(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229616
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車載トランクボックスの骨格部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20171106BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20171106BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
B62D25/20 H
B62D25/08 K
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-157938(P2014-157938)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-34790(P2016-34790A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】李 承俊
(72)【発明者】
【氏名】高尾 淳子
(72)【発明者】
【氏名】水崎 崇夫
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−019777(JP,U)
【文献】
特開2012−136096(JP,A)
【文献】
特開昭53−116623(JP,A)
【文献】
特開平11−078985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B62D 25/08
25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランクボックスの骨格部材を車体に固定する構造であって、
前記車体は、前後方向に沿って延びるとともに車幅方向に互いに離間して設けられた一対の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材の双方に下側ピラーフレームが連結され、各下側ピラーフレームに車幅方向に沿って延びるように連結された第2フレーム部材と、を備え、
前記骨格部材は、前記第1フレーム部材の各々に対応して設けられ、同第1フレーム部材に支持される一対の脚部と、前記脚部の各々が連結される枠部と、前記第1フレーム部材の各々の間に延びて前記第2フレーム部材に支持される腕部と、を有している、
車載トランクボックスの骨格部材の固定構造。
【請求項2】
前記脚部、前記腕部、及び前記枠部はいずれも金属パイプによって形成されている、
請求項1に記載の車載トランクボックスの骨格部材の固定構造。
【請求項3】
前記脚部の各々は、複数箇所において前記枠部に連結されている、
請求項1又は請求項2に記載の車載トランクボックスの骨格部材の固定構造。
【請求項4】
前記腕部は前記第2フレーム部材に対して着脱可能な締結部材により締結されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車載トランクボックスの骨格部材の固定構造。
【請求項5】
前記脚部の各々は前記第1フレーム部材に対して着脱可能な締結部材により締結されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車載トランクボックスの骨格部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクボックスの骨格部材を車体に固定する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一人乗り用の電気自動車が開示されている。
また、こうした車両としては、運転席の後方に、トランクボックスが設けられたものがある(非特許文献1参照)。トランクボックスの内部には、金属パイプによって形成された骨格部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−113949号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】トヨタ車体株式会社、″B・COMデリバリー″、[online]、トヨタ車体株式会社ホームページ、[平成26年8月1日検索]、インターネット<http://coms.toyotabody.jp/style/bcom.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の体格を前後方向や車幅方向に大きくすることなく、トランクボックスの積載量を増大させようとすると、高さ方向に荷物を積む必要が生じる。しかしながら、この場合、積載量の増大に加え、荷物の重心の位置が高くなるために、トランクボックスによる荷物の保持性能が悪化するとともに、車両の走行安定性が悪化することとなる。特に、こうした問題は、前述した一人乗り用の電気自動車やこれに準じた小型の車両において顕著なものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、トランクボックスの積載性能を高めることができるとともに、車両の走行安定性を向上させることができる車載トランクボックスの骨格部材の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための車載トランクボックスの骨格部材の固定構造は、トランクボックスの骨格部材を車体に固定する構造であって、前記車体は、前後方向に沿って延びるとともに車幅方向に互いに離間して設けられた一対の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材の双方に
下側ピラーフレームが連結され、各下側ピラーフレームに車幅方向に沿って延びるように連結された第2フレーム部材と、を備え、前記骨格部材は、前記第1フレーム部材の各々に対応して設けられ、同第1フレーム部材に支持される一対の脚部と、前記脚部の各々が連結される枠部と、前記第1フレーム部材の各々の間に延びて前記第2フレーム部材に支持される腕部と、を有している。
