(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各前記複数のセルは、前記第1の主面の平面視において、前記ソース領域に取り囲まれるように複数の前記コンタクト領域が形成され、かつ、複数の前記コンタクト領域にそれぞれ取り囲まれるように複数の前記開口部が形成される、請求項6に記載のワイドバンドギャップ半導体装置。
前記ワイドバンドギャップ半導体層は、前記ドリフト層中に埋め込まれ、かつ、前記ボディ領域よりも前記第2の主面側に配置された、前記第2の導電型を有する第1の不純物領域をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のワイドバンドギャップ半導体装置。
前記ワイドバンドギャップ半導体層は、前記ドリフト層中に埋め込まれ、前記第1の導電型を有し、かつ、前記ドリフト層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第2の不純物領域をさらに含み、
前記第2の不純物領域は、前記ボディ領域よりも前記第2の主面側に配置され、かつ、前記第1の主面の平面視において、前記第1の不純物領域に並設される、請求項17に記載のワイドバンドギャップ半導体装置。
前記ワイドバンドギャップ半導体層をエピタキシャル成長により形成する工程では、前記ドリフト層中に埋め込まれ、かつ、前記ボディ領域よりも前記第2の主面側に配置された、前記第2の導電型を有する第1の不純物領域を形成する、請求項21に記載のワイドバンドギャップ半導体装置の製造方法。
前記ワイドバンドギャップ半導体層をエピタキシャル成長により形成する工程では、前記ドリフト層中に埋め込まれ、かつ、前記ボディ領域よりも前記第2の主面側に配置された、前記第1の導電型を有する第2の不純物領域をさらに形成し、
前記第2の不純物領域は、前記第1の導電型を有するとともに、前記ドリフト層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有し、かつ、前記第1の主面の平面視において、前記第1の不純物領域に並設される、請求項22に記載のワイドバンドギャップ半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施の形態を列記して説明する。なお、「電気的に接続」とは、2つの要素の直接の接続によって、それら2つの要素の間の電気的伝導が生じる場合に限定されず、2つの要素の間の電気的伝導が、それら2つの要素の間に配置される別の要素を介在して生じる場合を含む。
【0013】
(1)本発明の実施の形態に係るワイドバンドギャップ半導体装置は、第1の主面(11a)と、第1の主面(11a)に対して反対側に位置する第2の主面(11b)とを有するワイドバンドギャップ半導体層(11)を備える。ワイドバンドギャップ半導体層(11)は、第1の導電型を有し、第2の主面(11b)を含むドリフト層(12)と、ドリフト層(12)に設けられて、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するボディ領域(13)と、ドリフト層(12)から隔てられるようにボディ領域(13)に設けられて、第1の主面(11a)の一部を含み、第1の導電型を有するソース領域(14)と、ボディ領域(13)に設けられ、ソース領域(14)と接するように配置されて、第2の導電型を有するコンタクト領域(15)とを含む。ボディ領域(13)には、ドリフト層(12)を第1の主面(11a)に露出させる開口部(16)が設けられる。ワイドバン
ドギャップ半導体装置は、第1の主面(11a)において、ボディ領域(13)、ソース領域(14)およびドリフト層(12)に接するゲート絶縁膜(20)と、ゲート絶縁膜(20)上に設けられたゲート電極(30)と、ソース領域(14)およびコンタクト領域(15)に電気的に接続されるとともに、開口部(16)を通じてドリフト層(12)に電気的に接続されるソース電極(40)と、第2の主面(11b)に電気的に接続されるドレイン電極(50)とをさらに備える。
【0014】
この構成によれば、ワイドバンドギャップ半導体を材料して形成されたMOSFETに、ソース電極とゲート電極とが接続されたJFETを内在させることができる。このJFETは、MOSFETに逆並列接続された還流ダイオードとして機能し得る。このように還流ダイオードをMOSFETに集積化させることができるため、還流ダイオードを設けるためにトランジスタセルのサイズ、すなわち、半導体チップの実装面積が増大するのを抑えることができる。したがって、インバータ回路のような、トランジスタ素子と還流ダイオードとを含む回路を、より小型かつ簡素な構成で実現することができる。
【0015】
(2)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。第1の領域の不純物濃度は、第2の領域の不純物濃度と等しい。
【0016】
この構成によれば、JFETをMOSFETと共通の製造工程によって製造することができる。したがって、MOSFETと還流ダイオードとを含む回路を簡素なプロセスで製造することができる。
【0017】
(3)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。第1の領域は、第2の領域よりも不純物濃度が高く、かつ、ソース領域(14)よりも不純物濃度が低い領域を有する。
【0018】
この構成によれば、第1の導電型のドリフト層において、JFETのチャネル領域の不純物濃度を部分的に高くすることにより、当該チャネルを取り囲むコンタクト領域およびボディ領域から第2の導電型の不純物が浸み出すことによって、実質的なチャネル幅が狭められるのを抑制することができる。これにより、JFETの還流ダイオードとしての機能を確保できる。
【0019】
(4)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。第1の領域は、第1の主面(11a)の一部を含む領域を有する。当該領域の不純物濃度は、ソース領域(14)の不純物濃度と等しい。
【0020】
この構成によれば、ドリフト層において、ソース電極の直下に、ソース領域の不純物濃度と等しい不純物濃度を有する高濃度領域を形成することにより、ドリフト層とソース電極とのオーミック接合における接触抵抗を小さくすることができる。これにより、JFETの導通損失を低減することができる。また、この高濃度領域は、ボディ領域内にイオン注入してソース領域を形成する工程において、開口部を通じてドリフト層にもイオン注入することによって、同時に形成することができる。
【0021】
(5)好ましくは、ワイドバンドギャップ半導体層(11)は、炭化珪素、窒化ガリウ
ムまたはダイヤモンドから構成されている。
【0022】
この構成によれば、炭化珪素、窒化ガリウムまたはダイヤモンドが材料として用いられ、大電流を制御するパワー半導体装置を、小型かつ簡素な構成で実現することができる。
【0023】
(6)好ましくは、第1の導電型は、n型であり、第2の導電型は、p型である。
この構成によれば、p型の領域をn型のワイドバンドギャップ半導体層に形成することから、ワイドバンドギャップ半導体装置の製造し易さを向上させることができる。
【0024】
(7)好ましくは、開口部(16)の開口幅は、0.4μm以上3.0μm以下である。
【0025】
この構成によれば、ワイドバンドギャップ半導体からなるMOSFETに内在するJFETをノーマリオフ型のトランジスタとすることができる。これにより、JFETは還流電流のみを流すように動作するため、還流ダイオードとしての機能を確保することができる。
【0026】
(8)好ましくは、ソース電極(40)は、金属元素として、チタン、アルミニウムおよびシリコンの3元合金で構成されている。
【0027】
この構成によれば、ソース電極は、コンタクト領域、ソース領域およびドリフト層の各々に対して良好な電気的接合を達成できるため、接触抵抗の増大を抑制しつつセルを微細化することができる。
【0028】
(9)好ましくは、ワイドバンドギャップ半導体層(11)には、第1の主面(11a)の平面視において、外周形状が長軸を含む六角形状である複数のセルが互いに隣接して形成される。複数のセルの各々は、第1の主面(11a)の平面視において、外周形状が上記六角形状と相似形であるソース領域(14)に取り囲まれるようにコンタクト領域(15)が形成され、かつ、コンタクト領域(15)に取り囲まれるように開口部(16)が形成される。
【0029】
この構成によれば、外周形状が長軸を含む六角形状である複数のセルが形成されており、各セルはソース電極に接触するコンタクト領域およびドリフト層を含んでいる。コンタクト領域および開口部の面積を広く確保することができるため、コンタクト領域およびドリフト層とソース電極との間の接触抵抗を低減することができる。
【0030】
(10)好ましくは、複数のセルの各々は、第1の主面(11a)の平面視において、ソース領域(14)に取り囲まれるように複数のコンタクト領域(15)が形成され、かつ、複数のコンタクト領域(15)にそれぞれ取り囲まれるように複数の開口部(16)が形成される。
【0031】
この構成によれば、ソース領域内に、複数のコンタクト領域および複数の開口部が六角形状の長軸方向に沿って互いに間隔を置いて形成することにより、ソース領域、コンタクト領域およびドリフト層に対してソース電極をより容易に接触させることができる。たとえばソース電極において上記六角形状の短軸方向の幅にばらつきが生じた場合でも、ソース領域、コンタクト領域およびドリフト層に対する接触を容易に確保することができる。そのため、ソース電極の上記短軸方向の幅をより狭めることも可能となり、セルをさらに小型化することができる。
【0032】
(11)好ましくは、ワイドバンドギャップ半導体層(11)は、ドリフト層(12)
中に埋め込まれ、かつ、ボディ領域(13)よりも第2の主面(11b)側に配置された、第2の導電型を有する第1の不純物領域(80)をさらに含む。
【0033】
この構成によれば、第1の不純物領域によって、ソース電極の直下に位置し、JFETのチャネルを形成するドリフト層にかかる電界が緩和される。これにより、MOSFETのオフ時におけるリーク電流の発生を抑制できるため、JFETの耐圧への影響を回避することができる。
【0034】
(12)好ましくは、第1の主面(11a)の平面視において、第1の不純物領域(80)は、開口部(16)内に配置される。
【0035】
この構成によれば、JFETに還流電流が流れる際、この還流電流の経路が第1の不純物領域によって狭められるのを軽減することができる。これにより、JFETのオン抵抗を低減することができる。
【0036】
(13)好ましくは、第1の主面(11a)の平面視において、第1の不純物領域(80)は、少なくとも一部分がボディ領域(13)に重なるように配置される。
【0037】
