(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229417
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ホットメルト塗布剤の塗布品質検査方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20171106BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20171106BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20171106BHJP
B05C 5/04 20060101ALI20171106BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20171106BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D1/26 Z
B05D7/24 301P
B05C5/04
B05C11/10
B05C9/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-207028(P2013-207028)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-71127(P2015-71127A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中本 真広
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−076915(JP,A)
【文献】
実開昭61−195370(JP,U)
【文献】
特開2001−170545(JP,A)
【文献】
特開2006−158995(JP,A)
【文献】
特開2006−272202(JP,A)
【文献】
特開平08−206568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 5/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温では固形のホットメルト接着剤を、加熱溶融させるヒータと、
前記ヒータにより溶融された液状のホットメルト接着剤が入れられるタンクと、
前記タンクにより溶融された液状のホットメルト接着剤を目的とする部位に吐出する塗布ノズルと、
前記タンクから前記塗布ノズルに前記液状のホットメルト接着剤を圧送するポンプ及び圧送配管と、
前記液状のホットメルト接着剤の吐出をON/OFFする開閉弁と、
前記圧送配管を流れる前記液状のホットメルト接着剤の前記開閉弁の直前の圧力を検出する圧力センサと、を備えたホットメルト接着剤塗布装置を用いて、
前記目的部位に塗布したホットメルト塗布剤に、ホットメルト塗布剤の固形塊が混入しているか否かの塗布品質を検査する方法であって、
前記ホットメルト塗布剤の塗布開始から塗布終了までの塗布圧力の時間的変動の許容範囲を予め検出して記憶するステップと、
実ラインにおける前記ホットメルト塗布剤の塗布開始から塗布終了までの塗布中の塗布圧力の時間的変動を検出するステップと、
前記塗布中の塗布圧力の時間的変動が、前記許容範囲にあるか否かを判定するステップと、
前記塗布中の塗布圧力の時間的下降率が前記許容範囲より小さい場合に、前記ホットメルト塗布剤の固形塊が混入していると判定するとともに、前記塗布中の塗布圧力の時間的下降率が前記許容範囲より大きい場合に、前記ホットメルト塗布剤の固形塊は混入していないと判定するステップと、
を備えるホットメルト塗布剤の塗布品質検査方法。
【請求項2】
前記塗布圧力の時間的変動は、前記塗布開始時及び前記塗布終了時の塗布圧力を検出し、両者の差分圧力が前記許容範囲にあるか否かを判定する請求項1に記載のホットメルト塗布剤の塗布品質検査方法。
【請求項3】
