(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関に備えられ、進角室あるいは遅角室に対する流体の給排によって弁開閉時期を制御可能であり、前記弁開閉時期を最進角タイミングと最遅角タイミングとの間の中間タイミングで固定するよう、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を中間ロック位相で固定・解除する操作を前記流体の給排によって行うロック機構を備えた弁開閉時期制御装置に接続可能であり、
弁ケースと、
当該弁ケースの一端部から他端部まで往復移動可能に前記弁ケースに内装されたスプールと、
当該スプールを駆動操作するソレノイドとを備えると共に、
前記弁ケースには、
外部の流体圧ポンプから吐出された前記流体が供給されるメインポートと、前記メインポートに流入した流体が前記弁開閉時期制御装置の進角室あるいは遅角室のそれぞれに流入する又は進角室あるいは遅角室からの流出を許容する第1ポート及び第2ポートと、
前記弁開閉時期制御装置から前記第1ポートあるいは前記第2ポートを介して前記弁ケースに戻された前記流体が排出されることを許容する第3ポートと、
前記流体圧ポンプからの前記流体が供給されるサブポートと、
前記サブポートから吐出された流体が前記ロック機構に流入する又は前記ロック機構から流出されることを許容する第4ポートと、
前記スプールが前記弁ケースの一端部または他端部に位置するとき、前記ロック機構から前記第4ポートを介して戻された流体を排出して、前記相対回転位相を前記中間ロック位相で固定可能に前記ロック機構を維持する第5ポートとを備えており、
前記スプールが前記弁ケースの一端部および他端部の何れか一方の近傍にあって、
前記メインポートが前記第1ポートおよび前記第2ポートのうち何れか一方と連通し、前記第1ポートおよび前記第2ポートのうち何れか他方が前記第3ポートと連通するとき、前記スプールが前記弁ケースの端部に近づくほど前記第3ポートの開口面積が小さくなるように構成され、
前記スプールが前記弁ケースの一端部および他端部の何れか一方にあるとき、前記第3ポートの開口面積は、前記第1ポートおよび前記第2ポートの何れか一方であって前記第3ポートに連通するポートの開口面積よりも小さくなるように構成されているソレノイドバルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のソレノイドバルブは、スプールが弁ケースの端部にあるとき、ロック機構から戻された流体を第5ポートから排出して、ロック機構を中間ロック可能状態に維持すると共に、進角室及び遅角室から弁ケースに戻された流体を第3ポートから排出する。
したがって、ロック機構が中間ロック可能状態にあるときは、進角室あるいは遅角室の流体を利用して駆動側回転体と従動側回転体とを中間ロック位相に相対回転させることができない。
このため、相対回転位相を中間ロック位相で固定するときは、ロック機構を中間ロック可能状態に維持しつつ、内燃機関を停止するときにカムシャフトに作用するカム変動トルクによって駆動側回転体と従動側回転体とを相対回転させて、中間ロック位相に相対回転したタイミングで固定するように構成してある。
また、スプールの一方の端部に向けた移動で、進角室に流体を供給しながら遅角室から流体を排出する進角制御動作に続いて、ロック機構の流体をロック時に弁ケースに戻す中間ロック可能状態に移行する。
【0006】
したがって、上記従来のソレノイドバルブを接続してある弁開閉時期制御装置は、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を中間ロック位相で固定するときに、カム変動トルクによる相対回転位相の変位速度が速い場合は、中間ロック位相に相対回転しても、ロック機構により中間ロック位相で固定される前に相対回転位相が中間ロック位相を越えて変位してしまい、中間ロック位相で固定できないおそれがある。
また、スプールの一方の端部に向けた一連の移動で進角制御動作から中間ロック可能状態に移行するに伴って、進角室及び遅角室からの流体排出用の流路断面積が大きくなるので、相対回転位相の変位速度が速くなり、このときも中間ロック位相を越えて変位
