特許第6229434号(P6229434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229434
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/28 20060101AFI20171106BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20171106BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F16H61/28
   F16H63/34
   B60T1/06 G
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-225527(P2013-225527)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-86936(P2015-86936A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 進之介
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−011877(JP,A)
【文献】 特開2007−203821(JP,A)
【文献】 実開平07−018064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電動アクチュエータ(6)を動力源として、自動変速機(3)のシフトレンジをパーキングレンジを含む複数のレンジ間で切り換えるレンジ切換機構(7)と、
制動要求が与えられると、第2の電動アクチュエータ(11)が動作してパーキングブレーキ(13)を作動させる電動パーキングブレーキ装置(5)と、
を備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、
前記電動パーキングブレーキ装置に前記制動要求が与えられた場合に、前記電動パーキングブレーキ装置が故障しているか否かを判定する故障判定手段(31,S240)と、
前記故障判定手段により、前記電動パーキングブレーキ装置が故障していると判定された場合に、前記車両が存在している道路が登坂路であるか否かを判定する道路判定手段(31,S245)と、
前記道路判定手段により前記道路が登坂路であると判定された場合には、前記自動変速機のシフトレンジを前記レンジ切換機構によってパーキングレンジに切り換え、前記道路判定手段により前記道路が登坂路ではないと判定された場合には、前記自動変速機のシフトレンジを前記レンジ切換機構によってニュートラルレンジに切り換える切換手段(31,S250,S255)と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記車両の走行速度が所定値以下であるか否かを判定する車速判定手段(31,S210)を備え、
前記故障判定手段と前記切換手段とのうち、少なくとも前記切換手段は、前記車速判定手段により前記走行速度が前記所定値以下であると判定されている場合に機能すること、
を特徴とする車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用制御装置において、
前記故障判定手段は、
前記電動パーキングブレーキ装置に前記制動要求が与えられて前記電動パーキングブレーキ装置が前記パーキングブレーキを作動させる期間において、前記電動パーキングブレーキ装置が故障しているか否かを一定時間毎に判定するように構成されていること、
特徴とする車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータを動力源として自動変速機のシフトレンジを切り換えるレンジ切換機構と、電動パーキングブレーキ装置とを備えた車両に用いられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、運転者のレンジ切換操作をスイッチ等で検出し、その検出結果に基づいて電動式のレンジ切換機構を動作させることにより、自動変速機のシフトレンジを目標のレンジに切り換える、いわゆるシフトバイワイヤ方式のレンジ切換制御システムがある。また、電動アクチュエータによってパーキングブレーキを作動させる電動パーキングブレーキ装置も知られている。そして、電動パーキングブレーキ装置に作動信号が与えられた場合に、自動変速機のシフトレンジを走行レンジからパーキングレンジ又はニュートラルレンジに自動的に切り換える制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−12981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記制御装置は、車両が動かないようにするという安全面では有効であるが、自動変速機のシフトレンジを運転者の意図とは関係なく切り換えることから、利便性の面で問題が生じる場合がある。例えば、運転者が少しだけ停車したい場合にも、自動変速機のシフトレンジがパーキングレンジ又はニュートラルレンジに自動的に切り換えられてしまう。このため、運転者は車両の再発進時に手間取ることとなる。
