(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を参照して実施形態に係るロボットの概要について説明する。
図1は、実施形態に係るロボットの概要を示す説明図である。なお、
図1において、図中の吹き出しに示した部分はA線矢視図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係るロボット10は、下部アーム13(
図2参照)と、上部アーム14と、アクチュエータ36と、ブレーキ50とを備える。下部アーム13は、上部アーム14を支持する。
【0013】
上部アーム14は、底部141と、アーム部140とを有する。底部141は、貫通穴142を有する。また、アーム部140は、貫通穴142を避けて底部141から延伸する。
【0014】
また、上部アーム14は、下部アーム13(
図2参照)に基端側が支持される。アクチュエータ36は、出力軸361と、ロータ362とを有する。出力軸361は、ロータ362に連結され、ロータ362の回転によって軸まわりに回転する。アクチュエータ36は、扁平形状に形成される。
【0015】
ブレーキ50は、アクチュエータ36の出力軸361が突出する側とは反対側の端面に取り付けられる。ブレーキ50は、ロータ362の一部に作用してアクチュエータ36を制動する。
【0016】
さらに、
図1に示すように、アクチュエータ36は、底部141の貫通穴142に対応する領域をアーム部140の延伸向きに平行移動することで得られる仮想空間VSとブレーキ50とが重ならない姿勢で、アーム部140の仮想空間VS側に配置される。
【0017】
したがって、実施形態に係るロボット10によれば、ブレーキ50が仮想空間VSを遮ることがないため、仮想空間VSにケーブルや配管(以下、「ケーブル類」と総称する)を通すことができる。すなわち、アーム(
図1の例では、上部アーム14)周辺にケーブル類を通すためのスペースを確保することができる。
【0018】
ここで、上述したように、従来の構成では、アームからアクチュエータが突出することから、アーム周辺にスペースを確保することが困難であった。このため、アームの外側にケーブル類を配置することになり、たとえば、ケーブル類が設備に干渉する、ケーブル類の保護が必要となる、ケーブル類によってロボットの稼働範囲が制約を受けるといった問題が発生していた。なお、従来の構成でアーム周辺にスペースを確保しようとする場合、アームを大型化する必要がある。
【0019】
実施形態に係るロボット10によれば、アーム周辺にスペースを確保することができるため、上記問題、すなわち、設備への干渉、ケーブル類の保護、ロボットの稼働範囲の制約等の問題が解消される。
【0020】
また、実施形態に係るロボット10によれば、アームの外側にケーブル類が露出しないことから、見栄えが良くなる。すなわち、意匠性の高いロボットとなる。さらに、ケーブル艤装の工数を低減することができる。
【0021】
なお、実施形態に係るロボット10では、上部アーム14が一対のアーム部140,140を備え、アクチュエータを対向させて配置することとした。また、ブレーキ50を互い違いに配置することとした。このような構成については、
図3Aおよび
図3Bを用いて後述する。
【0022】
また、実施形態に係るロボット10では、出力軸361の周囲に中空部を設け、中空部にエンコーダを配置することとした。さらに、アーム部140の先端側にアクチュエータ36からベルトによって回転動力が伝達される減速機を備えることとした。このような構成についても、
図3Aおよび
図3Bを用いて後述する。
【0023】
また、ブレーキ50を、ブレーキディスク部、アーマチュアおよびフィールドコア部に分け、このうち、フィールドコア部のみを仮想空間VSと重ならない構成としてもよい。
【0024】
次に、
図2を参照してロボット10の全体構成について説明する。
図2は、ロボット10の全体斜視図である。ロボット10は、いわゆる多関節ロボットである。なお、
図2では、アーク溶接ロボット(ロボット10)を例に説明する。
【0025】
図2に示すように、ロボット10は、床面等に設置される基台11上に、垂直軸(S軸)まわりに旋回自在に取り付けられた旋回ベース12を有する。旋回ベース12には下部アーム13が水平軸(L軸)まわりに軸支される。
【0026】