して中間ロック位相で固定できないおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転が中間ロック位相で確実に固定されるようにロック機構を作動させることができるソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるソレノイドバルブの特徴構成は、内燃機関に備えられ、進角室あるいは遅角室に対する流体の給排によって弁開閉時期を制御可能であり、前記弁開閉時期を最進角タイミングと最遅角タイミングとの間の中間タイミングで固定するよう、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を中間ロック位相で固定・解除する操作を前記流体の給排によって行うロック機構を備えた弁開閉時期制御装置に接続可能であり、弁ケースと、当該弁ケースの一端部から他端部まで往復移動可能に前記弁ケースに内装されたスプールと、当該スプールを駆動操作するソレノイドとを備えると共に、前記弁ケースには、外部の流体圧ポンプから吐出された前記流体が供給されるメインポートと、前記メインポートに流入した流体が前記弁開閉時期制御装置の進角室あるいは遅角室のそれぞれに流入する又は進角室あるいは遅角室からの流出を許容する第1ポート及び第2ポートと、前記弁開閉時期制御装置から前記第1ポートあるいは前記第2ポートを介して前記弁ケースに戻された前記流体が排出されることを許容する第3ポートと、前記流体圧ポンプからの前記流体が供給されるサブポートと、前記サブポートから吐出された流体が前記ロック機構に流入する又は前記ロック機構から流出されることを許容する第4ポートと、前記スプールが前記弁ケースの一端部または他端部に位置するとき、前記ロック機構から前記第4ポートを介して戻された流体を排出して、前記相対回転位相を前記中間ロック位相で固定可能に前記ロック機構を維持する第5ポートとを備えており、前記スプールが前記弁ケースの一端部および他端部の何れか一方の近傍にあって、前記メインポートが前記第1ポートおよび前記第2ポートのうち何れか一方と連通し、前記第1ポートおよび前記第2ポートのうち何れか他方が前記第3ポートと連通するとき、前記スプールが前記弁ケースの端部に近づくほど前記第3ポートの開口面積が小さくなるように構成
され、前記スプールが前記弁ケースの一端部および他端部の何れか一方にあるとき、前記第3ポートの開口面積は、前記第1ポートおよび前記第2ポートの何れか一方であって前記第3ポートに連通するポートの開口面積よりも小さくなるように構成されている点にある。
【0008】
本構成のソレノイドバルブは、スプールが弁ケースの一端部および他端部の何れか一方の近傍にあって、メインポートが第1ポートおよび前記第2ポートのうち何れか一方と連通し、第1ポートおよび第2ポートのうち何れか他方が第3ポートと連通するとき、スプールが弁ケースの端部に近づくほど第3ポートの開口面積が小さくなるように構成してある。
【0009】
このように、ロック機構を中間ロック可能な状態にしつつ、スプールが弁ケースの端部に近づくほど第3ポートの開口面積を小さくすることで、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相が中間ロック位相に変位する速度を低下させることができる。
これにより、ロック機構による固定操作が行われる前に相対回転位相が中間ロック位相を越えて変位する事態を防止することができ、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転が中間ロック位相で確実に固定されるようにロック機構を作動させることができる。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記スプールに環状溝が形成され、前記第1ポートあるいは前記第2ポートが前記弁ケースの筒状壁部のうち周方向の一部に開口して、前記スプールの位置に応じて前記環状溝に連通可能であり、前記第3ポートが、前記弁ケースの筒状壁部のうち前記第1ポートおよび前記第2ポートが開口して
いる部位とはスプールの移動方向で異なる位置に開口すると共に、前記スプールの位置に応じて前記環状溝と連通可能であり、前記弁ケースに対して前記スプールが往復移動するとき、前記第1ポートあるいは前記第2ポートに対する前記環状溝の開口面積の変化量と、前記第3ポートに対する前記環状溝の開口面積の変化量とが相反するように構成してある点にある。
【0011】
例えば、スプールを弁ケースの一方の端部に向けて移動させるとき、メインポートを第1ポートに連通させ、第2ポートを第3ポートに連通させて、駆動側回転体と従動側回転体とを迅速に相対回転させる。
この後、スプールを弁ケースの端部に向けて更に移動させることにより、ロック機構から第4ポートを介して戻された流体を排出して、相対回転位相を中間ロック位相で固定可能にロック機構を維持する。
このとき、第2ポートに対する環状溝の開口面積は増大するものの、第3ポートに対する環状溝の開口面積は減少する。
これにより、第2ポートから第3ポートを通して排出する流体流量が減少し、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転速度が低下して中間ロック位相に移行し易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1〜
