(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施形態の電池監視装置を示す図である。
図1に示す電池監視装置1は、5つの電池モジュール2(2−1〜2−5)と、制御部(電池ECU(Electronic Control Unit))3と、メインリレー4とを備える。なお、電池監視装置1は、例えば、電動フォークリフト、ハイブリッド車、又は電気自動車などの車両に搭載される。また、電池モジュール2の数は5つに限定されない。
【0015】
各電池モジュール2(2−1〜2−5)は、それぞれ、電池5と、リレー6と、電圧検出部7と、電流検出部8と、温度検出部9と、監視部(監視ECU)10(10−1〜10−5)とを備える。なお、各電池5は、互いに並列接続され、負荷11(例えば、他のECUなど)に電力を供給する。
【0016】
電池5は、充電可能な電池であり、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などとする。なお、電池5は、直列接続された複数の電池により構成されてもよい。
リレー6は、メインリレー4と電池5との間に設けられている。リレー6がオンしているとき、メインリレー4がオンすると、電池5から負荷11へ電力が供給可能となる。
【0017】
電圧検出部7は、電池5の電圧を検出するものであり、例えば、電圧計とする。
電流検出部8は、充電時の電池5へ流れる電流や放電時の電池5から流れる電流を検出するものであり、例えば、電流計とする。
【0018】
温度検出部9は、電池5の周辺温度を検出するものであり、例えば、サーミスタとする。
各監視部10(10−1〜10−5)は、それぞれ、リレー制御部12と、記憶部13と、識別情報設定部14と、通信部15とを備える。なお、リレー制御部12、識別情報設定部14、及び通信部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)など)などにより構成され、記憶部13に記憶されているプログラムをCPU、マルチコアCPU、又はプログラマブルなデバイスなどが読み出して実行することによって実現される。また、監視部10−1〜10−5の各通信部15と制御部3の通信部19が通信線を介して環状に直列(デイジーチェーン)接続されている。
【0019】
リレー制御部12は、リレー6のオン、オフを制御する。
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、各種情報や各種プログラムを記憶する。
【0020】
識別情報設定部14は、自身の識別情報を設定し、その識別情報を記憶部13に記憶させる。例えば、監視部10−1〜10−5に対して、「101」〜「105」の5つの識別情報を設定する場合、先頭の監視部10−1の識別情報設定部14は「101」を自身の識別情報として設定し記憶部13に記憶させる。また、2番目の監視部10−2の識別情報設定部14は「102」を自身の識別情報として設定し記憶部13に記憶させる。また、3番目の監視部10−3の識別情報設定部14は「103」を自身の識別情報として設定し記憶部13に記憶させる。また、4番目の監視部10−4の識別情報設定部14は「104」を自身の識別情報として設定し記憶部13に記憶させる。また、最後尾の監視部10−5の識別情報設定部14は「105」を自身の識別情報として設定し記憶部13に記憶させる。
【0021】
通信部15は、前段の監視部10又は制御部3から送信される信号を受信したり、後段の監視部10又は制御部3へ信号を送信したりする。
制御部3は、メインリレー4のオン、オフを制御するリレー制御部16と、記憶部17と、通信異常箇所特定部18と、監視部10−1〜10−5と通信を行う通信部19とを備える。なお、記憶部17は、不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、磁気記憶媒体(ハードディスクやフロッピー(登録商標)ディスクなど)、光ディスクなど)であり、各種情報や各種プログラムを記憶する。また、リレー制御部16、通信異常箇所特定部18、及び通信部19は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイスなどにより構成され、記憶部17に記憶されているプログラムをCPU、マルチコアCPU、又はプログラマブルなデバイスなどが読み出して実行することによって実現される。また、制御部3は、監視部10−1〜10−5からそれぞれ送信される識別情報を通信部19により受信し、それら識別情報を記憶部17に記憶させる。また、制御部3は、記憶部17に記憶させた識別情報を用いて、監視部10−1〜10−5からそれぞれ送信される電池5の状態(例えば、電池5の電圧、電流、及び温度など)を示す情報を通信部19により受信する。また、制御部3は、受信した情報に示される電池5の状態が予め決められた状態になるとき(例えば、電池5の電圧、電流、及び温度の少なくとも1つが閾値よりも大きいとき)、電池5の状態が異常であると判断し、待避走行モード(例えば、一定時間経過後までに車両を徐々に減速させてから停止させる指示を、車両の走行を制御する上位制御部に送るとともに、一定時間経過後にリレー制御部16によりメインリレー4をオフさせる処理)に移行する。また、制御部3は、通信異常が発生したと判断すると、待避走行モードに移行する。