【0008】
同構成によれば、骨格部材の脚部が左右一対の第1フレーム部材に支持されるとともに、腕部が第1フレーム部材の各々の間においてこれらフレーム部材の双方に
下側ピラーフレームが連結され、各下側ピラーフレームに車幅方向に沿って延びるように連結された第2フレーム部材に支持される。このため、骨格部材が補強部材として機能することにより車体の剛性が高められるとともに、第1フレーム部材や第2フレーム部材に対して入力されるねじり力が骨格部材に分散されることで、各フレーム部材のねじり量が低減される。
【0009】
また、各フレーム部材が補強部材として機能することにより骨格部材の剛性が高められる。そして、トランクボックスに積まれる荷物から骨格部材に対して入力される力が各第1フレーム部材及び第2フレーム部材に分散される。このため、より大きな荷重に対して骨格部材が耐えられるようになり、トランクボックスの最大積載量を増大することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランクボックスの積載性能を高めることができるとともに、車両の走行安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態の車両を斜め左前方から視た斜視図。
【
図2】同実施形態の車両を斜め左後方から視た斜視図。
【
図3】
図2に対応する斜視図であって、トランクボックスのバックドアが開放されている状態を示す図。
【
図4】同実施形態の骨格部材の固定構造を示す斜視図。
【
図5】同実施形態の骨格部材の固定構造を示す斜視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1〜
図9を参照して、車載トランクボックスの骨格部材の固定構造を具体化した一実施形態について説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態の車両10は一人乗り用の電気自動車である。なお、車体11の構造は基本的に左右対称であるため、左右一方の構造のみを説明することにより、他方の構造の説明を省略する場合がある。
【0013】
図4に示すように、車体11は、前後方向に沿って延びるとともに車幅方向に互いに離間して設けられた一対の第1フレーム部材21を備えている。両第1フレーム部材21間には、車幅方向に延びるとともに両第1フレーム部材21を連結する複数の連結フレーム部材28A〜28Cが前後に間隔をおいて設けられている。また、各第1フレーム部材21の外側面には、上方に延びるとともに屈曲して車幅方向外側に延びる下側ピラーフレーム23が連結されている。各下側ピラーフレーム23の上端には、上側ピラーフレーム25が連結されており、各上側ピラーフレーム25には、後方に延びるブラケット26が連結されている。また、各下側ピラーフレーム23には、車幅方向に沿って延びる第2フレーム部材22が溶接により固定されている。下側ピラーフレーム23、上側ピラーフレーム25、及び第2フレーム部材22はいずれも金属パイプを曲げ加工するなどして形成されている。
【0014】
図1〜
図3に示すように、車体11には、
図4に示すブラケット26を介してボディパネル61が支持されている。また、ボディパネル61の上方には、
図4に示す上側ピラーフレーム25を覆うピラーパネル62が同ボディパネル61に隣接して設けられている。また、車体11におけるピラーパネル62の上端には、前方に延びるとともにウィンドシールド631を有するルーフパネル63が設けられている。また、車体11の背面下部には、リアバンパカバー64が設けられている。車体11における運転席12の後方には、トランクボックス15が設けられている。
【0015】
図3に示すように、トランクボックス15は、ボディパネル61の内側に設けられた下側ボックス部材50と、その上側に位置する上側ボックス部材65と、これら下側ボックス部材50及び上側ボックス部材65の背面の開口151を開閉可能なバックドア66と、金属パイプにより形成された骨格部材30とを備えている。
【0016】
図5に示すように、第1フレーム部材21の上面には、両第1フレーム部材21間に跨るようにフロア部材40が配置されている。また、フロア部材40の上面には、下側ボックス部材50が配置されている。そして、下側ボックス部材50の底面の上方には、前記骨格部材30が配置されている。
【0017】
図4に示すように、骨格部材30は、各第1フレーム部材21に対応して設けられたU字状をなす一対の脚部31を有している。なお、同図においては、下側ボックス部材50やフロア部材40の図示を省略している。脚部31は前後に沿って延びるとともに第1フレーム部材21に支持された下側脚部311と、同下側脚部311の前後の両端から上方に向けて延びる前側脚部312及び後側脚部313とを有している。これら脚部312,313の上端部には、矩形環状をなす枠部33が溶接により固定されている。
【0018】
各前側脚部312の途中からは腕部32が車幅方向内側に延びており、同腕部32の先端部分321は第1フレーム部材21の各々の間において第2フレーム部材22に支持されている。なお、腕部32の基端部は前側脚部312に対して溶接により固定されている。
【0019】
図5及び
図6に示すように、下側脚部311には3つのブラケット35が前後方向に間隔をおいて溶接により固定されている。
図6に示すように、ブラケット35と、同ブラケット35の直下に位置する下側ボックス部材50、フロア部材40、及び第1フレーム部材21には、それぞれ孔351,501,401,211が形成されている。ブラケット35、下側ボックス部材50、及びフロア部材40の孔351,501,401に上方からフランジ731付きのカラー73が挿通され、同カラー73の中心孔に上方からワッシャ74を挟んでボルト71が挿通されている。ボルト71の先端は第1フレーム部材21の孔211を貫通しており、同ボルト71の先端がナット72に螺入されている。このようにしてボルト71とナット72とによって各脚部31が第1フレーム部材21に対して締結されている。
【0020】
図4に示すように、第2フレーム部材22には、左右一対のブラケット24が溶接により固定されている。