図4に示すように、内燃機関としての自動車用エンジンEに備えられ、吸気バルブVaの弁開閉時期を制御する弁開閉時期制御装置Aと、弁開閉時期制御装置Aの作動を油圧により制御するソレノイドバルブSVと、ソレノイドバルブSV及びエンジンEの始動/停止を制御するようにECUとして構成されるエンジン制御ユニット10とを備えた内燃機関制御システムが構成されている。
【0014】
エンジンE(内燃機関の一例)は、乗用車などの車両に備えられるものである。このエンジンEは、下部にクランクシャフト1を備え、シリンダブロック2に形成されたシリンダボアの内部にピストン3を収容し、このピストン3とクランクシャフト1とをコネクティングロッド4で連結した4サイクル型に構成されている。
【0015】
また、エンジンEの上部には吸気カムシャフト5と排気カムシャフトとを備え、クランクシャフト1の駆動力で駆動される油圧ポンプP(流体圧ポンプの一例)を備えている。
油圧ポンプPは、エンジンEのオイルパンに貯留される潤滑油を、供給流路8を介して作動油(流体の一例)としてソレノイドバルブSVに供給する。また、エンジンEにはクランクシャフト1の回転速度(単位時間の回転数)を検知する回転速度センサ1Sと、スタータモータMとを備えている。
【0016】
この実施形態では、吸気カムシャフト5の軸端に弁開閉時期制御装置Aを備えている。
この弁開閉時期制御装置Aは、駆動側回転体としての外部ロータ20と、従動側回転体としての内部ロータ30とを備えており、これらの相対回転位相を検知する位相センサASを備えている。また、車体には、エンジンEの始動と停止とを行う始動/停止ボタン11を備えている。
【0017】
エンジン制御ユニット10は、位相センサASからの信号と、始動/停止ボタン11からの信号と、回転速度センサ1Sとからの信号が入力する。また、エンジン制御ユニット10は、ソレノイドバルブSVとスタータモータM、および、エンジンの稼働に必要な燃料制御系や点火制御系等に制御信号を出力する。
【0018】
内燃機関制御システムは、エンジンEの回転速度やエンジンEに作用する負荷等に基づいて弁開閉時期制御装置Aを制御することにより吸気バルブVaの開閉時期(開閉タイミング)を設定し、燃費の向上、あるいは、必要なトルクが得られる制御を実行する。
【0019】
また、内燃機関制御システムは、弁開閉時期を最進角タイミングと最遅角タイミングとの間の中間タイミングで固定するよう、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相(外部ロータ20に対する内部ロータ30の位相)を中間ロック位相Pmで固定・解除する操作を作動油の給排によって行うロック機構Lを備えている。これにより、特にエンジンEを停止する際には中間ロック位相Pmで固定する制御が行われる。
【0020】
また、この内燃機関制御システムでは、エンジンストールのようにロック機構Lがロック状態に移行することなくエンジンEが停止した後のように、ロック機構Lが非ロック状態にある状況でエンジンEを始動する場合には、相対回転位相を中間ロック位相Pmまで変位させ、ロック機構Lでのロック状態に移行する制御を行う。
【0021】
〔弁開閉時期制御装置〕
図1及び
図2に示すように、弁開閉時期制御装置Aは、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体としての外部ロータ20と、エンジンEの吸気バルブVaに対して連結ボルト13により連結されることにより吸気カムシャフト5と一体回転する従動側回転体としての内部ロータ30とを備えている。内部ロータ30は、外部ロータ20に内包され、これらは吸気カムシャフト5の回転軸芯Xを中心にして相対回転自在に支持されている。
【0022】
外部ロータ20は、外部ロータ本体21と、フロントプレート22と、リヤプレート23とを有しており、これらが複数の締結ボルト24の締結により一体化されている。リヤプレート23の外周にはタイミングスプロケット23Sが形成されている。
【0023】
フロントプレート22とリヤプレート23とに挟み込まれる位置に内部ロータ30が配置されている。外部ロータ本体21には、回転軸芯Xを基準にして径方向の内側に向けて突出する複数の突出部21Tが一体的に形成されている。
【0024】
内部ロータ30は、外部ロータ本体21の突出部21Tの突出端に密接する円柱状の内部ロータ本体31と、外部ロータ本体21の内周面に接触するように内部ロータ本体31の外周に突出して備えた複数のベーン32とを有している。ベーン32は回転軸芯Xから離間する方向にバネ等で付勢されている。
【0025】