この構成によれば、ボディ領域から第2の主面に向かって延びる空乏層と、第1の不純物領域から第2の主面に向かって延びる空乏層とをつながりやすくすることができる。これにより、ソース電極の直下に位置するドリフト層にかかる電界を、より一層緩和することができる。この結果、リーク電流の発生をより確実に抑制できるため、JFETの耐圧を維持することができる。また、第1の不純物領域の電位をフローティングとした構造においては、ボディ領域から第1の不純物領域に効果的に正孔が注入されることにより、第1の不純物領域の空乏化を短時間で解消することができる。これにより、JFETの応答速度を向上させることができる。
【0038】
(14)好ましくは、第1の不純物領域(80)には、ドリフト層(12)がワイドバンドギャップ半導体層(11)の厚さ方向に沿ってつながるように貫通部(81)が設けられる。
【0039】
この構成によれば、貫通部中に位置するドリフト層を通って電流が流れる経路が形成され得る。このため、上記(13)のように、第1の不純物領域の一部分がボディ領域に重なるように配置されている場合においても、還流電流の経路が第1の不純物領域によって狭められるのを軽減することができる。これにより、JFETの高耐圧を維持しつつ、JFETのオン抵抗を下げることができる。
【0040】
(15)好ましくは、貫通部(81)は、第1の主面(11a)の平面視において、開口部(16)内に配置される。
【0041】
この構成によれば、開口部内のドリフト層を通じて形成される還流電流の経路が第1の不純物領域によって狭められるのを効果的に軽減することができる。
【0042】
(16)好ましくは、第1の主面(11a)の平面視において、ボディ領域(13)は、第1の主面(11a)に平行な第1の方向に沿って延在する長軸を含む六角形状からなる外周形状を有する。第1の主面(11a)の平面視において、第1の不純物領域(80)は、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って延在する長軸を含む多角形状からなる外周形状を有する。第1の主面(11a)の平面視において、ボディ領域(13)および第1の不純物領域(80)は互いに交差するように配置される。
【0043】
この構成によれば、ボディ領域と第1の不純物領域との交差部分により、ボディ領域から第2の主面に向かって延びる空乏層と、第1の不純物領域から第2の主面に向かって延びる空乏層とがつながりやすくなる。したがって、リーク電流の発生をより確実に抑制できる。また、第1の不純物領域の電位をフローティングとした構造においては、ボディ領域から第1の不純物領域にキャリア(正孔)を効果的に注入することができるため、JFETの応答速度を向上させることができる。
【0044】
(17)好ましくは、第1の不純物領域(80)は、電気的にフローティングされる。
この構成によれば、ドレイン電極の電位がソース電極の電位よりも高いときに、第1の不純物領域の電位がボディ領域の電位より高くなるため、第1の不純物領域とボディ領域とを同電位とする場合と比較して、ボディ領域からドリフト層側に、より長く空乏層を延ばすことができる。この結果、JFETの高耐圧を維持することができる。
【0045】
(18)好ましくは、第1の不純物領域(80)は、ボディ領域(13)と第1の不純物領域(80)との間の距離が5μm以下となる位置に配置される。
【0046】
この構成によれば、ボディ領域から第1の不純物領域に効果的に正孔が注入されることにより、第1の不純物領域の空乏化を短時間で解消することができる。これにより、第1の不純物領域の空乏化の解消および電位回復を達成することができる。
【0047】
(19)好ましくは、第1の不純物領域(80)は、ボディ領域(13)と第1の不純物領域(80)との間の距離が2μm以下となる位置に配置される。
【0048】
この構成によれば、数十ns(ナノ秒)以下の短時間で第1の不純物領域の空乏化の解消および電位回復を達成することが期待できる。したがって、高速の応答が可能なワイドバンドギャップ半導体装置を実現することができる。
【0049】
(20)好ましくは、第1の不純物領域(80)は、ソース電極(40)に電気的に接続される。
【0050】
この構成によれば、第1の不純物領域の電位がボディ領域と同電位に固定されるため、ワイドバンドギャップ半導体装置の動作を安定化させることができる。さらに、第1の不純物領域がソース電極に接続される結果、正孔を第1の不純物領域に効果的に注入することができる。これにより、JFETの応答速度が高められる。
【0051】
(21)好ましくは、ワイドバンドギャップ半導体層(11)は、ドリフト層(12)中に埋め込まれ、第1の導電型を有し、かつ、ドリフト層(12)の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する第2の不純物領域(82)をさらに含む。第2の不純物領域(82)は、ボディ領域(13)よりも第2の主面(11b)側に配置され、かつ、第1の主面(11a)の平面視において、第1の不純物領域(80)に並設される。
【0052】
この構成によれば、第2の不純物領域によって、第1の不純物領域からドリフト層中への厚さ方向に垂直な方向の空乏化の進展が抑制される。これにより、JFETの高耐圧を維持しつつ、JFETのオン抵抗を下げることができる。
【0053】
(22)好ましくは、第2の不純物領域(82)は、第1の主面(11a)側に位置する第1の端部と、第2の主面(11b)側に位置する第2の端部とを有する。第1の主面(11a)に対向する第1の不純物領域(80)の接合面は、第1の主面(11a)から第2の主面(11b)へと向かう深さ方向における、第2の不純物領域(82)の第1の端部の位置から、第2の不純物領域(82)の第2の端部の位置までの範囲内に位置する
。
【0054】
この構成によれば、ドレイン電極の電位がソース電極の電位よりも低い状態において、第1の不純物領域からドリフト層中への厚さ方向に垂直な方向の空乏化の進展が第2の不純物領域によって抑制される。これにより、JFETのオン抵抗を、より一層低減することができる。
【0055】
(23)好ましくは、第1の主面(11a)には、側壁部(SW)および底部(BT)からなるトレンチ(TR)が形成される。側壁部(SW)は、第1の主面(11a)からソース領域(14)およびボディ領域(13)を貫通してドリフト層(12)に至っている。底部(BT)は、側壁部(SW)と接し、かつドリフト層(12)に位置している。ゲート絶縁膜(20)は、トレンチ(TR)の側壁部(SW)および底部(BT)を覆っている。ゲート電極(30)はゲート絶縁膜(20)上に設けられる。
【0056】
この構成によれば、トレンチゲート型の縦型MOSFETのセルに、還流ダイオードとして機能し得るJFETを内在させることができる。これにより、MOSFETのセルの集積度を、より一層高めることができる。
【0057】
(24)本発明の実施の形態に係るワイドバンドギャップ半導体装置の製造方法は、基板(10)を準備する工程(S10)と、基板(10)上に、第1の主面(11a)と、第1の主面(11a)に対して反対側に位置する第2の主面(11b)とを有するワイドバンドギャップ半導体層(11)をエピタキシャル成長により形成する工程(S20)と、第1の主面(11a)からワイドバンドギャップ半導体層(11)内に不純物を注入する工程(S30)とを備える。不純物を注入する工程(S30)では、ワイドバンドギャップ半導体層(11)内に、第1の導電型を有し、第2の主面(11b)を含むドリフト層(12)と、ドリフト層(12)に設けられて、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有するボディ領域(13)と、ドリフト層(12)から隔てられるようにボディ領域(13)に設けられて、第1の主面(11a)の一部を含み、第1の導電型を有するソース領域(14)と、ボディ領域(13)に設けられるとともにソース領域(14)と接するように配置されて、かつ、第2の導電型を有するコンタクト領域(15)とが形成される。ボディ領域(13)には、ドリフト層(12)を第1の主面(11a)に露出させる開口部(16)が設けられる。上記製造方法は、ワイドバンドギャップ半導体層(11)が形成された基板(10)を加熱することにより、ワイドギャップ半導体層(11)内に導入された不純物を活性化させる工程(S40)と、第1の主面(11a)上にゲート絶縁膜(20)を形成する工程(S50)と、ゲート絶縁膜(20)上に接触するゲート電極(30)を形成する工程(S60)と、ゲート絶縁膜(20)およびゲート電極(30)を覆うように層間絶縁膜(60)を形成する工程(S70)と、ゲート絶縁膜(20)および層間絶縁膜(60)を除去してソース領域(14)、コンタクト領域(15)および開口部(16)を通じてドリフト層(12)が露出した領域を形成し、当該領域にソース電極(40)を形成する工程(S80)と、第2の主面(11b)に電気的に接続されるドレイン電極(50)を形成する工程(S80)とをさらに備える。
【0058】
この構成によれば、ワイドバンドギャップ半導体を材料して形成されたMOSFETに、還流ダイオードとして機能し得るJFETを集積化させることができるため、半導体チップの実装面積が増大するのを抑えることができる。したがって、インバータ回路のような、トランジスタ素子と還流ダイオードとを含む回路を、より小型かつ簡素な構成で実現することができる。
【0059】
(25)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から
見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。上記不純物を注入する工程(S30)では、第1の領域の不純物濃度を、第2の領域の不純物濃度と等しくする。
【0060】
この構成によれば、JFETをMOSFETと共通の製造工程によって製造することができる。したがって、MOSFETと還流ダイオードとを含む回路を簡素なプロセスで製造することができる。
【0061】
(26)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。上記不純物を注入する工程(S30)では、第1の領域に、第2の領域の不純物濃度よりも高く、かつ、ソース領域(14)の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する領域を形成する。
【0062】
この構成によれば、第1の導電型のドリフト層において、JFETのチャネル領域の不純物濃度を部分的に高くすることにより、当該チャネルを取り囲むコンタクト領域およびボディ領域から第2の導電型の不純物が浸み出すことによって、実質的なチャネル幅が狭められるのを抑制することができる。これにより、JFETの還流ダイオードとしての機能を確保できる。
【0063】
