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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229437
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】復調方法、受信装置、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 29/08 20060101AFI20171106BHJP
   H04B 1/707 20110101ALI20171106BHJP
   H04L 27/12 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H04L13/00 307Z
   H04B1/707
   H04L27/12 Z
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-227406(P2013-227406)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-89027(P2015-89027A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】岸部 真一
(72)【発明者】
【氏名】古川 竜雄
【審査官】 速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−203592(JP,A)
【文献】 特開2011−055500(JP,A)
【文献】 WSPR - how long to get a decode,Roger G3XBM's (Mainly) Amateur Radio Blog,2013年 5月,URL,http://g3xbm-qrp.blogspot.jp/2013/05/wspr-how-long-to-get-decode.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 29/08
H04B 1/707
H04L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JT65通信プロトコルに基づいて65値FSK変調されて送信された送信信号を受信して復調する受信方法であって、
記送信信号を受信して受信信号を生成する受信ステップと、
JT65通信プロトコルで規定された通信データの全てを受信する期間よりも短い予め設定された受信期間が終了した時点において、前記受信信号を復調して復調データを生成する復調ステップと、
前記復調データの符号誤りを訂正する訂正ステップと、
符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存するか否かを判断する誤り残存判断ステップと、
前記誤り残存判断ステップで、前記符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存しないと判断されると、前記符号誤り訂正後の復調データをメッセージ復号して出力する出力ステップと、
前記受信ステップで受信した前記受信信号がJT65通信プロトコルで規定された通信データを全て含むか否かを判断する受信信号判断ステップと、
前記受信信号判断ステップにおいて前記受信信号が前記通信データを全て含まないと判断され、かつ前記誤り残存判断ステップにおいて前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断されたことを確認すると、前記出力ステップによるメッセージ復号処理を実行することなく、前記受信期間の時間長を再設定したうえで前記復調ステップに戻る受信期間長再設定ステップと、
を含むことを特徴とする受信方法。
【請求項2】
前記受信期間長再設定ステップでは、前記受信信号の復調、復号処理を実行するCPUの能力に応じた時間長で前記受信期間を再設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項3】
前記受信期間再設定ステップでは、受信信号のSNRに応じて、前記受信期間の時間長を再設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項4】
前記受信信号判断ステップで、前記受信信号は前記通信データを全て含まないと判断されると不足するデータとして任意のデータ値を前記復調データに補完し、前記受信信号は前記通信データを全て含むと判断されると前記復調データの補完を行わない補完ステップを、
さらに含み、
前記訂正ステップは、前記補完ステップを経た前記復調データの符号誤りを訂正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項5】
前記受信信号判断ステップにおいて前記受信信号が前記通信データを全て含むと判断し、かつ前記誤り残存判断ステップにおいて前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断すると、前記出力ステップによるメッセージ復号処理を実行することなく処理を終了する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項6】
前記復調ステップでは、前記受信期間を、前記訂正ステップにおける前記復調データの符号誤り訂正が所望の精度で実施可能となる最小データ量を含んだ前記受信信号を受信可能な時間長に設定する、

ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の受信方法。
【請求項7】
JT65通信プロトコルに基づいて65値FSK変調されて送信された送信信号を受信して復調する受信装置であって、
前記送信信号を受信して受信信号を生成する受信手段と、
JT65通信プロトコルで規定された通信データの全てを受信する期間よりも短い予め設定された受信期間が終了した時点において、前記受信信号を復調して復調データを生成する復調手段と、
