(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩化ビニル系樹脂(A)と、水性ポリウレタン樹脂(B)とを含有するラミネート用水性グラビア印刷インキ組成物であって、下記(1)〜(5)を特徴とするラミネート用水性グラビア印刷インキ組成物。
(1)塩化ビニル系樹脂(A)が、下記(a1)〜(a3)由来の構造を有するエマルジョンである。
(a1)塩化ビニル単量体
(a2)(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、およびスチレンから選ばれる1種以上の単量体
(a3)(メタ)アクリル酸単量体
(2)塩化ビニル系樹脂(A)全組成中、塩化ビニル単量体(a1)由来の構造が25〜70重量%である。
(3)水性ポリウレタン樹脂(B)が、ポリイソシアネート(b1)と、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(b2)と、ポリマーポリオール(b3)(ただし(b2)を除く)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、有機ジアミン(b4)と反応させてなる水性ポリウレタン樹脂である。
(4)ポリマーポリオール(b3)全量中、分岐構造を有するポリエステルポリオールが70〜100重量%である。
(5)水性ポリウレタン樹脂(B)(固形分換算)100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂(A)(固形分換算)を2〜20重量部含有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ラミネート用水性グラビア印刷インキ組成物について説明する。本発明のラミネート用水性グラビア印刷インキ組成物は、塩化ビニル系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)を含む。主なバインダー樹脂は水性ポリウレタン樹脂(B)であるが、塩化ビニル系樹脂(A)を含まないと、耐光性が劣る。良好な耐光性確保のため、塩化ビニル系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)は各々の特定の範囲が指定される。すなわち、主なバインダー樹脂である水性ポリウレタン樹脂(B)においては、光(紫外光や可視光)により開裂しづらい結合を持つポリオール種を選択することが必要である、さらに塩化ビニル系樹脂(A)の存在により、水性ポリウレタン樹脂(B)の分解(分子量低下)によるインキ物性の低下を抑制している。すなわち、光照射によって発生するラジカルの影響により塩化ビニル樹脂から塩化水素が脱離し、不飽和結合を形成、重合し、水性ポリウレタン樹脂(B)の分子量低下によるインキ物性の低下をカバーしているものと解される。
【0018】
本発明における塩化ビニル系樹脂(A)としては、塩化ビニル単量体(a1)と、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、およびスチレンから選ばれる1種以上の単量体(a2)と、(メタ)アクリル酸単量体(a3)とを重合してなるエマルジョンを例示することができる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のことである。なお、(メタ)アクリルはアクリルとメタクリルの総称として用いる。さらに、本発明におけるスチレンとは、スチレンおよびα−メチルスチレンのことを指す。なお、(a2)として、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルを含む場合には、水性印刷インキとした場合のインキ安定性が向上する傾向がある。
【0020】
本発明における塩化ビニル系樹脂(A)全組成中、塩化ビニル単量体(a1)に由来の構造は、25〜70重量%である。塩化ビニル単量体(a1)が25%より少ないとラミネート積層体の耐光性が劣る。一方、70%より多いと重合安定性が劣り凝集物が発生する。また、水性印刷インキとした場合のインキ安定性も劣る。好ましくは塩化ビニル単量体(a1)が40〜70重量%であり、さらに好ましくは50〜70重量%である。塩化ビニル単量体(a1)は、70重量%以下であれば量が多い方が、耐光性が向上する傾向にある。
【0021】
本発明における塩化ビニル系樹脂(A)はエマルジョンであり、公知の乳化重合法により得ることができる。上記単量体を一括して仕込み乳化重合する方法、前記単量体を各々連続供給しながら乳化重合する方法、上記単量体の一部をあらかじめ溶液重合しオリゴマーとし、得られたオリゴマーの水溶液中でその他の単量体を乳化重合する方法等、各種の方法が適用できる。オリゴマーは、必ずしもその他モノマーと重合し得る不飽和二重結合を有する必要はない。例えば、オリゴマーがコア・シェル型エマルションにおけるシェル部、その他の単量体の重合体がコア部となることでコア・シェル型のエマルション樹脂を得ることが可能である。
なお、乳化重合の際の重合助剤として、乳化剤、重合開始剤、メルカプタン類等の連鎖移動剤、pH調整剤、消泡剤を利用してもよい。
【0022】
本発明における(メタ)アクリル酸単量体(a3)は、重合体を水溶化する目的で添加している。特に、上記単量体の一部をあらかじめ溶液重合しオリゴマーとし、得られたオリゴマーの水溶液中でその他の単量体を乳化重合する方法において、市販の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーやスチレン・(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを利用する場合は、このオリゴマーに(メタ)アクリル酸エステル、およびスチレンから選ばれる1種以上の単量体(a2)と、(メタ)アクリル酸単量体(a3)とが含まれる。
【0023】
本発明における塩化ビニル系樹脂(A)エマルジョンの乳化重合法で特に好ましい方法は、上記単量体の一部をあらかじめ溶液重合しオリゴマーとし、得られたオリゴマーの水溶液中でその他の単量体を乳化重合する方法である。この方法を用いた場合には、水性印刷インキとした場合のインキ安定性がより良好となる。
