特許第6229462号(P6229462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000002
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000003
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000004
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000005
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000006
  • 特許6229462-スタータ用電磁ソレノイド装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229462
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】スタータ用電磁ソレノイド装置
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/00 20060101AFI20171106BHJP
   F02N 15/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F02N11/00 R
   F02N15/06 C
   F02N15/06 J
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-248690(P2013-248690)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105625(P2015-105625A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 登久
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225189(JP,A)
【文献】 特開平07−259709(JP,A)
【文献】 特開2008−016377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00
F02N 15/02−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのリングギヤ(G)に噛み合うピニオン(6)にモータ(3)の回転力を伝達して前記エンジンを始動させるスタータ(1)に用いられ、
第1のコイル(35)への通電により発生する磁力によって前記第1のコイル内を軸方向一端側へ移動する第1プランジャ(36)と、前記第1プランジャ(36)の軸方向一端側で磁気回路の一部を形成する第1コア(37)とを有し、前記第1プランジャ(36)の軸方向一端側への移動によって前記ピニオン(6)を軸方向一端へ移動させて前記リングギヤ(G)へ向けて押し出す第1ソレノイド(SL1)と、
前記第1ソレノイド(SL1)の軸方向他端側に前記第1ソレノイド(SL1)と同軸的に配され、第2のコイル(50)への通電により発生する磁力を利用して、前記モータ(3)の電源回路に接続されるメイン接点を開閉する第2ソレノイド(SL2)と、
前記第1のコイル(35)と前記第2のコイル(50)との間に配されて、前記第1ソレノイド(SL1)と前記第2ソレノイド(SL2)とが磁気回路の一部として共有する筒状の第2コア(38)とを備え、
前記第1プランジャ(36)は、前記第1のコイル(35)の内周を摺動するとともに前記第1のコイル(35)非通電時に前記第2コア(38)の内周に入り込む摺動部(36a)を有するスタータ用電磁ソレノイド装置であって、
前記第1プランジャ(36)が軸方向一端側の最大移動位置まで移動する最大前進時においても、前記摺動部(36a)が前記第2コア(38)の内周に入っており、
さらに、前記スタータ用電磁ソレノイド装置は、
前記第1のコイル(35)と前記第2コア(38)との間に配され、前記第1のコイル(35)を軸方向に押圧する環状の弾性部材(46)を備え、
前記第2コア(38)は、前記弾性部材46)の内周と前記第1プランジャ(36)の外周との間に配されるように、軸方向一端側に環状に突出した突出部(70)を有し、
