特許第6229500号(P6229500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229500
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】呼吸状態計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20171106BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20171106BHJP
   A61B 5/00 20060101ALN20171106BHJP
   G06T 7/00 20170101ALN20171106BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61B5/18
   !A61B5/00 102A
   !G06T7/00 660A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-918(P2014-918)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-128501(P2015-128501A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 知理
(72)【発明者】
【氏名】石田 健二
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−102362(JP,A)
【文献】 特開平08−257015(JP,A)
【文献】 特開2008−194309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員における鼻孔を含む画像を取得する画像取得手段と、
前記画像に基づき、前記鼻孔の面積を算出する鼻孔面積算出手段と、
前記画像に基づき、左右の鼻孔の中から、前記鼻孔面積算出手段により面積を算出する鼻孔を選択する鼻孔選択手段と、
前記鼻孔の面積の変化に基づき前記乗員の呼吸状態を計測する呼吸状態計測手段と、
を備え
前記鼻孔面積算出手段は、前記鼻孔選択手段により選択した鼻孔を含むパターン画像とのマッチングにより、前記画像の中から、鼻孔を含む領域を選択し、前記領域において、鼻孔の面積を算出することを特徴とする呼吸状態計測装置。
【請求項2】
前記画像は熱画像であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸状態計測装置。
【請求項3】
前記呼吸状態に基づき、前記乗員の心身状態を判断する心身状態判断手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の呼吸状態計測装置。
【請求項4】
前記呼吸状態と、乗員に対する処理とを対応付けた対応マップと、
前記呼吸状態を前記対応マップに入力することで、前記乗員に対する処理を選択する処理選択手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の呼吸状態計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸状態計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線カメラを用いて車両の乗員の熱画像を取得し、その熱画像に基づき、呼吸による乗員の鼻孔や口元付近の温度変化のパターンを検出し、さらにその温度変化のパターンから乗員の呼吸周期を算出する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−15549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直射日光や空調の風が乗員の顔に当たる場合、乗員の鼻孔や口元付近の温度は呼吸とは無関係に上下する。また、咀嚼や発話のため、乗員が呼吸とは無関係に口を開いた場合、口腔内の温度が乗員の鼻孔や口元付近の温度に影響する。そのため、特許文献1の技術では、車両の乗員の呼吸状態を正確に計測することが困難であった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、呼吸状態を正確に計測できる呼吸状態計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の呼吸状態計測装置は、車両の乗員における鼻孔を含む画像を取得する画像取得手段と、前記画像に基づき、前記鼻孔の面積を算出する鼻孔面積算出手段と、前記鼻孔の面積の変化に基づき前記乗員の呼吸状態を計測する呼吸状態計測手段とを備える。
【0006】
本発明の呼吸状態計測装置は、直射日光、空調の風、乗員の開口等の影響を受け難く、乗員の呼吸状態を正確に計測できる。
