特許第6229430号(P6229430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229430
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】積層型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20171106BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20171106BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20171106BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALN20171106BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20171106BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M4/02 Z
   !H01M4/13
   !H01M10/0525
   !H01M10/0585
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-220807(P2013-220807)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82455(P2015-82455A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英二
(72)【発明者】
【氏名】篠田 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 祐樹
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−053196(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101816(WO,A1)
【文献】 特開2005−285605(JP,A)
【文献】 特開2012−169200(JP,A)
【文献】 特開平08−050917(JP,A)
【文献】 特開平05−290835(JP,A)
【文献】 特開2009−211824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0102358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 10/0525
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層と矩形平板状の正極集電体とを含む複数の正極と、負極活物質層と矩形平板状の負極集電体とを含む複数の負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、前記負極と前記セパレータとの間に介在される電極保護層と、が平板状に積層されてなる積層型電池であって、
前記電極保護層は、セラミック材料を含有し、前記負極活物質層と前記セパレータとの間において前記負極活物質層に塗工され、
前記正極集電体と一体形成された正極タブ部が前記正極集電体の縁部から突出する方向を前記積層型電池の高さ方向とし、前記正極集電体の平板面における前記高さ方向と直交する方向を前記積層型電池の幅方向とすると、
前記電極保護層の幅は、前記負極活物質層の幅より小さく、かつ、前記正極活物質層の幅以上であり、
前記電極保護層の高さは、前記負極活物質層の高さより小さく、かつ、前記正極活物質層の高さ以上であり、
前記負極は、前記負極集電体の前記電極保護層が形成された前記負極活物質層を備える平板面の全ての縁部に沿って前記電極保護層が形成されておらず前記負極活物質層が露出する未塗工領域を備えることを特徴とする積層型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電池の従来の技術としては、例えば、特許文献1に開示されているリチウムイオン電池が存在する。
このリチウムイオン電池は、正極活物質層を備えた正極板と、負極活物質層を備えた負極板と、正極活物質層または負極活物質層の少なくともいずれかの表面に形成された固体微粒子と樹脂バインダーとを含む多孔質絶縁層と、電解液とを備えている。