前記最大前進時に、前記摺動部(36a)が前記突出部(70)の内周に入っていることを特徴とするスタータ用電磁ソレノイド装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタータのピニオンをリングギヤ側へ押し出すための第1のソレノイドと、モータの通電電流を断続する第2のソレノイドとを有するスタータ用電磁ソレノイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、ピニオンを有するピニオン軸とモータの電機子軸とが平行に配されるスタータに用いられる電磁ソレノイド装置として、タンデムソレノイド型と呼ばれる2つのソレノイドを備えた電磁ソレノイド装置が開示されている。
【0003】
この電磁ソレノイド装置は、ピニオンをエンジンのリングギヤに押し出す第1のソレノイドと、ピニオンと同軸線上に設けられメイン接点を開閉することでモータへの通電電流を断続する第2のソレノイドとを備え、ピニオンの押出しタイミングとモータ始動タイミングとを独立して制御することができる。このため、アイドリングストップシステムの始動装置に好適な電磁ソレノイド装置である。
【0004】
特許文献1には、第1のソレノイドと第2のソレノイドとが軸方向に並んで配され、第1ソレノイドのコイルと第2ソレノイドのコイルとの間に、第1ソレノイド及び第2ソレノイドの磁気回路の一部を形成するコアが配された電磁ソレノイド装置が記載されている。
【0005】
ここで、第1ソレノイドSL1における磁束の流れを図5に示す。
第1ソレノイドSL1のプランジャ101に軸方向一端側に対向するコアを第1コア102と呼び、第1ソレノイドSL1のコイル103と第2ソレノイドSL2のコイル104との間のコアを第2コア105と呼ぶ。第1ソレノイドSL1に通電されることにより形成される磁気回路によって、プランジャ101が軸方向一端側に移動し、プランジャ101の移動によって軸方向一端側に配されたピニオン(図示せず)が押し出される。
【0006】
第2コア105の内周には、コイル非通電時にプランジャ101の摺動部101aが入り込んでおり、コイル103に通電されると、図5の矢印に示すように、コイル103の通電により発生する磁束が、第2コア105からプランジャ101へ流れる。
すなわち、磁気回路は、第1コア102、第2コア105、プランジャ101、及び第1コア102と第2コア105とを磁気的に接続するコアステーショナリ106により形成される。
【0007】
しかし、従来の電磁ソレノイド装置では、第1ソレノイドSL1においてプランジャ101の最大前進時(プランジャ101が軸方向一端側へ移動する際の最大移動位置に到達するとき)まで、良好な磁気回路を形成する手段についての考慮がされていなかった。
すなわち、従来の電磁ソレノイド装置では、図6に示すように、プランジャ101の最大前進時には、第2コア105から摺動部101aが抜けて、第2コア105と摺動部101aとが径方向に対向しなくなる。このため、第2コア105からプランジャ101へと磁束が流れにくく、プランジャ101を軸方向一端側へ移動させる際の吸引力が低下する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−225189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、2つのソレノイドを有するスタータ用電磁ソレノイド装置のピニオン押出用の第1ソレノイドにおいて、プランジャの最大前進時まで磁気回路を確実に形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスタータ用電磁ソレノイド装置は、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンにモータの回転力を伝達してエンジンを始動させるスタータに用いられる。
スタータ用電磁ソレノイド装置は、第1ソレノイドと第2ソレノイドを備える。
【0011】
第1ソレノイドは、第1のコイルへの通電により発生する磁力によって第1のコイル内を軸方向一端側へ移動する第1プランジャと、第1プランジャの軸方向一端側で磁気回路の一部を形成する第1コアとを有している。そして、前記第1プランジャの軸方向一端側への移動によってピニオンを軸方向一端へ移動させて前記リングギヤへ向けて押し出す。
【0012】
第2ソレノイドは、第1ソレノイドの軸方向他端側に第1ソレノイドと同軸的に配されている。
第2ソレノイドは、第2のコイルへの通電により発生する磁力を利用して、スタータのモータの電源回路に接続されるメイン接点を開閉する。
【0013】
また、スタータ用電磁ソレノイド装置は、第1のコイルと第2のコイルとの間に配されて、第1ソレノイドと第2ソレノイドとが磁気回路の一部として共有する筒状の第2コアを備える。