下部アーム13の上端には上部アーム14が水平軸(U軸)まわりに軸支される。上部アーム14の先端には、一対のアーム部140,140と、揺動体21と、回転体22とを備える。一対のアーム部140,140は、上部アーム14の長さ方向の中心軸(R軸)まわりに回転自在に取り付けられる。揺動体21は、アーム部140,140の先端でR軸に直交する軸(B軸)まわりに軸支されて揺動する。回転体22は、揺動体21の先端で回転軸(T軸)まわりに回転する。
【0027】
回転体22には溶接トーチ23が取り付けられる。また、上部アーム14の後端にはワイヤ送給装置15が固定される。ワイヤ送給装置15にはワイヤリール(図示せず)から溶接ワイヤが供給され、コンジットケーブル(ケーブル類)16を通して溶接ワイヤを溶接トーチ23へと送給する。
【0028】
コンジットケーブル16は、上部アーム14の側面を、R軸に対して平行に伸びて、上部アーム14の側面に設けられた開口17から上部アーム14の内部に引き込まれる。なお、コンジットケーブル16は、たとえば、コイルバネを樹脂で被覆した保護チューブの中に通されて保護される。
【0029】
図2に示すように、アーム部140,140は二又形状となる。上述したように、開口17から上部アーム14の中に入ったコンジットケーブル16は、アーム部140の底部141に設けられた貫通穴142から仮想空間VS(
図1参照)を通り、揺動体21へと通じる。
【0030】
下部アーム13および上部アーム14の各関節部にはアクチュエータ31〜36(アクチュエータ35およびアクチュエータ36については、
図3A参照)が搭載される。各アクチュエータ31〜36にはエンコーダおよび減速機が連結される。かかるロボット10によれば、制御装置(図示せず)からの動作指示に基づいて各軸(S軸、L軸、U軸、R軸、B軸、T軸)が駆動制御されることで、多様な多軸動作を行うことができる。
【0031】
(第1の実施形態)
以下では、
図3A〜
図4Bを参照して第1の実施形態に係るロボット10について説明する。
図3Aは、第1の実施形態に係るロボット10の模式平断面図である。
図3Bは、
図3AにおけるB−B線矢視拡大断面図である。
【0032】
図3Aに示すように、上部アーム14は、下部アーム13に基端側が支持される。上部アーム14は、底部141と、一対のアーム部140,140とを備える。底部141は、略中央に貫通穴142が形成される。図示しないが、貫通穴142には、上述したコンジットケーブル16(
図2参照)のようなケーブル類が、貫通穴142を通過してアーム部140,140へと挿通される。
【0033】
一対のアーム部140,140は、貫通穴142を避けて底部141から略平行に延伸する。各アーム部140,140は、それぞれ間隔をあけて対向する表面143aおよび裏面143bを備える。表面143aおよび裏面143bの間隔は、基端側から略平行に形成され、先端側で徐々に狭くなるように形成される。
【0034】
一対のアーム部140,140のうち、一方のアーム部140の基端側における表面143aおよび裏面143bの間には、アクチュエータ35が配設される。また、他方のアーム部140の基端側における表面143aおよび裏面143bの間には、アクチュエータ35と対向するようにアクチュエータ36が配設される。なお、上述したように、アクチュエータ35,36は、それぞれ上部アーム14の関節部に設けられる。なお、アクチュエータ35,36の詳細については
図4Aおよび
図4Bを用いて後述する。
【0035】
また、一対のアーム部140,140のうち、一方のアーム部140の先端側には、減速機40Aが配設される。減速機40Aは、入力軸41と、出力軸42とを備える。入力軸41は、プーリ41aを備える。入力軸41には、アクチュエータ35のプーリ35aとベルト43を介して回転動力が伝達される。出力軸42は、ロボット10のB軸と同軸に配置され、揺動体21(
図2参照)をB軸まわりに回転させる。
【0036】
さらに、他方のアーム部140の先端側には、減速機40Bが配設される。上述した減速機40Aと同様、減速機40Bは、入力軸41と、出力軸42とを備える。入力軸41は、プーリ41aを備える。入力軸41には、アクチュエータ36のプーリ36aとベルト43を介して回転動力が伝達される。出力軸42は、ロボット10のT軸と同軸に配置され、回転体22(
図2参照)をT軸まわりに回転させる。
【0037】
また、上部アーム14には、一対のアーム部140,140の間に、底部141の貫通穴142に対応する領域をアーム部140の延伸向きに平行移動することで得られる仮想空間VSが形成される。