前記塗布圧力の時間的変動は、さらに前記塗布開始時から前記塗布終了時の間の所定時間の塗布圧力を検出し、前記塗布開始時に対する差分圧力が前記許容範囲にあるか否かを判定する請求項2に記載のホットメルト塗布剤の塗布品質検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト塗布剤の塗布品質検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幅広の基材に対して、磁性液、写真感光液、塗料などの塗布剤を塗布する塗布装置として、ノズルの先端部に平滑面を形成したものが知られている(特許文献1)。この装置を用いれば、複数の吐出孔から基材に吐出した塗布剤を均一な塗膜厚さにできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−190324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、常温では固形状をし、加熱溶融させた状態で基材に塗布し、塗布後に冷却固化接着する材料からなる、いわゆるホットメルト接着剤などを塗布剤とする場合には、加熱溶融温度の偏りによって溶融が不十分となった固形塊が塗布剤に混在することがある。こうした状態で塗布されると、その固形塊が基材に対して偏荷重を与えるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ホットメルト塗布剤の固形塊の混入有無の検査を含む塗布品質を精度よく検査できる検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ホットメルト塗布剤の塗布中の塗布圧力の時間的変動を検出し、その変動プロファイルに基づいて塗布品質を検査することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホットメルト塗布剤の塗布中の塗布圧力の時間的変動を検出し、その変動プロファイルが基準プロファイルの許容値内にあるか否かを評価する。
具体的には、塗布中の塗布圧力の時間的下降率が許容範囲より小さい場合に、ホットメルト塗布剤の固形塊が混入していると判定し、塗布中の塗布圧力の時間的下降率が許容範囲より大きい場合に、ホットメルト塗布剤の固形塊は混入していないと判定する。加熱溶融させたホットメルト塗布剤に固形塊が混入していると流路抵抗となり、これが圧力変動となって現れるので、固形塊の混入有無を含む塗布品質を精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る検査方法を適用したホットメルト塗布剤の塗布装置を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す塗布装置を用いてホットメルト塗布剤を塗布する対象物の一例である電池モジュールを示す分解斜視図である。
【
図3】
図2の電池モジュールのホットメルト塗布剤の塗布状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る検査方法で用いられる圧力変動プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。電気自動車やハイブリッド車両には、走行駆動源としてのモータに電力を供給するバッテリが搭載されている。
図2は、車載バッテリを構成する電池モジュール2の一例を示す分解斜視図である。同図に示すように、電池モジュール2は、たとえば6つの薄型単電池21を互いに重ね合わせ、これを上部電池ケース22と下部電池ケース23とで上下それぞれから押え付けて構成されている。各薄型単電池21は、柔軟性を有する外装材で被覆され、内部に電極、セパレータ及び電解質が封入されている。そして、各薄型単電池21の外装材の端部から引き出した電極端子を他の薄型単電池21の電極端子と接続することで、6つの薄型単電池21が直列及び/又は並列に接続された電池モジュール2が組み立てられる。こうした電池モジュール2をさらに複数接続することにより、モータに高圧電力が供給されることになる。
【0010】
上記電池モジュール2は、6つの薄型単電池21を重ね合わせ、同図に示す例では短辺側の両端部が互いに固定されるが、自動車に搭載した際の振動や衝撃などによって薄型単電池21の両端部以外の部分がずれないように固定する必要がある。このため、各薄型単電池21の中央部領域にホットメルト接着剤1が塗布される。
図2の斜線は、ホットメルト接着剤1の塗布範囲の一例を示す。
【0011】