【0024】
なお、オリゴマーは必ずしも同一のタイミング・設備内で重合される必要は無く、購入原料を用いることが出来る。
【0025】
さらに、塩化ビニル系樹脂(A)には、本願発明の課題を阻害しない範囲において、その他重合可能な単量体(ただし(а1)〜(a3)記載の単量体を除く)を用いることができる。
【0026】
乳化剤としては、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤、及び分子中にビニル基を持つ各イオン性の反応性乳化剤を適用しても良い。さらに、上記単量体の一部をあらかじめ溶液重合しオリゴマーとし、得られたオリゴマーの水溶液中でその他の単量体を乳化重合する方法では、得られたオリゴマーが乳化剤として機能させてもよい。
【0027】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパンの塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプなどが例示される。さらに必要に応じ、N,N−ジメチルアニリン、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。重合開始剤の使用量は単量体の合計量 100重量部に対して通常は0.01〜5重量部とすればよいが、より好ましくは0.05〜2重量部である。
【0028】
エマルジョンの重合安定性、凍結安定性、機械的安定性、化学的安定性等を向上させるために、重合の開始時あるいは終了後にpHを6〜11となるように調整することが好ましい。pH調整剤としては
アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用できる。
【0029】
本発明に用いるエマルジョンは、インキ組成物の全固形分中、10〜50重量%が凝集物の発生を抑えられるため好ましく、20〜40重量%であること更に好ましい。
【0030】
本発明に用いる水性ポリウレタン樹脂(B)は、ポリイソシアネート(b1)と、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(b2)と、ポリマーポリオール(b3)(ただし(b2)を除く)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、有機ジアミン(b4)と反応させて得られる。
【0031】
本発明の水性ポリウレタン樹脂(B)で用いるポリイソシアネート(b1)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。反応性等の面から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0032】
本発明における活性水素含有基とは、イソシアネート基と反応するヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素を有する基をいう。ただし、カルボキシル基を除く。
【0033】
本発明における分子内にカルボキシル基および少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(b2)としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸;グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)で用いるポリマーポリオール(b3)は、70重量%〜100重量%が分岐構造を有するポリエステルポリオール(b3−1)である。ポリエステルポリオール(b3−1)が70重量%未満であるとラミネート積層体の耐光性が著しく劣る。さらに好ましくは80重量%〜100重量%がポリエステルポリオール(b3−1)である。
【0035】
本発明におけるポリエステルポリオール(b3−1)は、分岐構造を持つことを特徴とする。分岐構造を有することで、光照射によって発生するラジカルの影響による結合の開裂を抑制できる。分岐構造を有するポリエステルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の水酸基を2個以上持ち、かつ分岐構造を有する低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合体または重合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。特に好ましくは、ネオペンチルグリコールとアジピン酸の重合体、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸の重合体である。
【0036】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)で用いるポリマーポリオール(b3)は、0重量%〜30重量%の範囲であれば、上記分岐構造を有するポリエステルポリオール(b3−1)以外のポリマーポリオール(b3−2)を利用できる。ポリマーポリオール(b3−2)としては、分岐構造を有さないポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等が挙げられる。
【0037】
分岐構造を有さないポリエステルポリオール類とは、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の水酸基を2個以上持ち、かつ分岐構造を有さない低分子ポリオール類とアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合体または重合体のことである。また、ポリエーテルポリオール類としては、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体が挙げられる。
【0038】