そして、第1プランジャは、第1のコイルの内周を摺動するとともに、第1のコイル非通電時に第2コアの内周に入り込む摺動部を有する。
そして、第1プランジャが軸方向一端側の最大移動位置まで移動する最大前進時においても、摺動部が第2コアの内周に入っている。
【0014】
さらに、スタータ用電磁ソレノイド装置は、第1のコイルと第2コアとの間に配され、第1のコイルを軸方向に押圧する環状の弾性部材を備える。また、第2コアは、弾性部材の内周と第1プランジャの外周との間に配されるように、軸方向一端側に環状に突出した突出部を有する。そして、最大前進時に、摺動部が突出部の内周に入っている。
これによれば、第1プランジャの最大前進時においても、摺動部と第2コアとが径方向
に対向するため、第2コアから摺動部へと磁束が流れる。従って、第1プランジャの最大
前進時まで磁気回路を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電磁ソレノイド装置の断面図である(実施例)。
図2】スタータの断面図である(実施例)。
図3】スタータの軸方向他端側からみた平面図である(実施例)。
図4】最大前進時の電磁ソレノイド装置の断面図である(実施例)。
図5】電磁ソレノイド装置の断面図である(従来例)。
図6】最大前進時の電磁ソレノイド装置の断面図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
〔実施例〕
〔実施例の構成〕
実施例の構成を図1〜4を用いて説明する。
実施例では、減速型スタータ1にタンデムソレノイド型の電磁ソレノイド装置2を採用した一例を説明する。
なお、図1及び図2における電磁ソレノイド装置2の断面図は図3のI−O−I断面図である。
【0018】
減速型スタータ1は、図2に示す様に、回転力を発生するモータ3と、このモータ3の電機子軸4と平行に配置されるピニオン軸5と、このピニオン軸5の外周上に支持されてピニオン軸5と一体に回転するピニオン6と、モータ3の回転速度を減速して駆動トルクを増幅する減速装置(後述する)と、この減速装置で増幅された駆動トルクをピニオン軸5に伝達するクラッチ7と、ピニオン軸5と同軸線上に配置される本発明の電磁ソレノイド装置2等より構成される。
【0019】
モータ3は、磁界を形成する電磁石界磁(以下に説明する)と、電機子軸4の後端側の軸上に整流子8を備える電機子9と、整流子8の外周上に配置されるブラシ10等より構成される周知の整流子電動機である。
電磁石界磁は、磁気回路を形成すると共に、モータ3のハウジングを兼ねるヨーク11の内周にスクリュ12で固定される界磁磁極13と、その界磁磁極13の周囲に平角線を巻回した界磁コイル14とで構成される。なお、電磁石界磁に代えて、複数の永久磁石をヨーク11の内周に配置した永久磁石界磁を採用することもできる。
【0020】
ピニオン軸5は、後述するスプラインチューブ15の内周に挿通されてヘリカルスプライン結合され、スプラインチューブ15に対し軸方向(図示左右方向)へ回転しながら移動可能に設けられている。
以下、図1図2において、ピニオン軸5と電磁ソレノイド装置2を含む軸方向の図示左側を軸方向一端側、図示右側を軸方向他端側と呼ぶ。なお、ピニオン軸5が軸方向一端側に移動することによって、ピニオン6がリングギヤGに噛み合う。
【0021】
ピニオン軸5には、軸方向他端側の端面から軸方向一端側に向かって陥没する穴が形成されており、この穴内にスチールボール16が配設されている。
【0022】
ピニオン6は、スプラインチューブ15の軸方向一端側端面より突き出るピニオン軸5の外周に直スプライン嵌合して支持され、且つ、ピニオン軸5とピニオン6との間に配設されるピニオンスプリング17によってスプラインチューブ15の軸方向一端面に押し付けられている。
【0023】
スプラインチューブ15は、軸方向一端側の端部がボールベアリング18を介してスタータハウジング19に回転自在に支持され、軸方向他端側の端部がボールベアリング20を介してセンタケース21に回転自在に支持されている。センタケース21は、スタータハウジング19の軸方向他端側に隣接して配置される。
【0024】
減速装置は、図2に示す様に、電機子軸4の反整流子側の端部に形成されたドライブギヤ23と、このドライブギヤ23に噛み合うアイドルギヤ24と、このアイドルギヤ24に噛み合うクラッチギヤ25から成る歯車列によって構成される。
【0025】