【0022】
図2は、識別情報確定判断処理時の制御部3の動作を示すフローチャートである。
まず、電池監視装置1の製造者や電池モジュール2を交換するサービスマンによるスイッチやサービスツールの操作などにより、制御部3の電源がオンすると、又は、識別情報が確定しているか否かの判断を行うための指示が制御部3へ入力されると、制御部3は、記憶部17に記憶されている確定情報を読み出す(S201)。
【0023】
次に、制御部3は、記憶部17から読み出した確定情報により、すべての監視部10−1〜10−5に対して識別情報が設定されていない、すなわち、識別情報が確定していないと判断すると(S202:YES)、すべての監視部10−1〜10−5に対して識別情報設定処理を行う(S203)。例えば、制御部3は、
図3(a)に示すように、記憶部17から読み出した確定情報としての識別情報確定判断フラグがオフになっている場合、識別情報が確定していないと判断し、すべての監視部10−1〜10−5に対して識別情報設定処理を行う。なお、電池監視装置1の製造時や電池モジュール2の交換時、識別情報が設定されていない監視部10−1〜10−5が用いられるものとする。また、電池監視装置1の製造者や電池モジュール2を交換するサービスマンによるスイッチやサービスツールの操作などにより、識別情報確定判断フラグがオンからオフに書き換えられてもよい。
【0024】
また、制御部3は、記憶部17から読み出した確定情報により、すべての監視部10−1〜10−5に対して識別情報が設定されている、すなわち、識別情報が確定していると判断すると(S202:NO)、識別情報設定処理を行わない。例えば、制御部3は、
図3(b)に示すように、記憶部17から読み出した確定情報としての識別情報確定判断フラグがオンになっている場合、識別情報が確定していると判断し、識別情報設定処理を行わない。
【0025】
このように、本実施形態の電池監視装置1では、制御部3の記憶部17に記憶されている確定情報により、識別情報が確定していないと判断されると、識別情報設定処理を行う構成であり、識別情報が確定していないことを示す確定情報が記憶部17に記憶されていない限り、識別情報設定処理が行われないため、電池監視装置1が搭載される車両を使用するユーザなどにより、識別情報が設定されていない監視部10を備える電池モジュール2の追加や交換が行われても、識別情報設定処理が行われないようにすることができる。これにより、識別情報が誤って設定されることによる電池監視装置1の誤動作を防止することができる。
【0026】
また、本実施形態の電池監視装置1では、電池監視装置1の製造者や電池モジュール2を交換するサービスマンによるスイッチやサービスツールの操作などにより、識別情報確定判断フラグがオンからオフに書き換えられ、かつ、制御部3の電源がオンされるか、又は、識別情報が確定しているか否かの判断を行うための指示が制御部3へ入力されないと、識別情報設定処理が行われないため、ユーザ側において識別情報設定処理の実行が試みられることを抑制することができる。
【0027】
また、例えば、制御部3の電源をオンするたびに制御部3が識別情報設定処理を行ってしまう構成では、車両を使用するユーザが電源をオンするたびに識別情報設定処理が行われてしまう。しかし、通信線に重畳されるノイズなどによって、監視部に誤った識別情報が設定される恐れがあり、識別情報設定処理の回数が多いほどその恐れが高くなる。しかし、識別情報が確定している旨の情報を制御部3が有していれば、電源をオンするたびに識別情報設定処理が行われないため、ユーザ側において識別情報設定処理の実行が試みられることを抑制することができる。
【0028】
図4は、識別情報設定処理時の制御部3の動作例を示すフローチャートである。
まず、制御部3は、監視部10−1〜10−5のそれぞれの電源をオンさせた後、先頭の監視部10−1へ識別情報設定処理のための設定信号S1(第1の設定信号)を送信する(S401)。
【0029】
次に、制御部3は、最後尾の監視部10−5から送信される設定信号S1を受信すると(S402:YES)、識別情報が確定していることを示す確定情報を記憶部17に記憶させる(S403)。例えば、制御部3は、記憶部17に記憶されている確定情報としての識別情報確定判断フラグをオフからオンに書き換える。
【0030】
次に、制御部3は、受信した設定信号S1に対応する監視部10の数、又は電池モジュールの数を記憶部17に記憶させ(S404)、監視部10−1〜10−5から送信される識別情報を記憶部17に記憶させる(S405)。
【0031】
また、制御部3は、最後尾の監視部10−5から送信される、通信異常が発生したことを示す設定信号S2(第2の設定信号)を受信すると(S402:NO、S406:YES)、その受信した設定信号S2に応じて通信異常の発生箇所を特定する(S407)。
【0032】
また、制御部3は、先頭の監視部10−1へ設定信号S1を送信してから所定時間が経過しても最後尾の監視部10から設定信号S1又は設定信号S2を受信しない場合(S406:NO、S408:YES)、最後尾の監視部10−5と制御部3の間で通信異常が発生していると判断する(S409)。
