(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、エージング装置及びエージング方法の第1の実施形態について説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、その外装を構成するケース11を備え、ケース11には電極組立体12が収容されている。また、ケース11には、電極組立体12とともに電解液も収容されている。ケース11は、有底筒状のケース本体13と、ケース本体13の電極組立体12を挿入する開口部を閉塞する板状の蓋体14とからなる。ケース11の蓋体14には、ケース11(ケース本体13)内に電解液を注入するための注液孔14aが設けられている。注液孔14aは封止栓19によって閉塞されている。ケース本体13と蓋体14とは、何れも金属製(例えば、ステンレス製やアルミニウム製)である。
【0014】
電極組立体12は、複数の正極電極と複数の負極電極を交互に積層するとともに、両電極の間にセパレータを介在した積層構造とされている。また、電極組立体12には、蓋体14から一部が突出する正極端子15と負極端子16が電気的に接続されている。
【0015】
図2に示すように、エージング装置20は、底部22と、底部22の周縁から立設する側壁23と、底部22と対向する天板24とを有する収容室21を有している。本実施形態では、収容室21は四角箱状をなしている。
【0016】
図3に示すように、側壁23には、収容室21の内部と外部とを連通させる送風孔26が設けられている。この送風孔26には、ダクトが取り付けられる。収容室21の外部には、加熱装置27及び送風機28が設けられており、送風孔26にはダクトを介して加熱装置27によって加熱された気体が送風機28によって送風されるように構成されている。加熱装置27としては、ヒータや、ペルチェ素子などが用いられる。送風孔26が設けられた側壁23とは異なる側壁23の一つは、ヒンジなどによって開閉可能となっている。
【0017】
また、底部22には、厚み方向に貫通する挿通孔29が形成されている。収容室21の外部にはモータ31が設けられており、モータ31の回転軸32は挿通孔29を介して収容室21の内部に突出している。回転軸32の先端には、回転軸32と一体となって回転する板状の駆動部33が取り付けられている。駆動部33は、樹脂製であり、樹脂としては、例えば、ポリアセタール、MCナイロンなどが用いられる。モータ31には、制御装置34が接続されている。モータ31は、制御装置34によって駆動される。
【0018】
収容室21の内部には、円板状のターニングテーブル41が設けられている。ターニングテーブル41は、製造段階の二次電池が載置される載置面41aを有しており、載置面41aとは反対側の面の外周側には、周方向に並んで複数のローラー42が設けられている。ターニングテーブル41はローラー42によって底部22上に支持されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、ターニングテーブル41において、ローラー42が設けられた面の中央には、ターニングテーブル41から突出する円柱状の従動部43が設けられている。従動部43には、先端面から従動部43の軸方向に凹む挿入溝45が設けられている。ターニングテーブル41と従動部43とは、一体に形成されており、金属からなる。挿入溝45には、駆動部33が挿入されている。モータ31の回転軸32が回転すると、駆動部33の外面と挿入溝45の内面が当接して、動力を伝達する。このため、駆動部33及び従動部43の動力伝達部とは、互いに接する面であるといえる。
【0020】
次に、エージング装置20を用いたエージング方法について作用とともに説明する。
二次電池10を製造するときには、まず、ケース本体13に電極組立体12を収容する。電極組立体12を収容した後には、蓋体14をケース本体13に溶接する。そして、蓋体14に形成された注液孔14aから、ケース11の内部に電解液を注入する。電解液を注入した後には、注液孔14aを封止栓19によって仮封止する。仮封止後、電極組立体12の活物質に絶縁膜を形成することで電解液の分解を抑制するために充放電を繰り返し行う。以下の説明において、この状態の二次電池を製造段階の二次電池10aとして説明を行う。
【0021】
二次電池10aの充放電を繰り返し行った後には、所定の温度環境下で製造段階の二次電池10aを放置し、自己放電させるエージングを行う。
エージングを行うときには、ターニングテーブル41を収容室21の外部に取り出す。そして、ターニングテーブル41の周方向に並ぶように製造段階の二次電池10aを配設していく。その後、ターニングテーブル41を収容室21に収容し、エージングを行う。エージング中には、収容室21の内部をエージングに適した温度(例えば、60度)に維持するために、送風孔26からは加熱装置27によって加熱された気体が供給される。また、エージング中には、制御装置34がモータ31を駆動させることで回転軸32が回転する。回転軸32が回転すると、駆動部33が回転軸32と一体となって回転し、駆動部33が挿入溝45の内面を押圧することでターニングテーブル41が回転する。
【0022】
駆動部33と従動部43は、使用に伴い摩耗していき、摩耗粉を生じさせる。この摩耗粉は、従動部43と駆動部33が摩耗することで生じるものであり、駆動部33が摩耗すると樹脂粉が生じ、従動部43が摩耗すると金属粉が生じる。駆動部33と従動部43が摩耗するとき、硬度の高いほうが摩耗が少ない。このため、樹脂よりも硬度の高い金属からなる従動部43は、駆動部33に比べて摩耗が少なく、収容室21内に生じる摩耗粉は、主として樹脂粉となる。
【0023】