前記画像としては、例えば、熱画像が挙げられる。この場合、本発明の呼吸状態計測装置は、呼吸状態を一層正確に計測できる。
【0007】
前記鼻孔面積算出手段は、例えば、鼻孔を含むパターン画像とのマッチングにより、前記画像の中から、鼻孔を含む領域を選択し、前記領域において、鼻孔の面積を算出することができる。この場合、本発明の呼吸状態計測装置は、呼吸状態を一層正確に計測できる。
【0008】
本発明の呼吸状態計測装置は、例えば、前記画像に基づき、左右の鼻孔の中から、前記鼻孔面積算出手段により面積を算出する鼻孔を選択する鼻孔選択手段を備え、前記鼻孔面積算出手段は、前記鼻孔選択手段により選択した鼻孔を含む前記パターン画像を用いることができる。この場合、本発明の呼吸状態計測装置は、呼吸状態を一層正確に計測できる。
【0009】
本発明の呼吸状態計測装置は、例えば、前記呼吸状態に基づき、前記乗員の心身状態を判断する心身状態判断手段を備えることができる。この場合、呼吸状態計測装置は、乗員の心身状態を判断することができる。
【0010】
本発明の呼吸状態計測装置は、例えば、前記呼吸状態に基づき、前記乗員に対する処理を選択する処理選択手段を備えることができる。この場合、呼吸状態計測装置は、乗員に対する処理を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】呼吸状態計測装置1の構成を表すブロック図である。
図2】呼吸状態計測装置1が実行する全体処理を表すフローチャートである。
図3】呼吸状態計測装置1が実行する鼻孔選択処理を表すフローチャートである。
図4】呼吸状態計測装置1が実行する鼻孔面積算出処理を表すフローチャートである。
図5】呼吸状態計測装置1が実行する呼吸状態計測処理を表すフローチャートである。
図6】呼吸状態計測装置1が実行する心身状態判断処理を表すフローチャートである。
図7】呼吸状態計測装置1が実行するフィードバック手法選択処理を表すフローチャートである。
図8】顔画像を表す説明図である。
図9】パターンマッチングの方法を表す説明図である。
図10】バターン画像を表す説明図である。
図11】鼻孔を含む領域として決定した領域207を表す説明図である。
図12】呼吸による鼻孔の変化を表す説明図である。
図13】呼吸状態とドライバの心身状態との対応関係を規定する対応マップを表す説明図である。
図14】ドライバの心身状態とフィードバック手法との対応関係を規定する対応マップを表す説明図である。
図15】呼吸に伴う鼻孔面積の時間的な変化の態様を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.呼吸状態計測装置1の構成
呼吸状態計測装置1の構成を図1に基づき説明する。呼吸状態計測装置1は、車両に搭載される車載装置である。呼吸状態計測装置1は、赤外線カメラ3、画像解析部5、呼吸状態計測部7、心身状態判断部9、フィードバック手法選択部11、各種車載機器制御部13、第1の記憶部15、及び第2の記憶部17を備えている。
【0013】
赤外線カメラ3は、車室内のステアリングコラム、ダッシュボード、天井等に設置することができる。赤外線カメラ3は、ドライバの顔全体を含む範囲の画像(以下、顔画像とする)を取得する。図8に示すように、顔画像201には、ドライバの顔203、及びドライバの鼻205が含まれる。赤外線カメラ3により取得できる顔画像は、熱画像である。熱画像とは、画像中に含まれる物体の温度により色が異なる画像であり、例えば、高温部は赤く、低温部は青く表示される。
【0014】
画像解析部5、呼吸状態計測部7、心身状態判断部9、フィードバック手法選択部11、及び各種車載機器制御部13は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータにより実現される構成であり、それぞれ、後述する処理を実行する。
【0015】
各種車載機器制御部13は、車両に搭載された各種車載機器を制御する。車載機器には、車室内に設置され、画像を表示可能なディスプレイ、車室内に設置され、音声を出力可能なスピーカ、車室内の温度や湿度を制御する空調装置、ハンドルやドライバシートを振動させる機構(以下、振動機構とする)、カーオーディオ等が含まれる。
【0016】
また、心身状態判断部9は、後述するように判断したドライバの心身状態を車両制御部103に出力する。なお、車両制御部103は、ドライバの心身状態に基づき、車両の運転アシストを行う構成であって、車線キープ制御、自動ブレーキ制御、自動速度制御などの処理を行う。詳しくは後述する。
【0017】
第1の記憶部15、及び第2の記憶部17は、いずれも、情報の書き込み、保存、及び読み出しが可能な周知の記憶装置である。第1の記憶部15、及び第2の記憶部17は、例えば、ハードディスクドライブとすることができる。
【0018】