(27)好ましくは、ドリフト層(12)は、開口部(16)内に配置され、コンタクト領域(15)およびボディ領域(13)に取り囲まれた第1の領域と、第1の領域から見て第2の主面(11b)側に配置された第2の領域とを含む。上記不純物を注入する工程(S30)では、第1の領域に、第1の主面(11a)の一部を含み、かつ、ソース領域(14)の不純物濃度と等しい不純物濃度を有する領域(17)を形成する。
【0064】
この構成によれば、ドリフト層において、ソース電極の直下に、ソース領域の不純物濃度と等しい不純物濃度を有する高濃度領域を形成することにより、ドリフト層とソース電極とのオーミック接合における接触抵抗を小さくすることができる。これにより、JFETの導通損失を低減することができる。また、この高濃度領域は、ボディ領域内にイオン注入してソース領域を形成する工程において、開口部を通じてドリフト層にもイオン注入することによって、同時に形成することができる。
【0065】
(28)好ましくは、上記ワイドバンドギャップ半導体層(11)をエピタキシャル成長により形成する工程(S20)では、ドリフト層(12)中に埋め込まれ、かつ、ボディ領域(13)よりも第2の主面(11b)側に配置された、第2の導電型を有する第1の不純物領域(80)を形成する。
【0066】
この構成によれば、第1の不純物領域によって、ソース電極の直下に位置し、JFETのチャネルを形成するドリフト層にかかる電界が緩和される。これにより、MOSFETのオフ時におけるリーク電流の発生を抑制できるため、JFETの耐圧への影響を回避することができる。
【0067】
(29)好ましくは、上記ワイドバンドギャップ半導体層(11)をエピタキシャル成長により形成する工程(S20)では、ドリフト層(12)中に埋め込まれ、かつ、ボディ領域(13)よりも第2の主面(11b)側に配置された、第1の導電型を有する第2の不純物領域(82)をさらに形成する。第2の不純物領域(82)は、第1の導電型を有するとともに、ドリフト層(12)の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有し、かつ、第1の主面(11a)の平面視において、第1の不純物領域(80)に並設される。
【0068】
この構成によれば、第2の不純物領域によって、第1の不純物領域からドリフト層中へ
の厚さ方向に垂直な方向の空乏化の進展が抑制される。これにより、MOSFETの高耐圧を維持しつつ、JFETのオン抵抗を下げることができる。
【0069】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0070】
<実施の形態1>
図1は、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図1は、
図6のI−I線に沿った断面図である。この実施の形態において、ワイドギャップ半導体は、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)あるいはダイヤモンド(C)であり得る。
【0071】
図1を参照して、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1は、炭化珪素に形成された複数のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)2により実現される。本実施の形態では、複数のMOSFET2は、スイッチング素子としてたとえばモータ等の誘導性負荷を駆動制御する電力変換器などに用いられる。
【0072】
MOSFET2は、プレーナ型のMOSFETであって、炭化珪素単結晶基板10と、炭化珪素層11と、ゲート絶縁膜20と、ゲート電極30と、層間絶縁膜60と、ソース電極40と、ソース配線層41と、ドレイン電極50と、裏面パッド電極51とを備える。
【0073】
炭化珪素単結晶基板10は、たとえばポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素単結晶基板10は、第1の主面10aと、第2の主面10bとを有する。第2の主面10bは第1の主面10aと反対側に位置する。
【0074】
炭化珪素層11は、炭化珪素からなるエピタキシャル層であり、第1の主面11aと、第2の主面11bとを有する。炭化珪素層11は、たとえばポリタイプ4Hを有する六方晶炭化珪素からなる。第2の主面11bは第1の主面11aと反対側に位置する。炭化珪素層11の第2の主面11bは、炭化珪素単結晶基板10の第1の主面10aと接する。炭化珪素層11は、ドリフト層12と、ボディ領域13と、ソース領域14と、コンタクト領域15とを有する。
【0075】
ドリフト層12は、たとえば窒素などの導電型がn型(第1の導電型)である不純物(ドナー)を含むn型領域である。ドリフト層12は炭化珪素層11の第2の主面11bを含む。ドリフト層12のn型不純物濃度(第1の導電型の不純物濃度)は、炭化珪素単結晶基板10のn型不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【0076】
ボディ領域13は、たとえばアルミニウムやホウ素などの導電型がp型(第2の導電型)である不純物(アクセプタ)を含むp型領域である。
【0077】
ソース領域14は、たとえばリンなどのn型不純物を含むn型領域である、ソース領域14は、ボディ領域13によってドリフト層12から隔てられるようにボディ領域13上に設けられている。ソース領域14のn型不純物濃度は、ドリフト層12のn型不純物濃
度よりも高い。ソース領域14はコンタクト領域15とともに炭化珪素層11の第1の主面11aの一部を含む。
【0078】
コンタクト領域15は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含むp型領域である。コンタクト領域15は、ソース領域14に囲まれて設けられていると共に、ボディ領域13につながっている。コンタクト領域15のp型不純物濃度(第2の導電型の不純物濃度)は、ボディ領域13のp型不純物濃度よりも高い。
【0079】
ソース電極40の下方に位置するボディ領域13の一部において開口部16が設けられる。開口部16は、ドリフト層12を、炭化珪素層11の第1の主面11aに露出させる。すなわち、開口部16内の領域の導電型はn型である。なお、本実施の形態では、開口部16の側壁にボディ領域13およびコンタクト領域15が露出している構成を例示しているが、開口部16の側壁にp型領域が露出している構成であればよい。したがって、開口部16の側壁にボディ領域13のみが露出している構成であってもよい。
【0080】
ゲート絶縁膜20は、ボディ領域13に形成されるMOSFET2のチャネルCH1と対向する位置に設けられる。ゲート絶縁膜20は、炭化珪素層11の第1の主面11aにおいて、ボディ領域13、ソース領域14およびドリフト層12に接する。ゲート絶縁膜20は、たとえば二酸化珪素からなる。
【0081】
ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20上に配置される。ゲート電極30は、MOSFET2のソース領域14から他方のソース領域14まで延在するように、ドリフト層12、ボディ領域13およびソース領域14と対向する。ゲート電極30は、たとえば不純物が添加されたポリシリコン、あるいはアルミニウムなどの導電体からなる。
【0082】
層間絶縁膜60は、ゲート電極30およびゲート絶縁膜20を覆うように配置される。層間絶縁膜60は二酸化珪素からなる。層間絶縁膜60には、ソース領域14、コンタクト領域15および開口部16と重なる位置にコンタクトホールSHが形成される。コンタクトホールSHは、層間絶縁膜60およびゲート絶縁膜20を貫通するコンタクトホールである。コンタクトホールSHは、炭化珪素層11の第1の主面10aを露出させる。より具体的には、コンタクトホールSHは、開口部16を通じてドリフト層12を露出させるとともに、ソース領域14およびコンタクト領域15を露出させる。
【0083】
ソース電極40は、コンタクトホールSHに配置されてソース領域14およびコンタクト領域15に接触する。さらに、ソース電極40は、開口部16を通じてドリフト層12に接触する。これにより、ソース電極40は、ソース領域14、コンタクト領域15およびドリフト層12と電気的に接続される。ソース電極40は、ソース領域14、コンタクト領域15およびドリフト層12に対して良好な電気的接合(オーミック接合)を達成することが可能な材料、たとえばチタン、アルミニウムおよびシリコンにより構成されている。
【0084】
ソース配線層41は、層間絶縁膜60上に配置される。ソース配線層41はたとえばアルミニウムからなる。ソース配線層41は、コンタクトホールSHを通じてソース電極40に電気的に接続される。
【0085】
ドレイン電極50は、炭化珪素単結晶基板10の第2の主面10bに接触する。これにより、ドレイン電極50は炭化珪素単結晶基板10と電気的に接続されている。あるいは、ドレイン電極50は、たとえばニッケルなど、炭化珪素単結晶基板10とオーミック接合可能な他の材料からなっていてもよい。
【0086】
裏面パッド電極51は、ドレイン電極50に接して配置される。裏面パッド電極51は、たとえばチタン、ニッケル、銀やそれらの合金からなる。
【0087】
次に、
図1から
図4を参照して、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1の動作について説明する。
【0088】
MOSFET2において、ソース配線層41およびソース電極40を通じて、ソース領域14、コンタクト領域15およびボディ領域13にソース電位V
Sが与えられる。ソース電位V
Sはたとえば接地電位である。
【0089】
MOSFET2をオンするために、ドレイン電極50にドレイン電位V
Dが与えられ、ゲート電極30にゲート電位V
Gが与えられる。ドレイン電位V
Dおよびゲート電位V
Gはともにソース電位V
Sよりも高い。たとえばV
D>V
G>V
Sであるとする。ゲート電極30下のボディ領域13の表面層がn型に反転し、このn型反転層(チャネルCH1)を通じてソース領域14からチャネルCH1、ドリフト層12、炭化珪素単結晶基板10までひとつづきのn型領域でつながる。この結果、
図1において実線矢印で示されるように、電流はドレイン電極50から、炭化珪素単結晶基板10、ドリフト層12、チャネルCH1およびソース領域14を通り、ソース電極40へと流れる。
【0090】
一方、ゲート電位V
Gをゼロにすると、n型反転層(チャネルCH1)は消滅し、電流はゼロになる。さらに、ボディ領域13およびドリフト層12間のpn接合が逆バイアスされて主としてドリフト層12に空乏層が広がり、MOSFET2はオフ状態となる。
【0091】
本実施の形態では、
図1に示されるように、開口部16において、ドリフト層12(n型領域)は、コンタクト領域15およびボディ領域13(p型領域)に取り囲まれて設けられるとともに、ソース電極40に接している。ドリフト層12、コンタクト領域15、ボディ領域13、炭化珪素単結晶基板10、ソース電極40およびドレイン電極50により、JFET(Junction Field Effect Transistor)3が形成される。