多孔質絶縁層は、内部短絡時に正負極間の短絡面積の拡大を防止する機能を有する。
【0003】
そして、特許文献1では、多孔質絶縁層が負極活物質層の表面に形成されている実施例が開示されている。
負極板に形成される負極活物質層はペースト状であり、銅箔にペースト状の負極活物質層を塗布して乾燥し、総厚が所定厚となるように圧延した後、ケースに挿入可能な所定幅にスリットして負極板を得るとしている。
多孔質絶縁層は、酸化チタンの微粒子とバインダーを含んだスラリーをグラビア印刷によって負極活物質層上に塗布後、乾燥を経て形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−235617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積層型電池では、負極の負極活物質上に電極保護層(多孔質絶縁層)を形成した後に、裁断により所定幅の負極を得る場合がある。
しかしながら、負極の負極活物質上に電極保護層を形成した後に、裁断により負極を得る場合では、裁断に用いる裁断刃が電極保護層と接触するおそれがある。
電極保護層は硬質材料であるため、裁断刃が電極保護層と接触すると、裁断刃の摩耗や刃こぼれにより積層型電池への異物混入が生じるという問題がある。
従来の積層型電池では、製造過程において異物混入を回避するために考慮された電池構造は存在しなかった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、積層型電池の製造過程において異物が混入しにくい構造を有する積層型電池の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、正極活物質層と矩形平板状の正極集電体とを含む複数の正極と、負極活物質層と矩形平板状の負極集電体とを含む複数の負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、前記負極と前記セパレータとの間に介在される電極保護層と、が平板状に積層されてなる積層型電池であって、前記電極保護層は、セラミック材料を含有し、前記負極活物質層と前記セパレータとの間において前記負極活物質層に塗工され、前記正極集電体と一体形成された正極タブ部が前記正極集電体の縁部から突出する方向を前記積層型電池の高さ方向とし、前記正極集電体の平板面における前記高さ方向と直交する方向を前記積層型電池の幅方向とすると、前記電極保護層の幅は、前記負極活物質層の幅より小さく、かつ、前記正極活物質層の幅以上であり、前記電極保護層の高さは、前記負極活物質層の高さより小さく、かつ、前記正極活物質層の高さ以上であり、前記負極は、前記負極集電体の前記電極保護層が形成された前記負極活物質層を備える平板面の全ての縁部に沿って前記電極保護層が形成されておらず前記負極活物質層が露出する未塗工領域を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、負極の負極活物質上に電極保護層を形成した後に裁断する場合でも、負極の幅方向および高さ方向において電極保護層と裁断刃が接触しない位置にて負極を裁断することができる。
従って、裁断時において裁断刃が負極の幅方向および高さ方向において電極保護層と接触することはなく、裁断刃と電極保護層との接触による異物混入を回避することができる。
また、負極の幅方向において裁断刃と電極保護層は互いに接触することがなく裁断された負極を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層型電池の製造過程において異物が混入しにくい構造を有する積層型電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る積層型電池の斜視図である。
図2】電極体の構造を模式的に示す分解斜視図である。
図3】(a)は正極の前面図であり、(b)は負極の後面図である。
図4】電極体の構造を模式的に示す断面図である。
図5】電極体の製造工程を説明する説明図である。
図6】第2の実施形態に係る積層型電池の斜視図である。
図7】(a)は電極体の構造を模式的に示す説明図であり、(b)は(a)におけるA−A線の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る積層型電池としての二次電池について図面を参照して説明する。
図1に示す二次電池は、全体として扁平な略直方体のケース11を備えている。