これにより、回転方向で隣接する突出部21Tの中間位置で、内部ロータ本体31の外周側に複数の流体圧室Cが形成され、これらの流体圧室Cがベーン32で仕切られることにより進角室Caと遅角室Cbとが形成されている。また、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を所定の位相にロック(固定)するロック機構Lを備えている。
【0026】
図1に示すように、内部ロータ30とフロントプレート22とに亘って、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相が、後述する最遅角位相から中間ロック位相Pm(ロック位相の一例)に達するまで付勢力を作用させるトーションスプリング39が備えられている。尚、トーションスプリング39の付勢力が作用する範囲は、中間ロック位相Pmを超えるものでも良く、中間ロック位相Pmに達しないものであっても良い。
【0027】
エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット6と、タイミングスプロケット23Sとに亘ってタイミングチェーン7が巻回されている。これにより外部ロータ20はクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフトの前端にもスプロケットが備えられ、このスプロケットにもタイミングチェーン7が巻回されている。
【0028】
なお、この実施形態では、吸気カムシャフト5に弁開閉時期制御装置Aを備えているが、この弁開閉時期制御装置Aを排気カムシャフトに備えることや、吸気カムシャフト5と排気カムシャフトとの双方に備えるように構成しても良い。
【0029】
弁開閉時期制御装置Aは、
図2〜
図4に示すように、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ20および内部ロータ30が駆動回転方向Sに向けて回転する。また、内部ロータ30が外部ロータ20に対して駆動回転方向Sと同方向に相対回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置Aでは、相対回転位相が進角方向Saに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1と吸気カムシャフト5との関係が設定されている。
【0030】
作動油の供給により相対回転位相を進角方向Saに変位させる空間が進角室Caであり、これとは逆に、作動油の供給により相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる空間が遅角室Cbである。ベーン32が進角方向Saの作動端(ベーン32の進角方向Saの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン32が遅角方向Sbの作動端(ベーン32の遅角方向Sbの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。
【0031】
〔弁開閉時期制御装置:ロック機構・流路構成〕
ロック機構Lは、一対のロック部材25と、ロックスプリング26と、中間ロック凹部37と、最遅角ロック凹部38とを備えて構成されている。
【0032】
つまり、突出部21Tの1つに対して回転軸芯Xから放射状となる姿勢で一対のガイド溝が形成され、これらのガイド溝にプレート状のロック部材25が出退自在に挿入されている。ロックスプリング26は、ロック部材25を回転軸芯Xに接近する方向(ロック方向)に付勢する。尚、ロック部材25の形状はプレート状に限るものではなく、例えば、ロッド状であっても良い。
【0033】
中間ロック凹部37は、相対回転位相が中間ロック位相Pmにある状態において一対のロック部材25が同時に係合するように内部ロータ本体31の外周に周方向に沿う溝状に形成されている。このように一対のロック部材25が中間ロック凹部37に同時に係合することにより、
図2に示すように相対回転位相が中間ロック位相Pmに保持される。
【0034】
また、最遅角ロック凹部38は、回転軸芯Xと平行となる溝状に形成されている。最遅角ロック凹部38は、相対回転位相が最遅角ロック位相Prにある状態において、一方のロック部材25が係合してロック状態に達する。このように最遅角ロック凹部38に一方のロック部材25が係合することにより、
図4に示すように相対回転位相が最遅角ロック位相Prに保持される。
【0035】
特に、一対のロック部材25を備え、中間ロック凹部37が周方向に沿って形成されているため、例えば、吸気カムシャフト5に作用するカム変動トルクにより相対回転位相が変動する場合でも、一方のロック部材25が中間ロック凹部37に係合した後には、このロック部材25が相対回転位相の変動の幅を小さくする。これにより他方のロック部材25の中間ロック凹部37への係合を容易にする。
