特許第6229429号(P6229429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6229429-抗ウィルス性を有する内装用化粧シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229429
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】抗ウィルス性を有する内装用化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20171106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171106BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171106BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B32B27/18 F
   B32B27/00 E
   C09D7/12
   C09D201/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-219264(P2013-219264)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-80887(P2015-80887A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松沢 孝教
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−315423(JP,A)
【文献】 特開平10−146914(JP,A)
【文献】 特開平11−057603(JP,A)
【文献】 米国特許第06162533(US,A)
【文献】 特開2003−221304(JP,A)
【文献】 特公平04−028646(JP,B2)
【文献】 特開平11−268224(JP,A)
【文献】 特開2005−120212(JP,A)
【文献】 特開平08−048917(JP,A)
【文献】 特開2009−119866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0123723(US,A1)
【文献】 特開平07−001414(JP,A)
【文献】 特開平07−126119(JP,A)
【文献】 特開平07−108509(JP,A)
【文献】 特開平07−150075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18
B32B 27/00
C09D 7/12
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シート最表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウィルス性を有する内装用化粧シートにおいて、前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤の真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下であり、かつ前記化粧シート最表面のコーティング樹脂に対して固形分比率で10〜30%配合してなることを特徴とする抗ウィルス性を有する内装用化粧シート。
【請求項2】
前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤は、結晶構造中に銀イオン又は亜鉛イオンを担持させた構造であることを特徴とする請求項1に記載の抗ウィルス性を有する内装用化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絵柄印刷や表面エンボスなどの施された化粧シートに関するものであり、特には抗ウィルス性が必要とされるドア、窓枠、家具といった日常接触する機会の多い内装箇所に使用される、抗ウィルス性を有する内装用化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧紙や化粧板等に防カビ性又は抗菌性を付与するため、防カビ剤又は抗菌剤を該当素材中に添加したり、練り込んだりする方法、又は後工程にて塗装する方法等が行われていた。また、防カビ性及び抗菌性を有する壁紙や化粧シートも公知のものであり市販されている。しかし、抗菌性を必要とするのは化粧材のごく薄い表面だけでよいが、従来は樹脂に練り込む方法や塗料に練り込む方法が取られており、必ずしも最適な抗菌性塗膜形成法とは言えなかった。
【0003】
また、防カビ剤又は抗菌剤をプラスチック成形品等に練り込む場合は、製造工程やコストが増加したり、生産性が低下する等の問題が発生したりし易い。また、成形用樹脂や塗料用樹脂に抗菌剤を練り込む場合、その樹脂の中には樹脂組成物としての必要成分として顔料、染料、硬化剤、触媒等が混合されており、これらの物が抗菌剤に変色、抗菌作用の低下等の悪影響を与える場合があり、各樹脂との適性を個々に検討する必要がある。
【0004】
従って、従来の樹脂組成物はそのまま使用することは出来ず、基材、用途毎に樹脂組成を検討する必要があり、作業が煩雑となる問題が生じる。また、抗菌剤を成形用樹脂に練り込む場合、大部分の抗菌剤は樹脂に練り込まれて成形品の中に入っていて抗菌作用を示さないため、抗菌剤の使用方法としては経済的に大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−54013号公報
【特許文献2】特公平4−28646号公報
【特許文献3】特開平1−313533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、抗ウィルス性にすぐれ、かつ表面の各種物性に優れ、製造が容易な抗ウィルス性を有する内装用化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、化粧シート最表面のコーティング樹脂中に銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウィルス性を有する内装用化粧シートにおいて、前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤の真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下であり、かつ前記化粧シート最表面のコーティング樹脂に対して固形分比率で10〜30%配合してなることを特徴とする抗ウィルス性を有する内装用化粧シートである。
【0008】
またその請求項2記載の発明は、前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤は、結晶構造中に銀イオン又は亜鉛イオンを担持させた構造であることを特徴とする請求項1に記載の抗ウィルス性を有する内装用化粧シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明はその請求項1記載の発明により、最表面に配合する銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤の真比重と平均粒径と固形分比率を限定することで、抗ウィルス性を有しながらも耐汚染性、耐磨耗性、耐候性など各種耐性にすぐれ、製造が容易な抗ウィルス性を有する内装用化粧シートを得ることができるという作用効果を奏する。
【0010】
本発明はその請求項2記載の発明により、前記銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤は、結晶構造中に銀イオン又は亜鉛イオンを担持させた構造とすることで、前記比重と平均粒径と固形分比率を満たす銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を容易に得ることができるという作用効果を奏する。又、銀系添加剤及び亜鉛系添加剤にする事で比重管理する事が容易になり、担持させる添加剤の種類を多孔質なゼオライト、シリカ等と組み合わせる事により抗ウィルス性能を発現しやすくする効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の抗ウィルス性を有する内装用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の抗ウィルス性を有する内装用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。基材シート1に絵柄模様層2、透明樹脂層3などを適宜設け、最表面のコーティング樹脂によるコーティング層4を設けてなる。
