(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229548
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/46 20060101AFI20171106BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20171106BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H04N1/46 Z
G06T1/00 510
H04N1/40 D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-41366(P2014-41366)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-167323(P2015-167323A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年12月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】河内 亮太
【審査官】
豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−135511(JP,A)
【文献】
特開2008−028802(JP,A)
【文献】
特開平10−023279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46−62
G06T 1/00
H04N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を構成する画素各々の彩度を変換する彩度変換部と、
前記画像の所定の領域に対応する彩度である代表彩度を決定する代表彩度決定部と、
を有し、
前記彩度変換部は、前記代表彩度決定部で決定された代表彩度と異なる彩度を示す画素について、(1)式に基づいて彩度を変換する、
画像処理装置。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×α+sbar (1)
(但し、変換前の彩度をS(x、y)、変換後の彩度をS’(x、y)、前記代表彩度をsbar、前記所定の値を前記画像中の彩度の最大値と最小値との差で割った値をαとする。)
【請求項2】
前記代表彩度決定部は、前記所定の領域に含まれる画素の彩度の平均値を算出し、前記平均値を代表彩度として決定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記彩度変換部は、前記画像中の彩度の最大値と最小値との差が所定の値となるように彩度を変換する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記代表彩度と前記画像中の彩度の最小値との差にαを乗じた値を、前記代表彩度から引いた値が、0よりも小さい場合、
前記彩度変換部は、
前記代表彩度よりも彩度が小さい画素については、前記(1)式のαに代えて、前記代表彩度を、前記代表彩度と前記画像中の彩度の最小値との差で割った値を用い、
前記代表彩度よりも彩度が大きい画素については、前記(1)式のαに代えて、前記所定の値と前記代表彩度との差を、前記画像中の彩度の最大値と前記代表彩度との差で割った値を用いて彩度を変換する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記彩度変換部は、前記画素各々の画素値を変換することで彩度を変換する請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記彩度変換部は、変換後の彩度と変換前の彩度との比に基づいて前記画素値を変換する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
画像を構成する画素各々の彩度を変換する彩度変換部、
前記画像の所定の領域に対応する彩度である代表彩度を決定する代表彩度決定部
として機能させるための画像処理プログラムであって、
前記彩度変換部は、前記代表彩度決定部で決定された代表彩度と異なる彩度を示す画素について、(1)式に基づいて彩度を変換する、
画像処理プログラム。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×α+sbar (1)
(但し、変換前の彩度をS(x、y)、変換後の彩度をS’(x、y)、前記代表彩度をsbar、前記所定の値を前記画像中の彩度の最大値と最小値との差で割った値をαとする。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
良好な処理後画像を提供することを目的とする画像処理装置が特許文献1に開示されている。この画像処理装置は、原画像の色みを示す色成分に対して補正処理を行い、彩度(色の鮮やかさ)を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−274427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像処理装置は、画素値のコントラストを良好にするなどの目的で、彩度を調整する場合、調整前に適度な彩度の領域があっても、該領域の彩度が変わってしまい、該調整後の画像を見た人が不自然に感じる彩度となってしまうことがある。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、彩度を調整する際に、該調整後の画像を見た人が不自然に感じる彩度となってしまうことを防ぐ画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、画像を構成する画素各々の彩度を変換する彩度変換部と、前記画像の所定の領域に対応する彩度である代表彩度を決定する代表彩度決定部と、を有し、前記彩度変換部は、前記代表彩度決定部で決定された代表彩度と異なる彩度を示す画素について
、(1)式に基づいて彩度を変換する
、画像処理装置である。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×α+sbar (1)
