特許第6229523号(P6229523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229523自車走行位置特定装置及び自車走行位置特定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229523
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】自車走行位置特定装置及び自車走行位置特定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20171106BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G09B29/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-24297(P2014-24297)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-152346(P2015-152346A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】式町 健
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−32500(JP,A)
【文献】 実開平6−7009(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0320121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C21/00−21/36
23/00−25/00
G09B23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を計算する位置計算手段(6)と、
前記車両の現在位置を地図データの道路上にマップマッチングし、マップマッチングの基準軌跡を特定するマップマッチング手段(7)と、
推測絶対軌跡を含む推測絶対位置の予測誤差範囲を特定する第1の範囲特定手段(8)と、
前記マップマッチング手段が前記車両の現在位置を道路上にマップマッチングし続けている距離が所定距離以上であることを条件とし、前記マップマッチングの基準軌跡と前記推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する第2の範囲特定手段(9)と、
前記マップマッチングの基準軌跡を、前記マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正する補正手段(10)と、
前記補正手段による補正後の前記マップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定する走行位置特定手段(11)と、を備えたことを特徴とする自車走行位置特定装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載した自車走行位置特定装置において、
前記第2の範囲特定手段は、前記マップマッチング手段が前記車両の現在位置を道路上にマップマッチングし続けている距離が所定距離以上であり、且つ当該マップマッチングし続けている距離が所定距離に達するまでに前記車両が車線変更しなかったことを条件とし、前記マップマッチングの基準軌跡と前記推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定することを特徴とする自車走行位置特定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した自車走行位置特定装置において、
前記マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であるか否かを判定する重なり判定手段(12)と、
前記マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる唯一の道路であると前記重なり判定手段により判定された道路を走行道路として特定する走行道路特定手段(13)と、を備えたことを特徴とする自車走行位置特定装置。
【請求項4】
マイクロコンピュータを有する制御手段(3)に、
車両の現在位置を計算する第1の手順と、
前記第1の手順により計算した前記車両の現在位置を道路上にマップマッチングし、マップマッチングの基準軌跡を特定する第2の手順と、
推測絶対軌跡を含む推測絶対位置の予測誤差範囲を特定する第3の手順と、
前記第2の手順により前記車両の現在位置を道路上にマップマッチングし続けている距離が所定距離以上であることを条件とし、前記第2の手順により特定した前記マップマッチングの基準軌跡と前記第3の手順により特定した前記推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する第4の手順と、
前記第2の手順により特定したマップマッチングの基準軌跡を、前記第4の手順により特定した前記マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正する第5の手順と、
前記第5の手順により補正した補正後の前記マップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定する第6の手順と、を実行させるための自車走行位置特定プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載した自車走行位置特定プログラムにおいて、
前記第4の手順は、前記第2の手順により前記車両の現在位置を道路上にマップマッチングし続けている距離が所定距離以上であり、且つ当該マップマッチングし続けている距離が所定距離に達するまでに前記車両が車線変更しなかったことを条件とし、前記第2の手順により特定した前記マップマッチングの基準軌跡と前記第3の手順により特定した前記推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する自車走行位置特定プログラム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載した自車走行位置特定プログラムにおいて、