収容室21の内部では、送風孔26から近い位置ほど温度が高く、送風孔26から遠い位置ほど温度が低くなる。二次電池10aは、ターニングテーブル41の回転に伴い収容室21の内部を移動し、温度の異なる位置を移動していく。複数の二次電池10aは、同一の軌道で温度の高い位置と温度の低い位置を繰り返し移動していく。
【0024】
エージング終了後には、収容室21の内部を常温にする。このとき、送風孔26からは加熱されていない気体が供給される。すなわち、収容室21は、加熱装置27のオン・オフによって温度調節(昇温、降温)が可能となっている。
【0025】
そして、封止栓19を注液孔14aから取り外してケース11内の気体をケース11外に排出し、再度封止栓19を注液孔14aに取り付けて本封止を行うことで二次電池10が製造される。
【0026】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ターニングテーブル41が回転することで、二次電池10aは、温度の高い位置と温度の低い位置を繰り返し移動していく。このため、一部の二次電池10aが温度の高い位置や温度の低い位置に留まった状態でエージングが行われることがなく、エージング中の二次電池10a間の温度差が小さくなる。このため、二次電池10間の容量に差が生じにくい。
【0027】
(2)エージング中に生じる金属粉が二次電池10aに付着すると、短絡などの原因となり、二次電池10の不良の原因となるおそれがあるが、本実施形態では、
駆動部
33を樹脂製にすることで、金属粉の発生を抑制している。このため、金属粉によって二次電池10aに短絡などが生じることが抑制される。
【0028】
(3)駆動部33は、挿入溝45に挿入されており、駆動部33とターニングテーブル41は別体となっている。このためターニングテーブル41を駆動部33から取り外すことができ、収容室21の外部にターニングテーブル41を取り出すことができる。このため、製造段階の二次電池10aをターニングテーブル41に載置するときに、収容室21の外部で二次電池10aを載置した後に、二次電池10aが載置されたターニングテーブル41を収容室21の内部に収容すればよく、二次電池10aの載置が容易となる。また、ターニングテーブル41が取り外せることで、収容室21内の洗浄が容易となり、収容室21の内部の摩耗粉を除去しやすい。
【0029】
(第2の実施形態)
以下、エージング装置の第2の実施形態について説明する。
図5に示すように、エージング装置60は、モータ61を有している。モータ61の回転軸62には、駆動部としての樹脂製の駆動ギア51が取り付けられている。底部22には、金属製のターニングテーブル52が載置されている。ターニングテーブル52は、外周に駆動ギア51と噛合する複数の歯53を有しており、ターニングテーブル52全体で従動ギア(従動部)を構成している。ターニングテーブル52は、載置面52aとは反対側の面にローラー55を有している。底部22には、このローラー55の軌道に沿って溝56が形成されている。
【0030】
モータ61が駆動すると、回転軸62と一体となって回転する駆動ギア51に追従してターニングテーブル52が回転する。本実施形態の動力伝達部は、駆動ギア51の表面となり、従動部はターニングテーブル52の歯53の表面となる。
【0031】
したがって、上記実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下のような効果をえることができる。
(4)駆動ギア51によってターニングテーブル52を回転させているため、駆動ギア51とターニングテーブル52(従動ギア)のギア比から、小さいトルクでターニングテーブル52を回転させることができる。このため、モータ61を小型化することができる。
【0032】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○第1の実施形態において、駆動部33及び従動部43の両方が樹脂製であってもよいし、駆動部33が金属製で従動部43が樹脂製であってもよい。また、第2の実施形態において、駆動ギア51とターニングテーブル52の両方が樹脂製であってもよいし、駆動ギア51が金属製で、ターニングテーブル52が樹脂製であってもよい。
【0033】
○駆動部33及び従動部43を金属製にして、それぞれに樹脂コーティングを施してもよい。摩耗が生じる部分は駆動部33及び従動部43において、互いに接する部分である動力伝達部であるため、少なくともこの部分のみ樹脂によって形成されていればよい。同様に、駆動ギア51及びターニングテーブル52を金属製にして、それぞれに樹脂コーティングを施してもよい。
【0034】
○ローラー42,55は、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。金属粉が生じることを抑制するため、樹脂製のローラー42,55を使用することが好ましい。
○天板24を取り外し可能に構成することで、ターニングテーブル41,52を収容室21の外部に取り出せるように構成してもよい。
【0035】
○収容室21の形状は、円筒状など、どのような形状でもよい。
○収容室21の内部に加熱装置27を設けることで、収容室21の内部の温度を調整できるようにしてもよい。
【0036】
○送風孔26は、複数設けられていてもよい。また、送風孔26は、天板24や、4つの側壁23など、どのような位置に設けられていてもよい。
○ターニングテーブル41,52は、円板状以外の形状であってもよい。例えば、四角板状などの多角板状であってもよい。
【0037】
○モータ31,61は、底部22に埋め込まれていてもよい。
○蓄電装置は、二次電池10でなく、電気二重層キャパシタ等の他の蓄電装置に適用してもよい。