クラッチ7は、例えば、ローラ式の一方向クラッチであり、内周に複数のカム面を形成するクラッチアウタ7aと、このクラッチアウタ7aの内周側に配置されるクラッチインナ(下述する)と、クラッチアウタ7aのカム面とクラッチインナの外周面との間に配設されるローラ7bと、このローラ7bをカム面に向けて付勢するスプリング7cなどより構成される。
【0026】
クラッチアウタ7aにはモータ3の回転駆動力がクラッチギヤ25を介して伝達される。
クラッチインナは、上述のスプラインチューブ15によって形成される。つまり、スプラインチューブ15がクラッチインナを兼ねている。
ローラ7bは、クラッチアウタ7aの回転をクラッチインナ(スプラインチューブ15)へ伝達する一方、クラッチインナからクラッチアウタ7aへの動力伝達を遮断する。
【0027】
続いて、電磁ソレノイド装置2の構成を主に図1を用いて説明する。
電磁ソレノイド装置2は、ピニオン6の軸方向他端側にピニオン軸5と同軸に配された第1のソレノイド(以下、ソレノイドSL1と呼ぶ)と第2のソレノイド(以下、ソレノイドSL2と呼ぶ)とを備える。
ソレノイドSL1は、電磁石の吸引力を利用してピニオン軸5を軸方向一端側へ押し出すソレノイドである。
ソレノイドSL2は、モータ3の電源回路に接続されるメイン接点(後述する)を開閉するソレノイドである。
【0028】
ソレノイドSL1とソレノイドSL2とは、図1に示す様に、軸方向(図示左右方向)に直列に並べて配されており、スイッチケース28に一体的に収納される。
スイッチケース28は、センタケース21と一体的に設けられた金属フレーム28aと、金属フレーム28aの軸方向他端側に接続される樹脂フレーム28bと、樹脂フレーム28bの軸方向他端側の開口を閉塞する金属製のエンドフレーム28cとで構成される。
【0029】
ソレノイドSL2は、ソレノイドSL1の軸方向他端側に同軸に配されており、ソレノイドSL1の動作方向とソレノイドSL2の動作方向とが同一方向に設定されている。
【0030】
(ソレノイドSL1の説明)
ソレノイドSL1は、図1に示す様に、SL1コイル35(第1のコイル)、SL1プランジャ36(第1プランジャ)、第1コア37、第2コア38、シャフト39、リターンスプリング40、及びドライブスプリング41等を備える。
【0031】
SL1コイル35は、通電によって電磁石を形成するものである。
SL1プランジャ36は、このSL1コイル35の内周を軸方向(図示左右方向)に可動し、SL1コイル35への通電によって軸方向一端側へ移動するものである。
第1コア37は、SL1プランジャ36の軸方向一端側で磁気回路の一部を形成するコアである。
第2コア38は、ソレノイドSL2の磁気回路の一部を形成するとともに、ソレノイドSL1の磁気回路の一部をも形成するコアである。
【0032】
シャフト39は、SL1プランジャ36の動きをスチールボール16を介してピニオン軸5に伝達するものである。
リターンスプリング40は、電磁石の吸引力が減少した時にSL1プランジャ36を押し戻すものである。
ドライブスプリング41は、ピニオン6をエンジンのリングギヤGに押し込むための反力を蓄えるものである。
以下、さらに詳述する。
【0033】
SL1コイル35は、例えば、絶縁被覆された銅線を樹脂製のボビン42に巻回して構成される。ボビン42の内周には、SL1プランジャ36の移動を案内する非磁性金属製(例えばステンレス製)の円筒スリーブ43が挿入されている。
【0034】
円筒スリーブ43は、SL1コイル35の軸方向他端よりも軸方向他端側に突出している。
【0035】
SL1プランジャ36は、SL1コイル35の内周(すなわち円筒スリーブ43の内周)を摺動する摺動部36aと、摺動部36aの軸方向他端側に摺動部36aより径小に設けられる小径部36bとを有する。
【0036】
また、SL1プランジャ36には、径方向の中央部を長手方向(図1の左右方向)に貫通する中空孔44が形成され、中空孔44の軸方向一端側には、孔径を小さく形成した小径孔部44aを有する。
【0037】
第1コア37は、SL1吸着コア37aとコアプレート37bとを有する。
SL1吸着コア37aは、電磁石により磁化されてSL1プランジャ36を吸着する部分であって、径方向の中央部が筒状に開口する円環状に設けられて、円筒スリーブ43の軸方向一端部の内周に挿入され、SL1プランジャ36と軸方向に対向して配置される。
【0038】
コアプレート37bは、吸着コア37aにかしめ固定されて磁気的に連結され、図1に示す様に、金属フレーム28aの底面に当接して軸方向一端側への移動が規制され、且つ、周方向に回転規制されている。
【0039】
第2コア38は、SL2吸着コア38aと磁性プレート38bとを有する。