【0005】
そこで、本発明は、利便性と安全性とを両立することのできる車両用制御装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の車両用制御装置が用いられる車両には、第1の電動アクチュエータを動力源として、自動変速機のシフトレンジを、パーキングレンジを含む複数のレンジ間で切り換えるレンジ切換機構と、制動要求が与えられると第2の電動アクチュエータが動作してパーキングブレーキを作動させる電動パーキングブレーキ装置と、が備えられている。
【0007】
そして、第1発明の車両用制御装置は、故障判定手段と、切換手段とを備える。
故障判定手段は、電動パーキングブレーキ装置に制動要求が与えられた場合に、電動パーキングブレーキ装置が故障しているか否かを判定する。そして、切換手段は、故障判定手段により、電動パーキングブレーキ装置が故障していると判定された場合に、自動変速機のシフトレンジをレンジ切換機構によってパーキングレンジに切り換える。
【0008】
この車両用制御装置によれば、電動パーキングブレーキ装置に制動要求が与えられた場合に、電動パーキングブレーキ装置が故障していれば、自動変速機のシフトレンジが自動的にパーキングレンジになる。よって、電動パーキングブレーキ装置が故障してパーキングブレーキが作動しなくても、車両を動かないようにすることができ、安全性を確保することができる。
【0009】
また、この車両用制御装置は、電動パーキングブレーキ装置に制動要求が与えられた場合に、電動パーキングブレーキ装置が故障しておらず、パーキングブレーキが正常に作動する場合には、自動変速機のシフトレンジを変更しない。このため、車両の停止状態は電動パーキングブレーキ装置によって確保され、また、自動変速機のシフトレンジは運転者が意図するシフトレンジから変更されないため、利便性は損なわれない。
【0010】
以上のことから、第1発明の車両用制御装置によれば、利便性と安全性とを両立させることができる。
尚、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の制御システム全体を表す構成図である。
図2】レンジ切換制御処理を表すフローチャートである。
図3】第1実施形態の自動Pレンジ切換処理を表すフローチャートである。
図4】第1実施形態の作用を説明する説明図である。
図5】第2実施形態の自動Pレンジ切換処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明が適用された実施形態の車両用制御装置について説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、実施形態の車両制御装置としての変速機制御装置1が使用される車両には、自動変速機3と、電動パーキングブレーキ装置5とが備えられている。
【0013】
自動変速機3には、電動アクチュエータとしてのモータ6を動力源とするレンジ切換機構7と、当該自動変速機3の変速比を変えるための油圧制御弁9とが、設けられている。
レンジ切換機構7は、自動変速機3のシフトレンジを、例えば、パーキングレンジ(以下、Pレンジという)、ニュートラルレンジ(以下、Nレンジという)、ドライブレンジ(以下、Dレンジという)、リバースレンジ(以下、Rレンジという)、1速レンジ、及び2速レンジの相互間で切り換えるためのものである。レンジ切換機構7が上記各レンジのうちの何れに切り換えるかは、モータ6への駆動信号によって制御される。
【0014】
油圧制御弁9は、図1では1つ図示されているが、実際には複数ある。そして、その複数の油圧制御弁9の開閉状態が、変速機制御装置1によって制御されることで、自動変速機3の変速比が変わる。
【0015】
電動パーキングブレーキ装置5は、電動アクチュエータ11と、その電動アクチュエータ11によって作動するパーキングブレーキ13とを備える。
パーキングブレーキ13は、ケーブル15によって電動アクチュエータ11に接続されている。電動アクチュエータ11は、動力源として例えばモータ(図示省略)を備えており、制動要求としての信号(以下、PB要求信号という)が与えられると、そのモータが回転して、そのモータの駆動力によりケーブル15を引っ張る。電動アクチュエータ11によりケーブル15が引っ張られることで、パーキングブレーキ13が作動して車両の車輪を制動する。また、ケーブル15には、当該ケーブル15の張力を検出する張力センサ17が設けられている。尚、パーキングブレーキ13は、例えば車両の左右の後輪にそれぞれ設けられている。
【0016】