前記復調データの符号誤りを訂正する訂正手段と、
符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存するか否かを判断する誤り残存判断手段と、
前記誤り残存判断手段で、前記符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存しないと判断されると、前記符号誤り訂正後の復調データをメッセージ復号して出力する出力手段と、
前記受信手段で受信した前記受信信号がJT65通信プロトコルで規定された通信データを全て含むか否かを判断する受信信号判断手段と、
前記受信信号判断手段において前記受信信号が前記通信データを全て含まないと判断され、かつ前記誤り残存判断手段において前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断されたことを確認すると、前記出力手段によるメッセージ復号処理を実行することなく、前記受信期間の時間長を再設定したうえで前記復調手段による前記復調データの生成操作を再実行させる受信期間長再設定手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項8】
前記受信期間長再設定手段は、前記受信信号の復調、復号処理を実行するCPUの能力に応じた時間長で前記受信期間を再設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記受信期間再設定手段は、受信信号のSNRに応じて、前記受信期間の時間長を再設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の受信装置。
【請求項10】
前記受信信号判断手段で、前記受信信号は前記通信データを全て含まないと判断されると不足するデータとして任意のデータ値を前記復調データに補完し、前記受信信号は前記通信データを全て含むと判断されると前記復調データの補完を行わない補完手段と、
をさらに備え、
前記訂正手段は、前記補完手段から出力された前記復調データの符号誤りを訂正する、
ことを特徴とする請求項7に記載の受信装置。
【請求項11】
前記受信信号判断手段において前記受信信号が前記通信データを全て含むと判断し、かつ前記誤り残存判断手段において前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断すると、前記出力手段によるメッセージ復号処理を実行することなく処理を終了する、
ことを特徴とする請求項7に記載の受信装置。
【請求項12】
前記復調手段は、前記受信期間を、前記訂正手段における前記復調データの符号誤り訂正が所望の精度で実施可能となる最小データ量を含んだ前記受信信号を受信可能な時間長に設定する、
ことを特徴とする請求項7ないし11のいずれかに記載の受信装置。
【請求項13】
JT65通信プロトコルに基づいて複数のシンボルを65値FSK変調して送信する送信装置と、前記送信装置が送信する送信信号を受信して復調する受信装置とを備える通信システムであって、
前記受信装置として、請求項7ないし12のいずれかに記載の受信装置を備える、
ことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JT65通信プロトコルに基づいて、送信された送信信号を受信して復調する復調方法、受信装置、並びに通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、JT65通信プロトコルに基づいて複数のシンボルを、通信帯域内に複数設定した通信周波数それぞれに割り当てたうえで、前記シンボルを、時系列に沿って順次変更しながら所定の時間周期で送信したうえで、送信した送信信号を受信して復調する通信システムが知られている(非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】WSJT Home Page by K1JT[平成25年7月25日検索]、インターネット<URL:http://physics.princeton.edu/pulsar/K1JT/JT65.pdf
【非特許文献2】WSJT Home Page by K1JT[平成25年7月25日検索]、インターネット<URL:http://physics.princeton.edu/pulsar/K1JT/JT65_Japanese.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、JT65通信プロトコルでは、図3(a)に示すように、1分(60秒)毎に送信と受信を繰り返すことが規定されており、最初に送信を行う通信装置(以下、第1の通信装置という)では、送信開始から48秒経過するまでの送信期間T1(0〜48秒の期間)で往信メッセージを送信したのち、12秒間(48〜60秒の期間)の送信待機期間W1が経過すると(送信開始から60秒経過すると)、返信メッセージを受信する受信状態に切り替わる。
【0005】
一方、最初に受信を行う通信装置(以下、第2の通信装置という)では、リアルタイムに復調を行わず、受信開始から48秒経過するまでの受信期間R1に受信データを受信してメモリに貯め込んだ後、受信期間R1が経過した時点(受信開始から48秒経過した時点)から一括して受信データの復調/復号処理を開始する。以下、復調/復号に要する期間を復調/復号期間D1と称す。復調/復号期間D1は、一定期間として設定されておらず、逐次、復調/復号処理が完了した時点で復調/復号期間D1は終了する。復調/復号処理が完了すると(復調/復号期間D1が終了すると)、第2の通信装置は復調/復号結果(アルファベットと数字を組み合わせた往信メッセージ)をディスプレイに表示したのち、受信開始から1分(=60秒)経過する時点まで待機する。以下、復調/復号期間終了時点から受信開始後60秒経過時点までの期間を受信待機期間W2と称す。受信待機期間W2は最大12秒間になる。第2の通信装置の操作者は、受信待機期間W2において装置のディスプレイに表示された復調結果(往信メッセージ)を目視確認したのち、往信メッセージに対する返信メッセージを第2の通信装置の入力装置(キーボード等)に入力する。
