
連結部63の形状は、平面視において渦巻き形状であるが、導通部材60は高さdを有するため、立体視においては螺旋形状である。連結部63は、接触部61の外周縁61E及び保持部62の内周縁62Eの周りに等間隔になるように形成されるのが好ましい。また、連結部63は、3本以上設けるのが好ましい。
【0021】
導通部材60は、導電性、バネ性及び剛性を有する金属等からなり、これらの性質を備えた例えばステンレスからなる材料で形成されている。なお、導通部材60は、導電性、バネ性及び剛性の性質を備えていれば、鉄、鋼、真鍮、りん青銅などからなる材料で形成されていてもよい。
【0022】
本発明の導通部材60及びモールドモータ100によれば、与圧の加えられた出力回転軸31の端面311と接触部61が接触すると、接触部61が、保持部62に向けて押されて変位する。接触部61は、出力回転軸31に加えられる予圧と導通部材60から出力回転軸31に加えられる反力(接触部61が端面311により保持部62に向けて押されて変位した場合に、接触部61が元の位置に戻ろうとする力)とが釣り合う位置まで変位する。本実施例では接触部61が保持部62に向けて押されることで、dは、例えば、0.8mmまで変位する。予圧の加えられた出力回転軸31が接触部61を押すことで、連結部には応力が発生する。また、本実施例では、出力回転軸31は反時計回りで回転するため、接触部61が出力回転軸31と同じ回転方向に引っ張られ(ねじりトルク)、このねじりトルクによって連結部63が回転方向に引っ張られる。
【0023】
ここで、接触部61と保持部62とを連結する連結部63は、回転方向角度θが出力回転軸31の回転方向に所定の角度を有するように延在する。すなわち、連結部63が出力回転軸31の回転方向(反時計回り)に沿って渦を巻くように放射状に延在する。従って、回転方向角度θを大きくすることで、連結部63の長さを長くすることができるため、接触部61が端面311により保持部62に向けて押された際に接触部が変位しやすくなり、接触部61が元の位置に戻ろうとする力、すなわち、出力回転軸31への反力を小さく抑えることができ、これにより連結部63に生じる応力を抑えることができる。また、連結部63がねじりトルクによって出力回転軸31の回転方向に引っ張られても、保持部側端部632および接触部側端部631のそれぞれが、内周縁62Eおよび外周縁61Eの接線方向に延在するため、連結部63の長さ方向と異なる方向へ荷重が加わることによる連結部分への応力集中が抑えられ、応力による連結部63の劣化が抑えられる。
【0024】
また、接触部61が水平に保たれているので、接触部61が、出力回転軸31の回転中心と安定して接触し、連結部63に加わる応力がより抑えられる。また、連結部63が、出力回転軸31の回転方向に略等間隔に離間して3本以上形成されていると、接触部61が略等間隔に離間した3点以上の接触部側端部631で支持されるため、端面311に押されても、接触部61をより水平に保つことができ、出力回転軸31の回転中心からのずれも抑えられる。
【0025】
本実施形態において、連結部63の回転方向角度θは360°で形成されている。したがって、連結部63は、接触部61の外周縁61Eのほぼ接線方向に延びている。例えば、導通部材60をステンレスで形成し、連結部63の厚さを0.2mm、幅を0.2mmとすると、導通部材60は、出力回転軸31方向に反力を有し、反力は0.03Nであった。連結部63の長さが延びて出力回転軸31方向の変位が同じであれば、変位の比が小さくなるので反力が小さくなる。また、幅が狭くなるほど反力は小さくなる。連結部63に生じる応力は、62.20MPaであった。
【0026】
反力は、出力回転軸31の回転軸方向へのブレを抑える与圧のバランスを崩さない程度の大きさであることが好ましく、出力回転軸31に加わる与圧の1/100程度が好ましい。本実施形態では、20〜30Nの与圧に対し、1/100程度の反力であった。また、連結部63に生じる応力は、連結部63の材質であるステンレスの降伏応力250MPa以下であるのが好ましく、安全率を考慮すると降伏応力の1/2〜1/5であるのが好ましい。本実施形態では、1/4程度であった。
【0027】
(他の実施形態)
図3(a)は、本実施形態における導通部材60Aの平面図、(b)は側面図である。
図3(a)において、本実施形態は、連結部63Aの回転方向角度θを連結部63Aの360°から180°にした以外は、実施形態と同じ材料、同じ構成である。実施形態と同じ部位には同じ符号を付した。
【0028】
回転方向角度θを360°から180°にしたことにより、連結部63Aの長さは短くなった。導通部材60Aの反力は、6.13Nであった。また、連結部63Aに生じる応力は、221.19MPaであった。回転方向角度θを180°にすることで、導通部材60Aの反力を大きくすることができるため、上記第1の実施形態における効果と同様の効果を得つつ、出力回転軸31の端面311に対して接触部61をより確実に当接することができる。
【0029】
以下に実施形態の変形例を示す。変形例では、連結部の本数、回転方向角度が実施形態と異なる。実施形態と同じ部位には同じ符号を付した。
(変形例1)
図4(a)は、本変形例における導通部材60Bの平面図、(b)は側面図である。
図4(a)において、連結部63Bは、8本形成されている。連結部63Bの厚さが0.2mmで幅が0.2mmで、回転方向角度θは45°で形成されている。
【0030】
(変形例2)
図5(a)は、本変形例における導通部材60Cの平面図、(b)は側面図である。
図5(a)において、連結部63Cは、3本形成されている。連結部63Cの厚さが0.2mmで幅が0.2mmで、回転方向角度θは45°で形成されている。
【0031】
(比較例)
図6(a)は、比較例における導通部材600の平面図、(b)は側面図である。
図6において、導通部材600は、円環状の保持部620と保持部620の内周縁から
図1に示す内輪401に軸支された出力回転軸31の中心に向かって延びる触片630を備えている。触片630の先端には、出力回転軸31の中心に接触する接触部640が形成されている。触片630の厚さが0.2mmで幅が2.34mmの場合、反力は0.31Nであった。また、触片630に生じる応力は、509.15MPaであった。
【0032】
モールドモータ100は、図示しない位置検出センサにより検出されるロータ30の回転位置に応じて、電流を巻線13に流し、ステータに回転磁界を発生させることにより、ロータ30を出力回転軸31と共に回転させることができる。なお、位置検出センサ付のモールドモータ100について説明したが、センサレスのモールドモータでもよい。モールドモータ100は、例えば、空気調和機に搭載される送風ファンを駆動する電動機モータとして使用することができ、室内機での使用では出力回転軸31にクロスフローファンが取付けられ、室外機での使用では出力回転軸31にプロペラファンが取付けられる。
【0033】
なお、実施形態におけるモールドモータ100では、導通部材の連結部の形状は曲線状であるが、本発明はこれに限らず、出力回転軸の径方向に対して時計回り方向を正とする回転方向角度を持って延在していれば直線状でも良い。また、実施形態におけるモールドモータ100では、保持部を円環状、接触部を円板状にするようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、多角形状であっても良い。さらに、本発明はモールドモータに限られず、出力回転軸が導電性材料からなる電動機であれば適用可能であり、例えば外郭が鋼板で構成された鋼板ブラケットモータであっても良い。