【0036】
内部ロータ30には進角室Caに連通する進角流路34と、遅角室Cbに連通する遅角流路35と、中間ロック凹部37に連通するロック解除流路36とが形成されている。最遅角ロック凹部38には進角流路34が連通している。これら進角流路34、遅角流路35、ロック解除流路36には、ソレノイドバルブSVにより作動油が給排される。
したがって、弁開閉時期制御装置Aは、進角室Caあるいは遅角室Cbに対する作動油の給排によって弁開閉時期を制御可能である。
【0037】
〔ソレノイドバルブ〕
図6〜
図10に示すように、ソレノイドバルブSVは、弁ケース40と、スプール50と、スプール50を駆動操作する電磁ソレノイド60と、スプールスプリング61とを備えている。スプール50は、弁ケース40のスプール収容空間に対してスプール軸芯Yに沿って、弁ケース40の一端部から他端部まで往復摺動移動可能に内装されている。電磁ソレノイド60は、スプールスプリング61の付勢力に抗する方向に電磁力を作用させてスプール50の移動操作を行う。
【0038】
このソレノイドバルブSVでは、電磁ソレノイド60に電力を供給しない状態で、スプール50が第1進角ポジションPA1(
図6)に設定される。また、このソレノイドバルブSVでは、電磁ソレノイド60に供給する電力を増大することにより、スプールスプリング61の付勢力に抗して第2進角ポジションPA2(
図7)と、ロック解除ポジションPL(
図8)と、第2遅角ポジションPB2(
図9)と、第1遅角ポジションPB1(
図10)とに操作自在に構成されている。これらのポジションにおける作動油の給排関係を
図5に示している。
【0039】
弁ケース40には、スプール軸芯Yに沿う方向で電磁ソレノイド60に近い位置から離間する側に順次、第1ドレンポート40DAと、進角ポート40Aと、主ポンプポート40Pmと、遅角ポート40Bと、第2ドレンポート40DBと、副ポンプポート40Psと、ロック解除ポート40Lと、第3ドレンポート40DCとが形成されている。
【0040】
特に、この配置ではスプール軸芯Yに沿う方向で主ポンプポート40Pmを挟む位置に、進角ポート40Aと、遅角ポート40Bとが配置され、第1ドレンポート40DAが電磁ソレノイド60に最も近い位置に配置され、第2ドレンポート40DBが遅角ポート40Bより電磁ソレノイド60から離間する位置に配置されている。
【0041】
更に、副ポンプポート40Psを基準にスプール軸芯Yに沿う方向で電磁ソレノイド60から離間する側にロック解除ポート40Lと、第3ドレンポート40DCとが、この順序で配置されている。
【0042】
本発明では、進角ポート40Aと遅角ポート40Bとの配置を、前述した実施形態に代えてソレノイドバルブの構成を変更することなく、進角ポート40Aと遅角ポート40Bとの位置を入れ換えて(進角流路34と遅角流路35とが接続する位置を入れ換えて)ソレノイドバルブSVを構成しても良い。
【0043】
主ポンプポート40Pmは、外部の油圧ポンプPから吐出された作動油が供給流路8を介して供給されるメインポートに相当する。進角ポート40Aは、主ポンプポート(メインポート)40Pmから流入した作動油が進角流路34を介して進角室Caに流入する或いは進角室Caからの流出を許容する第1ポートに相当する。遅角ポート40Bは、主ポンプポート(メインポート)40Pmから流入した作動油が遅角流路35を介して遅角室Cbに流入する或いは遅角室Cbからの流出を許容する第2ポートに相当する。
【0044】
第1ドレンポート40DAは、進角室(弁開閉時期制御装置)Caから進角ポート(第1ポート)40Aを介して弁ケース40に戻された作動油が排出されることを許容する遅角制御用の第3ポートに相当する。第2ドレンポート40DBは、遅角室(弁開閉時期制御装置)Cbから遅角ポート(第2ポート)40Bを介して弁ケース40に戻された作動油が排出されることを許容する進角制御用の第3ポートに相当する。
【0045】
副ポンプポート40Psは、油圧ポンプPからの作動油が供給流路8を介して供給されるサブポートに相当する。ロック解除ポート40Lは、副ポンプポート(サブポート)40Psから吐出された作動油がロック解除流路36を介して中間ロック凹部37(ロック機構L)に流入する又は中間ロック凹部37から流出されることを許容する第4ポートに相当する。第3ドレンポート40DCは、スプール50が弁ケース40の一端部又は他端部に位置するとき、ロック機構Lからロック解除ポート(第4ポート)40Lを介して弁ケース40に戻された作動油を排出して、相対回転位相を中間ロック位相で固定可能にロック機構Lを維持する第5ポートに相当する。
