(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[画像処理システムの全体構成]
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理システムについて、図面を参照しつつ説明する。画像処理システム900は、
図1に示すように、印刷機能及び画像読取機能(スキャナ)を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral)200(画像処理装置の一例)と、MFP200にジョブの実行を命令する携帯端末100と、を備えている。MFP200は、画像処理に係るジョブを含む複数種のジョブを実行可能である。ここで画像処理に係るジョブとは、例えば、画像データに係る画像を記録媒体である用紙Pに記録する画像記録ジョブや、原稿に形成された画像を読み取って画像データを生成する画像読取ジョブが該当する。
【0012】
携帯端末100は、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯端末であり、MFP200との間でNFC(Near Field Communication)方式による無線通信(第1無線通信)、及びWi−Fi(Wireless Fidelity)ダイレクト方式による無線通信(第2無線通信)によってデータの送受信が可能となっている。
【0013】
NFC方式による無線通信(以下、NFC通信と称す)は、10cm程度の極近距離を通信可能距離とする無線通信であり、携帯端末100とMFP200とを近接(又は接触)させることで通信が確立される。また、NFC通信は、Wi−Fiダイレクト方式による無線通信(以下、WFD通信と称す。)と比べて、通信速度が遅いため、比較的小容量のデータの通信に用いられる。なお、NFC通信の場合、その通信可能距離の物理的制限から通信相手の特定が容易であり、その分、通信の確立が、WFD通信の場合よりも容易である。つまり、ユーザは、携帯端末100を通信相手となるMFP200に近接させる必要があるが、その行為自体が通信相手を指定することになる。
【0014】
一方、WFD通信は、通信可能距離が数メートル〜数十メートル程度のローカルな無線通信である。ここで、WFD通信は、ネットワークを構築し、そのネットワーク内でデータの受け渡しを可能にする通信方式である。そのため、送信元及び受信元の装置間でデータ通信を行うには、WFDネットワークを構築する必要がある。
そこで、本実施形態の画像処理システム900では、携帯端末100とMFP200との間でNFC通信が確立されたときに、WFD通信を確立させるためのWFD接続情報(通信設定情報の一例)を、携帯端末100とMFP200との間で送受信する。そして、このWFD接続情報に基づいて、携帯端末100とMFP200との間のWFD通信を確立するように構成されている(いわゆる、ハンドオーバーが行われるように構成されている)。
【0015】
[携帯端末の構成]
続いて、携帯端末100の概略構成について説明する。携帯端末100は、
図1に示すように、略直方体形状に形成された筐体101を有する。筐体101の一面には、操作キー11とタッチパネル12とが配設されている。
また、携帯端末100は、
図2に示すように、外部装置との通信を可能にする通信インターフェースとしてのNFCインターフェース15(携帯端末側第1通信手段)及び無線LANインターフェース16(携帯端末側第2通信手段)と、メモリーカード17aを着脱自在なメモリーカードインターフェース17と、携帯端末全体を制御する制御装置30とを有している。メモリーカード17aには、ユーザが所有する画像データ(例えば、写真や文書ファイルなど)や、MFP200に実行させるアプリケーションデータが記憶されている。本実施形態において、アプリケーションデータは、MFP200の制御装置60にアプリケーションを導入するためのソフトウェア(インストーラ)を含む。
【0016】
NFCインターフェース15は、ISO/IEC21481又はISO/IEC18092の国際標準規格に基づいて、NFC通信を可能にするインターフェースである。携帯端末100は、NFCインターフェース15を介して外部装置との間でNFC通信によるデータ送受信を行う。無線LANインターフェース16は、IEEEの802.11の規格及びそれに準ずる規格に基づいて、WFD通信を可能にするインターフェースである。携帯端末100は、無線LANインターフェース16を介して外部装置との間でWFD通信によるデータ送受信を行う。
【0017】
次に、携帯端末100の制御装置30について説明する。制御装置30は、
図2に示すように、CPU31と、ROM32と、RAM33と、制御回路35とを有する。制御回路35には、操作キー11、タッチパネル12等の様々な装置が接続されている。ROM32には、携帯端末100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定が記憶されている。RAM33は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、或いはデータを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0018】
RAM33は、ジョブキュー33aと、ジョブ情報記憶領域33bと、通信デバイス情報記憶領域33cとを有する。ジョブキュー33aは、MFP200との間でNFC通信が次回確立された際に、MFP200に実行させるジョブを記憶する。ジョブには、MFP200に当該ジョブを行わせるためのコマンドと、後述するジョブデータを含む。また、本実施形態では、ジョブキュー33aには、1つのジョブのみが記憶される。
ジョブ情報記憶領域33bは、ジョブキュー33aに記憶されているジョブに係るジョブ情報を記憶する。ジョブ情報には、ジョブキュー33aに記憶されているジョブの種類を識別するためのジョブ識別情報、及び当該ジョブのジョブデータのサイズを示すデータサイズ情報が含まれる。
通信デバイス情報記憶領域33cは、携帯端末100の無線LANインターフェース16の通信能力を示す通信デバイス情報を記憶する。
【0019】