電動パーキングブレーキ装置5の電動アクチュエータ11には、パーキングブレーキ制御装置19からPB要求信号が与えられる。
パーキングブレーキ制御装置19は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主要部として構成されており、車両に設けられているパーキングブレーキスイッチ21がオンされたことを検知すると、PB要求信号を電動アクチュエータ11に出力して、パーキングブレーキ13を作動させる。
【0017】
また、パーキングブレーキ制御装置19は、他の制動実施条件が成立した場合にも、PB要求信号を電動アクチュエータ11に出力する。例えば、パーキングブレーキ制御装置19は、車両の前後方向の傾きを検出する勾配センサ23からの信号に基づいて、車両が所定勾配以上の登坂路で停車してことを検知すると、PB要求信号を出力して、パーキングブレーキ13を自動的に作動させる。
【0018】
変速機制御装置1には、運転者がシフトレバー25を操作することで選択した自動変速機3のシフトレンジ(以下、選択レンジという)を検出する選択レンジ検出装置27からの信号や、車速センサ29からの信号や、パーキングブレーキ制御装置19からのPB要求信号や、張力センサ17からの信号等が入力される。選択レンジ検出装置27は、例えば運転者によるシフトレバー25の操作位置を、選択レンジとして検出し、その検出した選択レンジを示す信号を変速機制御装置1に出力する。
【0019】
そして、変速機制御装置1は、マイコン31と、当該変速機制御装置1の外部から入力される信号をマイコン31に入力させる入力回路33と、マイコン31からの指令に応じてモータ6や油圧制御弁9に駆動信号を出力する出力回路35とを備える。また、マイコン31は、CPU41と、CPU41が実行するプログラム等を格納するROM42と、CPU41による演算結果等を記憶するRAM43とを備える。マイコン31が行う処理は、CPU41がROM42内のプログラムを実行することで実現される。
【0020】
次に、マイコン31が行う処理について説明する。
マイコン31は、図2のレンジ切換制御処理を、例えば一定時間毎に行う。
図2に示すように、マイコン31は、レンジ切換制御処理の実行を開始すると、まずS100にて、運転者によるシフト操作(即ちシフトレバー25の操作)があったか否かを、選択レンジ検出装置27からの信号に基づいて判定する。
【0021】
そして、マイコン31は、シフト操作がないと判定した場合には(S100:NO)、そのまま当該レンジ切換制御処理を終了するが、シフト操作があったと判定した場合には(S100:YES)、S110に進み、選択レンジ検出装置27からの信号に基づいて選択レンジを検出する。
【0022】
マイコン31は、次のS120にて、選択レンジと、自動変速機3の現在のシフトレンジ(以下、現レンジという)とが同じであるか否かを判定し、選択レンジと現レンジとが同じであれば、そのまま当該レンジ切換制御処理を終了するが、選択レンジと現レンジとが同じでなければ、S130に進む。
【0023】
マイコン31は、S130では、自動変速機3のシフトレンジをレンジ切換機構7によって選択レンジに変更するための処理を行う。具体的には、レンジ切換機構7のモータ6に、実際のシフトレンジを選択レンジにするための駆動信号を出力する。その後、マイコン31は、当該レンジ切換制御処理を終了する。
【0024】
マイコン31は、このレンジ切換制御処理を行うことにより、運転者のシフト操作に応じて自動変速機3のシフトレンジを切り換える。
一方、マイコン31は、例えば自動変速機3のシフトレンジをDレンジに制御している場合には、自動変速機3の変速比を制御するための変速制御処理を行う。マイコン31は、変速制御処理では、車速センサ29からの信号に基づき検出される車速(車両の走行速度)等から、目標変速比を算出し、自動変速機3の変速比が目標変速比となるように、油圧制御弁9に駆動信号を出力して該油圧制御弁9の開閉状態を制御する。
【0025】
更に、マイコン31は、図3の自動Pレンジ切換処理も、例えば一定時間毎に実行する。尚、自動Pレンジ切換処理は、例えば、前述したレンジ切換制御処理及び変速制御処理とマルチタスクのかたちで並行して実行される。
【0026】
図3に示すように、マイコン31は、自動Pレンジ切換処理を開始すると、まずS210にて、車速が所定値Vth以下であるか否かを判定する。所定値Vthは、0あるいは0と見なすことができる値(車両が停止していると考えられる値)であり、自動変速機3のシフトレンジをPレンジに切り換えても、自動変速機3にダメージを与えることがない車速の値である。所定値Vthとしては、0が最も好ましい。
【0027】
そして、マイコン31は、車速が所定値Vth以下ではないと判定した場合には、そのまま当該自動Pレンジ切換処理を終了するが、車速が所定値Vth以下であると判定した場合には、S220に進む。
【0028】