【0092】
詳細には、ボディ領域13に開口部16を設けたことにより、ソース電極40およびドレイン電極50の間には、ドリフト層12および炭化珪素単結晶基板10(n型領域)からなる電流経路が形成される。この電流経路の途中には、コンタクト領域15およびボディ領域13(p型領域)からなる制御電極(ゲート)が設けられている。ゲート・ドレイン間にpn接合を逆バイアスする方向の電圧が印加されると、pn接合のまわりに空乏層が広がり、電流経路を流れる電流が制御される。すなわち、MOSFET2のソース電極40およびドレイン電極50をそれぞれソース電極およびドレイン電極とし、かつ、コンタクト領域15およびボディ領域13をゲートとするJFET3が形成される。ソース電極40とコンタクト領域15およびボディ領域13とは電気的に接続されている。よって、JFET3のゲートはソースに電気的に接続されており、ゲートにはソースと同じ電位が与えられる。
【0093】
本実施の形態において、JFET3は、ノーマリオフ型(エンハンスメント型ともいう)、すなわち閾値電圧がゼロよりも高く、ゲート電位およびソース電位が同電位のときにオフ状態となるトランジスタである。
【0094】
図2は、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1の等価回路図である。以下、MOSFET2およびJFET3の各々において、ソース電位Vsを基準とするドレイン電位V
Dをドレイン・ソース間電圧V
DSとし、ソース電位V
Sを基準とするゲート電位V
Gをゲート・ソース間電圧V
GSと定義して、説明する。
【0095】
図2を参照して、MOSFET2は、ドレイン電極50と、ゲート電極30と、ソース電極40とを有する。JFET3は、ドレインがドレイン電極50に接続され、ソースがソース電極40に接続されている。JFET3のゲート(コンタクト領域15およびボディ領域13)はソース電極40に接続されている。
【0096】
上記のように、MOSFET2は、V
DS>0の状態において、V
GS>0のとき、オンされる。これにより、MOSFET2には、
図1および
図2の各々において実線矢印に示されるように、ドレイン電極50からソース電極40へと電流が流れる。
【0097】
このとき、JFET3においては、ゲートにソースと同じ電位(接地電位)が与えられるとともに、ドレインにソース電位V
Sより高い電位が与えられている。すなわち、V
DS>0かつV
GS=0となっている。ノーマリオフ型のJFET3は、空乏層(
図3参照)によって電流経路が遮断されるため電流が流れない。
【0098】
図3は、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0の場合におけるワイドバンドギャップ半導体装置1の状態を模式的に示した断面図である。
図3を参照して、ドレイン電位V
Dがソース電位V
Sよりも高くなるようにドレイン電極50とソース電極40との間に電圧が印加される。JFET3のゲート電位V
Gはソース電位V
S(接地電位)と等しいため、ボディ領域13およびコンタクト領域15とドリフト層12間のpn接合は逆バイアスされる。これにより、ボディ領域13およびコンタクト領域15とドリフト層12との接合面から空乏層70が広がる。この空乏層70によりソース電極40およびドレイン電極50間の電流経路が遮断されてJFET3はオフ状態となる。
【0099】
これに対して、ドレイン・ソース間電圧V
DS<0の場合には、MOSFET2がオフ状態となると、誘導性負荷に蓄積されたエネルギーにより還流電流が流れる。このとき、MOSFET2に内在するボディダイオードに還流電流が流れると、ボディダイオードによるバイポーラ動作によりSiC半導体装置の結晶劣化が進行する虞がある。さらに、ワイドバンドギャップ半導体装置においては、ボディダイオードの立上り電圧が約2.5Vと高いため、順方向の電圧降下が高くなり、導通損失を増大させるという問題がある。
【0100】
本実施の形態では、
図2および
図4において点線矢印で示されるように、MOSFET2に並列接続されたJFET3に還流電流を流す。すなわち、JFET3は還流ダイオードとして機能し得る。
【0101】
図4は、ドレイン・ソース間電圧V
DS<0の場合におけるワイドバンドギャップ半導体装置1の状態を模式的に示した断面図である。
図4を参照して、MOSFET2がオフ状態において、ドレイン電位V
Dがソース電位V
Sよりも低くなるようにドレイン電極50とソース電極40との間に電圧が印加される。このような状態は電力変換器の動作中に発生し得る。V
DS<0の場合、ボディ領域13およびコンタクト領域15とドリフト層12間のpn接合は順方向にバイアスされるため、空乏層70(
図3)は解消する。これにより、
図4において点線矢印で示されるように、p型ゲート(ボディ領域13およびコンタクト領域15)に取り囲まれたn型領域(開口部16内のドリフト層12)を電流が流れる。以下の説明では、開口部16内のドリフト層12を「JFET3のチャネルCH2」とも称する。
【0102】
ここで、本実施の形態においては、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0のときには、JFET3をオフ状態としてJFET3の電流経路を遮断する必要がある。そのため、JFET3をノーマリオフ型としている。具体的には、JFET3のゲート電位V
Gおよびソース電位V
Sが同電位のときに、開口部16内のドリフト層12(チャネルCH2)が完全空乏化されるように、JFET3のチャネル幅を調整する。このチャネル幅とは、チャ
ネルCH2を挟んで対向するp型領域間の距離に相当する。チャネル幅は、開口部16の開口幅で決まる。開口部16の開口幅とは、開口部16の側壁に露出するp型領域の間の最短距離である。
【0103】
図3に示したように、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0のときには、JFET3におけるpn接合は逆バイアスされて主としてドリフト層12に空乏層70が広がる。ここで、n型領域(ドリフト層12)に形成される空乏層の厚さをX
nとし、p型領域(コンタクト領域15およびボディ領域13)に形成される空乏層の厚さをX
pとすると、空乏層の厚さX
n,X
pは次式(1),(2)でそれぞれ表わされる。
【0104】
【数1】
ここで、N
aはp型領域の不純物濃度、N
dはn型領域の不純物濃度、φ
Bはpn接合のビルトイン電位、Vbはバイアス電圧である。
【0105】
本実施の形態では、JFET3のチャネル幅、すなわち開口部16の開口幅をn型領域に形成される空乏層の厚さX
nのほぼ2倍の大きさとする。これにより、開口部16内のドリフト層12(チャネルCH2)が完全空乏化されるため、ノーマリオフ型のJFET3を実現することができる。好ましくは、開口部16の開口幅は0.4μm以上3.0μm以下である。開口幅の下限値である0.4μmは、後述するワイドバンドギャップ半導体装置1の製造プロセスにおいて実現可能な開口幅の最小値を示している。よって、開口幅の下限値は製造プロセスに依存し、上記の値に限定されるものではない。一方、開口幅の上限値である3.0μmは、JFET3のチャネルCH2を完全空乏化することができる限界値の一例を示している。この開口幅の上限値はp型領域のアクセプタ濃度およびn型領域のドナー濃度によって決まる。
【0106】
また、本実施の形態において、ノーマリオフ型のJFET3の閾値電圧は、ゼロよりも大きく、かつ、MOSFET2に内在するボディダイオードの立上り電圧よりも低い値とする。なお、JFET3では、ゲート・ドレイン間のpn接合を順バイアスとすることになるため、ユニポーラデバイスとして動作させるには、閾値電圧をpn接合のビルトイン電圧以下に抑える必要があるが、pn接合に電流が流れるバイポーラ動作であってもバイポーラ電流を抑制する効果には変わりない。
【0107】
このような構成とすることにより、V
DS<0の状態においてボディダイオードが導通状態となる前にJFET3がオンするため、JFET3を経由して還流電流が流れる。よって、ボディダイオードへの還流を抑制することができる。この結果、ボディダイオードによるバイポーラ動作によりSiC半導体装置の結晶劣化が進行するのを防止することができる。
【0108】
また、ワイドバンドギャップ半導体を材料としてMOSFET2を構成した場合、ボディダイオードの立上り電圧が約2.5Vと高いため、順方向の電圧降下が高くなり、導通損失を増大させる。本実施の形態によれば、JFET3はボディダイオードと比較して立上り電圧が低いため、順方向の電圧降下も低くなる。これにより、導通損失を低減することができる。
【0109】
本実施の形態では、ドリフト層12のn型不純物濃度が一様であるため、JFET3のチャネルCH2におけるn型不純物濃度は、チャネルCH2から見て第2の主面11b側に配置される、残りのドリフト層12のn型不純物濃度と実質的に等しくなっている。この「n型不純物濃度が等しい」とは、チャネルCH2のn型不純物濃度が、残りのドリフト層12のn型不純物濃度に必ずしも一致している必要はなく、残りのドリフト層12のn型不純物濃度よりも幾分高くてもよく、あるいは幾分低くてもよい。たとえば、チャネルCH2のn型不純物濃度は、残りのドリフト層12のドナー濃度±20%の範囲内に収まっている。
【0110】
あるいは、上記の構成に代えて、JFET3のチャネルCH2を形成するドリフト層12にさらにリンなどのn型不純物(ドナー)を注入することにより、チャネルCH2が、残りのドリフト層12よりもn型不純物濃度が高く、かつ、ソース領域14よりもn型不純物濃度が低い領域を有する構成としてもよい。これによれば、チャネルCH2を取り囲むp型領域(コンタクト領域15およびボディ領域13)からp型不純物が浸み出すことによって、実質的なチャネル幅が狭められるのを抑制することができる。
【0111】
あるいは、ソース電極40の直下に位置するドリフト層12のn型不純物濃度を、残りのドリフト層12のn型不純物濃度よりも高くするようにしてもよい。具体的には、
図5に示すように、JFET3のチャネルCH2を形成するドリフト層12において、炭化珪素層11の第1の主面11aの一部を含み、かつ、ソース領域14と等しいn型不純物濃度を有する高濃度領域17を形成する。この「n型不純物濃度が等しい」とは、高濃度領域17のn型不純物濃度が、ソース領域14のn型不純物濃度に必ずしも一致している必要はなく、ソース領域14のn型不純物濃度よりも幾分高くてもよく、あるいは幾分低くてもよい。たとえば、高濃度領域17のn型不純物濃度は、ソース領域14のn型不純物濃度±20%の範囲内に収まっている。なお、高濃度領域17は、ボディ領域13内にn型不純物をイオン注入してソース領域14を形成する工程において、開口部16を通じてドリフト層12内にもn型不純物をイオン注入することによって形成することができる。これにより、第1の主面11aからの高濃度領域17の深さは、第1の主面11aからのソース領域14の深さとほぼ等しくなる。このように、ソース電極40の下に高濃度領域17を形成することにより、ドリフト層12とソース電極40とのオーミック接合において接触抵抗を小さくすることができるため、導通損失を低減することができる。