【0006】
受信待機期間W2が終了した時点で(受信開始から60秒経過した時点で)、第2の通信装置は、受信状態から送信状態に切り替わる。送信状態に切り替わった第2の通信装置は、受信待機期間W2に入力された返信メッセージを次の送信期間T1で送信する。
【0007】
以上の送受信動作を行うため、第2の通信装置の操作者は、受信待機期間W2中に、往信メッセージに対する返信メッセージを第2の通信装置の入力装置(キーボード等)に素早く入力する必要がある。しかしながら、その時間的猶予(受信待機期間W2)は最大12秒間と比較的短く、JT65通信システムの操作に不慣れな操作者にとってはこの短い受信待機期間W2で入力操作を行うことが困難なものとなっている。
【0008】
さらには、JT65通信システムでは、パーソナルコンピュータ(PC)にシステムの制御部をインストールする第1のシステム構成の他に、制御部を含めて全ての構成を無線機に格納する第2のシステム構成が汎用されている。第1のシステム構成では、パーソナルコンピュータに搭載されているCPUの演算能力が比較的高いために復調結果(往信メッセージ)は一瞬で表示されるので、上述した時間的猶予は可及的に12秒間に近い時間長になる。しかしながら、第2のシステム構成では、無線機に搭載されているCPUの演算能力が比較的低く復調処理に時間がかかるため、上述した時間的余裕はさらに短くなってしまう。
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、JT65通信プロトコルに基づいた通信システムにおいて、送信操作のために時間的余裕を可及的に増加させて操作性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の受信方法は、
JT65通信プロトコルに基づいて65値FSK変調されて送信された送信信号を受信して復調する受信方法であって、
記送信信号を受信して受信信号を生成する受信ステップと、
JT65通信プロトコルで規定された通信データの全てを受信する期間よりも短い予め設定された受信期間が終了した時点において、前記受信信号を復調して復調データを生成する復調ステップと、
前記復調データの符号誤りを訂正する訂正ステップと、
符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存するか否かを判断する誤り残存判断ステップと、
前記誤り残存判断ステップで、前記符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存しないと判断されると、前記符号誤り訂正後の復調データをメッセージ復号して出力する出力ステップと、
前記受信ステップで受信した前記受信信号がJT65通信プロトコルで規定された通信データを全て含むか否かを判断する受信信号判断ステップと、
前記受信信号判断ステップにおいて前記受信信号が前記通信データを全て含まないと判断され、かつ前記誤り残存判断ステップにおいて前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断されたことを確認すると、前記出力ステップによるメッセージ復号処理を実行することなく、前記受信期間の時間長を再設定したうえで前記復調ステップに戻る受信期間長再設定ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の受信装置は、
JT65通信プロトコルに基づいて65値FSK変調されて送信された送信信号を受信して復調する受信装置であって、
記送信信号を受信して受信信号を生成する受信手段と、
JT65通信プロトコルで規定された通信データの全てを受信する期間よりも短い予め設定された受信期間が終了した時点において、前記受信信号を復調して復調データを生成する復調手段と、
前記復調データの符号誤りを訂正する訂正手段と、
符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存するか否かを判断する誤り残存判断手段と、
前記誤り残存判断手段で、前記符号誤り訂正後の復調データに符号誤りが残存しないと判断されると、前記符号誤り訂正後の復調データをメッセージ復号して出力する出力手段と、
前記受信手段で受信した前記受信信号がJT65通信プロトコルで規定された通信データを全て含むか否かを判断する受信信号判断手段と、
前記受信信号判断手段において前記受信信号が前記通信データを全て含まないと判断され、かつ前記誤り残存判断手段において前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断されたことを確認すると、前記出力手段によるメッセージ復号処理を実行することなく、前記受信期間の時間長を再設定したうえで前記復調手段による前記復調データの生成操作を再実行させる受信期間長再設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上述した構成を備えることで本発明では、受信期間として、符号誤り訂正が可能な最低限のデータを含んだ受信信号を受信可能な時間長を予め設定しておけば、復調データのメッセージ復号の劣化を招くことなく、受信/復調に要する時間長を短縮することが可能となる。
【0015】
また上述した構成を備える本発明では、受信期間として設定した時間長が想定外に短いために、十分なデータ量の受信信号が得られず、そのために復調データのメッセージ復号の劣化を招いたとしても、再受信を実施する際に受信期間を修正することで、再受信により得られる再受信信号では、十分なデータ量を有する受信信号を得ることが可能になり、その結果、復調データのメッセージ復号の劣化が防止される。
【0016】
なお、前記受信期間長再設定ステップ(手段)には、前記受信信号の復調、復号処理を実行するCPUの能力に応じた時間長で前記受信期間を再設定する、という態様がある。
【0017】