また、RAM33には、MFP200との間でWFD通信を確立させるためのWFD接続情報34aが記憶されている。このWFD接続情報34aには、WFDネットワークを識別するための識別子であるSSID(Service Set IDentifier)やパスワード、携帯端末100のIPアドレスなどの固有情報が含まれる。
また、RAM33には、OSや、各種のデバイスを制御するデバイスドライバ等が組み込まれている。更に、RAM33には、携帯端末100を機能させる各種アプリケーション(以下、アプリ)が記憶されている。この記憶されているアプリには、NFCインターフェース15を用いてNFC通信を行うためのNFC通信プログラム34b、無線LANインターフェース16を用いてWFD通信を行うための無線LAN通信プログラム34c、及びMFP制御プログラム34dが含まれる。CPU31は、ROM32から読み出したプログラムに従って、その演算結果をRAM33に記憶させながら各種の処理を行う。
【0020】
次に、MFP制御プログラム34dについて詳細に説明する。MFP制御プログラム34dは、MFP200にジョブの実行を命令するためのプログラムである。このMFP制御プログラム34dは、操作キー11やタッチパネル12を介してユーザから起動指令を受け付けることにより、CPU31により起動される。CPU31は、MFP制御プログラム34dが起動されると、MFP200に命令するジョブの種類をユーザに選択させるための選択画面をタッチパネル12に表示させる。本実施形態において、携帯端末100からMFP200に命令可能なジョブの種類として、画像記録ジョブ、画像読取ジョブ、及び記憶ジョブを含む。
【0021】
画像記録ジョブは、MFP200が、携帯端末100のメモリーカード17aに記憶されている画像データのうち、ユーザによって選択された記録対象の画像データを携帯端末100から受け取り、当該画像データに係る画像を用紙Pに記録するジョブである。画像読取ジョブは、MFP200が、携帯端末100においてユーザによって設定された読取設定データを携帯端末100から受け取り、当該読取設定データに従って、原稿の画像を読み取って画像データを生成するジョブである。また、記憶ジョブは、MFP200が、携帯端末100に記憶されている画像データやアプリケーションデータのうち、ユーザによって選択された記憶対象の画像データやアプリケーションデータを携帯端末100から受け取り、後述するフラッシュメモリ64のデータベース64aに記憶するジョブである。
【0022】
CPU31は、操作キー11やタッチパネル12を介してユーザからMFP200に命令するジョブの種類が選択されると、選択されたジョブをジョブキュー33aに記憶し、且つ、選択されたジョブに関するジョブ情報をジョブ情報記憶領域33bに記憶する。ここで、ジョブにはジョブデータが含まれる。ジョブデータとは、ジョブを実行するのに必要なデータであり、画像記録ジョブの場合には記録対象の画像データであり、画像読取ジョブの場合には読取設定データであり、記憶ジョブの場合には記憶対象の画像データやアプリケーションデータである。なお、読取設定データは、操作キー11やタッチパネル12を介してユーザからの入力に基づき生成される。
【0023】
CPU31は、MFP200との間でNFC通信が確立されたときに、ジョブ情報記憶領域33bに記憶されたジョブ情報、及び通信デバイス情報記憶領域33cに記憶された通信デバイス情報を、NFC通信によりMFP200に送信する。また、CPU31は、MFP200との間でWFD通信が確立されたときに、ジョブキュー33aに記憶されたジョブをWFD通信によりMFP200に送信する。
【0024】
[MFPの構成]
続いて、MFP200の概略構成について、
図1、
図3〜
図5を参照しつつ説明する。また、
図5では、パージ機構は側面図とせずに断面図で図示している。さらに、
図5(b)では、ワイパー機構を省略して図示している。
【0025】
MFP200は、
図1に示すように、略直方体形状に形成された筐体201を有する。また、MFP200は、
図3に示すように、用紙Pに画像を記録するための画像記録機構50(画像記録手段の一例)と、画像記録機構50のメンテナンスを行うための、パージ機構51及びワイパー機構52と、原稿の画像を読み取って当該画像に係る画像データを生成するための画像読取機構53と、NFCインターフェース54(画像処理装置側第1通信手段の一例)と、無線LANインターフェース55(画像処理装置側第2通信手段の一例)と、操作パネル56と、MFP全体を制御する制御装置60とを有する。
【0026】
画像記録機構50は、
図4に示すように、筐体201の内部空間に配置されている。画像記録機構50は、インクジェット方式で用紙Pに画像を記録する機構であり、搬送機構70と、用紙トレイ75と、プラテン76と、4つのインクジェットヘッド80(以下、ヘッド80)とを備えている。
【0027】
4つのヘッド80は、副走査方向に沿って互いに隣接配置されており、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのインクをそれぞれ吐出する。各ヘッド80の下面は、複数の吐出口(不図示)が開口した吐出面80aである。また、4つのヘッド80は、いずれも主走査方向に長尺な略直方体形状を有したライン式のインクジェットヘッドであり、それぞれ、流路部材、圧電アクチュエータ81(
図3参照)、及びドライバICを含む。圧電アクチュエータ81は、圧電素子を用いたピエゾ方式のものであり、流路内のインクに吐出口から吐出するためのエネルギーを付与する部材である。圧電アクチュエータ81は、ドライバICを実装した配線部材(例えば、フレキシブルプリント基板:FPC)を介して、制御装置60と接続されている。圧電アクチュエータ81は、制御装置60による制御の下、ドライバICから所定の電位が印加されることにより、駆動する。また、4つのヘッド80は、対応する色のインクが貯留されるカートリッジと接続されており、カートリッジからインクが供給される。ここで、副走査方向とは、後述のニップローラ72b,72cによって搬送される用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0028】
用紙トレイ75は、積層された複数の用紙Pを保持可能であり、筐体201に着脱自在に配置されている。プラテン76は、用紙を支持するための板部材であり、4つのヘッド80の吐出面80aに対向配置されている。