【0038】
なお、一対のアーム部140,140の間に、たとえば、仮想空間VSの内外を物理的に区画するようなパイプが設けられ、かかるパイプによって仮想空間VSが形成されてもよい。
【0039】
図3Bに示すように、一対のアーム部140,140に配設されたアクチュエータ35,36の端面にはそれぞれ、端面から突出するように後述するブレーキ50,50が取り付けられる。ブレーキ50,50は、貫通穴142から延伸する仮想空間VSと重ならないように互い違いに配置される。
【0040】
このように、一対のアーム部140,140に設けられたアクチュエータ35,36が対向配置されることで、仮想空間VSと重ならない配置となる。また、ブレーキ50,50が互い違いに配置されることで、仮想空間VSを避けるようにブレーキ50,50を配置することができる。
【0041】
ここで、アクチュエータ36(または、アクチュエータ35)およびブレーキ50について説明する。
図4Aは、アクチュエータ36およびブレーキ50の模式斜視図である。
図4Bは、アクチュエータ36およびブレーキ50の模式平断面図である。なお、以下では、2つのアクチュエータ35,36のうち、第6アーム26(
図2参照)を駆動するアクチュエータ36を例に説明する。
【0042】
図4Aに示すように、アクチュエータ36は、外観上、扁平形状に形成される。また、アクチュエータ36は、ケーシング360の対向する端面のうち、一方の端面に出力軸361を備え(
図4B等参照)、他方の端面にブレーキ50が取り付けられる。ブレーキ50は、出力軸361と平行、かつ、出力軸361とは別軸となる位置に取り付けられる。
【0043】
図4Bに示すように、アクチュエータ36は、ケーシング360と、出力軸361と、ロータ362と、モータ電磁部365とを備える。なお、以下では、アクチュエータ36として、サーボモータを例に説明する。
【0044】
出力軸361は、アクチュエータ36の一方の端面に突出して設けられる。出力軸361は、ロータ362の回転によって回転軸まわりに回転する。上述したように、出力軸361にはプーリ36aが連結される。プーリ36aには、減速機40Bのプーリ41aとの間にベルト43が掛け回される(
図3A参照)。出力軸361は、プーリ36a,41a間のベルト43を介して減速機40Bへと回転動力を伝達する。
【0045】
ロータ362は、ケーシング360の中空部363に配設される。ロータ362は、出力軸361と略一体に設けられる。これにより、出力軸361が回転軸まわりに回転する。なお、ロータ362の外周面上および内周面上には、たとえば、ボールベアリング364が配設される。ロータ362は、ボールベアリング364によって円滑回転する。
【0046】
また、ケーシング360の中空部363におけるロータ362の外周には、モータ電磁部365が配設される。モータ電磁部365は、コイル365aと、マグネット365bとを備える。コイル365aおよびマグネット365bは、一方を可動子、他方を固定子として、可動子側が回転する。これにより、ロータ362が回転する。
【0047】
ケーシング360の中空部363には、ロータ362の回転を検出するエンコーダ70が配設される。エンコーダ70は、ロータ362の出力軸361を入力軸71として、入力軸71の回転を検出することでロータ362の回転を検出する。なお、エンコーダ70は、アクチュエータ36と同様、扁平形状に形成される。なお、エンコーダ70が中空部363に収納されると、中空部363の開口はカバー72によって閉塞される。
【0048】
このように、エンコーダ70が扁平形状であることで、エンコーダ70を出力軸361と同軸で配置しても、アクチュエータ36を扁平形状とすることができる。これにより、アーム周辺のスペースの確保が容易となる。
【0049】
また、アクチュエータ36の端面のうち、出力軸361が突出する側と反対側の端面には、ブレーキ50が取り付けられる。
【0050】
図4Bに示すように、ブレーキ50は、ブレーキディスク部51、ブレーキライニング52a、アーマチュア52b、カラー52c、ばね52dおよびフィールドコア部53を備える。ブレーキディスク部51は、ロータ362の端部に取り付けられ、ロータ362の回転に連動して回転するブレーキディスク51aを備える。
【0051】