【0112】
図6は、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置の構成を示す平面図である。
図6は、炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図6では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0113】
図6を参照して、MOSFET2には第1の主面11aの平面視において外周形状が長軸を含む六角形状であるセルCLが互いに隣接して接触するように複数形成されている。セルCLは、炭化珪素層11に形成されたドリフト層12、ボディ領域13、ソース領域14およびコンタクト領域15を含み、さらにコンタクト領域15に接触して形成されるソース電極40(
図1)を含んでいる。このように、ワイドバンドギャップ半導体装置1を第1の主面11aの平面視における外周形状が長軸を含む六角形状となるように複数に分割することにより、複数のセルCLが形成される。
【0114】
セルCLの外周形状は、一組の長辺Lと当該一組の長辺Lを接続する短辺Sとから構成される六角形状となっている。長辺Lは、六角形状の長軸方向(図中の両矢印に示す方向)に沿って延びている。具体的には、長辺Lは炭化珪素の<1−100>方向に沿って延
びている。複数のセルCLは、長辺Lおよび短辺Sにおいて互いに接触するように形成されている。短辺Sの長さに対する長辺Lの長さの比は1.2以上20以下であり、好ましくは、1.5以上10以下である。たとえば長辺Lの長さは200μmであり、短辺Sの長さは10μmである。なお、六角形状の長軸方向は上記<1−100>方向に限定されず、たとえば<11−20>方向などの任意の方向にすることができる。
【0115】
コンタクト領域15の外周形状は、第1の主面11aの平面視においてセルCLの外周形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。ソース領域14は、第1の主面11aの平面視においてコンタクト領域15を取り囲むように形成されており、外周形状がセルCLの外周形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。ボディ領域13は、第1の主面11aの平面視においてコンタクト領域15およびソース領域14を取り囲むように形成されており、外周形状がセルCLの外周形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。
【0116】
セルCLの外周形状(六角形状)を構成する長辺Lおよび短辺Sは、炭化珪素の<1−100>方向に沿って延びている。セルCLに含まれるボディ領域13、ソース領域14およびコンタクト領域15の外周形状(六角形状)の各辺は、セルCLと同様に炭化珪素の<1−100>方向に沿って延びている。そのため、MOSFET2のチャネル領域(ゲート電極30下のボディ領域13)においてキャリアが移動する方向(図中の方矢印に示す方向)は、<1−100>方向に対して垂直な<11−20>方向に沿った方向となっている。このような構成とすることにより、MOSFET2の動作時において、移動度が高い方向(炭化珪素の<11−20>方向)に沿ってキャリアを移動させることができるため、MOSFET2のオン抵抗を下げることができる。
【0117】
コンタクト領域15には開口部16が設けられている。開口部16の外周形状は、たとえばセルCLの外周形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。開口部16の外周形状は、四角形、他の多角形、あるいは楕円形状であってもよい。開口部16はドリフト層12を第1の主面11aに露出させる。これにより、コンタクト領域15はドリフト層12を取り囲むように形成される。そして、このドリフト層12に接触するようにソース電極40が設けられることによって、ドリフト層12にJFET3のチャネルCH2(
図4参照)が形成される。
【0118】
以上に述べたように、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1では、外周形状が長軸を含む六角形状であるセルCLが複数形成され、各セルCLはソース電極40に接触するコンタクト領域15を含んでいる。これにより、外周形状が正六角形状(すなわち、長軸を含まない六角形状)であるセルが複数形成された従来の半導体装置と比較して、コンタクト領域の面積をより広げることが可能となる。この結果、コンタクト領域15とソース電極40との接触抵抗を低減できるため、MOSFET2の電気的特性を向上させることができる。
【0119】
なお、複数のセルCLの各々において、コンタクト領域15の外周形状を
図7に示すような四角形状としても、
図6に示したワイドバンドギャップ半導体装置1と同様の効果を奏する。
図7は、この発明の実施の形態1の変形例に係るワイドバンドギャップ半導体装置の構成を示す平面図である。
図7は、
図6と同様に炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図7では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0120】
図7を参照して、本変形例に係るワイドバンドギャップ半導体装置1は、
図6に示した実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1と比較して、各セルCLに四角形
状の外周形状を有するコンタクト領域15が複数形成されている点において異なっている。具体的には、平面視において、四角形状のコンタクト領域15はソース領域14に取り囲まれるように複数(たとえば3個)形成されている。複数のコンタクト領域15は、セルCLの外周形状である六角形状の長軸方向に沿って間隔をおいて(等間隔に)形成されている。なお、コンタクト領域15の数は、
図7に示すように各セルCLにおいて3個ずつであってもよいが特に限定されない。また、コンタクト領域15の外周形状は四角形状以外の形状であってもよい。
【0121】
本変形例に係るワイドバンドギャップ半導体装置1では、ソース領域14内に複数のコンタクト領域15を互いに間隔をおいて並べて形成する。これにより、
図6に示したワイドバンドギャップ半導体装置1と比較して、ソース領域14およびコンタクト領域15に対してソース電極40をより容易に接触させることができる。たとえばソース電極40の横軸(六角形状の短軸方向における幅)にばらつきが生じた場合でも、ソース領域14およびコンタクト領域15に対する接触を容易に確保できる。これにより、MOSFET2においてソース電極40の横幅をより狭めることが可能となるため、セルピッチを縮小させた設計も容易になる。
【0122】
コンタクト領域15には開口部16が設けられている。開口部16の外周形状はたとえば四角形状となっている。開口部16の外周形状は、四角形以外の形状(他の多角形あるいは楕円形状など)であってもよい。開口部16はドリフト層12を第1の主面11aに露出させる。これにより、コンタクト領域15はドリフト層12を取り囲むように形成される。そして、このドリフト層12に接触するようにソース電極40が設けられることにより、ドリフト層12にJFET3のチャネルCH2(
図4参照)が形成される。
【0123】
次に、
図8を参照して、この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1の製造方法について説明する。この発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置1の製造方法では、まず、炭化珪素基板準備工程(S10)が実施される。この工程(S10)では、
図9を参照して、たとえば4H−SiCからなるインゴット(図示せず)を切断することにより、主面10a,10bを有する炭化珪素単結晶基板10が準備される。
【0124】
次に、エピタキシャル成長層形成工程(S20)が実施される。この工程(S20)では、
図9を参照して、炭化珪素単結晶基板10の第1の主面10a上にエピタキシャル成長により炭化珪素層11が形成される。
【0125】
次に、イオン注入工程(S30)が実施される。この工程(S30)では、
図10を参照して、まず、たとえばアルミニウム(Al)イオンが第1の主面11aから炭化珪素層11内に注入されることにより、炭化珪素層11内にボディ領域13が形成される。次に、たとえばリン(P)イオンがボディ領域13内に注入されることによりボディ領域13内にソース領域14が形成される。次に、たとえばAlイオンがボディ領域13内に注入されることにより、ボディ領域13内においてソース領域14に隣接するようにコンタクト領域15が形成される。そして、炭化珪素層11においてボディ領域13、ソース領域14およびコンタクト領域15のいずれもが形成されない領域がドリフト層12となる。なお、開口部16において、ドリフト層12は、コンタクト領域15およびボディ領域13に取り囲まれて設けられる。これにより、
図6および
図7に示すように、炭化珪素層11において長軸を含む六角形状からなる外周形状を有するコンタクト領域15と、コンタクト領域15に取り囲まれたドリフト層12と、コンタクト領域15を取り囲み、長軸を含む六角形状からなる外周形状を有するソース領域14と、ソース領域14およびコンタクト領域15を取り囲み、長軸を含む六角形状からなる外周形状を有するボディ領域13とが形成される。
【0126】
次に、活性化アニール工程(S40)が実施される。この工程(S40)では、
図10を参照して、炭化珪素層11が形成された炭化珪素単結晶基板10が加熱されることにより、炭化珪素層11内に導入された不純物が活性化する。これにより、炭化珪素層11内の不純物領域において所望のキャリアが発生する。
【0127】
次に、ゲート絶縁膜形成工程(S50)が実施される。この工程(S50)では、
図11を参照して、たとえば酸素(O
2)を含む雰囲気中において炭化珪素層11が形成された炭化珪素単結晶基板10を加熱することにより、第1の主面11a上に二酸化珪素(SiO
2)からなるゲート絶縁膜20が形成される。
【0128】
次に、ゲート電極形成工程(S60)が実施される。この工程(S60)では、
図11を参照して、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜20上に接触する、ポリシリコンからなるゲート電極30が形成される。
【0129】
次に、層間絶縁膜形成工程(S70)が実施される。この工程(S70)では、