さらに、ポリカーボネートポリオール類としては、前記低分子ポリオール類と、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られる重合体のことである。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。特に、酸化エチレンの重合体、すなわちポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールを用いた場合には、水−アルコール溶剤への再溶解性が良好となる。
【0039】
さらに、ポリマーポリオール(b3)中、0重量%〜30重量%の範囲であれば、水酸基を1個以上持つ低分子化合物(b3−3)を使用しても良い。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のモノアルコール、上記に示した水酸基を2個以上持つ低分子ポリオール類が挙げられる。なお、モノアルコールを使用する場合には、反応停止剤として機能する。
【0040】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)で用いるポリマーポリオール(b3)として用いる各々の数平均分子量は3000以下であることが好ましい。数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。数平均分子量が3000を超えると、水溶化のために組み込むカルボキシル基を水性ポリウレタン樹脂中に点在化させることができないため、水−アルコール溶剤への再溶解性が劣る傾向にある。また、ポリマーポリオール(b)の数平均分子量が小さくなり過ぎると、水性ポリウレタン樹脂皮膜が硬くなり、ラミネート積層体の初期のラミネート強度が劣る傾向にあり耐光性も劣る傾向があるため、さらに好ましくは数平均分子量が1000〜3000である。
【0041】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)で用いる有機ジアミン(b4)は、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘− ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等など各種公知ものが挙げられるこれらは単独または2種以上を混合して用いることができる。好ましいのは、水酸基を有する有機ジアミンであり、水−アルコール溶剤への再溶解性が良好となる傾向がある。
【0042】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)の酸価は25〜45mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。
【0043】
酸価が25〜45mgKOH/gの場合には、水−アルコール溶剤への再溶解性、ラミネート積層体の初期のラミネート強度および耐光性が向上する傾向がある。
【0044】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲内とすることが好ましい。重量平均分子量は、GPCで測定されたポリスチレン換算値である。重量平均分子量が5000〜100000の場合には、ラミネート積層体の初期のラミネート強度、耐光性が向上する傾向がある。さらに、得られる水性印刷インキの粘度が好適であるため水−アルコール溶剤への再溶解性が向上する傾向がある。
【0045】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)は、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等により得ることができる。本発明においては有機溶剤を使用し粘度を低下させ、合成反応を均一にスムーズに行うことができるアセトン法を用いることが望ましい。
【0046】
ポリイソシアネート(b1)と分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(b2)とポリマーポリオール(b3)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る(以下、プレポリマー反応)には、50〜100℃で10分〜10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ−ク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0047】
また、プレポリマー反応には、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)、 2−エチルヘキソエート鉛、チタン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキソエート鉄、2−エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ−n−ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としてはテトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。これらの触媒はポリマーポリオールに対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0048】
ウレタンプレポリマーと有機ジアミンを反応させる際(以下、鎖延長反応)は、30〜80℃で10分〜10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ−ク、滴定によるアミン価測定等により判断される。
【0049】
鎖延長反応には、反応停止剤を使用してもよい。反応停止剤としては、例えばジ−n−ブチルアミンなどのジアルキルアミン類などの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等の水酸基を有するアミン類も用いることができる。更に、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸類も挙げられる。