SL2吸着コア38aは、筒部38c、筒部38cの軸方向一端側に筒部38cよりも大きい外径を有するように形成された鍔部38d、及び筒部38cの軸方向他端に径方向内側に突出して設けられた内鍔部38eを有する。
【0040】
SL2吸着コア38aは、SL1コイル35の軸方向他端側で円筒スリーブ43の軸方向他端部の外周に装着されている。
なお、SL1コイル35とSL2吸着コア38aとの間には、SL1コイル35をコアプレート37bに向かって軸方向一端側に押圧して固定するための弾性部材46が配されている。弾性部材46はSL1プランジャ36の外周を囲む環状を呈しており、例えば、環状のゴム部材もしくは皿ばねである。
【0041】
SL1コイル35非通電時、つまりSL1プランジャ36がリターンスプリング40の反力により押し戻されて停止している状態では、図1に示すように、摺動部36aが筒部38cの内周に入り込んでいる。SL2吸着コア38aの軸方向他端側には、小径部36bが挿入されるカップ状の隔壁部材47が固定されている。隔壁部材47は非磁性の金属板で形成されている。
【0042】
SL1プランジャ36の戻り位置、つまり、SL1コイル35への励磁を中止して電磁石の吸引力が失われた時に、SL1プランジャ36がリターンスプリング40の反力により押し戻されて停止する位置は、隔壁部材47との当接によって規制される。
【0043】
磁性プレート38bは、例えば、プレスで円環状に打ち抜いた複数枚の鋼板を積層して構成され、SL2吸着コア38aと機械的かつ磁気的に連結されている。具体的には、磁性プレート38bは軸方向一端面が、鍔部38dの軸方向他端面に当接するように配されている。
この磁性プレート38bとコアプレート37bとは、図1に示す様に、コアステーショナリ49(後に説明する)を介して磁気的に接続されている。
【0044】
シャフト39は、SL1プランジャ36の小径孔部44aを挿通してSL1プランジャ36に組み付けられる。小径孔部44aより中空孔44の軸方向他端側へ入り込むシャフト39の端部には、小径孔部44aの孔径より大きい外径を有するフランジ部39aが設けられている。また、中空孔44より突き出るシャフト39の軸方向一端側は、SL1固定鉄心37の内周を通り抜けて、スチールボール16に当接するように突出している(図2参照)。
【0045】
(ソレノイドSL2の説明)
ソレノイドSL2は、図1に示す様に、SL2コイル50(第2のコイル)、SL2プランジャ51、前述の第2コア38、リターンスプリング52等を備える。
【0046】
SL2コイル50は、通電によって電磁石を形成するものである。
SL2プランジャ51は、このSL2コイル50の内周を軸方向(図示左右方向)に可動し、SL2コイル50への通電によって軸方向一端側へ移動するものである。
リターンスプリング52は、電磁石の吸引力が減少した時にSL2プランジャ51を押し戻すものである。
【0047】
SL2コイル50は、例えば、絶縁被覆された銅線を樹脂製のボビン53に巻回して構成される。ボビン53の内周には、SL2プランジャ51の移動を案内する非磁性金属製(例えばステンレス製)の円筒スリーブ54が挿入されている。
【0048】
SL2プランジャ51は、図1に示す様に、径方向の外周面に段差を有する段付き形状に設けられると共に、軸方向一端側の端面に開口する円筒孔51aが形成されている。なお、円筒孔51aに隔壁部材47の軸方向他端部が入り込んでおり、非通電時に、SL1プランジャ36とSL2プランジャ51とが軸方向にオーバーラップしている。これによって電磁ソレノイド装置2の軸方向寸法が小さくなっている。
【0049】
SL2吸着コア38aは、円筒スリーブ54の軸方向一端側内周に挿入され、SL2プランジャ51と軸方向に対向している。
【0050】
コアステーショナリ49は、SL1コイル35及びSL2コイル50の周方向において少なくとも対向する2箇所に配置されており、SL1コイル35及びSL2コイル50の外周面に沿って軸方向に延びる軸方向片49aと、軸方向片49aの軸方向他端から径方向内側に延びてSL2コイル50の軸方向他端面を覆う径方向片49bとを有する。
【0051】
ソレノイドSL2によって開閉されるメイン接点は、2本の端子ボルト57、58を介してモータ3の電源回路に接続される一組の固定接点59と、この一組の固定接点59の間を電気的に断続する可動接点60とで形成されている。
この可動接点60が一組の固定接点59に当接して両固定接点59の間が可動接点60を通じて導通することによりメイン接点が閉成(オン)し、可動接点60が一組の固定接点59から離れて両固定接点59の間が電気的に遮断されることでメイン接点が開成(オフ)する。