なお、赤外線カメラ3は画像取得手段の一実施形態であり、画像解析部5は鼻孔面積算出手段及び鼻孔選択手段の一実施形態であり、呼吸状態計測部7は呼吸状態計測手段の一実施形態であり、心身状態判断部9は心身状態判断手段の一実施形態であり、フィードバック手法選択部11は処理選択手段の一実施形態である。
【0019】
2.呼吸状態計測装置1が実行する処理
図2図15に基づき、呼吸状態計測装置1が実行する処理を説明する。呼吸状態計測装置1は、車両のイグニッションがONの期間中、図2に示す処理を所定時間ごとに繰り返し実行する。
【0020】
ステップ1では、画像解析部5が、ドライバの左右の鼻孔のうち、後述する鼻孔面積算出処理において使用する1つの鼻孔を選択済みであるか否かを判断する。選択済みである場合はステップ3に進み、未だ選択していない場合はステップ2に進む。
【0021】
ステップ2では、画像解析部5が、鼻孔選択処理を実行する。この鼻孔選択処理を図3に基づき説明する。
図3のステップ11では、赤外線カメラ3により、ドライバの顔画像を取得する。ドライバの顔画像201は、例えば、図9に示すものである。
【0022】
ステップ12では、図9に示す顔画像201のうち、一部の領域207を選択する。領域207は、顔画像201よりは小さく、ドライバの鼻205を含むことができる大きさを有する。領域207の選択は、次のように行う。
【0023】
後述するステップ18において探索終了フラグがONとされたままの状態の場合は、顔画像201における一定の位置(例えば図9におけるP1の位置)を領域207とする。その後、探索終了フラグをOFFとする。
【0024】
また、探索終了フラグがOFFの状態の場合は、一回前のステップ12において選択した領域207に隣接し、一定の方向にずれた同じ面積の領域を新たな領域207とする。例えば、一回前のステップ12にて、図9におけるP1の位置を領域207として選択していた場合は、今回のステップ12において、その隣のP2の位置を領域207として選択する。同様に、一回前のステップ12にて、図9におけるP2の位置を領域207として選択していた場合は、今回のステップ12において、その隣のP3の位置を領域207として選択する。
【0025】
ステップ13では、直前の前記ステップ12で選択した領域207と、予め第1の記憶部15に記憶しておいた、鼻孔を含むパターン画像とのパターンマッチングを行い、パターン画像と一致するか否かを判断する。ここで、鼻孔を含むパターン画像には、図10Aに示す第1のパターン画像209、図10Bに示す第2のパターン画像211、及び図10Cに示す第3のパターン画像213の3種類があり、それぞれのパターン画像でパターンマッチングを行う。
【0026】
第1のパターン画像209、第2のパターン画像211、及び第3のパターン画像213は、それぞれ、人間の鼻孔部を含む領域の特徴(相対温度のパターン)を有している。第1のパターン画像209は、右の鼻孔215と左の鼻孔217との両方が現れているパターン画像である。第2のパターン画像は、左の鼻孔217は現れているが、右の鼻孔215は現れていないパターン画像である。第3のパターン画像213は、右の鼻孔215は現れているが、左の鼻孔217は現れていないパターン画像である。
【0027】
領域207と、第1のパターン画像209、第2のパターン画像211、及び第3のパターン画像213のうちの少なくとも一つとがパターンマッチングにおいて一致すれば、ステップ14に進み、いずれも一致しなかった場合はステップ17に進む。
【0028】
ステップ14では、直前のステップ12で選択した領域207を、鼻孔を含む領域として決定する。
ステップ15では、ドライバの左右の鼻孔の中から、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔を選択する。具体的には以下のように行う。前記ステップ13において、第1のパターン画像209と領域207とが一致した場合は、図11に示すように、領域207において、右の鼻孔に相当する領域208と、左の鼻孔に相当する領域210とをそれぞれ抽出する。抽出は、円又は楕円近似した領域を抽出する方法であってもよいし、鼻孔に内接又は外接する矩形領域等を抽出する方法であってもよい。
【0029】
次に、右の鼻孔に相当する領域208の面積と、左の鼻孔に相当する領域210の面積とをそれぞれ算出する。これらの面積は、鼻孔に相当する領域中に存在する画素数を計測する方法で算出できる。
【0030】
次に、右の鼻孔に相当する領域208の面積と、左の鼻孔に相当する領域210の面積とを対比し、面積が大きい方の鼻孔を、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔として選択する。すなわち、右の鼻孔に相当する領域208の面積の方が大きい場合は、右の鼻孔を、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔として選択し、左の鼻孔に相当する領域210の面積の方が大きい場合は、左の鼻孔を、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔として選択する。