【0029】
搬送機構70は、用紙トレイ75から、筐体201の上面に設けられた載置部85に至る用紙Pの搬送経路を構成するものである。搬送機構70は、ピックアップローラ71と、ニップローラ72a〜72eと、ガイド73a〜73dとを含んでいる。ピックアップローラ71は、用紙トレイ75に積層されている用紙Pを上方から1枚ずつ送出する。ニップローラ72a〜72eは、搬送経路に沿って配置されており、用紙Pに搬送力を付与する。ガイド73a〜73dは、搬送経路においてピックアップローラ71及びニップローラ72a〜72eの間にそれぞれ配置されており、ニップローラ72a〜72eによって搬送力が付与された用紙Pが次のニップローラ72a〜72eに到達するまで当該用紙Pをガイドする。搬送機構70によって搬送された用紙Pは、4つのヘッド80とプラテン76との間である画像記録領域を通過する際に、各ヘッド80の吐出口から吐出されたインク滴によって画像が記録される。画像が記録された用紙Pは、搬送機構70によってさらに搬送され、載置部85に載置される。
【0030】
パージ機構51は、吐出口内のインクの増粘等によってヘッド80のインク吐出特性が低下したときに、その性能を回復させるパージ処理を行うための機構であり、
図5に示すように、キャップ部材90、廃液管91、廃液タンク92、吸引ポンプ93、及びキャップ移動機構94(
図3参照)等を備えている。
【0031】
キャップ部材90は、ヘッド80の吐出面80aに吐出口を囲んで密着可能な弾性部材である。キャップ部材90は、画像記録のときには、キャップ移動機構94により用紙Pと対向する領域よりも外側の待機位置(
図5(a参照))に配置され、パージ処理のときには、キャップ移動機構94によりヘッド80の吐出面80aと対向して密着されるメンテナンス位置(
図5(b)参照)に配置される。
【0032】
廃液管91は、キャップ部材90と廃液タンク92とを連通する。また、この廃液管91には、吸引ポンプ93が設けられている。吸引ポンプ93は、パージ処理において、キャップ部材90がメンテナンス位置に配置されている状態で、キャップ部材90内の気体を吸引して内部を減圧することで、ヘッド80の吐出口からキャップ部材90内へインクを強制的に排出する。これにより、ヘッド80の吐出特性を回復させることができる。尚、パージ処理によって吐出口からキャップ部材90に排出されたインクは、廃液管91を経由して廃液タンク92に排出される。
【0033】
ワイパー機構52は、ヘッド80の吐出面80aを清掃する払拭処理を行うための機構である。ワイパー機構52は、ヘッド80毎に設けられており、
図5(a)に示すように、ワイパー86、ワイパーホルダ87a、一対のガイド87b及びワイパー移動機構88(
図3参照)を有している。ワイパーホルダ87aは、ワイパー86を支持し、ガイド87bに沿って移動可能である。一対のガイド87bは、ヘッド80を副走査方向に挟んで配置されており、主走査方向に延びている。ワイパー86は、弾性材料からなる板状部材であり、吐出面80aの副走査方向幅より若干長い。また、ワイパー86の上端は、吐出面80aよりも若干上方に位置される。払拭処理時には、ワイパー移動機構88によりワイパーホルダ87aがガイド87bに沿って往復移動する。これにより、吐出面80aに付着したインク等がワイパー86により払拭される。なお、ワイパー86は、払拭処理時以外のときには、
図5(a)中においてヘッド80の左端近傍の待機位置に配置される。
【0034】
画像読取機構53は、
図4に示すように、筐体201の上面において載置部85の一部を覆うように設置されている。画像読取機構53は、
図1に示すように、フィーダ95と、フィーダが形成する搬送経路を通過する原稿と近接する位置に配置されたCIS96(
図3参照)と、A/Dコンバータ99(
図3参照)と、読取画像処理回路130(
図3参照)とを有している。フィーダ95の上面には、給紙トレイ97が形成されている。給紙トレイ97にセットされた原稿(記録媒体)は、フィーダ95によって
図1中矢印に沿って移動した後、上面を外周面として進行方向を180°変えることで表裏反転し、CIS96の上面を通過した後に、排紙トレイ98に載置される。記録媒体がCIS96と近接する位置を通過するとき、CIS96は記録媒体に記録された画像を読み取り、読み取り信号をA/Dコンバータ99へ出力する。そして、読み取り信号がA/Dコンバータ99によりデジタル変換される。その後、読取画像処理回路130により、デジタル変換された読み取り信号に基づき、原稿に形成された画像に関する画像データが生成される。なお、画像読取機構53は、読取解像度やカラー/モノクロなどの読取設定に従って、原稿に形成された画像を読み取るように構成されている。
【0035】
図3に戻って、NFCインターフェース54は、携帯端末100のNFCインターフェース15と同様に、NFC通信を可能にするインターフェースである。また、無線LANインターフェース55は、携帯端末100の無線LANインターフェース16と同様に、WFD通信を可能にするインターフェースである。
【0036】
操作パネル56は、
図1に示すように、筐体201の上面に設けられており、ユーザ入力を受け付ける入力部57、メッセージや設定内容を表示するディスプレイ58、及びNFC読取面59を有している。このNFC読取面59は、NFCインターフェース54の構成要素であり、水平面と平行な面である。MFP200は、電源ONの間、NFCインターフェース54から発せられる信号によって、NFC通信が実行可能なデバイスを検出する状態になっている。本実施形態においては、ユーザが携帯端末100を、NFCインターフェース54のNFC読取面59に近接させると、MFP200が携帯端末100を検出し、携帯端末100とMFP200との間でNFC通信が確立される。
【0037】
次に、MFP200の制御装置60について詳細に説明する。制御装置60は、
図3に示すように、CPU61と、ROM62と、RAM63と、フラッシュメモリ64(データ記憶手段の一例)と、制御回路65とを有する。制御回路65は、画像記録機構50、画像読取機構53等、MFP200の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。この制御回路65には、ヘッド80の圧電アクチュエータ81の駆動を制御するためのヘッド制御回路等が含まれる。CPU61は、画像記録ジョブを実行する際には、制御回路65を介して画像記録機構50を制御して、用紙Pに画像を記録する。また、CPU61は、画像読み取りジョブを実行する際には、制御回路65を介して画像読取機構53を制御して、原稿に形成された画像に係る画像データを生成する。