前記第4の手順により特定したマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であるか否かを判定する第6の手順と、
前記マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる唯一の道路であると前記第6の手順により判定した道路を走行道路として特定する第7の手順と、を実行させるための自車走行位置特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上の自車走行位置を特定する自車走行位置特定装置及び自車走行位置特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地図上の自車走行位置を特定する自車走行位置特定装置が供されている。例えば特許文献1には、高速道路の本線から分岐する分岐路が整備された道路を走行する場合に、車両の進行方向と道路の線形を示す方向との角度差を判定し、自車走行位置が本線上であるのか分岐路上であるのかを特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−156034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、本線と分岐路との角度差の最低基準を15度としている。即ち、車両の進行方向と道路の線形を示す方向との角度差が15度未満であると判定すると、自車走行位置が本線上であると特定し、車両が本線を走行し続けていると特定する。一方、車両の進行方向と道路の線形を示す方向との角度差が15度以上であると判定すると、自車走行位置が分岐路上であると特定し、車両が本線から分岐路へ進入したと特定する。
【0005】
しかしながら、現実的には本線と分岐路との角度差が15度未満で整備されている箇所も存在する。そのため、複数の車線が整備されている本線では、車両の進行方向と道路の線形を示す方向との角度差が15度未満である場合に、本線上での車線変更であるのか本線から分岐路への分岐であるのかを正確に判定することができない虞がある。このような問題に対し、例えば車両前方を撮影する撮影装置等の車両外部の情報を取得するための設備を設け、その取得した車両外部の情報を解析し、自車走行位置を特定する手法も想定される。ところが、これでは車両外部の情報を取得するための設備が必要となり、構成が複雑化したりコスト高になったりするという新たな問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両外部の情報を取得するための設備を必要とせず、地図上の自車走行位置を精度良く特定することができる自車走行位置特定装置及び自車走行位置特定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、マップマッチング手段は、車両の現在位置が位置計算により計算されると、その車両の現在位置を道路上にマップマッチングし、マップマッチングの基準軌跡を特定する。第1の範囲特定手段は、推測絶対軌跡を含む推測絶対位置の予測誤差範囲を特定する。第2の範囲特定手段は、マップマッチング手段が車両の現在位置を道路上にマップマッチングし続けている距離が所定距離以上であることを条件とし、マップマッチングの基準軌跡と推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する。補正手段は、マップマッチングの基準軌跡を、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正する。走行位置特定手段は、補正手段による補正後のマップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定する。
【0008】
即ち、マップマッチングの基準軌跡が推測絶対軌跡に対して車両の進行方向の何れの方向(左右方向)にずれているかを特定し、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する。そして、マップマッチングの基準軌跡を、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正し、補正後のマップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定する。このようにマップマッチングの基準軌跡が推測絶対軌跡に対してずれている方向を特定し、マップマッチングの基準軌跡を、その特定した方向に補正することで、車両の走行位置を精度良く特定することができる。このとき、例えば車両前方を撮影する撮影装置等の車両外部の情報を取得するための設備が必要となることもなく、地図上の自車走行位置を精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図
図2】フローチャート(その1)
図3】フローチャート(その2)
図4】フローチャート(その3)
図5】フローチャート(その4)
図6】推測絶対位置の予測誤差範囲を示す図(その1)
図7】マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を示す図(その1)
図8】推測絶対位置の予測誤差範囲を示す図(その2)
図9】マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を示す図(その2)
図10】推測絶対位置の予測誤差範囲を示す図(その3)
図11】マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を示す図(その3)
図12】補正前及び補正後のマップマッチングの基準軌跡を示す図
図13】マップマッチングの基準軌跡の推移を示す図(その1)
図14】マップマッチングの基準軌跡の推移を示す図(その2)
図15】マップマッチングの基準軌跡の推移を示す図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。自車走行位置特定装置1は、車両(自動車)に搭載されている。自車走行位置特定装置1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)測位部2と、制御部3(制御手段)と、地図データ格納部4とを有する。GNSS測位部2は、GPS(Global Positioning System)衛星からGNSSアンテナ5により受信されたGPS信号から各種のパラメータを抽出して緯度経度情報を計算し、その計算した緯度経度情報を制御部3に出力する。