【0031】
また、前記ステップ13において、第2のパターン画像211と領域207とが一致した場合は、左の鼻孔を、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔として選択する。また、前記ステップ13において、第3のパターン画像213と領域207とが一致した場合は、右の鼻孔を、後に鼻孔面積を算出する1つの鼻孔として選択する。
【0032】
ステップ16では、後述する鼻孔面積算出処理で使用するパターン画像を、第1のパターン画像209、第2のパターン画像211、及び第3のパターン画像213の中から選択する。具体的には、以下のように行う。前記ステップ15において、右の鼻孔を選択した場合は、右の鼻孔を含むパターン画像である、第1のパターン画像209及び第3のパターン画像213を選択する。
【0033】
また、前記ステップ15において、左の鼻孔を選択した場合は、左の鼻孔を含むパターン画像である、第1のパターン画像209及び第2のパターン画像211を選択する。
一方、前記ステップ13で否定判断した場合はステップ17に進む。ステップ17では、前回、探索終了フラグをOFFからONに切り換えた時点以降で、顔画像201の全領域を領域207として選択し尽くしたか否かを判断する。選択し尽くした場合はステップ18に進み、探索終了フラグをONにし、本処理を終了する。顔画像201のうち、領域207として選択されていない領域が残っている場合はステップ12に進む。
【0034】
図2に戻り、ステップ3では、画像解析部5が、赤外線カメラ3により、ドライバの顔画像を取得する。この顔画像は前記ステップ11で取得するものと同様である。
ステップ4では、画像解析部5が、鼻孔面積算出処理を実行する。この鼻孔面積算出処理を図4に基づき説明する。
【0035】
図4のステップ21では、前記ステップ3で取得した顔画像のうち、一部の領域207を選択する。領域207の大きさ、及び領域207の選択方法は前記ステップ12と同様である。
【0036】
ステップ22では、直前の前記ステップ21で選択した領域207と、前記ステップ2の鼻孔選択処理で選択した2つのパターン画像とのパターンマッチングを行い、少なくとも1つのパターン画像と一致するか否かを判断する。少なくとも1つのパターン画像と一致する場合はステップ23に進み、いずれのパターン画像とも一致しない場合はステップ26に進む。
【0037】
ステップ23では、直前の前記ステップ22で選択した領域207を、鼻孔を含む領域として決定する。
ステップ24では、前記ステップ23で鼻孔を含む領域として決定した領域207において、前記ステップ2の鼻孔選択処理で選択した1つの鼻孔の面積(以下、鼻孔面積とする)を算出する。すなわち、前記ステップ2の鼻孔選択処理で右の鼻孔を選択した場合は、領域207において、右の鼻孔に相当する領域を抽出し、その抽出した領域の面積を鼻孔面積として算出する。また、前記ステップ2の鼻孔選択処理で左の鼻孔を選択した場合は、領域207において、左の鼻孔に相当する領域を抽出し、その抽出した領域の面積を鼻孔面積として算出する。
【0038】
上述した抽出は、円又は楕円近似した領域を抽出する方法であってもよいし、鼻孔に内接又は外接する矩形領域等を抽出する方法であってもよい。また、鼻孔面積は、鼻孔に相当する領域中に存在する画素数を計測する方法で算出できる。
【0039】
ステップ25では、前記ステップ24で算出した鼻孔面積を、その鼻孔面積を算出した時刻と紐付けして、第1の記憶部15に記憶する。
一方、前記ステップ22で否定判断した場合はステップ26に進む。ステップ26では、後述するステップ27において探索終了フラグをOFFからONに切り換えた時点以降で、顔画像201の全領域を領域207として選択し尽くしたか否かを判断する。選択し尽くした場合はステップ27に進み、探索終了フラグをONにし、本処理を終了する。顔画像201のうち、領域207として選択されていない領域が残っている場合はステップ21に進む。
【0040】
図2に戻り、ステップ5では、呼吸状態計測部7が、呼吸状態計測処理を実行する。この呼吸状態計測処理を、図5に基づき説明する。図5のステップ31では、その時点から1分間前の時点を始点とし、その時点を終点とする期間(以下、計測期間とする)内に、前記ステップ25の処理により第1の記憶部15に記憶した鼻孔面積のデータ数が所定数以上であるか否かを判断する。所定数以上である場合はステップ32に進み、所定数未満である場合は本処理を終了する。
【0041】