ブレーキライニング52aは、アーマチュア52bのブレーキディスク51a対向面に設けられる。また、アーマチュア52bの下部円柱部は円筒状のカラー52cに嵌入される。アーマチュア52bは、カラー52cによって軸方向に摺動可能にガイドされる。
【0052】
また、カラー52cは、フィールドコア部53に固定されている。付勢部材としてのばね52dは、アーマチュア52bをブレーキディスク51a側へと付勢するようになっている。
【0053】
フィールドコア部53は、円筒状のケーシング53aと、ケーシング53a内に配設される円筒状のコイル53bとを備える。また、コイル53bの内側には、ケーシング53aの内周面を挟んでばね52dが配設される。
【0054】
このようなブレーキ50では、通電された状態でフィールドコア部53のコイル53bの吸引力によってアーマチュア52bがブレーキディスク51aから離れる方向へと吸引されている。また、ブレーキ50は、通電が解除されると、これまでコイル53bの吸引力に抗していたばね52dがアーマチュア52bを介してブレーキライニング52aをブレーキディスク51a側へと押し付ける。
【0055】
このようにして、ブレーキ50はブレーキディスク51aの回転を停止させる。そして、ブレーキ50は、ブレーキディスク51aの回転を停止させることで、ロータ362の回転を停止させる。すなわち、ロータ362を制動する。
【0056】
これにより、ブレーキ50は、アクチュエータ(サーボモータ)のサーボオフや電源オフ時のアーム姿勢を保持することができる。また、ブレーキ50を、ロボット10の非常用ブレーキとして機能させることができる。
【0057】
上述してきたように、第1の実施形態に係るロボット10よれば、ブレーキ50が仮想空間VSに干渉することがないため、仮想空間VSにケーブル類を通すことができる。すなわち、アーム周辺にケーブル類を通すためのスペースを確保することができる。
【0058】
また、第1の実施形態に係るロボット10によれば、アーム周辺にスペースを確保することができるため、他の設備への干渉を防ぐことができる。また、ケーブル類の保護が不要となる。さらに、ロボット10の稼働範囲の制約が緩和される。
【0059】
また、第1の実施形態に係るロボット10によれば、アーム部140,140の外側にケーブル類が露出しないことから、見栄えが良くなる。すなわち、ロボット10は、意匠性の高いロボットとなる。さらに、ケーブル艤装の工数を低減することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、
図5Aおよび
図5Bを参照して第2の実施形態に係るロボット100について説明する。
図5Aは、第2の実施形態に係るロボット100の模式平断面図である。
図5Bは、
図5AにおけるC−C線矢視拡大断面図である。
【0061】
なお、以下で説明する第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
また、
図5Aおよび
図5Bに示すように、第2の実施形態に係るロボット100は、上部アーム14がアーム部140を1つだけ備える点で、上述した第1の実施形態とは構成が異なる。
【0063】
図5Aに示すように、第2の実施形態に係るロボット100は、いわゆる片持ちタイプとなる。このような片持ちタイプのロボット100とすることで、軽量化を図ることができる。
【0064】
第2の実施形態に係るロボット100によれば、上述した第1の実施形態と同様、ブレーキ50が仮想空間VSに干渉せず、仮想空間VSにケーブル類を通すことができる。すなわち、アーム周辺にケーブル類を通すためのスペースを確保することができる。
【0065】
また、第1の実施形態と同様、アーム周辺にスペースを確保することができるため、他の設備への干渉を防ぐことができ、ケーブル類の保護が不要となり、ロボット100の稼働範囲の制約が緩和されるといった効果が得られる。さらに、ケーブル類が露出しないことから、ロボット100の見栄えが良くなる。また、ケーブル艤装の工数を低減することができる。
【0066】
なお、上述した第1および第2の実施形態では、減速機40A,40Bをアクチュエータ35,36から離れた位置に設け、ベルト43によって回転動力を伝達する構成としたが、減速機40A,40Bの配置についてはこのような配置に限定しなくてもよい。
【0067】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。