ケース11は、有底筒状のケース本体12と、ケース本体12の開口部13を密閉する蓋体14を有している。
蓋体14はケース本体12に組み付けられる。
ケース本体12および蓋体14は、何れも金属材料(例えば、アルミニウムなど)により形成されている。
蓋体14の外面には、円柱状の正極端子15と負極端子16が突出して設けられている。
正極端子15および負極端子16はケース11と絶縁された状態にある。
図1に示すケース11の長手方向を左右方向として示し、ケース11の高さ方向を上下方向として示すほか、ケース11の短手方向を前後方向として示す。
【0014】
図1に示すように、ケース本体12には、扁平な略直方体の電極体20が収容されている。
電極体20は、図2に示すように、正極21と、負極22と、正極21と負極22の間に介在されるセパレータ23を有している。
セパレータ23は、電解液の流通を可能とする絶縁材料により形成されている。
電極体20では、正極21と負極22とはセパレータ23を介して交互に積層されている。
電極体20は、絶縁材料により形成された絶縁袋(図示せず)に覆われた状態でケース11に収容されている。
ケース11内には電解液が充填されているが、電解液は電極体20をケース11内に収容した後に満たされる。
電解液は、例えば、リチウム二次電池やニッケル水素二次電池といった二次電池の種類に応じた電解液である。
【0015】
図2に示すように、正極21は、矩形のシート状である正極集電体としての正極金属箔24を備えている。
正極金属箔24は、例えば、リチウム二次電池やニッケル水素二次電池といった二次電池の種類に応じた金属材料により形成される。
本実施形態の正極金属箔24はアルミニウムにより形成されている。
図3(a)に示すように、正極金属箔24は、蓋体14と対向する縁部25と、ケース本体12の底部と対向する縁部26と、縁部25、26の右側の縁部27と、縁部25、26の左側の縁部28とを有している。
正極金属箔24における縁部27、28は、正極21における幅方向の端部を構成する。
本実施形態では、正極金属箔24の幅(縁部27、28間の距離)W1が設定されており、二次電池における左右方向と正極金属箔24の幅方向とは一致する。
正極金属箔24には、縁部25から突出して延在する矩形の正極タブ部29が備えられている。
正極タブ部29は正極金属箔24と一体形成されており、縁部25において右側の縁部27寄りに形成されている。
【0016】
正極金属箔24の一方の表面(図2では前面)には、正極活物質が塗工されて正極活物質層30が形成されている。
正極活物質層30は、正極タブ部29を除く正極金属箔24の領域において矩形の領域となるように形成されている。
図3(a)に示すように、正極金属箔24において縁部25〜28から一定の距離を保って縁部25〜28に沿う領域については、正極活物質が塗工されていない未塗工領域である。
従って、正極活物質層30の上下方向の高さH2は、正極金属箔24の上下方向の高さ(縁部25、26間の距離)H1より小さく設定されている。
図3(a)、図4に示すように、正極活物質層30の幅W2は正極金属箔24の幅W1より小さい。
【0017】
図2に示すように、負極22は、矩形のシート状をなす負極集電体としての負極金属箔34を備えている。
負極金属箔34は、例えば、リチウム二次電池やニッケル水素二次電池といった二次電池の種類に応じた金属材料により形成される。
本実施形態の負極金属箔34は銅により形成されている。
図3(b)に示すように、負極金属箔34は、蓋体14と対向する縁部35と、ケース本体12の底部と対向する縁部36と、縁部35、36の右側の縁部37と、縁部35、36の左側の縁部38とを有している。
縁部37、38は負極22における幅方向の端部の一部に相当する。
本実施形態では、正極金属箔24と同一幅となるように負極金属箔34の幅(縁部37、38間の距離)W1が設定されており、二次電池における左右方向と負極金属箔34の幅方向とは一致する。
負極金属箔34には、縁部35から突出して延在する矩形の負極タブ部39が備えられている。
負極タブ部39は負極金属箔34と一体形成されており、縁部35において左側の縁部37寄りに形成されている。
【0018】
負極金属箔34の他方の表面(図2では後面)には、負極活物質が塗工されて負極活物質層40が形成されている。
なお、本実施形態では、正極21の正極活物質層30の側と負極22の負極活物質層40の側とが向き合わされ、図2においては、正極タブ部29が右側に位置し、負極タブ部39が左側に位置する。