【0050】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)に組み込まれたカルボキシル基を中和する塩基性化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられるが、印刷物の耐水性、残留臭気等の点から、水溶性であり、かつ熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、特にアンモニアが好ましい。
【0051】
本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)の合成に用いる有機溶剤としては、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤が好ましい。例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられるが、ポリウレタンの水性化は通常減圧蒸留(脱溶剤)により除去されるため、また、脱溶剤しないで使用する場合でも乾燥速度を早めるため、水より低沸点の溶剤の使用が好ましい。脱溶剤する場合には、例えば反応溶液に水及び中和剤である塩基性化合物を添加した後、温度を上げて常圧下、又は減圧下で溶剤を必要量溜去する方法で行うことができる。
【0052】
本発明に用いる塩化ビニル系樹脂(A)と水性ポリウレタン樹脂(B)の比率は、固形分換算で、水性ポリウレタン樹脂(B)が100重量部に対して、塩化ビニル系樹脂(A)が2〜20重量部であることが好ましい。塩化ビニル系樹脂(A)が2〜20重量部の場合にはラミネート積層体の耐光性や、インキの安定性が向上する傾向がある。
【0053】
本発明に用いるヒンダードアミン系光安定剤(以下「HALS」と称することがある)は、紫外線等のエネルギー線が照射されることにより塗膜内で発生するラジカルを吸収することで、ラジカル発生が起因となる塗膜の劣化を防ぐものである。ヒンダードアミン系光安定剤は、分子内に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有するのが特徴で、例えば、デカン二酸ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6,ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート等、市販製品として具体的にはTINUVIN 123−DW(固形分50%、有効成分30%、BASF社製)等が挙げられる。ハンドリングの観点から好ましくは液状のヒンダードアミン系光安定剤である。また、印刷インキ100重量部に対し、ヒンダードアミン系光安定剤が0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0054】
本発明におけるラミネート用水性グラビア印刷インキに必要とされる機能を有するために配合される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている無機顔料、有機顔料や染料を挙げることができる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。
【0055】
有機顔料としては、特に制限されないが、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ハロゲン化フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、又はジケトピロロピロール顔料等があり、
更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、
ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、又はピグメントブルー64等の青色顔料;
ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、又はピグメントグリーン58等の緑色顔料;
ピグメントレッド9、ピグメントレッド48、ピグメントレッド49、ピグメントレッド52、ピグメントレッド53、ピグメントレッド57、ピグメントレッド97、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド144、ピグメントレッド146、ピグメントレッド149、ピグメントレッド166、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179、ピグメントレッド180、ピグメントレッド185、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド215、ピグメントレッド216、ピグメントレッド217、ピグメントレッド220、ピグメントレッド221、ピグメントレッド223、ピグメントレッド224、ピグメントレッド226、ピグメントレッド227、ピグメントレッド228、ピグメントレッド238、ピグメントレッド240、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、又はピグメントレッド255等の赤色顔料;
ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット29、ピグメントバイオレット30、ピグメントバイオレット37、ピグメントバイオレット40、又はピグメントバイオレット50等の紫色顔料;
ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー20、ピグメントイエロー24、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー86、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー137、ピグメント、イエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー147、ピグメントイエロー148、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー153、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー166、ピグメントイエロー168、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、又はピグメントイエロー213等の黄色顔料;
ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ37、ピグメントオレンジ38、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ51、ピグメントオレンジ55、ピグメントオレンジ59、ピグメントオレンジ61、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、又はピグメントオレンジ74等の橙色顔料;あるいは、
ピグメントブラウン23、ピグメントブラウン25、又はピグメントブラウン26等の茶色顔料が挙げられる。
【0056】
着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
顔料を水性媒体中に安定に分散させるには、本発明における水性ポリウレタン樹脂(B)単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート強度の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0058】
本発明におけるラミネート用水性グラビア印刷インキに必要に応じて併用される樹脂の例としては、本発明以外の水性ポリウレタン樹脂、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、本発明の目的を妨げない範囲内で、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
本発明では必要に応じて、紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤としては多くの有機化合物、無機化合物が知られているが、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
【0060】
本発明におけるラミネート用水性グラビア印刷インキは、樹脂、着色剤などを水性溶液中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂(B)や前記併用樹脂、および前記分散剤により水性溶液中に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、塩化ビニル系樹脂(A)と必要に応じてポリウレタン樹脂(B)、ワックス類、消泡剤、増粘剤、硬化剤等、他の化合物とを配合することによりインキを製造することができる。
【0061】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0062】
水性印刷インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は公知のものを使用することができる。
【0063】
前記方法で製造されたラミネート用水性グラビア印刷インキのインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0064】
ラミネート用水性グラビア印刷インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、水性溶液などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0065】
本発明におけるラミネート用水性グラビア印刷インキは、公知のグラビア印刷機を用いたグラビア印刷方式でプラスチックフィルム上に印刷できる。
【0066】
印刷する際は、グラビア印刷方式に適した粘度及び濃度にまで、水性溶液、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール系有機溶剤と水を混合した希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0067】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステル系、ナイロン、ポリオレフイン等が挙げられる。ポリオレフィンフィルムの場合、水酸基、カルボニル基等の官能基を有する表面処理ポリオレフィンフィルムを用いると良好な印刷物が得られる。
【0068】
本発明におけるラミネート用水性グラビア印刷インキをプラスチックフィルム上に印刷し、その印刷物を上記のプラスチックフィルムやアルミニウム等にてラミネートし、さらにラミネ−ト加工物をエ−ジングしてラミネート積層体を得ることができる。ラミネ−ト加工法としては、1)得られた印刷物の印刷面に、必要に応じてアンカーコート剤を塗布後、溶融樹脂を積層する押し出しラミネート法、2)接着剤を塗布後、必要に応じて乾燥させプラスチックフィルムを積層するドライラミネート法等が挙げられる。溶融樹脂としては低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が使用でき、接着剤としてはイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタネート系などが挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表す。pHは樹脂をそのままJIS Z8802(pH測定方法)によりpHメーターを用いて測定した。粘度は樹脂液温を25±0.5℃に保持し、B型粘度計にて測定した。重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。
【0070】
[合成例1−1]