また、前記受信期間再設定ステップ(手段)には、受信信号のSNRに応じて、前記受信期間の時間長を再設定するという態様がある。これらの態様によれば、最低限の期間延長によって、早期にメッセージを出力することができ、最悪でも全データを受信し終わってから復調するのと同じタイミングで出力することが可能となる。
【0018】
本発明の受信方法には、
記受信信号判断ステップで、前記受信信号は前記通信データを全て含まないと判断されると不足するデータとして任意のデータ値を前記復調データに補完し、前記受信信号は前記通信データを全て含むと判断されると前記復調データの補完を行わない補完ステップを、
さらに含み、
前記訂正ステップは、前記補完ステップを経た前記復調データの符号誤りを訂正する
という態様がある。
【0019】
本発明の受信装置には、
記受信信号判断手段で、前記受信信号は前記通信データを全て含まないと判断されると不足するデータとして任意のデータ値を前記復調データに補完し、前記受信信号は前記通信データを全て含むと判断されると前記復調データの補完を行わない補完手段と、
をさらに備え、
前記訂正手段は、前記補完手段から出力された前記復調データの符号誤りを訂正する、
という態様がある。
【0020】
これらの態様によれば、補完ステップ(手段)によって、受信信号を擬似的に全データ受信状態にしたうえで復調データの符号誤りを訂正するので、復調データの符号誤り訂正を精度高く行うことが可能となる。
【0021】
本発明の受信方法には、
記受信信号判断ステップにおいて前記受信信号が前記通信データを全て含むと判断し、かつ前記誤り残存判断ステップにおいて前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断すると、前記出力ステップによるメッセージ復号処理を実行することなく処理を終了する、
という態様がある。
【0022】
本発明の受信装置には、
記受信信号判断手段において前記受信信号が前記通信データを全て含むと判断し、かつ前記誤り残存判断手段において前記符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存すると判断すると、前記出力手段によるメッセージ復号処理を実行することなく処理を終了する、
という態様がある。
【0023】
これらの態様によれば、受信信号が通信データを全て含むにも拘わらず、符号誤り訂正後の復調データに誤りが残存する、という受信信号の受信結果が非常に悪い通信状態では、劣悪な通信状態を検知した時点で直ちに一連の処理を終了することで無用な処理の実施を未然に防止することが可能となる。
【0024】
本発明の受信方法には、
前記復調ステップでは、前記受信期間を、前記訂正ステップにおける前記復調データの符号誤り訂正が所望の精度で実施可能となる最小データ量を含んだ前記受信信号を受信可能な時間長に設定する、
という態様がある。
【0025】
本発明の受信装置には、
前記復調手段は、前記受信期間を、前記訂正手段における前記復調データの符号誤り訂正が所望の精度で実施可能となる最小データ量を含んだ前記受信信号を受信可能な時間長に設定する、
という態様がある。
【0026】
これらの態様によれば、前記受信期間が必要最小限の時間長に設定される結果、復調データのメッセージ復号の劣化を確実に防止した状態で、受信/復調に要する時間長を必要最小限に短縮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、受信/復調に要する時間長を必要最小限に短縮させることが可能となる。これにより、受信後に実施する送信操作のための時間的余裕を可及的に増加させて送信操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態の通信システムにおける受信/復調/復号処理を示すフローチャート図である。
図3】実施の形態の通信システムと従来例における受信/送信処理のタイムチャートであり、(a)は従来例のタイムチャートであり、(b)は実施の形態のタイムチャートである。
図4】受信信号におけるSNRとシンボル誤り率Pとの間の関係を示すグラフである。
図5】99%の復号成功率Pを達成するのに必要となる受信信号のSNRと復調開始シンボル数Kとの間の関係を示すグラフである。
図6】JT65通信プロトコルにおけるデータとパイロット信号の出力パターンを示す図である。
図7】99%の復号成功率Pを達成するのに必要となる受信信号のSNRと復調開始シンボル数Kと実際の復号開始シンボル数との間の関係を示す表である。
図8】90%の復号成功率Pを達成するのに必要となる受信信号のSNRと復調開始シンボル数Kとの間の関係を示すグラフである。
図9】50%の復号成功率Pを達成するのに必要となる受信信号のSNRと復調開始シンボル数Kとの間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る通信システム1を説明する。図1は、通信システム1の構成を示すブロック図である。
【0030】
通信システム1は、JT65通信プロトコルに基づいて65値FSK変調された信号を相互通信する通信システムであって、送信装置2と受信装置3とを備える。送信装置2は、入力器4と、2進変換器5と、ビット分割器6と、RS符号器7と、インターリーバー8と、グレイ符号器9と、同期信号生成器10と、65値FSK変調器11と、送信器12とを備える。受信装置3は、受信器13と、65値FSK復調器14と、グレイ復号器16と、デインターリーバー17と、RS復号器18と、ビット分割器19と、キャラクタ変換器20と、出力器21とを備える。同期信号生成器10は、PN符号器10aと、合成器10bとを備える。
【0031】
次に、通信システム1の送受信動作の概略を説明する。まず、送信装置2による送信信号の生成動作並びに送信動作の概略を説明する。入力器4は、送信装置2を操作する操作者によって入力される入力データを受け付ける装置であって、キーボード等から構成される。ここで、入力データは、例えば、Digit[0-9], Letter[A-Z], Space characterから構成される。