【0011】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部3は、ROMに記憶されている制御プログラム(自車走行位置特定プログラムを含む)をCPUが実行することで、自車走行位置特定装置1の動作全般を制御する。制御部3は、実行する機能に応じて、位置計算部6(位置計算手段)と、マップマッチング部7(マップマッチング手段)と、第1の範囲特定部8(第1の範囲特定手段)と、第2の範囲特定部9(第2の範囲特定手段)と、補正部10(補正手段)と、走行位置特定部11(走行位置特定手段)と、重なり判定部12(重なり判定手段)と、走行道路特定部13(走行道路特定手段)と、表示制御部14とを有する。
【0012】
ジャイロセンサ15は、車両の方位を検知し、その検知した車両の方位を示す検知信号を制御部3に出力する。車速パルス出力部16は、車速パルスを示す車速パルス信号を制御部3に出力する。位置計算部6は、GNSS測位部2から入力した緯度経度情報、ジャイロセンサ15から入力した検知信号、車速パルス出力部16から入力した車速パルス信号に基づいて、車両の現在位置、速度及び方位を計算する。尚、位置計算部6は、車両に与えられた加速度を検知するGセンサを併用し、Gセンサにより検知された加速度をも用いて、車両の現在位置、速度及び方位を計算しても良い。
【0013】
マップマッチング部7は、地図データ格納部4から地図データを読出し、位置計算部6により計算された車両の現在位置を地図データの道路上にマップマッチングし、マップマッチングの基準軌跡を特定する。地図データ格納部4から読出される地図データには、道路種別(高速道路や一般道路等の種別)、道路の車線数、交差点等の各種情報が含まれている。
【0014】
第1の範囲特定部8は、GNSS測位部2から入力した緯度経度情報、ジャイロセンサ15から入力した検知信号、車速パルス出力部16から入力した車速パルス信号に基づいて推測絶対軌跡(地図データとは無関係な絶対的な軌跡)を特定する。この場合、マップマッチング部7におけるマップマッチングの精度が相対的に高ければ、マップマッチングの基準軌跡と推測絶対軌跡とのずれは相対的に小さくなる。一方、マップマッチング部7におけるマップマッチングの精度が相対的に低ければ、マップマッチングの基準軌跡と推測絶対軌跡とのずれは相対的に大きくなる。又、第1の範囲特定部8は、その特定した推測絶対軌跡を含む推測絶対位置の予測誤差範囲を特定する。推測絶対位置の予測誤差範囲は、推測絶対軌跡の先頭を中心とし、且つ第1の設定距離を半径とする円である。
【0015】
第2の範囲特定部9は、マップマッチング部7により特定されたマップマッチングの基準軌跡と、第1の範囲特定部8により特定された推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する。マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲は、マップマッチングの基準軌跡の先頭を中心とし、且つ上記した第1の設定距離よりも短い第2の設定距離を半径とする円である。即ち、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲は、上記した推測絶対位置の予測誤差範囲よりも狭い範囲である。又、この場合、第2の範囲特定部9は、車両の現在位置がマップマッチングされている道路の幅員に依存して第2の設定距離を決定する。即ち、第2の範囲特定部9は、例えば車両の現在位置がマップマッチングされている道路が片側4車線の道路であれば、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲が2車線に重なるように第2の設定距離を決定する。
【0016】
補正部10は、マップマッチング部7により特定されたマップマッチングの基準軌跡を、第2の範囲特定部9により特定されたマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正する。即ち、補正部10は、例えば車両の現在位置がマップマッチングされている道路が片側4車線の道路であり、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を車両の進行方向の右寄りの2車線に重なるように特定していれば、マップマッチングの基準軌跡を、その2車線の中心を通るように補正する。走行位置特定部11は、補正部10による補正後のマップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定する。
【0017】
重なり判定部12は、補正部10による補正後のマップマッチングの基準軌跡を含む基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であるか否かを判定する。走行道路特定部13は、補正後のマップマッチングの基準軌跡を含む基準位置の予測誤差範囲に重なる唯一の道路であると重なり判定部12により判定されると、その唯一の道路を走行道路として特定する。表示制御部14は、地図データ格納部4から読出した地図データの地図上に車両の現在位置を示す現在位置マークや走行軌跡等を表示装置17に表示する制御を行う。
【0018】
このように構成されている自車走行位置特定装置1は、例えば車両のACC(アクセサリ)スイッチに連動して起動状態と停止状態とを切換える。即ち、制御部3は、ACCスイッチのオフからオンへの切換を判定すると、自車走行位置特定装置1を停止状態から起動状態へと切換え、ACCスイッチのオンからオフへの切換を判定すると、自車走行位置特定装置1を起動状態から停止状態へと切換える。
【0019】
次に、上記した構成の作用について、図2から図15も参照して説明する。
制御部3は、自車走行位置特定装置1の起動状態では、本発明に関連し、マップマッチング処理、推測絶対位置の予測誤差範囲特定処理、マップマッチングの基準軌跡補正処理、走行道路特定処理をそれぞれ所定周期で実行する。以下、それぞれの処理を順次説明する。ここでは、車両が高速道路の本線を走行する場合を説明する。
【0020】
(1)マップマッチング処理(図2参照)