【0038】
ROM62には、MFP200を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定が記憶されている。RAM63は、プログラム実行時に必要なデータ等を一時的に記憶する記憶領域として利用される。また、このRAM63には、携帯端末100との間でWFD通信を確立させるためのWFD接続情報63aが記憶されている。このWFD接続情報63aには、SSIDやパスワード、MFP200のIPアドレスなどの固有情報が含まれる。また、RAM63には、MFP200を機能させる各種アプリが記憶されている。この記憶されているアプリには、NFCインターフェース54を用いてNFC通信を行うためのNFC通信プログラム63b、無線LANインターフェース55を用いてWFD通信を行うための無線LAN通信プログラム63c、及び、ジョブ実行プログラム63dが含まれる。CPU61は、ROM62から読み出したプログラム等に従って、その演算結果をRAM63に記憶させながら各種の処理を行う。
【0039】
フラッシュメモリ64は、ストレージ用の不揮発性メモリである。このフラッシュメモリ64は、携帯端末100から受信した画像データやアプリケーションデータ(ジョブデータ)等を記憶するデータベース64aを有している。
【0040】
次に、ジョブ実行プログラム63dについて詳細に説明する。ジョブ実行プログラム63dは、携帯端末100から命令されたジョブを実行するためのプログラムである。CPU61は、ジョブ実行プログラム63dが起動されると、ジョブ実行処理、先行処理、ジョブ判断処理、及び先行処理開始時間決定処理等の各種処理を実行可能である。
【0041】
ジョブ実行処理は、携帯端末100から受信したジョブを実行する処理である。例えば、受信したジョブが画像記録ジョブの場合には、CPU61は、画像記録機構50を制御して、携帯端末100から受信した画像データ(ジョブデータ)に係る画像を用紙Pに記録する。
受信したジョブが画像読取ジョブの場合には、CPU61は、画像読取機構53を制御して、携帯端末100から受信した読取設定データ(ジョブデータ)に従って、給紙トレイ97にセットされた原稿に形成された画像を読み取り、画像データを生成する。そして、生成された画像データを、フラッシュメモリ64のデータベース64aに記憶したり、WFD通信によりジョブの送信元やユーザの指定先の携帯端末100に送信する。
受信したジョブが記億ジョブの場合には、CPU61は、携帯端末100から受信した画像データやアプリケーションデータ(ジョブデータ)をフラッシュメモリ64のデータベース64aに記憶する。
なお、フラッシュメモリ64のデータベース64aに記憶された画像データは、入力部57を介したユーザからの指示に基づき、画像記録機構50により当該画像データに係る画像を用紙Pに記録することが可能である。
また、CPU61は、データベース64aに記憶されたアプリケーションデータに含まれるインストーラを起動することで、各種アプリケーションをインストールすることが可能である。
【0042】
ここで、ヘッド80の吐出口から長時間の間インクが吐出されないと、吐出口内のインクが増粘して、ヘッド80のインク吐出特性が低下する。このようにインク吐出特性が低下した状態で画像記録ジョブを実行すると、用紙Pに記録される画像の品質が低下する。そこで、本実施形態においては、画像記録ジョブを実行する際には、画像記録ジョブの実行に先立って先行処理を行う。本実施形態において、先行処理は、画像記録機構50のメンテナンスを行うメンテナンス処理であり、パージ処理、フラッシング処理、及び払拭処理を含む。パージ処理は、上述したように、パージ機構51によりヘッド80の全吐出口からインクを強制的に排出させる処理である。フラッシング処理は、ヘッド80の一部又は全圧電アクチュエータ81を駆動することにより一部又は全吐出口からインクを強制的に排出させる処理である。払拭処理は、パージ処理の後に行われる処理であり、上述したように、ワイパー機構52によりヘッド80の吐出面80aに付着したインク等の異物を払拭する処理である。本実施形態においては、パージ機構51、ワイパー機構52、及びヘッド80の圧電アクチュエータ81がメンテナンス手段に相当する。
【0043】
また、CPU61は、画像記録ジョブを実行する際に、ヘッド80の吐出口からインクが吐出されていない不吐出時間を算出する。そして不吐出時間が所定時間以上の場合にはメンテナンス処理としてパージ処理及び払拭処理を行い、不吐出時間が所定時間未満の場合にはメンテナンス処理としてフラッシング処理を行う。
【0044】
ところで、上述したように、画像記録ジョブを実行する前には、メンテナンス処理を先立って行う必要がある。従って、画像記録ジョブが完了する時間を早くするためには、メンテナンス処理の開始時間を早くする必要がある。ここで、携帯端末100からWFD通信によりジョブ(画像データ)を受信した後にメンテナンス処理を開始する態様だと、画像記録ジョブが完了するまでの時間が長くなり、ユーザの待ち時間が長くなる。また、携帯端末100との間でNFC通信が確立されたときにジョブの種類に関わらずメンテナンス処理を開始する態様だと、上述した画像読取ジョブや記憶ジョブではメンテナンス処理を先立って行う必要がないため、これらジョブを実行する際にはメンテナンス処理が不要に行われることになる。
【0045】
そこで、本実施形態においては、上述したように、NFC通信が確立されたときに、ジョブを識別するためのジョブ識別情報を、NFC通信により携帯端末100からMFP200に送信させる。その後、MFP200において、携帯端末100から受信したジョブ識別情報に基づいて、ジョブの種類を判断するジョブ判断処理を行う。そして、このジョブ判断処理により、ジョブが画像記録ジョブであると判断された場合のみメンテナンス処理を開始する。このように、ジョブの種類が画像記録ジョブと判断された場合にのみメンテナンス処理を開始することで、メンテナンス処理が不要に行われることを防止しつつ、画像記録ジョブが完了するまでの時間を短くすることができる。本実施形態においては、画像記録ジョブが第1ジョブに相当し、画像読取ジョブ及び記憶ジョブが第2ジョブに相当する。