【0013】
本発明における基材シート1としては、従来の化粧シートにおける基材シートとして使用可能なものであれば特に制限せず使用可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂といったオレフィン系樹脂フィルム、またはEVA系フィルム、PETフィルムを初めとしてこれらの変成樹脂が用いられる。
【0014】
また、化粧シートとしての隠蔽性を確保するために、無機顔料などにより任意に着色を行う必要がある。さらに、耐候性向上のために酸化防止剤、紫外線吸収剤・光安定剤が適宜加えられる。これらの添加剤の種類、量に関してはとくに限定されるものではなく、フィルムの樹脂に一般的に使用されているものを添加すればよい。
【0015】
その効果から、酸化防止剤にはフェノール系を、紫外線吸収剤にはベンゾフェノン系を、光安定剤にはヒンダードアミン系をそれぞれ組み合わせて用いるのが最適である。ただし、ヒンダードアミン系添加剤は一部のフェノール系添加剤と反応し、キノイド結合を生成するため、シートが色変化を起こすことがあるので注意は必要である。
【0016】
適宜設ける絵柄模様層2としては、各種グラビアインキ、各種オフセットインキ、各種スクリーンインキ等の各種印刷用インキ類、各種コーティング材等、従来公知の任意の色材を用いることができる。またこの絵柄模様層2の形成方法としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等の各種印刷法、ロールコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法等の各種コーティング法、箔押し法、水圧転写法、熱転写法、昇華転写法等の各種転写法等、従来公知の任意の方法を適用することができる。
【0017】
適宜設ける透明樹脂層3としては、絵柄模様層2を保護するために必要に応じて設けることができ、絵柄を活かせるものであれば透明でも半透明でもよい。あるいは適宜艶消し模様やエンボス付与により表面凹凸を設けたものであっても良い。あるいはこの凹凸に着色剤を充填したものであってもよい。透明樹脂層3に用いる樹脂としてはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムなどが挙げられるが、その中でも特に、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、の単独重合あるいはこれら2種以上の共重合樹脂、もしくはそれらの混合樹脂からなるものが好ましい。またこれらの樹脂中には、必要に応じて、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、加工安定剤、などの各種添加剤を添加しても良い。
【0018】
本発明における最表面のコーティング樹脂によるコーティング層4には、真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下である銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合してなる。コーティング樹脂としては、即ち塗布液のバインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、スチレン系樹脂、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等が使用できるが、基材シート1や絵柄模様層2や透明樹脂層3への密着性の点で優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステルウレタン、アクリルウレタンが好ましく使用できる。
【0019】
本発明における銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また有機抗菌剤、有機防カビ剤としてジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗菌効果の点で銀系抗菌剤が優れている。
【実施例1】
【0020】
基材シート1としてオレフィン素材からなる着色シート上に絵柄模様層2として木目印刷を施した後、透明樹脂層3としてオレフィン素材からなる透明シートを貼りあわせた後に、コーティング層4としてウレタン樹脂(DICグラフィックス製W480)中に真比重が2.1で平均粒径が0.75μのゼオライトに銀イオンを担持させたシナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)を固形分比率で20%配合し、これを厚み5μでコーティングし、化粧シートを得た。
【実施例2】
【0021】
前記シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)の代わりに真比重が2.5で平均粒径が0.75μのジルコニウムに亜鉛イオンを担持させた東亞合成株式会社の亜鉛系無機添加剤(EX20706F)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0022】
<比較例1>
前記シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)の固形分比率を5%とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0023】
<比較例2>
前記シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)の固形分比率を35%とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0024】
<比較例3>
前記シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)の代わりに真比重が3で平均粒径が0.75μのリン酸塩化合物に銀イオンを担持させた太平化学産業株式会社の銀系無機添加剤(EX20706B)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0025】
<比較例4>
前記シナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706D)の代わりに真比重が2.1で平均粒径が2.5μのゼオライトに銀イオンを担持させたシナネンゼオミック株式会社の銀系無機添加剤(EX20706G)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0026】
<性能評価>
以上のようにして得た実施例1〜2、比較例1〜4の化粧シートに対し、以下の性能評価を行なった。
【0027】
<抗ウィルス性>
作用時間は24時間、試験ウィルスはA型インフルウエンザウィルス(H1N1型)、試験方法は抗菌試験方法(JIS Z 2801)に準拠した方法で試験を実施した。試験サンプル(サイズ50mm×50mm)を保湿シャーレに入れ、ウィルス液を0.1〜0.2ml滴下し、40mm×40mmサイズのフィルム(PET)を乗せ、試験品とウィルスの接触効率を上げてから24時間後、試験品からウィルスを回収し、抗菌活性値を測定した。
【0028】
<耐候性>
JIS−K−5600に準じた試験を行い、1000Hrでの変化を目視で評価した。
以上の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の抗ウィルス性を有する内装用化粧シートは、抗ウィルス性が必要とされるドア、窓枠、家具といった日常接触する機会の多い内装箇所に使用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…基材シート
2…絵柄模様層
3…透明樹脂層
4…コーティング層
図1