マイコン31は、S220では、現レンジがPレンジであるか否かを判定し、現レンジがPレンジであれば、そのまま当該自動Pレンジ切換処理を終了するが、現レンジがPレンジでなければ(Pレンジ以外であれば)、S230に進む。
【0029】
マイコン31は、S230では、前述のPB要求信号が電動パーキングブレーキ装置5に(詳しくは電動アクチュエータ11に)与えられているか否かを判定する。そして、マイコン31は、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられていない場合には、そのまま当該自動Pレンジ切換処理を終了するが、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられている場合には、S240に進む。
【0030】
マイコン31は、S240では、電動パーキングブレーキ装置5が故障しているか否かを判定する。この例では、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられているのに、張力センサ17によって検出されるケーブル15の張力が規定値以下である場合に、電動パーキングブレーキ装置5が故障していると判定する。尚、他の例として、電動パーキングブレーキ装置5の故障を検出する処理を、変速機制御装置1以外の装置(例えばパーキングブレーキ制御装置19)で行い、S240では、その装置から故障検出結果を、通信線等を介して受け取って、故障の有無を判定しても良い。
【0031】
そして、マイコン31は、電動パーキングブレーキ装置5が故障していないと判定した場合には(S240:NO)、そのまま当該自動Pレンジ切換処理を終了する。
また、マイコン31は、電動パーキングブレーキ装置5が故障していると判定した場合には(S240:YES)、S250に進む。この場合には、例えば電動アクチュエータ11が作動していなかったりケーブル15が切れていたりして、パーキングブレーキ13が正常に作動していないと考えられる。
【0032】
そして、マイコン31は、S250では、自動変速機3のシフトレンジをレンジ切換機構7によってPレンジに変更する(切り換える)ための処理を行う。具体的には、レンジ切換機構7のモータ6に、実際のシフトレンジをPレンジにするための駆動信号を出力する。その後、マイコン31は、当該自動Pレンジ切換処理を終了する。
【0033】
尚、マイコン31は、自動Pレンジ切換処理のS250によって自動変速機3のシフトレンジをPレンジにした場合には、例えば、運転者が所定の解除操作を行ったことを検出するまで、当該自動Pレンジ切換処理と図2のレンジ切換制御処理を行わずに、シフトレンジがPレンジである状態を維持する。解除操作の一例としては、例えば、ブレーキペダルを踏みながらシフトレバー25をどこかのレンジ位置に動かす、といった操作である。
【0034】
次に、自動Pレンジ切換処理による作用を説明する。
図4の(a),(b)示すように、自動変速機3のシフトレンジが例えばDレンジの状態で車両が停止して、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられた(PB要求信号が「あり」になった)とする。そして、その場合に、電動パーキングブレーキ装置5が正常であれば、マイコン31は、図3のS240でNOと判定することとなり、シフトレンジを変更しない。このため、車両の停止状態は電動パーキングブレーキ装置5(パーキングブレーキ13)によって確保される。そして、運転者の意図しないシフトレンジの変更は実施されないため、運転者(車両の使用者)の利便性は損なわれない。
【0035】
一方、図4の(c),(d)示すように、自動変速機3のシフトレンジが例えばDレンジの状態で車両が停止して、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられ、電動パーキングブレーキ装置5により車両の停止状態が確保されている状態で、電動パーキングブレーキ装置5が故障したとする。すると、マイコン31は、図3のS240でYESと判定して、シフトレンジをPレンジに切り換えることとなる(S250)。このため、電動パーキングブレーキ装置5が故障してパーキングブレーキ13が作動しなくなっても、Pレンジへの自動切り換えにより車両を動かないようにすることができ、安全性を確保することができる。
【0036】
また、図示は省略するが、電動パーキングブレーキ装置5がPB要求信号を受ける前から故障していた場合には、電動パーキングブレーキ装置5にPB要求信号が与えられるとすぐに、マイコン31は、図3のS240でYESと判定して、シフトレンジをPレンジに切り換えることとなる(S250)。よって、この場合も、車両を動かないようにして、安全性を確保することができる。
【0037】
このように本実施形態の変速機制御装置1によれば、利便性と安全性とを両立させることができる。