ステップ32では、計測期間内に記憶された鼻孔面積のデータに基づき、ドライバの呼吸状態を計測する。具体的には、以下のようにする。鼻孔面積は、ドライバの呼吸に伴い、変動する。すなわち、図12Aに示すように、呼気の時間帯では、右の鼻孔に相当する領域208及び左の鼻孔に相当する領域210の鼻孔面積はそれぞれ縮小し、図12Bに示すように、吸気の時間帯では、右の鼻孔に相当する領域208及び左の鼻孔に相当する領域210の鼻孔面積はそれぞれ拡大する。そのため、例えば、図15に示すように、鼻孔面積を算出した時刻を横軸とし、鼻孔面積を縦軸とするグラフを作成すると、鼻孔面積は、呼吸と同じ周期で周期的に変動する。
【0042】
本ステップ32では、時間の経過に伴う鼻孔面積の周期的な変化から、単位時間当りの呼吸回数、呼吸の周期、単位時間当りの呼気時間、単位時間当りの吸気時間等のパラメータを算出し、これらのパラメータを呼吸状態とする。
【0043】
図2に戻り、ステップ6では、心身状態判断部9が、心身状態判断処理を実行する。この心身状態判断処理を、図6に基づき説明する。図6のステップ41では、前記ステップ5の呼吸状態計測処理において呼吸状態を計測済みであるか否かを判断する。呼吸状態を計測済みである場合はステップ42に進み、未だ呼吸状態を計測していない場合は本処理を終了する。
【0044】
ステップ42では、前記ステップ5の呼吸状態計測処理で計測した呼吸状態に基づき、ドライバの心身状態を判断する。具体的には以下のように行う。第2の記憶部17には、予め、図13に示す、呼吸状態とドライバの心身状態との関係を規定する対応マップが記憶されている。なお、ドライバの呼吸状態と心身状態には一定の関係があることが知られており、この対応マップはその関係に基づき作成されている。
【0045】
この対応マップに、前記ステップ5の呼吸状態計測処理で計測した呼吸状態を入力すると、それに対応するドライバの心身状態(心身状態の種類と、心身状態の強度との組)が出力される。
【0046】
なお、図13に示す対応マップにおいて、呼吸状態のA1、A2、B1・・・は、例えば、単位時間当りの呼吸回数がn1〜n2までの呼吸状態、単位時間当りの呼吸回数がn2〜n3までの呼吸状態、単位時間当りの呼気時間がm1〜m2までの呼吸状態のように、呼吸状態に含まれるパラメータが一定の範囲内である呼吸状態とすることができる。
【0047】
ドライバの心身状態としては、図13に示すように、眠気、緊張等がある。また、その他の心身状態として、ストレスの強さ、快適/不快、喜怒哀楽の感情、健康状態の程度等が挙げられる。
【0048】
ステップ43では、前記ステップ42で判断した心身状態を、第2の記憶部17に記憶する。
図2に戻り、ステップ7では、フィードバック手法選択部11が、フィードバック手法選択処理を実行する。このフィードバック手法選択処理を図7に基づき説明する。図7のステップ51では、前記ステップ6の心身状態判断処理において心身状態を判断済みであるか否かを判断する。心身状態を判断済みである場合はステップ52に進み、未だ判断していない場合は本処理を終了する。
【0049】
ステップ52では、前記ステップ6の心身状態判断処理で判断した心身状態に基づき、ドライバに対して実行する処理(フィードバック手法)を選択する。具体的には以下のように行う。第2の記憶部17には、予め、図14に示す、心身状態とフィードバック手法との関係を規定する対応マップが記憶されている。この対応マップに、前記ステップ6の心身状態判断処理で判断した心身状態を入力すると、それに対応するフィードバック手法が出力される。
【0050】
フィードバック手法としては、冷風f1、警報音f3、振動f5、振動f7等がある。冷風f1は、車両が備える空調装置により、ドライバに冷風を吹き付ける処理である。警報音f31は、車室内に設置されたスピーカにより警報音を出力する処理である。振動f5、振動f7は、車両に搭載された振動機構により、ハンドルやドライバシートを振動させる処理である。振動f7は、振動f5に比べて、振動の強度が高い。
【0051】
また、フィードバック処理として、音楽再生、エージェントによる発話、車両挙動制御等を実行してもよい。音楽再生は、車両に搭載されたカーオーディオ、スピーカ、音源駆動装置等を用いて実行できる。
【0052】
図2に戻り、ステップ8では、各種車載機器制御部13が、車載機器を制御して、前記ステップ7で選択したフィードバック処理を実行する。
ステップ9では、心身状態判断部9が、前記ステップ6で判断した心身状態を表す信号を、車両制御部103に出力する。なお、車両制御部103は、その心身状態を表す信号に応じて、車両の運転アシストを行う。例えば、ドライバの心身状態が眠気である場合、車両制御部103は、白線を検知し、車両が車線から逸脱しないように自動的に操舵する処理(車線キープ制御)、先行車や障害物等の方向及び距離を検出し、必要に応じて自動的にブレーキをかける処理(自動ブレーキ処理)、車両の速度を一定に保つ処理(自動速度制御)等のうちの一部又は全部を行う。