【0046】
スプール50は、スプール軸芯Yと同軸芯で空気の流通が可能な空間を形成した筒状であり、スプール軸芯Yに沿う方向で電磁ソレノイド60に近い位置から離間する側に順次、第1〜第6グルーブ部(ドレン用環状溝)51A〜51Fが形成されると共に、第1〜第5ランド部52A〜52Eが形成されている。
【0047】
具体的な配置として、第2グルーブ部51Bは主ポンプポート40Pmに連通する位置に配置され、この第2グルーブ部51Bを挟む位置に第1ランド部52Aと第2ランド部52Bとが配置されている。更に、第1ランド部52Aより電磁ソレノイド60に近い側に第1グルーブ部(ドレン用環状溝)51Aが配置され、第2ランド部52Bよりスプールスプリング61の側(反電磁ソレノイド側)に第3グルーブ部(ドレン用環状溝)51Cが配置される。
【0048】
第1ランド部52Aは、進角ポート40Aに対する作動油の給排を制御し、第2ランド部52Bは、遅角ポート40Bに対する作動油の給排を制御する。
【0049】
また、第4グルーブ部51Dは副ポンプポート40Psに連通可能な位置に配置され、この第4グルーブ部51Dを挟む位置に第3ランド部52Cと第4ランド部52Dとが配置される。更に、この第4グルーブ部51Dよりスプールスプリング61の側に第5グルーブ部51Eと第5ランド部52Eと第6グルーブ部51Fが配置される。
【0050】
進角ポート(第1ポート)40Aおよび遅角ポート(第2ポート)40Bは、スプール移動方向で互いに異なる位置で弁ケース40の筒状壁部のうち周方向の一部に開口している。
進角ポート40Aは、スプール50の移動位置に応じて第1グルーブ部51Aに連通可能であり、遅角ポート40Bは、スプール50の移動位置に応じて第3グルーブ部51Cに連通可能である。
【0051】
第1ドレンポート(遅角制御用の第3ポート)40DAおよび第2ドレンポート(進角制御用の第3ポート)40DBは、弁ケース40の筒状壁部のうち進角ポート(第1ポート)40Aおよび遅角ポート(第2ポート)40Bが開口してる部位とはスプール移動方向で異なる位置に開口している。
第1ドレンポート40DAは、スプール50の移動位置に応じて第1グルーブ部51Aと連通可能であり、第2ドレンポート40DBは、スプール50の移動位置に応じて第3グルーブ部51Cに連通可能である。
【0052】
エンジン制御ユニット10は、電磁ソレノイド60に対して短い周期で間歇的に電力を供給する電力供給系を備えており、この電力のデューティ比の設定により電力量を調整してスプール50のシフト量を設定するように構成されている。
【0053】
〔第1進角ポジション〕
図6に示すように、スプール50が第1進角ポジションPA1にある場合には、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から第2グルーブ部51Bを介して進角ポート40Aが主ポンプポート40Pmと連通する。また、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から遅角ポート40Bと第2ドレンポート40DBとが連通する。
これと同時に、第5グルーブ部51Eとロック解除ポート40Lとの位置関係からロック解除ポート40Lと第3ドレンポート40DCとが連通する。
【0054】
従って、第1進角ポジションPA1では、主ポンプポート40Pmからの作動油が進角ポート40Aに供給され、遅角ポート40Bから作動油が排出され、ロック解除ポート40Lから作動油が排出される。これにより相対回転位相が進角方向Saに変位し、相対回転位相が中間ロック位相Pmに達した場合にはロック機構Lのロック部材25が中間ロック凹部37に係合し、中間ロック状態に移行する。尚、この進角側減速流路55における作動油の流れの詳細は後述する。
【0055】
〔第2進角ポジション〕
図7に示すように、スプール50が第2進角ポジションPA2に設定された場合には、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から第2グルーブ部51Bを介して進角ポート40Aが主ポンプポート40Pmと連通する。また、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から遅角ポート40Bと第2ドレンポート40DBとが連通する。これと同時に、第4グルーブ部51Dとロック解除ポート40Lとの位置関係からロック解除ポート40Lと副ポンプポート40Psとが連通する。
【0056】