負極活物質層40は、負極金属箔34において負極タブ部39を除く縁部35〜38に囲まれた矩形の領域に形成されている。
従って、負極活物質層40の上下方向の高さは、負極金属箔34の上下方向の高さ(縁部35、36間の距離)H1と同じ高さに設定されている。
図4に示すように、負極活物質層40の幅は負極金属箔34の幅W1と同じであり、正極活物質層30の幅W2よりも大きい。
従って、負極活物質層40の幅方向の縁部は、負極金属箔34の縁部37、38とともに負極22における幅方向の端部を構成する。
【0019】
負極活物質層40の表面には、ペースト状の電極保護物質が塗工されて電極保護層41が形成されている。
電極保護物質は、例えば、絶縁性の高いセラミック材料であるアルミナ(Al)の粉末にバインダー加えてスラリーとしたものである。
なお、電極保護物質は電極保護層41の状態で電池反応を阻害しない材料が好ましく、アルミナ(Al)のほか、二酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)を用いてもよい。
【0020】
図3(b)に示すように、電極保護層41は、負極活物質層40の領域において矩形の領域となるように形成されている。
負極活物質層40において負極金属箔34の縁部35〜38から一定の距離を保って縁部35〜38に沿う領域については、電極保護物質が塗工されていない未塗工領域である。
従って、電極保護層41の上下方向の高さH3は、負極金属箔34の上下方向の高さ(縁部35、36間の距離)H1より小さく設定されており、正極活物質層30の上下方向の高さH2よりも大きく設定されている。
図4に示すように、電極保護層41の幅W3は負極金属箔34の幅W1よりも小さく設定されている。
そして、電極保護層41の幅W3は正極活物質層30の幅W2よりも大きく設定されている。
【0021】
図1に示すように、電極体20では、正極21、負極22およびセパレータ23が積層されるが、複数の正極タブ部29は正極端子15に接続され、複数の負極タブ部39は負極端子16に接続されている。
【0022】
次に、本実施形態の二次電池の製造について図5を参照して説明する。
本実施形態では、図5に示す正極金属箔A1および負極金属箔B1の長手方向に対して直交する短手方向を幅方向としている。
正極21については、長手方向に連続するシート状の正極金属箔A1に、正極活物質が塗工されるが、複数の正極活物質層30が正極金属箔A1の長手方向に対して所定の間隔を以って形成されるようにする。
このとき、正極活物質は正極金属箔A1の幅に対して幅W2となるように塗工される。
正極活物質が乾燥して正極活物質層30が形成された後、複数の正極活物質層30が塗工された正極金属箔A1の幅が幅W1となるように正極金属箔A1の両端は裁断される。
【0023】
次に、幅W1に裁断された正極金属箔A2は、正極活物質層30を備えた正極21を形成するように、正極タブ部29を形成ししつ裁断される。
正極活物質層30毎に正極金属箔A2を裁断することにより、複数の正極21が得られる。
【0024】
負極22については、連続するシート状の負極金属箔B1に、負極活物質が塗工されるが、複数の負極活物質層40が負極金属箔B1の長手方向に対して所定の間隔を以って形成されるようにする。
このとき、負極活物質は負極金属箔B1の幅W1と同じ幅となるように塗工される。
負極活物質が乾燥して負極活物質層40が形成された後、負極活物質層40の表面に電極保護物質が塗工される。
電極保護物質は負極活物質層40の幅W1よりも小さく、かつ、正極活物質層30の幅W2よりも大きい幅W3となるように塗工される。
負極活物質層40への塗工は、グラビアコート、ダイコート等の塗工法を用いることができる。
負極活物質層40の表面に塗工された電極保護物質が乾燥されると電極保護層41が形成される。
電極保護層41が形成されると、複数の負極活物質層40が塗工された負極金属箔B1の幅が幅W1となるように負極金属箔B1の両端は裁断される。
【0025】
負極金属箔B1の両端の裁断時には幅方向に設けた一対の裁断刃(図示せず)が用いられる。
一対の裁断刃は、負極金属箔B1の幅が幅W1となる位置に設定され、負極金属箔B1に対して進退するから、裁断時において電極保護層41に接触することなく、負極金属箔B1および負極活物質層40のみを裁断する。
【0026】
次に、幅W1に裁断された負極金属箔B2は、負極活物質層40を備えた負極22を形成するように、負極タブ部39を形成しつ裁断される。