【0032】
2進変換器5は、入力器4に入力された入力データを2進法データに変換する。ここで、JT65通信プロトコルでは、コールサインの局数が最大228であり、グリットロケータ(運用地域を識別する符号)が最大215であると想定しているため、1回の送信メーセージには、72ビット(=28+28+15)のデータが必要となる。そのため、2進変換器5は、入力器4に入力された入力データを72ビットの2進法データに変換する。
【0033】
ビット分割器6は、2進変換器5によって72ビットデータに変換された入力データを分割する。具体的には、ビット分割器6は、例えば、72ビットの入力データを、6ビット毎に12個に分割する。
【0034】
RS符号器7は、ビット分割器6で6ビット毎に12分割された入力データに誤り訂正符号を付加する。具体的には、入力された12個の6ビット情報を誤り訂正符号化することにより、新たに51個の6ビット情報が付加されて63個の6ビット情報となる。すなわち、合計378ビットの情報となる。なお、この63個の6ビット情報を以下の説明ではビット情報63という。
【0035】
インターリーバー8は、RS符号器7から出力されるビット情報63を、複行複列のマトリクスに順次入力したうえで、入力時とは異なる方向で読み出すことでビット情報63の配列変換を行う。インターリーバー8によって配列変換されたビット情報63はバイナリーコードであることが維持されている。グレイ符号器9は、インターリーバー8によって配列変換されたビット情報63をグレイコードに変換する。以下、グレイコードに変換されたビット情報63をビット情報63(グレイコード)という。
【0036】
同期信号生成器10は、PN符号器10aと合成器10bとを用いて以下のようにして同期用の基準信号を生成する。すなわち、JT65通信プロトコルは、1分間の送受信シーケンスを使用して送信装置2と受信装置3との間で通信を行うために、精度の高い同期を要求する。そこで、PN符号器10aは、まず擬似ランダム信号を用いて系列長126を有するPN符号を生成し、生成したPN符号を合成器10bに供給する。具体的には、図6に示すように、PN符号器10aは、"1"の数63個、"0"の数63個からなる系列長126を有するPN符号を生成する。PN信号は、ビット情報63(グレイコード)を構成する各ビット情報の出力タイミングの同期を取るための同期信号として機能する。したがって、このPN信号を同期信号として出力される送信信号は、系列長126で規定される時間周期の1/126の時間間隔で計126個のシンボルが順次送信される信号形態となる。
【0037】
合成器10bは、グレイ符号器9から出力されるビット情報63(グレイコード)に、PN符号器10aから供給されるPN符号を合成する。以下、PN符号が合成されたビット情報63(グレイコード)をビット情報63・PN符号という。
【0038】
65値FSK変調器11は、同期信号生成器10から出力されるビット情報63・PN符号をもとに、65値FSK変調された送信信号Rtを生成する。具体的には、65値FSK変調器11は、PN符号の”1”の出力タイミングでは、パイロット信号として基準周波数(1270.5Hz)を発振周波数に設定し、PN符号の”0”の出力タイミングでは、ビット情報63(グレイコード)を構成する各6ビット情報に応じて、64種類からなる変調周波数群の何れかを発振周波数に設定し、送信信号Rtを生成する。
【0039】
送信器12は、65値FSK変調器11が生成する送信信号Rtを伝送路Aに向けて送信する。周波数変調されて送信信号Rtに重畳されたビット情報63と基準周波数情報とは、JT65通信プロトコルに基づいた通信システムにおける情報伝達の基本単位となる。
【0040】
次にこの通信システム1における特徴となる受信装置3による受信動作並びに復調動作を、図2のフローチャートを参照して説明する。まずは、受信動作並びに復調動作の概略を説明する。受信器13は送信装置2が伝送路Aに向けて送信した送信信号Rtを受信して、その受信信号Rrを65値FSK復調器14に出力する(受信ステップS201)。
【0041】
65値FSK復調器14は、受信器13から供給される受信信号Rrを65値FSK復調する。グレイ復号器16は、65値FSK復調器14によって65値FSK復調された受信信号Rrをグレイコードからなるビット情報63(グレイコード)に復号する。デインターリーバー17は、インターリーバー8とは逆の処理を行うことで、ビット情報63(グレイコード)を、バイナリーコードからなるビット情報63に変換する。以上説明した65値FSK復調器14とグレイ復号器16とデインターリーバー17の処理は、図2のフローチャートにおける復調ステップS204に相当する。
【0042】
RS復号器18は、378ビットのビット情報63を誤り訂正復号することで、6ビット毎に12分割された復号データに変換する(訂正ステップS205)。ビット分割器19は、RS復号器18が出力する6ビット毎に12分割された復号データを72ビットデータに変換する。キャラクタ変換器20は、ビット分割器19が出力する72ビットデータを、例えば、Digit[0-9], Letter[A-Z], Space characterから構成されるキャラクターデータに変換する。出力器21は、キャラクターデータを外部に出力するディスプレイ表示装置や印刷装置や発声装置等からなる出力装置であって、キャラクタ変換器20から出力されるキャラクターデータを表示/印字/発声等の処理によって外部に出力する。以上説明したビット分割器19とキャラクタ変換器20と出力器21の処理は図2のフローチャートにおける出力ステップS207に相当する。
【0043】
受信/復調/復号処理をさらに詳細に説明する。この通信システム1が準拠しているJT65通信プロトコルで設定されている送信、受信時間長(送信期間T1、受信期間R1)は、従来では、図3(a)に示すように、固定値に設定されていた。従来においては、この時間長を、全ての送信信号を確実に送受信するために必要となる時間長に設定していた。具体的には、この時間長は48秒に設定されていた。