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた耐圧重合容器内に、窒素置換後、脱イオン水900部、メタクリル酸メチル400部、アクリル酸ブチル60部、アクリル酸20部、メタクリル酸20部、ペーストH(ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、第一工業製薬社製)20部を仕込み、さらに重合器内を減圧にして塩化ビニル500部を仕込み、窒素ガス雰囲気下に攪拌しながら60℃に昇温させた。次に、過硫酸アンモニウム(開始剤)1部を脱イオン水100部に溶解した水溶液を圧入して反応を開始させ、器内温を60℃に保持しながら20時間反応を行い、30℃まで冷却して重合を終了し、その後25%アンモニア水でpHを7〜8に、さらに脱イオン水で固形分を30%に調整し、pH7.6、粘度50mPa・sの塩化ビニル系樹脂(A)のエマルジョン(A1)を得た。
【0071】
[合成例1−2〜1−3]
合成例1−1と同様にして、表1の仕込み比にて重合を行い、塩化ビニル系樹脂(A)のエマルジョン(A2)および(A3)を得た。なお、合成には乳化剤には下記のものを用いた。
ペーストH:ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、第一工業製薬社製
ノニポール400:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、三洋化成社製
【0072】
[合成例1−4]
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた重合容器に、窒素置換後、脱イオン水1000部、塩化ビニル300部、JONCRYL JDX−6500(BASF社製アクリル酸エステルオリゴマー、有効成分30%)500部を仕込み、攪拌しながら60℃に昇温させた。さらに過硫酸アンモニウム(開始剤)2部を脱イオン水100部に溶解した水溶液を添加し、反応を開始させた。重合内圧が0MPaになった時点で、残存モノマーを真空にて1000ppmまで除去し、その後40℃以下まで冷却した。25%アンモニア水でpHを7〜8に、さらに脱イオン水で固形分を30%に調整し、pH7.5、粘度10mPa・sの塩化ビニル系樹脂(A)のエマルジョン(A4)を得た。
【0073】
[合成例1−5〜1−11]
合成例1−4と同様にして、表1の仕込み比にて重合を行い、塩化ビニル系樹脂(A)のエマルジョン(A5)〜(A11)を得た。なお、合成に用いたオリゴマーは下記の通りである。
JONCRYL JDX−6500:アクリル酸エステルオリゴマー(アクリル酸と、アクリル酸エステルとの共重合体)、BASF社製、数平均分子量10000
PVA−117:ポリビニルアルコール、クラレ社製、ケン化度98.5、重合度1700
【0074】
[合成例2−1]
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた重合容器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000のPMPA2000 127.97部、数平均分子量2000のPEG2000 54.85部、DMPA 21.54部およびIPDI 84.02部をMEK 200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、AEA 8.72部、IPDA 2.91部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.75部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でMEK、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分30%、粘度3800mPa・s、重量平均分子量29000の水性ポリウレタン樹脂(B1)を得た。
【0075】
[合成例2−2〜2−7]
表2の仕込み比にて、合成例2−1と同様の操作で、水性ポリウレタン樹脂((B2)〜(B7))を得た。なお、合成に用いた原料の略称は下記の通りである。
PMPA2000:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール(数平均分子量2000)
NPG2000:ポリ(ネオペンチルアジペート)ジオール(数平均分子量2000)
PCL2000:ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2000)
PTG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
PEG2000:ポリエチレングリコール(数平均分子量2000)
DMPA:2,2−ジメチロールプロピオン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート
AEA:2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン
IPDA:イソホロンジアミン
MEK:メチルエチルケトン
【0076】
[合成例2−8]
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた耐圧重合容器に、数平均分子量2000のPEA2000(ポリエチレンアジペートジオール) 162.0部、DMPA 47.6部、n−ブタノール13.8部、IPDI 176.0部およびアセトン400部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で7時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、30℃に冷却してトリエチルアミン35.9部を加えた。次に脱イオン水742.9部を加え、減圧下50〜60℃でアセトンを除去し、酸価50mgKOH/g、固形分35%、粘度60mPa・s、重量平均分子量20000の水性ポリウレタン樹脂(B8)を得た。
【0077】
[合成例2−9]