このとき、別の裁断刃(図示せず)を用いて負極金属箔B2を裁断するが、裁断刃は電極保護層41と接触しない位置に設定されている。
従って、裁断刃は裁断時において電極保護層41に接触することなく、負極金属箔B2および負極活物質層40のみを裁断する。
裁断時において裁断刃と電極保護層41は接触することがないことから、電極保護層41との接触による裁断刃の刃こぼれや摩耗、あるいは電極保護層41の破損は生じない。
負極活物質層40毎に負極金属箔B1を裁断することにより、複数の負極22が得られる。
【0027】
次に、正極21と負極22はセパレータ23を介して積層され電極体20を形成する。
電極体20は絶縁材料により形成された絶縁袋(図示せず)に収容される。
複数の正極タブ部29はまとめられて正極端子15と接続され、同様に複数の負極タブ部39はまとめられて負極端子16と接続される。
絶縁袋(図示せず)に収容された電極体20はケース本体12に収容され、電極体20がケース本体12に収容された後、蓋体14がケース本体12に溶接される。
その後、ケース11に設けた電解液注入口(図示せず)から電解液がケース11内に充填される。
【0028】
本実施形態に係る二次電池は以下の作用効果を奏する。
(1)電極保護層41は、電極保護層41の幅W3が負極金属箔34および負極活物質層40の幅W1より小さくなるように、負極活物質層40上に塗工されている。負極金属箔34および負極活物質層40の幅方向の縁部37、38は、電極保護層41を塗工した負極金属箔B1を裁断することにより形成される。このため、電極保護層41と裁断刃が接触しない位置にて負極金属箔B1を裁断することができる。従って、裁断時において裁断刃が電極保護層41と接触することはなく、裁断刃と電極保護層41との接触による異物混入を回避することができる。
(2)製造過程において異物が混入しにくい構造の二次電池を提供することができる。
(3)電極保護層41の幅W3は正極活物質層30の幅W2以上としているから、電極保護層41が幅方向にわたって正極活物質層30を覆うことができ、電極保護層41は内部短絡が発生する可能性がある範囲を保護できる。
【0029】
(4)電極保護層41の幅W3を正極活物質層30の幅W2よりも大きくしていることから、正極活物質層30における設計上の幅方向の公差を大きく設定することができる。その結果、二次電池の製造の容易化を図ることができる。
(5)負極金属箔34の縁部25、26の間についても、電極保護層41は縁部25、26間の距離よりも小さく形成されており、負極金属箔B2の裁断時において、裁断刃が電極保護層41と接触することはない。このため、負極金属箔B2の裁断時も裁断刃と電極保護層41との接触による異物混入を回避することができる。
(6)負極活物質層40に電極保護層41を形成していることから、電極保護層を正極活物質層30に形成する場合よりも、電池寿命特性を向上させることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る積層型電池について説明する。
本実施形態は、正極と、負極およびセパレータを積層した積層シート体が形成され、積層シート体を巻回することにより、正極、負極およびセパレータが複数積層された電極体が形成される巻回形の二次電池の例である。
ケースについては第1の実施形態と同一なので第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0031】
本実施形態の二次電池は、図6に示すように、巻回形の電極体50を備えている。
電極体50は、図7(a)に示すように、正極51と、負極52およびセパレータ53を積層した積層シート体Sを巻回することにより形成される。
本実施形態の正極51、負極52およびセパレータ53は、それぞれ一定の幅を有するとともに十分な長さを有するシートである。
巻回方向が正極51、負極52およびセパレータ53の長手方向であり、正極51、負極52およびセパレータ53の幅方向は長手方向と直交する方向である。
つまり、本実施形態では、図7(a)に示す正極51、負極52およびセパレータ53の長手方向に対して直交する短手方向を幅方向としている。
セパレータ53は正極51と負極52との間に介在されるほか、負極52における正極51側となる面と反対側となる面に備えられている。
積層シート体Sの巻回により正極51、負極52およびセパレータ53が複数積層されている。
【0032】
図7(b)に示すように、正極51は、一定の幅を有するとともに十分な長さを有するシート状の正極集電体としての正極金属箔54を備えている。