図1は、薄型単電池21の外装材の中央部領域にホットメルト接着剤1を塗布する塗布装置の一例を示す図である。ホットメルト接着剤1は、室温などの常温では固形であるが、加熱溶融させて液状化させ、これを目的部位に塗布したのち、冷却固化させることで接着性を発揮する熱可塑性接着剤である。目的とする接着強度、耐熱性、非接着面の材質などに応じて適宜の材料を選定できるが、薄型単電池21の外装材がPP,PE,PET,PVCなどの材料からなる場合は、ポリエステル系又は変性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤などを用いることができる。これらのR&B軟化点はたとえば95〜150℃である。
【0012】
図1に示すように、本例の塗布装置は、固形のホットメルト接着剤1を投入し、これを加熱溶融させるためのタンク11と、薄型単電池21の外装材に液状のホットメルト接着剤1を吐出する塗布ノズル14と、タンク11から塗布ノズル14に液状のホットメルト接着剤1を圧送するポンプ12及び圧送配管13と、液状のホットメルト接着剤1の吐出をON/OFFする開閉電磁弁15と、薄型単電池21を搬送するコンベア18と、を備える。
【0013】
タンク11は、ペレット状、ブロック状、スティック状などの固形状のホットメルト接着剤1が投入される容器であって、図示を省略するが、これを加熱溶融するヒータと、溶融した液状ホットメルト接着剤1を攪拌しながら所定温度に維持する機能を備える。
【0014】
ポンプ12は、タンク11内の液状ホットメルト接着剤1を吸引して塗布ノズル14に所定圧力で圧送する。塗布ノズル14は、薄型単電池21の塗布範囲に応じた幅広の吐出口を有し、必要に応じて複数の塗布ノズル14を幅方向に並設してもよい。この場合は、圧送配管13の先端を複数の塗布ノズル14のそれぞれに接続するように並列に分岐させるとよい。液状ホットメルト接着剤1の吐出をON/OFFする開閉電磁弁15は、塗布ノズル14の直前に装着され、その近傍の上流側に圧力センサ32が設けられている。
【0015】
本例の塗布ノズル14は、門型基台17に固定され、コンベア18により一定速度で搬送される薄型単電池21に対して液状ホットメルト接着剤1を塗布する。なお、薄型単電池21を固定し、塗布ノズル14側を移動させてもよい。制御装置16は、開閉電磁弁15のON/OFFと、コンベア18の動作と、ポンプ12の作動とを制御する。たとえば、薄型単電池21がコンベア18によって塗布ノズル14の塗布開始位置に到着したことの情報をコンベア18から受信すると開閉電磁弁15を開き、塗布終了位置に到着したことの情報をコンベア18から受信すると開閉電磁弁15を閉じる。
【0016】
既述したように、圧力センサ32は、圧送配管13を流れる液状ホットメルト接着剤1の開閉電磁弁15の直前の圧力を検出し、その検出信号を検査装置31に出力する。検査装置31は、制御装置16から電磁弁の開信号と閉信号を受信し、それぞれの信号を受信したときの圧力センサ32の検出信号を読み出す。また、開信号を受信してから閉信号を受信するまでの間の時間、たとえば中間点の時間の圧力センサ32の検出信号を読み出す。なお、コンベア18の搬送速度が定まれば、開信号と閉信号との時間間隔が定まるので、その中間の時点も定まるから、実際には開信号を受信してからの所定時間における圧力センサ32の検出信号を開信号と閉信号との中間時点の検出信号とする。
【0017】
ところで、薄型単電池21の塗布範囲に対するホットメルト接着剤1の塗布膜厚は、コンベア18の搬送速度と、ポンプ12による液状ホットメルト接着剤1の圧送流量と、液状ホットメルト接着剤1の粘度とによって定まり、この塗布膜厚を所定の範囲内に管理しないと、すなわち膜厚が薄いと接着力が不足して薄型単電池21が十分に固定されないし、逆に膜厚が厚いと電池モジュール2の積層方向の寸法(
図3のH)が大きくなって上部電池ケース22及び下部電池ケース23による組み立てに支障を来たすことになる。
【0018】
コンベア18の搬送速度は生産ラインの生産量によって所定範囲に定まり、液状ホットメルト接着剤1の粘度は材質によって定まるから、液状ホットメルト接着剤1の圧送流量を管理すれば塗布膜厚は管理できることになる。しかしながら、ホットメルト型の材料は、タンク11内の温度を管理しても、タンク11内における加熱温度のばらつきや攪拌の偏在によって十分に液状化せず、固形塊が残留することがある。特に本例のように、柔軟性を有する外装材に塗布する接着剤1に固形塊1aが含まれていると、
図4に示すように冷却固化した後に外装材の面に馴染んだ形状とはならず、外装材の圧縮力の反力が作用して当該外装材を損傷させるおそれがある。このため、液状ホットメルト接着剤1の圧送流量のみを管理しただけでは固形塊1aが混入しているかどうかを検出することはできない。