図12を参照して、たとえばCVD法によりゲート絶縁膜20およびゲート電極30を覆うようにSiO
2からなる層間絶縁膜60が形成される。
【0130】
次に、オーミック電極形成工程(S80)が実施される。この工程(S80)では、
図13を参照して、まず、ソース電極40を形成する領域におけるゲート絶縁膜20および層間絶縁膜60がエッチングにより除去される。これにより、ソース領域14、コンタクト領域15および、開口部16を通じてドリフト層12が露出した領域が形成される。次に、この領域にチタン、アルミニウムおよび珪素を含む合金が形成される。具体的には、上記の領域上にチタン層、アルミニウム層および珪素層をこの順で形成し、その後これらの層を加熱してチタン、アルミニウムおよび珪素を含む合金を生成する。あるいは、上記の領域上にチタン、アルミニウムおよび珪素を含む混合層を形成した後、当該混合層を加熱してチタン、アルミニウムおよび珪素を含む合金を生成することも可能である。
【0131】
一方、炭化珪素単結晶基板10の第2の主面10b上においてニッケルからなる膜が形成される。その後、炭化珪素単結晶基板10が加熱されることにより、ニッケルからなる膜の少なくとも一部がシリサイド化する。これにより、炭化珪素層11の第1の主面11aおよび炭化珪素単結晶基板10の第2の主面10b上においてソース電極40およびドレイン電極50がそれぞれ形成される。
【0132】
次に、配線形成工程(S90)が実施される。この工程(S90)では、たとえば蒸着法により、Alや金(Au)などの導電体からなるソース配線層41がソース電極40および層間絶縁膜60を覆うように形成される。また、ソース配線層41と同様にAlやAuなどからなる裏面パッド電極51がドレイン電極50を覆うように形成される。上記工程(S10)〜(S90)が実施されることにより、MOSFET2とJFET3とを集積化したワイドバンドギャップ半導体装置1(
図1)が製造される。
【0133】
この発明の実施の形態1によれば、還流ダイオードとして機能し得るJFETを、1つのMOSFETのセルに集積化させることができる。これにより、還流ダイオードを設けるためにトランジスタセルのサイズ、すなわち、半導体チップの実装面積が増大するのを抑えることができる。この結果、電力変換装置のような、トランジスタ素子と還流ダイオードとを含む回路を、より小型かつ簡素な構成で実現することができる。したがって、炭化珪素に代表されるワイドバンドギャップ半導体を材料として構成されたパワー半導体装置においては、半導体チップの小型化が妨げられることがない。
【0134】
また、この発明の実施の形態1によれば、JFETをMOSFETと共通の製造工程によって製造することができるため、トランジスタ素子と還流ダイオードとを含む回路を簡素なプロセスで製造することができる。
【0135】
<実施の形態2>
図14は、この発明の実施の形態2に係るワイドバンドギャップ半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図14を参照して、この発明の実施の形態2に係るワイドバンドギャップ半導体装置1Aにおいて、炭化珪素層11は、p型埋込領域80(第1の不純物領域)をさらに含む。p型埋込領域80は、たとえばアルミニウムやホウ素などの不純物(アクセプタ)を含むp型領域である。p型埋込領域80は、ボディ領域13よりも第2の主面11b側に位置するようにドリフト層12の内部に埋め込まれている。すなわち、p型埋込領域80は、ドリフト層12によってボディ領域13から隔てられている。p型埋込領域80は、エピタキシャル成長層形成工程(
図8のS20)において、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層11を形成する過程で、注入マスクを用いたアクセプタイオン(第2の導電型を付与するための不純物イオン)の注入により形成することができる。
【0136】
なお上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0137】
この発明の実施の形態2によれば、上記の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらにこの発明の実施の形態2によれば、以下に述べるように、p型埋込領域80によって、ソース電極40の直下に位置するドリフト層12(JFET3のチャネルに相当)にかかる電界が緩和される。これにより、MOSFE2のオフ時におけるリーク電流の発生を抑制できるため、JFET3の耐圧への影響を回避することができる。
【0138】
図15は、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0の場合におけるワイドバンドギャップ半導体装置1Aの状態を模式的に示した断面図である。
図15において、p型埋込領域80は、ソース配線層41と電気的に接続されている。したがって、埋込領域80にはソース電極40に与えられる電位V
S(接地電位)と同じ電位が与えられる。すなわち、埋込領域80は、ボディ領域13およびコンタクト領域15と同じ電位(接地電位)となっている。
【0139】
図15を参照して、p型埋込領域80とドリフト層12との間のpn接合には逆バイアス電圧が印加されているため、p型埋込領域80およびドリフト層12の接合面から、p型埋込領域80側およびドリフト層12側に空乏層が広がる。このp型埋込領域80およびドリフト層12の接合面からドリフト層12側に延びる空乏層と、ボディ領域13およびドリフト層12の接合面からドリフト層12側に延びる空乏層(
図3参照)とによって、
図15に示すようにボディ領域13と炭化珪素層11の第2の主面11bとの間に、十分な長さを有する空乏層72が形成され得る。これにより、ドレイン電極50およびソース電極40間の電圧について、p型埋込領域80と炭化珪素層11の第2の主面11bとの間で負担される割合が高められる。言い換えれば、p型埋込領域80よりも浅い部分(
図14におけるより上方の部分)で負担される電圧が軽減される。これにより、p型埋込領域80よりも浅い部分での電界強度を小さくすることができる。言い換えれば、電界集中が生じやすい、ソース電極40直下のドリフト層12の電界強度を小さくすることができる。これにより、リーク電流がドレイン電極50からソース電極40へ流れるのが抑制されるため、ドレイン電極50およびソース電極40間に高い電圧を印加することができる。つまり、MOSFET2を含むワイドバンドギャップ半導体装置1A全体について高い耐圧を維持することができる。
【0140】
本実施の形態では、p型埋込領域80は、ドリフト層12の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有することが好ましい。p型埋込領域80の不純物濃度をドリフト層12の不純物濃度よりも十分に高くすることにより、ドレイン電位V
Dとソース電位V
Sとの電位差が高まった場合に、p型埋込領域80から炭化珪素層11の第2の主面11bへ空乏層が十分に延びる前にp型埋込領域80が完全に空乏化してしまうことが防止される。これにより、p型埋込領域80と第2の主面11bとの間に、十分な長さを有する空乏層が形成されるため、リーク電流が流れるのを確実に抑制することができる。
【0141】
一方、p型埋込領域80の不純物濃度をドリフト層12の不純物濃度に対して十分に高くしない場合には、p型埋込領域80が完全に空乏化される。この場合には、JFET3の寄生容量を低減することができる。
【0142】
図15に示したワイドバンドギャップ半導体装置1Aにおいて、p型埋込領域80がソース電極40に電気的に接続されることにより、p型埋込領域80とボディ領域13とが同電位となっている。p型埋込領域80の電位が固定されているため、ワイドバンドギャップ半導体装置1Aの動作を安定化させることができる。さらに、p型埋込領域80がソース電極40に接続される結果、正孔をp型埋込領域80に効果的に注入することができる。したがって、JFET3の応答速度を高めることができる。
【0143】
変形例として、p型埋込領域80の電位を浮遊電位(フローティング)とした構造が用いられてもよい。これによれば、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0のとき、p型埋込領域80の電位は、ボディ領域13の電位より高く、かつドレイン電位V
Dよりも低い電位となる。したがって、p型埋込領域80とドリフト層12との間の電位差が、ボディ領域13の電位とドリフト層12の電位との間の電位差よりも小さくなる。これにより、p型埋込領域80とボディ領域13とを同電位とする場合(
図15)と比較して、ボディ領域13とドリフト層12との接合面からドリフト層12側に、より長く空乏層を延ばすことができる。この結果、JFET3の耐圧を確保することができる。
【0144】
上記のp型埋込領域80の電位をフローティングとした構造においては、p型埋込領域80は、ボディ領域13からp型埋込領域80にキャリア(正孔)を供給できるように、ボディ領域13の近傍に設けられることが好ましい。具体的には、V
DS<0のとき、JFET3に電流が流れる。この場合、ドレイン電極50から注入された電子がソース電極40へと移動可能である。これにより、ドリフト層12側に形成された空乏層72を縮小(解消)することができる。一方、ソース電極40からボディ領域13に正孔が注入されることで、ボディ領域13の空乏化を解消することができる。本実施の形態ではさらに、ボディ領域13からp型埋込領域80に正孔が注入されることにより、p型埋込領域80の空乏化を短時間で解消することができる。このようにp型埋込領域80に対する正孔の注入を円滑に行なうことができるため、JFET3の応答速度を向上させることができる。
【0145】
好ましくは、炭化珪素層11の厚さ方向(
図14の縦方向)におけるボディ領域13とp型埋込領域80との間の距離は5μm以下である。この「距離が5μm以下」とは、たとえばボディ領域13とp型埋込領域80との間の最短の距離が5μm以下であってもよい。逆に、ボディ領域13とp型埋込領域80との間の最大の距離が5μm以下であってもよい。たとえば、P. A. Ivanov 他6名による「High Hole lifetime (3.8μm) in 4H-SiC diodes with 5.5kV blocking voltage」、Electronics Letters、1999年、第35巻、第16号、1382頁〜1383頁によれば、5.5kV耐圧の4H−SiCダイオードにおける正孔の寿命が0.6〜3.8μs(300〜550K)、正孔の拡散長が16〜22μm(不純物濃度:6×10
14cm
−3)である。ボディ領域13とp型埋込領域80との間の距離を5μm以下とすることにより、ボディ領域13か
らp型埋込領域80へ正孔を注入することが可能になる。これにより、p型埋込領域80の空乏化の解消および電位回復を達成することができる。
【0146】