従って、第2進角ポジションPA2では、主ポンプポート40Pmからの作動油が進角ポート40Aに供給され、遅角ポート40Bから作動油が排出され、ロック解除ポート40Lに作動油が供給される。これにより中間ロック位相Pmでロック状態にある場合には、ロック状態を解除して相対回転位相が進角方向Saに変位し、既に、ロック解除状態にある場合には、相対回転位相が進角方向Saに変位する。
【0057】
〔ロック解除ポジション〕
図8に示すように、スプール50がロック解除ポジションPLにある場合には、第1ランド部52Aが進角ポート40Aを閉じ、第2ランド部52Bが遅角ポート40Bを閉じる。これと同時に、第4グルーブ部51Dとロック解除ポート40Lとの位置関係からロック解除ポート40Lと副ポンプポート40Psとが連通する。
【0058】
従って、ロック解除ポジションPLでは、主ポンプポート40Pmからの作動油は、進角ポート40Aと遅角ポート40Bとの何れにも供給されず、ロック解除ポート40Lに作動油が供給されることにより、相対回転位相は保持される。
【0059】
〔第2遅角ポジション〕
図9に示すように、スプール50が第2遅角ポジションPB2に設定された場合には、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から第1グルーブ部51Aを介して進角ポート40Aが第1ドレンポート40DAと連通する。また、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から遅角ポート40Bが主ポンプポート40Pmと連通する。これと同時に、第4グルーブ部51Dとロック解除ポート40Lとの位置関係からロック解除ポート40Lと副ポンプポート40Psとが連通する。
【0060】
従って、第2遅角ポジションPB2では、主ポンプポート40Pmからの作動油が遅角ポート40Bに供給され、進角ポート40Aから作動油が排出され、ロック解除ポート40Lに作動油が供給される。これにより中間ロック位相Pmでロック状態にある場合には、ロック状態を解除して相対回転位相が遅角方向Sbに変位し、既に、ロック解除状態にある場合には、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する。
【0061】
〔第1遅角ポジション〕
図10に示すように、スプール50が第1遅角ポジションPB1に設定された場合には、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から第1グルーブ部51Aを介して進角ポート40Aが第1ドレンポート40DAと連通する。また、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から遅角ポート40Bが主ポンプポート40Pmと連通する。これと同時に、第5グルーブ部51Eとロック解除ポート40Lとの位置関係からロック解除ポート40Lと第3ドレンポート40DCとが連通する。
【0062】
従って、第1遅角ポジションPB1では、主ポンプポート40Pmからの作動油が遅角ポート40Bに供給され、進角ポート40Aから作動油が排出され、ロック解除ポート40Lから作動油が排出される。これにより相対回転位相が遅角方向Sbに変位し、相対回転位相が中間ロック位相Pmに達した場合にはロック機構Lのロック部材25が中間ロック凹部37に係合し、中間ロック状態に移行する。
【0063】
エンジン制御ユニット10は、始動/停止ボタン11の操作によりエンジンEを停止させる場合には、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を中間ロック位相Pmに移行し、中間ロック状態に移行した後にエンジンEを完全に停止させる制御を行う。
【0064】
しかしながら、このような制御によっても相対回転位相が中間ロック位相Pmに移行できないことがある。また、エンジンストールのように一対のロック機構Lがロック状態に移行することなくエンジンEが停止することもある。このようにロック機構Lが非ロック状態にある状況でエンジンEを始動する場合には、エンジン制御ユニット10が、ロック機構Lを中間ロック位相Pmでロックする状態に移行する制御を行う。
【0065】
このような理由から、ロック機構Lが非ロック状態にある状況でエンジンEを始動する場合に、位相センサASで検知される相対回転位相が中間ロック位相Pmから遅角側に外れていることを判定すると、ソレノイドバルブSVのスプール50を第1進角ポジションPA1に設定する。
【0066】
〔第1進角ポジションにおける作動油の流れ〕
図6に示すように、スプール50が第1進角ポジションPA1にある場合には、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から進角ポート40Aが進角ポート開口面積Taで主ポンプポート40Pmと連通する。また、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から、第3グルーブ部51Cが遅角ポート40Bに対して遅角ポート開口面積Tbで連通すると共に、第2ドレンポート40DBに対してドレンポート開口面積Tcで連通する。