(但し、変換前の彩度をS(x、y)、変換後の彩度をS’(x、y)、前記代表彩度をsbar、前記所定の値を前記画像中の彩度の最大値と最小値との差で割った値をαとする。)
【0007】
また、本発明の一態様は、コンピュータを、画像を構成する画素各々の彩度を変換する彩度変換部、前記画像の所定の領域に対応する彩度である代表彩度を決定する代表彩度決定部として機能させるための画像処理プログラムであって、前記彩度変換部は、前記代表彩度決定部で決定された代表彩度と異なる彩度を示す画素について
、(1)式に基づいて彩度を変換する
、画像処理プログラムである。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×α+sbar (1)
(但し、変換前の彩度をS(x、y)、変換後の彩度をS’(x、y)、前記代表彩度をsbar、前記所定の値を前記画像中の彩度の最大値と最小値との差で割った値をαとする。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、画像処理装置及び画像処理プログラムは、彩度を調整する際に、不自然な彩度となってしまうことを防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における画像処理装置10の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】同実施形態における入力画像Iの彩度の分布sdと、補正画像I’の彩度の分布sd’とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、画像処理装置10の構成を示す概略ブロック図である。画像処理装置10は、入力された原画像Iに対して、彩度(色の鮮やかさ)の調整を目的として、彩度を補正し、該補正結果である補正画像I’を出力する。画像処理装置10は、彩度算出部11と、注目領域設定部12と、平均彩度算出部13と、彩度変換部17とを含んで構成される。
【0011】
彩度指標生成部11には、原画像Iを構成する画素各々の赤、緑、青各々の画素値が入力される。輝度値生成部11は、画素毎に、式(1)のように、該画素の赤、緑、青の画素値のうちの最大値Mから最小値mを引いた値Sを、該画素の彩度として算出する。
S(x、y)=M−m ・・・(1)
ただし、M=MAX[R(x、y)、G(x、y)、B(x、y)]、m=MIN[R(x、y)、G(x、y)、B(x、y)]である。MAX[]は、括弧内の最大値を返す関数であり、MIN[]は、括弧内の最小値を返す関数である。R(x、y)は、座標(x、y)の画素の赤の画素値であり、G(x、y)は、座標(x、y)の画素の緑の画素値であり、B(x、y)は、座標(x、y)の画素の青の画素値である。
【0012】
なお、本実施形態では、式(1)を用いて彩度を算出するが、例えば、式(2)や式(3)を用いて算出してもよい。
S=(M−m)/(1−|M+m−1|) ・・・(2)
S=(M−m)/M ・・・(3)
ただし、式(2)を用いる場合、M=m=0またはM=m=1のときは、S=0である。また、式(3)を用いる場合、M=m=0のときは、S=0である。
【0013】
注目領域設定部12は、入力画像中において、彩度が適度であると思われる注目領域を指定する。該注目領域の指定は、ユーザが、入力画像を見て判断して行っても良いし、注目領域設定部12が、注目領域を示す情報を予め記憶しており、該情報を読み出すことで行っても良い。なお、主要被写体については彩度が適度になっていることが多いので、上述の情報は、主要被写体が占めていることが多い、画像の中央部を示していることが望ましい。なお、注目領域設定部12は、入力画像に対して顔検出などを行って、主要被写体の領域を検出し、該注目領域を指定するようにしてもよい。
【0014】
平均彩度算出部13(代表彩度決定部)は、注目領域設定部12が指定した注目領域の彩度を代表する値として、注目領域における彩度の平均値sbarを算出する。なお、本実施形態では、注目領域の彩度を代表する値として、平均値を用いるが、最頻値や、中央値など、その他の値を用いるようにしてもよい。
【0015】
彩度変換部17は、彩度算出部11が算出した各画素の彩度と、平均彩度算出部13が算出した注目領域の彩度の平均値とを用いて、入力画像の彩度を調整し、補正画像I'を生成する。このとき、彩度変換部17は、入力画像の彩度の分布幅が、所定の幅になり、かつ、彩度が注目領域の平均値と一致する画素の彩度が保存されるように、入力画像を構成する画素各々の画素値を変換することで、彩度を調整する。なお、本明細書において彩度の分布幅とは、画像中の彩度の最大値と最小値との差で定義される。以下、彩度変換部17の詳細について説明する。
【0016】
彩度変換部17は、最小値最大値算出部14、変換係数算出部15、画素値変換部16を含んで構成される。最小値最大値算出部14は、彩度の分布幅が所定の幅w_targetとなるように、彩度調整後の彩度の最小値と、最大値とを算出する。所定の幅w_targetは、ユーザが指定するようにしてもよいし、例えば、彩度の取り得る範囲の幅など、予め決められていても良い。本実施形態において、最小値最大値算出部14による彩度調整後の最小値s’_minの算出式は、式(4)であり、最大値s’_maxの算出式は、式(5)である。
s’_min=sbar−α(sbar−smin) ・・・(4)
s’_max=sbar+α(smax−sbar) ・・・(5)
【0017】
ここで、sbarは、平均彩度算出部13が算出した平均値であり、sminは、彩度算出部11が算出した入力画像の彩度のうちの最小値であり、smaxは、彩度算出部11が算出した入力画像の彩度のうちの最大値である。また、αは、式(6)のように、所定の幅w_targetを、入力画像の彩度の分布幅(smax−smin)で割った値である。
α=w_target/(smax−smin) ・・・(6)
【0018】
なお、式(4)の右辺が負の値となるときは、最小値最大値算出部14は、最小値s’_minと、最大値s’_maxは、以下の式(7)、(8)とする。
s’_min=0 ・・・(7)
s’_max=w_target ・・・(8)
【0019】