より好ましくは、炭化珪素層11の厚さ方向におけるボディ領域13とp型埋込領域80との間の距離は2μm以下である。上記文献から、ボディ領域13とp型埋込領域80との間の距離を2μm以下とすることにより、数十ns(ナノ秒)以下の時間でp型埋込領域80の空乏化の解消および電位回復を達成することが期待できる。したがって、高速の応答が可能なワイドバンドギャップ半導体装置を実現することができる。
【0147】
また、本実施の形態においては、V
DS>0の状態において、ボディ領域13およびp型埋込領域80の各々から炭化珪素層11の第2の主面11b側へ延びる空乏層が形成される。すなわち、ボディ領域13に加えてp型埋込領域80もJFET3のゲートとなり得る。このため、上記の実施の形態1と比較して、リーク電流を遮断するためにボディ領域13が負担すべき空乏層の大きさを軽減することができる。したがって、変形例として、JFET3を、ノーマリオン型(ディプレッション型ともいう)、すなわち閾値電圧がゼロよりも低く、ゲート電位およびソース電位が同電位のときのオン状態となるトランジスタとすることができる。
図16は、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0の場合におけるワイドバンドギャップ半導体装置1Aの変形例の状態を模式的に示した断面図である。
図16に示すワイドバンドギャップ半導体装置1Aの変形例において、JFET3はノーマリオン型のトランジスタである。したがって、ゲート電位V
Gおよびソース電位V
Sが同電位の状態においてJFET3はオン状態となり、チャネルが完全に空乏化されない。このような場合でも、p型埋込領域80の電位が負電位に帯電しているため、p型埋込領域80から第2の主面11bへ延びる空乏層74によってリーク電流を遮断することができる。還流ダイオードにノーマリオン型のJFETを用いることにより、ノーマリオフ型のJFETを用いる場合と比較して、還流ダイオードにおける順方向の電圧降下を小さくすることができる。これにより、JFETの導通損失を低減することができる。
【0148】
以下、ワイドバンドギャップ半導体装置1Aにおけるp型埋込領域80の配置位置について、
図17から
図26を参照して詳細に説明する。
【0149】
(第1の配置例)
図17は、p型埋込領域80の第1の配置例を示す平面図である。
図18は、
図17のXVIII−XVIII線に沿った断面図である。
図17は、炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図17では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0150】
図17および
図18を参照して、p型埋込領域80は、第1の主面11aの平面視において、開口部16内に配置される。詳細には、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80とボディ領域13との間には間隙が設けられている。これにより、p型埋込領域80は、第1の主面11aの平面視において、ボディ領域13と重ならないように配置される。
【0151】
ドレイン・ソース間電圧V
DS<0の場合、JFET3がオン状態となり電流がソース電極40からドレイン電極50へ流れる。第1の配置例によれば、この電流の経路がp型埋込領域80によって狭められるのが軽減されるため、JFET3のオン抵抗を低減することができる。
【0152】
p型埋込領域80の外周形状は、第1の主面11aの平面視において、セルCLの外周
形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。p型埋込形状80の外周形状は、四角形、他の多角形、あるいは楕円形状であってもよい。
【0153】
コンタクト領域15およびボディ領域13の各々は、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80を取り囲むように形成されており、外周形状がセルCLの外周形状と相似形であって長軸を含む六角形状となっている。p型埋込領域80の外周形状をなす六角形状の長軸は、セルCLと同様に炭化珪素の<1−100>方向(図中の両矢印に示す方向)に沿って延びている。
図18に示される距離d1は、<1−100>方向に対して垂直な<11−20>方向における、ボディ領域13と、そのボディ領域13に隣接するp型埋込領域80との間の距離である。
【0154】
(第2の配置例)
図19は、p型埋込領域80の第2の配置例を示す平面図である。
図18は、
図19のXVIII−XVIII線に沿った断面図である。
図19は、
図17と同様に炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図19では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0155】
図19を参照して、第2の配置例は、
図17に示した第1の配置例と比較して、各セルCLに四角形状の外周形状を有するp型埋込領域80が複数形成されている点において異なっている。第2の配置例では、複数のp型埋込領域80の各々は、開口部16内に位置するように配置される。
【0156】
具体的には、第1の主面11aの平面視において、四角形状のp型埋込領域80は、開口部16内に複数(たとえば5個)形成されている。複数のp型埋込領域80は、セルCLの外周形状である六角形状の長軸方向に沿って間隔をおいて(等間隔に)形成されている。
【0157】
複数のセルCLの各々において、p型埋込領域80の外周形状を
図19に示すような四角形状としても、上記第1の配置例と同様の効果を奏する。なお、p型埋込領域80の数は、
図19に示すように各セルCLにおいて5個ずつであってもよいが特に限定されない。また、p型埋込領域80の外周形状は四角形状以外の形状であってもよい。
【0158】
第2の配置例では、第1の主面11aの平面視において、開口部16内に複数のp型埋込領域80を互いに間隔をおいて並べて形成する。これにより、
図17に示した第1の配置例と比較して、JFET3を流れる電流の経路が狭められるのをさらに軽減することができる。よって、JFET3のオン抵抗を、より一層低減することが可能となる。
【0159】
(第3の配置例)
図20は、p型埋込領域80の第3の配置例を示す平面図である。
図21は、
図20のXXI−XXI線に沿った断面図である。
図20は、
図17と同様に炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図20では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0160】
図20を参照して、p型埋込領域80は、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80の一部分がボディ領域13に重なるように配置される。言い換えれば、p型埋込領域80の一部分が開口部16内に配置される。詳細には、第1の主面11aの平面視
において、p型埋込領域80とボディ領域13との間には重なり部分が設けられている。
図21に示される距離d2は、炭化珪素の<1−100>方向に対して垂直な<11−20>方向における、ボディ領域13と、そのボディ領域13に隣接するp型埋込領域80との重なり部分の距離である。
【0161】
図15および
図16に示したように、ドレイン・ソース間電圧V
DS>0の場合、ボディ領域13およびドリフト層12の接合面から第2の主面11bに向かって空乏層が延びるとともに、p型埋込領域80およびドリフト層12の接合面から第2の主面11bに向かって空乏層が延びる。第3の配置例によれば、これら2つの空乏層をつながりやすくすることができる。これにより、ソース電極40の直下に位置するドリフト層12(JFET3のチャネル)にかかる電界を、より一層緩和することができる。この結果、リーク電流の発生をより確実に抑制できるため、JFET3の耐圧を維持することができる。
【0162】
さらに、第3の配置例によれば、p型埋込領域80の電位をフローティングとした構造において、ボディ領域13からp型埋込領域80にキャリア(正孔)を供給しやすくなる。ボディ領域13からp型埋込領域80に効果的に正孔が注入されることにより、p型埋込領域80の空乏化を短時間で解消することができる。これにより、JFET3の応答速度をより一層向上させることができる。
【0163】
図22は、第3の配置例が適用されたワイドバンドギャップ半導体装置1Aを示す平面図である。
図22は、炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図22では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0164】
図22を参照して、セルCLに含まれるボディ領域13の外周形状の各辺は、六角形状の長軸方向(炭化珪素の<1−100>方向(図中の両矢印に示す方向))に沿って延びている。これに対して、p型埋込領域80は、<1−100>方向に対して垂直な方向(図中の片矢印に示す方向)に沿って延びている。そして、p型埋込領域80は、<1−100>方向に沿って複数並べて配置される。これにより、ボディ領域13とp型埋込領域80とは、第1の主面11aの平面視において互いに交差するように配置される。
【0165】
上記の構成において、ボディ領域13とp型埋込領域80との交差部分は、平面視におけるボディ領域13とp型埋込領域80との間の重なり部分となる。したがって、上述したように、V
DS>0の状態において、ボディ領域13およびドリフト層12の接合面から第2の主面11bに向かって延びる空乏層と、p型埋込領域80およびドリフト層12の接合面から第2の主面11bに向かって延びる空乏層とがつながりやすくなる。これにより、リーク電流の発生をより確実に抑制できるため、JFET3の耐圧を高めることができる。
【0166】
また、p型埋込領域80の電位をフローティングとした構造においては、V
DS<0のときに、ボディ領域13からp型埋込領域80にキャリア(正孔)を効果的に注入することができる。これにより、JFET3の応答速度をより一層向上させることができる。
【0167】
さらに、第1の主面11aの平面視において、複数のp型埋込領域80は、各セルCLの開口部16内に互いに間隔をおいて並べて配置されるため、JFET3を流れる電流の経路が狭められるのを軽減することができる。よって、JFET3のオン抵抗を低減することができる。
【0168】
(第4の配置例)
図23は、p型埋込領域80の第4の配置例を示す断面図である。
図23を参照して、第4の配置例は、上記第3の配置例と比較して、p型埋込領域80に、ドリフト層12が厚さ方向に沿ってつながるように貫通部81が設けられている点において異なっている。貫通部81は、たとえばp型埋込領域80に設けられた貫通孔である。なお、第4の配置例においては、貫通部81の周りをp型埋込領域80が完全に取り囲んでいる必要はない。貫通部81とは、厚さ方向に垂直な面に沿って広がるp型埋込領域80がこの面(すなわち平面視において)パターンを有する場合における、パターンの非形成部である。たとえば、非形成部を完全に取り囲むことで非形成部を貫通孔として構成してもよく、あるいは形成部が島状に存在することで非形成部を網状に構成してもよい。