【0067】
そして、第1進角ポジションPA1の近傍に設定された場合には、弁ケース40に対するスプール50の電磁ソレノイド60に近い側の端部における往復移動に際し、
図11に示すように、進角ポート開口面積Taは一定比率で変化量し、遅角ポート40Bに対する第3グルーブ部51Cの開口面積である遅角ポート開口面積Tbの変化量と、第2ドレンポート40DBに対する第3グルーブ部51Cの開口面積であるドレンポート開口面積Tcの変化量とが相反するように構成してある。
【0068】
したがって、スプール50が弁ケース40に対して電磁ソレノイド60に近い側の端部の近傍にあって、主ポンプポート40Pmが進角ポート40Aと連通し、遅角ポート40Bが第2ドレンポート40DBと連通するとき、スプール50が弁ケース40の端部に近づくほど第2ドレンポート40DBの開口面積が小さくなる。
【0069】
これにより、スプール50が第1進角ポジションPA1に設定された場合には、相対回転位相の進角側への変位速度を低下させることができ、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転が中間ロック位相Pmで確実に固定されるようにロック機構Lを作動させることができる。
【0070】
このように、通常のエンジン停止時に中間ロック位相Pmで固定する場合、弁ケース40に対するスプール50の電磁ソレノイド60に近い側の端部に向けた一方向の移動操作により、
図7に示す第2進角ポジションPA2において、外部ロータ20と内部ロータ30とを進角方向Saに迅速に相対回転させた後、
図6に示す第1進角ポジションPA1
おいて、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を中間ロック位相Pmに低速で変位させることができる。
【0071】
また、ロック機構Lが非ロック状態にある状況でエンジンEを始動する場合には、位相センサASで検知される相対回転位相が中間ロック位相Pmから進角側に外れていることを判定した場合には、ソレノイドバルブSVのスプール50を第1遅角ポジションPB1に設定する。
【0072】
〔第1遅角ポジションにおける作動油の流れ〕
図10に示すように、スプール50が第1遅角ポジションPB1にある場合には、第2ランド部52Bと遅角ポート40Bとの位置関係から遅角ポート40Bが遅角ポート開口面積Ubで主ポンプポート40Pmと連通する。また、第1ランド部52Aと進角ポート40Aとの位置関係から、第1グルーブ部51Aが進角ポート40Aに対して進角ポート開口面積Uaで連通すると共に、第1ドレンポート40DAに対してドレンポート開口面積Ucで連通する。
【0073】
そして、第1遅角ポジションPB1の近傍に設定された場合には、弁ケース40に対するスプール50の電磁ソレノイド60から遠い側の端部における往復移動に際し、
図11に示すように、遅角ポート開口面積Ubは一定比率で変化量し、進角ポート40Aに対する第1グルーブ部51Aの開口面積である進角ポート開口面積Uaの変化量と、第1ドレンポート40DAに対する第1グルーブ部51Aの開口面積であるドレンポート開口面積Ucの変化量とが相反するように構成してある。
【0074】
したがって、スプール50が弁ケース40に対して電磁ソレノイド60から遠い側の端部の近傍にあって、主ポンプポート40Pmが遅角ポート40Bと連通し、進角ポート40Aが第1ドレンポート40DAと連通するとき、スプール50が弁ケース40の端部に近づくほど第1ドレンポート40DAの開口面積が小さくなる。
【0075】
これにより、スプール50が第1遅角ポジションPB1に設定された場合には、相対回転位相の遅角側への変位速度を低下させることができ、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転が中間ロック位相Pmで確実に固定されるようにロック機構Lを作動させることができる。
【0076】
このように、弁ケース40に対するスプール50の電磁ソレノイド60から遠い側の端部に向けた一方向の移動操作により、
図9に示す第2遅角ポジションPB2において、所望の弁開閉時期に速く移行するように、外部ロータ20と内部ロータ30とを遅角方向Sbに迅速に相対回転させた後、
図10に示す第1遅角ポジションPB1において、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を中間ロック位相Pmに低速で変位させることができる。