【0033】
図5は、識別情報設定処理時の監視部10−1〜10−5のそれぞれの動作例を示すフローチャートである。
まず、監視部10−1〜10−5は、それぞれ、前段の監視部10又は制御部3から送信される設定信号S1を受信すると(S501:YES)、その受信した設定信号S1に対応する識別情報を自身の識別情報として設定し(S502)、その受信した設定信号S1を変化させて後段の監視部10又は制御部3へ送信し(S503)、自身の識別情報を制御部3へ送信する(S504)。
【0034】
また、監視部10−1〜10−5は、それぞれ、前段の監視部10から送信される設定信号S2を受信すると(S501:NO、S505:YES)、その受信した設定信号S2を変化させて後段の監視部10又は制御部3へ送信する(S506)。
【0035】
また、監視部10−1〜10−5は、それぞれ、自身の電源がオンしてから所定時間が経過しても前段の監視部10或いは制御部3から設定信号S1を受信しない場合又は自身の電源がオンしてから所定時間が経過しても前段の監視部10から設定信号S2を受信しない場合(S505:NO、S507:YES)、予め決められた設定信号S2を後段の監視部10又は制御部3へ送信する(S508)。
【0036】
例えば、
図6及び
図7に示す情報が監視部10−1〜10−5の各記憶部13にそれぞれ記憶され、
図6、
図8、及び
図9に示す情報が制御部3の記憶部17に記憶されているものとする。また、通信異常が発生していないものとする。また、監視部10−1〜10−5は、それぞれ、設定信号S1又は設定信号S2に相当する矩形波を受信すると、その矩形波のDUTY比を+4%変化させて、後段の監視部10又は制御部3へ送信するものとする。
【0037】
このような場合において、まず、電池監視装置1の製造者や電池モジュール2を交換するサービスマンによるスイッチやサービスツールの操作などにより、制御部3の電源がオンされた、又は、識別情報が確定しているか否かの判断を行うための指示が制御部3へ入力されたときに識別情報が確定していないと(S202:YES)、制御部3は識別情報設定処理を行う。まず、制御部3は、監視部10−1〜10−5のそれぞれの電源をオンさせた後(既に監視部10の電源がオンしている場合はこの動作は省かれる。)、予め決められた設定信号S1としてDUTY比4%の矩形波を先頭の監視部10−1へ送信する。
【0038】
次に、監視部10−1は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比4%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比4%に対応する「101」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比8%の矩形波を後段の監視部10−2へ送信する。
【0039】
次に、監視部10−2は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比8%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比8%に対応する「102」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比12%の矩形波を後段の監視部10−3へ送信する。
【0040】
次に、監視部10−3は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比12%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比12%に対応する「103」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比16%の矩形波を後段の監視部10−4へ送信する。
【0041】
次に、監視部10−4は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比16%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比16%に対応する「104」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比20%の矩形波を後段の監視部10−5へ送信する。
【0042】
次に、監視部10−5は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比20%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比20%に対応する「105」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比24%の矩形波を制御部3へ送信する。
【0043】