制御部3は、マップマッチング処理を開始すると、GNSS測位部2から入力した緯度経度情報、ジャイロセンサ15から入力した検知信号、車速パルス出力部16から入力した車速パルス信号に基づいて、車両の現在位置、速度及び方位を位置計算部6により計算する(S1、第1の手順)。次いで、制御部3は、地図データ格納部4から地図データを読出し、車両の現在位置を地図データの道路上にマップマッチング部7によりマップマッチングする。そして、制御部3は、マップマッチングの基準軌跡を特定し(S2、第2の手順)。マップマッチング処理を終了する。
【0021】
(2)推測絶対位置の予測誤差範囲特定処理(図3参照)
制御部3は、推測絶対位置の予測誤差範囲特定処理を開始すると、GNSS測位部2から入力した緯度経度情報、ジャイロセンサ15から入力した検知信号、車速パルス出力部16から入力した車速パルス信号に基づいて推測絶対軌跡を第1の範囲特定部8により特定する(S11)。次いで、制御部3は、その特定した推測絶対軌跡を含む推測絶対位置の予測誤差範囲を第1の範囲特定部8により特定し(S12、第3の手順)、推測絶対位置の予測誤差範囲特定処理を終了する。
【0022】
(3)マップマッチングの基準軌跡補正処理(図4参照)
制御部3は、マップマッチングの基準軌跡補正処理を開始すると、上記した(1)マップマッチング処理で地図データ格納部4から読出している地図データの道路種別を判定し、車両が高速道路の本線を走行中であるか否かをマップマッチング部7により判定する(S21)。制御部3は、車両が本線を走行中であると判定すると(S21:YES)、上記した(1)のマップマッチング処理でマップマッチングしている道路が唯一であるか否かをマップマッチング部7により判定する(S22)。
【0023】
制御部3は、マップマッチングしている道路が唯一であると判定すると(S22:YES)、そのマップマッチングし続けている距離が所定距離(例えば数百メートル)以上であるか否かをマップマッチング部7により判定する(S23)。この場合、制御部3は、判定基準となる所定距離を車速に依存しない固定値としても良いし車速に依存する可変値としても良い。制御部3は、判定基準となる所定距離を車速に依存する可変値とする場合には、車速が相対的に速い場合には所定距離を相対的に長く決定し、車速が相対的に遅い場合には所定距離を相対的に短く決定しても良い。
【0024】
制御部3は、マップマッチングし続けている距離が所定距離以上であると判定すると(S23:YES)、そのマップマッチングし続けている距離が所定距離に達するまでに車線変更が発生していなかったか否かをマップマッチング部7により判定する(S24)。
【0025】
制御部3は、車線変更が発生していなかったと判定すると(S24:YES)、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定済みであるか否かを判定する(S25)。制御部3は、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定済みでないと判定すると(S25:NO)、マップマッチングの基準軌跡と推測絶対位置の予測誤差範囲との関係に基づいてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を第2の範囲特定部9により特定する(S26、第4の手順)。
【0026】
具体的に説明すると、制御部3は、図6に示すように、マップマッチングの基準軌跡から車両の進行方向の右側にずれた位置(本線から右側に外れている又は本線の右側に寄っている位置)に推測絶対軌跡を特定した場合には、図7に示すように、本線の4車線のうち右寄りの2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定する。又、制御部3は、図8に示すように、マップマッチングの基準軌跡から車両の進行方向の左側にずれた位置(本線から左側に外れている又は本線の左側に寄っている位置)に推測絶対軌跡を特定した場合には、図9に示すように、本線の4車線のうち左寄りの2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定する。又、制御部3は、図10に示すように、マップマッチングの基準軌跡から車両の進行方向の左右の何れかにずれているが、本線の中央側に寄っている位置に推測絶対軌跡を特定した場合には、図11に示すように、本線の4車線のうち中央の2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定する。即ち、制御部3は、車両の現在位置がマップマッチングされている道路の幅員(車線数)に合わせてマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定する。
【0027】
次いで、制御部3は、マップマッチングの基準軌跡を、その特定したマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正部10により補正する(S27、第5の手順)。具体的に説明すると、制御部3は、上記した図7に示したように本線の4車線のうち右寄りの2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定した場合には、図12に示すように、そのマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲の中心を通るようにマップマッチングの基準軌跡を補正する(車両の進行方向の右側にずらす)。制御部3は、図9に示したように本線の4車線のうち左寄りの2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定した場合も同様である。更に、制御部3は、図11に示したように中央の2車線の範囲をマップマッチングの基準位置の予測誤差範囲として特定した場合も同様である。
【0028】
そして、制御部3は、補正後のマップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を走行位置特定部11により特定し(S28、第6の手順)、マップマッチングの基準軌跡補正処理を終了する。尚、制御部3は、車両が本線を走行中でないと判定したり(S21:NO)、マップマッチングしている道路が唯一でないと判定したり(S22:NO)、マップマッチングし続けている距離が所定距離以上でないと判定したりすると(S23:NO)、マップマッチングの基準軌跡を補正することなくマップマッチングの基準軌跡補正処理を終了する。又、制御部3は、マップマッチングし続けている距離が所定距離に達するまでに車線変更が発生したと判定したり(S24:NO)、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定済みであると判定したりすると(S25:YES)、この場合も、マップマッチングの基準軌跡を補正することなくマップマッチングの基準軌跡補正処理を終了する。