【0169】
貫通部81の開口幅は、V
DS>0のときに貫通部81内のドリフト層12が完全に空乏化されるように調整される。貫通部81の開口幅とは、貫通部81の側壁に露出するp型埋込領域80の間の最短距離である。
【0170】
第4の配置例によれば、ドレイン・ソース間電圧V
DS<0のとき、貫通部81中に位置するドリフト層12を通ってJFET3を流れる電流の経路が形成され得る。このため、上記第3の配置例のように、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80の一部分がボディ領域13に重なるように配置されている場合においても、JFET3の電流経路がp型埋込領域80によって狭められるのを軽減することができる。これにより、JFET3の高耐圧を維持しつつ、JFET3のオン抵抗を下げることができる。
【0171】
図24は、p型埋込領域の第4の配置例が適用されたワイドバンドギャップ半導体装置1Aを示す平面図である。
図24は、炭化珪素層11の第1の主面11aの平面視におけるMOSFET2およびJFET3の構造を示している。なお、
図24では、炭化珪素層11の第1の主面11a上に形成されるゲート絶縁膜20、ゲート電極30、ソース電極40、ソース配線層41および層間絶縁膜60は記載されていない。
【0172】
図24を参照して、p型埋込領域80において、貫通部81は、第1の主面11aの平面視において開口部16と重なるように形成されている。したがって、p型埋込領域80は、第1の主面11aの平面視において、ボディ領域13と重なるように配置されている。
【0173】
(第5の配置例)
図25は、p型埋込領域80の第5の配置例を示す断面図である。
図25を参照して、第5の配置例は、上記第1から第4の配置例と比較して、炭化珪素層11がn型埋込領域82(第2の不純物領域)をさらに含む点において異なっている。
【0174】
n型埋込領域82は、たとえば窒素などの不純物(ドナー)を含むn型領域である。n型埋込領域82は、ボディ領域13よりも第2の主面11b側に位置するようにドリフト層12の内部に埋め込まれている。n型埋込領域82は、エピタキシャル成長層形成工程(
図8のS20)において、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層11を形成する過程で、注入マスクを用いたドナーイオン(第1の導電型を付与するための不純物イオン)の注入により形成することができる。
【0175】
n型埋込領域82は、ドリフト層12の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する。好ましくは、n型埋込領域82は、ドリフト層12の不純物濃度の1.5倍以上の不純物濃度を有する。したがって、n型不純物濃度に基づいて、ドリフト層12内のn型埋込領域82を特定することができる。たとえば走査型静電容量顕微鏡(SCM)を用いて、炭化珪素層11の厚さ方向に沿ってn型不純物濃度を解析することによって、n型埋込領域82を特定することができる。
【0176】
n型埋込領域82は、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80に並設される。
図25に示すように、たとえば、n型埋込領域82は、第1の主面11aの平面視において、p型埋込領域80を挟んで両側に配置される。なお、
図25では、p型埋込領域80を挟んで2つのn型埋込領域82が配置されているが、第1の主面11aの平面視において、この2つのn型埋込領域82がp型埋込領域80の周りを取り囲むようにつながることによって実質的に単一のn型埋込領域82となっていてもよい。また、n型埋込領域82はp型埋込領域80と接していてもよい。
【0177】
第5の配置例によれば、n型埋込領域82によって、ドレイン・ソース間電圧V
DS<0の場合におけるJFET3のオン抵抗を低減することができる。これは、p型埋込領域80からドリフト層12中への厚さ方向に垂直な方向(
図25の横方向)の空乏化の進展が、n型埋込領域82によって抑制されるためである。したがって、JFET3の高耐圧を維持しつつ、JFET3のオン抵抗を下げることができる。
【0178】
p型埋込領域80は、n型埋込領域82の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有することが好ましい。ドレイン・ソース間電圧V
DS>0の場合に、p型埋込領域80から第2の主面11bへ空乏層が十分に延びる前にp型埋込領域80が完全に空乏化してしまうのを防止するためである。これにより、p型埋込領域80と第2の主面11bとの間に、十分な長さを有する空乏層を形成することができるため、MOSFET2の耐圧がより高められる。
【0179】
図26は、
図25に示すワイドバンドギャップ半導体装置1Aの断面図の一部を拡大した部分拡大図である。
図26を参照して、n型埋込領域82のトップラインは、p型埋込領域80のトップラインTLよりも厚さ方向において第1の主面11a側に位置することが好ましい。
【0180】
n型埋込領域82のトップラインは、炭化珪素層11の第1の主面11aから炭化珪素層11の厚さ方向に沿ったn型不純物濃度のプロファイルにおいて、n型不純物濃度の急峻な上昇が生じる位置とすることができる。p型埋込領域80のトップラインTLとは、p型埋込領域80の上側の接合面の位置を示す仮想的な線である。なお、「p型埋込領域80の上側の接合面」とは、p型埋込領域80とドリフト層12との接合面のうち、炭化珪素層11の第1の主面11aに対向するように形成された接合面であり、かつ、炭化珪素単結晶基板10の第2の主面10bよりも第1の主面11aに位置にある接合面である。
【0181】
n型埋込領域82は、トップラインTLを含むようにドリフト層12の内部に配置される。詳細には、n型埋込領域82は、第1の主面11a側に位置する第1の端部と、第2の主面11b側に位置する第2の端部とを有する。p型埋込領域80のトップラインTLは、第1の主面11aから第2の主面11bへと向かう深さ方向における、n型埋込領域82の第1の端部の位置から、n型埋込領域82の第2の端部の位置までの範囲内に位置する。
【0182】
図26において、p型埋込領域80は、第2の主面11bに向かってn型埋込領域82よりも延びている。これにより、V
DS>0の状態において、p型埋込領域80から第2の主面11bへと向かう方向(
図26の下方向)の空乏化の進展が、n型埋込領域82によって抑制されるのを防止することができる。よって、p型埋込領域80と第2の主面11bとの間に、十分な長さを有する空乏層を形成することができるため、MOSFET2の耐圧が更に高められる。
【0183】
n型埋込領域82は、第1の主面11aに向かってp型埋込領域80よりも延びている。V
DS<0の状態において、p型埋込領域80から第1の主面11aへと向かう方向(
図26の上方向)へ空乏層が延びる。このとき、空乏層は厚さ方向に垂直な方向(
図26の横方向)にも広がり得る。この空乏層の横方向の広がりを、n型埋込領域82によって抑制することができる。この結果、JFET3の電流流路の狭まりを軽減できるため、JFET3のオン抵抗を、より一層低減することができる。
【0184】
なお、上述した実施の形態1および2では、縦型のプレーナ型MOSFETを一例として説明したが、MOFETの構造はこれに限定されるものではない。たとえばこの発明に係るワイドバンドギャップ半導体装置は、トレンチ型MOSFETにも適用することが可能である。
図27は、本発明の実施の形態1に係るワイドバンドギャップ半導体装置の他の構成例を示す断面模式図である。
図27を参照して、炭化珪素層11の第2の主面11aには(ゲート)トレンチTRが設けられている。トレンチTRは、側壁部SWおよび底部BTからなる。側壁部SWは、第1の主面11aからソース領域14およびボディ領域13を貫通してドリフト層12に至っている。底部BTは、側壁部SWと接し、かつドリフト層12に位置している。側壁部SWは、ボディ領域13上においてMOSFET2のチャネル面を含む。側壁部SWは、炭化珪素層11の第1の主面11aに対して傾斜している。断面視(第1の主面11bに平行な視野)において、トレンチTRは開口に向かってテーパ状に広がっている。好ましくは、側壁部SWは特殊面を含む。特殊面とは、面方位{0−33−8}を有する第1の面を含む面である。より好ましくは、特殊面は、第1の面を微視的に含み、さらに面方位{0−11−1}を有する第2の面を微視的に含む。さらに好ましくは、第1の面および第2の面は、面方位{0−11−2}を有する複合面を含む。また、特殊面は、{000−1}面に対して、巨視的に62°±10°のオフ角を有する面である。
【0185】
なお、トレンチTRの側壁部SWは、炭化珪素層11の第1の主面11aに対して垂直であってもよい。
【0186】
ゲート絶縁膜20は、トレンチTRの側壁部SWおよび底部BTを覆っている。ゲート電極30はゲート絶縁膜20上に設けられる。すなわち、ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20に接し、トレンチTRの内部に設けられている。
【0187】
図27に示すトレンチ型MOSFETにおいても、開口部16の下のドリフト層12をチャネルとするJFETが形成されている。したがって、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0188】
なお、上記実施の形態1および2では、ワイドバンドギャップ半導体装置に配置されるトランジスタとしてMOSFETを例示した。しかしながら、この発明の実施の形態に係るワイドバンドギャップ半導体装置に配置されるトランジスタ素子は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。
【0189】
また、上記実施の形態1および2では、炭化珪素層11は、全体としてn型の炭化珪素の層である。すなわち、上記実施の形態1および2では、炭化珪素層11の導電型である第1の導電型はn型であり、ボディ領域13の導電型である第2の導電型はp型である。p型の領域をn型の炭化珪素層に形成することによって、ワイドバンドギャップ半導体装置の製造し易さを向上させることができる。しかしながら第1の導電型がp型であり、かつ第2の導電型がn型であってもよい。
【0190】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示さ
れ、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。