そして、制御部3は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比24%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、記憶部17に記憶されている確定情報としての識別情報確定判断フラグをオフからオンに書き換え、
図8に示す情報を参照して、DUTY比24%に対応する「5」を監視部10の数として記憶部17に記憶させる。その後、制御部3は、監視部10−1〜10−5から送信される識別情報「101」〜「105」を記憶部17に記憶させる。
【0044】
次に、監視部10−2と監視部10−3の間の通信線が断線している場合の制御部3及び監視部10−1〜10−5の動作例を説明する。
まず、電池監視装置1の製造者や電池モジュール2を交換するサービスマンによるスイッチやサービスツールの操作などにより、制御部3の電源がオンされた、又は、識別情報が確定しているか否かの判断を行うための指示が制御部3へ入力されたときに識別情報が確定していないと(S202:YES)、制御部3は識別情報設定処理を行う。まず、制御部3は、監視部10−1〜10−5のそれぞれの電源をオンさせた後(既に監視部10の電源がオンしている場合はこの動作は省かれる。)、予め決められた設定信号S1としてDUTY比4%の矩形波を先頭の監視部10−1へ送信する。
【0045】
次に、監視部10−1は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比4%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比4%に対応する「101」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比8%の矩形波を後段の監視部10−2へ送信する。
【0046】
次に、監視部10−2は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比8%の矩形波が設定信号S1に相当すると判断すると、
図7に示す情報を参照して、DUTY比8%に対応する「102」を自身の識別情報として設定するとともに、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比12%の矩形波を後段の監視部10−3へ送信する。
【0047】
次に、監視部10−3は、自身の電源がオンしてから所定時間経過するまでの間、設定信号S1又は設定信号S2に相当する矩形波を受信していない場合(例えば通信線又は監視部の異常により、監視部10−2と監視部10−3の間の通信線の電圧レベルがローレベル又はハイレベルのままである場合)、予め決められた設定信号S2に相当するDUTY比54%の矩形波を後段の監視部10−4へ送信する。
【0048】
次に、監視部10−4は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比54%の矩形波が設定信号S2に相当すると判断すると、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比58%の矩形波を後段の監視部10−5へ送信する。
【0049】
次に、監視部10−5は、
図6に示す情報を参照して、受信したDUTY比58%の矩形波が設定信号S2に相当すると判断すると、受信した矩形波のDUTY比を+4%変化させてDUTY比62%の矩形波を制御部3へ送信する。
【0050】
そして、制御部3は、
図6に示す情報を参照して、最後尾の監視部10−5から送信されるDUTY比62%の矩形波が設定信号S2に相当すると判断すると、
図9に示す情報を参照して、受信した矩形波のDUTY比62%に対応する通信異常の発生箇所が「監視部10−2と監視部10−3の間」であると判断する。
【0051】
なお、制御部3は、通信異常の発生箇所を特定すると、その旨をユーザに報知してもよい。
また、監視部10−1〜10−5により変化される、矩形波のDUTY比の変化量は4%に限定されない。
【0052】
また、設定信号S1、S2に相当する矩形波のDUTY比は、互いに異なる値であれば特に限定されない。
このように、通信異常の発生箇所よりも下流に位置する監視部10において設定信号S2が変化され、最後尾の監視部10−5から制御部3へ送信される設定信号S2により通信異常の発生箇所が特定されるため、制御部3と監視部10−1〜10−5が環状に直列接続される場合であっても、通信異常検知処理を行うことができる。
【0053】
また、通信異常検知処理と識別情報設定処理が同時に行われるため、通信異常が発生していない場合、識別情報設定処理をスピーディに実施することができる。
また、上記実施形態では、矩形波のDUTY比を用いて、識別情報設定処理及び通信異常検知処理を行う構成であるが、矩形波を含む発振信号の周波数、単位時間あたりのパルス数、又は、矩形波を含む発振信号により示される数値や文字情報を用いて、識別情報設定処理及び通信異常検知処理を行うように構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、制御部3と監視部10−1〜10−5が通信線を介して環状に直列接続される構成であるが、制御部3と監視部10−1〜10−5がバスを介して接続されていてもよい。