【0044】
一方、JT65通信プロトコルで用いられている符号誤り訂正処理(訂正ステップS205)、すなわち、RS符号器7とRS復号器18とで実施される誤り訂正処理は、リード・ソロモンRS(63.12)の符号を用いるために、高い誤り訂正能力を有している。本願の発明者は、JT65通信プロトコルで用いられている符号誤り訂正処理を行うことを前提にしてシステムを再検討してみて、JT65通信プロトコルで設定されている送信/受信時間長(48秒)は、条件によっては必要以上に冗長であることを見出した。
【0045】
以上の知見に基づき、この通信システム1では、JT65通信プロトコルにおける高い誤り訂正能力を最大限に利用して、JT65通信プロトコルにおける受信/復調処理のサイクルを改変して通信データを全て受信する前に復調ステップS204を開始することで、復号結果を早期に出力している。以下、説明する。
【0046】
JT65通信プロトコルに採用されている符号誤り訂正処理は、リード・ソロモンRS(63.12)の符号を用いているために、全ての受信データ(63シンボル)のうち誤データが25シンボル含まれていても、正しい復号結果(メッセージ)を出力することが可能である。通信システム1ではこの高い誤り訂正能力を利用し、誤り訂正が可能な最小限のデータ数である38シンボル(=63−25)を受信したと想定される時点で、65値FSK復調器14が受信信号Rrの復調処理(復調ステップS204)を開始する。なお、JT65通信プロトコルで規定される通信データはパイロットデータを含んでいるため、実際の受信信号Rrを受信する受信装置3では、78シンボルを受信した時点で65値FSK復調器14が受信信号Rrの復調処理を開始する。
【0047】
ここで未受信データの存在が問題となる。すなわち、38シンボルを受信したと想定される時点では、残余の25シンボルの受信処理は完了していない。そのため、残余の25ビット分のデータが含まれない38シンボル分のビット情報63では、65値FSK復調器14、グレイ復号器16、およびデインターリーバー17による復調ステップ204や、RS復号器18によるビット情報63の訂正ステップS205が正常に実施されなくなる可能性がある。そこで、65値FSK復調器14は、受信器13から受信信号Rrを受け取ると、復調処理を開始する前処理として、受け取った受信信号Rrが63シンボル分の全ての受信データを含んでいるかどうかを判断する(受信信号判断ステップS202)。受信信号判断ステップS202で、受信信号Rrに全ての受信データが含まれていないと判断した場合、65値FSK復調器14は、受信信号Rrに任意のデータ値(例えば”0”)を補完することで、受信信号Rrを、擬似的に63シンボル分の全ての受信データが含まれている状態にしたうえで(補完ステップS203)、補完した受信信号Rrを復調する。なお、65値FSK復調器14は、受信信号Rrに63シンボル分の全ての受信データが含まれていると判断した場合には、補完ステップS203を実施することなく、受信器13から受け取った受信信号Rrをそのままの状態で復調する。
【0048】
グレイ復号器16は、65値FSK復調器14から供給される65値FSK復調された受信信号Rrをビット情報63(グレイコード)に復号し、さらにデインターリーバー17は、ビット情報63(グレイコード)をビット情報63に変換してRS復号器18に供給する。
【0049】
このようにしてRS復号器18に供給されるビット情報63には、少なくとも誤り訂正可能な最小限のデータ(38シンボル分のデータ)が含まれていると想定される。そのため、受信信号RrのSNRが十分に高くこれら38シンボル分のデータの全てに誤りが無いという条件下では、ビット情報63を確実に誤り訂正復号することができる。
【0050】
誤り訂正復号が成功するかどうかは受信信号RrのSNRに左右される。受信信号RrのSNRが高く、受信信号Rrの38シンボル分のデータ全てに誤りが無ければRS復号器18による誤り訂正復号処理(訂正ステップS205)により確実に誤りが訂正されて即座に正しく受信メッセージが表示される。しかしながら、受信信号RrのSNRが低い場合、受信信号Rrが38シンボル分のデータを含んでいても、その受信信号Rrの誤り訂正復号処理(訂正ステップS205)が失敗する可能性がある。
【0051】
そこで、RS復号器18は、訂正ステップS205が終了すると、誤り訂正復号処理が完了したビット情報63に符号誤りが残存しているかどうかを判断する(誤り残存判断ステップS206)。復号処理が完了したビット情報63に符号誤りが残存していないことを、誤り残存判断ステップS206で確認した場合、RS復号器18は、受信信号Rrに対する誤り訂正復号処理(訂正ステップS205)が成功していると判断して、誤り訂正復号処理が完了したビット情報63を、ビット分割器19に出力する。これにより、ビット分割器19、キャラクタ変換器20、および出力器21は、上述した出力ステップS207を実行する。一方、復号処理が完了したビット情報63に符号誤りが残存していることを、誤り残存判断ステップS206で確認した場合、RS復号器18は、受信信号Rrに対する誤り訂正復号処理(訂正ステップS205)が失敗したと判断して、誤り訂正復号処理が完了したビット情報63をビット分割器19に出力することなく受信信号判断ステップS202を再確認する処理(受信信号再確認ステップS208)を実行する。
【0052】
受信信号再確認ステップS208において、受信信号判断ステップS202では受信信号Rrに全ての受信データが含まれていると判断していたことを再確認すると、RS復号器18は、次のように判断する。すなわち、受信信号Rrに63シンボル分の全ての受信データが含まれていたにも拘わらず、受信信号RrのSNRが低すぎて訂正ステップS205が成功しておらず、このことからみてこれ以上動作を継続しても正常な出力結果を得ることができないと判断する。このような判断を下したRS復号器18は、復号結果をビット分割器19に出力することなく、すなわち出力ステップS207を実施することなく、一連の受信/復調/復号処理を終了する。