【0046】
次に、先行処理開始時間決定処理について詳細に説明する。上述の画像記録ジョブは、MFP200において携帯端末100からの画像データの受信が完了した後に実行可能となる。ここで、携帯端末100からMFP200への画像データの送信に要する時間は、送信元の携帯端末100の通信能力や画像データのデータサイズにより変動するため、その結果として、画像記録ジョブが実行可能となる時間も変動することになる。また、画像記録ジョブが実行可能となる時間は、MFP200の処理状況によっても変動する。例えば、MFP200が画像記録ジョブの実行の命令を受け付けたときに、他のジョブを実行しているときには、画像記録ジョブを即座に実行することができない場合もある。さらには、MFP200が他の処理を行っている場合には、携帯端末100との間の画像データの送受信に要する時間が長くなる場合がある。
【0047】
加えて、本実施形態では、上述したように、画像記録ジョブを実行する際において、ヘッド80の吐出口からインクが吐出されていない不吐出時間が所定時間以上の場合にはパージ処理及び払拭処理が行われるが、不吐出時間が所定時間未満の場合にはフラッシング処理が行われる。このように、MFP200の処理状況(画像記録機構50の状態)によって、メンテナンス処理に要する時間も変動する。
【0048】
このため、送信元の携帯端末100の通信能力や画像データのデータサイズ、並びにMFP200の処理状況に依らず、MFP200がNFC通信によりジョブ識別情報を受信した直後、又は一定時間経過後にメンテナンス処理を一律に開始させる態様の場合、以下の問題が生じる。即ち、メンテナンス処理が完了してから画像記録ジョブが実行可能となるまでの時間が長いと、メンテナンス処理をしたにもかかわらず、画像記録ジョブを開始する直前においてヘッド80の吐出口内のインクが再度増粘している場合がある。この場合、ヘッド80のインク吐出特性を回復させるためにメンテナンス処理を再度実行する必要性がある。このようにメンテナンス処理を複数回(長時間)行う場合、メンテナンス処理に要するインクの消費量や電力消費量が多くなるため問題となる。
【0049】
そこで、本実施形態においては、先行処理開始時間決定処理を行うことにより、メンテナンス処理の最適な開始時間を決定する。具体的には、上述したように、NFC通信が確立されたときに、携帯端末100からMFP200に対して、NFC通信により、ジョブデータのサイズを示すデータサイズ情報、及び、携帯端末100の無線LANインターフェース16の通信能力を示す通信デバイス情報を送信させる。そして、MFP200のCPU61は、まず、携帯端末100から受信したデータサイズ情報及び通信デバイス情報、並びにMFP200の処理状況に基づいて、現在の時刻から画像記録ジョブが実行可能となるまでの時間(以下、画像記録ジョブ実行可能時間)を算出する。
【0050】
また、CPU61は、MFP200の処理状況に基づいて、メンテナンス処理に要する時間(以下、メンテナンス時間)を算出する。そして、CPU61は、メンテナンス時間が、画像記録ジョブ実行可能時間以上の場合には、メンテナンス処理が即刻開始されるように、メンテナンス処理の開始時間を決定する。これに対して、メンテナンス時間が画像記録ジョブ実行可能時間未満の場合には、画像記録ジョブ実行可能時間からメンテナンス時間を減算した時間、現在の時刻から経過後にメンテナンス処理が開始されるように、メンテナンス処理の開始時間を決定する。即ち、画像記録ジョブを実行する直前にメンテナンス処理が完了するように開始時間を決定する。そして、CPU61は、このように先行処理開始時間決定処理により決定された開始時間にメンテナンス処理を開始する。これにより、メンテナンス処理が完了した直後に画像記録ジョブが開始されることになるため、ヘッド80のインク吐出特性を回復させつつ、メンテナンス処理に要するインクの消費量や電力消費量が多くなることを抑制することができる。
【0051】
[MFP制御プログラムの概要]
続いて、携帯端末100のCPU31がMFP制御プログラム34dに従って実行する処理について、
図6を参照しつつ説明する。
まず、CPU31は、初期画面として、MFP200に命令するジョブを選択させる選択画面をタッチパネル12に表示させる(A1)。その後、命令対象のジョブがユーザにより選択される(A2:YES)と、選択されたジョブをジョブキュー33aに記憶し、且つ、選択されたジョブに関するジョブ情報をジョブ情報記憶領域33bに記憶する(A3)。この後、ユーザがその携帯端末100をMFP200のNFC読取面59に近接させることにより、MFP200が携帯端末100を検出し、携帯端末100とMFP200との間で、NFC通信が確立する。CPU31は、NFC通信が確立したか否かを判断し(A4)、NFC通信が確立していなければ(A4:NO)、ユーザに携帯端末100をMFP200のNFC読取面59に近接させることを促す画像をタッチパネル12に表示させて、NFC通信の確立を待つ。
【0052】
CPU31は、NFC通信が確立されれば(A4:YES)、当該NFC通信にてハンドオーバー要求をMFP200に送信する(A5)。このハンドオーバー要求には、WFD通信へのハンドオーバーの要求を示すコマンドの他、RAM33に記憶されたWFD接続情報34aが付加される。そして、CPU31はハンドオーバー要求に対する応答として、MFP200からハンドオーバー要求応答をNFC通信にて受信する(A6)。このハンドオーバー要求応答には、MFP200のRAM33に記憶されたWFD接続情報63aが付加されている。そのため、このWFD接続情報63aを利用することで、携帯端末100とMFP200との間でWFD通信を確立させることが可能となる。
【0053】