【0029】
(4)走行道路特定処理(図5参照)
制御部3は、走行道路特定処理を開始すると、走行道路の候補が複数存在しているか否かを判定する(S31)。この場合、制御部3は、上記した(3)マップマッチングの基準軌跡補正処理で特定した車両の走行位置と、地図データ格納部4から読出している地図データとに基づいて、車両が道路の分岐箇所を走行する可能性を判定することで、走行道路の候補が複数存在しているか否かを判定する。
【0030】
制御部3は、車両が道路の分岐箇所を走行する可能性が相対的に高く、走行道路の候補が複数存在していると判定すると(S31:YES)、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であるか否かを重なり判定部13により判定する(S32、第6の手順)。制御部3は、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であると判定すると(S32:YES)、その唯一の道路であると判定した道路を走行道路として特定し(S33、第7の手順)、走行道路特定処理を終了する。
【0031】
具体的に説明すると、制御部3は、車両が道路上を進行することに伴い、図13に示すように、マップマッチングの基準軌跡を延長し、マップマッチングの基準軌跡の予測誤差範囲を特定し続ける。この場合、制御部3は、マップマッチングの基準軌跡の予測誤差範囲として図14中「A」の範囲を特定するまでは、その予測誤差範囲に重なる道路が唯一である(本線のみに重なる)ので、その唯一の道路(本線)を走行道路として特定する。
【0032】
これに対し、制御部3は、車両が道路上を更に進行したことに伴い、マップマッチングの基準軌跡の予測誤差範囲として図14中「B」の範囲を特定すると、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一でない(本線と分岐路とに重なる)ので、この時点では走行道路を特定しなくなる。そして、制御部3は、車両が道路上を更に進行したことに伴い、マップマッチングの基準軌跡の予測誤差範囲として図14中「C」の範囲を特定すると、その予測誤差範囲に重なる道路が唯一である(分岐路のみに重なる)ので、その唯一の道路(分岐路)を走行道路として特定する。即ち、制御部3は、車両が本線から分岐路へ進入したことを特定する。尚、制御部3は、マップマッチングの基準軌跡の予測誤差範囲を図15に示すように特定し続けた場合には、その予測誤差範囲に重なる道路が唯一であり続ける(本線のみに重なり続ける)ので、その唯一の道路(本線)を走行道路として特定し続ける。即ち、制御部3は、車両が本線を走行し続けていることを特定する。
【0033】
尚、制御部3は、車両が道路の分岐箇所を走行する可能性が相対的に低く、走行道路の候補が複数存在していない(走行道路の候補が唯一である)と判定すると(S31:NO)、走行道路を特定することなく走行道路特定処理を終了する。又、制御部3は、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一でないと判定すると(S32:NO)、この場合も、走行道路を特定することなく走行道路特定処理を終了する。
【0034】
以上に説明したように本実施形態によれば、自車走行位置特定装置1において、マップマッチングの基準軌跡が推測絶対軌跡に対して車両の進行方向の何れの方向(左右方向)にずれているかを特定し、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定するようにした。そして、マップマッチングの基準軌跡を、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に合わせて補正し、補正後のマップマッチングの基準軌跡に基づいて車両の走行位置を特定するようにした。これにより、例えば車両前方を撮影する撮影装置等の車両外部の情報を取得するための設備を必要とせずに、車両の走行位置を精度良く特定することができる。
【0035】
又、マップマッチングし続けている距離が所定距離に達するまでに車両が車線変更すると、その影響により車両の走行位置を特定する精度の低下が懸念されるが、車両が車線変更しなかったことを条件とし、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲を特定するようにした。これにより、車両が車線変更したことによる車両の走行位置を特定する精度の低下を未然に回避することができる。
【0036】
又、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲に重なる道路が唯一であるときに、その唯一の道路を走行道路として特定するようにした。これにより、車両の走行位置を特定した上で、車両の走行道路を精度良く特定することができ、車両が本線から分岐路へ進入したのか本線を走行し続けているのかを精度良く特定することができる。
【0037】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
第2の範囲特定部9において、マップマッチングの基準位置の予測誤差範囲をどのように特定しても良い。即ち、マップマッチングの基準軌跡を補正する方向(道路の右寄り、左寄り、中央寄り等)を特定可能であれば、車線単位で特定しなくとも、距離単位(例えば道路の中央線を基準とした幅方向の距離)で特定しても良い。
【符号の説明】
【0038】
図面中、1は自車走行位置特定装置、3は制御部(制御手段)、6は位置計算部(位置計算手段)、7はマップマッチング部(マップマッチング手段)、8は第1の範囲特定部(第1の範囲特定手段)、9は第2の範囲特定部(第2の範囲特定手段)、10は補正部(補正手段)、11は走行位置特定部(走行位置特定手段)、12は重なり判定部(重なり判定手段)、13は走行道路特定部(走行道路特定手段)である。
図1
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