【0053】
一方、受信信号再確認ステップS208において、受信信号判断ステップS202では受信信号Rrに全ての受信データが含まれていないと判断していたことを再確認すると、RS復号器18は次のように判断する。すなわち、SNRが十分に高い場合に誤り訂正復号が可能な最低限のシンボル(38シンボル)を含んでいるものの、実際に受信した受信信号RrのSNRが低かったため、38シンボル分のデータでは誤り訂正復号が失敗したと判断する。しかし、受信期間長を延長して受信するシンボル数を増やしていけば、SNRが低くても誤り訂正復号が成功する可能性がある。このような判断を下したRS復号器18は、受信器13、65値FSK復調器14等に指示を出すことで受信期間長再設定ステップS209を実行する。
【0054】
受信期間長再設定ステップS209において、受信器13と65値FSK復調器14とは、受信時間長を再設定する。再設定には、大きく分けて、固定値再設定方法と、確率論に基づく再設定方法という二つの方法がある。
【0055】
(固定値再設定方法)
固定値再設定方法で再設定される受信時間長の再設定方法としては、次の第1〜第3の再設定方法がある。
【0056】
第1の再設定方法は、再設定した受信時間長で受信することで得られる再受信信号Rr’にパイロット信号を除く全ての受信データ(63シンボル)が含まれていることが想定される期間長を、再受信時間長として設定する方法である。
【0057】
第2の再設定方法は、65値FSK復調器14を構成する制御部(CPU)が、受信器13にて再度受信した信号をRS復号器18で復号処理するまでに要する時間長以上、すなわち、誤り残存判断ステップS206を完了させるまでに要する時間長以上を再受信時間長として設定する方法である。
【0058】
第1、第2の再設定方法によれば、受信信号RrのSNRが低い場合であっても、再設定した受信時間長で復調処理を繰り返す(受信するシンボル数を増やしていく)ことで、最悪でも全シンボルを受信し終わってから復調するのと同じタイミングでメッセージを出力することができる。
【0059】
(確率論に基づく再設定方法)
確率論に基づく再設定方法では、JT65通信プロトコルにおけるシンボル誤り率Pが重要となる。シンボル誤り率Pとは、63個のシンボルそれぞれが独立に誤りとなる確率のことである。図4は、JT65通信プロトコルの復調シンボル誤り率を1dB毎に実測して作図したものであって、SNRが−15〜−24dBを示す受信信号Rrにおけるシンボル誤り率Pを示している。図4において、縦軸はシンボル誤り率[P]を示し、横軸は受信信号RrのSNR[dB]を示している。
【0060】
シンボル誤り率Pで符号誤りが存在する各受信信号Rrを、復調して復号(誤り訂正復号)してなる復号データにおいて、0〜N個のシンボル誤りが残存する確率Pは、下の(1)式で算出することができる。
【0061】
【数1】
【0062】
JT65通信プロトコルでは、前述したように、63個のシンボルを含有する受信信号Rr中のシンボル誤りが25個以下の場合は、誤り訂正復号処理によって確実に符号誤りを訂正することができる。すなわち、受信信号Rrに、38個(63−25)の正しいデータが存在しておれば、理論上、誤り訂正復号処理によって全ての符号誤りを訂正することが可能である。したがって、K個(K>=38)のシンボルが存在する受信信号Rrにおいては、符号誤りを示すシンボル数が(K−38)個以下であれば、全てのシンボルの誤り訂正を行うことが可能となる。以上のことからみて、受信信号Rrを誤り訂正復号した結果得られる復号データにおいて全ての符号誤りが訂正される確率(以下、復号成功率と称す)Pは、次の(2)式によって算出することができる。
【0063】
【数2】
【0064】
したがって、例えば、99%以上の復号成功率Pを保障したい場合、(2)式における左辺の値(P>=0.99)を満足する右辺の各値(受信データにおける復調開始シンボル数K、受信信号RrのSNR)を算出すれば良い。
【0065】
算出した復調開始シンボル数Kと受信信号RrのSNRとは、互いに関連性を有しており、確率論に基づく再設定方法を実施する構成では、受信装置の内部の図示しないROM等の記憶手段に、予めSNRとKの関係をテーブルデータとして記憶している。そして、図2のフローチャートにおける復調ステップS204で受信信号RrのSNRを検出しておいて、その検出されたSNRの値を用いて、受信期間長再設定ステップS209で復調開始シンボル数Kを、記憶しているテーブルデータから選択する。そして、受信信号Rrにおけるシンボル数が、選択した復調開始シンボル数Kに到達した時点で65値FSK復調器14が復調を開始する。そうすれば、全シンボルを受信していない時点から復調を開始するにも拘わらず、復号成功率Pを理論上99%以上にすることができる。なお、上述の復号成功率Pの設定方法としては、例えば、操作者による手入力がある。
【0066】
図5は、復号開始シンボル数Kを示す受信信号Rrを、99%以上の復号成功率Pで誤り訂正復号させることができるSNRを、上述した(2)式から算出した結果を示している。図5において、縦軸がSNRを示し、横軸がシンボル数kを示している。なお、図5は、SNRを1dBステップで算出したものである。
【0067】
図5から明らかなように、SNRが−15dB以上であれば、38シンボル目のデータを受信した時点で受信信号Rrの復調を開始すれば、理論上、99%以上の復号成功率Pの実現が可能となる。同様にSNRが−17dB以上であれば、39シンボル目のデータを受信した時点で受信信号Rrの復調を開始すれば、理論上、99%以上の復号成功率Pの実現が可能となる。同様に、SNRが−18dB以上であれば、41シンボル目のデータを受信した時点で受信信号Rrの復調を開始すれば、理論上、99%以上の復号成功率Pの実現が可能となる。
【0068】