また、マイコン31は、図3の処理のうち、少なくともS250の処理(シフトレンジをPレンジに切り換える処理)は、車速が前述の所定値Vth以下であると判定している場合に行う。このため、シフトレンジをPレンジに切り換えても、自動変速機3にダメージを与えることを防止することができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の変速機制御装置1について説明するが、変速機制御装置の符号としては、第1実施形態と同じ“1”を用いる。また、第1実施形態と同様の構成要素や処理についても、第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0039】
第2実施形態の変速機制御装置1は、第1実施形態の変速機制御装置1と比較すると、マイコン31が、図3の自動Pレンジ切換処理に代えて、図5の自動Pレンジ切換処理を行う点と、図1における点線で示すように、当該変速機制御装置1に勾配センサ23からの信号が入力される点とが異なる。そして、図5の自動Pレンジ切換処理は、図3の自動Pレンジ切換処理と比較すると、S245とS255とが追加されている点が異なる。
【0040】
図5に示すように、マイコン31は、S240にて、電動パーキングブレーキ装置5が故障していると判定した場合には、S245に進み、勾配センサ23からの信号に基づいて、車両が存在している道路が登坂路であるか否かを判定する。例えば、マイコン31は、勾配センサ23によって検出される車両の前後方向の傾きが所定値以上であれば、道路が登坂路であると判定する。尚、登坂路とは、車両の進行方向でみた場合の上り坂だけでなく下り坂も含む。
【0041】
そして、マイコン31は、道路が登坂路であると判定した場合には(S245:YES)、S250に進み、第1実施形態と同様に、自動変速機3のシフトレンジをレンジ切換機構7によってPレンジに変更する。
【0042】
また、マイコン31は、道路が登坂路ではないと判定した場合には(S245:NO)、S255に移行して、自動変速機3のシフトレンジをレンジ切換機構7によってNレンジに変更する(切り換える)ための処理を行う。具体的には、レンジ切換機構7のモータ6に、実際のシフトレンジをNレンジにするための駆動信号を出力する。尚、S220でNOと判定した時点のシフトレンジがNレンジであった場合には、Nレンジのままとなる。このため、その場合にはS255の処理を行わなくても良い。
【0043】
そして、マイコン31は、S250又はS255の処理を行った後、当該自動Pレンジ切換処理を終了する。尚、マイコン31は、S250又はS255によってシフトレンジをPレンジ又はNレンジにした場合には、例えば、運転者が前述の解除操作を行ったことを検出するまで、当該自動Pレンジ切換処理と図2のレンジ切換制御処理を行わずに、シフトレンジがPレンジ又はNレンジである状態を維持する。
【0044】
このような第2実施形態の変速機制御装置1によっても、第1実施形態の変速機制御装置1と同様に、利便性と安全性とを両立させることができる。
また、電動パーキングブレーキ装置5が故障していても、車両が停止した道路が登坂路でなければ、シフトレンジをNレンジにすることで、車両が動いてしまうことを防止する。このため、シフトレンジをPレンジにする機会を少なくすることができるという点で有利である。一般に、シフトレンジをPレンジにするには、他のレンジにする場合よりもレンジ切換機構7に負荷がかかりやすいため、レンジ切換機構7の耐久性を向上させるのに有利である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
例えば、電動パーキングブレーキ装置5を構成するパーキングブレーキ13は、パーキングブレーキのための専用の機構に限らず、ブレーキペダルの踏み込み操作によって制動状態になるブレーキ機構(例えばディスクブレーキ)を、ブレーキペダルの踏み込み操作とは別に制動状態にする機構のものであっても良い。
【0046】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。具体例としては、例えば、変速機制御装置1を、図2のレンジ切換制御処理を実施する装置と、変速制御処理を実施する装置と、図3又は図5の自動Pレンジ切換処理を実施する装置とに、分けて構成したり、変速機制御装置1とパーキングブレーキ制御装置19とを、1つの装置として構成したりしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。また、上述した車両用制御装置の他、当該車両用制御装置を構成要素とするシステムや、当該車両用制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、車両の制御方法など、種々の形態で本発明を実現することもできる。
【符号の説明】
【0048】
3…自動変速機、5…電動パーキングブレーキ装置、6…モータ、7…レンジ切換機構、11…電動アクチュエータ、13…パーキングブレーキ、31…マイコン
図1
図2
図3
図4
図5