正極金属箔54は、蓋体14と対向する縁部55と、ケース本体12の底部と対向する縁部56とを有している。
本実施形態では、正極金属箔54の幅(縁部55、56間の距離)W4が設定されており、二次電池における上下方向と正極金属箔54の幅方向とは一致する。
正極金属箔54には、縁部55から突出して延在する矩形の正極タブ部57が複数備えられている(図6を参照)。
正極タブ部57は正極金属箔54と一体形成されており、電極体50の状態では前後方向に互いに同じ位置となるように、正極金属箔54の長さ方向において間隔を空けて形成されている。
【0033】
正極金属箔54の一方の表面(図7(b)では下面)には、正極活物質が塗工されて正極活物質層58が形成されている。
図7(b)に示すように、正極活物質層58の幅W5は正極金属箔54の幅W4より小さく設定されている。
【0034】
図7(b)に示すように、負極52は、シート状をなす負極集電体としての負極金属箔60を備えている。
負極金属箔60は、蓋体14と対向する縁部61と、ケース本体12の底部と対向する縁部62とを有している。
本実施形態では、正極金属箔54の幅W4と同一幅となるように負極金属箔60の幅(縁部61、62間の距離)W4が設定されており、二次電池における上下方向と負極金属箔60の幅方向とは一致する。
負極金属箔60には、縁部61から突出して延在する矩形の負極タブ部63が複数備えられている(図6を参照)。
負極タブ部63は負極金属箔60と一体形成されており、電極体50の状態では前後方向に互いに同じ位置となるように、負極金属箔60の長さ方向において間隔を空けて形成されている。
【0035】
負極金属箔60の表面(図7(b)では上面)には、負極活物質が塗工されて負極活物質層64が形成されている。
図7(b)に示すように、負極活物質層64の幅は負極金属箔60の幅W4と同じであり、正極活物質層58の幅W5よりも大きい。
【0036】
負極活物質層64の表面(図7(b)では上面)には、ペースト状の電極保護物質が塗工されて電極保護層65が形成されている。
図7(b)に示すように、電極保護層65の幅W6は負極金属箔60の幅W4よりも小さく設定されている。
そして、電極保護層65の幅W6は正極活物質層58の幅W5よりも大きく設定されている。
なお、本実施形態における正極51と、負極52、セパレータ53、正極活物質層58、負極活物質層64、電極保護層65のそれぞれの材料は、第1の実施形態の場合と同一材料である。
【0037】
本実施形態では、長手方向に連続するシート状の正極金属箔(図示せず)の長手方向わたって正極活物質が塗工される。
このとき、正極活物質は裁断前の正極金属箔の幅に対して幅W5となるように塗工される。
正極活物質が乾燥して正極活物質層58が形成された後、正極活物質層58が塗工された正極金属箔の幅が幅W4となるように正極金属箔の幅方向の両端は裁断される。
裁断により、縁部55、56を有する正極51が形成される。
なお、縁部55には、裁断時において複数の正極タブ部57が形成される。
正極金属箔を裁断することにより、幅W4に設定され、複数の正極タブ部57を備えた正極51が得られる。
【0038】
負極52については、長手方向に連続するシート状の負極金属箔(図示せず)の長手方向わたって負極活物質が塗工される。
このとき、負極活物質は裁断前の負極金属箔の幅と同じとなるように塗工される。
負極活物質が乾燥して負極活物質層64が形成された後、負極活物質層64の表面に電極保護物質が塗工される。
電極保護物質は裁断前の負極金属箔および負極活物質層64の幅よりも小さい幅W6となるように負極活物質層64の長手方向にわたって塗工される。
負極活物質層64の表面に塗工された電極保護物質が乾燥されると電極保護層65が形成される。
【0039】
電極保護層65が形成されると、負極活物質層64が塗工された負極金属箔の幅が幅W4となるように負極金属箔の幅方向の両端は裁断される。
裁断により、縁部61、62を有する負極52が形成される。
なお、縁部61には、裁断時において複数の負極タブ部63が形成される。
負極金属箔を裁断することにより、幅W4に設定され、複数の負極タブ部63を備えた負極52が得られる。
【0040】
負極金属箔の幅方向の両端を裁断する時には、裁断位置に対応して設けた一対の裁断刃(図示せず)が用いられる。
一対の裁断刃は、裁断後の負極金属箔60の幅が幅W4となる位置に設定され、裁断前の負極金属箔に対して進退するから、裁断時において電極保護層65に接触することなく、負極金属箔60および負極活物質層64のみを裁断する。