次に、CPU31は、NFC通信にて、ジョブ情報記憶領域33bに記憶されたジョブ情報、及び通信デバイス情報記憶領域33cに記憶された通信デバイス情報をMFP200に送信する(A7)。そして、CPU31は、ステップA6の処理で受信したハンドオーバー要求応答に含まれるWFD接続情報63aを利用してMFP200との間でのWFD通信を確立する(A8)。すなわち、NFC通信からWFD通信へのハンドオーバーが実現される。CPU31は、MFP200とのWFD通信を確立させた後は、当該WFD通信にて、ジョブキュー33aに記憶されたジョブをMFP200に送信する(A9)。この後、CPU31は、MFP200から送信された、ジョブ完了通知を受信する(A10)。このジョブ完了通知は、MFP200において携帯端末100から命令されたジョブの実行が完了した際に、MFP200から携帯端末100に対してWFD通信にて送信される通知である。CPU31は、ジョブ完了通知を受信すると、携帯端末100とMFP200との間のWFD通信を切断する(A11)。以上で、
図6の動作フローを終了する。
【0054】
[ジョブ実行プログラムの概要]
続いて、MFP200のCPU61がジョブ実行プログラム63dに従って実行する処理について、
図7を参照しつつ説明する。なお、以下において、MFP200のNFC読取面59に近接される携帯端末100は、ユーザによりMFP200に実行させるジョブが既に選択されているものとする。
【0055】
まず、CPU61は、携帯端末100とMFP200との間でNFC通信が確立されると(B1)、当該NFC通信にて、携帯端末100からハンドオーバー要求を受信する(B2)。そして、CPU61は、RAM63に記憶されたWFD接続情報63aを含むハンドオーバー要求応答を、NFC通信にて、携帯端末100に送信する(B3)。次に、CPU61は、携帯端末100からジョブ情報及び通信デバイス情報を、NFC通信にて受信する(B4)。次に、CPU61は、受信したジョブ情報に含まれるジョブ識別情報に基づいて、携帯端末100から命令されたジョブの種類を判断する(B5:ジョブ判断処理)。そして、ジョブの種類が画像読取ジョブ及び記憶ジョブの何れかであると判断した場合(B6:NO)には、ステップB11の処理に移る。
【0056】
一方で、ジョブの種類が画像記録ジョブであると判断した場合(B6:YES)には、CPU61は、携帯端末100から受信した、通信デバイス情報、及びジョブ情報に含まれるデータサイズ情報、並びに、MFP200の処理状況に基づいて、上記画像記録ジョブ実行可能時間を算出する(B7)。また、CPU61は、MFP200の処理状況に基づいて、メンテナンス処理の種類の決定(即ち、メンテナンス処理としてパージ処理及び払拭処理を行うか、フラッシング処理を行うかの決定)、及びそのメンテナンス処理に要する上記メンテナンス時間を算出する(B8)。そして、CPU61は、算出した画像記録ジョブ実行可能時間、及び算出したメンテナンス時間に基づいて、メンテナンス処理の開始時間を決定する(B9:先行処理開始時間決定処理)。このとき、CPU61は、メンテナンス処理の開始時間を表す画面をディスプレイ58に表示させる。これにより、ユーザがメンテナンス処理が開始される時間を把握することができる。
【0057】
次に、CPU61は、決定された開始時間にメンテナンス処理を開始する(B10:先行開始処理)。詳細には、CPU61は、メンテナンス処理としてパージ処理及び払拭処理を行う場合にはパージ機構51及びワイパー機構52を制御してメンテナンス処理を行い、フラッシング処理を行う場合にはヘッド80の圧電アクチュエータ81を制御してメンテナンス処理を行う。これにより、ヘッド80のインク吐出特性が回復する。ステップB10の処理が終了すると、ステップB11の処理に移る。なお、上述のステップB7〜B10の処理は、後述するステップB11及びB12の処理と並行して実行される。
【0058】
ステップB11の処理では、CPU61は、携帯端末100との間でWFD通信を確立させる。この後、CPU61は、WFD通信により、携帯端末100からジョブを受信する(B12)。そして、CPU61は、受信したジョブが画像記録ジョブの場合(B13:YES)には、メンテナンス処理が完了しているか否かを判断する(B14)。メンテナンス処理が完了していないと判断した場合(B14:NO)には、メンテナンス処理が完了するまでステップB14の処理を繰り返す。一方で、メンテナンス処理が完了したと判断した場合(B14:YES)には、CPU61は、画像記録ジョブを実行すべく、ステップB12において受信したジョブに含まれる画像データ(ジョブデータ)に係る画像が用紙Pに記録されるようヘッド80、及び搬送機構70を制御する(B15:ジョブ実行処理)。この後、ステップB19の処理に移る。
【0059】
一方、携帯端末100から受信したジョブが画像読取ジョブの場合(B13:NO,B16:YES)には、ステップB12において受信したジョブに含まれる読取設定データ(ジョブデータ)に従って、原稿に形成された画像を読み取り、画像データが生成されるようCIS96、及びA/Dコンバータ99を制御する(B17:ジョブ実行処理)。この後、ステップB19の処理に移る。
【0060】
また、携帯端末100から受信したジョブが記憶ジョブの場合(B13:NO,B16:NO)には、ステップB12において受信したジョブに含まれる画像データ又はアプリケーションデータ(ジョブデータ)を、フラッシュメモリ64におけるデータベース64aに記憶する(B18:ジョブ実行処理)。この後、ステップB19の処理に移る。
【0061】
ステップB19では、CPU61は、ジョブ完了通知をWFD通信にて携帯端末100に送信する。この後、CPU61は、携帯端末100とMFP200との間のWFD通信を切断する(B20)。以上で、
図7の動作フローを終了する。
【0062】
[装置間のデータ通信手順]
続いて、
図8のシーケンス図を参照しつつ、携帯端末100とMFP200との間におけるデータ通信手順について説明する。なお、
図8中の「ALT」は、分岐処理を示すフラグメントであり、「PAR」は並列処理を示すフラグメントである。
図8に示すように、ユーザが携帯端末100をMFP200のNFC読取面59に近接させることによりNFC通信が確立する(S1)。そして、携帯端末100は、ハンドオーバー要求をNFC通信にてMFP200に送信する(S2)。ハンドオーバー要求を受信したMFP200は、NFC通信にて、携帯端末100にハンドオーバー要求応答を送信する(S3)。以上により、携帯端末100とMFP200との間でWFD接続情報34a,63aが送受信されるので、WFD通信を確立することが可能となる。その後、携帯端末100が、ジョブ識別情報及びデータサイズ情報を含むジョブ情報、並びに通信デバイス情報をNFC通信にてMFP200に送信する(S4)。その後、MFP200は、受信したジョブ識別情報に基づいて、ジョブの種類を判断する(S5)。