図8に示すように、ブラケット24は断面逆U字状をなしており、その上面にはフロア部材40が当接されている。また、フロア部材40とその上方に位置する下側ボックス部材50との間にはシール材が介設されている。
【0021】
図7及び
図9に示すように、ブラケット24には孔242が形成されている。孔242の直上のフロア部材40には孔403が形成され、同孔242の直下の第2フレーム部材22には孔222が形成されている。そして、フロア部材40及びブラケット24の孔403,242には上方からクリップ91が挿通されている。このことにより、フロア部材40がブラケット24に固定されている。すなわち、フロア部材40がブラケット24を介して第2フレーム部材22に固定されている。
【0022】
図7〜
図9に示すように、腕部32の先端部分321は潰れた断面形状を有している。なお、
図7においては、下側ボックス部材50やフロア部材40の図示を省略している。
図8及び
図9に示すように、腕部32の先端部分321と、同先端部分321の直下に位置する下側ボックス部材50、フロア部材40、ブラケット24、及び第2フレーム部材22には、孔322,502,402,241,221が形成されている。腕部32の先端部分321、下側ボックス部材50、及びフロア部材40の孔322,502,402に上方からフランジ831付きのカラー83が挿通される。このとき、カラー83の下端はブラケット24の上面に当接されている。そして、カラー83の中心孔に上方からボルト81が挿通されている。ボルト81の先端はブラケット24及び第2フレーム部材22の孔241,221を貫通しており、同ボルト81の先端が、ブラケット24の下面に固設されたナット82に螺入されている。このようにしてボルト81とナット82とによって各腕部32が第2フレーム部材22に対して締結されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
骨格部材30の脚部31が左右一対の第1フレーム部材21に支持されるとともに、腕部32が第2フレーム部材22に支持される。このため、骨格部材30が補強部材として機能することにより車体11の剛性が高められるとともに、第1フレーム部材21や第2フレーム部材22に対して入力されるねじり力が骨格部材30に分散されることで、各フレーム部材21,22のねじり量が低減される。
【0024】
また、各フレーム部材21,22が補強部材として機能することにより骨格部材30の剛性が高められる。そして、トランクボックス15に積まれる荷物から骨格部材30に対して入力される力が各第1フレーム部材21及び第2フレーム部材22に分散される。このため、より大きな荷重に対して骨格部材30が耐えられるようになり、トランクボックス15の最大積載量を増大することが可能となる。
【0025】
以上説明した本実施形態に係る車載トランクボックスの骨格部材の固定構造によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)骨格部材30は、第1フレーム部材21の各々に対応して設けられ、第1フレーム部材21に支持される一対の脚部31と、脚部31の各々が連結される枠部33と、第1フレーム部材21の各々の間において第2フレーム部材22に支持される腕部32と、を有している。
【0026】
こうした構成によれば、トランクボックス15の積載性能を高めることができるとともに、車両10の走行安定性を向上させることができる。
(2)脚部31、腕部32、及び枠部33がいずれも金属パイプによって形成されているため、骨格部材30の構成を簡易なものとすることができる。
【0027】
(3)脚部31の各々が、前後の2箇所において枠部33に連結されているため、骨格部材30の剛性を高めることができる。
(4)腕部32は第2フレーム部材22に対してボルト81とナット82とにより締結されている。また、各脚部31は第1フレーム部材21に対してボルト71とナット72とにより締結されている。
【0028】
こうした構成によれば、第2フレーム部材22に対する腕部32の着脱を容易に行なうことができる。また、第1フレーム部材21に対する脚部31の着脱を容易に行なうことができる。従って、車体11に対して骨格部材30を容易に着脱することができる。
【0029】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・脚部31をリベットやクリップなどの他の締結部材によって第1フレーム部材21に対して締結することもできる。
【0030】
・腕部32をリベットやクリップなどの他の締結部材によって第2フレーム部材22に対して締結することもできる。
・脚部31が3つ以上の箇所において枠部33に連結されるものであってもよい。また、脚部31が1箇所において枠部33に連結されるものとすることもできる。
【0031】
・脚部31、腕部32、及び枠部33の少なくとも一方を例えば柱状部材などのパイプ状ではない部材によって形成することもできる。
・腕部32を枠部33から延すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…車両、11…車体、12…運転席、15…トランクボックス、151…開口、21…第1フレーム部材、211…孔、22…第2フレーム部材、221,222…孔、23…下側ピラーフレーム、24…ブラケット、241,242…孔、25…上側ピラーフレーム、26…ブラケット、28A〜28C…連結フレーム部材、30…骨格部材、31…脚部、311…下部、312…前側脚部、313…後側脚部、32…腕部、321…先端部分、322…孔、33…枠部、35…ブラケット、351…孔、40…フロア部材、401,402,403…孔、50…下側ボックス部材、501,502…孔、61…ボディパネル、62…ピラーパネル、63…ルーフパネル、631…ウィンドシールド、64…リアバンパカバー、65…上側ボックス部材、66…バックドア、71…ボルト(締結部材)、72…ナット(締結部材)、73…カラー、731…フランジ、74…ワッシャ、81…ボルト(締結部材)、82…ナット(締結部材)、83…カラー、831…フランジ、91…クリップ。