【0053】
また、ドライバの心身状態が緊張である場合、車両制御部103は、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル等の可動範囲を通常より狭くし、急激な運転動作を抑制する処理を実行する。
【0054】
3.呼吸状態計測装置1が奏する効果
(1)呼吸状態計測装置1は、ドライバの呼吸状態を非接触で計測することができる。そのため、センサ等をドライバに装着する必要がないので、ドライバは煩わしさや物理的な締め付けを感じ難い。
【0055】
(2)呼吸状態計測装置1は、直射日光や空調の風がドライバの顔に当たっている場合でも、それらの影響を受け難く、呼吸状態を正確に計測できる。また、呼吸状態計測装置1は、ドライバが咀嚼や発話のため、呼吸とは無関係に口を開いた場合でも、その影響を受け難く、呼吸状態を正確に計測できる。
【0056】
(3)呼吸状態計測装置1は、呼吸状態の計測に熱画像を用いるので、鼻孔面積を一層正確に算出できる。その結果、呼吸状態計測装置1は、呼吸状態を一層正確に計測できる。
【0057】
(4)呼吸状態計測装置1は、鼻孔選択処理において、左右の鼻孔の中から、顔画像において認識できる一方の鼻孔(2つの鼻孔とも認識できる場合は、鼻孔面積がより大きい鼻孔)を選択し、その鼻孔の鼻孔面積を算出する。そのため、ドライバの顔の向き等に起因して、一方の鼻孔が顔画像において認識し難い場合でも、他方の鼻孔を用いて鼻孔面積を正確に算出できる。その結果、呼吸状態計測装置1は、呼吸状態を一層正確に計測できる。
【0058】
(5)呼吸状態計測装置1は、呼吸状態に基づき、ドライバの心身状態を判断することができる。ドライバの心身状態は、フィードバック手法の選択や、車両制御部103による運転アシストに利用することができる。
【0059】
(6)呼吸状態計測装置1は、ドライバの心身状態に基づき、ドライバに対するフィードバック手法を選択することができる。そのため、ドライバの心身状態に応じた適切なフィードバック手法を実行し、ドライバの心身状態を改善したり、車両の安全性を向上したりすることができる。
<その他の実施形態>
(1)呼吸状態計測装置1は、ドライバ以外の車両の乗員について、呼吸状態及び心身状態を計測し、それに応じて、ドライバ以外の乗員にフィードバック手法を実行してもよい。この場合、赤外線カメラ3は、少なくとも、ドライバ以外の乗員の顔画像を取得する。赤外線カメラ3は車両の乗員全員を撮影してもよいし、車室の前方と後方にそれぞれ設けられていてもよいし、車両のシートごとに設けられていてもよい。
【0060】
(2)呼吸状態計測装置1は、前記ステップ24において、左右の鼻孔の鼻孔面積をそれぞれ算出してもよい。この場合、前記ステップ25で鼻孔面積を記憶するときは、鼻孔面積に、どちらの鼻孔の鼻孔面積であるかを示す識別タグを紐付けして記憶する。
【0061】
また、左右の鼻孔の鼻孔面積をそれぞれ算出する場合、前記ステップ32において、一方の鼻孔の鼻孔面積に基づき呼吸状態を計測してもよいし、左の鼻孔の鼻孔面積に基づく呼吸状態と、右の鼻孔の鼻孔面積に基づく呼吸状態とをそれぞれ計測してもよい。
【0062】
(3)呼吸状態計測装置1は、呼吸状態とフィードバック手法とを対応付けた対応マップを予め備えていてもよい。この場合、前記ステップ7で計測した呼吸状態を、その対応マップに入力し、実行するべきフィードバック手法を選択することができる。
【0063】
(4)呼吸状態計測装置1は、前記ステップ7で計測した呼吸状態に基づき、特開2007−15549号公報記載の技術のように、空調制御を行ってもよい。
(5)赤外線カメラ3の代わりに、通常のカメラ(可視光の像を撮像するカメラ)を用いてもよい。この場合、通常のカメラの画像を用いて、赤外線カメラ3の場合と同様に、鼻孔面積を算出することができる。
【0064】
(6)呼吸状態計測装置1は、呼吸状態を表す信号を車両制御部103に出力してもよい。この場合、車両制御部103は、呼吸状態に予め対応付けられた車両制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1…呼吸状態計測装置、3…赤外線カメラ、5…画像解析部、7…呼吸状態計測部、9…心身状態判断部、11…フィードバック手法選択部、13…各種車載機器制御部、15…第1の記憶部、17…第2の記憶部、103…車両制御部、201…顔画像、203…顔、205…鼻、207…領域、208…右の鼻孔に相当する領域、209…第1のパターン画像、210…左の鼻孔に相当する領域、211…第2のパターン画像、213…第3のパターン画像、215…右の鼻孔、217…左の鼻孔
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