【0063】
ステップS5の処理でジョブの種類が画像記録ジョブであると判断した場合には、MFP200は、携帯端末100から受信した通信デバイス情報及びデータサイズ情報、並びにMFP200の処理状況に基づいて、メンテナンス処理の開始時間を決定する(S6)。そして、MFP200は、決定された開始時間にメンテナンス処理を開始する(S7)。また、このステップS6及びS7の処理と並行して、ステップS8及びS9の処理が実行される。ステップS8の処理は、NFC通信により送受信されたWFD接続情報34a,63aに基づいて携帯端末100とMFP200との間でWFD通信を確立させる処理である。ステップS9の処理は、携帯端末100が、WFD通信にて、記録対象の画像データを含むジョブをMFP200に送信する処理である。そして、ステップS7及びS9のいずれの処理も完了したときに、MFP200は、受信した画像データに係る画像を用紙Pに記録する画像記録ジョブを実行する(S10)。このステップS10の処理が終了すると、ステップS14の処理に移る。
【0064】
一方で、ステップS5の処理でジョブの種類が画像読取ジョブ及び記憶ジョブの何れかであると判断した場合には、NFC通信により送受信されたWFD接続情報34a,63aに基づいて携帯端末100とMFP200との間のWFD通信を確立する(S11)。そして、携帯端末100が、WFD通信にて、送信対象のジョブデータを含むジョブをMFP200に送信する(S12)。ジョブを受信したMFP200は、当該ジョブに含まれるジョブデータに基づいて画像読取ジョブ及び記憶ジョブの何れかのジョブを実行する(S13)。このステップS13の処理が終了すると、ステップS14の処理に移る。
【0065】
ステップS14の処理では、MFP200が、WFD通信にて、ジョブ完了通知を携帯端末100に送信する。その後、携帯端末100とMFP200との間のWFD通信が切断される(S15)。
【0066】
以上、本実施形態によると、NFC通信が確立されたときに、携帯端末100からMFP200に対してジョブ識別情報が送信されるため、MFP200は、WFD通信が確立される前であっても、命令されたジョブの種類を判断することができる。その結果、メンテナンス処理が必要な画像記録ジョブと判断した場合にのみメンテナンス処理を開始することで、メンテナンス処理が不要に行われることを防止しつつ、画像記録ジョブが完了するまでの時間を短くすることができる。
【0067】
また、本実施形態によると、携帯端末100からMFP200に対して、NFC通信により携帯端末100の無線LANインターフェース16の通信能力や画像データのデータサイズ情報が送信され、MFP200において、これらの情報、及びMFP200の処理状況に基づいてメンテナンス処理の最適な開始時間が決定される。その結果、メンテナンス処理が終了した直後に画像記録ジョブが実行されることになるので、メンテナンス処理に伴う資源(インク)や電力消費量が多くなることを抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。従って、本発明の技術思想の範囲内において、上述の実施形態を組み合わせたり、一部の構成を変更したりしてもよい。例えば、上述の実施形態では、第1無線通信としてNFC通信を、第2無線通信としてWFD通信を採用し、NFC通信からWFD通信へのハンドオーバーを行っているが、これらに限るものではない。すなわち、通信距離が異なる2つの通信方式であればよく、他の通信方式としては、例えば、第2無線通信の通信方式が、アクセスポイント経由で通信を行う非ダイレクトのWiFi(登録商標)であってもよい。また、Bluetooth(登録商標)であってもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、NFC通信が確立したときにおいて、携帯端末100とMFP200との間で、双方向に、それぞれの装置に係るWFD接続情報の送受信がおこなわれていたが、一方の装置から他方の装置への一方向にのみWFD接続情報が送信されるように構成されていてもよい。例えば、NFC通信が確立したときにおいて、携帯端末100からMFP200対して、携帯端末100に係るWFD接続情報のみNFC通信にて送信されるように構成されていてもよい。この場合、携帯端末100がMFP200を特定するために必要なMFP200の固有情報は、WFD通信にてMFP200から携帯端末100に送信すればよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、画像記録ジョブのみならず画像読取ジョブ及び記憶ジョブの場合にも、ジョブ識別情報と共に、データサイズ情報及び通信デバイス情報がNFC通信により携帯端末100からMFP200に対して送信されるように構成されているが、画像記録ジョブの場合のみこれらの情報が送信されるように構成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、携帯端末100から送信されたデータサイズ情報及び通信デバイス情報に加えて、MFP200の処理状況にも基づいて、メンテナンス処理の開始時間を決定しているが、データサイズ情報及び通信デバイス情報のみに基づいてメンテナンス処理の開始時間を決定してもよく、また、データサイズ情報及び通信デバイス情報の何れか一方のみに基づいてメンテナンス処理の開始時間を決定してもよい。また、データサイズ情報及び通信デバイス情報に加えて、画像データ(ジョブデータ)の解像度や、画像記録時のカラー/モノクロや画像品質等の画像記録設定情報もNFC通信により携帯端末100からMFP200に対して送信し、これらの情報に基づいてメンテナンス処理の開始時間を決定してもよい。また、MFP200の無線LANインターフェース55の通信能力に基づいてメンテナンス処理の開始時間を決定してもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、先行処理がメンテナンス処理であるが、特にこれに限定されるものではなく、ジョブの実行に先立って実行する必要がある処理であればよい。また、上述の実施形態では、メンテナンス処理は、パージ処理、フラッシング処理、及びパージ処理であったが、特にこれに限定されるものではなく、画像記録機構50をメンテナンスするための処理であればよい。