【0019】
そこで、本例では、圧力センサ32を用いて、塗布ノズル14からの塗布開始から塗布終了までの、塗布ノズル14の近傍における液状ホットメルト接着剤1の圧力変動を検出し、これが許容範囲内にあるかどうかを検査する。そのため、検査基準となる標準(塗布品質が合格)の圧力変動のプロファイルを実ラインで取得する。たとえば、ホットメルト接着剤1の材料毎およびポンプ12による圧送圧力毎に塗布開始時から塗布終了までの間の圧力変動を圧力センサ32により測定し、その結果の塗布膜厚と固形塊1aの有無を検査する。その結果、塗布膜厚が許容範囲にあり、また固形塊1aもなければ、そのときの圧力変動プロファイルを標準のものとする。こうしたデータを複数測定して標準の圧力変動プロファイルを予め作成し、検査装置31に記憶させる。
【0020】
図4の実線Sが標準の圧力変動プロファイルであり、その上下の点線で示す曲線が許容範囲の一例である。圧送配管13内の液状ホットメルト接着剤1には、ポンプ12によって所定の圧送圧力を印加しているが、開閉電磁弁15を開くと塗布ノズル14の近傍の接着剤1が吐出することで瞬間的に圧力降下が生じ、塗布を終了して開閉電磁弁15を閉じると再び圧力が上昇することになる。なお、標準の圧力変動プロファイルはサンプリング点が多いほど好ましいといえるが、塗布開始から塗布終了までの時間が短い場合には、その中間点を含めた3点をサンプリングすることが望ましい。
【0021】
標準の圧力変動プロファイルを検査装置31に記憶させたら、実ラインにおいて実際の塗布工程の圧力変動を圧力センサ32により検出する。この場合のサンプリング点も多ければ多い方が好ましいが、塗布開始から塗布終了までの時間が短い場合には、少なくとも塗布開始時と塗布終了時の2点が望ましく、より望ましくは、その中間点を含めた3点をサンプリングする。そして、塗布開始時の圧力に対する差分圧力を演算し、これが標準の圧力変動に対して許容範囲にあるか否かを判定する。
【0022】
図5に実ラインにおける塗布品質NGの例を示す。実線E1は、塗布開始時の圧力は許容範囲にあるが、中間点及び塗布終了時の両方ともに圧力降下が小さい例である。これは、ポンプ12による圧送圧力の設定(設定値が低い)か、ホットメルト接着剤1の粘度(粘度が高いか材料誤認)に問題があると推察される。ただし、固形塊1aが塗布ノズル14の近傍で流通抵抗となったことで圧力降下が小さくなったとも推察される。逆に実線E2は、塗布開始時の圧力は許容範囲にあるが、中間点及び塗布終了時の両方ともに圧力降下が大きい例である。これも、ポンプ12による圧送圧力の設定(設定値が高い)か、ホットメルト接着剤1の粘度(粘度が低いか材料誤認)に問題があると推察される。
【0023】
これに対して、実線E3は、塗布開始時及び中間点の圧力は許容範囲にあるが、中間点を過ぎてから塗布終了時までの圧力降下が小さい例である。これは、塗布開始時及び中間点の圧力降下が許容範囲にあることからすると、ポンプ12による圧送圧力の設定やホットメルト接着剤1の粘度に問題があるとはいえず、固形塊1aが塗布ノズル14の近傍で流路抵抗となったことで圧力降下が小さくなったと推察される。このような実線E1〜E3の圧力変動が検出されたら、検査装置31からラインの工程管理装置33に対して、その薄型単電池21の検査不具合を出力する。
【0024】
以上のように、本例の検査方法によれば、ホットメルト接着剤1の圧送配管13内の圧力変動を検出し、その変動プロファイルが標準プロファイルの許容値内にあるか否かを評価するが、加熱溶融させたホットメルト接着剤1に固形塊1aが混入していると圧送配管13内において流路抵抗となり、これが圧力変動となって現れるので、固形塊1aの混入有無を含む塗布品質を精度よく検査することができる。また、実ラインの圧力変動を検出するので、全ての薄型単電池21を検査することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…ホットメルト接着剤(ホットメルト塗布剤)
1a…固形塊
11…タンク
12…ポンプ
13…圧送配管
14…塗布ノズル
15…開閉電磁弁
16…制御装置
17…門型基台
18…コンベア
2…電池モジュール
21…薄型単電池
22…上部電池ケース
23…下部電池ケース
31…検査装置31
32…圧力センサ
33…工程管理装置