【0052】
2本の端子ボルト57、58は、外周に雄ねじ部が形成されたB端子ボルト57とM端子ボルト58である。B端子ボルト57には、バッテリBのプラス端子に繋がるバッテリケーブルのターミナルが接続され、M端子ボルト58には、モータ3のプラス側ブラシ10に繋がるモータリード線のターミナルが接続される。
【0053】
一組の固定接点59は、B端子ボルト57およびM端子ボルト58と別体に設けられており、一方の固定接点59がB端子ボルト57に、他方の固定接点59がM端子ボルト58に電気的に接続するように固定される。固定接点59は、それぞれ接点面が軸方向他端側を向くように固定されている。
【0054】
可動接点60は、図1に示す様に、軸方向を厚さ方向とする板状を呈しており、樹脂製の絶縁板63と絶縁ブッシュ64との間に挟持されてSL2プランジャ51に保持されている。
可動接点60は、接点面が軸方向一端側を向くように保持されており、可動接点60は固定接点59に軸方向他端側から離接する。
なお、可動接点60は、メイン接点の閉成時に接点圧を付与するための接点圧スプリング65によって付勢されている。
【0055】
SL2プランジャ51の戻り位置、つまり、SL2コイル50への励磁を中止して電磁石の吸引力が失われた時に、SL2プランジャ51がリターンスプリング52の反力により押し戻されて停止する位置は、図1に示す様に、絶縁ブッシュ64とエンドフレーム28cとの当接によって規制される。
【0056】
〔本実施例の特徴〕
本実施例の電磁ソレノイド装置2によれば、第2コア38は弾性部材46の内周とSL1プランジャ36の外周との間に配されるように、軸方向一端側に環状に突出した突出部70を有する。
そして、SL1コイル35への通電によってSL1プランジャ36が軸方向一端側の最大移動位置まで移動する最大前進時に、摺動部36aが突出部70の内周に入っている。
【0057】
すなわち、SL2吸着コア38aは、鍔部38dの軸方向他端側に、内径は筒部38cと等しく、外径が筒部38cよりも径小な小径部38fを有している。この小径部38fは、弾性部材46の内周とSL1プランジャ36の外周との間に配され、上述の突出部70をなす。
小径部38fは、弾性部材46の内周面を支持して、径方向内側への位置決めをする部分として機能する。
【0058】
小径部38fは、図4に示すように、SL1プランジャ36が軸方向一端側の最大移動位置まで移動する最大前進時に、内周に摺動部36aの軸方向他端部が挿入された状態となるように、軸方向寸法が設定されている。
すなわち、SL1プランジャ36の最大前進時に、摺動部36aの軸方向他端71が小径部38fの軸方向一端72よりも軸方向他端側にあって、摺動部36aと小径部38fとが軸方向にラップしている。
【0059】
〔実施例の作用効果〕
ソレノイドSL1における磁束の流れを図1及び図4を用いて説明する。
SL1コイル35非通電時、つまりSL1プランジャ36がリターンスプリング40の反力により押し戻されて停止している状態では、図1に示すように、摺動部36aが筒部38cの内周に入り込んでいる。この状態からSL1コイル35に通電されると、図1の矢印に示すように、SL1コイル35への通電により発生する磁束が、第2コア38からSL1プランジャ36へ流れる。
すなわち、磁気回路は、第1コア37、第2コア38、SL1プランジャ36、及びコアステーショナリ49により形成される。
【0060】
そして、本実施例では、SL1プランジャ36の最大前進時に、摺動部36aの軸方向他端71が小径部38fの軸方向一端72よりも軸方向他端側にあって、摺動部36aと小径部38fとが軸方向にラップしている。
これによれば、SL1プランジャ36の最大前進時においても、図4に示すように、摺動部36aと小径部38f(すなわち第2コア38)とが径方向に対向するため、小径部38fから摺動部36aへと磁束が流れる。
従って、SL1プランジャ36の最大前進時まで磁気回路を確実に形成することができる。
すなわち、小径部38fは、弾性部材46を支持する機能に加えて、磁気回路の一部を形成する機能を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 スタータ、2 電磁ソレノイド装置、3 モータ、6 ピニオン、35 SL1コイル、36 SL1プランジャ、36a 摺動部、37 第1コア、38 第2コア、46 弾性部材、50 SL2コイル、G リングギヤ、SL1 第1ソレノイド、SL2 第2ソレノイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6