また、上述の実施形態では、先行処理が必要な第1ジョブは画像記録ジョブであり、先行処理が不要な第2ジョブは画像読取ジョブ及び記憶ジョブであったが、特にこれに限定されるものではない。
【0072】
また、上述の実施形態では、画像記録機構50は、インクジェット方式で用紙Pに画像を記録する機構であったが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、電子写真方式で用紙Pに画像を記録する機構であってもよい。以下、電子写真方式の画像記録機構の一例を、
図9を参照しつつ説明する。
図9に示すように、画像記録機構150は、タンデム方式のカラーレーザ機構であり、搬送ベルト機構160、4つのトナー像形成ユニット170、及び定着装置180を備えている。搬送ベルト機構160は、用紙トレイ75から給紙された用紙Pを搬送方向に搬送するものであり、駆動ローラ161、従動ローラ162、及びこれらの両ローラ161,162間に架け渡されるように巻回された無端状の搬送ベルト163を備えている。駆動ローラ161に対して、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで、搬送ベルト163の外周面に載置された用紙Pは、
図9右方へと搬送される。
【0073】
トナー像形成ユニット170各々は、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色にそれぞれ対応し、用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔隔てて並設されている。搬送ベルト163によって搬送されてきた用紙Pが4つのトナー像形成ユニット170のすぐ下方を通過する際に、各トナー像形成ユニット170は用紙Pの上面に各色のトナー像を転写する。
トナー像形成ユニット170各々は、それぞれ略同一の構成を有し、それぞれに、感光体ドラム171、帯電器172、レーザ光照射手段173、現像器174、転写ローラ175、及び清掃ユニット176を備えている。
【0074】
感光体ドラム171は、形成される画像を担持するものである。帯電器172は、感光体ドラム171の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザ光照射手段173は、画像データに応じて、帯電器172によって帯電した感光体ドラム171の表面を露光して、該感光体ドラム171の表面に静電潜像を形成する。現像器174は、感光体ドラム171の表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化する。転写ローラ175は、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されており、搬送ベルト機構160によって搬送された用紙Pに、形成されたトナー像を転写させる。清掃ユニット176は、現像器174での現像処理、および、感光体ドラム171に形成された画像の転写後に、感光体ドラム171の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0075】
トナー像形成ユニット170各々によりトナー像が転写された用紙P(未定着トナーが担持された用紙P)は、搬送ベルト機構160によってさらに
図1右方に搬送され、定着装置180に到達する。定着装置180は、加圧ローラ181と、ハロゲンヒータ182aを内蔵した加熱ローラ182とを有しており、これらローラ181,182により用紙Pに適度な熱と圧力とを与えることで、用紙Pに担持された未定着トナーを溶融して熱定着させる。この後、画像が形成された用紙Pは、搬送機構70によってさらに搬送され、載置部85に載置される
【0076】
ここで、画像記録機構150により用紙Pに画像を記録した際に、用紙P上において各色のドットが形成される位置がずれてしまい、それにより所謂色ずれが生じることがある。そこで、本実施形態では、画像記録ジョブを実行するに先立って色ずれ補正処理を行う。色ずれ補正処理では、制御装置60は、トナー像形成ユニット170及び搬送ベルト機構160を制御して搬送ベルト163の表面に色ずれ補正用のパッチを印刷させ、検出位置においてパッチが形成された範囲の搬送ベルト163の反射光の強度を光電センサ等(不図示)によって検出する。そして、制御装置60は、検出された反射光強度が予め定められた閾値を超えて大きくなった範囲の搬送ベルト163の移動方向における位置が基準の位置と一致するように、画像記録機構150の画像記録条件を変更する。これをトナーの色毎に行うことにより、色ずれを補正することができる。なお。これは色ずれ補正の一例であり、色ずれ補正は種々の方法で行うことができる。
【0077】
また、上述したように、定着装置180は、画像記録ジョブを実行する際には、用紙Pに適度な熱を加えるために、加熱ローラ182の表面温度は所定温度以上である必要がある。そこで、本実施形態では、画像記録ジョブを実行するに先立って、ハロゲンヒータ182aを制御して、加熱ローラ182の表面温度を所定温度以上まで上昇させる加熱処理を行う。なお、この実施形態では、画像記録機構150をメンテナンスするためのメンテナンス処理は、上記色ずれ補正処理及び加熱処理であり、色ずれ補正処理に係るメンテナンス手段はトナー像形成ユニット170及び搬送ベルト機構160に相当し、加熱処理に係るメンテナンス手段はハロゲンヒータ182aに相当する。
【0078】
また、上述の実施形態に開示されている処理は、単一のCPU、複数のCPU、ASICなどのハードウェア、又はそれらの組み合わせで実行されてもよい。また、CPUは、一部の処理をOSに従い行ってもよい。また、実施形態に開示されている処理は、その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体、又は方法等の種々の態様で実現することができる。
また、画像処理装置は、画像処理機能を備えるものであればよく、MFP200の他、コピー機、プリンタ、スキャナ、FAX装置であってもよい。