変換係数算出部15は、画素各々について、彩度の変換係数β(x、y)を算出する。変換係数βを算出するために、まず、変換係数算出部15は、彩度調整後に、画素各々がとるべき彩度S’(x、y)を、該画素の彩度S(x、y)がsbar以上のときは式(9)を用いて、S(x、y)がsbar未満のときは式(10)を用いて算出する。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×(s’_max−sbar)/(smax−sbar)+sbar ・・・(9)
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×(s’_min−sbar)/(smin−sbar)+sbar ・・・(10)
【0020】
なお、式(9)に、式(5)を代入した式も、式(10)に、式(4)を代入した式も、下記の式(9’)となる。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×α+sbar ・・・(9’)
したがって、本実施形態では、式(4)の右辺が0以上であるときは、とるべき彩度は、当該画素の彩度から代表彩度である平均値sbarを引いた値に、倍率αを乗じた後、平均値sbarを加えた値である。
【0021】
一方、式(9)に、式(8)を代入した式は、式(9”)となり、式(10)に、式(7)を代入した式は、式(10”)となる。
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×(w_target−sbar)/(smax−sbar)+sbar ・・・(9”)
S’(x、y)=(S(x、y)−sbar)×sbar/(sbar−smin)+sbar ・・・(10”)
【0022】
したがって、式(4)の右辺が負の値であるときは、代表彩度である平均値sbarよりも彩度が小さい画素については、倍率αに変えて、平均値sbarを、平均値sbarと最小値sminとの差で割った値を用いて、とるべき彩度を算出する。また、平均値sbarよりも彩度が大きい画素については、倍率αに変えて、所定の幅w_targetから平均値sbarを引いた値を、最大値sminから平均値sbarを引いた値で割った値を用いて、とるべき彩度を算出する。
【0023】
変換係数算出部15は、式(11)のように、該画素がとるべき彩度S’(x、y)を、該画素の彩度S(x、y)で割ることで、変換係数β(x、y)を算出する。
β(x、y)=S’(x、y)/S(x、y) ・・・(11)
【0024】
画素値変換部16は、式(12)を用いて、彩度調整後の各画素の赤、緑、青の画素値I’(x、y)を算出し、補正画像I’として出力する。この式(12)を用いることで、g(x、y)の値を保存しつつ、彩度がS’(x、y)となるように画素値を変換することができる。
I’(x、y)=β(x、y)×(I(x、y)−g(x、y))+g(x、y) ・・・(12)
ここで、I(x、y)は、I’(x、y)が赤の画素値であるときは、入力画像Iの該画素の赤の画素値であり、緑の画素値であるときは、入力画像Iの該画素の緑の画素値であり、青の画素値であるときは、入力画像Iの該画素の青の画素値である。
【0025】
また、g(x、y)は、該画素の画素値の線形結合により算出される値であり、例えば、式(13)により算出される輝度値であってもよいし、赤、緑、青のうちの最大値である明度であってもよい。
g(x、y)=0.299×R(x、y)+0.587×G(x、y)+0.114×B(x、y) ・・・(13)
なお、式(13)において、R(x、y)は、該画素の赤の画素値、G(x、y)は、該画素の緑の画素値、B(x、y)は、該画素の青の画素値である。
【0026】
図2は、入力画像Iの彩度の分布sdと、補正画像I’の彩度の分布sd’とを比較する図である。
図2において、横軸は、彩度であり、縦軸は頻度である。また、実線のグラフsdは、入力画像Iの一例の彩度の分布である。そして、一点鎖線のグラフsd’は、該入力画像Iの一例を、画像処理装置10が彩度調整した結果である補正画像I’の一例の彩度の分布である。このように、画像処理装置10が彩度調整した結果の分布sd’は、元の分布sdを、注目領域の平均彩度sbarを中心にして、所定の幅に変換したものとなっている。
【0027】
なお、本実施形態では、原画像Iが、該原画像Iを構成する画素各々の赤、緑、青の画素値により表される場合を説明したが、輝度値と、赤の色差値、青の色差値で表されるYUV形式など、他の形式により表される場合でも、本実施形態と同様にして彩度を調整することができる。
【0028】
また、本実施形態では、彩度変換部17は、各画素の彩度と、平均彩度との差を、αなどの所定の倍率で拡大しているが、これに限らない。例えば、該差の大きさに応じて、該倍率が変わるようにしてもよい。例えば、S(x、y)がsbarよりも大きいときは、該倍率を該所定の倍率の(S(x、y)−sbar)/(smax−sbar)乗とし、S(x、y)がsbarよりも小さいときは、該倍率を該所定の倍率の(S(x、y)−sbar)/(smin−sbar)乗としてもよい。
【0029】
このように、本実施形態では、平均彩度算出部13が、入力画像Iの注目領域を代表する彩度である代表彩度として、注目領域の彩度の平均値を算出し、彩度調整部17が、入力画像Iの彩度の分布幅が、所定の幅w_targetになり、かつ、彩度が上述の平均値と一致する画素の彩度が保存されるように、入力画像Iを構成する画素各々の画素値を変換する。
これにより、注目領域の彩度を大きく変化させることなく、画像全体の彩度が、所定の分布幅となるように、彩度を調整することができる。したがって、注目領域を、人が見たときに自然な彩度であると感じる彩度の領域とすることで、彩度を調整する際に、調整後の画像を見た人が不自然に感じる彩度となってしまうことを防ぐことができる。
【0030】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0031】
なお、上記に説明した画像処理装置を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0032】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…画像処理装置 11…彩度算出部 12…注目領域設定部 13…平均彩度算出部 14…最小値最大値算出部 15…変換係数算出部 16…画素値変換部 17…彩度調整部