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた耐圧重合容器に、数平均分子量2000のPEA2000(ポリエチレンアジペートジオール)173.9部、トリメチロールプロパン6.6部、DMPA 47.6部、IPDI 171.9部、アセトン400.0部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で7時間反応して末端イソシアネートプレポリマーとし、30℃に冷却してトリエチルアミン35.9部を加えた。つぎにジエタノールアミン20.0部を水780.09部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、減圧下50〜60℃でアセトンを除去し、酸価47mgKOH/g、固形分35.0%、粘度230mPa・s、重量平均分子量22000の水性ポリウレタン樹脂(B9)を得た。
【0078】
[実施例1]
銅フタロシアニン藍(LIONOL BLUE FG−7400−G(トーヨーカラー社製)。以下本願実施例では同様の顔料を用いた。)15.0部、水性ポリウレタン樹脂(B1)25.0部、消泡剤0.1部、イソプロピルアルコール5.0部、水14.9部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水性ポリウレタン樹脂(B1)25.0部、塩化ビニル系樹脂(A5)5.0部、イソプロピルアルコール5.0部、水5.0部を攪拌混合し、藍色水性印刷インキ(CI1)を得た。さらに、この藍色水性印刷インキに、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比1/1)の混合溶剤を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒になるように調整し、評価用の希釈印刷インキとした。
【0079】
[実施例2〜15]
実施例1と同様の操作で、表3に示される塩化ビニル系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)の種類で藍色水性印刷インキ(CI2〜CI15)を得た。また、実施例1と同様の操作で、評価用の希釈印刷インキも得た。
【0080】
[実施例16]
銅フタロシアニン藍15.0部、水性ポリウレタン樹脂(B1)25.0部、消泡剤0.1部、イソプロピルアルコール5.0部、水14.9部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水性ポリウレタン樹脂(B2)25.0部、塩化ビニル系樹脂(A5)5.0部、イソプロピルアルコール5.0部、水3.0部、TINUVIN 123−DW(HALS、固形分50%、有効成分30%、BASF社製) 2.0部を攪拌混合し、藍色水性印刷インキ(CI16)を得た。また、実施例1と同様の操作で、評価用の希釈印刷インキも得た。
【0081】
[比較例1〜9]
実施例1と同様の操作で、表4に示される塩化ビニル系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)の種類で藍色水性印刷インキ(CI17〜CI25)を得た。また、実施例1と同様の操作で、評価用の希釈印刷インキも得た。
【0082】
[比較例10]
実施例16と同様の操作で、表4に示される塩化ビニル系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)の種類で藍色水性印刷インキ(CI26)を得た。また、実施例1と同様の操作で、評価用の希釈印刷インキも得た。
【0083】
[インキ安定性]
上記印刷インキを70℃の環境下で1週間放置し、試験前後での印刷インキの状態の変化を目視判定し、粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて測定した。
なお、実用レベルは△以上である。
○ :試験後の印刷インキに分離・沈殿が見られず、試験前後での粘度の差が3秒以内である。
○△:試験後の印刷インキに沈殿はないが白濁の上澄みが見られ、試験前後での粘度の差が3秒以内である。
△ :試験後の印刷インキに沈殿はないが白濁の上澄みが見られ、試験前後での粘度の差が5秒以内である。
× :試験後の印刷インキに透明の上澄み、沈殿が見られ、試験前後での粘度の差が5秒以上である。
【0084】
[耐光性]
上記の希釈印刷インキをグラビア印刷機(版深25μ)PETフィルム(東洋紡株式会社製,E5100、厚さ12μ)上に印刷し、さらにイソシアネート系アンカーコート剤(三井化学ポリウレタン社製、A−3210/A−3070)を塗工後、低密度ポリエチレン ノバテックLC600(日本ポリケム株式会社製)を溶融温度315℃にて押し出し、ラミネート加工を行った。低密度ポリエチレンの溶融温度は、押し出しラミネート機のTダイ直下における温度を接触式温度計(安立計器株式会社製HL−100)にて測定した。ラミネート積層体については40度、2日間のエージングを行った。このラミネート積層体を、紫外線オートフェドメーター(スガ試験機株式会社製 型式:UA48AUHB)にて60時間紫外線を照射し、照射前後のラミネート強度を測定、照射後でのラミネート強度の低下率を求めた。ラミネート強度は、ラミネート積層体のインキ部を巾15mmで裁断し、インキ面と溶融樹脂層の層間で剥離させた後、剥離強度をインテスコ製201万能引張り試験機にて測定した。
なお、実用レベルは△以上である。
◎ :60時間照射後のラミネート強度の低下率が0〜10%である。
○ :60時間照射後のラミネート強度の低下率が10〜20%である。
△ :60時間照射後のラミネート強度の低下率が20〜30%である。
△×:60時間照射後のラミネート強度の低下率が30〜60%である。
× :60時間照射後のラミネート強度の低下率が60%以上である。
【0085】
評価結果を表3および表4にまとめる。実施例1〜16のラミネート用水性グラビア印刷インキ組成物は、比較例1〜10と比較して優れたインキ安定性を示し、耐光性に優れたラミネート積層体を提供することができる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】