なお、受信信号Rrに含まれるシンボルにはパイロット信号が含まれているため、上述した復調開始シンボル数Kの算定においては、パイロット信号をシンボルとしてカウントしていない。JT65通信プロトコルでは、データとパイロット信号のパターンは、図6に示すように、"1","0"であらわされ、"0"の時にデータが出力されるため、上述した算定における復調開始シンボル数K(=38)が出力される時点は38番目の0が出力された時点となる。このように、実際の受信信号Rrでは、上述した算定上の復調開始シンボル数K(=38)にさらにパイロット信号をカウントする必要があり、そのため、実際の復調開始シンボル数K’は78シンボルとなる。99%の復号成功率Pを条件としたSNRとKとK’との関係を図7に示す。
【0069】
90%、50%の復号成功率Pを条件とした復調開始シンボル数KとSNRの関係(テーブル)を図8図9に示す。90%、50%の復号成功率Pの場合も、上述した99%の復号成功率Pの場合と同様の方法によって、KとSNRの関係(テーブル)を作成することができる。
【0070】
復号成功率Pが高いテーブルを使用すると、復調したものの復号が失敗する可能性が低くなって、無駄になる計算量を削減することができる。一方、成功率Pが低いテーブルを使用すると、復調したものの復号が失敗に終わる可能性が高くなって無駄になる計算量が増大するものの、出力結果を表示するまでに要する処理時間を短縮させることが可能になる。
【0071】
したがって、復調/復号処理を可能な限り減らしたい場合は、復号成功率Pが高いテーブルを使用すると良い。一方、演算能力に余裕がある場合は、復号成功率Pが低いテーブルを使用する、若しくはテーブルを無視して復調に必要な時間間隔で復調を行えば良い。
【0072】
次に、本実施の形態の通信システム1におけるメッセージ入力操作の優位性について説明する。JT65通信プロトコルでは、1分毎に送信と受信を繰り返すことが規定されており、図3(b)に示すように、最初に送信を行う第1の通信装置では、送信開始から48秒経過するまでの送信期間T1(0〜48秒の期間)で往信メッセージを送信したのち、12秒間(48〜60秒の期間)の送信待機期間W1を経過すると(送信開始から60秒経過すると)、返信メッセージを受信する受信状態に切り替わる。
【0073】
一方、最初に受信を行う第2の通信装置では、リアルタイムに復調を行わず、受信開始時点からt(t<48)秒経過するまでの受信期間R2中に受信データを受信してメモリに貯め込んだ後、受信期間R2が経過した地点から一括して受信データの復調処理を開始する。
【0074】
復調が完了すると第2の通信装置は復調結果(アルファベットと数字を組み合わせた往信メッセージ)をディスプレイに表示したのち、受信開始から1分(=60秒)経過する時点まで待機する。受信開始から1分経過後、第2の通信装置は、受信状態から送信状態に切り替わる。以下、表示開始から送信開始時点までを受信待機期間W3という。受信待機期間W3は最大(60−t)秒間になる。第2の通信装置の操作者は、受信待機期間W3において装置のディスプレイに表示された復調結果(往信メッセージ)を目視確認したのち、往信メッセージに対する返信メッセージを第2の通信装置の入力装置(キーボード等)に入力する。送信状態に切り替わった第2の通信装置は、受信待機期間W3に入力された返信メッセージを次の0〜48秒の送信期間R1で送信する。
【0075】
本通信システム1では、受信期間R2の時間設定に特徴がある。以下、説明する。図3(a)に示す従来における受信期間R1は、条件によっては冗長となる時間長(48秒)に固定的に設定されている。これに対して、本通信システム1における受信期間R2は、受信信号RrのSNRが十分高い場合に誤り訂正が可能な最小限のデータ数である38シンボル(=63−25)を受信したと想定される時間長に設定されており、受信期間R2では、従来における受信期間R1の冗長性が排除されている。これにより、本通信システム1における受信期間R2の時間長は、冗長性を排除した分だけ、従来における受信期間R1の時間長より短くなっている。
【0076】
一方、第1の通信装置と第2の通信装置との間で、送信状態/受信状態を切り替えるタイミング(受信期間W3が終了するタイミング)は、両装置の間で通信が開始されてから60秒後であって、このタイミングはJT65通信プロトコルで規定されているために変動させることができない。したがって、受信操作を行っている通信装置1における一連の処理(受信/復調/復号/表示/返信メッセージ入力待ち)に費やすことができる時間長は60秒であって、もし返信メッセージの入力が遅れると、遅れた分の返信メッセージが欠けた状態で送信信号Rtが生成されてしまう。そのような条件下で本通信システム1では、受信処理に費やす受信期間R2の冗長性を排除してその時間長を可及的に短くしている。これにより、図3(a)と図3(b)との比較により明らかなように、受信期間R2の時間長を短くした分だけ、第2の通信装置の操作者が、往信メッセージに対する返信メッセージを通信装置1の入力装置(キーボード等)に入力することができる受信待機期間W3の時間長を長くすることができて、その操作性が向上する。
【0077】
制御部を含めて全ての構成が無線機の装置内に格納された通信装置の構成では、無線機に搭載されているCPUの演算能力が比較的低く復調処理に時間がかかるため、上述した時間的余裕に起因する操作性の向上効果はさらに顕著なものになる。
【0078】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 通信システム
2 送信装置
3 受信装置
4 入力器
5 2進変換器
6 ビット分割器
7 RS符号器
8 インターリーバー
9 グレイ符号器
10 同期信号生成器
10a PN符号器
10b 合成器
11 65値FSK変調器
12 送信器
13 受信器
14 65値FSK復調器
16 グレイ復号器
17 デインターリーバー
18 RS復号器
19 ビット分割器
20 キャラクタ変換器
21 出力器
A 伝送路
Rt 送信信号
Rr 受信信号
S シンボル
D1 復調/復号期間
R1、R2 受信期間
T1 送信期間
W1 送信待機期間
W2、W3 受信待機期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9