【0041】
次に、正極51と負極52はセパレータ53を介して積層され、積層シート体Sが形成される。
積層シート体Sを長手方向へ向けて巻回することにより巻回形の電極体50が形成される。
電極体50は絶縁材料により形成された絶縁袋(図示せず)に収容される。
複数の正極タブ部57はまとめられて正極端子15と接続され、同様に複数の負極タブ部63はまとめられて負極端子16と接続される。
絶縁袋(図示せず)に収容された電極体50はケース本体12に収容され、電極体50がケース本体12に収容された後、蓋体14がケース本体12に溶接される。
その後、ケース11に設けた電解液注入口(図示せず)から電解液がケース11内に充填される。
【0042】
本実施形態によれば、巻回形の二次電池の場合でも、裁断時において裁断刃が電極保護層65と接触することはなく、裁断刃と電極保護層65との接触による異物混入を回避することができる。
製造過程において異物が混入しにくい構造であるため、異物が混入されていない二次電池を提供することができる。
また、電極保護層65の幅W6は正極活物質層58の幅W5以上であるため、電極保護層65が幅方向にわたって正極活物質層58を覆うことができ、内部短絡が発生する可能性がある範囲を保護することができる。
さらに、電極保護層65の幅W6を正極活物質層58の幅W5よりも大きくしていることから、正極活物質層58における設計上の幅方向の公差を大きく設定することができ、 その結果、二次電池の製造の容易化を図ることができる。
【0043】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0044】
○ 第1の実施形態では、正極および負極を2回の裁断により形成するようにしたが、この限りではなく、正極および負極は1回の裁断により形成してもよい。例えば、打ち抜き型を用いた1回の打ち抜きにより正極および負極を形成するようにしてもよい。この場合、打ち抜きに用いる打ち抜き型(裁断刃に相当)が打ち抜き時において電極保護層と接触しないように、電極保護層の幅を負極の幅よりも小さくするほか、幅方向の縁部以外の縁部においても縁部に達しないように電極保護層を小さく設定すればよい。
○ 第1、第2の実施形態では、正極集電体および負極集電体として金属箔を用いたが、正極集電体および負極集電体は金属箔に限定されない。例えば、金属箔よりも厚くした金属板を用いてもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、電極保護層の幅が正極活物質層の幅よりも大きい場合について説明したが、電極保護層の幅は正極活物質層の幅以上であればよく、例えば、電極保護層の幅と正極活物質層の幅とを同じとしてもよい。電極保護層の幅と正極活物質層の幅とを同じとする場合も、電極保護層が幅方向にわたって正極活物質層を覆うことができ、内部短絡が発生する可能性がある範囲を保護することができる。
○ 第1の実施形態では、正極金属箔および負極金属箔の長手方向に対して直交する短手方向を幅方向としたほか、第2の実施形態では、正極、負極およびセパレータ長手方向に対して直交する短手方向を幅方向としたが、この限りではない。幅方向とは、幅方向とは別方向となる方向に対して区別する方向であり、例えば、正極および負極に互いに直交する長手方向と短手方向が存在する場合、短手方向を幅方向とせずに長手方向を幅方向としてもよい。
○ 第2の実施形態では、巻回形の電極体において正極タブ部および負極タブ部がそれぞれ複数設けられるとしたが、この限りではない。例えば、正極タブ部および負極タブ部を形成せず、正極端子に接続される正極板および負極端子に接続される負極板を電極体にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11 ケース
12 ケース本体
13 開口部
14 蓋体
20、50 電極体
21、51 正極
22、52 負極
23、53 セパレータ
24、54 正極金属箔
25、26、27、28、55、56 縁部
30、58 正極活物質層
34、60 負極金属箔
35、56、37、38、61、62 縁部
40、64 負極活物質層
41、65 電極保護層
S 積層シート体
W1、W4 正極金属箔、負極金属箔、負極活物質層の幅
W2、W5 正極活物質層の幅
W3、W6 電極保護層の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7